「……………………」
あ、どうも。河城にとりです。今現在山の麓の樹海で倒れてます。なんで倒れてるのかって? …………水から上がった瞬間異常な熱気に襲われて、きゅう……と、ね? 研究に熱中してて久しぶりに外に出たから熱さに慣れてない体がやられちゃったのかな。
うーん……そろそろ危ないかなぁ。かれこれ十分くらい倒れてるし。
「……厄いわ……すごく厄いわ。厄のにおいがプンプンするわ……」
あ、雛だ! なんてタイミング! これで助かったぁ……。
「……………………あら? にとり?」
「……………………」
「………………そんなところで何やってるのよ」
「……………………」
「…………言葉のキャッチボール、しない?」
「……………………」
「…………にとりがイジメるわ…………」
あれ? おかしいな。勝手に誤解して勝手に嘆き始めた。
「……………………」
「にとり、確かに厄があなたを苦しめるのはわかるわ。だけどあなたはそれでも私の友達でいてくれるって言ったじゃない」
うん。言ったよ。
「…………なのに、なのになんで私を無視するの……? ねぇ、なんで? まさか私とのことは遊びだったの……?」
え? なんでそんなコアな問題になってるの?
「ねぇ……答えてよにとり!」
そう言って雛は私の襟を掴んで自分の顔の目の前まで私の顔を持ってきた。……雛は私の死に掛けた表情を見てどう思うんだろう……。
「…………死んでる……」
いや、生きてるよ? まだかろうじて生きてるよ?
「…………河童のお葬式ってどうやるのかしら……。…………川に流す?」
もし死体にそれをやったら後日目も当てられない状況になって下流で発見されると思うんだ。
「でもそれじゃあ死体が大変なことに──まぁ大丈夫よね、河童だし」
流すの!? というかもう少し悩んでよ!
「にとり……。……私のためにも死んで!」
え? 実は生きてるの知っててやってるの?
雛はちょっと予想外の腕力で私を抱き上げると、そのまま川へ放り投げた。
──どぱーん
「さようなら、にとり。あなたのことは…………特になんでもないわ」
なんだかすごくショッキングなことを聞いた気がするけど気のせいだろう。
投げられて、水に当たった瞬間地味に痛みを感じたけど川に入ったおかげで復活できた。……結果的に雛に助けられてことは助けられたみたいだね。
「……………………プハッ! ありがとう雛、助かったよ」
「うそ……死体が動いて…………」
「生きてるよ! 私絶賛生存中だよ!」
「だって……あの顔……」
「いやいや雛、私を川に投げた時に『死んで』って思い切り言ってたよね!?」
「あれはミスよ。意図的なミス」
「やっぱりわかってたんじゃん!」
意図的なミスってぶっちゃけわざとだし。
「そんなことはどうでもいいわ」
「逃げた!」
「どうしてヘバってたのかしら」
「むぅ…………。……えーとね、あついからって泳いでここまできて、川から上がった瞬間熱気に襲われたから」
「そう、にとりはMだったのね」
「今の私の発言のどこにそんな要素があったの!?」
「じゃあ実はSなの?」
「知らないよ! どっちでもいいじゃん!」
「ところでどうして川から上がらないのかしら?」
「私の話聞いてた!?」
まさか雛との会話でこんなに疲れるとは思わなかったよ。
「冗談よ。厄リアンジョーク。それにしても暑いわね……思わずにとりを川から引き上げたくなるわ」
「そう言いながらよってこないで! さっき本当に危険な状態だったんだから!」
「だから冗談よ。厄リーズジョークだって。ただ足だけでも水に入ろうと思っただけ」
「顔が本気に見えたんだけど…………」
雛はブーツとソックスを脱ぐと、足を川に入れた。そしてさっき私を投げた時に付いた厄を私から取り、私は厄が移らないようにと雛から少し距離をとった。
「ねぇ雛、去年の夏ってこんなに暑かったっけ?」
「うーん……少なくとも樹海はもう少し涼しかった気がするわ」
「何かあったのかなぁ……」
「ま、原因がわかったとしても私たちには何も出来ないと思うわ。異変解決は巫女の仕事らしいし」
「その巫女がもしかしたらヘバってるかもしれないけどね」
というかそもそもこれは異変なのかな? ただ異常気象なだけかもしれないし。
「まぁどっちにしろなんとかして暑さから逃げるしかないわね。私は既にいくつか策を講じてるけど……にとりは?」
「……いや、最近忙しくって……」
「ヘバるのに忙しいのね?」
「違うよ! 研究、実験だよ!」
「……にとり、あなたは今そのために死に掛けたのよ?」
