永夜抄IF パチュリー・レミリア編 4
紅魔館組が夜雀、ミスティア・ローレライを倒してから約半刻。
草木も眠る・・・というか、ぺんぺん草すら生えていない。
そのロイヤルフレアの着弾点近くに、半人半霊、魂魄 妖夢が降り立った。
妖夢は、着弾地点を見て顔をしかめる。
「うわ・・・誰だ?ここまでやらかした奴は・・・」
この様な光景、いくら幻想郷とはいえ、出来る者は数えるほどしかいないだろう。
そして、その数えるほどの人物の殆どに面識のある妖夢は、騒霊三姉妹の長女のソロライブを、10時間連続で聞いた後くらいに鬱になった。
そうして鬱になって、しばらくしていると、なにやら香ばしい香りがしてきた。
おや、と辺りを見回すと、程なくしてその原因を見つかった。
「・・・これは・・・」
黒い。
第一印象はこれだった。
よく見ると、羽らしきものが背中(?)から生えている。
まあ、そのくらい黒焦げだった。
「鳥・・・・・・夜雀、か?」
確証は持てないが、ここ最近、人間の里で話題に上った時に聞いた風体と似ている。
そして、そう口に出して思い出した。
『妖夢?よーむー?』
『どうかしましたか?幽々子様』
『最近鳥料理を食べてないわ、このままでは鳥度不足で大変なことになるわー』
『はあ・・・具体的にはどのような事になるのでしょうか』
『飛べなくなる』
『・・・』
『どうかしたかしら?』
『いえ、では近日中にご用意いたします』
『頼んだわよー』
・・・いろいろ突っ込みたい所はあるが、まあ気にしないことにした。
ともあれ、この好機、逃がす手は無い。
善は急げと黒焦げの夜雀に近づき。
「よい・・・しょっと・・・」
両手で抱え、空に浮かび上がる。
「これで満足してくださるといいんだけれど・・・」
そう呟きながら向かう先は冥界、白玉楼。
本日、二人目のパチュリーの犠牲者は、同じく二人目の白玉楼行きと相成った。
その後、白玉楼に、夜雀の悲鳴が響いたのは言うまでも無い。
合掌。
~永夜抄IF パチュリー・レミリア編~ 第4話 幻想郷の中心でパチェと叫ぶ
人間の里 上空
月の異変を解決するため、幻想郷の夜空を飛ぶ紅魔組。
空には作り物めいた光を放つ件の月。
そして正面には・・・。
「・・・お前達、何者だ?」
人間の里の守護者、上白沢 慧音が立ちはだかっていた。
慧音は、紅魔組が、人間の里に差し掛かった瞬間、攻撃を仕掛けてきた。
そして、幾つかの弾幕の応酬の後、何を思ったのか、攻撃を止め、こうして話し掛けてきた。
だが、いきなり攻撃され、いきなりそれを中断するという勝手な振る舞いを、レミリア・スカーレットが許すはずも無い。
質問に対してレミリアは、挑発するような対応をする。
「はん、出会って早々に弾幕撃ってくる無礼者に名乗る名前はないねぇ」
「っ、貴様・・・」
早くも喧嘩腰。
そして、その場を静めようとするのは、知識人。
「少しは抑えなさい、二人とも」
「でもパチェ!、元はといえば・・・」
「元はといえばお前達が里に近づいたのが悪い」
「・・・いい度胸だ、私の言葉を遮るなんて・・・」
「ふん、私は自分の主張をしたまでだ、お前にとやかく言われる筋合いなど無い」
再び竜虎合間見える。
まあ、お互いの背後にあるのは蝙蝠と白沢なのだが。
そして、すわ激突か、と言うところで、またしても静止がかかる。
「だから、落ち着きなさいって」
手にした本の角で一撃。
れみりあ は 9999 の ダメージを うけた れみりあ は しんでしまった
「・・・これで落ち着いて話が出来るわ」
「お・・お嬢さまー!!」
「え?、あ、ああ、そう・・・だな・・・」
あまりの衝撃的な光景に、さすがの慧音も言葉が出ない。
だが、向こうに(少なくともパチュリーに)攻撃の意思が無いという事を理解し、
「・・・とりあえず、いきなり攻撃したことを詫びさせてもらう」
すまなかった、と、謝罪した。
「こ、ここは蘇生のアイテムを・・・」
「まあ、こっちも連絡無しで貴方達の領域に差し掛かったみたいだし、誤解を受けても仕方ないわ」
「そうか、そう言ってもらえるなら、こちらとしてもありがたい」
「えーと・・・フェ○ックスの尾!!」
