前作『友達』との関連性はありますが、前作→今回作と読むと、時間軸が狂っています(魔理沙が歳とっていない)のでご了承を。歳をとったのは人里の連中だけってことでお願いします。
満天の星空の下、暁を思わせる明りが小さな屋台を照らしていた。そよ風が吹き、日中の晴天の賜物で蒸し暑さはない。
吊るしてある弓張り提灯には手書きで『焼き八目鰻屋』と書かれている。炭が跳ねて出来た小さな黒子や、表面の隆起の産物である独特の歪み方が、手書きであることを如実に表している。所々が破けていて、年代物の雰囲気を漂わせる。同じく、年期の入ったのれんも、煙を吸い込んでいい具合に黒ずんでいる。蒸し器は所々が擦れ、光沢を出す銀色の塗装が剥がれている。移動するために装着されている木製の車輪も、滑りが悪くてぎしぎしと軋んで見せる。かれこれ二十年ほど続けているこの家業、どれも思い出溢れる品々。
だが、この提灯だけは捨ててしまってみいいかもしれない。だって――
途端に、ふわりと体を揺らす提灯。破けた穴が、目と口のようにも見える。中にある蝋燭に灯された火が、不安定な火力を見せつける。
「おいミスティア、準備しなくていいのか?」
理由は不明だが、この提灯は命を持っている。この屋台を開店するに至って、何気なくこの弓張り提灯を選んだ結果がこれだ。開店直後から休み無く話し続けるこいつにはうんざりしている。弓張り提灯を吊るせばこれと無い特徴になると思ったのだが、それが裏目に出てしまった。
「うるさいな、蝋燭抜き取るよ」
そう言って手を伸ばすと、勘弁してくれ、と苦笑いする提灯。どういったわけか、こいつの原動力は蝋燭の灯りらしく、そういう意味では本当にこの提灯が命をもっているのかはよく分からない。ただ、こいつが冗舌で喧しいことだけは確信できる。名前など、与えようと思ったことは無い。こいつに名前があったとしても、直接聞かされたこともないし、聞こうと思ったこともない。
今日は週末の金曜日。準備しろと言われなくてもいつものこと、今から始める。八目鰻の背中に爪を食い込ませ、ゆっくりと丁寧に尾ひれへ向かって爪を渡らせる。爪と指の間に詰まる肉を振り払い、八目鰻の頭を取り除く。蒸し器に突っ込み、蓋を閉める。鼻歌で『赤い鳥』を歌い、足踏みでリズムを取る。
いつもなら、うるさいと言ってくる提灯を無視して大声で歌うのだが、今はそういうわけにもいかない。というのも、私の歌声は人を狂わせてしまうから。私の歌は世代によってかなり受けが違うのだが、私の歌をうるさいだけと述べるだけに、こいつはそれなりの年長なのだろう。もっとも、若ければ人気があるというわけでもなく、人が聞けば正気を失い、狂い始める。屋台を開く日は極力、歌わないようにしている。無意識に鼻歌が出てしまうのは大目に見てもらいたい。
響き渡る手拍子――彼が来た。
こいつの弱々しい灯りの所為で生まれた暗がりからのぞく彼の足。のれんが捲くれ、その黒い髪を覗かせる。
「ミスティアさん、蒲焼一つ」
「はいよ、ちょっと待っててねぇ」
白い半袖のシャツの上に着ている赤黒白のチェック模様の付いた薄めの上着。太股や膝の部分が色落ちしている黒いジーンズ。混じりけのない真っ黒なサイドシェイプに、子どものような好奇心に満ちた黒い瞳。健康的な小麦色の肌に、きっちりと整った顔立ち。首飾りには硬貨ほどの大きさのペンダント。私の頭の天辺はちょうど健一の胸元辺りにある。太股辺りにある高さの椅子に腰掛け、上着を脱いで隣の椅子に丸めて置く。
滝沢健一。商売人のノウハウを教えてもらうべく、人里の大手道具屋で修行を積んでいるらしい。両親と妹の四人暮らし、歳は十九、趣味は人形作り。それら全て、彼との雑談で耳に入った情報。客足が多くないこの屋台にとって、客人の特徴を抑えるのは訳ない。ただ、健一の場合は特別だ。週末の金曜日には必ずここに足を運んできてくれる、いわゆる常連さん。週一のペースでも常連と呼べるのかは疑問だが、客として接する時間が最も長いのは健一。丁度蒸し終えた八目鰻をつまみ上げ、垂れに浸し、網の上に寝かせる。立ちこもる煙と香ばしい匂いが屋台を取り巻く。
提灯は客が居る間は基本的に黙ったまま。私としてはありがたいことこの上ないのだが、何か人間に対する恐怖心でもあるのだろうか。案外、私に気を使ってくれているのかもしれない――いや、まさかこいつに限ってそんな事は万が一にもありえない。心を読み取られたのか、無風の夜話を遮るようにしてガラガラと揺れだした。健一はちらりと横目に提灯を見つめたが、興味なさそうにしてすぐに視線を元に戻した。誤魔化すために用意した酒も必要ではなくなっただろうか。
酒瓶と杯を差し出すと、健一は軽く笑って遠慮気味に頭を下げた。酒を注ぎ、口に付け、ふぅ、と溜息を吐いて頭を垂れる。たれを塗りたくる度、八目鰻はジュウジュウと悲鳴を上げるが、知ったことではない。それよりも、今日の健一はどうもしょげているように見える。酒に向かう手も遅く、俯きかげんで溜息を吐くばかり。まぁ、今日はどんな愚痴が聞けるのかを楽しみにしているのも事実だが。
二十年も屋台を開いていれば、愚痴への対応も自然と上手くなる。私の翼を見て恐れおののく人、その場で腰を抜かす人も、勿論少なくなかった。だが、それも祭りの度に人里に姿を現すことで、その問題も解消された。祭りに蒲焼というのも可笑しな話だが、人々の私へ対する恐怖心は殆ど薄れていた。そして、その始めての試みで会ったのが健一。
勿論、それは十数年以上も前。何とか承諾を得て祭りに参加したものの、妖怪という立場が壁となって客はなかった。そんな中、初めて話しかけてきたのは健一の母親。まだまだ幼い健一は好奇心に満ちた大きな両目で、私の耳をジッと凝視していたようにも感じられた。そして、初めてのお客さんも健一だった。健一は甘いたれの匂いに惹かれたものの、やはり妖怪は怖かったらしく、間接的に母親に頼んだらしかった。その時一緒に居た、妹の夏美はひたすら震えていたような気がする。それ以降から、祭りの度に顔を出すようになった健一とはすっかり親しくなっていた。少し大袈裟に言うなら、健一は十三年間の常連さんだ。
一時期売れ行きが悪かったことを除いては、比較的人気のある屋台となることが出来た。
今となっては健一は立派な大人。私は妖怪ゆえに成長が遅く、人間からしてみれば十歳かそのくらいらしい。健一曰く、私は幼い容姿とは裏腹な精神年齢を持っているとのこと。口調も態度も容姿も変り、昔の可愛らしい健一の姿は失せたものの、今は凛とした彼がこうして酒を口にしている。
ちまちまと酒を飲み蒲焼が出来るのを待つ健一。もう一度たれを塗り、サッと串を取って健一に渡す。二本刺さっている串の片方を摘み、礼を言って鰻に食いつく。唇の外に付いた茶色いたれが相変わらず面白おかしい。
「最近どう? 道具屋目指しているんでしょ?」
「んー、別にそういうわけじゃないんだけどさ。ほら、稼ぎ口がないと生きていけないだろ。人形作って売っても良いんだけどさ」
「健一は上手に人形作るでしょ? 私にくれた奴だって、ほら」
