先に[宴会騒動with犬 序章]をお読みになることをお勧めします。
「藍~、ら~~ん。帰ったわよ~」
「紫様ってば、いきなり出掛けて行って……。何処に行ってたんです? ――と、お客様ですか」
「そうよ、お客様よ。早速で悪いけど今からここで宴会するから」
「えー。今からですか。あんまり食べる物、用意してないですよ」
藍はいつからこんな反抗的になったのかしら。最近じゃあ、人間を攫ってきてくれることも少なくなったし……。少しお灸を据えてやる必要があるかも。
「文句はいいのよ。今までスルーしてたけど今日はお客様がいるの。八雲家の名に恥じないようにもてなしてあげなさい」
「そういえば、そうでしたね。――ではレミリア様、……脇巫女、二人ともついてきてください」
「ちょ、ちょっと!! いまボソッと何か言ったでしょ、ちょっと聞いてんの!! って歩くの速ぇー!!!」
「ほら、霊夢。早くしないと置いてかれるわよ」
霊夢、いつになくテンションが高いわね。そんなにウチで宴会をするのが嬉しいのかしら。~~~~ッ、可愛いとこあるじゃない。解ってるわ、霊夢。貴女の気持ちなんて初めて弾幕を受けた時から解ってるわ。レミリアも可哀そうね、叶わない恋なんてするだけ無駄なのに。
「ゆかりさま~。そんなにうれしそうなかおをしてどうなされたんですかぁ」
「――橙、貴女、いつから居たの」
「ゆかりさまがきゅうにクネクネしはじめたときからです」
「私……何か、口走ってなかった?」
「なんにもいってなかったけど、くちだけはパクパクうごいてましたぁ。それはまるでえさにむらがる、みにくいさかなのように」
「……」
毒舌だわ、この娘。あれ、橙って純真が売りなんじゃ無かったのかしら。これはファンがいなくなるわよ。
橙は動揺する私の顔を下から覗き込んで、にやりと嗤った。‘笑’じゃなくて‘嗤’!? うわぁあぁあ、橙はこんな笑い方する娘じゃなーーい!!
「ゆかりさまぁ、だいじょうぶですかぁ」
「……私は大妖怪…………こんなの別に……ちょっと驚いただけよ……落ち着け、落ち着け…………うん、大丈夫」
「ゆかりさま?」
「大丈夫、なんでもないわ。そうだ、橙に頼みたいことがあるんだけど」
「なんですかぁ」
変な喋り方して。
「里までちょっと食材を買ってきて欲しいのよ。食べられるモノなら何でもいいわ」
「わかりました~。ではちゃちゃっといってまいります」
がす、がごどこどぉんどどどどど。
「早く行こうとするのは解るんだけどね……」
壁を破壊して行くことはないじゃない……。後で藍に片付けさせなくっちゃ。
音に気付いた藍がパタパタと駆けてきた。もふもふの尻尾が上下左右に揺れる。そういえば最近、尻尾触ってないような。
「どうなされたんですか。紫様。――ああー、壁が滅茶苦茶ですね。駄目ですよ、紫様。あの脇巫女と上手くいってないからって、壁に当たるのは。八雲家の主人として自覚を持ってください」
「ちっ、違。って霊夢とは上手くいってますっ。それに壁を壊したのは橙よッ」
「ま、どうでもいいですけど散らかしたのは自分で片付けて下さいね。ところで橙を見かけませんでしたか。さっきから見当たらなくて」
「違うって言ってるのに……。橙なら御使いに行かせたわ」
瞬間、藍の目がギラついた。瞳の奥に驚愕と怒りが見て取れる。大妖怪である私を一歩引かせるほど物凄い迫力があった。
「橙に何をさせてるんですかー!! もしも道中で怪我したらどうするんです! 里で人間たちに虐められたらどうするんです! 橙の可愛さに虜にされた誰かに誘拐されたらどうするんです! 橙の何かあったら……その時は、覚悟しておいてください、紫様。私はこれから橙を追いかけます!! お酒と簡単なおつまみは用意してあるので宴会でも何でもやってて下さい!!!」
こ、怖~。藍って怒るとあんなに怖いんだ。付き合い長いけど、あんなに怒ったのは初めて見たわ。あー、吃驚した。
まあ、いいわ。橙だってそんな簡単にやられないだろうし、宴会始めようっと♪
十六夜咲夜は空を飛んでいた。日が沈むにつれて暑さも大分治まってきたが、それでもまだまだ暑いことには変わりない。だらだらと汗をかきつつ、空を飛び回っている。
お嬢様はどこに行ったのかしら。一番可能性の高い場所は博霊神社だったけれど、もぬけの殻だし。お嬢様の匂いが残っていたから、神社にいたことは確かなんだけど、匂いがそこでスッパリ途切れているのよね。
