Coolier - 新生・東方創想話

妹紅「慧音は変態だけど紳士だよ!」

2008/08/14 13:10:41
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タイトルのまんま。でも、おかしい人は他にもいるんだ。そして、そんなこと言っている
妹紅は出てこないんだ。

















妖怪が闊歩する場所から少し離れた場所にある人里。
そのとある一軒家の看板にはこう書かれていたそうな。





―相談室(管理責任者・上白沢慧音)―








はい、私だ。この相談室の室長、上白沢慧音だ。
いつもはこの人里の人間を相手に、主に農業について不安なことについてやらの相談に乗っている。
今年は害虫が多いとか、例年より育ちが悪いとか。結構死活問題だったりするが、相談の中には恋愛に
ついてだとか、そういう色恋沙汰も多いので、平和なものである。


おっと、そろそろ時間だな。まあ、相談室なんていっても一日に来て3人ぐらいだけどな。ははは、しかもその内の
一人は妹紅ときたもんだ、やっぱりここは平和なんだとつくづく思う。



朝もそこそこ過ぎてきたときに、この相談室は開かれる。






だんだん。
「どうぞ」
ガラガラッと引き戸が開かれる。


「!・・・・・・っ!?」
「あ、あの・・・・・・恋の相談もやってるって聞いたから・・・その」


慧音が驚くのも無理がなかった。
開かれた引き戸の先に立っていたのは・・・少し大きめの日傘を差している金髪の悪魔だった。
しかし、この上白沢慧音。悪魔の妹君だろうが、恋の相談と聞いてしまっては無下に突き帰すほど無粋ではない。
「ま、とりあえずそこに座れ」
慧音は自分の正面にある椅子を指差す。
「う、うん」
金髪の悪魔・・・フランドール・スカーレットは日傘をたたむと、もじもじしながら椅子に座った。


「・・・これは驚いた・・・で、相手は?」
こういう時は直球で行くもんだと私は思っている。
「え、えっと・・・・・・その・・・」
フランドールの顔が赤くなっていく。それに上目遣いでたまに目をそらす。
ええい、まどろっこしい。バレバレなんだよ。
「・・・魔理沙か?」
「ひゃ、え、ええ、ど、どうしてわかったの!?」
「お前は誰にも悟られていないとでも思っていたのか?」
つーか、むしろみんな知っていると思うぞ。と付け加えようと思ったが、ゆでだこどころで済みそうになかったので
止めとくことにした。
「うう・・・・・・」
フランドールは顔を真っ赤にさせながらうつむく。ここだけ見れば普通の女の子なんだがなあ、と慧音はこっそり
思った。




「毎晩夜這いをかけてるのに・・・・・・魔理沙ったらずっと知らんぷりなの」




「・・・・・・・・・」
やっぱり普通じゃないんだな、うん。




「普段のお前と魔理沙はどうなんだ?」
「魔理沙は図書館の帰りに必ず来て一緒に遊んでくれるの。たまに、図書館に用がなくても会いに来てくれる」





「普通に遊んでくれているのか?」
「うん」


まさか、あの与太郎がそこまで寛容だったとはいささか驚いた。いや、ここはアイツのほうも一応の好意を持っている
と考えたほうがいいか。


「とりあえずだな。夜這いは止めとけ」
「だって・・・」
「お前は魔理沙に嫌われたいのか?」
「・・・嫌われたくない」
「じゃあわかるな?」
「・・・うん」
フランが渋々頷く。うーむ、素直でよろしいなあ。こういう子は応援してやりたくなるわけだが・・・・・・あの与太郎の性格を
類推するに・・・そうだな、こういうのはどうだろう。


「よし、じゃあ最後に一つアドバイス。押してだめなら引いてみろ・・・案外うまくいくかもな」
「押してだめなら引いてみる・・・・・・そうかっ!ありがとうけいねさん!」
悪魔の妹君はどうやら何かを思いついたらしく、大き目の日傘を部屋の中で差してから、出掛けにもう一度ありがとう
と言ってから出て行った。
しかし、あれだ。夜這いするぐらいの輩だ、ろくな思い付きじゃないだろう。


