Coolier - 新生・東方創想話

妹紅「慧音は人使いが荒いなぁ……あれ?」

2008/08/17 10:59:09
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こんなことを言っている妹紅は出てくるけど、藍と橙がメインなんだ。
そして、人使いの荒い慧音は出てこないんだ。














「らんしゃま~」


目の前の猫妖怪にらんしゃまと慕われているこの私、名を八雲藍という。
慕われているといっても、目の前の存在は私の式なのだから当然っちゃ当然だが。


まあ、かくいう私もとある妖怪の式なんだがな。


いや、しかし最近はもしかして私は目の前の式と、家で寝ている主の保護者じゃないかとも思うようになった。
だって、家の家事炊事その他全般を私がしているし、実際に、今日は夕暮れ時のこのときに、ねだる橙をつれて
人里の夏祭りに来ているわけで、これを保護者といわずなんというのか。


何?そんなことよりも妖怪が人里に下りてきて大丈夫なのかって?
そんなことを気にする奴はこの幻想郷にはいないよ。


「はいはい、なんだ橙?」
橙はさっきから立ち並ぶ出店を目を奪われてキョロキョロしっ放しだったからな。
そろそろ、綿菓子の一つぐらいねだってもおかしくないな。


「あのね、らんしゃま。わたしね、わたしね……金魚すくいがやりたい!」
「そうかそうか」


金魚すくいか……。てっきり食べ物が欲しいと言うとばかり思っていたのに。いや、金魚は食べ物か。
橙は金魚すくいの出店を指差してこっちこっちと私の服を引っ張る。やれやれ、仕方がないな。
金魚すくいの出店まで、橙に引っ張られながら辿りつく。
出店を構えていたのは気のよさそうなおじさん、ではなく、女の人だった。


「一回、お願いします」
「はいよ」


橙はおばさんから受け取ったポイを元気一杯に振り回す。やる気は充分みたいだな。
木製の大きな桶の中を、ところ狭しと泳ぎ回る金魚を眺める。


……うん、美味そうだ。


「えいえい、たぁっ」
などと思っていると、橙が次々と金魚をすくって、片手に持つ水が入った枡の中にいれていく。上手いものだな。


びちゃ。
ポイがとうとう破れてしまった。
「あ……」
「残念だったなお嬢ちゃん。でも5匹も持っていくなんて中々上手いじゃない」
「ああ、おばさんの言う通りだ」
「……うぐ、今のは効いた、それよりもお嬢ちゃん。いま捕ったその金魚、食べるの?」
「ああ、もちろんだ」
至極、真面目に頷く。
「食べないよ!?らんしゃまへんなこと言わないで!」
橙は大事そうに金魚の入った枡を抱え込んで私のほうを睨む。


「冗談だよ、ごめんごめん……それよりも、いきなり何てこと言うんだおばさん」
「妹紅と呼んで頂戴……私の心は弱いのよ。あなたたち、狐と猫の妖怪でしょ?だからてっきり食べるのかと……」
目の前の妹紅と名乗るおばさんはちょっと涙目なので、もっといじめたいけど何だ、私たちの正体が
わかっていたのか。


「そんなことしないの、うちでかうの!いいでしょ、らんしゃま?」
そんな笑顔で言われると仕方がないな……。
「よしよし、仕方がないな。そのかわり、ちゃんと世話できるな?」
「うん!」
橙は元気一杯に頷いた。駄目だ、この笑顔を見ていると何でも頷いてしまう。


「まあ、世話といっても半年くらい餌をやらなくても金魚は死なないけど、大切にしてやってね」
「うん、だいじにする!」
(半年も食べなかったら身がスカスカになって不味いんじゃ……?)






