前回パチュリーに「ずっと俺のターン」を受けた、昆虫少女、リグル・ナイトバグ。
彼女は今、とある場所にいた。
「う・・・うーん・・・・・・」
倒れていたリグルが目を覚ます。
目を開けて、彼女が最初に見た光景は。
「うわ・・・・・なにこれ・・・・・」
いったい何段あるのか、数えるのも面倒な程長い石段。
どこか霞がかり、どこか幻想的な光景。
その光景に見とれながらも、吸い込まれるように頂上を目指す。
何時間かかったのか、それとも何秒も経っていないのか。
時間の感覚も解らないまま、頂上についた。
そして、そこに広がる光景は、一面の桜吹雪だった。
「わあぁ・・・・・すごい・・・・・・」
思わず声に出してしまうほどの絶景。
まるで生き血を啜ったかのように色鮮やかな桜が、来訪者を歓迎するかのごとく、その枝を揺らす。
「・・・・・・・・・・・あれ?」
ふと気づく。
自分は何故こんな場所にいるのだろう。
今宵は満月で、気分が高揚したところに、見慣れない三人組みが通りがかったので、仲間を連れて、ちょっかいを出し、結果、見事に惨敗した。
とくに紫色した奴が怖かった。
蹴飛ばされたり、助けられたりと、情けなさそうだったのに、最終的には紫色の奴に物陰に引きずり込まれて・・・・・。
そこでふと気が付く。
自分はなぜ、無傷なのか。
自慢ではないが、自分だって野良妖怪の中では、まあまあ強い部類だ。
スペルカードを使えるのも、仲間内では、自分を除いて数名しかいない。
それぐらいには強い。
まあ、紫色の奴にボロボロにされたわけだが。
だが、論点はそこではない。
ボロボロ、確かにボロボロにされたのだ。
肉体的な損傷なら、確かにある程度休めば回復する。
だが服まではそうはいかない。
紫色の奴が放ったスペル。
特に、まるで小型の太陽を召喚したようなスペル。
あの一撃は、まるで自分を消し炭にするような威力だった。
そう、服など残るはずが無い。
ならばどうしt「あらー?食b・・・・お客さんかしら?」
「!?」
驚いて振り返る。
そこには、青を基調とした、どこか洋風めいていて、それでいて、和の印象を崩さない、不思議な服装をした女性が立っていた。
「こ・・・・こんにちは・・・・」
とりあえず挨拶してみる。
すると女性はにっこりと笑って。
「あらー、礼儀正しい妖怪もいるものねぇ、こんにちわ、そして初めまして、私の名前は西行寺 幽々子よ」
「は・・・はあ・・・どうも、リグル・ナイトバグです・・・」
とりあえず、名を名乗り返す。
すると、西行寺 幽々子と名乗る女性は、いっそう笑みを強くした。
「そう・・・いい名前ね?」
「そ・・・そう・・・です・・・か?」
「ええ、ナイトバグっていう事は、貴女、虫の妖怪か、その類なんでしょ?、ええ、とっても美味しそうないい名前」
「は・・・はあ・・・それはどうも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
思わず聞き返す。
まて、今、この人はなんと言った?
いい名前?・・・違う。
虫の妖怪か、その類なんでしょ?・・・違う。
美味しそう?・・・違う。
・・・・・・美味しそう!?
Q・誰が?
A・自分が
結論:ごちそうさまでした。(幽々子的に)
「最終結果に飛んだ!?」
「じゃ、早速」
いつの間にか、肩をしっかりと掴まれている。
逃亡は、絶望的だった。
「ちょっとちょっとちょっと!私は美味しくなんて無いってば!!」
「そんなの食べてみないと判らないわー」
「うわなにこの人すっげーポジティブ!?」
ここまでくれば、もう判るだろう。
昆虫少女、リグル・ナイトバグは今。
「口開けないで涎たらさないで歯を光らせないでにっこり笑わないでいやいややだやだだめだめたーすーけーてー!!!!」
冥界・白玉楼に来ていた。
「いただきます♪」
~永夜抄IF パチュリー・レミリア編~ 第3話 あなたは食べられる鳥類?
