この物語は作品集57の『虹龍の夢、紅龍の未来』等、過去作品の設定を使っています。
また、この物語は独自設定や独自解釈がありますのでご注意下さい。
風に揺らぐ向日葵を眺め、今日も彼女の愉しき一日が始まる。
花の妖怪、風見幽香の普段と何一つ変わらない幻想郷での日常が。
風見幽香の朝は早くて遅い。彼女の眠りは浅くて深い。
日も明けやらぬ早朝に目を覚ますこともあれば、夕刻日が落ちるまで寝ている事もある。
彼女の生き様は泰然自若、どんな時でもマイペースを崩さない。生きたいように生きること、それが彼女の揺らがぬ生き様。
そんな幽香だが、今日はどうやら早く目を覚ましたらしい。
太陽が東の空に昇り始める頃、彼女は既に向日葵達の織成す歌声に耳を傾けていた。
風がそよぎ、葉と葉が擦れ合うその歌が幽香は何より好きだった。その美しき歌声は何千年と聴いてもなお飽きることはない。
きっとこれから先もそれは変わらないだろう。何千年と生を謳歌しようとも、木々や花々の重唱に勝るミュージックなどこの世に存在しない筈だ。
向日葵達の歌声を心行くまで愉しんだ幽香は、軽く笑みを浮かべ、傘を片手にその身体を大空へと翻す。
いつもなら向日葵畑で何をするでもなく時間を潰す事が多い彼女だが、どうやら今日は違うらしい。
近年、滅多な事ではこの場所から動こうとしなかった彼女がこうして何処かに動こうとするのは非常に珍しい。
彼女が何処かへ動く時とは友人に宴会を誘われた時くらいなのだが、今日はどうやらその理由でもないらしい。
大空に身を預け、心地よい風を感じながら風見幽香は瞳を閉じて思考する。
西に行こうか東に行こうか。北へ行こうか南へ行こうか。はてさて、一体何処に向かえば今日一日をより愉しく過ごせる事が出来るだろうか。
どうやら心の中で今日の予定が決まったのか、愉悦に満ちた笑みを一つ零し、幽香は空を真っ直ぐに裂くように翔ける。
目的の地は友人の家。おそらくだらしの無い友人はまだ眠っているだろうが、目的は友人ではなくその娘。
その友人自身をからかうのも悪くは無いが、それ以上に友人の娘は苛めると面白い。
あの生真面目な顔がどんどん困った表情へと移ろい、最後には許しを請う姿など何度見ても堪らない。
昔はあんなに小さかった果実がよくもまあ、あんなにも見事に実ってくれたものだ。その点には友人には感謝したい。
美味い酒はどんなに飲んでも飽きないと酔っ払い鬼が囀っていたように、美味い果実はどんなに口にしても飽きないものなのだ。
飛行を続けて数十分。目的地である友人、八雲紫の住居であるマヨヒガに辿り着き、幽香は笑みを浮かべて扉をノックする。
来客を感じ取ったのか、扉の向こうから聞こえてくる足音。この音は紫の娘の足音ではない。となると、その娘の娘か。
「はい、どなたでしょう…あにゃ?幽香様?」
「ふふ、おはよう橙。良い朝ね」
扉の向こうから現れた少女、橙に幽香は笑みを浮かべて優しく頭を撫でる。
幽香に頭を撫でられ、橙は最初は少し驚いたような表情を見せたものの、彼女もまた笑みを浮かべて幽香の手を受け入れる。
橙がこうして幽香に撫でられるのは別に今に始まったことではない。
マヨヒガに紫の友人(幽々子やら萃香やら幽香やら)が来た時は、大抵このように頭を撫でられる。
それは橙が紫の孫のような存在であり、幼く、可愛らしいというのが理由のように考えられるが、どうやら幽香だけは違うらしい。
「今日は紫様にご用件ですか?紫様ならまだお休みの時間なのですが…」
「紫はどうでもいいわ。今日は藍に用があって来たのよ。
そういう訳で上がらせてもらっても構わないかしら?」
「あ、はい!それでは私はお茶の準備をしてきます!」
元気に返事を返して、橙はトトッと奥の部屋へと走っていった。
その後姿を眺めながら幽香は笑みを一つ。それは決して先ほど橙に浮かべていたような聖母の微笑ではない。
己の欲望に染め上げられた、まさしく風見幽香その人らしい微笑で。
「ふふ…汚れを知らない純粋無垢な娘。まるで二千年前の藍のよう。
あの純白な心をいつの日か蹂躙する事が出来るかと思うとゾクゾクするわね」
どうやら幽香が橙を可愛がっているのは色々と己の為らしい。
少女が自分の事を信じ、心を寄せたところで崖っぷちから叩き落す。それが彼女の目的なのだ。
己の欲望の為に橙を可愛がる幽香。まさにドSの所業である。そんな彼女の犠牲者(過去形)がこの屋敷に一人。
橙についてゆき、客室を兼ねている居間に入室した幽香だが、その部屋には橙のほかに先客が居た。
その人こそが本日の彼女の精神サンドバックのメインターゲット、八雲藍その人である。
居間で主人が愛用しているコタツの前に腰を下ろし、のんびりお茶を啜っていた藍だが、
人の気配を感じ、その人物を橙と勘違いしたのか、そのまま言葉を発しながらゆっくりと幽香のほうへと視線を向ける。
「橙、客人は一体誰…ゆ、ゆゆゆ幽香様!?どどど、どうしてこちらに…」
「おはよう、藍。お邪魔しているわよ。
しかし私を前にして腰を下ろしてのんびりお茶を啜ってるなんてねえ…
私相手には片手暇の挨拶で充分という事かしら。貴女は何時からそんなに偉くなったのかしらね」
「あ、あわわわ…た、大変失礼しました!!」
顔面蒼白、それが今の彼女の状態を表すには最も適切な表現かもしれない。
幽香の言葉を受け、藍は慌ててその場に立ち上がり、頭を必死に幽香へ下げて許しを請う。
瞳には怯えの色が映り、そんな藍の姿が幽香のサディスティックな心を更に揺さぶる。本当、紫は最高の娘を育て上げてくれたものだと。
「まあ、良いわ。急な来訪だもの、紫も寝ていて貴女も今が唯一楽に出来る時間だものね。
心が緩みきって客人への礼節を欠いた事も仕方がない事かもしれないわ」
「そ、そうですか…それでは先ほどの非礼はどうか水に流して頂ければ…」
「けれどケジメは大事よね。紫や萃香が貴女に甘い分、貴女の躾は私の役目。
最近私と顔を合わせていないからと言って府抜けていたわね?この駄狐が」
「はうっ!!!」
藍の祈りは神へと通じることは無く、彼女の希望は幽香の愉悦に染められた笑顔によって断たれることになる。
幽香は右手に持っていた傘を迷うことなく藍の頭に叩きつけ、室内にスパーンと心地よい音が鳴り響く。
それは幽香の藍に対する愛情を込めた躾。否、愛情半分己の欲望半分といった割合だろうか。
とにかく藍に対する幽香の気持ちが込められた愛の鞭は、一度二度と小気味良く音を響かせ藍の頭に振り下ろされる。
「い、痛いです幽香様!!!お願いですから許してっ!!許して下さいっ!!!」
「痛くないと躾にならないでしょう?貴女の娘がこの部屋に来るまで説教は続行よ。
ウフフ…ほら、泣きなさい。喚きなさい。貴女の心地好い悲鳴を私に聴かせて頂戴」
「そ、そんなあああ!!?ちぇーーーーーん!!!早く来てくれええええええーーーー!!!!!」
その場に屈み、娘に対して必死に救いの声を上げる藍。その情けない姿は何処となく彼女の母の姿を想像させる。
こういう姿を見る度に幽香は笑みを浮かべずにはいられない。やはりこの娘はあの八雲の妖怪の娘なのだと。
蛙の子は蛙とは良く言ったもの。血は違えど藍は確かに八雲の人間なのだ。
藍の悲鳴が耳に届いたのか、この部屋に近づく足音が聞こえ、幽香は傘での躾を止める。
そして橙がこの部屋の扉を開けたときには先ほどと何ら変わらぬ様子で笑顔を浮かべるだけだ。
「どうしました藍様っ!!?」
「ふふ…何でもないのよ、橙。ただちょっと藍が急に変な声を上げただけ。
どうやら久々に私に会えたことが嬉しいみたいでね。本当、仕方の無い娘だわ」
「そ、そうなんですか藍様?」
「あ、ああ…幽香様に久々にお会い出来て思わず悲しみの涙があ痛たたたたたたたたた!!!!!!!!!!」
「ら、らんしゃま!?」
「ち、違う違う…今のは幽香様にお会い出来た事に対する嬉しさの余り奇声を上げてしまったんだ…
はは、だから橙、私の事は気にせず幽香様にお茶の準備を…」
「???わ、分かりました」
不思議そうに首を傾げながら、橙は居間を後にした。
その姿を見届け、幽香はクククと楽しそうに笑いながら、足を藍の尻尾の上から退けた。
ちなみに先ほどの藍の悲鳴はご覧の通り、幽香が彼女の尻尾を躊躇することなく思いっきり踏みつけたからである。
「そう、貴女は私に会うと喜びの余り奇声を上げるのね。本当に可笑しな娘」
「は、ははは…」
引き攣った笑みを浮かべたまま藍はその場に何とか立ち上がる。
ただ、腰が見事に引けている辺り、尻尾を全力で踏まれた恐怖が未だに消えてはいないらしい。
楽しそうな笑みを絶やさない幽香に、藍は相変わらずぎこちない笑顔を貼り付けたままで尋ねかける。
「と、ところで幽香様、本日突然の来訪のご用件は何でしょうか。
紫様なら太陽が昇りきる時刻までは目を覚まされないと思いますが…」
「紫に用があるならこんな時間に来ないでしょう。用があるのは紫ではなく藍、貴女よ」
「わ、私ですか?それで、私に何用が…」
「急に貴女を虐めたくなったのよ。藍の泣き叫ぶ顔が見たくなったからここに来たの」
「すみません、紫様に言い付けられていた仕事を思い出したので私はここで……ぐえっ!!」
