私が歩んだ歴史。
人が歩んだ道が過去となり残るものだが、
それは同様に私が歩んだ道、ということなのだ。
私が道を歩く事が、人の道を切り開く。
しかし、道を歩むことで道を切り開くといった矛盾には、歴代の王族も含め誰も気づかない。
そういうものなのであるけれども。
私とて、気に留めることもない。
在るというのだから、それで良いではないか。
殆どの者はその存在までもを問う者は居ないのだからね。
「実は幽霊などというものは何処にでも在る、という事…にはならないだろうに。」
というのも、先ほどから家に幽霊がとり着いているのだ。
はあ、とため息をついているうちに、それは供えてあった団子をほいほいと手に取っていく。
「実にその通りね。」
「お前が居るのは一体どういう了見なのだよ。」
「無粋なことは聞かないで頂戴な。」
「全く、亡霊に無粋も何もないだろう。」
ぼやき声は、夜の縁側をするりと抜けていった。
ああ、
ゆらりゆらり。
たゆたう霊魂は一時期あちらこちらに氾濫したが、普段はそれほど見るものではない。
眼前の頭上、星は瞬く。
一説、空気の動きがそうさせるのだという。
ゆらりゆらり、霊はどの流動の中につられていく。
人の世の移ろいは、歴史という流動の先に在るのだろう。
「慧音さんっ!幽々子様はまだ在りますか?」
「今日は来客が多いな。いや、ついさっき、ふらりとどこかに行ってしまったようだ。」
文字通りである。
つい先ほど、去っていくところの姿をふと見ただけである。
礼儀がなっていないものだ。
「はぁ…そうですか。それでは私は追いかけますのでこれで!」
「お勤めご苦労様。」
気まぐれな上司、いや主人を持ったものは大変である。うん。
私としては、神出鬼没等というものは認めがたい存在である。
だが困ったことに、この幻想郷にはそんなものが数えるほどに存在している。
「そうとは思わないか?」
「ミステリアスって女には褒め言葉よね。」
「断じて褒めてないが。」
「無粋ねぇ。」
またいつのまにやら戻ってきて、何食わぬ素振りで座っているその気まぐれ女主人は、否、団子を食っている。
「…新しい箸でも買っておいたほうがいいのだろうか。」
「あらいやだわ。私には帰る家があるもの。」
「寧ろ帰ってくれ…。」
今の私は、柳の下を通るより確実に縁起でもない。
「そんなにため息をついて、どうしたんですか?」
「ああ…阿求、悪いが箸を買いたいんだ。」
「えぇっ?いきなり、どうしたんですか?」
「いや、他意はないよ。ほら、箸が折れたんだ。」
「あらら…きれいに真っ二つですね。」
「私が選んだらすぐ折れそうな気運だ。」
「そういうことなら。さあ、私も一緒に選びますから、行きましょうよ。」
「そうか。それは嬉しい。」
さあ次は、茶碗か湯飲みか墓石か。
ただ、外の世界よりは、少しだけ、存在が多いだけ。
私とて、否定することもない。
それが私の紡ぐ歴史であるならば。
人が歩んだ道が過去となり残るものだが、
それは同様に私が歩んだ道、ということなのだ。
私が道を歩く事が、人の道を切り開く。
しかし、道を歩むことで道を切り開くといった矛盾には、歴代の王族も含め誰も気づかない。
そういうものなのであるけれども。
私とて、気に留めることもない。
在るというのだから、それで良いではないか。
殆どの者はその存在までもを問う者は居ないのだからね。
「実は幽霊などというものは何処にでも在る、という事…にはならないだろうに。」
というのも、先ほどから家に幽霊がとり着いているのだ。
はあ、とため息をついているうちに、それは供えてあった団子をほいほいと手に取っていく。
「実にその通りね。」
「お前が居るのは一体どういう了見なのだよ。」
「無粋なことは聞かないで頂戴な。」
「全く、亡霊に無粋も何もないだろう。」
ぼやき声は、夜の縁側をするりと抜けていった。
ああ、
ゆらりゆらり。
たゆたう霊魂は一時期あちらこちらに氾濫したが、普段はそれほど見るものではない。
眼前の頭上、星は瞬く。
一説、空気の動きがそうさせるのだという。
ゆらりゆらり、霊はどの流動の中につられていく。
人の世の移ろいは、歴史という流動の先に在るのだろう。
「慧音さんっ!幽々子様はまだ在りますか?」
「今日は来客が多いな。いや、ついさっき、ふらりとどこかに行ってしまったようだ。」
文字通りである。
つい先ほど、去っていくところの姿をふと見ただけである。
礼儀がなっていないものだ。
「はぁ…そうですか。それでは私は追いかけますのでこれで!」
「お勤めご苦労様。」
気まぐれな上司、いや主人を持ったものは大変である。うん。
私としては、神出鬼没等というものは認めがたい存在である。
だが困ったことに、この幻想郷にはそんなものが数えるほどに存在している。
「そうとは思わないか?」
「ミステリアスって女には褒め言葉よね。」
「断じて褒めてないが。」
「無粋ねぇ。」
またいつのまにやら戻ってきて、何食わぬ素振りで座っているその気まぐれ女主人は、否、団子を食っている。
「…新しい箸でも買っておいたほうがいいのだろうか。」
「あらいやだわ。私には帰る家があるもの。」
「寧ろ帰ってくれ…。」
今の私は、柳の下を通るより確実に縁起でもない。
「そんなにため息をついて、どうしたんですか?」
「ああ…阿求、悪いが箸を買いたいんだ。」
「えぇっ?いきなり、どうしたんですか?」
「いや、他意はないよ。ほら、箸が折れたんだ。」
「あらら…きれいに真っ二つですね。」
「私が選んだらすぐ折れそうな気運だ。」
「そういうことなら。さあ、私も一緒に選びますから、行きましょうよ。」
「そうか。それは嬉しい。」
さあ次は、茶碗か湯飲みか墓石か。
ただ、外の世界よりは、少しだけ、存在が多いだけ。
私とて、否定することもない。
それが私の紡ぐ歴史であるならば。