例えば・・・・・・。





「なんだフラン。お前から招待してくれるなんて珍しいじゃないk・・・・・・そ、その格好は何だ!?」
「まりさぁ、ふらんね。きょうはまりさだけのものだよ・・・・・・」
「ぐはっ。もう我慢できないぜ!」
以下自粛、フランの格好も表現自粛。決して裸にリボンを巻いてドレスアップしているわけではない。








いかん、鼻血が出そうだ。












だんだん。
「どうぞ」
ガラガラッと引き戸が開かれる。


大き目の日傘。先程の相談者と容姿も似ている。
本来なら警戒するべきところだが、日中だし、ここは相談室。本人もそういう目的で来たのだろうから、この
上白沢慧音、相手がスカーレットデビルだろうが邪険にはしない。


「・・・・・・姉妹そろって、今日はなんだ?まあ、とりあえず座れ」
「あら、フランもきてたの?それよりも、あなた鼻に詰め物なんかしてどうしたのよ?鼻血?」
「さっきそこで転んで鼻を打っただけだ、気にするな(お前の妹で卑猥な妄想をしていたんだよ。)」


この吸血鬼、家の中で日傘を差すなうっとうしい。お前の妹のほうが常識があったぞ。
しかし、日光をさける気持ちが分からないわけではないので、そこはスルーすることにする。



「ふぅん、そうなの。それは置いといて、相談したいことがあって今日は来たの」
「それ以外だったら、その日傘を奪い取って外に放り出しているところだ」
「まあ怖い」
「ふん・・・で、悩みごとは何だ?」




「最近、私の咲夜がね・・・・・・寝込みを襲うようになったの」


今度は逆か。


「日中だから力は出ないし、割と本気で撃退するわけだけど・・・咲夜の攻撃が日に日にどんどん激しくなってきている
のよ。主に服への」
「で、これじゃあ、何時貞操を奪われるか分かったもんじゃないから困ってるのよ。ここに来たのも半分くらいは避難
するためによ」


狗狗言われすぎて本当の犬になってしまったわけか。


「解雇にでもするか、あの中国と役職を入れ替えるぞって脅せばいいじゃいないか」
「それを言ったら最後、咲夜が真に受けて、何されるか分かったもんじゃないわ」


・・・・・・・・・それは、それで。「私の咲夜」って言ってるぐらいだしいいんじゃないか?やっちゃえばいいのに。


「もう一つ解決策はある」
「本当?」
「逆に考えるんだ、『あげちゃってもいいさ』と考えるんだ」
「ハクタク如きが・・・死にたいの?」


恐ろしい殺気だが、魔力は追いついていないので怖くない。
こういうことをするのは相談しに来たものに失礼だが、何、いつも迷惑をかけられているんだ。もう少しからかって
やるか。


「まあ、待て。別にその変態メイドにくれてやれとは言ってない。自分の意中の相手に初めてを捧げてしまえば、たとえ
貞操を奪われようが、ダメージは少なくなるぞ」
「そ、そうね・・・・・・!どうして今まで気付かなかったの・・・!?」
「は?」
「そうと決まったら、こうしちゃいられないわね」
目の前の吸血鬼は突然立ち上がると、足早に出て行こうとした。
「お、おい。どこに行くつもりだ?」
「どこって・・・博麗神社に決まっているじゃない」
ガラガラッピシャと、引き戸は閉められた。




まあ、本人がそれでいいなら・・・私は本人の意思を尊重しよう。
例えば、こんなことになっても、だ。





「れいむ・・・ねぇ、もらって・・・・・・わたしのはじめてを・・・」
「めちゃくちゃにしてあげるわ・・・・・・」
そして、吸血鬼と巫女は布団の中で愛を語らうのであった。







まずい、また鼻血が・・・・・・。












だんだん。
「どうぞ」
ガラガラッと引き戸が開かれる。


「まあ、とりあえず座りな」
「そうさせてもらうわ」


素っ気なく返事をして金髪の、悪魔じゃなくて、今度は人形遣いが椅子に座る。


「悪魔の次は人形遣いか・・・・・・」
「悪い?」
「ぜんぜん悪くないとも」
「当然よ」


「で、悩みごとは何だ?」
「悩みごとなんて何もないわ・・・・・・それよりも、服がところどころ赤いけど、どうしたの?」
「ああ、この前洗濯したんだが、血っていうものはどうにも落ちにくい(レミ霊で妄想していたんだよ。)」