まあ、あのままなら応戦していたけど、と告げられ、少々冷や汗が流れたのはけーね先生とここにいる皆との秘密だ。
「まあ、立ち話もなんだ、時間があるなら寄っていかないか?」
アンデットは即死!、れみりあ は はい になった
「・・・そうね、そうさせてもらうわ」
「こ・・・こあー!!?」
そして、人間の里に寄る、と言うことを伝えるために、レミリア達に振り返ったパチュリーが見た光景は。
「・・・何してるの、小悪魔」
「ずみばぜん、ぱぢゅりーざまぁー」
サラサラと灰になったレミリアと、涙で顔をぐしゃぐしゃにした小悪魔だった。
それを見て、パチュリーは。
「はいはい、カ○ルト、カド○ト」
最近、パチェの私に対する扱いがぞんざいよ、とは後のレミリアの談。
~少女再生中~
「何か、すごい体験をした気分だわ・・・」
慧音の家に着き、しばらくして目が覚めたレミリアの第一声。
心当たりのある小悪魔は、レミリアの顔をまともに見れなかった。
それを見ていた慧音も、レミリアの顔をまともに見れなかった。
心当たりがあり、当事者のパチュリーは、静かにお茶を飲んでいた。
「・・・で、どこなの?ここは・・・」
「半獣の家」
パチュリーの言葉を聞き、怪訝な顔をして、慧音を見やるレミリア。
その視線に気づいた慧音が、佇まいを正し、
「・・・先程はいきなりの攻撃、すまなかった・・・里を守る為とはいえ、少々先見性にかけていたようだ」
と、改めて謝罪をした。
「・・・まあ、夜中にそっちのテリトリーに入ったこっちも悪いんだし・・・その、悪かったわ・・・」
毒気が抜け、レミリアも謝罪する。
その言葉を聞き、慧音は思わず吹き出してしまった。
「・・・何よ」
ムッとしたレミリアが問いただす。
「いや、申し訳ない、こちらの謝罪に対しての返答がそちらのパチュリー殿と似ていてな、やはり友人なのだ
な、と」
「・・・ふん」
顔を赤くして、レミリアはそっぽを向いてしまった。
「・・・さて、そろそろお暇するわ・・・いつまでも人里にいたら、こうやって人目につくし、ね」
そう言ってパチュリーが戸を開けると、きゃ、と声をあげ1人の少女が倒れこんできた。
「ううー・・・い、痛い・・・」
「あ、阿求殿?」
「あ・・・こんばんわ、慧音様」
「「「・・・誰?(ですか?)」」」
阿求と呼ばれたこの少女、どうやら慧音と知り合いらしい。
と、何かに気づいたのか、阿求は、レミリアに視線を固定する。
「あ・・・」
しまったか、と慧音は思った。
こんな夜中、しかも人里の中に、堂々と妖怪がいるのだ、うろたえるのも無理は無い。
次に来るのは悲鳴か、逃走か、それを止める為、慧音が腰を上げた。
「ああー!!」
やはり悲鳴か・・・悲鳴か?
むしろ歓声に近い。
そして、次に阿求がとった行動は、もっと意外なものだった。
いきなりレミリアに駆け寄り、その肩をがっしりと掴み、
「あなたが紅魔館の主のレミリア・スカーレットさんですね!?、いやー、咲夜さんから話は伺ってます!、あ、そうそう、自己紹介が遅れました、私、幻想郷縁起を書いております九代目阿礼乙女の稗田 阿求と申します!ふつつか者ですが、よろしくお願いします!ってこれではまるで新婚さんか何かですね!、きゃー、いやー!」
思いっきり揺さぶった。
何と言うか、無駄にハイテンションだった。
がくがくと揺さぶられる中、レミリアは思う。
阿求の求の字は、きっと⑨に違いない、と。
あ、だめだ、意識が、とまた眠りにつきそうなレミリアをがくがくと揺さぶり、まだ阿求のテンションは上がったまま。
それを止めたのは他でもなく、慧音だった。
「ま、まあまあ、阿⑨・・・じゃなく、阿求殿、少し落ち着いてくれ」
阿求の肩に手を置き、宥める。
それに気づき、ハッ、と動きを止めたところでレミリアは開放された。
「ううー・・・世界が回るぅ・・・」
「生きてるかしら、レミィ?」
「な、何とか・・・」
ようやく開放されたレミリアは、目を回しているらしく、視線が定まっていない。
レミリアを横にしながら、阿求を見やる。
「・・・で?えぇっと・・・」
「稗田 阿求です、気軽に阿求と呼んでください、あ、あとお二人のお名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