身の危険を感じ取り、即座に脱出を試みた藍だが、今回もまた彼女の望みは叶わない。
立ち上がり逃げようとした藍の首に、幽香はフック状になっている傘の柄部分を迷うことなく引っ掛けたのだ。
前に進もうとしていた藍の首元にそんな物を引っ掛けられたのだから、当然首元は急な力で締め付けられる訳で。
最強の妖獣という称号が霞んで見えるほどに藍は情けない声を上げてしまっていた。否、正確には上げさせられたのだが。
「冗談よ。どうして私が可愛い可愛い貴女を虐めなくてはならないのかしら。
私は紫や萃香に負けないくらい貴女の事をこんなにも愛していると言うのに」
「ぐ、ぐるじいでずゆうがざま…あががががが」
ジタバタともがき苦しむ藍の首から傘を外し、幽香は満足そうに軽く息をつく。
どうやら先ほどの躾と今の虐めで精神的に相当すっきりしたらしい。本当、藍にとっては不幸以外の何物でもないのだが。
「とりあえず朝食を用意して頂戴。今朝はまだ何も口にしていないのよ」
「ゲホッ…わ、分かりました…今しばしお待ち下さい、すぐに用意致しますので」
自分勝手な要求にも藍は何一つ反論することなく言われるがままに腰を上げる。
藍が室内から去り、幽香はコタツに腰を下ろし、のんびりと鼻歌を口ずさみながら朝食を待つことにする。
その間、先ほどのように橙がお茶を幽香の前に運んで来た為、幽香は橙からお茶を受け取り口にした。
橙は再び台所へ藍の手伝いへと戻って行った為、室内に残ったのは幽香一人。
朝食の訪れを待つ間、何をしよう。はてさて、寝ている友人の顔に悪戯書きでもしてみようかしら。
そんな下らない事を考えていた彼女だが、再び部屋の扉が開かれた事に気づき、そちらの方へと視線を向ける。
居間に現れた新たな人物の姿に、幽香は少しばかり目を丸くする。そこに居たのは彼女にとって以外な人物だったからだ。
「…霊夢?貴女どうしてこんな場所に居るの?」
「…あのね、それはこっちの台詞よ。どうしてアンタが朝っぱらからマヨヒガなんかに居るのよ。
向日葵畑から一歩も動こうとしない先天性引篭もり症候群のアンタがね」
扉の向こうから現れたのは今代の博麗の巫女にして歴代最高の才を持つとされる少女、博麗霊夢。
ただ、今の姿はそんな博麗の巫女とは程遠い。藍からの借り物なのか、寝巻き代わりのブカブカな浴衣を体に纏い、
髪はところどころが跳ね返っていて、顔はまだ眠気という名の魔法に完全に捕らわれている。
霊夢は大きな欠伸を一つ噛み殺し、いそいそとコタツの中へと身を包ませる。
最近までは紫専用と化していたこのグータラコタツだが、彼女が使っていない間もこうして霊夢が愛用するようになっていた。
質問を質問で返してくれた霊夢に、幽香は少しばかり面白くなさ気な表情を浮かべたものの、気にすることなく言葉を紡ぐ。
「私は紫の友人だもの。友人の家に遊びに来る事に一体何の不思議があるのかしら」
「…嘘くさ。というかアンタに友達なんて居たのね。意外過ぎて少しばかり目が覚めてしまったじゃない。
私はてっきり『私最強。最強=孤高。だから私は一人でいいの』って感じだと思ってたわ」
「何よその短絡的かつ馬鹿っぽい思考回路は。人を単細胞扱いしないで頂戴。
八雲紫を始め、気に入った奴とは付き合うわよ。ただ、友人だからと言って貴女達のような弱者同士の
仲良しごっこと一緒くたにして貰っては困るけれど」
「大して変わらないでしょ」
「大違いよ。だって私の友人はみな私と命の奪い合いを一度は経験した仲ですもの。
フフフ…たった五人。私と本気で殺し合いをして死ななかったのは現存する中ではたった五人だけなのよ?
まあうち二人は幽霊だから生きていると言っていいのか分からないけれど」
「…アホらし。ていうかアンタは五人しか友人がいないんかい。アリス以下のロンリー野郎ね」
「虐める相手なら星の数ほどいるんだけどね。本当、最近の玩具はすぐに壊れるから駄目ね。
…それで?貴女はどうしてマヨヒガに居るのかしら。博麗神社はとうとう取り潰しになったのかしら?
という事は今の貴女は紫の小間使い?それともただの無職?」
「勝手に人を小間使いや無職にするなっつーの。博麗神社は健在よ、一応。
紫がこっちに住んで良いって言ってくれたから、巫女としての仕事がオフの時はこうして住まわせて貰ってるのよ。
ここなら生活費かからないし勝手にご飯は出てくるしお風呂は沸いてるしお布団は気持ち良いし」
「ふーん…本当にそれだけ?」
「…それだけよ。何その意味深な言葉。変な勘繰りは止めて貰えるかしら、気持ち悪い」
下らないとばかりに話を打ち切る霊夢だが、彼女が一瞬目を泳がせた瞬間を幽香は決して見逃さなかった。
どうやら彼女がわざわざマヨヒガに寝泊りしているのには、やはり他の理由があるらしい。それは幽香の予想通りの事。
幽香にとって彼女とは…否、博麗の巫女とは長年の付き合いとなるが、何の理由もなく彼女が他人に依存したりするとは思えない。
ましてや紫に借りを自分から作るなど。ならば何か面白い事情があるに違いない。
このマヨヒガから自分から離れられない、そんな素敵な素敵な暇つぶしになりそうな事情が。
その考えに至った時、霊夢には見えない程度に幽香は唇の端を歪ませる。見る人が見れば分かる、サディスティックな微笑み。
たった一言。霊夢の放った、たった一言とその言動から彼女はここまで見抜いてみせたのだ。
これぞ風見幽香の真髄にして本能に殉じた力。別名、他人の弱みを簡単に見抜く能力である。実にドSである。
これ以上の会話は不要と判断したのか、幽香は楽しそうに黙したまま藍が食事を運んでくるのを待つ。
その間は思考回路を目の前の巫女服を脱いだ浴衣少女へと集中させる。さて、一体何が彼女をマヨヒガに留めさせている。
その答えを探していた幽香だが、解答は悩み始めて数十秒といったところで天から転がり落ちてくることになる。
部屋の扉が再び開かれ、室内に藍が現れた時、霊夢の様子が若干変化を見せたからだ。
「幽香様、お食事をお持ちしました…っと、何だ。霊夢も目を覚ましていたのか」
「ちょっと何その言い方。まるで私が目を覚ましちゃ悪いみたいじゃない」
「違う違う、そういう意味じゃない。そんな穿った見方をするな。
事前に知っていたらお前の分の食事も一緒に運んできたのにと思っただけだ。お前も腹が減ってるだろう?」
「…そうね、今のは確かに私が悪かったわ」
それは二人の交わす何気ない会話。いつもと変わらぬ日常。
だが、それを横で聞いていた幽香にとってはまさしく非日常以外の何物でもなく。
幽香は二人の間に何も口を挟むことなく、霊夢の表情の変化にじっと注視する。藍は普段と変わらないようだが、もしやこれは――
運んできた食事を幽香の前に並べてゆく藍だが、ふと何かに気づいたのか、その手を止めて霊夢の方をじっと見つめ始める。
そんな藍の視線に気づいたのか、霊夢も視線を藍の方に向け、何事かと彼女に口を開く。
「何よ、人の顔をじっと見て」
「…はあ。霊夢、少しの間じっとしていろ」
「は?一体どうし…ちょ、ちょっと藍!?」
霊夢が驚いたのも無理はない。大きくため息をついた後、藍は突如霊夢の背後に回り、その場に腰を下ろしたのだ。
何事かと霊夢が取り乱したときには、藍は既に行動へと移っていた。懐から櫛を取り出し、乱れていた霊夢の寝起きの髪を優しく梳き始めたのだ。
突然の行動に霊夢は当然慌てふためく。それも仕方のない、というよりも当たり前だ。
目覚めて間もないポケポケした頭でいたところに、藍のこのトンでもない一撃だ。平然としていられる訳がないのだから。
「ら、藍っ!!止めなさいよっ!!恥ずかしいってば!!」
「良いから大人しくしてろ。
…全く、仮にも年頃の娘が客人の前で髪を乱している方がよっぽど恥ずかしいだろうに。
ああもう、あんまり暴れないでくれ。橙だってこんなに暴れたりしないぞ」
「きゃっ!!?ば、馬鹿!!あああアンタ一体何処を触ってるのよ何処を!?
ていうか近!?藍近過ぎ!!頼むから離れ…ひゃうっ!?」
「何処も触ってない。それと変な声を出すな変な声を」
藍に抱きしめられたまま、髪を梳かれる霊夢。必死の抵抗を試みるも、人間では妖獣の力の前には敵わない。
やがて抵抗を諦め、霊夢は顔を耳まで真っ赤に染め上げたままに、ぐたりと藍に為されるがままにされていた。
その姿を見つめ愉悦の笑みを浮かべている女性が一人。それは勿論、風見幽香に他ならない。
にんまりと口をにやけさせ、幽香は一人心の中でそっと呟いた。『面白い玩具、みーつけた』と。
霊夢の髪を綺麗に整え、満足したのか藍は霊夢を腕の中から解放し、その場から立ち上がり再び幽香の食事の用意を続ける。
そんな藍に、幽香はさり気ない様子を振舞って彼女に幾つか疑問をぶつけてゆく。
「ねえ、藍。貴女、いつからこんなに霊夢と仲良くなったのかしら?」
「は?霊夢とですか?
何時からと申されましても、知り合った時と何も変わらないと私は思うのですが」
「へええ…成る程成る程。つまるところ霊夢の一方通行な訳ね。フフフ、それはますます好都合。
藍、食事の用意が済んだら下がって構わないわ。貴女も紫に言いつけられた仕事があるのでしょう?」
「へ…?ほ、本当に良いんですか?