幻想郷上空
リグル・ナイトバグを倒した紅魔館組は、急ぎ元凶の元への進軍を再開していた。
「・・・・・・ん?」
「どうかした?パチェ?」
「いや・・・いまさっき潰した虫の断末魔が聞こえたような気がしたんだけど・・・多分気のせいね」
「そ・・・そう・・・」
注:気のせいではありません。
「そ、それはそうと、さっきの虫のせいで、随分時間を食ったわね、急ぐわよ、パチェ」
さっきの台詞によって、トラウマ候補の光景を思い出したレミリアは、その光景を振り切るように加速する。
それを追いながらレミリアに声をかける。
「食った、で思い出したんだけど・・・・」
「何よ」
「お腹すかない?」
「捨食の魔法はどうしたの?」
「あんなもの、気分次第でどうにでもなるわ」
どうにでもなるのかよ。
そう言いたげなレミリアの視線を受け流しながら、続ける。
「栄養的に言えばとらなくても構わない、でも人の形をしている以上、完全には捨てきれないものよ?」
「ふーん・・・」
「まあ、我慢も出来るけど・・・クッキーも、もう無いようだし」
「・・・こあー、もう少し多めに持ってきたほうが良かったみたいですねぇ・・・」
頭の羽のようなものをパタパタ動かしながら小悪魔が申し訳なさそうに言う。
「まあ、過ぎた事は仕方が無いわ、早めに異変を終わらせて、館に帰りましょう」
「・・・そうね、それがいいわ」
そうしてまた速度を上げる。
しばらく進んだところで、小悪魔が何かを発見した。
「パチュリー様、前方に何かいますよ?」
「何?、また虫か何か?」
前方に意識を傾ける。
・・・確かに何かいる。
さっきの虫のように仕掛けてくる様子は、今のところ無いようだ。
「さて、お次は何かしら」
気分が高揚しているのか、どこか弾んだ調子でパチュリーは、何かに向かって進む。
その後姿を見ながら、パチェってこんなキャラだったかしら?、と疑問に思う。
あれこれ考えた末に、これも全て、あの妙な月を作った奴のせいだ。
そう自己完結して、パチュリーの後を追いかけるレミリアだった。
「・・・鳥ね」
「鳥だわ」
「鳥ですね」
第一印象はそれだった。
背中から生える大きな翼、レミリアや小悪魔の者とは違い、フサフサとした羽毛に覆われている。
「なにー?人を鳥、鳥、って」
声に気づいて反応する鳥。
すこしムッとした表情でこちらに近づく。
だが、3歩分程度の距離を進んだところで、ピタッと止まる。
いぶかしむ三人。
やがて、鳥が、口を開く。
「・・・・・・で、何の話だっけ?」
どう見ても鳥です、本当にありがとうございました。
「やっぱり鳥頭ね」
「やっぱり鳥頭だわ」
「やっぱり鳥頭ですね」
全くの同意見。
「なによー?、人を鳥頭、鳥頭、って、私はそんなに忘れっぽくないわー」
その発言に、三人は呆れた。
あろう事かこの鳥は、忘れている事すら忘れているのだ。
このままでは話も進まない。
鳥あえず、もとい、とりあえず、その場に止まるように促して、会話を続ける。
「で?、見た感じ鳥っぽい貴女は、何でこんな所にいる?」
有体に言ってしまえば、邪魔をするのかしないのか。
言葉の裏に、そんなニュアンスを含ませて、聞いてみる。
すると、見た感じ鳥っぽい奴は、こんな言葉を吐いた。
「見た感じ蝙蝠っぽい後ろの二人はともかく、もやしっぽいあなたに言われてもねー」
「「「ぶっ!?」」」
思いっきり逆鱗を逆撫でした。
目の前の鳥を、真実、焼き鳥にしてやりたい衝動に駆られる。
いけないわ、ここは我慢よパチュリー、後ろの二人を御覧なさい、蝙蝠扱いされたのに目くじら一つたててないわ。
と、オリハルコンの意志で自分に言い聞かせる。
実際は、後ろの二人、初対面でもやし扱いされたパチュリーに対して、笑い転げるのを必死に抑えているだけなのだが。
「そういう貴女はフライドチキン?、それともフライトチキン?、まあ、どっちでも構わないけど、用が無いならそこを退いてくれないかしら?」