手を振る私に、最後まであの猫のお嬢ちゃんは笑顔で手を振り返してくれた。
いや、しかし。
あの妖怪にして、あの狐あり、か。
……それにしても、あの狐。
お嬢ちゃん、食べられても泣くんじゃないよ……。
妹紅は茜色の空を見上げてそう思った。







「今日は楽しかったか?」
薄暗い帰り道で、私は橙に尋ねた。
「うん!」
橙は片手にりんご飴、片手に金魚の入った枡を持って楽しそうに言った。
最初に金魚すくいをやって片手が塞がっていたから、いつもの祭りよりもあまりねだられなかったな。


ありがたいんだが、それはそれでさびしいような。


横目で隣を歩く橙を見ると、橙はおいしそうにぺろぺろりんご飴をなめていた。
不意に、橙がこっちを向いて目が合った。
すると、橙はにっこりと笑って自分のなめていたりんご飴を私に差し出してきた。


「どうした」
「えへへ~、らんしゃまにあげるっ!」
「……ありがとうな、橙」
微笑えみながらりんご飴を受け取る。
ぺろぺろ、甘い。
ぺろぺろ、あ……そういえば橙が舐めていたな。


「らんしゃまもりんご飴買えばよかったのに~」
「ど、どうしてだ?」
「だって、すっごくおいしそうになめてるよ?じつはだいすきなんでしょ~?」


(いや、待て、落ち着け。じ、じぶんの式と、か、かか、間接キスしたぐらいがどうした……)
美味しそうに舐めているって、かなりどうかしているが。


「かおまっかだよ~。べつにはずかしがらなくてもいいのに、らんしゃまかわいいっ」
(かわいいのは橙のほうだよ……)
それから、私は家に帰るまで橙の方を向かず、言葉も発せなかった。
理由?……察しろ。








◆ * ◆ *◆ * ◆ *◆ * ◆ *◆ * ◆ *◆ * ◆ *◆ * ◆ *◆ * ◆ 








私、八雲藍は居間でねっ転がりながら、どうしようか考えていた。
いや、近々、主人である紫様の誕生日なのだ。ここ十年間、紫様は何時もならこの時期眠っていらっしゃるんだが、
最近は起きているので、ここらで十年分くらいまとめて祝って差し上げようと思っている。
しかし、その段取りをどうしようか悩んでいた。


えーと、場所は……幽々子殿に頼めば大丈夫だろう。
料理とか酒とかはどうしようか……。
うーん……。
まだ一ヶ月あるといっても、そろそろ考えとかないと……。


いいアイデアが思い浮かばず、よっと上半身を起こしてテーブルの上に置いてある、中に緑茶が入った湯飲みを
手に取り、茶を啜る。
目の前には金魚鉢も置いてあった。この中を泳ぐ金魚は、先日の祭りで橙が金魚すくいでとってきたものである。


うーん、やはり美味そうだ。


金魚の泳ぐ様を堪能しつつ、思考を巡らせるが、やはり何も思いつかない。


ちゃぽん。


くちゃくちゃ。




「いや、本当にどうしたものか……あれ?」




くちゃくちゃって、なんだ?


いま、私の口の中にあるものは何だ?


右手を見る。
濡れていた。


金魚鉢を見る。
金魚が消えている。


味覚を確認する。
金魚ってなかなか美味いじゃないか……じゃない!


「えさ~えさ~えさのじかん~♪」
橙がご機嫌な歌を歌いながら、居間に入ってきた。


瞬間、橙が凍りついた。


橙の視線が金魚鉢へと向かう。
金魚はいない。


次に私の右手に移る。
水滴が滴っている。


最後に私の口元に。
金魚の尾ひれが私の口から出て、唇をびたびた叩いている。


くちゃくちゃくちゃ、ゴクン。


橙の視界から金魚の尾ひれが消えた。


「ふぇ、ひっぐ、うぇぇええええ」
「あ、あの、な?橙。わ、悪気はなかったんだ……」


目の前でくちゃくちゃ言わせておいて何を言うか。


「うぇぇぇええええん、らんしゃまのばきゃぁぁぁあああああああああああああああああ!!」
橙は涙を瞳一杯にためて、泣きながら居間を飛び出していった。


ああ、あああああああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああやってしまったぁぁぁぁああああああああああああ。


自分の愚かしさに、頭を抱えながら畳の上を転げまわる。


ゴロゴロゴロゴロガンッ!!!


