Coolier - 新生・東方創想話

紅魔郷ごっこ

2008/07/23 03:31:29
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※事の発端です


「暇だな」
「暇ね」
「あなたたち… 館に来るなり、いきなりそれ?」
「でもお姉様、最近ホントに退屈じゃない? 何も起こんないし」
「それはそうかもしれないけど…」
「だろ? だから、何かやろうと思ってここに来たんだよ」
「だったら魔理沙! 弾幕ごっこやろうよ!」
「う~ん… それも悪くないんだけど、毎回それだしなぁ…」
「そうね… 何か変わったことをやりたいわ」
「そうは言うけど霊夢、変わったことって何かある?」
「それなのよねぇ…」
「異変でも起これば退屈しないんだけどな」
「異変… ねぇレミリア」
「なに?」
「何か異変起こしなさい」
「命令形!?
 それに、あなたがそんなこと言っていいの!?」
「なにも本気で異変を起こせって言ってるわけじゃないわ。ただの遊びよ。
 あなたが異変を起こして、私たちがそれを解決しに行くっていう、言うなればごっこ遊びよ」
「わー! おもしろそう!」
「それだったらまぁ… でも、異変って言っても何したらいいのかしら?」
「思いつかないんだったら、前の時みたいな紅い霧でもいいんじゃないか?」
「そうね。どうせお遊びなんだし、そんなに拘らなくてもいいと思うわ」
「でも、いいのかしら?」
「たまには刺激も必要よ。安心しなさい、私が認めるから」
「だったらいいけど…」
「よし! 決まりだな!
 じゃあ私たちは念入りに打ち合わせをするから、今日から数えて一週間後にスタートな!
 私たちはちょっと粋な感じのアダルトな雰囲気で、それでも子供心を忘れずに安っぽいRPG風ストーリーを演出していくぜ。
 それでいいな、霊夢?」
「特に異論はないわ」
「じゃあお前たちは私たちに合わせるっていう方向で頼む。
 それと雰囲気出すために、皆初対面っていう設定な。
 ほかの紅魔館メンバーにもちゃんと言っとけよ?」
「…それって要するに、こっちは全部即興アドリブってこと?
 やけにハードル高くない?」
「楽しそうだしいいんじゃない、お姉様?」
「それに私たちはいいかもしれないけど、1面と2面の子たちはどうするの?」
「それは… あの子たちが空気読んで登場さえしてくれれば何も言うことはないわ」
「適当ね」
「遊びだし、そんなものじゃない?
 よーし! 魔理沙、私頑張っちゃうからね!」
「いやExステージまでやるつもりないから、多分お前の出番はないぜ?」
「そんなバカな」






~    ~    ~




                           ↓ 以下、本編です
























「…妙な霧が出てきたわね。
 まるで日光を遮るようだわ」


 ここはお馴染みの博麗神社。その縁側で私、博麗 霊夢はお茶を飲んでいた。
 いつも通りの行動だが、状況がいつもとは少し違っている。
 全てはこの怪しげな紅い霧のせいだと言えるだろう。


「これは何かの異変なのかしら…
 だとしたら、今年の夏は退屈せずに済みそうね」
「少しばかり気づくのが遅いぜ、霊夢」
「その声は…魔理沙ね」


 やってきたのは昔馴染みの魔法使い、霧雨 魔理沙だった。


「どうしたのかしら? この神社に何か用?」
「いやなに、ちょっと通りかかったもんだからな。
 お前と世間話をするのも悪くはないだろうと思って来ただけだぜ」
「世間話ねぇ…
 何を話そうかしら?」
「そうだな…
 この霧について、なんてのはどうだ?」
「ふっ、やっぱりその話になるのね」
「そりゃ当り前だろう。ここまで露骨にやられてるんだぜ?
 話題にならない方がおかしいってもんだ」
「一理あるわね」
「一理どころじゃないと思うがな…
 それはいいとして、これは明らかに異変だぜ。いつまで静観してるつもりだ?」
「そのうち解決しに行くわよ」
「ふぅ…ん。まぁいい、私はとりあえず帰ることにするぜ」
「あら? 釘を刺しに来ただけ?」
「おまえが出るなら、あえて私が行く必要もない、ってだけだぜ」
「そう… なら私もちょっと出かけるとするわ」
「お? どこ行くんだ?」
「別に、ただの散歩よ。あてなんて無いわ。
 気の向くままに飛んでみるだけよ」
「そうか…
 だったら、湖の傍なんて涼しくていいかもしれないぜ」
「湖の傍…ね。確かに涼しそうね」
「そう思うだろ?
 私もさっき近くを通りかかったから、確かな情報だぜ」
「そう… だったらそうさせてもらうわ。
 相変わらず情報が早いわね」
「このぐらい普通だぜ」
「あなたにとってはね。
 そろそろ行くとするわ」
「おう。
 …あぁ、その前に霊夢」
「何かしら?」
「…気をつけろよ」
「魔理沙、私を誰だと思ってるの?」
「…はは! そうだったな。お前だったら心配なんて必要無いな」
「その通りよ。
 ところで、あなたは行かないの?」
「私か? そうだな…
 霊夢が散歩から帰ってこなかったら行くとするぜ」
「なら、あなたの出番はないわね」
「そう願うぜ」