「ふぅ。少し休もう。どこか涼しいところはないかしら」
休憩場所を探して飛んでいると、急に周りが涼しくなった。大きな湖が眼下に広がっていた。
「ああ、そういえばここは涼しかったわね。あの頭の弱い妖精にもこんな時ぐらいは感謝しなくちゃね」
ゆるやかに下降し、大きな木の下に腰を落ち着けた。そよそよと微風が頬を撫でた。汗がすーっ、と引いて行くのを感じた。良かった、汗が引いた。汗まみれだったら瀟洒なメイドじゃないものね。
「だんだんだんだんだーん!!! そこにいるのはだーれだぁー」
≪チルノがあらわれた≫
「やっぱり、出たわ」
「あたいはさいきょーのしょーごーをもつチルノさまだー!!」
「咲夜よ。あまりに暑いから、ここで涼ませてもらってるわ。出てきてもらったついでに聞くけど、貴女ウチのお嬢様を見てないかしら」
「レミリア? うーーん、みたよ!!」
「本当!!?」
「ばーか、ウソだよー。にせちちー」
せっかく涼しくなったのに又、熱くなっちゃうじゃないの。この⑨な妖精は。私を騙した上に、触れちゃいけないとこに触れちゃった。
奇術『ミスディレクション』
幻符『殺人ドール』
幻葬『夜霧の幻影殺人鬼』
「ッッッッガッ、ガガガガガガ、うんぎゃぁぁぁああああ」
≪チルノはやられてしまった≫
「あ、しまった。コレ倒しちゃったら、ここももう涼しくないじゃない」
仕方ないか。雀の涙ほどの時間でも休めたのだから良し。
次はどこに行こうかしら。誰かに聞こうにもさっきから誰ともすれ違わない。こんな暑い中を好き好んで出歩く奴なんて、この幻想郷にはいないだろう。いや、いるか。解らないけど。
「う…………ん? 何かしら、アレ」
目を凝らして見つめる先には、土煙。みるみる間に土煙は大きくなり、肉眼で捉えられる程になったころ、これを起こしているのが一人の人物だと解った。あれは藍の式神、橙だ。
「ぅぅぅううにやぁぁぁああぁ!!!」
速い。なんと速いのだろう。もう、すぐそこまで。――ん、こっちに向かってくる? え、ええ、ええええ!!?
「ちょっとストーップ!! ストップ、ストーップ!!!」
一際、大きな土煙を伴って暴走特急は停止した。その間、約30㎝。
「んにゃ?」
「んにゃ? 、じゃないわよ。貴女、私を轢き殺す気!? なんでこっちに向かってくるのよ」
「めいどだから?」
「メイドだからって何よ!?」
「めいどを冥土に……ぷっ、にゃははっはははは、んにゃーはらいたーい」
「誰がうまいこと言え、って言ったかしら」
「藍~、ら~~ん。帰ったわよ~」
「紫様ってば、いきなり出掛けて行って……。何処に行ってたんです? ――と、お客様ですか」
「そうよ、お客様よ。早速で悪いけど今からここで宴会するから」
「えー。今からですか。あんまり食べる物、用意してないですよ」
藍はいつからこんな反抗的になったのかしら。最近じゃあ、人間を攫ってきてくれることも少なくなったし……。少しお灸を据えてやる必要があるかも。
「文句はいいのよ。今までスルーしてたけど今日はお客様がいるの。八雲家の名に恥じないようにもてなしてあげなさい」
「そういえば、そうでしたね。――ではレミリア様、……脇巫女、二人ともついてきてください」
「ちょ、ちょっと!! いまボソッと何か言ったでしょ、ちょっと聞いてんの!! って歩くの速ぇー!!!」
「ほら、霊夢。早くしないと置いてかれるわよ」
霊夢、いつになくテンションが高いわね。そんなにウチで宴会をするのが嬉しいのかしら。~~~~ッ、可愛いとこあるじゃない。解ってるわ、霊夢。貴女の気持ちなんて初めて弾幕を受けた時から解ってるわ。レミリアも可哀そうね、叶わない恋なんてするだけ無駄なのに。
「ゆかりさま~。そんなにうれしそうなかおをしてどうなされたんですかぁ」
「――橙、貴女、いつから居たの」
「ゆかりさまがきゅうにクネクネしはじめたときからです」
「私……何か、口走ってなかった?」
「なんにもいってなかったけど、くちだけはパクパクうごいてましたぁ。それはまるでえさにむらがる、みにくいさかなのように」
「……」
毒舌だわ、この娘。あれ、橙って純真が売りなんじゃ無かったのかしら。これはファンがいなくなるわよ。
橙は動揺する私の顔を下から覗き込んで、にやりと嗤った。‘笑’じゃなくて‘嗤’!? うわぁあぁあ、橙はこんな笑い方する娘じゃなーーい!!