精一杯の皮肉をこめた言葉を返す。
しかし、そこは鳥頭、対して効いた様子も無く、さらに逆鱗を撫でてくる。
「そういう貴女は紫もやし?、用は無いけど、退く理由も無いわー」
大人しくお家に帰ればー?、と言う声は聞こえなかった。
変わりに、自分の頭の中から、何かが切れる音が聞こえた。
俯きながら、無言で鳥に近づく。
お、やる気かー、と、テンションを上げる鳥。
俯き気味のパチュリーが、口を開く。
「目の前の鳥を消極的に捌く方法・・・・」
金土符「エレメンタルハーベスター」
回転鋸のように鋭い歯を持ち、回転する歯車。
ギャリギャリという、耳障りな音を立てる凶暴なそれは、どう見ても消極的とは思えない。
「え・・・ちょ、ちょっと、何、するつもり?」
流石に不穏な空気を感じ取ったのか、声に焦りが含まれる。
「何って、鶏肉は捌かなきゃ食べられないでしょ?」
捌く。
Q・誰を?
A・自分を
結論:ウマー
「ちょっとまっ・・・でえぇぇぇ!?」
問答無用で射出される歯車。
後ろに退がらなければ、確実に切られてた。
状況は最悪。
そう判断し、即座に逃亡を図る。
逃げる。必死になって逃げる。
「じゃーねー!!バイバーイ!!」
何とか振り切ったところで、少し速度を落とす。
途中で羽に掠ったときは心臓が止まるかと思ったが。
散らばった羽を吸い込んで、咳き込んだ隙に、逃げることに成功した。
後はその辺に隠れて、あの紫もやしが通り過ぎるのを待つ。
それで今夜は寝床に帰れる。
それでハッピーエンド。
確かに、普段のパチュリー相手ならば、それで良かった。
だが、今夜のパチュリーは、心のハードルが、随分低いところに置かれていた。
そう、今夜のパチュリーはジェノサイド・パチュリーだった。
「・・・あそこか、・・・」
探知魔法を使い、パチュリーは、既に、相手の位置を掴んでいた。
ある程度、距離をとったようだが、まだまだ甘い。
そこは、魔女の射程内だった。
日符「ロイヤルフレア」
宣言し、生まれる小型の太陽、少々指向性を持たせれば、この距離でも十分届く。
そして、いざ、炸裂させようとした、その時。
「ちょ、ちょっと!!パチェ!!何やってんのよ!?」
その声で、ハッと我に帰る。
そうだ、この場所にはレミィもいる。
そんな場所でロイヤルフレアを炸裂させたら。
考えるだけでぞっとする。
「こんな所で炸裂させたら、私達だって危ないでしょうが!!」
「そんな事を言ってもね、レミィ、もう発動させちゃったわ・・・・・・あ」
言って、思いついた。
「今度は何よ!?」
「いやね?、何で今まで気づかなかったのかしら・・・」
「・・・はあ?」
ようは、セントエルモピラーと同じだ。
高熱体の規模に違いはあっても、ある程度動かせる。
慣性の法則も通用する。
「・・・簡単な事じゃない・・・」
嫌な予感に駆られ、パチュリーに話し掛ける。
「な、何、するつもり・・・?」
「まあ、簡単に言えば」
よいしょ、と太陽を構え、狙いを定める。
そして。
「頭上で炸裂できないなら、直接ぶつければいいじゃない」
「お前はどこの中世貴族だあぁぁぁ!!」
えいや、と太陽投げつけた。
着弾。
閃光。
大爆発。
途中、鳥の鳴き声が聞こえた気がする。
きっと気のせいだ。
「さ、次に行くわよ・・・レミィ」
くるりと振り返るパチュリーは、とってもいい笑顔だったという。
次回予告
テンポ良く昆虫少女と夜雀を撃破した紅魔組。
ようやく人間の里に差し掛かる、が、そこに立ち塞がるのは半獣、上白沢 慧音。
パチュリーが迎え撃つが、夜雀との戦いのダメージは、思ったよりも遥かに深かった。
パチュリー「ご、ゴフォ!?」
レミリア「しっかりして、パチェ!!」
パチュリー「レ、レミィ・・・私・・・貴女の親友で・・・本当に・・・よかっ・・・た・・・」
レミリア「パチェ!?、パチェー!!」
倒れるパチュリー、慟哭するレミリア。
それを見て、上白沢 慧音は何を思う!?