あれ?
コイツ相談しに来たんじゃなかったのか?
まあ、言いたくないってんならいいさ。この上白沢慧音、お前の考えてることなんざお見通しよ。


「・・・霊夢のことか?」
「なっ!?」


どうやら図星だったらしく、かなり動揺している。
やはりあの巫女のことについてか。
ならば、言うべきことは一つだ。


「こんなところに相談に来ている暇はないと思うぞ?」
「それはどういう―――――――――」
「さっき来た、れみ何たらとかいう吸血鬼がぐへぐへにやけながら博麗神社に向かっていったからだ」
「また来るわ!」


アリスは立ち上がると、脱兎のごとくこの部屋から飛び出していった。
レミリアはにやけていなかったが、霊夢の元にたどり着くころにはきっとにやけ顔だろう。多分。




それにしても―――――――――。




「霊夢は私のものよ!」
「黙れ、この吸血鬼が!裁縫張りでその薄汚い目と口を縫い付けてやろうか!?」

霊夢「おいおい、お前ら何勝手なこといってんだよ」
霊夢「まとめて愛してやんよ」
以下、自粛。










「―――――――――これはいい」





うお、あ、鼻血が―――――――――。
そういえばアイツ、また来るとか言ってたな。もう来ないと思うけど。




ゴミ箱に目をやる。ふと、2人の顔が浮かんだ。



2人仲良く三途の川まで行ってらっしゃい。






ちらりと壁にかけた時計に目をやると、もう昼時だった。
そう言えば今日は随分と適当なことを言ったような気がする。まあいいか、いざとなればなかったことにすればいいし。
そういえば妹紅がまだ来てないのに、三人も来たのか。ここも来るときは来るから、この分だともう一人来るような気が
するな。




などと、慧音が思っていると―――――――――。









だんだん。









「やっぱりか―――――――――どうぞ」
慧音が返事をすると、ガラガラと引き戸が開かれた。


「・・・・・・大妖怪様がこんなところに何用だ」
「・・・・・・」


いや、正直驚いた。スキマ妖怪と謳われる八雲紫が来るなんて。悩み事とかなさそうとかいう意味じゃなくて、普通に
入り口から入ってきたことについて、だ。


「何だ、愚痴ぐらいなら聞いてやるぞ。どうせ人なんか来ないからな」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・どうした?」
「・・・ぐすん」
「え、ちょ、お、おい。本当にどうした?」
「ぐす、ひっぐ・・・・・・」


も、もしかしてこ、これは・・・泣いているのか!?
どんな奴でも目の前で泣かれていてはこの慧音、ほっとかずにはいられない。


「まあ、とりあえずそこに座って。大丈夫だ。私しかいないし、いくらでも話を聞いてやるからな」
「ひっぐ、えっぐ・・・・・・」
「うぇぇぇええええええええんんんん」


本気で泣き出した、やばい。母性がくすぐられる。
慧音はどうしようもなく、この目の前でわんわん泣いている少女(?)を何とかせねばならず、それ以外のことなど二の次
であり、眼中になかった。
もし、ここに同じように泣いている妹紅がいても無視されることであろう。


「ああ、もう泣くな。何があったかは知らんが、私はお前の味方だからな」
「ふぇぇぇええええんん慧音ばや゛ざじい゛の゛ね゛~」


紫は泣きながら慧音に抱きついて、あ゛り゛がどう゛げい゛ね゛~などと言いながら、慧音の胸の中で
しばらくわんわん泣き続けていた。泣き続ける紫を、慧音はあやす事もせずに、ただずっと温かく抱きしめていた。
「ぐす、ひぐ・・・・・・」
「よしよし」
その姿からは聖母、というよりもお母さんの雰囲気がにじみ出ていた。
五分ほどして、ようやく落ち着いてきた紫を向かい合う形で椅子に座らせる。それからゆっくり慧音は事情を尋ねた。


「何だ、あの巫女にでも虐められたか?」
「・・・・・・違うの」
「じゃあ、どうしたんだ?ほれ、言ってみろ。もちろん、言いたくなかったら言わなくてもいいんだぞ?」
「実はね・・・最近ね・・・」
紫はぽつりぽつりと話し始めた。