「ぎゃぁあああああああ!!!」
思いっきり柱に頭をぶつけてえらく酷い目にあった。
「っ~~~~~~~~~!!!!!」
藍は頭部を襲う激痛に狂い悶えて、身を捩じらせながら苦しんだ。
そして、一通り苦しんだ後、藍は紫の誕生日よりも遥かに巨大な問題と向き合い始めた。
いかようにして、橙の許しを頂くか。
それが現在の藍の、最大でもっとも困難な、どこかの姫様の出す難題なぞ、「けーね先生のやさしい算数」に見える
くらいの問題であった。


それでも、誠意を持って謝れば、橙だって絶対に許してくれる。
しかし、藍にはそれを断言できない、ある絶対的な理由が存在していた。









実は、三度目であった。









一度目は、ウサギだった。
橙が迷いの竹林で拾ってきたものらしい。上目遣いで飼ってもいいかとねだられたので、軽々と了承した。
その3日後の夕食に、変わり果てた姿で登場した。
橙は必死に涙をこらえていた。


二度目は、鳥だった。
怪我をしているらしいので可哀想だから拾ってきた、と橙が持ってきた。
橙の優しさに心が温かくなったその夜は、おかずに一品焼き鳥が追加された。
橙はその夜、枕を濡らした。


そして、三度目に至り、しかも今回は目の前で食べてしまった。



流石にまずかった。



それでも、許される許されないに係わらず、謝らなければならない。
それは流石にまずくても、三度目でも変わらないことだった。


藍は立ち上がると、まだ痛む頭を右手で抑えて外へと飛び出していった。








◆ * ◆ * ◆ * ◆ * ◆ * ◆ * ◆ * ◆ * ◆ * ◆ * ◆ * ◆ * ◆









外は土砂降りだったが、橙はそんなことお構いなしだった。
橙がいるのは、いつも嫌なことがあったりするときに、それを紛らわすために来る川原だった。
川は轟々と降りしきる雨を集めて、濁った色で激しく流れていた。それは、ひざを抱えて座り込んでいる、橙の心を
どことなく表しているようにも見えた。
ただただ悲しかった。そして、並々ならぬ憤りを感じていた。


らんしゃまはいつもいつもそうだ。気付いたら私が拾ってきた動物たちを食料にしてしまう。


「らんしゃまのばか、あほ、まぬけ、しょくよくのかたまりーっ!」


橙は大きく叫んでみるものの、激しい雨音に掻き消されてそこまで響くことはなかった。





くちゃくちゃくちゃ、ゴクン。





「うう、ぐすん……ひどいやらんしゃま……」


流石に目の前で食べられるのはショックが大きかった。


ごめんね、きんぎょさん。ちゃんと、せわをしてあげるってやくそくしたのに……。
ごめんね、きんぎょすくいのおねえさん。だいじにするっていったのに……。
わたしが浅はかだったのよ……らんしゃまの目の前に置いといたら、食料になるってわかってたのに……。


また目に涙がたまってきたその時だった。


ニャー、ニャー、ニャー。


猫の鳴き声が聞こえて、顔を前に上げる。
「たいへん……ねこさんが……!!」
橙の視界に飛び込んできたのは、土色をした濁流に飲み込まれそうになっている一匹の猫だった。
「たすけなきゃ……!!」
橙は言うやいなや、荒れ狂う濁流の中へと飛び込んでいった。


ばしゃーん!
ガフガフ……モゴモゴ……


(待っててね、いま助けるからね!)
橙は必死に腕を前に出し、もがく。


たすける、たすける、たすける。
ただ、それだけを思う。


(金魚は守れなかったけど、目の前の猫さんだけは……!)


しかし、この時の橙の行為は、明らかに自殺行為であり、川というものを侮っていた。
それを、彼女は身を以って知ることとなる。


もがくもがくもがく。


必死に猫の元へと泳ごうとするが、流れは尋常ならざるほどに激しく、橙はもがいているだけに近かった。
しかし、それでも必死に、少しずつ猫との距離を縮めていく。
途中、何度も巨大なうねりに巻き込まれそうになるが、その度に強く足掻いて、何とか脱する。


その繰り返しの何回かの後。


「つか、まえ、た……!」


伸ばした手が、とうとう猫にまで届いた。
荒れ狂う濁流にされるがままにされる猫を、橙は必死の思いで抱きしめる。


手が届いた、しかし、そこまでであった。
いや、猫の元まで辿りついたそれ自体が奇跡だったのだから、それは普通で、自然なことであった。


(もう……だめ……)


橙は猫を放さぬようにしっかりと抱きしめたまま、されるがまま、濁流に飲み込まれた。
川の中に沈んだ橙の体は、慈悲なき質量に蹂躙されていた。


霞んで途切れそうな意識の中に浮かんだのは、大好きならんしゃまの姿だった。


(ごめんなさい……らんしゃま)


橙が全てを諦めた、その時であった。


ジュワァァァァアアアアアアアアアアアア!!!!!