 口元に薄く笑みを浮かべて、背中を向け合いそれぞれに飛んでゆく私たち。
 さぁ、心もち渋めに行きましょう。









◆    ◆    ◆









「ふぅ… 結構飛んできたわね。
 そろそろ湖が見えてくるはずだけど… 何も起こらないのは些か退屈というものね」
「あ、神社の巫女さんだー」
「宵闇の妖怪…
 ここはあなたの棲み家だったのね… 迂闊だったわ」
「え? いや、たまたま通りすがっただけなんだけど」
「ということは、私は既にあなたのテリトリーに踏み入っている、というわけね。
 出だしからやってくれるじゃないの。おかげで面白くなってきたわ」
「だからテリトリーとか…
 それに、そんな話し方だっけ?」
「だけど、その程度でこの私と張り合うつもりなの?
 だとしたら甘く見られたものね」
「え~っと… あなたは食べてもいい人類?」
「食べてもいい人類…か。
 ならば逆に問いましょう。食べてはいけない人類とはいかなるものなのかしら?」
「はい? いや、そこは『良薬は口に苦し云々』とか言うとこでしょ?」
「質問を質問で返すのは0点だ、と教わらなかったかしら?」
「えぇー… そっちが先にやったじゃん」
「それに、仮に食べてはいけない、と言ったらあなたはどうするの?
 食べない? いいえ、嘘ね。結局食べるに決まってるわ。あなたは妖怪だものね」
「いや~… そんなこともないかな?」
「それとも本当に食べてはいけない人類がいると思っているの?
 だとしたら、それがどんな人なのか教えてもらいたいものね」
「というか、気分次第なんだけど…」
「答えられないの? 呆れたものね…
 自分の行動理由すら明確でない者が、私の前に立つなど10年早いわ。
 出直してきなさい」
「あ…はい… なんか、すいませんでした」
「精進することね。
 道に惑ったらいつでも神社においでなさい。来るもの拒まず、よ」


 そう言って、私は颯爽と彼女の元を後にする。
 危険な状況を渋く回避、かつ迷える子羊を救済完了。
 でも、正直紙一重だった…
 いきなりこんなに追い込まれるとは思わなかったわ。気を引き締めましょう。


「…巫女さん、どうしちゃったのかな?」









◆    ◆    ◆









「…湖に出たのはいいけれど、こんなに広かったかしら?
 それに、方角だって曖昧になってきたわ…」
「おー! 誰か来たと思ったら霊夢じゃん。
 こんな所で何してんの?」
「とは言え、前に進まないと何時まで経ってもここを抜けられないわね」
「ねーってば、何してんのさ?」
「確率は四分の一… いい感じね。分の悪い賭けは嫌いじゃないわ」
「何言ってんの? そんなことより、あたいと一緒にあそぼーよ」
「決めたわ。私の直感がこちらへ向かえと言っているわね。
 そうと決まれば、善は急げよ」
「あれ? どこ行くの?
 あっ! 追いかけっこだね? よーし、あたい負けないからね!
 …ちょ、霊夢! 速過ぎだよ!? れーいーむぅぅぅ………」