蒸し器の隣に置いてある人形を取り、両手を摘む。ピンク色の髪、長い耳、特徴的な羽毛、小豆色の服。私をモデルにした人の頭ほどの大きさを持つ、三頭身の手縫いミスティア人形。模様は狂いなく模られ、髪は一本一本が艶やかな麻糸で作られ、縫い目は暗闇に潜む妖怪ほどにも目立たない。これほど精巧に作られた人形はなかなかない。健一曰く、自分の人形は作りが甘いということらしい。どうやら、彼は幼い頃から人形劇に興味を持っていたらしく、その人に頼み込んで人形作りを教えてもらっていたそうだ。その人の名前はアリス・マーほにゃらら。あまり記憶にないが、長ったらしい名前だったことだけは覚えている。その人がどうやら、健一の尊敬している人らしい。その人に敵わないからこそ、人形を売りたくないのだという。言わば、師匠に対する対抗心や劣等感が弟子を成長させるのと同じようなものだろう。
健一に差し出した酒瓶を取り上げ、新しい酒瓶を渡す。健一の持つ杯に酒を注ぎ込むと、柔和に微笑んで小さく頭を下げた。私が中身の減った酒瓶を取り替えるのはよくあること。目の前で酒を煽られてしまっては私もつられて口を付けたくなる。それでいて、健一が掛け持つ代金は蒲焼と酒瓶一つ。客にとってはお得なことなのだし、何も困りはしない。
次第に、健一の頬が赤く染まってきた。笑い声もどこか豪快になり、いつものように口の回りがなだらかになっていた。私も同じく、少しずつ体が火照っているのが分かった。酒には強いほうだが、これくらいの症状は誰もが経験する。そして、そろそろ健一の話題が飛んでくる頃だろう。
案の定、健一はぽつりと口を開いた。
「――夏美に彼氏が出来たらしいんだよ」
夏美――二歳年下の健一の妹。人里へ赴くと、必ず健一と一緒に足を運んでくれていた。肩に掛かるセミロングの黒髪に、兄弟揃った純粋な黒い瞳。色白の肌と、ほっそりとした腕と脚。服装はあまり覚えていないが、あの容姿を持っていれば彼氏でも何でも手玉に持つことが出来るだろう。脳内に夏美の顔を思い浮かべながら、感嘆の声をあげ、健一に微笑む。
「へぇ、そりゃあ良かったじゃないか」
「だがな、兄としては素直に喜べないわけだ」
「それってもしかして嫉妬?」
鼻で笑った後、苦笑いして串を傍へ放る。冗談交じりでからかったつもりだったが、酔っ払いつつも冷静なところは健一らしい。唇を舐めながら小さく唸り、再び口を動かす。
「夏美がどんな人と付き合っているのかが気になってさ。それだけさ」
「なるほどねぇ……ま、あの子は結構しっかりしているし、大丈夫だと思うよ」
「いつから夏美との付き合いがあったんだよ、ミスティアさんは……」
妖しげに笑みを作り、ウインクを飛ばす――鼻であしらわれた。
健一は大きな溜息と一緒に、テーブルに両手を付いて勢いよく立ち上がった。お帰りの合図。健一とは出来るだけ長く話していたいのだが、私のために夜遅くまでつき合わされるというのも可哀想だ。活動時間が人間と逆転している私にとって、夜間はルーミアくらいしか話し相手が居ない。ガラガラと自己主張をする提灯――こいつはいつから私の心を読めるようになったのだろう。酒瓶を片付けながら、ちらりと健一を見る。天井を見上げながらポケットに手を突っ込み、突如汗ばむ健一。
「どうかしたの?」
「いや……今夜は見逃してくれ。まだまだ老い先長いんだ」
「? 意味分かんないよ」
「――体で払うなんて洒落にならないからツケにしてくれ、頼む」
突如、胸に圧し掛かる鉄の固まり。この類の冗談は聞きなれているというのに、急に胸が萎められた。針で悪戯に刺されるようにして、疼痛が胸を襲う。健一にそれを悟られないように、苦笑を浮かべて固まりつつある口を動かす。
「……きちんと返してもらうからね」
「勿論……それじゃあ、ご馳走さん」
苦笑いを残したまま、こちらを気にしながら席を立つ健一――私の鋭い爪を見ているのは嫌でも分かった。足取りも不自然に、私を警戒するようにして暗がりに体を沈めていった。
健一の足音が消えた頃、カラカラと提灯が体を揺さぶった。胸にぶら下がる重りを提灯に向かって投げつけたかった。
「ミスティア、あいつ上着忘れているぞ」
ふと目をやると、炬燵で丸まる猫のような上着が置いてあった。もう足音が聞こえないが、それほど遠くへは行っていないだろう。上着を取り、健一の下へと飛んでいく。
健一にはすぐ追いついた。
「健一! 上着わす――」
「う、うわあぁ!」
あまりの大声に、思わず肩がすくんだ。狼狽と恐慌が健一の体全体から感じられる。腰を抜かし、草地に腰を着いたまま唇を震わせ、おぼつかない手取りで後退している。
明らかに、自分を恐れていた。
「ち、違うよ健一。忘れ物届けに来ただけだよ……ほら」
「へっ!? あ、あぁ……そ、そそそうか。あ、あああり……あり……がと」
健一は震えた口でそう言い、立てないでいる太股の上に上着をそっと置いた。その際目に映った、恐れ慄く健一の表情が身体を貫いた。
健一の恐怖に満ちた表情を最後に、背を向けた。そのまま重りを着けたような四肢を体にくっ付けたまま、ぼんやりと灯される屋台へと舵を取った。
健一の走り去る音が鼓膜を突き破った。
「どうしたミスティア、冴えない顔して」
「……別に」
喧しい。歳だけ重ねたおんぼろ提灯。とっとと失せろ。
「別にってこたぁないだろ。言っとくがな、俺は一生の殆どをここで過ごしてきたんだぜ? そんな俺に隠し事なんてするんじゃねぇ」
「うるさい。蝋燭抜き取るよ」
「お前はいつも客の愚痴聞いてるんだ、今日は俺がお前の愚痴を聞いてやろうじゃないか」
提灯に伸ばしかけた手が止まった。こいつの表情は伺えないが、今の言葉に他意はないのだろうか。もし、そうだとしたら――愚痴を垂らしてみるのも良いかもしれない。
奥から酒を取り出し、普段は客の座る椅子に腰掛けた。いつも、客にはこんな風景が映っているのか、と初めて知った。ほんの気紛れ。こいつなんかに慰められた日には屋台に出られない。だが、愚痴を漏らすだけなら良いかもしれない。相談相手が居ないときは人形でもペットでも、適当に悩みを告白すると言う話を聞いたことがある。
それと同じように、愚痴を零すだけなら、案外良策なのかもしれない。もし、途中で嫌になったら黙りこむかこいつの蝋燭を引っこ抜いてやればいい。
気紛れも風の吹き回しもいいところだが、騙されたと思って試してみることにする。
酒を口に付けると、自然と大きな溜息が零れた。
「……やっぱりさ、人間と妖怪の間には境界があるのかな」
「何だ、健一のことか?」
「まぁね……悲鳴聞こえた?」
「そりゃあもうばっちりとな」
こいつは表情を読み取れないだけに性質が悪い。内心では私のことを嘲笑しているのか、哀れに思っているのか……一切の情報を口調だけで判断しなければならないというのはなかなか難しい。ただ、破れ穴から、蝋燭の火が覗き込むだけだった。
客の表情からは様々な心理をつかめるようになった私でも、口調だけでそれを判別するのは難しい。
「何か悲しいよ。健一とは長い付き合いなのにさ」
「健一は人間、お前は妖怪。食われる立場なんだよ、健一は。ミスティアだってあの幽霊お嬢様と一緒にいるのは嫌だろう? それと同じだ」
「それとこれとはわけが違うでしょ。私はね、健一と幽々子様との繋がりは違うの、分かる?」
暫しの沈黙。
何だ、言いたいことがあるなら早く言え。私に苦笑でも見せるか? それとも慰めるのか? 馬鹿馬鹿しく思っているのか?