「藍がね・・・私を無視するの・・・・・・最初はまた何かやっちゃった?って軽く思ってたんだけど・・・・・・二週間たっても
ずっと無視されっぱなしで・・・ぐす」


「それでね・・・・・・幽々子に愚痴ろうと思ってね・・・白玉楼に行ったらね・・・・・・行ったらね・・・幽々子のところにまで行
ったらね・・・・・・問答無用で死に誘われてね・・・」


「命からがら逃げ出して・・・・・・白玉楼の入り口まで逃げ切ったらね・・・妖夢がいてね・・・なんだかまずいものとであっ
たみたいに・・・・・・わたしからめをそらして・・・・・・ぐす、ひっぐ」


「こんどは神社に行ったら・・・・・・いきなり夢想封印を・・・ぐすん、ひっぐ、ひぐ、ぐす」


「まよひがにもどってちぇんにあったら、わたしをみるなり・・・・・・とつぜん、にげだして・・・・・・もう、もう、もう、
わ゛た゛し゛どう゛し゛た゛ら゛い゛い゛の゛~~~」


紫はそこまで何とか言い切るとまたわんわんと泣き出してしまった。



これは。


もしや。


いま。


外の世界で大流行の。


・・・・・・イジメ、というやつか?


慧音は静かに燃えた。
理由はどうであれ、人をここまで追い詰めていいはずがない。


否。


断じて否。


到底、許されることではない。
たとえ閻魔が認めようが、私の正義が許さない。


しかし、具体的にはどうすればいいのか判断しかねる。
具体的な規模もわからないし、イジメ。などという概念はこの幻想郷に存在しない。


「ふえええええええんんん」
(やばい、可愛い。どうにかなってしまいそうだ)


とりあえず、紫はこのまま帰すわけにはいかないな。
「ふえええええんんんんんんんん」
「やれやれ、仕方がないな・・・・・・」
慧音は立ち上がり泣きじゃくる紫の前に立つと、座っている紫の顔の高さに自分の顔
の高さを合わせるように身を屈める。そして、額にかかっている乱れた髪の毛を両手でどけて、そのまま額に唇を
近づけて・・・・・・


ちゅ。


軽く唇をあてる。唇を離す。そのまま紫を抱きしめる。
「大丈夫、私はお前の味方だ。なーに、私は何処にも行かないさ」


「私がお前を守ってやる」


「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・うん」
効果は簡潔に言うと抜群だった。
「よし、じゃあ寝室に行こうか」
「・・・・・うん♪」
紫がようやく笑ってくれたので、慧音も少し安心した。
別に、寝室に行くからってやましいことじゃないぞ。















「すーすー」
「ふう、ようやく寝ついたか」
ぐずっていた紫も、今は慧音の布団の中で安らかに眠っている。着衣に乱れはない。
この私、上白沢慧音。決して精神的に追い詰められているのをいいことに、甘い言葉で酔わせて自らの欲望を満たす
など・・・・・・くそ、やりたかったよ!!


でも、慧音は優しいのでそんなことはしないのであった。
でも、変態。とは妹紅の言葉であり、それは間違いなかった。


そんなことよりも、この紫の状況について慧音は考えていた。
そこで問題だ!慧音はどうやって紫を救うか?


3択―ひとつだけ選びなさい


答え①ハンサム慧音は、とりあえずいじめをしているものを皆殺しにする
答え②いじめられていた、という歴史をなかったことにする。とりあえずいじめをしている者の歴史も無かったことにする
答え③妹紅を呼んでゆかりんとネチョネチョする。その上でいじめをしているものを皆殺しにする


答え ―③ 答え③ 答え③


「答えは③だ・・・・・・自分の欲望には・・・・・・逆らえないってとこか。さてと、 妹紅を呼びに行くか」


答えを出すのに必要なのは一瞬だった、本当に一瞬だった。






だんだん。
「ん?妹紅―――――――――じゃないか。あいつならノック無しで入ってくるし」
「相談希望者か。紫、ちょっと行ってくるからおとなしく寝ているんだぞ」
ほっぺに軽くキスをして、慧音は相談室へと向かった。