 クールかつ華麗にスルー。
 どんなトラップが仕掛けられているかと思えば、期待ハズレね。
 まぁ、また今度遊んであげるわよ。









◆    ◆    ◆









「…紅い霧が濃くなってきたわ。どうやら賭けは私の勝ちのようね」
「あれ? 霊夢さんじゃないですか。こんにちは。
 今日はどういったご用件ですか?」
「とりあえずこのまま進んでみるとしましょう。諸悪の根源は近いわね」
「ちょ、ちょっと! 無視しないでくださいよ!
 いくら霊夢さんでも要件を言って頂かないとお通しできません!」
「…ちっ、何度も使える技じゃないか…」
「今舌打ちしました!?」
「私を止めるあなたは一体何者かしら?」
「舌打ちはスルーですか?
 それに何者って言われても… ご存知の通り、門番の美鈴ですけど」
「門番… やはりここには何かあるわね。
 あなたのご主人様はどこにいるの?」
「お嬢様に御用ですか?
 今はお部屋にいらっしゃると思いますよ」
「…どうやらそのお嬢様とやらが黒幕のようね」
「それにしても今日はお客さんが多い日ですね。
 さっきは魔理沙さんがここを強行突破していきましたし」
「魔理沙…? あなた今、魔理沙と言ったかしら?」
「え? 言いましたけど、どうかしたんですか?」


 もしそれが本当なら、魔理沙は既に中に…
 …どういうこと? 私に任せるんじゃなかったの?


「そんなことより聞いてくださいよ霊夢さん。
 魔理沙さん、またここを壊して行ったんですよ… 一度霊夢さんから言ってもらえませんか?
 私が何回言っても聞いてくれないんですよ~…」
「だけど、今魔理沙の思惑を推し量っている暇はないわね…
 悪いけど、ここは通らせてもらうわよ」
「えっと、お嬢様に用があるんですよね?
 ん~… まぁ霊夢さんだったら大丈夫でしょう。お通りください」
「…やけにすんなりじゃない」
「さっき魔理沙さんの相手してヘトヘトなんですよ…
 正直これ以上動き回りたくありません」
「そう… 賢い選択よ。命拾いしたわね」
「命? 何のことですか?
 あ、魔理沙さんに言っといてくださいよ~~~………」


 他愛もない相手だったわね。足止め程度にしかならないなんて、つまらない。
 そして、門番の美鈴とやら。あなたは大きな勘違いをしているわ。
 魔理沙はやるなと言われると、さらに燃え上がる性質の人間なのよ。
 門番の職務に忠実なほど厄介な事態に陥り、怠慢になればそれも厄介な事態に陥る…
 あなたは門番という仕事を続ける以上、救われない運命のようね。

 …あ、目から汗が…









◆    ◆    ◆









「…館の中に入ったのはいいけど、なんか妙な所ね。図書館…かしら?
 本が山ほどあるけど、その割にはグチャグチャで整理されてない様ね」
「あ、誰か入って来たと思ったら神社の巫女の…霊夢さん…でしたっけ?」
「…この私が背後を取られるなんて、相当の達人のようね。
 ようやく面白くなってきたじゃないの。名乗りなさい」
「えー? いくら私がスペカの無い中ボスだからって、覚えてないのは酷いですよー。
 はぁ… じゃあちゃんと覚えてくださいよ? 私は、小悪魔です」
「小悪魔ね… きっとその名は、私にとって忘れ得ぬものになるでしょう。
 そして、同時に私の名をあなたに刻みつけてあげるわ。
 私は、幻想郷は博麗神社のビューティフル巫女、博麗 霊夢よ!」
「知ってますよ?」
「…すでに情報は漏れていた、ということね。でも、一体どこから…?」
「そんなことより、さっき魔理沙さんが来てここで暴れていったんですよー。
 おかげで本の整理に追われちゃって、申し訳ないですがお相手が出来ないのです」
「…魔理沙がここを通ったの?」
「はい、いつものように」


 まさか… 魔理沙が裏切った?
 でもそんなことが… けど、そう考えると情報が漏れていたことにも説明がつく。
 そういえばここまでやけに順調に来れたわね…
 もしかして、魔理沙が事前に示し合わせていたの…?