「残念ながら、恋の話は分かんねぇな」
「なっ――このっ!」
素早い手取りで蝋燭を引っこ抜いた。慌てていた所為か、熱を帯びた場所に触れてしまい、痛みが走った。身動き一つせず、提灯は力を失って黙してしまった。
何が恋の話だ、ふざけるのもいい加減にしろ――
恋――か。異性をこの上なく慕うこと、切なくなるほどに好いていること――そんな定義を、どこかで聞いたような記憶がある。たまたま訪れたお客か、祭りの際の盗み聞きか。
異性であったとしても、私と健一が結ばれるなんて馬鹿馬鹿しい。いや、そんなものはただのお笑い種、滑稽だ、愚の骨頂だ。
大きな溜息が零れた。
「あちっ!」
思わず蝋燭を投げ捨ててしまった。カランカランと転がる蝋燭に目を向ける前に熱さを通り越した痛みを感じる右手の甲へと目を向けた。
溶け続けていた蝋が滴り落ちたらしく、甲に汚い斑を作っていた。長い爪で掻き毟り、余熱を持った蝋を引き剥がした。爪で掻かれた皮膚が僅かな爪痕を残して赤みを帯びていた。
何にうろたえているのか。
何に動揺しているのか。
考えたくはなかった。
蝋燭を踏みにじり、雑に消火した。バキッと音を鳴らし、折れた白い蝋燭が粉々に砕けた。
いっそのこと、実体のないこの靄も、一緒に砕けてしまえばいいと思った。
Ж
今日は月曜日。平日の頭は主に二通りの人間がいる。休みが終わり、仕事に手を付けて自らを活性化させる者と、休日が終わり、その気だるさが抜けずに脳を動かさずに肉体だけで働く者。どちらかといえば、いや、素人目にも後者が多いと判断できるのだろう。勿論、それは自分も例外ではない。
とは言うものの、仕事というよりは趣味、趣味というよりは焼き鳥撲滅、焼き鳥撲滅というよりは暇潰し。結局、そこまで利益を追求するケチな商人とは違い、売り上げはなくても構わない。普段は買った物、材料費に五パーセントを付加し、それを利潤としている。売り上げがなくてもいいということに矛盾するが、これは私の客へのサービスが響くが故に行われること。結局のところ、私への利益は雀の涙ほどにもない。
人里をうろついていると、改めて思う。八百屋、雑貨店、洋服店、床屋に花屋、ケーキ屋――表情や細かい仕草で、彼ら彼女らの状態は何となく掴める。
私は羽を隠せない分、子どもでも私が妖怪であることは一目瞭然だ。本来ならば、少しでも警戒されないように羽を隠すべきなのだが、残念ながら私にはそれが出来ない。しかし、今更になって羽を隠す技術を得ようとも思わないし、必要とも思わない。
それは勿論、私はすっかり人里に訪れる、奇特で大人しい妖怪だと認識されているからだ。だが、初めてのお祭りで、蒼白の長い髪の女性に目を付けられたときには本当にびっくりした。その時はどうやら、私を人食い妖怪だとして成敗されそうになったが、お得意の口で何とか説得に成功したのだ。
私がこうして人里を訪れているのには訳がある。というのも、毎週月曜日には鰻を仕入れるからだ。今までは川で適当に捕っていたが、今となってはそんな必要もなく、ただお金を払って買えばいいだけ。魚屋に勤めるおやじさんは今日も元気に客の相手をしていた。威勢の良い肝の据わった声、振り返られたら一歩引くような形相。適当に服装を繕えば、立っているだけで人々が道を開けそうだ。何故こんな人が魚屋などを営んでいるのかは知らないが、その元気で豪胆な言動や態度には、不思議と皆が親近感を持っているように思えた。
「おじさーん、鰻買いに来たよ」
「ん? おぉミスティアちゃんか」
ミスティアちゃん――体がむず痒い。いくら子どものように見えるとはいえ、少なくともこのおやじさんよりは長生きしているはずだ。だが、この呼び方を咎めようとは思わない。こちらに親しみを込めてのものなのだろうから。
おやじさんは何も言わず、動かず、その代わりに不器用な苦笑いを浮かべた。厳つい表情が緩むのはどうも違和感がある。だが、その形相が解れるというからには何かある。品切れか、売り切れか、痛んでしまったか、物価高騰か――要因は数あれど、今の状況に好ましくないことだけは覚悟できていた。
「今は夏だろう? 鰻重はスタミナが付くってことで皆買っていっちまうんだよ。俺だってお前さん一人を特別扱いすることは出来ないからなぁ」
「いやいや、当然だよ。商売は信用が第一、でしょ?」
「お、よく分かっているじゃないか。小さいのにしっかりしてるな」
小さいという言葉にむっとしたが、怒りという怒りは全くなかった。鰻を買えないと分かった今、この熱気溢れる人だかりに埋もれる必要はない。新しく来た客の相手をするおやじさんを後に、上空へと飛び立った。
いくら客足が少ないとはいえ、いつ誰が来てもおかしくはない。状況の悪いときに限って事態が起こるというのはよくあることだ。客足が無いからといって、商品を一切取り扱わない店がないのと同じだ。
妖怪の山から霧の湖へと流れ行く流水。透き通った綺麗な水。飴玉ほどの石ころが広大な河原となっていて、所々から雑草が顔を覗かせている。周囲には軒たけほどの木々が並んでおり、まるで人工的な涼み場のようだった。川の幅は四メートルほどあり、深さは三十センチ。メダカのように小さく可愛らしい魚もいれば、鰻のように食用に成りうる魚も生息している。秋になれば、鮭も産卵しに川を上ってきているのだろう。妖怪が生息していることを除けば、家族連れで遊びに来るにはもってこいの場所だった。
人里で鰻を購入するより以前はここで鰻を捕まえていた。生きている鰻を捕まえることなんて何年ぶりだろう。捕まえること自体はそれなりに容易だが、石鹸を塗りたくったようなものとも、摩り下ろした里芋のようなものとも言い難い、あの触感には苦労させられた。その上、手の中で死に物狂いにうねる時の気持ち悪さに至っては右に出る者はいないだろう。
河原が目に映り、ゆっくりと下降する。見慣れない人影が川に脚を突っ込んでいた。白と黒の服に、肩に掛かる金髪――だが、白黒魔法使いの服装とは似つかないほどの軽装、トレードマークの帽子も見当たらない。ではあれは一体誰なのだろう? この熱さに耐えかねて衣替えでもした白黒魔法使いだろうか。