「遅れてすまない。入っていいぞ」
ガラガラッと、引き戸が開かれる。
その瞬間、慧音を纏っていた邪念が一気に消し飛んだ。


「やあ、ワーハクタク」
「・・・・・・・・・(こいつは!)」


開かれた引き戸の先にいたのは―――――――紫の式、藍だった。


「きょ、きょうは、ドンナヨウダ」
「ああ、少し話があってな」
「チョウドヨカッタ、ワタシモハナシガアルンダ」


さて、目の前の畜生をどんな風に殺してやろうか。
きつねうどんか、やはりここはきつねうどんにしてやるべきか。
はは、どうしてだろうな?満月の夜でもないのに変身できそうだ。


「明日、紫様の誕生日のお祝いがあるんだが、お前も来てくれないか?」
「すまないが、お前に明日などない。なぜなら今日がお前の命に―――――――――誕生日?」


おいおい、まさか・・・・・・そんな、ベタ過ぎるだろ。
頭が急速に冷えて、回転して、冴え渡る。


「どうした・・・いきなりこけるとは。しかも、座っていたのに・・・器用な奴だな」
「そうだよ、器用なんだよ。可哀想な目で見るな」
慧音は立ち上がって座りなおすと、藍に向き直った。


「まさか、二週間前ぐらいから準備していたりしたか?」
「うむ」
「巫女とか亡霊とかそこら辺も協力して準備していたりとか?」
「むむ、まさかばれていたとはな。この分だと紫様もお気づきになっているかもしれないな」


この狐は・・・・・・。


「安心しろ、まったく気付いていないぞ」
「ん、どうして言い切れる?」


「実はな―――――――――」




とりあえず紫のことを話した。




「それは申し訳ないことをしてしまった。いやな、紫様がこの時期起きているのは十年ぶりぐらいなんだ。だから、せっ
かく起きているなら十年分くらいに盛大に祝って差し上げようと思ったんだが・・・・・・」
「・・・・・・わたし自身も、ウキウキしていてな。うっかり紫様に尋ねられたら答えてしまうぐらいに」
「まったく、アイツのことはお前が一番よく分かっているだろうに」
藍は申し訳なさそうに赤くなった顔を伏せた。


「うう・・・・・・そ、それよりもだ、紫様は今どこに?」
「私の寝室で寝ているよ」
「―――――――――そうか。いま私が行っても逆効果だな。紫様を連れてくるのはお前に頼んでもいいか?」
「もちろんだ」
「じゃあ、明日の正午。白玉楼にて、頼んだぞ―――――――――」
「ああ、承知した」




藍は小さく笑うと、まだ準備がある。といって急いで出て行った。








何ともまあ―――――――――。
慧音は大声で笑った。










「すーすー」
慧音が戻ってきても、紫はまだ寝ていた。
慧音は泣きすぎてまぶたが腫れている紫の髪を優しく撫でる。


ここで再び問題だ!このあと慧音がとる行動は?


3択―ひとつだけ選びなさい


答え①ハンサム慧音は無理やり寝ている紫を・・・・・・
答え②妹紅を呼んでやはりゆかりんと・・・・・・
答え③何もしない。慧音は淑女である。


答え ―③ 答え③ 答え③


「お前は幸せだな・・・・・・たくさんの人に愛されて、祝ってもらえて・・・」
慧音は思わず呟く。
「・・・・・・それに気付かないでメソメソ泣いて・・・ふふ、馬鹿な奴だな・・・・・・」


「ん~らん、ちぇん~ゆゆこぉ~」


何ともまあ幸せそうな寝顔だ。
「ふふ・・・ああ、わたしも眠くなって、来たな・・・・・・少し早いが・・・今日はなにやら変につかれた・・・・・・」
慧音は紫の隣に寝転がると、すやすやと寝息を立て始めた。



















「起きたのはいいが・・・・・・この状況」


何で私と紫は裸なんだろうな。うーん、不思議だ。
いくら首を傾げても、理由は不明。
窓からはすがすがしい朝日が差し込んでいる。紫の美しい肢体が朝の光を浴びてとても扇情的である。
まあ、とりあえず欲望を抑えつつ、そこら辺に脱ぎ捨ててある自分の服を着る。
「うお、そろそろ行かないと間に合わないな」
時計を見ると、うん、10時を過ぎてた。よくもまあこんなに寝てたもんだ。きっと何か疲れることをしたんだろう。
・・・・・・してないはずなんだが。
無意識って死ぬほど恐ろしいな。