「そんな難しい顔しちゃって、どうしたんですか?」
「小悪魔ー。何遊んでるのー?
 さっさと片付けなさーい」
「はいはいパチュリー様、すぐに片付けますよー。
 というわけで霊夢さん、私はこれで失礼しますね」


 ここもすんなり通れるなんて、もしかして罠…?
 不穏な空気が漂ってきたわね… 用心していきましょう。









◆    ◆    ◆









「…それにしても広い廊下ねぇ。どこまで続くのかしら?」
「あら? 霊夢じゃない。お嬢様に何か用でもあるの?」
「…またしても気配を感じなかったわ。この館は化け物揃いなの?
 あなたは一体何者? 名乗りなさい!」
「…ふふっ、そちらから名乗るのが礼儀じゃないかしら?」
「…! ふっ、それもそうね。失礼したわ。
 私の名は博麗 霊夢。博麗神社のデンジャー巫女よ」
「ご丁寧にどうも…
 私は十六夜 咲夜。この館のパーフェクトメイド長よ」


 この切り返し…! こいつ、かなりできる!


「それにしても変わったお客さんね。もしかしてさっきの妙な黒白のお友達かしら?」
「魔理沙のことを言ってるの?
 あの娘は今どこにいるの!? 答えなさい!?」
「少し冷静になりなさい。取り乱す姿は正直見るに堪えないわ」
「くっ…!」


 悔しいが彼女の言う通りだ。
 焦っては何かを成し遂げるなんてできない。少し落ち着かなくては…


「でもまぁ、質問には答えてあげるわ。
 あの娘は今頃お嬢様の所へたどり着いているはずよ」
「…もう一つだけ聞かせて。そのお嬢様とやらがこの霧の原因なのかしら?」
「ふふふ… それはどうでしょうね?
 自分の目で確かめてみるのが一番じゃないかしら?」
「…それもそうね。
 魔理沙の真意はわからないけれど、今は前に進のみよ。
 ここは通らせてもらうわ」
「好きにしなさい。
 通れるものならね!」


 マズイ! 先手を取られた!


『待ちなさい、咲夜』
「その声は…お嬢様」
「これが…黒幕?」


 パーフェクトメイド長の構えを解かせたのは、どこからともなく聞こえる声だった。


『その娘をそのまま通しなさい』
「ですが… よろしいのですか?」
『私がいいと言っているの。
 この私に、二度も言わせる気かしら?』
「…はい。出過ぎた真似をして申し訳ございませんでした」
『ていうか霊夢、早く来て!
 この状況、どうやって処理したらいいの!?
 ああっ! 魔理沙、寝たらダメ! その川は渡ったらもっとダメ!!』
「…というわけよ。早く行きなさい」
「…うん。わかった…」
『早く来てー!!』
「…急ぎなさい」
「…うん」


 この先に一体何が待ち受けているというのだろうか。
 恐らく、いまだかつて体験した事の無いような強敵が待ち構えているに違いない…!
 そして、この館にはいつの間に館内放送が取り付けられたのかしら?









◆    ◆    ◆









「…何なのここは? それに、月がこんなに紅い…」
「やっと来たー! ねぇ霊夢、これどうしたらいいの!?」
「そこに倒れているのは… まさか魔理沙!?
 どうしたの魔理沙!? しっかりしなさい!!」
「…れ、霊夢か? へへ…ドジっちまったぜ」
「気がついた!? どうしてこんな所にいるの!?」
「お前の負担を少しでも軽くしてやろうと思ってな…
 勢い勇んで挑んだ結果がこれだぜ…」
「まさかあなたがやられるなんて… 一体何が起こったの?」
「あいつにやられたんだ… この私が為す術もなかったぜ…」
「えっ! 私何もしてないよ?」
「気をつけろ霊夢… あいつ、不思議な術を使うぜ…」
「不思議な術…?」
「あ、ありのままに今起こったことを話すぜ…」






~    ~    ~






「オラオラー! 魔理沙さんのお通りだぜー!
 途中で図書館の本棚を倒して行った気がするが、全然そんなことないぜ!
 よーし! このままラスボスまで一直線だー!」
「あら、ようやくお出ましね。
 待ちくたびれたわよ…って魔理沙! 私を無視してどこ行くのよ!?」
「ん? 今なんかいたか?」
「あっ! 魔理沙、前! 壁!」
「前…? ってうぉぉい!?」


 ズドンッ!!!