河原の上に脚を降ろすと、涼しげな風が頬を擦った。彼女の行為がようやく、細々と目に映った。濡れそうになるスカートを左手でたくし上げ、槍を突き刺す要領で右手を川の中に突っ込んでいる。不器用で様になってはいないものの、川に潜んでいる魚を捕らえようとしているのは確かだった。一体、何の気紛れを起こして魚捕りをしているのかは分からないが、彼女がいると私の捕獲作業に支障が出ることだけは明らかだ。
「魔理沙、何してるの?」
「ん? あー……誰だぜ?」
何をしているのかは素人目にも何となく分かる。だが、会話の流れを円滑にするべく、きっかけを作るには適した話題だ。魔理沙は振り向き、暑そうに服を仰ぎながら振り向いた。私の名前など覚えていないのだろう。当然といえば当然だ。ボコボコにされた時と、宴会で幽々子様に捕食されそうになった時以来、魔理沙には会っていない。右腕を額に当て、天を仰ぎ見る。日差しの強さを物語っているのか、私の名を思い出そうとしているのかどうかは分からない。ピクッと跳ね、小さく頷きながらこちらを振り返った。名前を思い出していたらしい。
「ミスティア・ローラレイ!」
「残念、ミスティア・ローレライでした」
「どっちでも良いのぜ」
「そう? 霧雨 沙理魔」
ただの皮肉の言い合いに過ぎなかったが、私の名前を覚えているとは驚きだった。それにしても、彼女はここで一体何をしていたのだろうか。魚を捕まえようとしていたのは分かるが、何故そんなことをしていたのだろうか。彼女の性分なら、あの極太レーザーを浴びせているはずだというのに。疑問に思っていると、魔理沙が背を向けて屈みこんだ。背後のスカートの裾を水に浸していることにも気付かずに、水の中で何やら手を動かしている。
瞬間、振り向く魔理沙。肌に感じる涼しさ、濡れる服。そのまま冷たい何かが頬に触れた。思わず振り払う。川の水が飛んできたことには間違いない。顔を隠しながら魔理沙の手を見るとL字型をして半透明な緑色の物体を手にしていた。濡れた服が肌に張り付く――気持ち悪い。
「ははっ、本当はこれで香霖と遊びに来たんだぜ」
L字の先を上に向け、水を噴き出す。どういった仕組みなのかは知らないが、迷惑極まりない。そして、そのこうりんという人物とは誰なのだろうか。魔理沙の友達にまともな人がいるとは思えない。
「その香霖、って人は?」
「私が今晩のおかず捕まえたら相手するって言って木陰にいるぜ」
「なるほど、それで魚を」
魔理沙が指差す方向の木の陰からは黒い服を着た肩と、足の先には雪駄が見えた。体格からして恐らく男性、それも大人。魔理沙の父親だろうか、それともただの知り合いか。聞くつもりはないが、訊きたくないわけでもない。どうせなら訊いてみようか――
――そうだ、こんな無駄話をしている場合ではない。わざわざ人間の活動時間に合わせて一睡もしていないというのに、このまま無駄に時間を過ごしたくはない。さっさと鰻を捕まえて、小高い木の上で眠りに付きたい。
川の水に足を入れる。日差しの中で保たれている冷ややかさは何となく不思議だった。スカートは水面と接吻するかしないか寸前のところだったので邪魔にはならない。鰻取りは久しぶりだったが不思議と体が疼いた。魔理沙はこちらの様子を察したのか、水滴の音一つも残さずに川を出た。暫らく、水面と睨めっこ。ちょろちょろとするメダカを視界から除去しつつ、目を皿にして鰻を探した。
ザバァッと水しぶきが舞い、柔らかく、ぬめぬめとした何かに右手の爪が突き刺さった。顔をしかめたが、傷口が塞がるはずもなかった。あまり傷つけると酷いことになるので、適当に弱らせてから両手でがっちりと押さえ込んだ。手の内で力なく跳ねるが、爪の食い込んだ腹部からは鮮血が流れ出していた。
「……で、それをどうするんだぜ?」
「勿論、食べるのさ」
「そうじゃなくて。どうやって持ち帰るんだぜ?」
固まる唇。不定期に跳ねる鰻をじっと見つめたまま、暫らく考える。鰻一匹では足りない。最低でも五匹くらいはストックしておきたい。そうなると、当然何かに入れておく必要があるわけだ。バケツに入れるか、氷に詰めるかの二択。だが、今の状況ではどちらも不可能という三択目が脳内を横切った。やむを得ず、三択目と手を結んだ。それを見越していたかのように、魔理沙がニヤニヤしながら笑みを浮かべた。
「今からバケツを用意してくるからさ、私のために一匹捕まえてくれないか?」
「むぅー……まぁ、いいけどさ」
そう言い残すと、魔理沙は河原に寝そべっていた箒を取り、物凄い速さで空を切り裂いていった。次の瞬間、彼女の姿はなかった。鰻を直接捕まえるのはご無沙汰だったが、爪が食い込んでしまったこと以外に支障はない。波打つ鰻に鳥肌を立たせつつも、魔理沙の帰りを待った。
冷水がふくらはぎを擦する。たまには水遊びでもしてみようかと思っていると、風を切る音と同時に魔理沙が戻ってきた。一体どこへ取りに行ったのかは知らないが、恐るべきスピードだった。魔理沙がバケツに水を汲み、催促される前に鰻を中へと入れた。不思議なことに、腹部を濡らしていた血はバケツの水を濁らすこともなく、血を流すこともなかった。妖気に触れ、風変わりな再生能力でも携えているのだろうか。途端に生き生きと動き出し、下手をしたら水を蹴り上げて脱出してしまいそうなほどだった。
「それじゃあよろしく。私と香霖の分、頼んだぜ」
私のために一匹捕まえろ――魔理沙の言葉を反芻したが、先程の発言とは食い違っている。が、たった一匹どうってことないだろう。早く終らせて早く眠りたい。
目を凝らして鰻を探す。鰻を目にした瞬間、魔理沙が彼の元へと向かっていったのが横目に映った。
木に寄りかかる彼の傍に立つ魔理沙。魔理沙がL字の先端を向けて水を発射した。顔に浴びせられ、慌てふためいて立ち上がる彼――どうやら眠っていたようだ。悪戯笑いを浮かべる魔理沙にしかめっ面を返し、眼鏡を拭く。しかし、彼は眼鏡を拭き終えるとすぐに表情を緩め、彼女の頭を撫でた。
不意に、鰻が視界から外れた。代わりに、二人の姿が焦点へ集まった。親子なのか、ただの友達なのかは分からない。
ただ、二人の笑顔が目に映ったとき、私は口を開いたまま、一心になってその光景を見つめていた。
Ж
涼しげな風が屋台に吹きつけ、のれんや提灯が揺れ、屋台全体が小さく悲鳴を上げる。二十年も扱っていれば当然だろう。懐かしの道具を捨てるのも惜しいが、心機一転してしまおうか。