このまま仕事に向かおうとした私の背後にマスタースパークなんてオチはありませんよね?」
「あら?それが貴女の望み?ならばしっかり叶えてあげないとね。
悪いけれど私のマスタースパークは黒白魔法使いの比では無くてよ?」
「し、失礼しましたっ!!!!」
妖艶な笑みを浮かべて告げる幽香に、藍は慌てて頭を下げて台所のほうへと引っ込んでいった。
藍が部屋から出て行ったのを見届けた後、幽香は残る獲物の方へと視線を向ける。
飢えた獣が品定めをするかのような視線に、霊夢は思わず背筋に冷たい感覚が走ってしまう。
まあ、目の前の妖怪はそんな飢えた狼よりも凶暴な生き物であるが。
「な、何よ…その鬱陶しい視線は…かなり不快なんだけど」
「ふふ、うふふ…別にい?ただ、博麗の巫女も可愛くなったものねと思っただけ。
ふ~ん…成る程ねえ…他の誰でもなく貴女がねえ…本当、世の中って何が起こるか分からないものねえ」
「…あああああ!!!!うざったい!!!言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ!!?
奥歯にモノが挟まったようでイライラするのよ!!この性悪妖怪がっ!!!」
「あら、言っていいの?なら貴女の望み通りハッキリ言うけれど、藍の一体何処に惚れた訳?」
「んなっ!!!!?」
直球一閃。幽香の放った言葉の塊に、霊夢は驚きの余りパクパクと口を開閉させるしかなかった。
どうしてその事を。まさに表情だけで強くそう語りかけてくる霊夢を見て、幽香はククッと笑みを零さずにはいられない。
そう、その顔。その顔が見たかったのだ。先陣は切った、後は一気に畳み掛けるのみ。
「うふふ、まさかまさか他ならぬ貴女が八雲の狐に恋をしたなんてねえ。
無愛想なくせして可愛いところもあるじゃない。ちなみに今の貴女の顔、凄く笑えるわよ?」
「うううう五月蝿い!!!アンタには関係無いっていうか私は別にそんなのじゃない!!!」
「そんなのじゃない?さっき藍に抱きしめられたくらいで、あんなに無様に取り乱していた貴女が?
『ら、藍っ!!止めなさいよっ!!恥ずかしいってば!!』。恥ずかしいのは見てるこっちの方だけれど」
「うがあああああ!!!!いちいち私の声真似なんかするなあああああ!!!!!
ていうか殺す!!!マジ殺す!!!むしろ七回くらい殺す!!!」
「あらあら。人に向かって殺すだなんて物騒な巫女ね。
物騒で野蛮で何より品が無い。本当、先祖の顔が見てみたいわ」
「見てるでしょ!?むしろアンタ一度退治されてるでしょ!?きっちりやられてるでしょ!?」
「で?藍の一体何処が好きになったの?尻尾?尻尾に惹かれたの?この尻尾フェチ巫女」
「聞きなさいよ人の話を!!!!!!誰が尻尾フェチ巫女よ誰が!!!!!」
バンバンとコタツを叩いて抗議する霊夢涙目。それを見てニヤニヤ笑う幽香。まさしくサディスティック幽香その人である。
人の感情を逆撫でする事に関しては恐らく幻想郷で彼女に敵うものなどいないのではないだろうか。
フーッと猫のように威嚇する霊夢だが、幽香は気にすることなく言葉を続けてゆく。本当に心底サドである。
「まあ藍の事を好きなったとしても、私に対してそんな態度をとるような娘に藍を渡すのはねえ…」
「はあ!?それこそ何でよ!?
百歩譲って私が藍の事を好きだったとして、どうしてアンタの機嫌を取らなきゃいけない訳!?」
「だって私、あの娘の母親ですもの。嫁入りするときは姑を大事にしろと教えられなかったのかしら?」
「…頭本気で沸いてるの?藍の母親は紛う事無く紫でしょうが。
そんな滅茶苦茶な発言を紫が聞いたら本気で怒るわよ、絶対。アイツ親馬鹿の塊だもん」
霊夢の言葉に、幽香は相変わらずの笑みを浮かべたまま何も答えない。
まるで霊夢の発言に対し『それで?』とでも言っているかのようで。ぶっちゃけ、相当腹立たしい笑顔で。
幽香に対して霊夢の怒りが有頂天に達そうかという刹那、幽香は仕方ないとばかりに霊夢に言葉を紡ぐ。
「ねえ霊夢、八雲紫はスキマの妖怪。あれが冬の間はどうして過ごしているか知ってる?」
「はあ?何を今更な事を…紫なら冬は間違いなく冬眠してるでしょ、あのグータラ妖怪」
「そうね、冬眠してるわよね。それじゃ次の質問。
今から二千年も前の事。紫が冬眠している間、幼い藍の面倒を見ていたのは一体誰だったでしょう?」
「………嘘」
――冗談でしょう?そう訴えかける霊夢だが、幽香は悠然と微笑んだままで解答を返さない。
それはすなわち肯定の意に他ならない。その事が霊夢にはどうしても信じられなかった。
子育て?誰が?風見幽香が?ドSで超サディスティックで人の泣き顔を見るのが三度の飯より好きな性悪妖怪が?
もし彼女の言うことが本当だとしたら、それは大げさに言ってしまえばチルノにだって子育ては可能だと言う事。
疑心に満ちた視線を向け続ける霊夢に、幽香はやっぱりねとばかりに息をついて、楽しそうに説明を続ける。
「嘘だと思うなら後で藍に聞いてみなさいな。さぞ涙を零して語ってくれるでしょうよ。
私と萃香にどれだけ可愛がられたか、それこそ夜明けまで語っても語り尽くせない程に
私達への謝辞を述べ続けるんじゃないかしら」
「萃香まで!?…うわあ、ますます胡散臭い。アンタや萃香に子育てなんか出来る訳ないでしょう。
大体アンタの言うことが本当なら、何で藍の面倒なんか見てるのよ。
こういう言い方はアレだけど、何も知らない力も持たない子供なんてアンタが一番嫌いな存在じゃないの」
「ふふ、フフフ…あは、アハハハハハっ!!!!」
霊夢の言葉に幽香は笑いを堪える事が出来なかった。それは彼女の言葉があまりに見当違いなものだったからだ。
驚く霊夢に、幽香は見るもの全ての肝が心底震えるような、そんな悦楽に満ちた笑みを浮かべ、言葉を紡ぐ。
「それは誤解だわ、霊夢。私は子供が好き。大好きで大好きで仕方が無いのよ。
子供は良いわ。純粋な心は未踏の雪原のように白く、抱く可能性はどこまでも真っ白なキャンパスのよう。
そんな触れてはならぬ聖域を私が足を踏み入れる…ザックザックと無慈悲に足跡を残してゆくの。
藍は本当に純粋な娘だったからね。あの娘の顔が信頼から恐怖に変わるその表情、それはもう言葉に出来ない程に最高だったわよ」
「…今更だけど、やっぱりアンタの趣味って本当に最低で最悪よね。
ていうか何処が親なのよ何処が!!それはつまり紫がいない間に藍を虐めてただけじゃない!!」
「あら、失礼ね。あの娘に戦闘のイロハを教えたのは他ならぬ私よ。
紫は本当に藍に甘いからね。命に関わる様な訓練なんてさせようともしない。
だから代わりに私が請け負ってあげたのよ。藍の命に関わるような命の遣り取りの仕方を色々とね。
私も本当は嫌だったのよ?でも他ならぬ可愛い可愛い藍が強くなる為には仕方の無いことだもの」
「その割には嬉々として私に語るわね。
…でもまあ、今の発言で何となく理解が出来たわ。アンタに対してどうして藍があんなに低姿勢だったのかが」
「私の事を敬愛してやまないみたいね、あの娘」
「怯えてるのよ普通に!!!」
「それで?貴女は藍の何処に惚れたのよ?話してみなさいよ、このもふもふフェチ」
「話を逸らすな!!!!もふもふフェチとか言うなああああ!!!!!!」
「ところで霊夢、貴女なんで無職なの?」
「無職じゃない!!!ただの居候だっつってんでしょうが!!このダラズ!!!」
激昂する巫女をあれよあれよと手玉に取るドS妖怪。愉悦を漏らす幽香のその笑顔が殊更に憎らしい。
ついに我慢の限界が訪れてしまったのか、コタツをガンと全力で叩き、霊夢はその場に立ち上がる。
その瞬間を待っていたかのように、幽香は霊夢に対してとんでもない行動に打って出た。
先ほどまで藍の頭を叩いていた傘を逆さに持ち、傘の柄部分を霊夢の着ている浴衣の帯に引っ掛けたのだ。
ただでさえぶかぶか、それも寝巻きとして着流している簡易浴衣の帯だ。きつく締められている訳がない。
傘のフック部分を引っ掛けられた腰帯はするすると解かれてゆき、束縛を失った浴衣は当然身体との密着する力を失う訳で。
ぶかぶかな浴衣は霊夢の肌を離れ、乙女のその身を大気に晒す。寝起きなものだから、その下にはショーツ以外何も着用しておらず。
「な…」
「まあ大胆」
何が起こったのか全く理解出来ていないのか、呆然と立ち尽くす霊夢に幽香はニヤニヤと笑みを浮かべて視線を送る。
だが、彼女の真のサドっぷりはこんなものでは終わらない。幽香の耳に聞こえるはこの部屋へと近づく足音。
タイミング的には寸分も狂いは無い。さあ、後は導火線に火をつけるだけ。楽しい楽しいショータイムの時間の始まりだ。
「霊夢、貴女もう少し栄養をしっかり取ったほうが良いんじゃないかしら?
