Stage1 蛍火の行方
蛍の灯りがいつもより霞んで見えたのは気の所為か。
今宵は永い夜になるといい。
月が地球の陰に隠れた夜。
幻想郷の空には九尾と二尾の影が舞っていた。
「なあ、橙。やっぱりお前は家にいた方が……」
「大丈夫です!藍さまの役に立つために修行つけてもらったんですから」
「しかし、強力な妖怪なんかが現れたら……」
そんな二人の前に何者かが立ちはだかる。
「現れたら、って時は――」
「しゃー!!」
蟲の妖怪が口上を終える前に、橙は飛びかかって行った。
「ぎゃー!」
「わーい、蛍狩りー!」
「あ、そっちは、よし、そこだそこ、ああ、そうじゃない」
リグルをどつきまわす橙を、ハラハラと見守る藍。
ふと、横を向くと、視界一杯にリグルの弾が迫っていた。
~脱出『テンコーイリュージョン』~
「い、一寸の虫にも、五分の魂……ぐふっ」
ぐったりとしたリグルを放り捨て、橙が振り返る。
藍が消えた後には、ズタボロになった道士服だけが残っていた。
「ら、藍様……?」
橙がきょろきょろと辺りを見回していると、上空から声が聞こえた。
「ほらね、重ね着してきて正解でしょ。橙の前でスッパテンコーになるところだったわよ?」
「紫様の深慮遠謀、恐れ入りました」
スキマに腰かける紫に藍は深々と頭を下げていた。
紫は腰をあげると背伸びをし、二人に告げる。
「さーて、そろそろ私も楽しもうかしら?」
「この程度、私と橙で十分ですよ。紫様がお出ましになる程ではありません」
「私だって遊びたいわ」
「しかし……」
「いいじゃない、たまには三人揃って出かけても。橙もそう思うでしょ?」
「はい!」
「ほら、多数決で決定よ」
「はいはい、わかりましたよ」
Stage2 人間の消える道
人間の通り道に、真夜中に出歩くものは獣か妖怪。
少なくとも人の出る幕は無い。
「ちんち~ん♪」
「あ、あれ?前が見えなくなっちゃった?」
「おのれ夜雀、よくも私の橙を!」
目をこすり、おろおろとうろたえる橙。
藍は一瞬にして間合いを詰めると、ミスティアを締め上げた。
「ちょ、ちょっとまって~!」
「何だ?照り焼きよりも水炊きがいいのか?」
「藍様ー、私塩焼きがいいです」
「おお、橙、大丈夫か?」
「はい、紫様に治して貰いました」
藍が振り向くと、紫が橙を膝の上に抱いていた。
「藍、自分の式の面倒くらい自分で見なさいよ。敵しか見えないなんて保護者失格ね」
紫が橙の頭をなでると、橙は喉を鳴らして紫の胸に頭を押し付けた。
ギリリと歯を食いしばる藍。
紫はにやにや笑いながら言葉を続けた。
「どうしたの?さっさと料理して頂戴」
「……そういう訳だ、大人しく丸焼かれろ」
「ちょっと待って、って言ったでしょ?」
「何だ?遺言か?」
「その通り!」
~LastWord『ブラインドナイトバード』~
ミスティアの宣言と共に、大量の弾が紫に降り注ぐ。
「ちょっと藍、何やってるのよ!」
(死ねやババア。もはやボムは残っていない。私と橙の蜜月を邪魔した罪だ)
「ぎゃあー!」
夜空に絶叫が響き渡る。
なす術もなく攻撃を受けた藍はズタボロになって地に落ちた。
「ふぅん、藍を倒すなんてなかなかやるじゃない?」
スキマに腰かけた紫は、ミスティアに視線を向けた。
ミスティアと紫の目が合う。
「さて、もう言い残すことはないかしら?」
紫は扇で口元を隠し、にっこりと微笑んだ。
ミスティアの顔から血の気が失せ、冷や汗が滝のように流れる。
「や、八目鰻ご馳走するから許して~!」
「あら、なかなか魅力的ね。どうしようかしら?」
紫に視線を向けられ、橙はぶんぶんと首を縦に振った。
「そうね。今晩はそれで許してあげるわ」
「た、助かった~。じゃ、ついて来て」
ミスティアはほっと胸を撫で下ろし、二人を案内して歩き出す。
「藍さまー、早くー」
「藍、こんな所で寝てる場合じゃないでしょ」