「くうぅっ、暇だ! ミスティアッ、客はどうしたっ、客は!」
いや、さっさと心機一転しよう。せめてこいつだけでも、とっとと処分してしまおう。びりびりに破いてしまえば、命の宿った提灯とはいえひとたまりもないはずだ。早速引き裂いてやろうと手を伸ばす。屋台の準備前に研いだ、鋭利な爪の被験者第一号だ。
「よしっ、ミスティア! 客が来たぞ!」
――命拾いしたな、口八丁なだけのおしゃべり提灯。
手を引っ込めると、確かに誰かの足音が聞こえた。ギィギィというスニーカーの音でもなく、ペタペタという草履の音でもなく、コツコツという革靴の音でもない。革靴よりも響きの良い、カンカンと鳴る足音――ハイヒールだろうか。
のれんの下に現れた下半身は明らかに女性だった。遠慮がちにのれんをくぐり、顔を覗かせて小さく頭を下げた。女性の顔には見覚えがあった。先程の騒ぎようが嘘のように、こいつは黙り込んでしまった。
「……お久しぶりです」
「夏美? こんな時間にどうしたの。女が夜を一人歩きしちゃいけないよ?」
「いえ、ミスティアさんは色々と悩みを聞いてくれるっていうのを兄から聞いて……ご相談が」
神妙な表情だったが、夏美の美麗さはまったく変らなかった。肩まで掛かる黒い髪に、澄んだ漆黒の瞳。決して自らを強調させないような質素な洋服。白のブラウスに、黒いスカート、首飾りは健一とお揃いなのだろう。白みを帯びる肌に、ほっそりとした体付き。質素な服装にも夏美の優美さは劣らず、まさしく私の理想の体型でもあった。謙虚で大人しく、兄の健一と比べるといくらか大人びている。
お酒を差し出すと、夏美は苦笑いしながら首を振った。――夏美は酒に弱いということをすっかり忘れていた。酒に弱いというが、実際に飲んだらどうなるのだろう。酔い潰れて性格を一変させるのか、もしかすると脱ぎ始めるのだろうか。いや、酒を口にするには若すぎるのか?
取れたての鰻も注文することはなかった。ここへは相談に来ただけなのかもしれない。夜道を歩いてくるほどの重要な話なのだろうか。私は掴みかけた鰻をバケツに入れて蓋を閉めた。近くから汲んできた湧き水で手を洗い、夏美を振り返る。時折拭く風が夏美の艶やかな髪を躍らせている。
「それで、相談っていうのは?」
「あ、いえ……兄のことなんですけど」
「健一のこと?」
「はい……兄は私のことについて何か言っていませんでしたか?」
「何かねぇ……あぁ、夏美に彼女が出来たとかどうとか」
やっぱり、と夏美は表情を曇らせた。苦笑いの後、夏美はすぐに顔を上げた。
「本当は彼氏なんていないんですよ。それに、寄ってくる男の人は皆卑猥な目で私を見るんですよ……どうしたらいいんですかね」
卑猥な目――当たり前だ。女である私だって、夏美の綺麗な体のラインには自然と目が向いてしまう。成るほど、綺麗な体の持ち主にはそういった悩みもあるのか。
――なんて思っている場合ではない。おしとやかな夏美のことだ、無理に強いられたら断ることも出来ないだろう。同じ女性として、この件を見過ごすわけにはいかない。
だが、どうすればいいのだろうか。
「夏美の体に目が行くのは仕方がないよ、綺麗なんだから。誰かに襲われそうになるとか、後を付けられたりはしないんでしょ?」
「それはないですよ。さすがに昼間は人目が多いですし、夜は屈強な男の人達が何人かで見回っています。妖怪が襲ってきても、賢者様が守ってくださいますから」
「それなら里も安泰だね。どうしても人目が気になるなら……いい彼氏を見つけるか、健一と一緒にいるか、外に出ないか。……でもまぁ、醜くなるのが一番手っ取り早いかも」
「がんばって太ってみましょうかね……」
艶美な笑みを浮かべながらそういい捨てる夏美。随分と贅沢な悩み。羨ましい。
「健一に守ってもらえばいいんじゃない? 夏美のガードマンとまでは言わないけど、可愛い妹のためなら協力してくれるんじゃないかな」
嘘ではなかった。健一の妹思いの性格は彼の幼い頃から知っている。だからこそ、昨夜のように夏美のことを相談したのだろう。健一なら、暇なときに夏美の傍に付き添ってやることくらいなら朝飯前だろう。健一が屈強な男に分類されているのかどうかは知らないが、妹の為に体を張るくらいの度胸と勇気は揃えているはずだ。
そう提案した私に、夏美は妖艶な笑みを浮かべた。――こんな仕草をされたら、私だって発情してしまいそうだった。
「もしかして暑い? 何か汗ばんでいるみたいだけど」
「え? そ、そうですか? 暑くはないんですけど……」
手の甲を擦り、慌てふためくように動揺する夏美。今日は風通しもよく、湿気も大したことはない。それとも、汗を掻くことに何か抵抗でもあるのだろうかと思った矢先、夏美は既に不適な表情を浮かべていた。
「――駄目ですよ。兄には恋人がいるんですから」
「へっ!? こ、恋人!?」
あまりの驚きに声が裏返り、夏美にクスクスと笑われた。面白くて微笑んだというよりは――冷笑。いや、気のせいだ。
健一に恋人――考えもしなかった。
恋人……恋人が出来たら、当然ここへ訪れる回数は減る。いや、いつものようにここへ訪れたとしても恋人と一緒に来訪する可能性は極めて高い。
……はぁ。
「どうかしました? 私、これでも女の勘に優れているんですよ」
「えっ、な、何よ……女の勘って」
「いえ、何でもありません、ふふ。……さて、今日はどうもありがとうございました。誰かに話すだけでも、結構気持ちが晴れるものなんですね。もっと早くここに来ていればよかったです」
ぺこりと頭を下げ、なびく後ろ髪を押さえながらのれんをくぐっていった。暗がりに栄える腰周りが、異様な美しさを放っていた。
「あ、そうだ」
夏美の声で、腰元に向けられていた視線がぱっと振り向いた。反射的に起こったことなのか、いつもとは違う妖しげな声に気が行ったのか。
「近いうちに、ツケを払いに行くって兄が言っていましたよ」
「あぁ、そう……ありがとう」
――お願いします、ミスティアさん
ぞっとするような声が背筋を舐めた。夏美? いや……提灯、お前か? けど、しわがれた声のこいつがあんな底なし沼と美声が交えたような声を出せるはずがない。それに、こいつが私を『さん』付けで呼ぶはずがない。――やっぱり、夏美?