それだけ『小さい』と藍の心を奪うのにさぞや苦心してるでしょうね。
でもまあ、藍と足して二で割って丁度良いくらいだと考えれば相性は存外悪くないかもしれないわねえ」
「こ、こんのクソ妖怪がああああ!!!!!!!!!!!!!今日という今日はもう絶対許さな…」
「失礼します、幽香様。
いやいや、すまんな霊夢。幽香様に気を取られてお前の分の朝食をすっかり忘れていたよ」
霊夢が幽香に掴み掛かろうとした刹那、扉を開き申し訳なさ気に笑う鈍感狐が一匹。
その手に持つはお盆の上に乗せられた朝食。彼女の発言から察するにそれは霊夢の分の朝食なのだろう。
予想外の人物の再登場にカキンと氷漬けにでもされたかのように固まる霊夢。勿論浴衣の前は開けたままだ。
そんな霊夢に気づき、藍は彼女の方へと視線を向ける。ちなみに藍の視線移動は勿論霊夢の顔→胸→顔の順である。
固まっていた霊夢の思考回路が現状を把握しだしたのか、少女の顔はぐんぐんと熱を帯びていき、それこそ真っ赤に染まっていく。
もしこの場にレミリアなんかが居たりしたら、霊夢の顔を見て『紅い月』などと比喩をして笑っていたりしたかもしれない。
いくら普段がグータラとはいえ霊夢とて一人の少女。好きな相手に己の裸体(上半身だけとはいえ)を見られ、平然と出来る訳がないのだ。
そんな精神的にノックアウト寸前の霊夢に、マヨヒガ家のお稲荷様は相も変わらず素っ頓狂な事を発言してくれやがった。
「…霊夢、いくら根がだらしないとはいえ、客人の前で己の裸体を晒すのはどうかと私は思うが」
「――っっっっっ!!!!!!うがあああああああああ!!!!!!!!」
「れ、霊夢!?ちょっと落ち着…あがあっ!!!?あ、熱ーーー!!!!!!?」
恋する乙女に狼藉を働く者は死あるのみ。これ宇宙の真理ねってけーねが言ってた。
羞恥心やら何やらでまるきゅー状態だった霊夢に対し、少しも空気を読まない藍の発言はあたかも風船を針で突くような行為。
藍の言葉にぷつんと何かが切れた霊夢は、幽香が先ほどまで飲んでいたお茶が入っている湯飲みを掴み、
それを藍の顔面向けて思いっきりスローイン。その投擲された湯飲みは非常に球質が重く、何とか回避しようと試みて頭を必死に横にスライドさせた瞬間、
その湯飲みは鋭く横滑りをしたと後の藍は語る。球速的には多分139km/hくらいだろうか。どうでもいいことだが。
霊夢の投げた湯飲みは見事藍の頭に直撃し、橙の手によってアッツアツに熱されたお茶によって狐は本日何度目か分からない悲鳴を上げる。
その間に霊夢は顔を真っ赤にしたまま自室へと戻っていってしまった。
気が動転している霊夢だが、部屋に戻る前に藍の手から自分の朝食をしっかり分捕っていく辺り、流石と言っておこう。
霊夢が去った今、部屋に残ったのはお茶塗れになってもがき苦しむ藍と
そんな姿を見てこれ以上ない程に美しい笑みを浮かべる幽香。その時の幽香の微笑みは誰もが聖母と見紛うが如き清廉な笑顔であった。
ただまあ、その笑顔の理由がこの惨状によるもの、しかもその原因が風見幽香本人である事を知らぬ者が見ればの話だが。
「ううう…し、死ぬかと思った…霊夢の奴、一体何だって言うんだ…」
「さあ?あの娘も色々と難しい年頃なのではなくて?
本当、人間というものはつくづく面倒で度し難い生き物ねえ、フフ…」
「最近ようやく霊夢の機嫌が良くなったと思っていたばかりだと言うのに…
幽香様、もしかして霊夢に何か余計な…ではなく、彼女の癇に障るような事を仰ったのではないですか?」
「今は気分が良いからね。最初の部分は聞かなかった事にしてあげる。
私はただ霊夢に教えてあげただけよ?貴女がまだ幼い頃に紫が冬眠している間、
私がどんなに愛情を込めて貴女の事を可愛がってあげていたのかをね」
「紫様がお休みされている間、それも私が小さい頃ですか…それはまた昔のお話ですね」
箪笥の中からタオルを取り出し、お茶で濡れ鼠になった頭を拭きながら、藍は幽香に言葉を返す。
そして心の中で記憶の糸を辿り、ゆっくりと幽香との思い出という名の書物のページを開いてゆく。
紫様が冬眠されたとき、幽香様と萃香様は自分の面倒を見て下さったものだ。お二人には心から感謝せねばならぬ。
瞳を閉じれば何時だってその光景を思い出す事が出来る。幽香様が私を可愛がって下さった懐かしき日々が。
まだ一人で食事すらままならぬ自分に、幽香様はいつも手料理を作って下さったものだ。
『うえええ…ゆうかさま…らんはにんじんがきらいです…おいしくないですにんじん…』
『あらあら?人様が作ってくれた物は残さず食べるように紫に教育されなかったのかしら?
ほら、遠慮なくしっかり食べなさいな。貴女は成長期だからしっかり食べないと駄目よ。
ニンジンのサラダにニンジンの煮物、ニンジン混ぜご飯にニンジンの掻き揚げ。デザートにはニンジンケーキも用意してあるわよ?
言っておくけれど、少しでも残したりしたら…うふ、ウフフ』
まだ一人で妖怪の跋扈する野を生きられぬ自分を、幽香様は鍛えて下さったのだ。
『こわいいいい!!いやああああ!!!ゆうかさまああ!!!こわいのいやああああ!!!!!!』
『何言ってるのよ藍。たかが滝から叩き落されるくらいで怖がっているようでは八雲紫の娘とは言えないわよ?
本当は私だってこんなことはしたくはないの。でも、藍を強く育てる為には仕方のない事だものね。
うふふ、本当に悲しいわ。という訳で覚悟が出来たらさっさと飛び降りなさいな』
『びええええええええええ!!!!!ゆかりしゃまああ!!!ゆかりしゃまあああ!!!!!!!』
また、幼いゆえに命の遣り取りの意味も恐怖も知らぬ自分に、幽香様は自ら戦場に降り立ってその意味を教えて下さった。
『ほーら!!藍、ちゃんと見てる?これが妖怪の血よ?身の程を知らぬ愚か者の汚らわしき血液なのよ。
心臓を捻り潰すとね、どんな生き物だってこんな風にあっけなく死んでしまうの。
うふふ、無様よね。格好悪いわよね。愚かよね。こんな俗物、生きているだけ無駄と言うものよ?』
『もういやああああ!!!かえる!!!!ゆかりしゃまのところにかえる!!!!!
ゆうかさまこわい!!!!!らんはゆかりしゃまのところがいいです!!!!うええええええん!!!!』
『何を言っているのよ藍、これからが一番良いところなんじゃない。
ほら藍、今から綺麗な花火を見せてあげるわ。真紅に染まるそれはとてもとても綺麗な花火をね。
うふ、うふふ…あは、アハハ!!アハハハハハハハハハハっ!!!!』
恥ずかしい話だが、まだ夜中に一人でトイレにすら行けなかった情けない自分に、
幽香様は嫌な顔一つすることなく付き添って下さったのだ。
『ねえ藍知ってる?実は夜に厠に行くとそれはそれは恐ろしい妖怪が出るらしいのよ?
もしこんな暗い中で一人っきりになったりしたら、藍なんかその妖怪に食べられちゃうかもしれないわよ?
それこそ耳の先から尻尾までね。だから絶対私から離れちゃ駄目よ?うふふ…』
『ううううう…ら、らんはゆうかさまからはなれません…ぜったいぜったいはなれません…』
『そう、それは良い子ね。
ところで藍、私ちょっと急用を思い出したから先に戻ってるわね。
怖い怖い妖怪に食べられないように頑張って一人で厠に行ってきなさいね』
『ふええええ!?ま、まってくださいゆうかさまっ!!!
う…うえええ…いやああああ!!!ひとりいやああああ!!!!こわいのいやあああああ!!!!!』
それは藍にとって素敵な素敵なマイメモリー。それは藍と幽香の二人だけの大切な思い出。
その筈なのに幽香との記憶を一つ思い起こす度に、藍の顔色が真っ青に変わってゆくのは何故だろう。
というか何か震えだしてる。耳先から尻尾まで凄くプルプルしてる。つーか泣いてる。
どうやら過去の色々と酷すぎてR-18指定モノと言っても過言ではない、そんな悲惨な幽香との
思い出によって藍のトラウマスイッチがONへと切り替わってしまったらしい。
「こわいのいや…こわいのいや…たすけてゆかりしゃま…ようかいはいや…」
「あらあら?急に顔色が悪くなったかと思えば何をブツブツと。
そんなに私との思い出は貴女にとって素敵な思い出だったかしら。だとしたら私も嬉しいわ」
その場に体育座りをして過去の記憶に震えマジ泣きしてる藍。
そんな藍に笑みを浮かべて優しくとんでもないことを告げる幽香。本当、何処までもサディスティックである。
藍のトラウマスイッチを作ったのは他ならぬ彼女だと言うのに。無論、それを分かった上での発言なのだが。
がくがくと震える藍を見つめて心を愉悦に満たす幽香だが、そんな時間が長くは続かない事は百も承知だ。
そう、このような状況を眠っていても感知出来るほど、それほどまでの親馬鹿な人物こそがこの娘の母親なのだから。
幽香の目論見通り、藍の隣にいつの間にかパックリとスキマが生じており、そこからにゅいっと現れる一人の人物。
「藍が呼んでいると聞いて寝起きで飛んできました!!!!」
「藍が震え始めて十秒と八か。今日はいつもより早いじゃない、紫」
スキマから現れた友人、その人物こそが八雲藍の母にして最強の妖怪、八雲紫である。
本人の言葉通り、どうやら本当に寝起きで飛んできたらしく、紫の髪はところどころが跳ねている状態だった。
けれど、本人はそんな事は少しも気にすることなく何かに怯え泣いている藍を見つけ、表情を歪めて幽香に食って掛かる。
「ちょっと幽香!!!貴女誰の許可を得て私の可愛い藍を泣かせているのよ!?