「いや、まぁそうだけどさ……」
「止めを刺す私の身にもなって!」
「刺さないでよ!」
「どこにいても駆けつけるわ」
「このタイミングでその台詞はとってもいやな意味になるから!」
今日の雛はいつもより毒舌な気がするよ。
「雛、もしかして最近来てなかったからってスネてる?」
「……! そ、そんな訳ないじゃない! 私は孤独に生きる厄神よ!?」
「そうかぁ、寂しかったんだね」
「だ、だから!」
「ごめんね。でも大丈夫、もう実験に一段落着いたから毎日通ってあげるよ」
「…………そ、そう? 本当ね? 本当なのね?」
「うん」
私がそう返すと雛はすごくうれしそうな顔になった。
「…………で、でもそれとさっきまでの、その、悪口とか言ってたりしたのは関係ないわよ!」
「……………………」
うん、雛は素直じゃないなぁ。
「な、なんで笑うのよ…………」
「ううん、数日みないだけじゃやっぱり変わらないなぁって」
「なんのこと…………?」
「ううんなんでもないよ」
「気になるわ」
「別に言ってもいいけど……」
「じゃあ言ってよ」
「いいの……?」
「なんで私に聞くのよ」
「いや、うん、それもそうだね」
まぁいいか、減るもんじゃないし。
「やっぱり雛は寂しがりやだなぁって」
「な!? なななんでそうなるのよ!」
「だって私が毎日来るって言った時からずっとうれしそうな顔してるし」
「!? いや、それは……」
「それは?」
「それは……み、み間違えじゃない? ほら、暑さで頭が……」
「そうかなぁ、身長体重からスリーサイズ足のサイズまで測れるにとりんアイが見間違えるはずないんだけどなぁ……」
「測れるの!?」
「冗談だよ。にとりアンジョーク」
「真似された!」
「ごめん、癖で……」
「どんな癖よ!」
まぁもちろん癖じゃないんだけどね。
「とりあえず雛が寂しがり屋なのは置いておいて、」
「だ、だから違うわよ!」
「何か言い納涼法って無いかな?」
「スルーされた!? ……まぁいいわ。そうね……食べ物を冷やして食べるっていうのは?」
「キュウリはいつも五度以下の氷室の中に入れてあるよ」
「……じゃあ…………あとは知らないわね」
「早っ! せめてあと一つか二つは挙げようよ!」
「仕方ないじゃない。私はいつもそれくらいしかしてないんだから」
「それだけで夏を乗り越えられるの!?」
「……昨年まではそうだったわね。樹海は太陽の光がほとんど入らないからいつも涼しいのよ。今年はその密室性のために熱気が篭もる事態になっちゃったんだけど」
「なるほどー。…………で、今年も食べ物を冷やすだけで乗り切るつもりなの?」
「いいえ、今年は食べ物の量を増やすわ」
「結局その方法だけじゃん! ……というかよくそれだけで乗り越えられるよね」
「いや、これでも結構きついのよ? 厄があまり散らないように抑えてるだけでも精一杯だもの」
「え? それって──」
「ええ、今にとりは危機的な状況にあるの。私が気を抜いたら……そうね、木ぐらいは倒れてくるかもしれないわね」
「……それもそれで冷や汗をかいてちょうどいいかもね」
「……ずいぶんとポジティブシンキングね」
まぁ実際にそうなったらポロロッカかフラッディングで防ぐしね。
「雛も水に入れば?」
「面倒だからいいわ。それに水の中は河童のフィールドだし」
「フィールドって……何もする気は無いよ?」
「嘘だッ!!」
「嘘じゃないから」
「…………別にいいじゃない、入らなくても」
「涼しいよ?」
「う…………大丈夫よ。足だけでも涼しいわ」
「気持ちいいよ?」
「うう…………入ったら負けかな、と思うの」
「この暑さから開放されるんだよ?」
「うっ…………こ、心を無にすれば暑さも感じなくなるはずよ」
「世界が違って見えるよ?」
「ううっ…………別に今のままでもいわ」
「…………素直じゃないなぁ…………」
「な……か、関係ないじゃない! 私はただ遠慮してるだけよ!」
「そうかなぁ……私には入りたくて仕方が無いって感じに見えるんだけど……」
「き、きっと気のせいよ」
どう見ても雛、入りたそうなんだよね。そわそわしてるし。……あ、そうだ、
「ねぇ雛」
「な、何かしらにとり」
「私の持ってる能力知ってる?」
「? そういえば聞いたこと無かったわね。どんな能力なのかしら」
「それはね…………」
私は指で水を少しはじいた。するとその水はほかの水を集め、量を増し、まるで意思を持ったかのように動き、雛の元へと飛んだ。
「え? きゃっ!」
──ばしゃっ!