真っ赤な鳥を見た。


突然、高熱が橙の体を一瞬迸り、自分を飲み込んでいた水は、一瞬の内に消え去った。
そして、「何か」に抱きかかえられて、橙の体は宙を舞った。
霞む視界の中で、捕らえたのは……。


「きんぎょすくいの……おねえさん……」


妹紅に抱きかかえられ、橙の意識はそこで途切れた。







◆ * ◆ *◆ * ◆ *◆ * ◆ *◆ * ◆ *◆ * ◆ *◆ * ◆ *◆








「橙、橙!ちぇぇぇええええええんんん!!!!」
橙を探すために雨でぬかるむ道を駆け抜ける。


くそ、こんな土砂降りだったとは迂闊だった。
転げまわってる場合じゃなかった。


橙はこういう時、何時も決まってあの川原に行く。きっと、こんな天気でもお構いなしだろう、特に今回は。


取り越し苦労なら、これが徒労ならそれで構わない。
しかし。


もし。


もし、もしも、だ。


橙が増水した川に落ちたらどうなる?おぞましい濁流に飲み込まれて、苦しんで、もがいて、必死に抵抗して、
それから、それから……


「ちぇぇぇえええええんんんん!!!!」
脳裏を抉るように走る最悪の光景。
藍は動揺していた、空を飛べることすら忘れていた。焦燥、自責、呵責。それらが藍から余裕を奪い、走ることを
強要する。
藍は自分を責めながら泥水を跳ね上げる。
跳ね上げた泥水が衣服を汚すが、そんなことを気にする暇などあるはずがない。


ぐちゃり。


「しまっ―――――――――」


どしゃぁぁああああああああ。


藍はぬかるみで足を滑らせて、前面から思いっきり地面に激突した。
しかし、そんなことで歩みが遅くなるわけがない。すぐさま立ち上がり、再び雨の降りしきる泥道を走り始めた。


橙、橙、橙、橙!橙!橙!橙!!!ちぇぇぇええええええええええええん!!!!!!


加速するに比例して加速する不安。
それを振り払うかのようにさらに加速する。
さっき転んだせいでところどころすりむいていたが、そんなことはお構いなしだった。


ただ速く、早く橙の元へ。自分を慕ってくれる式の元へ。
一秒、少しでも、刹那ほどの早さでもいいからもっと早く。


「ごめんな、橙……ごめんな……!!」
謝るのはまだ早い。いまの藍がすべきことは、ただ走ることだった。


どれほど走ったかは定かではないが、藍はとうとう件の川原まで辿りついた。
肩を激しく上下させ、両手はひざにあて、首を回して周囲を窺う。


「ちぇ、ん……!!」


橙はいた。
この轟々と降りしきる雨の中、先日の祭りの金魚すくいの出店をしていた、妹紅という女性に抱きかかえられて。
そして、橙自体も小さな猫を抱きかかえていた。


「大丈夫よ、少し水を飲んでいるけど平気。まったく、このお嬢ちゃんはいくら猫を助けるからといって自分からこんな
川に飛び込む馬鹿がいる?そこの保護者……って、あなたのほうが酷そうよ、大丈夫なの?」
妹紅が言うのも無理のないことだった。全身泥だらけ、ところどころから真紅色の液体が流れ出ていた藍のこの状態
を見れば、誰だって藍の方を心配するだろう。


「私、は…大丈夫だ……それより、ちぇんは……?」
「だから、大丈夫だって言ってるじゃない……私が運良く通りかからなかったら、どうなるかは分からなかったけどね」
妹紅はちょっと皮肉っぽく言った。


