人間の里
別れの挨拶を交わし、レミリア達は竹林へ向かう。
その後姿が見えなくなるまで見送った、慧音と阿求。
「・・・行ってしまったなぁ」
「・・・行ってしまいましたねぇ」
とても騒がしい一時だったが、悪くない気分。
しみじみとした気分に浸っていると。
「呼ばれて飛び出てアタイ、参・上!!」
誰も呼んでないのになんか来た。
「さあ、冷却して欲しい奴は誰!?アタイが特別大量出血サービスしてやるわ!!」
それはきっと死んでしまう。
いきなりの氷精の登場に、あっけにとられる二人。
そこに、更なる乱入者。
「だ、だめだって、チルノちゃん!、ここ人間の里だよ!」
やってきたのは大妖精。
そんな大妖精の言葉も意に返さず、チルノは続ける。
「大丈夫、大丈夫!だってアタイは最強よ!」
「理由になってないし意味不明だよ!?、ああごめんなさいごめんなさい!チルノちゃん落ち着かせたら出て行きますから!」
騒がしい。
今日は、妖怪も妖精も、無害で変なのばかりだ。
まあ、妖怪や妖精にも色々あるんだろう。
そう結論付け、とりあえず、妖精二人を落ち着かせるべく歩を進める慧音だった。
・・・・・・・・・・・・
迷いの竹林
慧音の言葉を信じ、竹林に向かった紅魔組。
竹林の入り口に到着すると、確かに、何者か、それも複数が潜んでいる気配がする。
気配を感じ取り、レミリアが目を細め、ふうん、と呟く。
「・・・やっぱり、当たりかしらね」
「まあ、十中八九、月の位置と合わせても、ここ以外に術の基点として相応しそうな所なんてないでしょうし」
「生命反応が多数ありますね、これは・・・兎、みたいですけど?」
探査を行っていた小悪魔が結果を報告する。
「兎?・・・竹林に?」
「はい」
「ふうん・・・他には?」
「大きな反応が竹林の中央辺りに三、四で、あとそこからずっと東の方に一つ・・・それと」
「それと?」
「この先真っ直ぐ行ってすぐのところに一つ・・・」
「・・・恐らく、このまま行けばすぐにかち合うことになりそうね・・・どうする?レミィ」
その親友の言葉に、レミリアは。
「あまり時間がないけれど、立ち塞がるんじゃしょうがないわね・・・悪いが、そいつには落ちてもらう」
不適に笑い、そう言い放った。
~永夜抄IF パチュリー・レミリア編~ 第5話 楽園の巫女 再び
弾幕。
竹林に入って、竹以外に見た初めてのものである。
兎。
竹林に入って、初めて見た妖怪である。
巫女。
竹林に入って、初めて見た人間である。
「・・・待っていたわ」
「・・・厄介なのが、敵に回ったものね」
その姿を確認し、パチュリーは、ため息をつく。
「あんた達が何のために夜を止めているのか知らないけど、これ以上夜を止め続けるならあんた達でも容赦はしない」
随分とやる気のようだ。
そして、その言葉を聞いて、嬉しそうに目を細めるレミリア。
「いいわ、いつかの借りを、利子付きで返してあげる」
「・・・待ちなさい、レミィ」
応戦しようとするレミリアを引き止める。
「ちょっ・・・パチェ、何で止めるの?」
「・・・ここで潰しあうのは得策ではない、レミィにも判ってるはずよ?」
「・・・それ以外に、何かいい案でもあるの?」
「まあ、私に任せときなさい・・・」
そう言って、前に出る。
「待たせたわね」
「待ちくたびれたわ」
符を構える霊夢。
そして、パチュリーも、懐から一枚の札を出す。
それを、霊夢にも見えるように突き出す。
そして、それを見た霊夢の表情が一変する。
「なっ・・・それは・・・」
ピン符「福沢諭吉の肖像画」
それは、現在発行されている最高額。
普段、賽銭箱に入るはずなどなく、手に入れることなど叶わぬと夢見ていたもの。
霊夢の全身が震える。
符を持つ手には、力が入らない。
「・・・さて、霊夢」
ビクリ、と肩が跳ねる。
その姿を見て、パチュリーは確信する。
勝った、と。
そして、言葉を続ける。
「貴女には、これを受け取る権利があるわ・・・ただし」
「・・・ただし?」
「その場合、今夜のことを見逃す事、それが条件」
選べと言う、全てか無か。
随分と安い全てだが、ここで受け取らなければ、こんな大金、手に入るのは一生ないかもしれない。
霊夢にとって、一万円はそんな金額だった。
「・・・」
「さあ・・・躊躇うことはないわ、受け取りなさい」
霊夢の心は揺れていた。
ソレを手にとって、道を譲るだけでいい。
それだけで、味のない山菜と水だけの生活に別れを告げられる。
そう、手にとるだけでいいのだ。
その後は、体を横に動かすだけでいいのだ。
だが、博霊の血が、それを許さない。
受け取るな。
道を譲るな。
そう言っている。
そして、長い葛藤の末、霊夢の出した結論は。
「・・・受け取れない・・・」
拒絶。
「私は博麗よ・・・そんな物に、私が捕らわれると思わないで!」
これが霊夢のあるべき姿。
何者にも捕らわれず、何事にも平等な姿勢。
きっと、代々の博麗の巫女達も、あの世で満足そうに頷いているに違いない。