~    ~    ~






「…というわけだぜ」
「そんなことがあったの…」
「私悪くないよね?」
「私ともあろうものが、こんな所で倒れちまうなんて… 格好つかねぇな」
「そんなことないわ! 今のあなたは最高に輝いてるわよ!」
「へへ… ありがとよ、霊夢…
 だけど、私はもう駄目だ…」
「魔理沙! しっかりしなさい!!」
「霊夢… アリスに、愛していたって…伝えてくれ…」
「冗談じゃないわよ! そんなこと自分で言いなさい!」
「ついでに私の亡骸はあの丘に埋めてくれ…
 あと、家の掃除をしといてくれたら助かるぜ…
 頼んだぜ………ガク…」
「魔理沙? 魔理沙ーーー!!!」
「死の間際に、ずいぶん注文が多かったわね」
「うぅ… 魔理沙…」
「えーっと… そろそろ話進めてもいいのかな?」
「打ち合わせと全然違うじゃない… アドリブ多すぎるのよ…
 そもそも、あの丘ってどこなのよ…」
「霊夢も予想外だったの?」
「あなたのせいで、打ち合わせしてた…

 『魔理沙、霊夢を裏切った振りしてレミリアにつくけど頃合いを見計らって背後からマスタースパークでドーン!
  実はレミリア逆ドッキリでした(笑)。さようなら、あなたのことは忘れない… 紅魔館よ、永遠に』

 …作戦が使えなくなったじゃない…」
「そんなこと考えてたの!?
 やだ、この子たち本気で恐ろしいわ!!」
「でも、過ぎたことを悔やんでも仕方ないわね…
 ここからは私も完全アドリブで立ち向かわせてもらうわよ」
「まだやるの?」
「…せっかくだし、最後までやりましょう?」
「…霊夢がそう言うんだったら構わないけど…」


 完璧な企画倒れだけど、ここまできて引き下がるなんてできないわ。
 突発的なアクシデントとは言え覚えてなさいよ、魔理沙。


「えっと、それじゃあ…
 ふふふ… 私に刃向う者は皆滅びる運命なのよ」
「くっ! 何ということ…!
 あの魔理沙がこんなにあっさりやられるなんて!」
「心配しなくてもすぐに後を追わせてあげるわ…
 あなたの運命はこの館に踏み入った時、既に決まっていたのよ」
「それでも私は負けられない! 博麗神社のグレイトフル巫女、博麗 霊夢として!
 そして、志半ばにして散った魔理沙のためにも!」
「ふふ… あなたが噂のグレイトフル巫女だったのね。その名前はよく耳にしていたわ。
 それぐらいでなければこの私の相手は務まらないというものね」
「なに!? あなたは一体何者なの!?」
「聞いて驚きなさい。
 私はこの紅魔館の主、レミリア=ワンダフル=スカーレットよ」
「ま…まさか、あなたがあのワンダフルレミリアだったの!?」
「想像以上の反応、痛み入るわ。
 そして、永遠に紅い幼…」
「そっちは知ってるからいいわ」
「ちゃんと言わせてよぉ…」
「また今度ね。それより…
 この霧を出したのはあなたなの?」
「あら、知ってたから来たんじゃなかったの?
 でもその通り。私がやったことよ」
「どうしてこんなことをしたの?
 答えなさい、ワンダフル」
「…ごめん。レミリアでお願いします」
「肩書きじゃなくて名前に組み込むからこんなことになるのよ。
 …答えなさい、レミリア!」
「理由なんて特にないわよ。
 そうねぇ… 強いて言うなら暇つぶし、かしらね」
「暇つぶしですって…?」
「そう、暇つぶし。
 それに、私という存在の強大さを知らしめるいい機会だと思っただけよ」
「そんな… そんなことのために魔理沙は…」
「もういいかしら?
 これ以上は無駄な問答じゃない?」
「…そうね。あなたが許してはならない存在だ、ということはわかったわ。
 あなたを退治するのにこれ以上の理由は要らないわね」
「大した自信ね。それでこそ嬲りがいがあるというものよ。
 あなたのその表情が苦痛に歪むのは、さぞかし気分がいいでしょうしね」
「…悪趣味よ、ワンダフル」
「すいませんちょっと役に入りすぎました。 …でも」
「でも?」
「あなたの血は、きっとおいしいんでしょうね…」
「…ワンダフル?」
「遊びとはいえ、こんなに月も紅いから… 本気で吸うわよ?」


 目がマジね。
 遊びだっていうのに本気になるなんて… KYもいいとこだわ。
 そんな本気の目をされたら本気で相手するしかないじゃない。
 これはいわば正当防衛ね。
 レミリア、いいえ、ワンダフル。あなたが悪いのよ…?