次回、~永夜抄IF パチュリー・レミリア編~ 第4話 幻想郷の中心でパチェと叫ぶ! お楽しみに!!
「お前達の歴史、ここで無かったことにしてやろう!!」
今日のNG
「ちょ、ちょっと!!パチェ!!何やってんのよ!?」
その声で、ハッと我に帰る。
そうだ、この場所にはレミィもいる。
そんな場所でロイヤルフレアを炸裂させたら。
考えるだけでぞっとする。
「こんな所で炸裂させたら、私達だって危ないでしょうが!!」
「そんな事を言ってもね、レミィ、もう発動させちゃったわ・・・・・・あ」
言って、思いついた。
「今度は何よ!?」
「いやね?、何で今まで気づかなかったのかしら・・・」
「・・・はあ?」
ようは、セントエルモピラーと同じだ。
高熱体の規模に違いはあっても、ある程度動かせる。
慣性の法則も通用する。
「・・・簡単な事じゃない・・・」
嫌な予感に駆られ、パチュリーに話し掛ける。
「な、何、するつもり・・・?」
「まあ、簡単に言えば」
よいしょ、と太陽を構え、狙いを定める。
そして。
大・爆・発
・・・・・・・・・・
「やっぱり無理だったみたいね」
反省点:手榴弾は、ピンを抜いたらさっさと投げましょう。
大きい爆弾は、射出してから爆発させましょう。
彼女は今、とある場所にいた。
「う・・・うーん・・・・・・」
倒れていたリグルが目を覚ます。
目を開けて、彼女が最初に見た光景は。
「うわ・・・・・なにこれ・・・・・」
いったい何段あるのか、数えるのも面倒な程長い石段。
どこか霞がかり、どこか幻想的な光景。
その光景に見とれながらも、吸い込まれるように頂上を目指す。
何時間かかったのか、それとも何秒も経っていないのか。
時間の感覚も解らないまま、頂上についた。
そして、そこに広がる光景は、一面の桜吹雪だった。
「わあぁ・・・・・すごい・・・・・・」
思わず声に出してしまうほどの絶景。
まるで生き血を啜ったかのように色鮮やかな桜が、来訪者を歓迎するかのごとく、その枝を揺らす。
「・・・・・・・・・・・あれ?」
ふと気づく。
自分は何故こんな場所にいるのだろう。
今宵は満月で、気分が高揚したところに、見慣れない三人組みが通りがかったので、仲間を連れて、ちょっかいを出し、結果、見事に惨敗した。
とくに紫色した奴が怖かった。
蹴飛ばされたり、助けられたりと、情けなさそうだったのに、最終的には紫色の奴に物陰に引きずり込まれて・・・・・。
そこでふと気が付く。
自分はなぜ、無傷なのか。
自慢ではないが、自分だって野良妖怪の中では、まあまあ強い部類だ。
スペルカードを使えるのも、仲間内では、自分を除いて数名しかいない。
それぐらいには強い。
まあ、紫色の奴にボロボロにされたわけだが。
だが、論点はそこではない。
ボロボロ、確かにボロボロにされたのだ。
肉体的な損傷なら、確かにある程度休めば回復する。
だが服まではそうはいかない。
紫色の奴が放ったスペル。
特に、まるで小型の太陽を召喚したようなスペル。
あの一撃は、まるで自分を消し炭にするような威力だった。
そう、服など残るはずが無い。
ならばどうしt「あらー?食b・・・・お客さんかしら?」
「!?」
驚いて振り返る。