お願いします――脳裏に響く、不快な音色。艶やかでありながらも、闇に犯されたような声。あの声だけで性格を判断するとするならば……悪女。そんな言葉がぴったりだった。けれど、夏美に限ってそんなことがあるはずがない。
数年前、夏美が突然現れなくなった時期はあった。だが、それもたった一ヶ月ほど。すぐに健一と顔を出してくれた。そのことについて言及はしなかったものの、その間に何かあったのかもしれない。
――妖怪と人間の壁が、心の成長と共に響いたのだろうか。
妖怪と付き合う兄への不安、異人と触れ合うことで起こるいざこざ、あるいは軽蔑の目。要因はいくつも考えられる。ただ、そんな態度を見せたことはなかった。それに耐えられないのなら健一を止めたり、あるいは付き合いを絶てばそれで済む話だ。そして何より、わざわざ私のところに相談を持ちかけてくるはずがない。
きっと、何かの勘違いだろう。私へのお願いは何かもっと別のことに違いない
「ミスティア」
枯れた声が耳へと吸い込まれていった。普段の冗舌な冗談交じりの音程ではなく、聞き慣れない、威厳のある声だった。思わず、肩をすくめてしまった。
――そうだ、早くこいつを廃棄しなければならない。先程の暗い夏美の声も、こいつから与えられるストレスが根源だったのだろう。こいつの声がここまで厳かに聞き取れてしまうとは私も随分とこいつに悩まされてきたのだろう。爪を擦りあい、わざとらしく音を立てる。鳥肌の立つ、嫌な音。提灯の腹部目掛けて、ゆっくりと爪を立てた。
「……ミスティア」
「何? 遺言なら受け付けないよ」
「そうじゃねぇ――嫌な予感がする」
「今から私の餌食になること?」
「馬鹿野郎、そんなことどうだっていいんだよ。お前だよ、ミスティア。何かが……お前の後ろで蠢いている」
嫌な予感? 何かが蠢く?
何をまた意味の分からないことを。命乞いをするつもりが、混乱の挙句意味不明の言語を口走ったといったところか。
「で、それがどうかしたの?」
「――一週間だ。その間、今まで通りにここで過ごさせてくれ。もし、一週間以内で何かが起こるか、何も起こらずに一週間が経ったら……煮るなり焼くなり好きにしな」
一週間――決して短い時間ではない。夜の営業を少なく見積もって四時間だとしても、二十八時間もこいつと一緒にいなくてはならない。そんなもの、苦痛以外の何者でもない。だが、逆に言えばあと一週間で、こいつの呪詛のような言動からも解放されるということだ。昨日悩みを聞いてもらった分の借りを返す、そう考えれば自分自身の制御が出来る。
爪を引っ込め、首を回した。
「分かったよ……けど意外だね、命乞いしないなんて」
「今更になって命なんか惜しまないさ。……というより、俺は偶々この弓張り提灯に宿っただけであって、お前の帽子でもこの屋台にでも宿ることは出来るんだよ」
私の帽子に宿ることも出来る――身の毛がよだつ。だが、こいつに限ってまさかそんな事はしないだろう。そんなことがあれば、すぐにでもこの帽子を投げ出す。……偶々ここに宿ったなら、早く出て行ってほしい。
「ま、俺は暫らく黙っておくさ。お前も、何か悩み事があるようだしな」
よく分かっているじゃないか、私があんたに悩みを抱えていることに。
提灯は眠りに着くようにして、火力が一気に弱まっていったように見えた。
Ж
翌日、翌々日も健一は現れなかった。この前の健一の態度を見れば、それも納得できた。なんだかんだいって、健一がここへ訪れる日が一番楽しみだった。思い返してみれば、それはあいつも同じだったらしく、健一が来る日はいつにも増して多弁だった。だが、そんな健一と一緒の日もこいつは最後。健一が面白い話題でも吹っかけてくれることに期待しているのだろうか。
巣の上で、大きく体を伸ばす。日中はあまり天気がよろしくなかったのだろうか、上空は灰色の雲に覆われていた。綺麗で薄明るい星光も、優雅で神秘的な月光もない。指の関節を鳴らし、首を大きく回す。
そろそろ、屋台の準備に取り掛かる時間。今日の客は誰だろう。それとも、今日は健一が来るのだろうか。
――早く来てよ、健一。
そう録音された故障済みの蓄音機が呪詛のように心の中で繰り返された。
その音声が、鬱陶しかった。粉々にして、いや、跡形もなくあいつよりも先に破壊してやりたかった。だが、それは同時に私の心をも破壊するのと同義だった。
自分でも、何を考えているのか分からなくなってきた。
上体を起こし、木の下に止めてある屋台の傍へと飛び降りた。今日は一体、誰が来るのだろう。……出来れば、健一に来てほしいと願っている自分がいた。
提灯に火を灯し、マッチを消火する。燃えかす特有の匂いが鼻を蹴った。蓋を閉めたバケツの中からはピチャピチャと水が跳ねる音がする。元気がよく、生命力も強いため、常に新鮮な状態で頂ける。勿論、食べる物がないため一週間もすれば衰弱してくるが、そのときまでには大方消化しきっている。昨日は四十代そこそこのおじさんに、一昨日は若い男女二人に。残る鰻は二匹だった。
いつもは何かしら呟くこいつも、あの日からは必要以上に話すことはなかった。一体何を考えているのかはまったくの未知数だった。
「ミスティア……健一だ」
低く、暗い声が心臓を驚かせた。心を落ち着かせて耳を澄ませると、確かにいつもの健一の足音が聞こえてきた。バケツの蓋を開け、水面を元気よく跳ねている鰻の首を掴み、まな板に押し付けて引き裂いた。ビクビクと体は跳ねているが、その力は徐々に失われていった。
のれんが捲れ、親しみなれた健一の顔が現れた。
――いらっしゃい。声が出なかった。
健一は何も言うこともなく、表情一つ変えずにポケットに手を突っ込んだ。じゃらりと鳴るポケットから、数枚の小銭を取り出した。
「これ、ツケの分。悪かったよ」
健一は抑揚一つなく、どこか暗い表情でそう言った。また、何か悩み事でもあるのだろうか。
「う、ううん。そんなことないよ、私こそ、驚かせちゃってごめんね」
そんな投げやりな言葉でも、不思議と心が高鳴った。何かに踊らされているように、心臓は動き回るのを止めない。あまりに跳ねすぎている所為か、胸が痛かった。だが、不快ではなかった。
健一は椅子に腰掛け、上着を脱いだ。次に忘れたときは健一が去る前に知らせようと、心の中で誓っていた。
「ねぇ、健一。夏美から聞いた?」
「話って……何の?」
「なんだかさ、いやらしい目で見られるのが嫌なんだって。それで、健一にどうにかしてもらったら、って言ったのよ」
健一は興味なさそうに首を横に振った。蒸し暑さで生まれた汗が、背中に湧き出した。あるいは、それは冷や汗なのかもしれない。次の言葉を、必死に捜し求めた。
「そんな態度はないでしょ。妹が困っているんだから、どうにかしてやるのが兄ってもんでしょ。……それとも、恋人のことでいそがし――」
「なぁ」
冷静で冷ややかな声だった。躍っていた心臓が、瞬間冷凍された。
「何かあったのか?」
「な、何かって……どうしてそう思うの?」
「……よく喋るから」
健一の言葉が体を貫いた。確かに、今の私は心臓の波打ちだけでなく、焦燥感に駆られていた。
何かあった――提灯の排除、不可解な言葉を残した夏美、異様な蒸し暑さ。要因は数ある。
健一のあの時の動揺具合、今の冷ややかな態度、そして恋人の存在――私を焦らせるには、不安にさせるには十二分な内容だった。
言葉が見つからず、乾いた唇を舐めた。健一から目を離し、手元を見た。爪先に当たっている尻尾が醜く千切れていた。
「なぁ、ミスティアさん。もし……もしもの話だけどさ」
「俺が、ミスティアさんのこと好きだって言ったら……なんて答えてくれる?」
「!!」
心臓がラケットで思い切り叩かれたように跳ね上がった。予期せぬ言葉に、目を丸くして汗ばんでいる自分が目に見える。
もしかすると、これは愛の告白? いや、でも健一はもしもの話って――けど……けどっ!