「ゆかりさまぁ、だいじょうぶですかぁ」
「……私は大妖怪…………こんなの別に……ちょっと驚いただけよ……落ち着け、落ち着け…………うん、大丈夫」
「ゆかりさま?」
「大丈夫、なんでもないわ。そうだ、橙に頼みたいことがあるんだけど」
「なんですかぁ」
変な喋り方して。
「里までちょっと食材を買ってきて欲しいのよ。食べられるモノなら何でもいいわ」
「わかりました~。ではちゃちゃっといってまいります」
がす、がごどこどぉんどどどどど。
「早く行こうとするのは解るんだけどね……」
壁を破壊して行くことはないじゃない……。後で藍に片付けさせなくっちゃ。
音に気付いた藍がパタパタと駆けてきた。もふもふの尻尾が上下左右に揺れる。そういえば最近、尻尾触ってないような。
「どうなされたんですか。紫様。――ああー、壁が滅茶苦茶ですね。駄目ですよ、紫様。あの脇巫女と上手くいってないからって、壁に当たるのは。八雲家の主人として自覚を持ってください」
「ちっ、違。って霊夢とは上手くいってますっ。それに壁を壊したのは橙よッ」
「ま、どうでもいいですけど散らかしたのは自分で片付けて下さいね。ところで橙を見かけませんでしたか。さっきから見当たらなくて」
「違うって言ってるのに……。橙なら御使いに行かせたわ」
瞬間、藍の目がギラついた。瞳の奥に驚愕と怒りが見て取れる。大妖怪である私を一歩引かせるほど物凄い迫力があった。
「橙に何をさせてるんですかー!! もしも道中で怪我したらどうするんです! 里で人間たちに虐められたらどうするんです! 橙の可愛さに虜にされた誰かに誘拐されたらどうするんです! 橙の何かあったら……その時は、覚悟しておいてください、紫様。私はこれから橙を追いかけます!! お酒と簡単なおつまみは用意してあるので宴会でも何でもやってて下さい!!!」
こ、怖~。藍って怒るとあんなに怖いんだ。付き合い長いけど、あんなに怒ったのは初めて見たわ。あー、吃驚した。
まあ、いいわ。橙だってそんな簡単にやられないだろうし、宴会始めようっと♪
十六夜咲夜は空を飛んでいた。日が沈むにつれて暑さも大分治まってきたが、それでもまだまだ暑いことには変わりない。だらだらと汗をかきつつ、空を飛び回っている。
お嬢様はどこに行ったのかしら。一番可能性の高い場所は博霊神社だったけれど、もぬけの殻だし。お嬢様の匂いが残っていたから、神社にいたことは確かなんだけど、匂いがそこでスッパリ途切れているのよね。
「ふぅ。少し休もう。どこか涼しいところはないかしら」
休憩場所を探して飛んでいると、急に周りが涼しくなった。大きな湖が眼下に広がっていた。
「ああ、そういえばここは涼しかったわね。あの頭の弱い妖精にもこんな時ぐらいは感謝しなくちゃね」
ゆるやかに下降し、大きな木の下に腰を落ち着けた。そよそよと微風が頬を撫でた。汗がすーっ、と引いて行くのを感じた。良かった、汗が引いた。汗まみれだったら瀟洒なメイドじゃないものね。
「だんだんだんだんだーん!!! そこにいるのはだーれだぁー」
≪チルノがあらわれた≫
「やっぱり、出たわ」
「あたいはさいきょーのしょーごーをもつチルノさまだー!!」
「咲夜よ。あまりに暑いから、ここで涼ませてもらってるわ。出てきてもらったついでに聞くけど、貴女ウチのお嬢様を見てないかしら」
「レミリア? うーーん、みたよ!!」
「本当!!?」
「ばーか、ウソだよー。にせちちー」
せっかく涼しくなったのに又、熱くなっちゃうじゃないの。この⑨な妖精は。私を騙した上に、触れちゃいけないとこに触れちゃった。
奇術『ミスディレクション』
幻符『殺人ドール』
幻葬『夜霧の幻影殺人鬼』
「ッッッッガッ、ガガガガガガ、うんぎゃぁぁぁああああ」
≪チルノはやられてしまった≫
「あ、しまった。コレ倒しちゃったら、ここももう涼しくないじゃない」
仕方ないか。雀の涙ほどの時間でも休めたのだから良し。
次はどこに行こうかしら。誰かに聞こうにもさっきから誰ともすれ違わない。こんな暑い中を好き好んで出歩く奴なんて、この幻想郷にはいないだろう。いや、いるか。解らないけど。
「う…………ん? 何かしら、アレ」
目を凝らして見つめる先には、土煙。みるみる間に土煙は大きくなり、肉眼で捉えられる程になったころ、これを起こしているのが一人の人物だと解った。あれは藍の式神、橙だ。
「ぅぅぅううにやぁぁぁああぁ!!!」
速い。なんと速いのだろう。もう、すぐそこまで。――ん、こっちに向かってくる? え、ええ、ええええ!!?
「ちょっとストーップ!! ストップ、ストーップ!!!」
一際、大きな土煙を伴って暴走特急は停止した。その間、約30㎝。
「んにゃ?」
「んにゃ? 、じゃないわよ。貴女、私を轢き殺す気!? なんでこっちに向かってくるのよ」
「めいどだから?」
「メイドだからって何よ!?」
「めいどを冥土に……ぷっ、にゃははっはははは、んにゃーはらいたーい」
「誰がうまいこと言え、って言ったかしら」