そこには、青を基調とした、どこか洋風めいていて、それでいて、和の印象を崩さない、不思議な服装をした女性が立っていた。
「こ・・・・こんにちは・・・・」
とりあえず挨拶してみる。
すると女性はにっこりと笑って。
「あらー、礼儀正しい妖怪もいるものねぇ、こんにちわ、そして初めまして、私の名前は西行寺 幽々子よ」
「は・・・はあ・・・どうも、リグル・ナイトバグです・・・」
とりあえず、名を名乗り返す。
すると、西行寺 幽々子と名乗る女性は、いっそう笑みを強くした。
「そう・・・いい名前ね?」
「そ・・・そう・・・です・・・か?」
「ええ、ナイトバグっていう事は、貴女、虫の妖怪か、その類なんでしょ?、ええ、とっても美味しそうないい名前」
「は・・・はあ・・・それはどうも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
思わず聞き返す。
まて、今、この人はなんと言った?
いい名前?・・・違う。
虫の妖怪か、その類なんでしょ?・・・違う。
美味しそう?・・・違う。
・・・・・・美味しそう!?
Q・誰が?
A・自分が
結論:ごちそうさまでした。(幽々子的に)
「最終結果に飛んだ!?」
「じゃ、早速」
いつの間にか、肩をしっかりと掴まれている。
逃亡は、絶望的だった。
「ちょっとちょっとちょっと!私は美味しくなんて無いってば!!」
「そんなの食べてみないと判らないわー」
「うわなにこの人すっげーポジティブ!?」
ここまでくれば、もう判るだろう。
昆虫少女、リグル・ナイトバグは今。
「口開けないで涎たらさないで歯を光らせないでにっこり笑わないでいやいややだやだだめだめたーすーけーてー!!!!」
冥界・白玉楼に来ていた。
「いただきます♪」
~永夜抄IF パチュリー・レミリア編~ 第3話 あなたは食べられる鳥類?
幻想郷上空
リグル・ナイトバグを倒した紅魔館組は、急ぎ元凶の元への進軍を再開していた。
「・・・・・・ん?」
「どうかした?パチェ?」
「いや・・・いまさっき潰した虫の断末魔が聞こえたような気がしたんだけど・・・多分気のせいね」
「そ・・・そう・・・」
注:気のせいではありません。
「そ、それはそうと、さっきの虫のせいで、随分時間を食ったわね、急ぐわよ、パチェ」
さっきの台詞によって、トラウマ候補の光景を思い出したレミリアは、その光景を振り切るように加速する。
それを追いながらレミリアに声をかける。
「食った、で思い出したんだけど・・・・」
「何よ」
「お腹すかない?」
「捨食の魔法はどうしたの?」
「あんなもの、気分次第でどうにでもなるわ」
どうにでもなるのかよ。
そう言いたげなレミリアの視線を受け流しながら、続ける。
「栄養的に言えばとらなくても構わない、でも人の形をしている以上、完全には捨てきれないものよ?」
「ふーん・・・」
「まあ、我慢も出来るけど・・・クッキーも、もう無いようだし」
「・・・こあー、もう少し多めに持ってきたほうが良かったみたいですねぇ・・・」
頭の羽のようなものをパタパタ動かしながら小悪魔が申し訳なさそうに言う。
「まあ、過ぎた事は仕方が無いわ、早めに異変を終わらせて、館に帰りましょう」
「・・・そうね、それがいいわ」
そうしてまた速度を上げる。