断るという選択肢は存在しなかった。
「え、えっと……その、うん。私も好きだよ――って、言うと思う……多分……」
「――それじゃあさ、もしも俺がミスティアさんのことを……嫌いって言っても、答えは変わらない?」
悪戯な質問だった。そんなこと当たり前だ。健一に合いたい――その難解な気持ちも、この瞬間で一気に解読することが出来た。
「……うん。多分……変わらないと思う」
「――そっか」
あっさりとした、淡白な声だった。まるで、今の発言が全て冗談だったかのような。まるで、今の発言が私の心を探る為だったかのような。けど、それでも構わなかった。むしろ、自分の気持ちに正直になれた分、解放的な気分になれた。心に沸く靄が、一斉に晴れ間を見せた。
「――ごめん、ミスティアさん」
突如、しんみりとした表情でそう漏らし、両手をテーブルについて頭を垂れた。――自分には恋人がいるから、ミスティアさんの気持ちは受け入れられない。そういったところだろうか。勿論、準備は出来ていた。
「……俺、やっぱりミスティアさんとは……妖怪とはこれ以上付き合えない」
「どういうこと?」
「――ミスティアさんとの付き合いはこれで最後にする」
再び、体を貫かれた。予期せぬ発言が、健一の口から砲弾となって私に浴びせられる。気持ちの悪いほどに、心臓が蠢いた。
「ま、待ってよ! そんな……ど、どうして今更になってそんなこと言うのさっ!」
「……夏美の友達が死んだの、知ってるか?」
「そ、そんなの知らないよ! 質問にこたえ――」
「殺されたんだよ、妖怪に」
急に、心が冷めた。夏見の友達が殺された……いつ? しかも、妹の友人が殺されたからなんだというのだ? 私との付き合いを絶つことと何の関連性がある? そして、それなのにどうして夏美が友人を殺した妖怪の類である私の元へ来たのだ? 疑念は尽きなかった。
酒の盛られた杯をひっくり返したように、健一の口から声が降り注いだ。
「十年くらい前、賢者様の助太刀が遅れて隣の里が襲われたんだ。その時殺された人の中に、運悪く夏美の知り合いがいたんだよ。……夏美は酷く心配していた。どうしてわざわざ妖怪の屋台へ赴くのか、いずれ友人と同じ末路をたどるんじゃないか、ってな。そんな心配も他所に、俺は三年間、一人でここへ来ていた」
十年ほど前――記憶の糸を辿る。まだ、健一と夏美が手を繋ぎながら騒いでいた頃。
十年前といえば、売り上げが悪くなった年と殆ど一致していた。祭りは月単位で行われるため、正確なことは分からないが、そこに目星を付ける証拠としては充分だった。
「ミスティアさんは人なんか襲わない……そう言い聞かせて、無理矢理連れて行ったんだ。夏美は結構安心していたみたいなんだが……不安は抜けなかったらしくてな。これ以上夏見を不安にさせるわけにはいかないし――もう、ここへ訪れる予定はないんだ。……本当にごめん」
お別れの挨拶の日に、どうして好きだなんて言うの? どうして、私の想いを棒に振るようなことを言うの――
――ミスティア、落ち着け。
あいつの声が鼓膜を小突いた。だが、内容までは理解できなかった。
体が勝手に動き、テーブルを飛び越えた。健一が咄嗟にポケットに手を突っ込んだ。
――やめろ! ミスティア!
あいつの声が耳に響いた。客の前では一度も声を出さなかったあいつが、人前で叫んだ。健一はその声を不審に思うより早く、目を大きく見開いた。右腕は健一の襟元を掴み、左手は右の二の腕をがっちりと押さえ込んでいた。二の腕に突き刺さった爪が、生暖かく濡れた。椅子から落ち、健一は背中を地面に叩きつけた。衝撃に咳き込む健一の表情はどこか微笑んでいるようにも見えた。
「……健一、どうして? 私は健一のこと好きだけど……愛してくれなんて言わない……ううん、嫌いだっていい……けど――傍に居てよ……健一」
――ミスティア! いい加減にしろ!
「……もし、傍に居てくれないなら……このまま会えないなら――」
あいつの声が、虚無となった脳内をこだました。吸収されることもなく、コピーされることもなく、あいつの声は小さく萎んでいってしまった。
「――私……健一を食べるよ」
「ミス……ティ……ぐっ!」
健一の右腕を掴む爪に力が入った。健一の黒いタンクトップが血色で赤黒く染められていった。痛みに歪む健一の表情が、痛々しかった。健一は右腕を痙攣させながら、背後で弱々しく動いていた。右腕を健一の首へ宛がった。健一の目には涙が浮かんでいた。
「健一……ごめんね。――出来れば……もっと健一と一緒に居たかったよ」
――おい、ミスティアッ! 正気に戻れ!