「私はパチュリー・ノーレッジ、で、こっちは小悪魔」
「初めまして、小悪魔です」
「これはどうも、ご丁寧に」
先程の行動力の欠片も見せないような優雅で静かな挨拶。
これは相当の猫被りか、相当の天然ね、とパチュリーは思う。
そんな考えを巡らせていると、阿求が話し掛けてきた。
「あの・・・」
「ん?、何?」
「なぜ、貴女方はここにいるのでしょうか?」
「え・・・?」
「あ、いえいえ!違うんですよ?、普段は慧音様は、夜中に妖怪の方々を里の中に招き入れた事がありませんから、少々気になりまして・・・えっと、御気に障りましたか?」
「別にそんな事はないわ・・・まあ、招かれた、と言えば招かれたのかしらね?」
と、慧音を見やる。
すると、慧音が苦笑しながら言葉を引き継ぐ。
「まあ・・・確かに、守護者としては誉められない行為ではあるな・・・」
「いえいえ、信頼されていられるのなら良いのではないですか?」
「いや、まあ、その・・・」
「?」
「・・・初対面、なんだ」
「え、初対面・・・ですか?」
それはまた本当に珍しい、と続けられ、慧音は難しい顔をする。
それを見て、阿求はさらに続ける。
「いいんじゃないですか?」
「は、はあ?」
「どんなに仲のいい友人でも、初めは初対面ですよ?だったら、ここから友人になれるかも知れません」
「・・・」
「いいじゃないですか、初対面でも・・・友人になるのに理由なんて要りません」
その言葉に、慧音も、パチュリーも、小悪魔も聞き入る。
と、忘れられていた一名・・・もとい、一妖が再起動した。
「あら起きたのね、レミィ、おはよう」
「ああ・・・・・・何か、綺麗な川があったから思わず渡ろうとしてしまったわ」
きっと三途の川だ。
どうやら阿求の揺さぶりは、吸血鬼を臨死体験させるほどのものらしい。
「・・・ねえ、パチェ?」
と、レミリアが話し掛けてくる。
「ん?」
「・・・今、もしかして、おはよう、て言った?」
先程の発言を反芻する。
『あら起きたのね、レミィ、おはよう』
・・・確かに言っている。
だが、それがどうしたのであろうか。
「ええ、言ったわね・・・確かに」
その言葉を聞いて、レミリアの顔が青ざめた。
「ど・・・」
「ど?」
「どどどどどどどどうしようパチェぇぇぇぇ!?」
「むきゅ!?」
いきなり肩を掴んでガックンガックン揺さぶってくるレミリア。
阿求も慧音も小悪魔も、何事かと驚いている。
だが、レミリアの揺さぶり(バトルフェイズ)は終わらない。
「時間きちゃった!タイムオーバー!?バッドエンド!?、こんなんじゃまたフランにへたレミリアって言われるわぁぁ!、どうしようどうしようどうしようぱちぇ!?きっと咲夜にも美鈴にも家のメイド達にも霊夢にも魔理沙にもへたレミリアっ言われるに決まってる!ああ、そして最後に貴女はこういうの!へたレミィって!!ああ、さようなら、いままでのカリスマに溢れた日々、こんにちはかりすまの駄々漏れな日々!!、あ、でもへたレミィってちょっとカワイイかもってダメよ、気をしっかり持つのよ私ぃー!?」
「おぉおぉぉちいぃぃつぅぅうぅいぃぃてぇぇぇえ、れぇえぇぇみぃぃいぃいぃいぃぃ・・・」
何とか収めようとするも、流石、へたれても吸血鬼、その暴走は止まらない。
「・・・あ、あの・・・?」
「な、何だ?阿求殿?」
「と、止めた方がよろしいですよね?」
「そう・・・だな・・・」
~少女冷却中~
「はっ!!」
「・・・どうしたの?チルノちゃん」
「・・・なんか、あたいの出番な気がする!!」
「え、ちょっ、ちょっと!?チルノちゃん!?チルノちゃーん!?」
・・・・・・・・・
「・・・まあ、大体理解したわ」
数十分かけて、ようやく沈静化したレミリア。
所々焦げてはいるが、先程の慌て様など見る影も無い。
「えっと・・・ごめんなさい・・・」
思いっきり頭を下げる阿求を見て、ため息を一つ。
「・・・もう、過ぎた事は仕方が無いわ、それよりも、パチェ」
「むきゅう?」
変な泣き声が返ってきた。
「人が誤解するような発言はしない」
「・・・悪かったわ、レミィ」
「ん、よろしい・・・・・・それと・・・」
「?」
「思いっ切り揺さぶって、悪かったわね」