紫は藍の尻尾をつかむとミスティアの後を追った。
尻尾が千切れて香霖堂の屋根に穴が開いたのは別のお話。
Stage3 歴史喰いの懐郷
一車道の先には人間達が住む小さな里がある。
だが里があるはずの場所には、何かが、いた。
「お前達か。こんな真夜中に里を襲おうとする奴は」
「うにゃ。通りがかっただけだ。気にするな」
「魔理沙!分かっていないと思うけど、こいつは人間じゃないわ」
「見ればわかるって。化け物だろ」
奇異の視線を向けられ慧音はむすっと顔をしかめた。
「ふんだ、化け物はお前たちの方だろう。妖怪め」
「失敬な。私はれっきとした人間だぜ」
「何でもいいよ、お前たちの歴史を無かった事にしてやる!」
~旧史『怪綺談 -オールドヒストリー-』~
「あ~、危ないところだった(汗)」
「魔理沙、私を盾にするなんて、何考えてるのよ!」
「はいはい、こんなちっちゃい子を盾にするなんて大人げなかったわ。ごめんなさい☆」
「は?あなたにちっちゃいなんて言われる覚えないわよ」
「アリスー」
「どうしたの上海……って、うそ、小さくなってる!」
上海の持つ鏡を見て、目を丸くするアリス。
彼女はきっと魔理沙を睨むとぽかぽかと叩き始めた。
「どうしてくれるの、貴女のせいよ!」
「うふふふふ、お子様パンチだなんて、かーわいい(はぁと)」
「その喋り方やめて。気持ち悪いわ!」
「き、気持ち悪いだなんて……酷いわ(泣)」
目に涙を浮かべ、よよよと泣き崩れる魔理沙。
アリスは慌てて駆け寄ると謝り始めた。
「ご、ごめん、言い過ぎたわ」
「しくしくめそめそ。昔のアリスは、もっと素直だったのに~」
「ひねくれてるのは貴女のほうでしょ!」
「お前たち、誰か忘れていないか!?」
「あら、さっきの半獣」
「まだいたんだ?」
二人が振り返った先には、肩を怒らせる半獣の姿があった。
「満月の夜に喧嘩を売るとはいい度胸だ。この角の錆にしてくれる!」
~少女弾幕中~
「おのれ、掘りさえすれば……」
「ふん、Ex化してもしょせんは中ボス、Exボスの足元にもおよばないわ」
「月が正常ならこんな奴には……」
「だから、私たちはまんげつを取り戻そうとして――あふぅ」
アリスは大きなあくびをすると眠そうに眼をこすった。
それを見た魔理沙はにやにや笑いながら
「あら、お子様はもうおねむの時間ね」
「わたしはお子さまじゃないわよ!」
「夜雀が泣くから帰りましょ☆」
そう言って魔梨沙はアリスの首根っこをつかむと魔法の森へと飛んで行った。
「やぁだー!まだかえりたくないー!」
幻想郷の空に少女の声が響き渡った。
Stage4 伝説の夢の国
暗闇の竹の国は、霊の様に不気味に見えた
今にも竹が、妖しく輝きだしそうである。
「そこまでよ!」
(中略)
「逃げたわ!そっち」
「お待ちくださいお嬢様」
「なによ、借りを返すチャンスなのに」
「今夜の目的は満月を取り戻すことです。霊夢ごときに構っている暇はありません」
「えー、でもー」
「レミリア様、たかが巫女ごときに目的を見失っては、カリスマが下がりますよ」
「そうなの?」
「そうです」
さっきの場所からほど近い場所で、霊夢は装備を確認していた。
「さて、準備完了。今度は負けないわよ」
霊夢は気合いを入れると、飛んで来た道を引き返した。
「……何処行ったのかしら?」
行けども行けども二人の姿は見つからず、霊夢はきょろきょろと辺りを見回した。
その様子を物陰から眺める二つの姿があった。
「くふふ、霊夢があんな顔するなんて、レアなもの見たわ」
「お嬢様……」
満足そうにほくそ笑むレミリアを見て、咲夜はそっとため息をついた。
「見つけたわ!」
「ちょっと咲夜、しっかり気配を隠しなさいよ!」
咲夜はレミリアの前に出ると、霊夢を見下ろして言った。
「ずいぶんと張り切ってるわね。相手にされなくて寂しかったのかしら?」