あいつの言葉――どうでもよかった。健一を食べた後に処分すれば良いだけの話。あいつとの約束なんて、たかが物との約束なんて甚だくだらない。もしかすると、後ろで蠢く闇とはこのことだったのかもしれない。健一を捕食するという未来が、あいつには見えていたのかもしれない。前世は占い師だったのだろうか……あいつなら、巧みな話術でいんちき占い師と名高かったのだろうか。ばたばたと、奇妙な音が聞こえる。冷たい風が、蒸し暑さを解消する。蒲焼のたれの匂いが鼻をくすぐる――
あぁ、もうそんなことどうだっていい。こんな思考は無用の長物だ。今はただ、健一の苦しむ顔を見ず食べてしまいたい――こんな形であろうとも、健一と一つになりたかった。
健一の首元に、顔をうずめた。
「――いっ!」
突如、右肩に走る激痛。
「健一!」
謎の声が響いたのと同時に、曇り空が眼中に飛び込んだ。私は後ろに倒れこんだのだろうか、途中、健一の背後に立つ二人の人影が見えた。再度、右足に走る激痛。電流が流れたかのような、痺れた痛み。悶えることも出来ず、体が地面に張り付いてしまったかのようだった。
「お、おい! この怪我、大丈夫なのか!?」
「何で札を使わなかったんだ、健一!」
両方とも、成熟しきった低い男性の声だった。体が痺れて動けず、状況はつかめない。が、この二人は健一を助けるために駆けつけたのだろう。もしかすると、健一はこうなる覚悟が出来ていたのかもしれない。それにしても、この札――この痺れるような痛みは対妖怪に作られた札なのだろう。そういえば、博麗の巫女と対峙したとき、こんな札を浴びせられた気がする。力を振り絞り、首を上げると、右足に張り付く紅白の札とへたり込む健一、二メートルはありそうな大男二人が私を睨み、健一を心配していた。
「こいつの退治は賢者様に任せておけばいい。出血はそんなに酷くないみたいだが……細菌が入り込んだ可能性も――健一?」
「……悪いな。どうしても札は使う気にはなれなかった――ごめんな、ミスティアさん」
土の上を歩く音が小さく耳に吸い込まれていった。健一は右腕を抑えながら、私の傍にかがみこんだ。
「――け、健一! やめろっ、狂っちまったのか!?」
「……お前らは先に帰っててくれ」
「ふざけるな! そいつはお前を殺そうとしたんだぞ!? どうしてそんな――け、健一? なぁ、止せよ……何を血迷ってるんだ!?」
健一はゆっくりと、私の右足に張り付いた札を剥がし始めた。途中、ドクロマークの入った黒シャツを着た男が健一を抑えた。健一は怪我のためか、単純に体格の差が響いているのか、大男に羽交い絞めにされて抵抗が出来ないままでいた。
「俺は人の好みやら趣味やらに文句は付けないようにしているんだが……今回ばかりは失望したぞ、健一」
茶髪のロングヘアーの男は興奮気味に、淡い黒のスポーツ狩りの男は冷静に、さも冷酷に、健一を非難した。
当然だった。自分を食らおうとした妖怪の束縛を解くような愚か者がどこにいるのだろうか。今ここに、滝沢健一という人物が力なく抵抗しているだけだった。
人間と妖怪。触れ合い、共感し、共に過ごす――それでも、一線を超えられないものがあった。愛すること、交わること――種族の違う生き物の間に、それは禁忌だった。私はその禁忌を犯そうとしていたのかもしれない、いや、犯そうとしていた。あるいは、それは健一も同じだったのかもしれない。人を食らう妖怪を家にでも招いたらどうなるか。周囲からは軽蔑され、非難を浴びることは間違いないだろう。
妖怪と人間の間にはもともと大きな隔たりが、強大な壁があった。長い年月をかけて、その壁はゆっくりと崩されていった。何百年も昔、妖怪が人間を食らうことは当然だったように、人間が妖怪の撃退を試みる凶器を開発していたように、その壁は堅く、厚かった。大結界確立後から、徐々に妖怪と人間の隔たりが崩されていった。そして今、妖怪と人間は互いに協力するようになるまでになった。だから今、私は里で屋台を開くことが出来るし、こうして健一と一緒に居ることも出来る。
しかし、恋愛という観念だけはそれでも超えられないものだった。いくら拳で殴ろうとも、高熱を浴びせようとも、水を吹きかけようとも弾幕を張ろうとも――決して貫通することもなく、溶けることなく、錆びることなく……傷一つ付くこともなかった。
急に、頬を何かが伝った。恐らくは私の涙。止めようにも、止まらない。無尽蔵に涙が溢れ出てきた。こんなみっともない姿を、健一には見られたくなかった。そんな私の顔を見て、健一は優しく微笑んだ。瞬間、体中の痛みが吸収されたような気がした。
「――好きだよ、ミスティア」
「健一! いい加減にしろ! これ以上過ぎた真似でもしてみろっ、ただじゃすまさ――お、おい! 放せよ!」
「……目を覚ませ健一。お前には慕ってくれる妹がいるんだ、家族だって……俺たちだっている。……その関係を、こんな妖怪如きに捧げようってのか!?」
健一に飛び掛る茶髪を羽交い絞めにするスポーツ狩り。諭すような冷静さも、最後の最後で崩れ去った。
健一は引きずられるようにして、二人に抱えられた。右足の札が剥がれかけた所為か、ぎこちなく動かすことが出来るようになっていた。健一が、ゆっくりと視界から消えていく。だんだん、私から遠ざかっていく――いやだ……
いや、いやっ、いやっ!
まだ、健一とは話していないことも沢山ある。抱き締めてもらってもいない、キスだってまだだ。最後に好きと言ってくれた、私を助けようとしてくれた。それなのに――
「けん、いち……いや……待って……」
懸命になって出した、途切れ途切れの声。風に吹き飛ばされてしまいそうな、蚊の羽音のような声に、健一は弱々しく振り向いた。
「ミスティア……愛してる」
――この馬鹿! まだ言うのか!
――健一、もう忘れろ。あの妖怪も、近いうちに賢者様に退治される。
愛している――その言葉が聞けただけで満足だった。
退治される――なんだかどうでもよくなってしまった。
どうせ健一に会えないのなら、さっさと退治されてしまいたい。長い間、人間には誰一人手を出さなかったし、これと言って道理に背いたこともない。もし退治されることになったら平和な世に行くことが出来るだろうか。いや、最後に犯した罪は予想以上に大きいのかもしれない。もしかすると、転生などは与えられず、地獄で暮らす羽目になるのかもしれない。――なんだかどうでもよくなってしまった。
どうせなら、最後に健一に言っておきたかった。
「健一……私も……あ、い……してる」
聞こえたかどうかは分からない。私自身、上手く聞き取れなかった。だが、健一は最後に、優しい笑みを見せてくれた。
Ж
誰の足音も息遣いも聞こえなくなった。ただ、吹き荒れる風が耳を擦るだけだった。札の所為で全く動けない。上体を起こそうにも、右肩に張ってある札が強力すぎて動けない。
カランカランと、屋台の方で音が鳴り響いた――あいつだった。
「……馬鹿なことをしたな、ミスティア」
もう、何も聞こえなかった。聞く気にもならなかった。
やはり、あいつが言っていた嫌な予感、蠢く闇とはこのことだったのか。
もっと早く言え、このおんぼろ提灯――
――考えることも、どうでもよくなってきてしまった。
再び、涙が零れだした。冷え切った、冷たい涙。目の横を伝い、乾いた地面に染み込み始めた。
空を埋め尽くす灰色の雲が、小さな割れ目を作った。
鮮やかで、禍々しくも妖艶な満月。
眩いほど強い光を放つ満月が、私を除いた暗がりを照らしていた。
了
時が経てばその溝もなくなってくるんでしょうかね・・・。
ミスティアとオリキャラの悲恋、良かったです。
まあ、最後のほうとか痛いけどそれが良かったのかなぁ・・・と思いました。
けれどもし二人が繋がってたらどうなったんでしょうね?
仲睦まじく屋台でも切り盛りしたんでしょうか。(苦笑)
誤字の報告
>この提灯だけは捨ててしまってみいいかもしれない。
捨ててしまったもいいかもしれない。 ですよね。
逆にラスト近くで感情が爆発したような風に思えた。
確かにテンポは大切。けれど唐突な爆発にも思えた。健一を待っているときにもうほんのもうちょっと描写を加えるとよかったかも。
変に批評が多くなったけど印象深かったからこそ。苦しさが心地よくて不思議によかった。
さてと、残った人間を颯爽と倒しながらみすちーを助ける為にちょっくら幻想郷に行ってこよう。
あ、でもみすちーの心は既に・・・。ちきしょー! 俺は一体、どうすればいいんだ!
ただ、今までの作品と比較するとワンパターンというか、同じ題材では見劣りするというか。。。
良い作品ではあるのですが・・・
大好きだぞ、ミスティア。