「ん、よろしい・・・なんてね」
「ふふっ」
どちらからともなく笑い出す。
それを見ていた慧音が口を開く。
「・・・あー、二人とも?」
「何?、どうかしたの?」
「いや、いい雰囲気のところに水をさすようで悪いのだが・・・」
「何よ?早く言いなさい」
レミリアが促す。
「家に招いた身で言うのもなんだが・・・時間は、大丈夫なのか?」
「「「あ」」」
すっかり忘れていたらしい。
「だ、大丈夫・・・かしら?」
「さて・・・どうかしらね・・・」
外を見る。
月は、出発した時と同じ場所にある。
レミリアに振り返る。
「・・・今のところは大丈夫みたいね」
「そう・・・」
だが、急がなければならない。
この先、恐らくそう遠くはない。
そこに、異変の張本人が居るのだから。
「・・・竹林、か」
「何?」
突然、慧音が口を開く。
「話を聞いたときから色々考えてはいたんだ、この近辺でそのような事をやってのける人物の居場所を」
「・・・竹林に、誰か住んでいるの?」
「知り合いの話だとそうらしい」
何度も行った事がある、と言っていた、そう続けた。
「その知り合いとやらに連れて行ってもらったほうが早いんじゃない?」
レミリアが、思ったことを口に出す。
「いや、たまには会うんだが、本人も竹林の中に住んでいてな、会えるかどうか・・・」
「そう・・・なら仕方がないわ」
「それに」
「それに?」
「あいつはその連中の下へ行くのに竹林を焼き払いながら進む」
だから、同行するという事は、森林火災の犯人に名前を連ねるような行為だ、と告げられた。
「・・・どんな知り合いよ」
あまりにも物騒すぎる。
某カートゲームもびっくりなショートカット方法だ。
「あまり会いたくない気がするわ」
「同感です」
げんなりした顔でレミリアが呟き、小悪魔も同意する。
「まあ、とりあえず犯人の居場所も判ったことだし・・・そろそろ行きましょうか、レミィ」
「そうね・・・世話になったわ、上白沢 慧音・・・感謝する」
「いや、こちらこそ邪魔して悪かった、次に来たときは茶ぐらいは出そう」
「そういえば、パチェには出していたわね・・・お茶」
まあいいか、そう思い、前を見つめる。
夜空には、いびつな月が浮かんでいる。
次回予告
慧音の言葉を信じ、竹林の中を突き進む紅魔組。
そこに、楽園の巫女が立ち塞がる!!
パチュリー「よりにもよって貴女とはね・・・」
戦慄するパチュリー!
レミリア「この前の借り、利子をつけて返させて貰うわ!」
闘志を燃やすレミリア。
そして・・・・・・
霊夢「犬とおよびください」
何があった霊夢!?
次回、~永夜抄IF パチュリー・レミリア編~ 第5話 楽園の巫女 再び お楽しみに!!
「貴方達に、本当の結界を見せてあげるわ!!」
今日のNG
「まあ、立ち話もなんだ、時間があるなら寄っていかないか?」
アンデットは即死!、れみりあ は はい になった
「・・・そうね、そうさせてもらうわ」
「こ・・・こあー!!?」
そして、人間の里に寄る、と言うことを伝えるために、レミリア達に振り返ったパチュリーが見た光景は。
「・・・何してるの、小悪魔」
「ずみばぜん、ぱぢゅりーざまぁー」
サラサラと灰になったレミリアと、涙で顔をぐしゃぐしゃにした小悪魔だった。
それを見て、パチュリーは。
「・・・しょうがないわ、この前覚えた復活の呪文を使いましょう・・・貴女も手伝いなさい」
「な、何だ?私も唱えるのか?」
「そうよ、全員で唱えた方が、確立高そうだし・・・はい、カンペ」
そう言って、慧音にも、復活の呪文が書かれた紙を渡す。
「・・・準備は出来たわね?・・・じゃあ、始めるわ」
ささやき いのり えいしょう ねんじろ
唱えた瞬間、爆発的な力が収束される。
これならいける、そう思った瞬間。
おおっと!!
れみりあ は ロストした
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・まあ、こんなときもあるわ」
「「ねーよ」」
あと何故か慧音×レミへの覇道が目の前に広がりました。
可愛すぎるぞ、お嬢様!
テンパったお嬢様と次回予告の霊夢にこの点数を。
・・・レミィ達が出た後に到着かな?
小悪魔もいいねぇ