私の大切な藍を泣かせるなんて…貴女一度意識保たせたままで幽々子のところに送りつけるわよ!?」
「どうやら寝起きで頭が回ってないみたいね、紫。現状の藍をよく御覧なさいな。
むしろ貴女は私に感謝する必要があるのではなくて?」
激昂する紫に、幽香は口元を微笑みに歪めて指摘する。
怒りが収まらないままに、紫は彼女の指摘のままに藍の方へと視線を送る。
「ゆかりしゃま…ゆかりしゃまあ…えっぐ…ぐすっ…」
トラウマスイッチが完全に入りっぱなしの藍は、紫を見つけた事に安堵したのか
彼女の足元に抱きついて必死に何度も紫の名前を繰り返していた。それは普段のツンツンしてる冷静な藍の姿とは程遠い姿で。
今の藍はまさしく紫だけを見つめて紫だけを頼り、そして紫だけに心を委ねている幼子と同じに他ならない。
となれば紫の心は当然ヘブン状態&突撃ラブハート。今の藍はいわゆるところの『好き好き☆ゆかりしゃまモード』なのだ。
「わ…我が世の春が来たあああああああああ!!!!!!!!!!!」
「とりあえず落ち着いて鼻血を拭いなさい、紫」
幽香の言葉も耳に入らないのか、紫は藍を抱きしめ頬を摺り寄せ大絶賛興奮中。
ちなみに彼女の鼻から滴るものは、ゆかりんの一ファンとして幽香のような直球な表現は控えさせて頂きたい。
興奮冷めやらぬまま、藍を抱きしめて紫は軽く咳払いをし、幽香にそっと言葉を紡ぐ。
「ねえ幽香。泣き叫ぶ我が娘をあやすのは当然親の務めよね?」
「当然ね。可愛い我が娘を放っておくなんて親失格も良いところだもの」
「そうよね、当然よね。うふ、うふふふふ…さあ藍、ママが久しぶりに一緒にネンネしてあげますからね~。
ネンネだけじゃ寂しいからその前に一緒にお風呂にも入りましょうね~」
藍を抱き寄せ、顔をこれ以上ないくらいに蕩けさせて隙間の中へ戻ってゆく紫。
トラウマスイッチの入っている藍は無論抵抗など出来よう筈もなし。為されるがままに紫に連れられてゆく。
その姿を幽香は微笑ましく眺めながら、つい最近某天狗から分けて貰った(=分捕った)カメラのシャッターを何度も切っていたりした。
恐らくその写真のネタで後日また藍を虐めるつもりなのだろう。本当、心の底から素敵なほどに苛めっ子である。
紫が隙間の中に消えた後、ようやく他人を苛める事に満足し終えたのか、幽香は静かな部屋の中で一人遅めの朝食にかかるのだ。
もうすぐ太陽が南の空に昇りきろうかという昼時。鼻歌を優しく口ずさみ、幽香は一人軽い足取りで野道を歩いてゆく。
愛用の日傘をクルクルと回し、彼女の機嫌は今日は何時にも増して頗る良好らしい。
ただ、その事を理解出来るのはあくまで彼女と本当に付き合いの深い数人だけだろう。
風見幽香は儚き弱者とは群れない、触れない、交わらない。彼女が心を許すのは一握りの強者と己の興味に触れた者だけ。
彼女の感情の機微に心を触れることを許されるのは、常人では到底叶わない領域なのだ。
数多の妖怪の中でも特に危険視され、人々や妖怪達に畏怖される存在。それが彼女、風見幽香。
まあ、そんな恐怖の対象である彼女の機嫌の良し悪しなど当然怖がってる人々には分かる訳もないという、ただ単にそれだけなのだが。
話を戻そう。分かる者には分かる程度に、現在幽香は上機嫌であった。
それは先ほど藍を虐めてスッキリしたからという理由ではない。…否、それも理由にあるにはあるが、一番の理由は全くの別物。
彼女の機嫌の理由は傘と共にその手に持つ一つの布袋。その中に入っているのは先ほど彼女が藍に渡されたお弁当。
朝食を終え、マヨヒガを後にしようとした幽香を藍が呼び止め、彼女によろしければ昼食用にと渡したのだ。
そんな藍の心遣いに幽香はつい堪えられずに笑みを零してしまう。本当に馬鹿な娘だと。
あれだけ数え切れない程に虐められても、まだそんな事を自分にしてくれるなんて、実は藍は生粋のマゾなのではないだろうかとすら思える。
藍の前で一頻り大笑いした後で、幽香は遠慮することなく藍からそのお弁当を受け取ったのだ。
だから今、幽香は非常に機嫌が良い。面白くて可笑しくて笑いが一向に絶えない。幽香は一人心の中で呟く。
本当に早起きをした甲斐があった。今日はどうやら大当たりの日のようだ、と。
眩しい太陽に目を細め、幽香は一人次なる行動に思考を馳せる。
昼食時にはまだ余裕がある。さてさて、次は何処で誰と遊ぼうか。否、次は何処で誰『で』遊ぼうか。
今日は久々の早起き、それも向日葵畑を出ようなどと珍しい風に心が吹かれたのだ。こんな時は心行くまで愉しまねば勿体無い。
軽く瞳を閉じ、幽香は幾つかの心当たりを思い描く。さて、次は一体誰を虐めてあげようか。
今から冥界に出向き、友人の庭師を虐めるのも悪くはない。あれも藍と同じく打てば打つほど綺麗な音色を聴かせてくれる。
はたまた実った果実を収穫するのも良いだろう。紅魔館の吸血鬼、あれもそろそろ綺麗に熟した頃だ。
味見程度に弾幕勝負に興じてみるのも面白そうだ。奇跡が重なったとはいえ龍を屠る力、遊び相手には悪くはない相手だ。
思いきって遠出で新たな玩具を探してみるのも良い。紫に聞いた話だと、どうやら妖怪の山に面白い奴らが現れたとか。
相応の実力者、それも神の類となれば興味が沸くのも自然な事だ。さてさて、その神様は魔界の神と同程度には遊んでくれるのか。
妖しく、そして冷たい笑みを零してこれからの予定を色々と考える幽香だが、その愉しき思考の時間は思わぬ形で中断させられた。
「相変わらず悪い顔してるねえ。正直一瞬声かけるのも躊躇いそうになったよ。
まあ、ストレートに言っちゃうとアンタのニヤケ顔にドン引きしたって意味なんだけどさ」
「…相変わらず神出鬼没ね。何時の間に私の前に現れたのよ、貴女は」
「何言ってるのさ。幽香の方が勝手に近づいて来たんだよ、人が酒を楽しんでいるところにね。
それに神出鬼没ってのは紫の専門特許でしょ。私の場合はそうだね…鬼出鬼没とでも言ってくれない?」
「下らない上に寒い事平然と言ってるんじゃないわよ、この酔っ払いの酒狂い鬼」
「にゃはは、それは私にとって最高の褒め言葉だね」
足を止め、瞳を開いた幽香の視線の先に居た人物はケタケタと楽しそうに笑いながら言葉を返す。
その人物――伊吹萃香は幽香の歩く道の脇にある大岩の上に寝転がり、瓢箪を片手に普段と何一つ変わることなく酒を楽しんでいるようだ。
そんな悪友に楽しい思考の邪魔をされた事が気に食わなかったのか、幽香はギロリ強く萃香を睨みつける。
その視線は猛禽類のそれを遥かに凌駕する威圧感を纏わせて。おそらく並みの妖怪ならば彼女の視線を受けただけで泡を吹き気を失するだろう。
だが、彼女と同様に強者と謳われる鬼の萃香には無意味以外の何物でもない。
幽香の視線を受け流し、楽しそうに笑いながら幽香に対して再び口を開く。
「何だか珍しく機嫌が良さそうじゃない。しかも向日葵畑からこんな昼間に出歩くなんて。
酒の肴に今日は何があったのか教えてくれると嬉しいねえ」
「その機嫌の良さに思いっきり冷や水をぶっ掛けてくれた奴が何をまあ抜け抜けと」
「良いじゃないか、別にそれくらい。
ほら、お酒も分けてあげるから少しばかり話し相手になっとくれよ。
こんな真昼間から予期せぬ友人に出会えたんだ。少しくらい私に時間を使ってくれても罰は当たらないと思うけどね」
「ふん…まあ良い。少しくらいなら付き合ってあげるわ」
軽く息をつき、幽香は日傘を折りたたみながら萃香の隣へと腰掛ける。
大岩の上に座った幽香を見て、萃香はそう来なくちゃとばかりに笑みを零して上半身を起こす。
身体を起こした萃香に対し、幽香は何かを要求するように手のひらを差し出した。
彼女の行動の意味が理解出来ず、首を傾げる萃香に幽香は苛立たしげに言葉をぶつける。
「酒を分けてくれるんでしょう。さっさと私の分を注ぎなさいよ」
「あ~、そうだったそうだった。それじゃえっと…ほい」
幽香の要求を理解したようで、萃香は先ほどまで自分が酒を飲むのに使っていた木枡に酒を注ぎ、
枡一杯に満たしたところでそれを幽香へと差し出した。それを見て、幽香は更に苛立たしげに言葉を続ける。
「どうして貴女の飲みかけを渡すのよ。新しい容器を用意するのが最低限の礼儀でしょう」
「え~、別に良いじゃんそんな小さい事は。何、ゆうかりんは間接キッスとか気にするタイプ?
…ププッ!!あははははっ!!!似合わなさ過ぎ!!!何その乙女チックな純情まっしぐら路線!!!!」
「…お前、本気で殺すわよ?」
「あははっ!ごめんごめん、冗談だって。おお怖い怖い。
残念だけど酒枡は一つしか無いんだよ。悪いけど今日のところはそれで我慢しておくれよ」
心が微塵も篭ってない萃香の反省の弁に耳を貸さず、幽香は彼女の手から酒枡を奪い取り、一気に呷ってゆく。
募りゆくイライラを酒で押し流しているかのような、そんな風に荒っぽく酒を嗜む幽香を見届け萃香もまた瓢箪に直接口付ける。
本日何リットル目となるのか皆目見当もつかない酒を喉に通し、萃香は瓢箪からそっと口を離す。
その時、萃香は己の視界の隅に入った物体、隣で酒を飲んでいる幽香の手にしていた弁当の存在に気がついた。
「ねえ幽香。アンタの手にしてるそれは何?」
「ん…ふふっ、これは貢物よ。
マヨヒガで亀を気の向くままに虐めていたら、その亀が台本を勘違いしたのか私に玉手箱を差し出したの」
「マヨヒガ?って事は藍が作ってくれたの?
ちょっとちょっと、何一人で勝手に藍にお弁当なんか作ってもらってるのさ。
百歩譲って作って貰うとしても、何で私の分まで作ってもらわないのさ。自分の分だけちゃっかり用意して貰ってずるいなあ」
「どうして私が貴女の分まで気を回す必要があるのよ、馬鹿馬鹿しい。
弁当が欲しければ貴女もマヨヒガに直接行きなさいよ。私は今朝早くからマヨヒガに向かったのだから」
「何?アンタ朝っぱらからマヨヒガに行ってたの?