「自由自在に水を操ることが出来る能力だよ」
「けほっけほっ……な、なにするのよ!」
「いやぁ、雛の希望を叶えてあげようと」
「別に入らなくてもいいって言ってるじゃない!」
「…………本当に?」
「……………………す、少しだけなら…………入りたい……かも……」
「……やっぱり雛は素直じゃないなぁ」
「な、なによ! なんなのよ!」
「ご、ごめん。赤くなりながらもちょっと素直になってる雛を見てたらついかわいいなぁと思ってね」
「はぅ!」
あ、ボフッって湯気が出た。
「うぅ…………。……あ、あつくなってきたわね」
「え? さっきからあんまり変わってなくない?」
「に、にとりはずっと水の中にいるからわからないのよ」
「あ、それもそうだね」
「そ、そういうわけで川に入るわ」
「……………………」
「な、何笑ってるのよ!」
「え? あ、うんなんでもないよ」
やっぱり素直じゃないなぁ。
雛は心なしか顔を赤く染めながら川に入った。
「あれ? 服脱がないの?」
「別にいいわよ。誰かさんに水かけられちゃったし」
「あ、ご、ごめん……」
「……別にいいけど。それににとりが服を着てるのに私だけ脱ぐなんて不公平じゃない」
「まぁそうだけどね」
「ならいいじゃない。気にすることは無いわ」
「うん」
私は思った、
「……はぁ、気持ち良いわ」
「ほらね? 私の言ったとおりでしょ?」
今年の夏はすごく暑いけど、
「あー……ずっとこのままでいたいわ」
「風引くかもよ?」
雛と二人でだったら、
「風邪、ねぇ……。神様も引くのかしら? 今まで引いたこと無いからわからないわ」
「さぁ? 引くんじゃない?」
乗り越えるのは簡単なんじゃないかって。
「あぁ……また暑い世界に戻らなきゃいけないのかと思うと気が落ちるわ」
「それは言わない約束だよ」
私と雛はクスッと笑った。
あ、どうも。河城にとりです。今現在山の麓の樹海で倒れてます。なんで倒れてるのかって? …………水から上がった瞬間異常な熱気に襲われて、きゅう……と、ね? 研究に熱中してて久しぶりに外に出たから熱さに慣れてない体がやられちゃったのかな。
うーん……そろそろ危ないかなぁ。かれこれ十分くらい倒れてるし。
「……厄いわ……すごく厄いわ。厄のにおいがプンプンするわ……」
あ、雛だ! なんてタイミング! これで助かったぁ……。
「……………………あら? にとり?」
「……………………」
「………………そんなところで何やってるのよ」
「……………………」
「…………言葉のキャッチボール、しない?」
「……………………」
「…………にとりがイジメるわ…………」
あれ? おかしいな。勝手に誤解して勝手に嘆き始めた。
「……………………」
「にとり、確かに厄があなたを苦しめるのはわかるわ。だけどあなたはそれでも私の友達でいてくれるって言ったじゃない」
うん。言ったよ。
「…………なのに、なのになんで私を無視するの……? ねぇ、なんで? まさか私とのことは遊びだったの……?」
え? なんでそんなコアな問題になってるの?
「ねぇ……答えてよにとり!」
そう言って雛は私の襟を掴んで自分の顔の目の前まで私の顔を持ってきた。……雛は私の死に掛けた表情を見てどう思うんだろう……。
「…………死んでる……」
いや、生きてるよ? まだかろうじて生きてるよ?
「…………河童のお葬式ってどうやるのかしら……。…………川に流す?」
もし死体にそれをやったら後日目も当てられない状況になって下流で発見されると思うんだ。
「でもそれじゃあ死体が大変なことに──まぁ大丈夫よね、河童だし」
流すの!? というかもう少し悩んでよ!
「にとり……。……私のためにも死んで!」
え? 実は生きてるの知っててやってるの?