その姿を見て、パチュリーは目を閉じる。
「・・・そう、残念ね・・・」
「本当に残念よ・・・あんたは私を怒らせた」
そう言って、札を構える霊夢。
後ろに控えていた、レミリアと小悪魔も、構えを取る。
そしてパチュリーも、懐に手を入れ、札を取り出す。
「そうね・・・本当なら、もう一枚あげるつもりだったのに」
「何でも言いつけてください、むしろ犬とお呼びください」
「「陥落早ぇ!!」」
博霊の巫女、撃沈。
きっと、代々の博麗の巫女達も、あの世でずっこけているに違いない。
それ程の、変わり身の早さだった。
「ちょっ、ちょっと、霊夢」
「んほへ?」
早速、パチュリーから諭吉さん二枚を受け取り、ホクホク顔の霊夢に詰め寄るレミリア。
そして、アンタそれでいいのか、と、問い詰める。
「そんなわけないじゃない」
と、真剣な顔で返してくる。
ああ、いつもの霊夢だ、と安心したのもつかの間。
「久しぶりの食事らしい食事よ、美味しいもの食べなきゃ損だわ・・・うふ、うふふふふふふ・・・・・」」
話が噛み合っていない。
どうやら、博霊の巫女の今現在での最大の関心事は、手にしたお金の使い道だけのようだ。
「霊夢ぅ・・・」
そんな霊夢の姿を見て、滂沱するレミリア。
お金のバカヤロウ。
こんなのがあるから霊夢がおかしくなったんだ。
「・・・さて、サクサク次に進むわよ・・・」
そう言って、次に進もうとする張本人。
「待ちなさい」
「みゅきゅうっ」
後ろ襟を掴んで引き止める。
変な声が出たが、気にしない。
「ゲホッ・・・何よ、レミィ」
「何よ、じゃない!、行くのは霊夢を正気に戻してからよ」
「・・・えー」
「えー、じゃない!」
全く、仕方ないわね、と呟きながら、霊夢に近づくパチュリー。
「ほら、霊夢、しっかりしなさいな」
「うふ、うふふふふ、鰻、饅頭、玉露、お肉、白米・・・」
返事がない、ただの金の亡者のようだ。
確かに、このままにして、知人に見つかり、その後の余生を生暖かい目で見られるというのも可哀想だ。
正気に戻す必要がある、と判断したパチュリーの取った行動は。
とりあえず、ショック療法。
パチュリー の こうげき 本のかど!
しかし こうげき は ハズレた!
「・・・は?」
「うふ、うふふふふふ・・・・」
避けられた。
明らかにこちらを見ていないのに避けられた。
もう一度、試してみる。
「うふふふふふ・・・・」
もう一度。
「うふふふふふ・・・・」
「・・・」
何度試しても当たらない。
ならば、これならばどうだ、と、取り出したのは。
火水木金土符「賢者の石」
五行の力を借りた全方位射撃。
少々手荒だが、これならば、と全弾叩き込む。
だが、次に見た光景は、十分驚愕に値するものだった。
「うふ、うふふふふふ・・・」
避けている。
全弾避けている。
安地?、パターン?、関係ないね、といわんばかりに避ける避ける。
「・・・」
処置なし。
そう判断したパチュリーは、レミリアに振り返り。
「・・・放って置きましょう・・・」
「・・・そうね」
「・・・そうですね」
満場一致で見なかった事にした。
霊夢?そんな娘いましたか?
アハハ、ウフフと言う声を背にして、再度前に進む。
さあ、元凶はこの先だ。
次回予告
先程の光景を見なかった事にして、前に進む紅魔組。
そして、辿り着いた先は、広大な屋敷。
????「遅かったわね」
「全ての部屋は封印したわ、もう、姫を連れ出せないでしょう?」
レミリア「うわ、でた、新参ホイホイ」
????「新参ホイホイ言うなー!!」
嘘かホントか月の兎!!
レミリア「あら、これ、何かしら?」
????「あ、ちょっ、待って!!、耳はダメー!!」
まさか・・・○が○○○なんて・・・。
次回、~永夜抄IF パチュリー・レミリア編~ 第5話 知らないようで、皆知ってる月兎の秘密!? お楽しみに!!
????「新参ホイホイっていうなぁ・・・・・・・」(涙)
今日のNG
弾幕。
竹林に入って、竹以外に見た初めてのものである。
兎。
竹林に入って、初めて見た妖怪である。
巫女。
竹林に入って、初めて見た人間である。
スキマ妖怪。
竹林に入って、初めて見た年増である。
白黒。
竹林に入って、初めて見た人間の魔法使いである。
七色。
竹林に入って、初めて見た人間以外の魔法使いである。
亡霊嬢。
竹林に入って、初めて見た冥界の姫である。
半人霊前。
竹林に入って以下略・・・。
「「「多すぎ!!(です)」」」
「というか、私だけ何で以下略なんですか!?」
「「「「「「「「まあ、そこは仕様で」」」」」」」」
「納得できるかぁー!!」
その後、月の異変は、あっという間に解決したそうな。
「・・・どーせ私なんて年増よぅ・・・」(涙)
こまかいツッコミさせてもらいますと、(一般的に使われてる貨幣ではないものの)一万円以上である『金貨』は現在も発行されとります
それと幻想郷とこっちじゃあお金の単位が違いまっせ。
いつも通り楽しまさせていただきました。
-10点は上の通り。