いや、やってないから!?ぜったいにやってないから!?(多分、恐らく、五割、う、す、すまん、やっちゃったかもしれない)


そういうことも全部、一度横に置いといて、とりあえずお姫様を起こさないと始まらない。
「おーい、ゆっかりー、おきろーあさだぞー」
慧音は紫の頬をぺちぺちと叩く。
「ん・・・・・・けーね、おはよう・・・むにゃ」
紫は声を出して少し身を捩じらせると、ゆっくりとまぶたを開いた。


「あれ・・・わたしなんで裸なの・・・・・・?」
「昨夜は暑かったからな。自分で脱いだんだろ」
「そうなの・・・・・・むにゃむにゃ」
「なあ、今から出かけないか?」
「・・・どこに?」
「ちょっとそこまで」
「わかったわ~むにゃむにゃ」
「じゃあ、外で待ってるから準備ができたら来てくれ」


そう言うと慧音は寝室から出て行った。









「ち、惜しいことをしたもんだ―――――――――」


記憶がないとは不覚だった。




しばらくすると紫はちゃんと服を着て出てきた。
慧音は紫にあるものを手渡した。


「これは・・・・・・?」
「てぬぐいだな」
「どうするの?」
「目隠しをしてもらう」
「え、ど、どうして?」
「ちょっとした余興さ」
紫は不安に思ったが、優しく微笑む慧音を信じることにした。


「じゃあ、行こう。あ、空を飛ぶから手、放すなよ?」
「う、うん」
言われるがままに紫は慧音の腕を強く握り締めた。不安と安心とが混じった気持ちが紫の心を流れていた。不安を
振り払うように、ぎゅっと強く握り締めた。
突然、体がふわっと浮かぶ。慧音が空を飛び始めたようだ。
と、いうより慧音って空を飛べたんだ。と、紫は小さく思った。


しばらくすると、心地よい風と浮遊感が体を包み込み、何時の間にか慧音の腕に抱きつくようにしがみついていた。
慧音のぬくもりが視覚を奪われたという恐怖と不安を打ち消した。


慧音はどこに連れて行ってくれるんだろう?


楽しいところ?


華やかなところ?


美しいところ?


期待で胸をわくわくさせる。
(ふぁ~あ~、でも、なんだか眠い・・・・・・)
たくさん寝たはずなのに、なんだか妙に疲れている。
大丈夫、慧音が支えてくれている。安心だ。


「すーすー」
「うわ・・・寝てる」
まあ、目的地に感づかれて暴れられても困るし楽だけどな。


・・・・・・寄り道しようかな。
たとえば、そこら辺の人気のない場所に下りてだな・・・・・・。
そこまで考えて、慧音は自分の腕に絡み付いている紫を見つめる。


「すーすー」


「やめとくか・・・・・・」
慧音は静かに微笑んだ。








「―――――――――い、」
「―――――――――おい、」
「おい、着いたぞ。いい加減に起きろ」
紫はゆっくりと目を開くが、視界は闇から闇。代わり映えしない。
「ん・・・着いたの?」
「ああ」
「ここはどこ・・・・・・?」
「いま目隠しを外す。自分の眼で見てみるんだな」