「すまない、ありがとう。ほんとうにありがとう……!」
藍は少しだけ鼻声になっていた。


「あーあー、やめて。そんな風に感謝されるのは苦手なの……それよりも、手当てをしてあげるから、家にきなさいな。
近いし、手当てもしてあげられるわ。それに、こんな雨の中にいたら風邪引くわよ?」


藍はゆっくりと、もうしわけ無さそうに頷いた。






◆ * ◆ *◆ * ◆ *◆ * ◆ *◆ * ◆ *◆ * ◆ *◆ * ◆ *◆ * ◆ *◆ * ◆






「あの金魚、やっぱり食べたのね……まったく、泣かれて当たり前よ」
「うう……」
妹紅の手当てを受けながら、藍は事の経緯を全て話した。
「まったく、馬鹿みたいな話ね」
「すまない……」
話を聞いた妹紅は、少し呆れたような表情で苦笑い。


「んう……」
布団で寝ていた橙が呻き声をあげて、手で目を擦った。


「どうやら気が付いたようね……じゃ、私はしばらく席を外すから、ちゃんと謝りなさいよ?」
そう言うと、妹紅は障子を開いて部屋の外へと出て行った。
藍は座ったまま腕を使って、橙の元へと移動する。


「橙……」
「……らん、しゃま?…わたし、わたし……ごめんなさい……」
起きるなり涙目の橙を見て、藍は橙を抱きしめた。
「謝るのは私のほうだ……同じことを何回もして…その度にお前を泣かせて……私は主人失格だな……」
藍の頬を一筋の滴が流れる。
「なかないでらんしゃま……わたしのほうこそ、いつもわがままいって、めいわくかけて……」


「「ごめんな(ごめんなさい)」」


二人の声が重なった。


「ははは……」
「えへへ……」




妹紅はそんな2人の様子をこっそりと障子戸の隙間から窺っていた。


(うらやましいなぁ……)
昔の私と慧音もあんな感じだった気がする。
いまも慧音は優しいけど……出会ってころを考えると少し変わった。
まあ、覗きはこれくらいにしときましょうか。




「仲直りできたようね」
静かに障子戸が開かれる。
「ほら、橙。この人にお礼を言わないとな」
「たすけてくれてありがとう、きんぎょすくいのおねえさんっ!」
「わたしからも礼を言うよ、いろいろと世話をかけてすまなかった、妹紅殿」
頭を下げる2人を見て妹紅は微笑んで、さっきから考えていたことを口にした。


「2人とも、ちょっと地下に来なさい」
「そんなものがあるのか」
「なにがあるの?」
「ふふ、それは来てみてのお楽しみ。さあ、ついてらっしゃい」
妹紅の案内で、2人は廊下へと出て、廊下の角を3度曲がると、そこには地下へと続く階段があった。
妹紅が降りていくので、二人もそれに続く。


15段あった階段を降りると、地下に広がっていたのは―――――――――。


「どう、すごいでしょ?」
妹紅が自慢げに言う。
「金魚さんがたくさん……!」
橙は、たくさんの金魚が入った、正方形の木で作られた水槽を見て吃驚していた。
「これはまた大仰なものだな……」
藍も驚きの声を漏らした。


「いやね、最初は気まぐれで育ててたんだけど……その内楽しくなっちゃってね。最近は殺し合いなんかしなくても
全然暇じゃなくなったわ」
水を替えるときは結構大変なんだけどね、と妹紅は笑顔で付け足した。


「と、いうわけで……お嬢ちゃん。金魚に会いたかったら何時でもおいで。そのときはお嬢ちゃんにも何か手伝って
もらおうかしら?」
「うん、てつだうてつだう!」
「確かに、ここなら私が食べるかもしれない。という心配はないしな。よかったな、橙」


……ぷ。


「「「ははは」」」


3人は思わず笑った。


「あ、でも……」
橙は突然あることを思い出した。








「わたしがたすけた猫さんは……?」








橙は妹紅に尋ねた。
妹紅は無言で、藍を見てから、橙を見て、それから目を逸らした。


その様子を見た橙は藍の方を向いて、涙目になっていた。


「いや!?食べてないぞ私は!本当だ!信じてくれ、橙!!」
「お嬢ちゃん、安心しなさい。あの猫なら手当てをしてあげたら、とっとと何処かへ行ってしまったわ。そこの雑食狐の
胃の中にはいないわ」


