Coolier - 新生・東方創想話

東方絵真説-其の四-

2008/07/24 10:39:36
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 ※注意書き※

この作品は、東方絵真説-其の三-からの続きとなっています。
また、作中に原作に居ないオリジナルのキャラクターが何気なく行動しています。
ご一読していただけたら嬉しいですが、無理は禁物です。

お勧めBGM:引き続き東方妖々夢より「無何有の郷」とかその辺。





-本編-


 そよそよと名残を惜しむような春の風が吹き、花達はその花弁を散らす。
一人の絵描きが辿り着いた幻想郷は、春の終わりが見えているそんな季節だった。
今、彼は自らの生き方を定める大きな契機を迎えている。そんな中で彼は…
「さて、お昼はどうしようかな?」
大体いつも通りに暢気だった。

東方絵真説 -其の四-

「まいどあり!」
景気のいい団子屋の主人の声に見送られて絵描きは歩き出す。
何かと困るだろうと言われて持たされたお金は、ここで大体無くなった。
「うん、うまい」
一本目の団子の神様に感謝していると、
「あらいい香り」
ホケキョと遠くで鳥が鳴く。
「その団子は何処で手に入れたのかしら?」
振り返ると、そこには色々と薄い少女が立っていた。
優雅に扇子で口元を隠し、どこかすっ呆けた表情を浮かべて絵描きを窺っている。
「…食べるの好きなんですか?」
「そうね。食は何時の時代も人を突き動かすきっかけだと思うの」
クスクスと笑い声をあげながら、薄幸の少女が扇子を翻し言葉を返す。
春の形見がふよふよと通り過ぎていった。
「もう一度聞くわ。そのお団子を手に入れた場所は何処かしら?」
喧々囂々。まるまるうまうま。
彼女が色々とついて来る気満々だったので、絵描きは団子屋まで案内する事になった。
「申し遅れましたわ。私、西行寺幽々子と申します」
季節外れの肝試しが始まった。


 先程に比べどこか暢気な声をあげ、団子屋の主人は二人を送り出した。
西行寺のお嬢様は満足そうに串団子を頬張りつつ、緩んだ足取りで歩みを進めていく。
「ん~、花より団子。花がある時こそ団子の食べ頃よね」
多分年中花より団子。
「そうそう絵描きさん。そちらの画集に目を通させて頂いてもよろしいかしら?」
「どうぞ。つまらないものですが」
スケッチブックを受け取ると、幽々子はうっすらと笑みを浮かべて言う。
「落ち着く場所へと参りましょう?」
例えば冥土とか。
「お断りします」
「あら残念」
絵描きの返事にそう言うと、幽々子はスーッと静かに飛び去って行った。

 閑話休題。

「私はこの空を愛し、大地を愛した」
「お、追いついた……!」
「あらいやだ、お恥ずかしい」
照れ照れと盗品で顔を隠す幽々子に、絵描きははぁとため息を吐く。
そうしているうちに、冥府のお嬢様は適当な場所へその腰を落ち着けていた。
そこは里を少し出た辺りか、人の喧騒を遠くに預けた何とも静かな場所だった。
「さて、それでは拝見させて頂きますわ」
時期が来た辺りで幽々子がスケッチブックに目を通す。
絵描きはといえば、近くの桜に身を預け、ぼうっと彼女を目に映していた。
透き通るように風景に溶け込む様はまるで…
「魂は儚く、そしてうっすらしっとりとしている物なのよ」
「その割にはカラッとしているなぁ」
「失礼ねー。私はピチピチのお化けよ」
それもどうかと思う。


 気を取り直して咳払い。幽々子は絵描きの絵について語り始めた。
「一枚目は神社の絵ね。だけれどこれは貴方の神社。貴方の想いが描いた物」
「あんまりにも神社が寂れてたもんで」
「あぁ、それでいいのよ。あそこはそれで」
彼女らしい捉えどころの無い表情、口調で言葉を続ける。
「そして二枚目の絵。これは確実に幻想郷の夜を描いたものだわ」
「はい。昨晩の内に綺麗な夜空を描かせて貰いました」
「月は描かなかったのね」
「そりゃあ、月も描いたら絵にならないし」
風が少し強くなってきた。
「ふむ」
器用に片手で扇子を開き、幽々子は口元を隠す。
彼女の瞳が絵描きの双眸を捉える。そこに、透き通るような水色を見た。
「…月を映さなければ、夜は栄えないのではないかしら?」
「月を直接描く方がどうかと思いますよ」
「あらどうして?」
「何ていうか、そう。ここの月は大きすぎる」
吹き抜けた風が、桜の花びらを運んでいく。
絵描きが言葉を放って暫く、幽々子はどこへともなく虚空を見つめ、物を思い、
漸く合点がいったという風に口を開いた。
「なるほど。つまりこの絵は夜空の絵」
パチン。と小気味のいい音を立て、彼女の扇子は閉じられた。