そういえば、さっきから人の気配がたくさんする。ここは本当にどこだろう。


慧音の手によって目隠しが外される。
突然の光がとても眩しい。


でも。


目の前にいたのが誰かくらいはわかった。いや、わからなくちゃいけない。
だって、私は目の前の・・・・・・最近とても冷たい式のご主人様だから。


とても不安になる。不安でたまらなくなって慧音のほうを見るけれど、慧音は笑ったまま何も言わない。

辺りを見回す。
幽々子も霊夢も妖夢も橙も騒霊たちも吸血鬼も魔女もメイドも魔法使いも妖精も鬼も天狗も、その他
もろもろみんな、みんないた。
改めて式のほうを見る。


式はなんだか申しわけ無さそうだった。
伏目がちで、でも顔はなんだか赤っぽかった。


「紫様」
「な、何・・・・・・?」
次の言葉が私にはとても怖かった。


「は・・・はっぴばぁーすでいゆかりー」
「・・・え?」


「「「「「はっぴばぁーすでいゆかり(あなた)(スキマ)(おまえ)ー」」」」」
藍が歌い始めると、周りの声も重なり始めた。


「「「「「「「はっぴばぁーすでいーでぃあゆかり(あなた)(スキマ)(おまえ)(ばばあ)ー」」」」」」」


「「「「「「「「「「はっぴばぁーすでいゆかりんー!」」」」」」」」」」


いぇーい!誕生日おめでとうだぜ!
おめでとうーおめでとうーおめでとうー、と周りから祝福の歓声があがる。


理解した。


私は何て馬鹿なんだろう。


「ぐす、ひっぐ」


この愛しい愛しい式は、自分が忘れていたことさえ覚えていてくれていたのだ。



「ふぇぇえええええんんこ゛め゛ん゛ね゛ら゛ん゛~~~~~~!!!」


藍に抱きついて私はまた泣いた。
藍だけじゃなかった。


「み゛ん゛な゛あ゛り゛か゛と゛う゛ね゛~~~~~~~~~」


たくさんの、たくさんの人がわたしの誕生日を祝ってくれている。
それが嬉しくって私はまた泣いた。
みんなは笑っていたけど、そんなことはお構い無しだった。


それからは飲めや食えやのどんちゃん騒ぎで、とても楽しかった。
なぜかレミリアとアリスはボロボロだったけど、どうしてだろう。
ま、きっと酒に酔った勢いで弾幕ごっこでもしたんでしょう。
それから、幽々子と藍が謝りに来た。ごめんね、謝るのは私のほうだわ。
私は、ありがとうと笑顔で返した。




ありがとうね、みんな。
ありがとうね、藍。
ありがとうね、幽々子。





「ありがとうね、慧音」









*  ◆  *  ◆  *  ◆  *  ◆  *  ◆  *  ◆  *











「なあ、紫」
「何?慧音」
「私の上で酒をあおるのはやめてくれないか?」
しばらくして落ち着いた紫は、それでもやっぱり慧音にべったりだった。
「嫌なの?」
一升瓶のラッパ飲みを終えた紫は上目遣いで尋ねた。
「いや、全然。むしろ喜ばしい」
「じゃあ何で?」
慧音はやれやれといった面持ちで、前方を指差した。
紫はその指の先を視線で追う。


「お前のところの主人は、よくも私の慧音をたぶらかしてくれたな?あ?」
「それはこちらの台詞だ、ハクタク如きがよくも私の紫様を・・・・・・」
「あなたたち、何勝手なこと言っているの?私と紫は生前に永遠の愛を誓ったのよ。2人とも引っ込んでいなさい、
桜の木の下で眠りたくなかったらね」


けんかだけんかーと白黒が焚きつける。
紫の10年分のお誕生会は、既に混沌と狂乱の酒宴となりつつある。


「と、いうわけだ」
「どういう意味よ?」
「私の上で酒をあおる前にアレを止めて来いって意味だ」


ちゅう。


「私の代わりに止めてきて~、ね?」
「・・・馬鹿言え」
「あら、私を守ってくれるんでしょ?私があの輪の中に入ったら何されるか分かったものじゃないわ」


おいおい、そんな風に微笑まれてもなあ。
でもな、如何してだろう?
ははは、おかしいよなぁ。
満月でもないのに、『変身』して『しまった』。




―――――――――まったく、あの妖怪は―――――――――




隙間のない弾幕の中に飛び込んでいく。


「おおっと、乱入者が現れたぞー!!」


うるさいな、白黒が。


「けーね、けーねは私だけのものなんだぁぁぁぁああああああああああああ」
「ちょうどいい、その薄汚れた血で宴の肴にしてやろう!」
「西行妖の下で眠れるなんて、素晴らしいことだと思わない?」


最初から私は格下扱いか、そうか。
ならば、その侮った分をまとめて利子をつけて思い知らせてやろう。


「覚悟はできているだろうな、この色ボケ野郎どもぉぉおおおおおお!!!!!」


スペルカードが舞う。




―――今日は貴様らの歴史で満漢全席だ!!!――――








桃色思考の者たちに、真の歴史の恐怖を与へ給へ・・・・・・!!
…ではなく、・・・なお話。


魔理沙が好きだ。でも慧音も好きだ。
この話の中の慧音はどうも、変態と言う名の紳士だった。


慧音って空飛べたっけ?まあ、飛べなくてもいいや。
慧音と紫の身長ってどんなもんだったっけ?まあ、いいや。
ほれ、パスワードを入力して無かったことにすればいいし。


追伸:魔理沙とフランは上手くいったようです。
niojio
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コメント