「……ほんとう?」
橙は妹紅に念を押す。
「本当」


「あれ?私は信用してくれないのか……橙……」


涙目の藍を見て、2人は顔を見合わせて楽しそうに笑った。
ぐへ、ぐへへへへ。何だか前作の評判が妙に良くて顔がにやけっぱなしです。
この作品も合わせて、読んでくださった方、ありがとうございました。あと、慧音は空を飛べるんですね、ありがとうございました。


妹紅が何故、大雨の中あんな所にいたのかは……きっと、慧音にでも頼まれて見回りをしていたんだろう。


誰かがコメントしてくれたので、最初はフラマリを加工河口と思っていました。色々と空想に耽っていた結果が金魚をくちゃくちゃと咀嚼する、どこか、と、いうよりかなり抜けているらんしゃまでした。


変態は書かないように気を遣ったら、今度は変人を書いていた。なんて、よくある話すぎて困った。短いのに場面転換しすぎ、なんてのもよくありすぎて困る。


次こそはフラマリを……あれ?でも、ここに投稿できるのか?
niojio
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コメント



0.1510簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
獣らしい藍さまですね。
きっと野に降りても逞しく生きていけるのでしょう。
2.100名前が無い程度の能力削除
金魚を食べるなwww
いや確かに変態ではないかもしれないけど
4.100名前が無い程度の能力削除
だめだ、中盤の藍様・・・早く何とかしないと・・・w
7.90名前が無い程度の能力削除
お前は八雲藍のイメージをぶちこわしてしまった。
その罪は重く、よってくちゃくちゃの刑に処する。
8.90カブトムシ削除
うっかりものの藍様………(*´∀`)
12.100名前が無い程度の能力削除
>>次こそはフラマリを……あれ?でも、ここに投稿できるのか?
私はっ!!一向にかまわんっ!!
13.90名前が無い程度の能力削除
面白かったでしたが残念な藍様にくちゃくちゃ刑をwww
15.90等品 骸削除
>あれ?私は信用してくれないのか……橙……
三度も食えば無理だろフツーww出て行かれないだけありがたく思えwww
21.90名前が無い程度の能力削除
面白かったです。
藍様は無意識に食ってる分、ゆゆさまよりタチが悪いですねw
23.60名前が無い程度の能力削除
橙や藍は水に濡れたら式が取れて猫とキツネに戻ってしまうんではありませんでしたっけ。

それはさておき良い家族愛でした。
24.80からなくらな削除
良かったです
橙が川に飛び込んでましたが・・・意志の強さですね
妹紅の話し方が本家より女っぽい・・・ありですね
34.80てるる削除
とりあえず駄目だこの藍様ww
しかも無意識でww
たしかに雑食狐ですね~。


>>フラマリを・・・
内容によりけりですね~。
場合によっちゃ『あっち』の方が適切かもですが、そこまででないなら大丈夫かと。
37.90名前が無い程度の能力削除
>くちゃくちゃくちゃ、ゴクン。

吹いたゆえに生々しいからwwwwwwww
38.90名前を表示しない程度の能力削除
妹紅がおばさんと呼ばれているのに最初の衝撃、
雑食過ぎる(というかあまりにも節操の無い)藍に二度目の衝撃を受け、
そして最後の三人でトドメを刺されました。いい意味で。

あとタイトルの台詞が橙発見時にしか思えない。ってけーねが言ってた。
41.100名前が無い程度の能力削除
>実は三度目だった。

盛大に吹いたwwwってけーねが言ってた。
45.80名無し毛玉削除
踊り食いはともかく、焼き鳥とか献立に並ぶのはうっかりじゃすまないかと…。
さすが藍様、しびれるあこがれるー(棒読み)
46.80名前が無い程度の能力削除
>実は三度目だった。
笑うだろw 笑っちまうだろw
49.100名前が無い程度の能力削除
くうなよwwwwwww
50.100名前が無い程度の能力削除
※グロ注意
51.100名前が無い程度の能力削除
藍さま、どんだけ野生を抑えられねえんだww
妹紅はやっぱいい人だなあ。