ん~…幽香が早起きしてる事といい、向日葵畑の外を出歩いている事といい、話がいまいち掴めないなあ。
ちょっと最初から詳しく話してみてよ」
萃香の催促に幽香は待っていたとばかりに笑みを浮かべ、心から楽しそうに今朝の惨状…もとい、出来事を語り始める。
マヨヒガにて藍を心行くまで苛めた事。たっぷりと時間をかけて苛めた事。手心を加えることなく苛めに苛め抜いた事。
とにかく藍をどうやって、どのように、どこまで追い詰めて苛めたのかを幽香は余すことなく萃香に伝えるのだ。
先ほどまでの不機嫌は何処へやらと思う程に愉悦を漏らして話す幽香に、萃香は呆れるように笑うしかなかった。
「成る程ね。マヨヒガに向かったのは藍を苛める為か。
アンタは相変わらず藍に対する愛情表現が捻れに捻れまくってるねえ。朝っぱらから藍も難儀なことだ」
「フフッ、失礼ね。藍は心から喜んでくれていたわよ。それこそ咽び泣くほどにね。
あんなに喜んでもらえたなら私もわざわざ今朝あの娘に会いに行った甲斐があると言うものだわ」
「おーおー、恐ろしいまでの自分勝手ご都合解釈。いやいや、それでこそ風見幽香だね。
それで藍を心行くまで苛めた今は次なる獲物を求めて徘徊中だったって訳か」
「聡いわね。伊達に長年の付き合いじゃないという事かしら。
うふふ、次は一体誰と遊ぼうかしら。幽々子の秘蔵っ娘を苛めるか、吸血鬼や最近妖怪の山に来たという神様と
弾幕勝負してみるか。何にしても私を退屈させてくれなければ良いけれど」
幽香の禍々しい笑みを眺めつつ、萃香は軽く息をついて再度瓢箪を呷った。
多量の酒を喉に通し、萃香は口元を軽く拭いながら幽香に対して口を開く。それは彼女が前々から感じていた事。
「今更なんだけどさ、幽香は昔と随分変わったよね」
「…は?」
突然の萃香の言葉に、幽香は酒枡を口に運ぼうとしていたその手を止めて、彼女の方に視線を向ける。
言葉の意味が全く理解出来ないといった様子の幽香に、萃香はにやにやしながら楽しそうに言葉を続ける。
「だから、今の幽香は昔の幽香とは全然違うねって私は言ってる訳さ。
性格…はあんまり変わらないけれど、物事の考え方とか心の余裕というか、そういうのが昔と全然違う」
「…酒がとうとう脳にまで回ったのかしら?
こういう場合、哀れむような視線を送る事しか私には出来ないのだけれど」
「違うって!!人を勝手に病気扱いするなって!!」
うがー、と叫ぶ萃香を相手にすることなく、幽香は一気に酒枡の残りを喉に押し込んだ。
そして萃香に向けて空になった酒枡を差し出し、顎で彼女に注ぐように指示を出す。
それを見て、萃香はやれやれと小さくため息をつきながらも幽香に頼まれるがままに酒枡に酒を注いで行く。
「光栄に思いなよー。鬼直々に酒を注がれるなんて本当に凄い事なんだよ。
もうね、どのくらい凄いかって言ったらその辺の天狗なんかじゃ絶対経験出来ないくらいだよ」
「私を天狗如きと一緒にしないで頂戴。それに光栄に思う必要があるのは貴女の方でしょう。
この風見幽香に酒を注ぐ事が出来るなんてそれこそ片手で数えるほどよ」
「幽香、友達少ないもんね。にゃはは」
「…で、私の一体何処が昔と変わったと言うのよ。
昔と変わったのは紫だけでしょう。藍と出会ってアレは本当に変わってしまったものね」
「ああ、紫は特例。藍を拾う前の紫は本当におっかなかったもんねえ。
誰よりも強くて誰よりも非情で誰よりも残忍で…本当、当時の紫は他の誰よりも『妖怪』だった」
萃香の言葉に幽香は黙したまま答えない。本人はきっと認めないだろうが、それは肯定の意に他ならない。
押し黙る幽香に、萃香はその静寂を打ち消すように『紫の事は置いといて』と前置きし、言葉を続けてゆく。
「私の錆付く程に古い記憶にある昔の幽香なら、『弾幕勝負』なんて言葉は絶対に出て来なかったね。
昔のアンタなら、自分の興味が沸いた相手は吸血鬼だろうが神様だろうが嬉々として殺し合いに向かった筈さ。
弾幕勝負なんてお遊びじゃ心を満たせない。アンタの心を満たす事が出来るのは、むせ返る程の血の匂いと
心躍る命の遣り取りだけだった。昔の紫と同様に、妖怪として純粋なまでに完成された存在、それが私の記憶にある昔の風見幽香だった」
それは古の外界の頃から知れ渡っていた事。
風見幽香の名は人妖達の間では恐怖と殺戮の代名詞であった。
彼女は笑う、血のむせ返る戦場で一人。彼女は微笑む、数多の亡骸を積み重ねたその山の頂で一人。
彼女の心は常に飢えを訴えていた。こんなものでは足りぬ。こんなものでは満足出来ぬ。この程度ではこの世に生きる意味すら感じられぬ。
その身が求めたのは何処までも続く命の遣り取り。殺戮と勝利がいつまでも繰り返される終わり無き舞踊劇。
人間も妖怪も空も海も全ては私の為に存在している。この私の心を満足させる為だけに全ては存在しているのだ。
だからこそ、この私を満足させられぬ者など生きる価値もない。弱者には無慈悲な死を。強者には感謝を込めて五体を引き裂いてくれよう。
狂気と殺戮の舞台にのみ生きる意味を見出していた妖怪、それこそが風見幽香その人であったのだ。
「けれど、今のアンタからはそんな飢えや渇きは一切感じられないんだよね。
穏やかになったというか、何というか。まあ、性格が捻じ曲がってるところは何も変わってないんだけど。
さてさて、そんな風に幽香を大人の女へと変えたのは一体何なのか是非とも教えて頂きたいねえ」
「…何を言い出すかと思えば下らない。大体今までの話は全て貴女の勝手な思い込みじゃない。
私は今も昔も自分の心に従って生きるだけ。殺し合いを弾幕勝負で代用しているのは、ただ紫のお遊びに付き合ってあげているだけ。
もし私の心が殺し合いを渇望したならば、今すぐに誰とでも殺りあうつもりだもの」
「へええ~、本当にい?スペルカードルールを無視して?」
「当然よ。博麗の巫女だろうが紫だろうが、何人たりとも私を繋ぎ止める事は許さない。
私を縛ろうとする者は容赦なくこの手で屠ってあげる」
「そうかいそうかい。言うねえ、流石はミス・アンチェインってね。
でもさあ、幽香がスペルカードルールの禁を破って幻想郷で暴れまわったりしたら、多分藍は凄く悲しむと思うなあ」
「……待ちなさい。どうしてそこで藍が出てくるのよ。藍は関係無いじゃない」
「あ、今頭の中で藍が泣いてる顔を思い浮かべたでしょ。返事返すのに若干間があったもん」
幽香の返事が遅れた事を見逃さなかった萃香は、にやにやと苛立たしいまで笑みを浮かべて幽香に追求する。
そんな彼女を鬱陶しいと感じつつ、冷静を取り繕って幽香は口を開く。
「浮かべてないわよ、馬鹿らしい」
「いーや浮かべたね。間違いなく浮かべたね」
「浮かべてない」
「浮かべたって」
「浮かべてない」
「浮かべたって」
「浮かべてないって言ってるでしょうが!!!!!」
「うわっ!?危なっ!?今グレイズしたよグレイズ!?かすり点間違いなく増えたよ!?」
「何訳の分からないメタ発言してるのよ、この万年酔っ払いが」
あまりにしつこい萃香に、幽香は我慢の限界だったのか迷うことなく魔弾を彼女へと放りつける。
こんな至近距離、それも並の妖怪なら軽く肢体を粉々に粉砕する魔力を詰めた魔弾を躊躇無く放つ幽香も幽香だが、
それを平然と回避する萃香も萃香だ。やはり幻想郷において指折りの実力者同士、じゃれあうレベルも半端では無いらしい。
その証拠に幽香の放った魔弾は萃香の横を通り過ぎ、そのまま地面に叩きつけられて
直径10メートルはあろうかという巨大なクレーターを生み出していた。本当、周囲に人が居なかったのが幸いである。
「いやもう、今のは我ながら自分自身を褒めてあげたいくらいだよ。ほらほら、見事避けた私に賞賛の言葉はないの?」
「酒の次は自分に酔うつもり?今のは私が貴女でも避けられる程度に加減してあげたのよ。
次に巫山戯た真似をしたら、その脳天に綺麗な風穴を通してあげる。そうすれば風通しも良くなって少しは酔いも醒めるでしょう」
「相変わらずきっついなあ~。まあ慣れっこだから良いんだけどさ。
しかしお腹空いてきたなあ。時間も昼時だし…ねえ、幽香」
「嫌よ」
「まだ何も言ってないじゃないのさ。話を聞くだけ聞いても損は無いと私は思うけどなあ」
「どうせ弁当を分けろとでも言うつもりでしょう。
さっきも言ったように、欲しければマヨヒガに行きなさいよ。これは私の昼食だもの」
キッパリと断る幽香に、萃香は『ちぇっ』と子供のように残念がってその場に再び寝転がる。
横になってもちゃんと酒を零さず飲んでいる辺り、彼女がそんな風にだらしなく酒を飲む事に手馴れていると窺い知れよう。
大岩に寝転がり、じっと空を見つめていた萃香だが、隣で酒を嗜んでいる幽香にポツリと呟いた。それは強い風が吹けば掻き消えてしまいそうな程の声で。
「…藍は大きくなったよね。大きく、そして強くなった」
「…そうね。いつも私達の後ろをひょこひょこついて回っていたおチビが
いつの間にか私の背すらも追い抜いてしまったわ。本当、生意気だこと」
「幽香はまだ良いじゃん。私なんかものの数百年くらいで簡単に抜かれたよ。
知ってる?記者天狗に聞いたんだけど、今じゃ人妖達の間では、
藍は『最強の妖獣』なんてご大層な呼び名で知られているらしいよ」
「それは初耳。けれど、それくらいでなければ困るわ。
何せ他の誰でもない、この私が直々に愛を込めて鍛えてあげたんだもの」
「鍛えたっていうか単に虐めてただけのような気もするけどねえ」
「フフッ…それも偏に愛故よ」
互いに笑いあい、二人は友人の娘の成長の話題に花咲かせる。
彼女達の知る幼い頃の藍は本当にか弱い小さな小さな女の子だった。
いつも紫の傍から離れようとはせず、紫に抱きしめられては無邪気な笑顔を浮かべるそんな童子。
そんな幼子が何時の間にやら自分達の背を追い越すほどに成長した。紫の傍を離れただけで嗚咽を漏らす泣き虫が、最強の妖獣と謳われるほどに強くなった。
振り返ってみればそれ程の月日が流れたという事。一人の子供が、大きく強く、自分達と肩を並べる程に成長してしまうくらいの月日が。
「よしっ!!決めたっ!!今夜は久々に飲もう!!」
突如起き上がり、声を上げて笑う萃香に幽香は軽く息をつく。
彼女とは数千年の付き合いとなるが、こんな風に突然訳の分からない提案や発言をしてくるのは
昔と少しも変わっていない。
「突然何をまた訳の分からない事を。酒なら貴女は常に飲んでるじゃない。
酒を飲む時間の方が寝る時間より多いんじゃないかってくらいに」
「違うって!いや、寝てる時間より酒を飲んでる時間の方が長い事は否定しないけどそうじゃないって!