「それじゃ、いただきまーす! がおー!!」
「まずはその気に食わない目を奪わせてもらうわ」
「まさか目潰し? いきなりえげつないわね!」


 とっさに目をカバーするワンダフル。しかし甘い!


「てりゃ! 『紐切り』!!」
「ふん、痛くも痒くもないわ…ってあれ?
 ねぇ霊夢、何も見えないよ? 何これ?」
「隙だらけよ! けーね先生直伝の、ハリケーンミキサー!!」
「へぶぅっ!!」
「今だ! 機矢滅留・苦落血をくらいなさい!」
「痛い痛い! ちょっ、本気で痛いって!
 ロープロープ!!」
「…ロープじゃ仕方ないわね」


 もう少しで決着がついたというのに、ロープだなんて…
 …どこにロープなんてあるのよ?


「しまった… 騙された…」
「ふ、ふふ… 私の策に、まんまと、引っかかった、ようね…
 ていうか、なんで、肉弾戦?」
「そりゃあ、あなたが襲いかかって来たからでしょ。
 こっちも咄嗟に反応せざるを得なかったのよ」
「え、演出に、決まってる、でしょ…」


 演出…? だとしたら、一番のKYは…私?
 なんてこったい…


「はぁ… ふぅ…ようやく落ち着いたわ。
 そもそも、せめてスペカくらい使ってよ!」
「ごめんなさいね?
 許して、ワンダフルレミリア」
「…謝る気、ないでしょ?」
「そ…そんなことないわよ?」
「ホントに痛かったんだけどな~。
 目も見えなくなるし。 …もう治ったけどね」
「よ…良かったじゃない。それじゃあこれぐらいで切り上げましょうか。
 魔理沙の手当てもしないといけないし…って、魔理沙はどこ行ったの?」
「さっきフランが回収してたから、霊夢が心配する必要はないわよ。
 そんなことより霊夢。目には目を、って言葉知ってる?」
「知ってるけど… ま…まさか、同じことするつもり?
 あなたにやられたら、さすがの私もひとたまりもないのだけど…」
「同じことをやっても面白くないでしょ?
 だから、私のやり方で霊夢をいじめてあげる」
「な…何をする気?」
「こうするのよ!」
「なっ! は、速い!
 背中を取られた…ってレミリア! あはは! くすぐったいから!」
「ほらほら~。ここがいいのかしら~?」
「ちょっ、オヤジ臭いわよ!?
 レミリア! 腋はダメ! ホント弱いから!
 きゃははははははは!!!」
「弱点を剥き出しだなんて、迂闊過ぎるわよ~?
 やはり私に挑む者は倒れる運命なのだー!」
「レミ、レミリア! ギ、ギブアップだから!
 もう止めてー! いやー! はははははは!!」
「だ~め! 霊夢にはまだまだ苦しんでもらうからね?
 ふふふ… 悶える霊夢なんてなかなか見れないんだから、もっと堪能させてもらうわよ~」


 だ…ダメだ… レミリアに止まる気配が見られない…!
 なんとか打開策を考えなくては!


「わ、わかったわ! 何でも言うこと聞いてあげるから!
 だから、もう勘弁してー!! きゃははははははは!!!」
「…ホント?」
「ふぅ… ふぅ… ようやく終わった…」
「それより霊夢。今の本当?」
「…え? あ、あぁ…そうね…」
「ふ~ん、何でもいいんだ…」


 …もしかして不味いこと言ったかしら?
 助かるためとはいえ、このままだと状況に大差はないんじゃ…?


「で…でも、あんまり無茶なのはダメよ?」
「う~ん、どうしよっかな~?」
「お願いだから、私にできる範囲でね…?」
「それじゃあね…」
「…何かしら?」


 こんなに引っ張るなんて、一体どんな無茶振りが飛び出すというのか…!
 なんか嫌な汗かいてきたわ…


「霊夢の家にお泊まりしたいな」
「…え?」


 今のは私の聞き間違い?
 割かし普通、というか普通そのものなお願いが飛び出したような気がしたけど。


「…もしかしてダメなの?
 何でも言うこと聞く、って言ったのに…」
「あっ、いやいやそういうことじゃなくって…
 本当にそんなことでいいの?」
「だって…
 しばらく霊夢に会えなかったんだもん… ちょっと寂しかった…」
「はぁ… いつも我侭なくせに、欲が無いのね」
「む、別にいいじゃない」