「咲夜、いま私の事無視したでしょ」
「まさか。アリスじゃあるまいし」
「それにしては不安そうな顔してたけど?」
「ねー、聞いてるの?」
「うるさいわね。とにかく、あんたらを結界の隙間に落とし込む!」
戦闘態勢をとり、完全にやる気の霊夢。
咲夜は振り返り、レミリアに笑顔を向けて言った。
「さあ、お嬢様。借りを返す時が来ましたわ。私は手を出しませんので存分に戦ってください」
「……挑発しておいて自分は戦わないの?」
「本気の相手を叩き潰してこその意趣返しです」
「ねえ咲夜、もしかして怒ってる?」
「私は最高の舞台を用意しただけですわ」
「そっちから来ないならこっちから行くわよ!」
霊夢の言葉と同時に咲夜の姿が消える。
「あっ、咲夜!……わかったわよ、一人でやってやるわよ!」
数刻後、紅魔館の門前で門番に抱きついて泣く吸血鬼の姿が確認された。
Stage 5 穢き世の美しき檻
「穢き所に、いかでか久しくおはせん」
そういうと閉ざされた扉が一枚残らず開かれ――
「遅かったわね。全ての扉は封印したわ。もう、姫は連れ出せないでしょう?」
(中略)
「兎は、皮をはいで食べると、鳥になるの。覚えておきなさい」
「嘘を教えるな。っつか、無視するな!私の目を見ても、まだ正気で居られると思うなよ!」
「うわぁっ!?」
鈴仙と目が合い、妖夢は目を抑えてうずくまった。
「さあこれで一対一。」
「あら、私は最初から一対一のつもりよ。ねえ妖夢?」
「……斬る」
幽々子に声をかけられ、妖夢はゆらりと立ち上がる。
その目は狂気の色で真っ赤に染まっていた。
「お前、斬られはしないと言ったな」
「言ったけど?」
「その言葉の真偽、確かめさせてもらおう」
~人符『現世残』~
銀光一閃、永遠亭の廊下に細切れになった鈴仙の服が舞い散った。
「いやああぁぁっ!?」
「……妖怪が鍛えたこの楼観剣に斬れぬものなど、あんまり無い」
再び妖夢の手が閃く。
真っ二つに切り裂かれた障子の後ろには、顔を青くする兎達の姿があった。
「さあ、次の獲物はどいつだ!(斬)」
妖夢に睨まれ、脱兎となる兎達。
床を蹴り、妖夢は部屋に飛び込んでいった。
「しくしく……もうお嫁にいけない……」
喧騒が遠のく中、うずくまって涙を流す鈴仙に衣が掛けられる。
顔を上げると幽々子が柔らかな笑みを浮かべていた。
「この国ではね、嘘をついた兎は剥かれるのが習わしなのよ」
幽々子は鈴仙を立ち上がらせると、永遠亭の奥へと連れ込んだ。
Final A 姫を隠す夜空の珠
永い永い廊下。この廊下は何者かが見せる狂像か。
近すぎる月の記憶は、妖夢には、無かった。
長い長い廊下の真ん中。
妖夢は足を止め、辺りを見回した。
「ここ、ここ。さすが半人前ね。こんな短時間で見失うなんて」
妖夢が振り向いた先には、弓を持った女が立っていた。
彼女は笑みを浮かべて妖夢に告げる。
「まぁ、ここは私が作った偽の通路。貴方が見失うのも無理は無いわ――って、聞いてる?」
微みょんに明後日の方を向いている妖夢に、永琳はあきれた声を出した。
「今から聞く。お前がここの主か?」
「だったらどうするの?」
「KILL」
「いつまでその余裕が持つかしらね。留処なく溢れる月の記憶。これを浴びた地上人で狂わなかった人は居ない」
「妖怪が鍛えたこの楼観剣に斬れぬものなど、あんまり無い!」
~少女弾幕中~
「くっ……」
「ふふふ、さっきまでの勢いはどうしたのかしら?」
膝をつく妖夢を見下ろし、余裕の表情を浮かべる永琳。
彼女は胸元からスペルカードを取り出すとさらに笑みを深めた。
「さぁて、今度こそは死ぬかもね?」
「永琳、大変よ!」
てゐに邪魔をされ、永琳は不満げな声で返事をする。
「どうしたの、今いい所だったのに」
「亡霊のせいで鈴仙が足腰立たなくなっちゃったの!」
「なんですって!?」
Final B 五つの難題
解決不能な難題。