今夜久しぶりに皆で集まって飲もうって私は言ってるのさ。私と幽香、紫と幽々子の四人でね。
最近酒を飲むのになかなか良い場所を見つけたんだよ。久々にパーッと盛り上がろうじゃない!」
身振り手振りで楽しげに話す萃香に、幽香は軽く微笑みながら言葉を返す。
――『それも悪くは無いわね』。色良い幽香の返答に、萃香はにぱっと笑みを零して大岩から飛び降りる。
「あら。今からもう今宵の準備に走り回るつもり?」
「まあね。とりあえずマヨヒガに行って藍に昼ご飯作ってもらう。お腹空いたし。
その後に紫と幽々子に声かけてくるよ。まあ、どうせ二人とも暇してるだろうから一発OKだろうけどね。
幽香はどうせ向日葵畑に居るんでしょ?夕方頃に呼びに行くからフラフラしてないでよね。探すの面倒だし」
「さあて、どうかしら。今日は気分が良いからね。
風の吹くまま気の向くままに生きる事こそ私の望み。その約束には頷きかねるわ」
いつものように捻り曲がった返答を返す幽香に、萃香は苦笑しつつそのまま足を前へと進めてゆく。
しかし、数歩歩いたところで突然立ち止まり、背後の幽香へと振り返り、嬉しそうな笑みを浮かべて言葉を紡いでゆく。
「幽香、やっぱりアンタは昔と比べて変わったよ。今の幽香、私は大好きだよ。
紫同様、アンタを変えてくれたのはやっぱり藍の存在なのかねえ。本当、藍には感謝しなくちゃね。
二千年前、アンタが藍の面倒を見た事はただの気まぐれだったのかもしれないけれどさ。
その事は確実にアンタを変えてくれているよ。勿論、魅力的な方にね」
「…酔っ払いがまた気持ちの悪い事を。貴女に好かれても私は少しも嬉しくないわね」
「あれえ?何?幽香ってば顔が赤いよ?もしかして照れてるの?
にゃははっ!クールぶってるくせにそういうのには弱い訳?ゆうかりんったら可愛いー!…って、うわっ!?」
会話を途中で切って声を上げる萃香。その理由は彼女の右手の中にある酒枡。
けらけらと楽しそうに笑っていた萃香に対し、幽香がそれを全力で投げつけたのだ。それがどれくらいの速度であったのかは想像にお任せしたい。
あの風見幽香が全力で投げたのだ。そんなモノを萃香もよく捕ったものだと思う。そして酒枡もよくもまあ壊れなかったものだと感心する。
「いいからさっさとマヨヒガに行きなさい、この酔っ払いが」
「はいはい、言われなくとも行ってきますともさ。いい加減空腹も限界だしね」
酒枡をしまいながら、萃香は今度こそマヨヒガの方へと空を翔けていった。
その姿を見届け、幽香は一人呆れるように息をつく。どうやら友人はどうしても自分が藍に変えられたと言いたいらしい。
「藍如きがこの私を変えるだなんてありえないでしょうに。下らない。
私は何も変わらない。風見幽香は今も昔も変わることなく己の心に従って生きるだけよ」
そう、過ぎ行く日々を面白おかしく、自分の生きたいように生きる事こそが自分の道。
そんな自身を形成する絶対の心に、何かが割り込む隙など生じはしない。
私は何も変わっていない。変わったのだとしたら、きっと自分を見る他人の目や世界が変わってしまったのだろう。
風見幽香は変わらない。たとえ世界が終わるとしても、それは絶対不変の事実。
軽く息を吐いて、幽香は藍から貰った弁当を持って萃香同様この場を後にする。目指す場所は向日葵の咲き乱れる太陽の畑。
自身の変化は置いておき、今はあの場所へ戻るとしよう。今宵の宴の席にて、萃香にうだうだとつまらない文句を言われない為にも。
風見幽香は変わらない。それは彼女が口にする絶対の言葉。
けれど、萃香の言う通り、確かに彼女は昔とは違うのだ。
命の遣り取りだけに心躍らせ、血の匂いだけが生き甲斐と声にする欲望の塊であった風見幽香とは。
その事を証明するのは彼女の手に持つ弁当と、それを幽香に渡した少女の記憶。
少女の記憶には、確かに幽香から虐められたり泣かされたりした内容ばかりしか
映っていないけれど、その奥底にはキラキラと光る一粒の宝石がしっかりと残されているのだ。
その記憶は少女が誰にも語っていない大切な記憶。
張本人である幽香すらも忘れてしまっている程に、あまりに錆付いた記憶の一ページ。
けれど、少女にとってはとても大切な記憶の一欠けら。
母と離れて初めて過ごす夜。寂しさに怯え、一人で眠る事が出来なかった少女。
そんな彼女を落ち着かせるように、幽香は少女を優しく抱きしめ、一枚の敷布に包まって眠らせた。
まるで愛娘を抱く母のように、幽香はその震える少女に温もりと安心を分け与えてあげたのだ。
それは幽香にとっては気まぐれ以外の何モノでも無かったのかもしれない。
けれど、その行動は確かに彼女が自発的に行ったモノ。昔の幽香ならば、きっとそのような事はしなかっただろう。
殺戮だけに心興じさせていた昔の彼女だったならば、寂しさに震える少女など気にする事は無かった筈だ。
風見幽香は変わらない。その言葉を口にするのは、今となっては本人と一人の少女だけ。
頑として認めない本人のように、幽香の温もりを知っているその少女もまた彼女の不変を唱えるのだ。
――『幽香様は変わりませんよ。今も昔もお変わりなく、本当は心お優しい幽香様そのままです』、と。
「今日は沢山飲むわよーー!!!あははははーー!!!!幻想郷と私の可愛い藍に乾杯ーー!!!!」
「うわ!?何このテンション!?何、紫ってばなんか良い事でもあったの?幽香は何か知ってる?」
「フフ、さあねえ。どうせ愛する娘に関する事でしょ。放っておきなさいな」
「そうそう、紫のテンションが藍絡みで時々変になるのは今に始まったことじゃないしね。
それより店主さん、早く御代わりを頂戴な。早くしないと貴女を食べちゃうかもよ~?うふふ、なーんちゃって」
「な、何なのよこの禍々しい客達はー!!!!?
こんな桁違いにヤバイ人達がいたら他の人間や妖怪は怖がって誰も来ないじゃない!?」
「良いじゃない、今日は私達の貸切ってことで。その分沢山注文してあげるから。
ほーら、早くしないと貴女自身を本当にたーべちゃーうぞー?今夜のおつまみは夜雀の焼き鳥かしらー?」
「嫌あああああああ!!!!!!!!!私は美味しくないいいいいーーーーーーー!!!!!!!」
花妖怪、風見幽香の普段と何一つ変わらない幻想郷での日常。
けれどそれは、とある一匹の夜雀にとっては普段とは大いに異なる命がけの非日常であったようだ。合掌。
前作の後書きを読んでしばらくにゃおさんの作品が読めないと思っていたのに・・・こんなに早く読めることになるなんて…凄い嬉しいです!
ではここから感想を
幽香の偏愛っぷりに恐怖を覚えました。藍が実に不憫だw
それでも幽香の本質に気付いている藍が素敵です。よくもまぁ捻くれずに育ったものだw
幽香の友人5人って誰だろう・・・? 紫、幽々子(もう死んでるが)、萃香辺りは確定として後二人・・・魅魔とか?(もう死ry
次回作も首を長くして待ってます。久々に砂糖過剰摂取必死なドタバタラヴコメ調の作品が読みたいなwww
長文失礼しました。
いやぁさすがのドSっぷりですね・・・w
昔はやっぱり妖怪が妖怪らしい時代だったみたいですが他人と関われば多少なりとも影響は受ける・・・のか?
幽香の友人5人・・・うち2名は幽霊らしいから幽々子と魅魔?あとは紫、萃香と・・・?
だめだ、あと一人がわからんw
次回作も待ってます
体に気をつけて、では
それにしても流石アルティメットサディスティッククリーチャーだw
ゆっかさんは母親の裏側担当ですか。
確かにあのゆかりんじゃあ無理だろうなぁ。
「らんにそんな危ないことさせてたまっかこん馬鹿ゆうかりんがぁぁぁ!」とか言ってそうですし。
友人5人と聞いて何故か妖忌が筆頭でした。私めもかなり末期です。
萃香ママは緋想天で天ちゃんを娘として溺愛してれば凄く良いと思うのですよ。衣玖さんが嫁で。
五人中二人は幽霊と言ってますし、山の神の件で魔界神の事にも触れてますからね。
紫は激甘、幽香はスパルタ、藍は親に似て激甘なんですかねぇw
萃香の母親像がまったく思い浮かばないなぁ……
そしてアルティメットサディスティッククリーチャーをありがとう!!