 まったく、可愛いとこあるじゃない。
 やっぱり根っこの部分では子供っぽいのよね。


「誰も悪いなんて言ってないわよ。
 ほら、行きましょう?」
「…? どこ行くの?」
「私の家よ。泊まるんでしょ?」
「…いいの?」
「そのくらいだったらいつだって構わないわよ」
「やったー!
 えへへ… 久しぶりのお泊まりだー」
「はいはい。それじゃ行きましょうか」
「ねぇねぇ、今日は一緒のお布団で寝よ?」
「変なことしないんだったら、いいわよ」
「おさわりは?」
「なしよ」


 まったくこいつは… 幼いのかオヤジ臭いのか…


「…ところで霊夢、今日のこれ、楽しかった?」
「…正直、あんまり」
「…私も」
「でも暇つぶしにはなったし、良かったんじゃない?」
「そうね。霊夢の家にお泊まりできるし、棚からぼた餅ってやつかしら」


 何事も平和が一番ってことね。
 さて、帰りましょうか。
 ………でもな~んか忘れてる気がするのよねぇ。
 ま、いっか。思い出せないなら大したことじゃないでしょ。


























「れ…霊夢、私を置いてくな…」
「ダメだよ魔理沙ー?
 魔理沙は今日ここにお泊まりだからね!」
「…いやー、今日はもう帰って寝たい気分なんだけどなー」
「ここで休んだらいいじゃない。
 でも、その前に私と遊んでね?」
「な…何するんだ?」
「さっきのお姉様たちみたいなことするの」
「くすぐり合いか? それくらいだったらまぁ…」
「じゃあまずは肉弾戦ごっこからだね!」
「そっちかよ!?」
「行くよ魔理沙!
 私のスペルカードが可能にした究極の必殺技… クロスボンバー×2!!!」
「ちょ、待て! ギャーーーーーー!!!!!!」
「…あれ? 魔理沙、生きてるー?」
「な…なんとか…」
「よかった、なら次はくすぐり合いでスキンシップね!」
「誰か… ヘルプ…」





 (了)
「ところでレミリア。他の人たちにちゃんと話したの?
 なんか全員普通の対応してきたんだけど」
「…ごめん。自分のことで頭が一杯だったの」
「忘れてたのね…
 あれ? でも、咲夜はちゃんと合わせてきたわよ?」
「その疑問には私がお答えいたしましょう」
「「咲夜」」
「なぜかというと、私が空気の読める大人の女だからよ」
「「すごい、かっこいい!」」



◆    ◆    ◆



みんな仲良しな話を書いてみたかったです。
子供の頃にやったごっこ遊びの無駄なテンションの高さと、飛び交う意味不明な肩書きやワード。
そしていつもグダグダになるけど、意味もなく楽しい。そんな感じのコンセプトでした。

手探りで書いていたのですが、いつの間にかレミ霊が出来てました。
あとフラマリが少々、と言いますかオチになっちゃいました。

これがフラマリ…?
いつかちゃんとしたのを書きたいです。

そして投稿前の見直しで思いましたが、何回読んでも大妖精がいないです… なんてこったい…
でも、追加する気力が湧かないんだ… ごめんよ、大ちゃん…

このよくわからない話に最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

※7月24日 少し手直ししました
お腹が病気
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コメント



0.2250簡易評価
3.80ナズナ削除
こういう無茶苦茶な紅魔郷をある意味プレイしてみたいですw
でももうちょっとパチュリー様が出ても良かったかなぁ…と言う訳で。
5.60名前が無い程度の能力削除
霊夢ノリノリ過ぎだろwww
9.90名前が無い程度の能力削除
結局咲夜さんが一番カリスマックスな件
10.80名前が無い程度の能力削除
すごく・・・瀟酒です…
13.90壊れた笑いができる程度の能力削除
さっすがー
瀟洒瀟洒瀟洒瀟洒瀟洒瀟洒瀟洒
14.90名前が無い程度の能力削除
笑った。
咲夜さんが空気を読める大人な女なのはウナギを食べたからですか?
と思った。
15.100名前が無い程度の能力削除
レミ霊最高!ってことですね。わかります。
17.80名前が無い程度の能力削除
楽しそうだなこいつらwww
19.80名前が無い程度の能力削除
>>「隙だらけよ! けーね先生直伝の、ハリケーンミキサー!!」
ちょwww
けーね先生何教えてんすかwwwww
23.80名前が無い程度の能力削除
茶番だああああああ!!!!
26.90名前が無い程度の能力削除
これはいいレミ霊・・・レミ霊なのか?w
あなたの作品は(いい意味で)頭からっぽにしてニヤニヤしながら読めるので大好きですw
29.80名前が無い程度の能力削除
良い作品だけど、不思議とコメントが思いつかないwww
31.80名前が無い程度の能力削除
なんていうんだろう、あーーーー。