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あえて一言
素晴らしい
10.100名前が無い程度の能力削除
泣きじゃくるゆかりんに下半身におわす紳士が激しい反応を返してしまった。
13.90名前が無い程度の能力削除
この馬鹿者がw(誉め言葉)
14.70名前が無い程度の能力削除
霊夢が男前過ぎる

あとけーねは空とべるよ!とべるよ!
15.100てるる削除
とにかく馬鹿すぎるwwそして楽しすぎるww
16.100名前が無い程度の能力削除
最高です
それ以外の言葉が浮かびませんでした
17.90灰華削除
色ボケ野郎多すぎw

永夜抄でどうみても飛んでたから慧音は飛べるでおっけーn・・・
19.100名前が無い程度の能力削除
無茶しやがって…GJ!!!
25.100名前が無い程度の能力削除
思考や行動だけじゃねぇ、正真正銘の淑女ってわけか・・・
こいつは精神的にも変態だ・・・気に入ったぜッ!
30.90名前が無い程度の能力削除
タイトル見て即クリック、内容見て盛大に吹いたw

これが…紳士!
32.80名前が無い程度の能力削除
追伸・・・・・!!!
33.80名前が無い程度の能力削除
弾幕ごっこ参加者は、全員飛べるよ!

あの妄想なのにレミ霊かよw
34.100等品 骸削除
>覚悟はできているだろうな、この色ボケ野郎どもぉぉおおおおおお!!!!!
色ボケ筆頭が何をホザくwwwまぁ何はともあれGJ
36.100名前が無い程度の能力削除
ちょっと待て、紫様にばばあって言ったやつ表に出ろ。
ところで妹様が可愛すぎるのですが。
43.80からなくらな削除
(多分、恐らく、五割、う、す、すまん、やっちゃったかもしれない)
この部分で私のパソコンがソーダまみれになりました
47.100名前が無い程度の能力削除
You、フラマリ書いちゃいなYo!
51.80名前が無い程度の能力削除
>「まとめて愛してやんよ」
で惚れたw
54.80名前が無い程度の能力削除
>桃色思考の者たちに、真の歴史の恐怖を与へ給へ・・・・・・!!
お前もなww
55.100カブトムシ削除
ゆかりんかわいいよゆかりん(*´Д`)ハァハァ

あと、この作品のせいで俺の中のけーねの見方が変わりました
61.100時空や空間を翔る程度の能力削除
サブタイトルは「慧音は紳士だけど変態だよ!」 ですねwwww

あと紅妹を素で呼びに行くなwwwwww
65.90名前を表示しない程度の能力削除
けねゆか・・・だと・・・!?
新境地を見出した気分DA☆ZE!

あと三択どうにかしろwwwwwwww
68.90天福削除
タイトル酷ぇw
それはともかく
なきじゃくる ゆかりんも いいもの ですね
あの夜のことは、きっと慧音が歴史を食べちゃったんだ。
そう思うことにしよう。
72.100名前が無い程度の能力削除
けーね紳士過ぎるwwww

そして妹様おめでとう
75.100Unknown削除
>> きつねうどんか、やはりここはきつねうどんにしてやるべきか

きつねうどんに狐は入ってないよ慧音ww

ネタのチョイスとか、絶妙なキャラ崩壊とか、貴方の作品は素晴らしい
78.100名前が無い程度の能力削除
けーねの頭の中どうなってるんだwwww
83.80名無し毛玉削除
「この宴会参加者の中に常識人はいらっしゃいませんか~」
…という感じでした。
84.100名前が無い程度の能力削除
確かに変態だけど紳士www
テンポもよくて読みやすかった!
87.90名前が無い程度の能力削除
慧音は変態だけど紳士だね!
92.100名前が無い程度の能力削除
ただ一言、面白かった
94.100名前が無い程度の能力削除
れいむがヤな感じのあんちゃんに!
101.100名前が無い程度の能力削除
紳士だけど変態だ!
103.90削除
まっとめって愛して死っぬまで愛して~、っと
おもしろいです!
108.100名前が無い程度の能力削除
ゆかりんが可愛すぎるな。慧音先生はいい仕事しています。