「そうそう言い忘れていたのだけれど。私は戯れに人を死に誘ったりできるのよ」
「いや、唐突に殺そうとしないでください!」
「あら残念」
絵描きが本気で怖がる様を満足そうに見つめながら、彼女はうっすらと笑みを浮かべた。
それも別種の笑みに変じて、閉じたスケッチブックを絵描きに返すと、その総評を伝える。
感想は絵描きの思った通りあっさりとしたものだった。
「今後に期待」
「それはどうも」
苦笑しながらスケッチブックを受け取る絵描きに、幽々子の言葉が追従する。
「あら、期待に応える事は出来ないとでも言うつもりかしら?」
「なにぶんまだまだ未熟なもので」
「そうねぇ、我が家の妖夢くらいには未熟だわ」
「大方半人前って所ですか」
「半人前よ。あの子は名実共に」
多分その妖夢という人は色々と半人前なのだろう。足がついてないんだ。
「頑張って一人前にならないとな」
「焦ると木乃伊を拾うわよ」
ワザとらしく大げさに身振りするピチピチの幽々子。
「まあでも貴方の様な人は天然ね。焦らなくても木乃伊になるの」
「色々と笑えない話になってきている気がする」
「塩でも撒く? きっとカラッとするわよ」
それで払えるものでもないけれど。幽々子はそう付け加えてクスクスと笑みを零す。
絵描きはその様子を、何ともいえない表情で眺めているのであった。


 あれから暫く経ち、夏。
人間の里の外れに、立派なアトリエ付きの一軒家が建っていた。
そこには昨日から一人の絵描きが生活を始めている。
「ふぅ」
縁側に腰を落ち着かせて、のんびりと日の光を浴びながら絵描きは昨日の事を
なんとなく思い返していた。
昨晩の宴会は彼の想像以上の大騒ぎとなった。
特に関係のない人や妖怪まで、ノリやおつまみ感覚で参加してくるのである。
正直、宴の後半に誰に酌をしてされたなんてこれっぽっちも覚えていない。
飲めや歌えやの大騒ぎは、これで中っくらいの大騒ぎというから目が眩む思いもした。
だがしかし、絵描きはそんな今までに経験をした事のない物にすら、どこか懐かしさを
感じずにはいられなかった。いや、ここに至るまでの生活その端々に彼はそんな感覚を
抱いていた。そればかりか、日々様々な色を見せる幻想郷という場所は、
今もって彼を魅了して止まないのである。
 兎角、自分の城を手に入れた彼のやることは一つだった。
何より、体と心がそれを行なうことを急かしていた。妙に心が躍っているのだ。

  さあ、絵を描こう。

そう思い立ち上がる彼の手には、いつの間にか一本の絵筆が握られていた――
-あとがき-
どうもこんにちは、お久しぶりです。
前回に比べて大分時間を掛けての更新となりました。
居るかもしれない待っていてくださっていた方にはお待たせいたしました。
待たせた割にいつも通りなのはもうご愛嬌だとかその辺でごまかしておきます。
さて、これからまたノンビリと続きを書かせていただきます。
ご意見、ご感想、痛み入ります。色々と参考になって重宝しました。
やってみるもんだ。そう思います。
では、長々とあとがき失礼しました。また次に。ご意見ご感想待ってます。ではでわ。
柳猫三叉
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コメント



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6.60野田文七削除
省略+あっさりしすぎだああ! 色々と。
もう少しあなたの脳内でつながっている出来事を脳外(?)に出してはどうでしょう。
テストの解答欄のみを見ている感じがします。
問題用紙を全文見せられるとそれはそれでだるいですが、
そこのバランスが肝要かと。

いや、これはもうこういう作風なのか。
とにかく、今まで読んできた文章とテンポがまるで違う。
もうちょっと続けてみてください。
7.60名前が無い程度の能力削除
まったりとした雰囲気を保ちつつ,飛躍する会話は対照的で引き立ちます。
会話が飛躍しすぎて置いていかれる感じがする時があります。
飛躍と飛躍の間をうまくつなげていけたらもっと効いてくると思います。