とりあえずすごく瀟洒です。
34.90名前が無い程度の能力削除
けーね先生も絶対誰かに教わっただろww
35.80名前が無い程度の能力削除
とても瀟洒だと言うことが伝わりました。
…これ以上の感想が…
41.70名前が無い程度の能力削除
これは良い厨二病ですね
42.100名前が無い程度の能力削除
そう言われるとなんだか懐かしいノリ。
やっぱりワンダフル×霊夢はジャスティス。
51.70名前が無い程度の能力削除
そこはかとなく面白かった。
もうちょっと捻れば良くなるとは思うけどどういじったらいいのか思いつかなかった。
58.70名前が無い程度の能力削除
それにしてもこのメイド長、ノリノリである
途中で方向性が変わった気もしないでもないけど、後書きも含めていい感じに締められたと思います
59.100幻想と空想の混ぜ人削除
まさか、まさかここでネタが被っていたなんて……orz
61.無評価お腹が病気削除
遅ればせながら、お返事をさせていただきます…

>3 ナズナさん
 この紅魔郷は間違いなくカオスw
 パチェさんはまだ私の中でキャラが定まっていないのですよ…

>5 名前が無い程度の能力さん
 テンションだけで動いてますからw

>9 名前が無い程度の能力さん
 瀟洒ですからw

>10 名前が無い程度の能力さん
 ありがとう…ございます…

>13 壊れた笑いができる程度の能力さん
 瀟洒ですよねー
 瀟洒瀟洒瀟洒瀟洒瀟洒瀟洒瀟洒…

>14 名前が無い程度の能力さん
 咲夜「瀟洒ですから」

>15 名前が無い程度の能力さん
 わかっていただけましたか…
 でもこれ、本当にレミ霊か???

>17 名前が無い程度の能力さん
 みんな仲良しですからw

>19 名前が無い程度の能力さん
 けーね先生は寺子屋の子供たちにも伝授しています

>23 名前が無い程度の能力さん
 その通りですうううううう!!!

>26 名前が無い程度の能力さん
 大好きだなんて… あたい、困っちゃう…
 大変な励みになります。
 これからもこんな感じで頑張りますので、よろしくお願いします!

>29 名前が無い程度の能力さん
 そうなんですよね。私も後書きに困りました。
 「えっ? これの何を補足すればいいの?」 ってな感じでした。

>31 名前が無い程度の能力さん
 咲夜さんおいしいとこ全部持ってっちゃいましたね。

>34 名前が無い程度の能力さん
 けーね先生に、2000万パワーズの知り合いなんていませんよ?

>35 名前が無い程度の能力さん
 それだけで私には十分でございますよ

>41 名前が無い程度の能力さん
 でしょう? テンションを突き詰めるとこうなりますよねw

>42 名前が無い程度の能力さん
 ワンダフルと霊夢の組み合わせはほのぼのします…
 …ん? ワンダフルじゃねーーー!!

>51 名前が無い程度の能力さん
 実はレミリアと霊夢のバトルはプロット段階ではもっと厨二でした。
  霊夢倒れる→『霊夢… 霊夢や…』→霊「その声は、魔理沙… いえ、老師!」
  →『今こそあの技を使うのじゃ』→霊「…はい! わかりました、老師!!」
 いくらなんでもこれはないなぁ… という理由でこの部分をごっそりカット。
 ですので、いくらかボリューム不足感があったのかもしれません。

>58 名前が無い程度の能力さん
 コンセプトが遊びなので、方向性を気にしないで書いてました。
 そのおかげで霊夢の性格がコロコロ変わります。
 本音を言いますと、後書きの台詞を一番書きたかったのですよw

>59 幻想と空想の混ぜ人さん
 大丈夫です。
 あなたの作品の方が、お も し ろ い!!
66.無評価名前が無い程度の能力削除
哀れ大妖精