ゆうかりん優しいよゆうかりん。
神綺様はどうだろう?玩具を探す~のくだりで出てきたから玩具としてしか見られてないのかと解釈してしまいましたが…他に適役が思い浮かばないのも事実w
コメントにコメントはマナー違反ですが,きちんと読んでいなかったことの謝罪も込めてコメントさせていただきます。
幽香が楽しすぎるww
そして、いろいろと手遅れなのはあなただけではないのでご安心をwww
がんばれミスチー、いつかいいことあるさ。
幻想郷大丈夫か!?
ところでミスチーはこの後お代を踏み倒されてしまうんでしょうねぇ・・・
でもこれだけ自分に素直な形で愛情を表現できる幽香はステキですねw
まぁ、その愛を受ける方は・・・ねぇw
紫は大の親ばかだし。
幽香の子育ては問答無用で何よりですwwwww
紫と藍のあいかわらずの親娘ぶりもよかった
正直 ちょっと間が空くかなー と思ってましたので、嬉しい誤算です^^
さてさて 本編のご感想を。
読んでて気分は紫様でした。つまり 「私の藍をいぢめるなー!!」
幽香の愛はこれでもかと感じられましたが、読んでて、つい「むむむ」と眉間に皺がw
霊夢がいじめられている時は、微笑ましかったんですけどねーw。
この差はなんだ?と自分でも首を傾げるばかりです。
全体的にはとても平和な幻想郷の一日。
みすちーの叫びが際立っておりましたww
虹龍~のあとがき内容からは想像も付かないほどの更新速度!
一気に読ませていただきました。
しかし藍に対しての愛情(という名の欲望)が半端ないのはさすが幽香!
霊夢に対するからかいの態度もさすが幽香!
本人達にとってはたまったもんじゃありませんが。特に藍。
とりあえず一つ言えるのはドSゆうかりんに全幻想郷住人が震撼した。
ゆうかりんと愉快な仲間達の回想録とか読んでみたいです。是非。
友人の庭師とあったので五人目は妖夢の事ですかね?いや、友人=幽々子か?
しかし、ここの霊夢はなにやら凄い可愛いんですけどw
今回は久しぶりに紅魔館モノではなく八雲一家モノ、しかもメインがあまり書いたことのない幽香な為、
色々とドキドキしながら書いてました。このお話を最後までお読み下さり、本当に本当に感謝の言葉あるのみですっ!!
>7様 久々に砂糖過剰摂取必死なドタバタラヴコメ調の作品が~
私も是非書きたいです~!なんというか、藍や美鈴を中心としたラブラブなお話とか凄く書きたいです。
それで藍様や美鈴、加えて何故かけーね先生が振り回される話が書きたいなあ…妹紅も出せますし。
>10様 幽香の友人5人・・・うち2名は幽霊らしいから幽々子と魅魔?あとは紫、萃香と・・・?
アリスのママンはきっとカリスマに溢れて素敵ですよ!アホ毛神とか言われてるけどカリスマですよっ!
それと健康に気遣って下さり本当にありがとうございます!九月さえ、九月さえ乗り切れば楽になる筈…
>12様 それにしても流石アルティメットサディスティッククリーチャーだw
U・S・C!U・S・C!ゆうかりんのいじめはきっと愛のあるいじめですね。…多分。
>17様 確かにあのゆかりんじゃあ無理だろうなぁ~
このゆかりんが文化帖のように藍を躾ける事が出来るのかなあ…とか考えてたら、何故か幽香の仕事に。
私の中で紫は何時から親馬鹿になってしまったのでしょう…本当に不思議です…
>24様 萃香の母親像が~
私も思いつきませんね~!(大いに待て
あれじゃないでしょうか。今流行の友達間隔ママっていう感じで。しかし萃香がママだと何故か危険な匂いが(←病気
>27様 新作きたああああああああっ!!!
こ、こんな私め如きの新作を待って頂いていただなんて…ありがとうございます。本当にありがとうございます。
この喜びを如何せん。今なら全裸で首都高速をソニックよりも速く駆ける事が出来そうです…(風よりも疾く捕まります)
>てるる様 いろいろと手遅れなのは~
で、ですよね!?私だけじゃないですよね!?誰だって一度はこんな妄想をしますよね!?
ゆうかりんが藍を抱きしめて、それを嫉妬の目で見つめる霊夢や妖夢や
紫の前でニヤニヤしてるようなシーンとか全然妄想OKですよね!?(ご臨終
>39様 がんばれミスチー、いつかいいことあるさ
みすちーは幸せになれますよ!るみゃーと幸せになります!(←ルーミア×みすちー派)
しかし、そういえばバカルテットはまだ一度くらいしか書いた記憶が…この辺りも書いてみたいですね。
>43様 幻想郷大丈夫か!?
なんかもう色々とこの幻想郷は駄目みたいです。ZUN氏の描くような素敵で優しい世界を目指したのにどうしてこんな事に…(逸れ過ぎ
私の考えでは、レミリア×美鈴は純愛です。ええ、誰が見ても純愛です。ゆかりんはカリスマです。誰が見てもカリスマです。
藍しゃまを抱きしめて鼻から(スキマ送りにされました)を垂れ流してるゆかりんなんか、もう最高にカリスマ神です。
>46様 ところでミスチーはこの後お代を~
この面子で一体誰がお金を払いましょうか(反語)
みすちー「はい、四人様で○×△□☆円になります」
すいか「だって。という訳で支払いよろしく。私お金なんて持ち歩かないからさ。にゃはは」
ゆうかりん「あら奇遇ね。私も人間の通貨なんて持ち歩かないわ。欲しい物は奪う、それが私だもの。
という訳で支払いはお願いね」
ゆゆさま「あら?私だって持っていないわよ?だってお金の管理一切は妖夢に任せてるもの。
という訳で紫、ここの支払いはお願いね」
ゆかりん「…らーん、私も大好きよお…むにゃむにゃ…」
すいか「駄目。紫の奴、完全に酔いつぶれてる」
ゆゆさま「そう?じゃあ仕方ないわね。店主さん、今日の分はツケってことでお願いね」
みすちー「はあああああ!?ちょ、ちょっと待っ…」
ゆゆさま「それじゃ二次会と行きましょうか。飲み直す場所はマヨヒガで良いかしら?」
すいか「さんせー」
ゆうかりん「構わないわ」
ゆゆさま「とまあそういう事で。また来るわね、店主さん」
みすちー「にっ、二度と来るなーー!!うわーーん!!今日は大赤字だよおーーー!!」
>48様 自分に素直な形で愛情を表現できる~
己の欲望のままに生きるゆうかりんって凄く格好良いなあとか思います。ゆうかりんの格好良さは幻想郷屈指ですよね。
その愛情を受ける藍しゃまには、ほら…色々と頑張ってもらいたいなと思います、はい。
>時空や空間を翔る程度の能力様 つくづく藍は苦労人~
多分らんさまはそういう星の下に生まれているのだと思います。(≒れーせん、みょん、めーりん、さなえさん)
幽香の子育てってこんなイメージなんですが、それも偏に愛だよってどこぞのオタク少女が…
>56様 ドSなゆうかりんとそれにいじめられる~
ゆうかりんと藍しゃまって何気に相性がいい気がします。めーりんとかれいせんとかも。Mっ気がありそうだからでしょうか。(違
ゆかりんは前作のようなシリアスモードよりも今のようなただ漏れモードの方が話的に生き生きします。やっぱり親子愛は素敵です!(絶対違
>ぽてと様 読んでて気分は紫様でした~
それはもうきっと貴方をゆかりんウイルスが体を蝕んでしまっています!治す方法は藍様のしっぽをもふもふすることです!
でも、他者が他者をいじめるお話って普段あんまり書いてないだけに新鮮でした。
本来なら美鈴やうどんげが苛められキャラなんですが、美鈴はハーレムだしうどんげというか永遠亭は出番が無いし…頑張れらんしゃま!(え
>名前を表示しない程度の能力様 虹龍~のあとがき内容からは想像も付かないほど~
ふと『ゆうかりんの話を書きたいな』という欲望が沸いたと思ったら、気づけば…あ、あははは(待て
出来ないときは本当に出来ないんですが、出来るときは本当にすぐに出来たりしますね…ムラがありまくりです。
『キスして欲しいの!』や『尊き信仰は~』とかは三日くらいで出来ましたし…本当、よく分からないですね、こいつ(全くです
>63様 質・量・速度と~
いえ、私なんか本当に全然ですよ。こんな風にお話を書けるのは、偏にお話を読んで下さる皆様のおかげなんです。
私の書く話は原作から逸れた妄想話ばかり、しかも続きモノで独自設定とはっきり言ってどうしようもないくらい自分勝手な話です。
でも、そんな話にもこうして付き合って下さる方々が、ましてやこうして温かい感想まで書いて下さる方々までいらっしゃるんです。
本当、私は誰よりも幸せ者だと思います。そして、こんな勝手な幻想郷を暖かくも容認して下さる皆様と、少しでも多くの時間を共有出来ればと考えています。
そして少しでも多くの美鈴と藍しゃまを!少しでも多くの紅魔館と八雲一家を!美鈴可愛いよ藍様可愛いよ(少しも変わってない変態)
>64様 ゆうかりんと愉快な仲間達の回想録とか~
次回になるかどうかは分かりませんが、紫と藍の昔話を一本書こうと考えています。そこでゆうかりんは登場すると思います~。
ただ、流石に虹龍の時みたいに長くはなりませんが…あの長さは本当に死ねました。一体どれだけ時間使ったんだろう…
>67様 友人の庭師とあったので五人目は~
勝手な妄想ですが、話中のゆうかりんのお友達はゆかりん、すいか、ゆゆ様、みまー、ちんき様の五人です。
どうでもいい話なんですが、ゆかりんとちんき様が酒を酌み交わしたら我が娘の話しかしないような気がします。親馬鹿二人。
霊夢はほら…なんというか、ツンとした中に見せる顔を赤らめた表情が…すみません、やっぱりちょっと頭が色々とアレみたいです…(手遅れ入ります
藍しゃまかわいいよ藍しゃま。
さりげなく入るジョジョを中心とした漫画ネタが大好きですw
しかしまさかゴールデンエッグネタが入るとはwww
更にハードルが高くなった藍争奪戦の行方はいかに!
最後も上手く落ちましたな。
ミスチーに合掌w
やっぱルーミアとみすちーですよね