永遠と月の力も、その問題を解くには不十分だった。
「まったく、わざわざ冥界から来たってのに主が出かけてるだなんて失礼しちゃうわ」
ぷんぷんと怒りながら皿に山と盛られた餅を頬張る幽々子。
あっという間に平らげた彼女は、傍でお茶を注ぐ兎に声をかけた。
「ねえ、お代わりはまだ?」
「ま、まだ食べるんですウサか?」
「これっぽっちじゃ全然足りないわ。腹一分目ってところよ」
そう言って幽々子は兎のあごに手をかけ、その目を見つめる。
そしてにっこりとほほ笑むと顔を近づけた。
「貴方、とっても美味しそうね。食べちゃおうかしら?」
「お代わりお持ちしましたウサ!」
餅を運んできた兎が大声で叫ぶと、幽々子はくるりと振り向いて餅を食べ始めた。
その後ろでひそひそと話す兎達が
「どうしようウサ。鈴仙様はもう動けないウサ」
「もう少しの辛抱だウサ。てゐ様が永琳様を呼びに行ったウサ」
「なら私が活を入れて来てあげるわ」
いつの間にか兎達の輪に幽々子が加わっていた。
餅が積まれていた皿は言うまでもなくカラである。
ゆっくりと歩きだす幽々子を、兎達は恐れ慄いて見送るしかできなかった。
疲労困憊の態で床に突っ伏す鈴仙。
幽々子はその横にしゃがみ、声をかける。
「たかが餅の百貫や二百貫で力尽きるなんて、だらしないわよ」
声を出す気力もないのか、鈴仙からの返事はなかった。
「う~ん、このままじゃ硬くて美味しくなさそうだし……」
幽々子はつまらなそうに扇子で彼女をつつきはじめた。
そうこうしているうちに足音が近づき、襖が勢い良く開かれる。
「鈴仙!」
「あら、遅かったわね」
「ししょう~…」
鈴仙が無事なことを確認し、ほっと息をつく永琳。
彼女は殺気をみなぎらせ、幽々子に向かって告げる。
「良くも好き勝手やってくれたわね。この代償は高くつくわよ」
「困ったわね、今あまり持ち合わせがないのよ……って冗談は置いといて」
永琳の視線を正面から受け止め、幽々子が立ち上がる。
彼女は扇を開いてびしっと永琳に向かって突き付けて言った。
「満月が異常なのも、夜が明けないのも、妖夢がみょんなのも、貴女を倒して解決するわ!」
「威勢がいいけど、蓬莱人の私に勝てると思っているのかしら、亡霊さん?」
「そ、そんな……不死人だなんて……」
幽々子は後退るとぶるぶると体を震わせ、感極まった声を出した。
「お肉食べ放題!」
目をらんらんと輝かせ、幽々子が息を荒らげる。
危険を感じたのか、鈴仙を含めて兎達の姿はすでにない。
幽々子はどこからともなくレーヴァテインとグングニルを取り出すと、ゆっくりと歩き出した。
「龍を食べるためのナイフとフォークがこんな所で役に立つとは思わなかったわ」
レーバティンとグングニルが打ち合わされ、火花を散らす。
永琳は思わず床にへたり込み、目に涙を浮かべた。
幽々子から発せられるあまりにも禍々しい力は、絶対的捕食者のそれだった。
彼女の心の中には、失ったと思っていた、恐怖という感情が蘇っていた。
~○~~○~~○~
「終わったよ」
「幽々子さまの具合は?」
幽々子の寝室から出てきた鈴仙に妖夢が問いかける。
「ただの食あたりだから大丈夫。何か変なもの食べなかった?」
「……心当たりが多すぎてわからないわ」
「そ、そう……」
妖夢がため息をつくと、鈴仙は愛想笑いを浮かべてお茶を啜った。
「とりあえず人間用の薬出しとくね。幽霊に効くか分からないけど」
「ありがとう」
「師匠ならちゃんとした事わかると思うんだけど、お化け怖いって嫌がるし」
「あれだけの事されたら」、そりゃそうなるわよ
「まあ、おかげで変な実験に付き合わされなくなったから別にいいけど」
それからというもの、永遠亭では子兎が悪いことをしそうになった時に
「幽々子がやって来るわよ」
と言って躾けるようになったという。
(Ending No.-4 Clear?)