雛はちょっと予想外の腕力で私を抱き上げると、そのまま川へ放り投げた。
──どぱーん
「さようなら、にとり。あなたのことは…………特になんでもないわ」
なんだかすごくショッキングなことを聞いた気がするけど気のせいだろう。
投げられて、水に当たった瞬間地味に痛みを感じたけど川に入ったおかげで復活できた。……結果的に雛に助けられてことは助けられたみたいだね。
「……………………プハッ! ありがとう雛、助かったよ」
「うそ……死体が動いて…………」
「生きてるよ! 私絶賛生存中だよ!」
「だって……あの顔……」
「いやいや雛、私を川に投げた時に『死んで』って思い切り言ってたよね!?」
「あれはミスよ。意図的なミス」
「やっぱりわかってたんじゃん!」
意図的なミスってぶっちゃけわざとだし。
「そんなことはどうでもいいわ」
「逃げた!」
「どうしてヘバってたのかしら」
「むぅ…………。……えーとね、あついからって泳いでここまできて、川から上がった瞬間熱気に襲われたから」
「そう、にとりはMだったのね」
「今の私の発言のどこにそんな要素があったの!?」
「じゃあ実はSなの?」
「知らないよ! どっちでもいいじゃん!」
「ところでどうして川から上がらないのかしら?」
「私の話聞いてた!?」
まさか雛との会話でこんなに疲れるとは思わなかったよ。
「冗談よ。厄リアンジョーク。それにしても暑いわね……思わずにとりを川から引き上げたくなるわ」
「そう言いながらよってこないで! さっき本当に危険な状態だったんだから!」
「だから冗談よ。厄リーズジョークだって。ただ足だけでも水に入ろうと思っただけ」
「顔が本気に見えたんだけど…………」
雛はブーツとソックスを脱ぐと、足を川に入れた。そしてさっき私を投げた時に付いた厄を私から取り、私は厄が移らないようにと雛から少し距離をとった。
「ねぇ雛、去年の夏ってこんなに暑かったっけ?」
「うーん……少なくとも樹海はもう少し涼しかった気がするわ」
「何かあったのかなぁ……」
「ま、原因がわかったとしても私たちには何も出来ないと思うわ。異変解決は巫女の仕事らしいし」
「その巫女がもしかしたらヘバってるかもしれないけどね」
というかそもそもこれは異変なのかな? ただ異常気象なだけかもしれないし。
「まぁどっちにしろなんとかして暑さから逃げるしかないわね。私は既にいくつか策を講じてるけど……にとりは?」
「……いや、最近忙しくって……」
「ヘバるのに忙しいのね?」
「違うよ! 研究、実験だよ!」
「……にとり、あなたは今そのために死に掛けたのよ?」
「いや、まぁそうだけどさ……」
「止めを刺す私の身にもなって!」
「刺さないでよ!」
「どこにいても駆けつけるわ」
「このタイミングでその台詞はとってもいやな意味になるから!」
今日の雛はいつもより毒舌な気がするよ。
「雛、もしかして最近来てなかったからってスネてる?」
「……! そ、そんな訳ないじゃない! 私は孤独に生きる厄神よ!?」
「そうかぁ、寂しかったんだね」
「だ、だから!」
「ごめんね。でも大丈夫、もう実験に一段落着いたから毎日通ってあげるよ」
「…………そ、そう? 本当ね? 本当なのね?」
「うん」
私がそう返すと雛はすごくうれしそうな顔になった。
「…………で、でもそれとさっきまでの、その、悪口とか言ってたりしたのは関係ないわよ!」
「……………………」
うん、雛は素直じゃないなぁ。
「な、なんで笑うのよ…………」
「ううん、数日みないだけじゃやっぱり変わらないなぁって」
「なんのこと…………?」
「ううんなんでもないよ」
「気になるわ」
「別に言ってもいいけど……」
「じゃあ言ってよ」
「いいの……?」
「なんで私に聞くのよ」
「いや、うん、それもそうだね」
まぁいいか、減るもんじゃないし。
「やっぱり雛は寂しがりやだなぁって」
「な!? なななんでそうなるのよ!」
「だって私が毎日来るって言った時からずっとうれしそうな顔してるし」
「!? いや、それは……」
「それは?」
「それは……み、み間違えじゃない? ほら、暑さで頭が……」
「そうかなぁ、身長体重からスリーサイズ足のサイズまで測れるにとりんアイが見間違えるはずないんだけどなぁ……」
「測れるの!?」
「冗談だよ。にとりアンジョーク」
「真似された!」
「ごめん、癖で……」
「どんな癖よ!」
まぁもちろん癖じゃないんだけどね。
「とりあえず雛が寂しがり屋なのは置いておいて、」
「だ、だから違うわよ!」
「何か言い納涼法って無いかな?」
「スルーされた!? ……まぁいいわ。そうね……食べ物を冷やして食べるっていうのは?」
「キュウリはいつも五度以下の氷室の中に入れてあるよ」
「……じゃあ…………あとは知らないわね」
「早っ! せめてあと一つか二つは挙げようよ!」
「仕方ないじゃない。私はいつもそれくらいしかしてないんだから」
「それだけで夏を乗り越えられるの!?」
「……昨年まではそうだったわね。樹海は太陽の光がほとんど入らないからいつも涼しいのよ。今年はその密室性のために熱気が篭もる事態になっちゃったんだけど」
「なるほどー。…………で、今年も食べ物を冷やすだけで乗り切るつもりなの?」
「いいえ、今年は食べ物の量を増やすわ」
「結局その方法だけじゃん! ……というかよくそれだけで乗り越えられるよね」
「いや、これでも結構きついのよ? 厄があまり散らないように抑えてるだけでも精一杯だもの」
「え? それって──」
「ええ、今にとりは危機的な状況にあるの。私が気を抜いたら……そうね、木ぐらいは倒れてくるかもしれないわね」
「……それもそれで冷や汗をかいてちょうどいいかもね」
「……ずいぶんとポジティブシンキングね」
まぁ実際にそうなったらポロロッカかフラッディングで防ぐしね。
「雛も水に入れば?」
「面倒だからいいわ。それに水の中は河童のフィールドだし」
「フィールドって……何もする気は無いよ?」
「嘘だッ!!」
「嘘じゃないから」
「…………別にいいじゃない、入らなくても」
「涼しいよ?」
「う…………大丈夫よ。足だけでも涼しいわ」
「気持ちいいよ?」
「うう…………入ったら負けかな、と思うの」
「この暑さから開放されるんだよ?」
「うっ…………こ、心を無にすれば暑さも感じなくなるはずよ」
「世界が違って見えるよ?」
「ううっ…………別に今のままでもいわ」
「…………素直じゃないなぁ…………」
「な……か、関係ないじゃない! 私はただ遠慮してるだけよ!」
「そうかなぁ……私には入りたくて仕方が無いって感じに見えるんだけど……」
「き、きっと気のせいよ」
どう見ても雛、入りたそうなんだよね。そわそわしてるし。……あ、そうだ、
「ねぇ雛」
「な、何かしらにとり」
「私の持ってる能力知ってる?」
「? そういえば聞いたこと無かったわね。どんな能力なのかしら」
「それはね…………」
私は指で水を少しはじいた。するとその水はほかの水を集め、量を増し、まるで意思を持ったかのように動き、雛の元へと飛んだ。
「え? きゃっ!」
──ばしゃっ!
「自由自在に水を操ることが出来る能力だよ」
「けほっけほっ……な、なにするのよ!」
「いやぁ、雛の希望を叶えてあげようと」
「別に入らなくてもいいって言ってるじゃない!」
「…………本当に?」
「……………………す、少しだけなら…………入りたい……かも……」
「……やっぱり雛は素直じゃないなぁ」
「な、なによ! なんなのよ!」
「ご、ごめん。赤くなりながらもちょっと素直になってる雛を見てたらついかわいいなぁと思ってね」
「はぅ!」
あ、ボフッって湯気が出た。
「うぅ…………。……あ、あつくなってきたわね」
「え? さっきからあんまり変わってなくない?」
「に、にとりはずっと水の中にいるからわからないのよ」
「あ、それもそうだね」
「そ、そういうわけで川に入るわ」
「……………………」
「な、何笑ってるのよ!」
「え? あ、うんなんでもないよ」
やっぱり素直じゃないなぁ。
雛は心なしか顔を赤く染めながら川に入った。
「あれ? 服脱がないの?」
「別にいいわよ。誰かさんに水かけられちゃったし」
「あ、ご、ごめん……」
「……別にいいけど。それににとりが服を着てるのに私だけ脱ぐなんて不公平じゃない」
「まぁそうだけどね」
「ならいいじゃない。気にすることは無いわ」
「うん」
私は思った、
「……はぁ、気持ち良いわ」
「ほらね? 私の言ったとおりでしょ?」
今年の夏はすごく暑いけど、
「あー……ずっとこのままでいたいわ」
「風引くかもよ?」
雛と二人でだったら、
「風邪、ねぇ……。神様も引くのかしら? 今まで引いたこと無いからわからないわ」
「さぁ? 引くんじゃない?」
乗り越えるのは簡単なんじゃないかって。
「あぁ……また暑い世界に戻らなきゃいけないのかと思うと気が落ちるわ」
「それは言わない約束だよ」
私と雛はクスッと笑った。
読んでるこっちが暑くなるなぁw
にとりは雛の扱いに慣れすぎだ
アザーッス!!
梅雨明けにぴったりな、夏の暑さを作品から感じました。