Extra 蓬莱人形
満月の下の、草木も眠る丑三つ時。
人間と妖怪の肝試しは、いったい何が恐れる?
最大の大罪の元凶は、いったいどこに居る?
真夜中の竹林を二人の魔女が翔け抜ける。
彼女達の通った後には、黒こげになった竹と妖精が煙を上げていた。
「ふん、手ごたえのない奴らね」
「ノンディレクショナルレーザー打ち放題は反則だぜ」
「私のは貴女のと違ってスペルじゃないもの」
「ああそうかい」
ぶっきらぼうに返事をし、肩をすくめる魔理沙。
パチュリーは口をへの字にして魔理沙に詰め寄った。
「あのね、わざわざ私が手伝ってあげるってのにその態度は何よ」
「頼りにしてるぜ、パチュリー」
「と、当然よ。私はあの人形遣いなんかとは違うんだから、大船に乗った気でいなさい」
魔理沙に顔を近づけられ、パチュリーは頬を染めてそっぽを向く。
そんな彼女たちの前にモンペ姿の少女が現れた。
「泣く夜雀も黙る丑三つ時の竹林。こんな時間にほっつき歩く人間が居るなんて」
「誰だ?」
「貴方、人間?ね」
「なんだその微妙な言い方」
「人間だけど、たぶん人間じゃないから」
「で、ここに来た目的は何?」
「肝試し」
「人狩り」
「!、ついに追手がここまで来たか!」
「犯罪者みたいなこと言うんだな」
「そうなんじゃない?こんな所に隠れ住んでるくらいだから」
「あいつには指一本触れさせない!」
「上等、こちとら出番がなくてストレスがたまってるんだ!」
弾幕をかいくぐり、魔理沙がレーザーを撃つ。
真っ直ぐに妹紅へと向かったそれは、容赦なく彼女の胸を貫いた。
糸が切れたように落ちて行く妹紅を、呆然と見つめる魔理沙。
パチュリーは彼女の肩に手を置くと、静かな声で告げた。
「これであなたも犯罪者ね」
「やだ、私、そんなつもりじゃ……」
「つもりはなくても事実は事実よ。現実を受け止めなさい」
泣きそうな顔をする魔理沙を、パチュリーはじっと見つめていた。
そんな二人の足元に炎が立ち上る。
「『リザレクション』!」
妹紅が蘇り、再び二人の前に立ち塞がった。
「まだまだ!この程度で死ぬものか!」
「なんだ、もう復活したの」
「知ってたのかよ、パチュリー!」
「何となく感づいてただけだけど。結構可愛い顔してたわよ」
「うるさいな」
「さて、次は私の番ね」
ムスッと顔をしかめた魔理沙に笑みを返し、パチュリーは前に出る。
「一人でやる気なんていい度胸じゃない! 不死『火の鳥 -鳳翼天翔-』!」
「土水符『ノエキアンデリュージュ』」
パチュリーの放った水弾が炎の鳥を砕き、さらに妹紅を撃ち抜く。
妹紅は空中で復活すると、驚愕の表情を浮かべ、呟いた。
「馬鹿な、私のスペルが全く通用しないなんて……」
「水剋火そして火生土。鳳凰の力ならこの関係からは逃れられないわ」
「そんなもの、私の炎で焼き尽くしてやる!」
「妹紅、もうやめて!」
竹の陰から美しい黒髪の少女が現れる。
妹紅は慌てて飛んで行くと、彼女に詰め寄った。
「輝夜、隠れていろって言ったじゃないか!」
「いやよ、貴女だけが傷つくなんて耐えられないわ!」
「月に連れ戻されたらそんなこと言ってられないだろ!」
「一人で戦うことないわ、二人なら、一人じゃできない事もできるもの!」
「輝夜……わかった、一緒に戦おう!」
「妹紅!」
「「恋&日符『ロイヤルスパーク』」」
二人は手を取り合ったまま光のなかに消えた。
パチュリーと魔理沙は黙って踵を返すと、帰り路についた。
「はあ、やってらんないわ」
「パチュリー、帰りに夜雀の屋台で一杯ひっかけて行こうぜ」
「いいわね」
ところで、何で幽々子はレーバティンとグングニルを持ってたわけ?
あと、アリスは本を持ってる描写が欲しかったかな(持ってないと、3面ボス・・・
Abnomal → Abnormal
少し口うるさいかもしれないけど、『r』が抜けてまっせ?