しばらく進んだところで、小悪魔が何かを発見した。
「パチュリー様、前方に何かいますよ?」
「何?、また虫か何か?」
前方に意識を傾ける。
・・・確かに何かいる。
さっきの虫のように仕掛けてくる様子は、今のところ無いようだ。
「さて、お次は何かしら」
気分が高揚しているのか、どこか弾んだ調子でパチュリーは、何かに向かって進む。
その後姿を見ながら、パチェってこんなキャラだったかしら?、と疑問に思う。
あれこれ考えた末に、これも全て、あの妙な月を作った奴のせいだ。
そう自己完結して、パチュリーの後を追いかけるレミリアだった。
「・・・鳥ね」
「鳥だわ」
「鳥ですね」
第一印象はそれだった。
背中から生える大きな翼、レミリアや小悪魔の者とは違い、フサフサとした羽毛に覆われている。
「なにー?人を鳥、鳥、って」
声に気づいて反応する鳥。
すこしムッとした表情でこちらに近づく。
だが、3歩分程度の距離を進んだところで、ピタッと止まる。
いぶかしむ三人。
やがて、鳥が、口を開く。
「・・・・・・で、何の話だっけ?」
どう見ても鳥です、本当にありがとうございました。
「やっぱり鳥頭ね」
「やっぱり鳥頭だわ」
「やっぱり鳥頭ですね」
全くの同意見。
「なによー?、人を鳥頭、鳥頭、って、私はそんなに忘れっぽくないわー」
その発言に、三人は呆れた。
あろう事かこの鳥は、忘れている事すら忘れているのだ。
このままでは話も進まない。
鳥あえず、もとい、とりあえず、その場に止まるように促して、会話を続ける。
「で?、見た感じ鳥っぽい貴女は、何でこんな所にいる?」
有体に言ってしまえば、邪魔をするのかしないのか。
言葉の裏に、そんなニュアンスを含ませて、聞いてみる。
すると、見た感じ鳥っぽい奴は、こんな言葉を吐いた。
「見た感じ蝙蝠っぽい後ろの二人はともかく、もやしっぽいあなたに言われてもねー」
「「「ぶっ!?」」」
思いっきり逆鱗を逆撫でした。
目の前の鳥を、真実、焼き鳥にしてやりたい衝動に駆られる。
いけないわ、ここは我慢よパチュリー、後ろの二人を御覧なさい、蝙蝠扱いされたのに目くじら一つたててないわ。
と、オリハルコンの意志で自分に言い聞かせる。
実際は、後ろの二人、初対面でもやし扱いされたパチュリーに対して、笑い転げるのを必死に抑えているだけなのだが。
「そういう貴女はフライドチキン?、それともフライトチキン?、まあ、どっちでも構わないけど、用が無いならそこを退いてくれないかしら?」
精一杯の皮肉をこめた言葉を返す。
しかし、そこは鳥頭、対して効いた様子も無く、さらに逆鱗を撫でてくる。
「そういう貴女は紫もやし?、用は無いけど、退く理由も無いわー」
大人しくお家に帰ればー?、と言う声は聞こえなかった。
変わりに、自分の頭の中から、何かが切れる音が聞こえた。
俯きながら、無言で鳥に近づく。
お、やる気かー、と、テンションを上げる鳥。
俯き気味のパチュリーが、口を開く。
「目の前の鳥を消極的に捌く方法・・・・」
金土符「エレメンタルハーベスター」
回転鋸のように鋭い歯を持ち、回転する歯車。
ギャリギャリという、耳障りな音を立てる凶暴なそれは、どう見ても消極的とは思えない。
「え・・・ちょ、ちょっと、何、するつもり?」
流石に不穏な空気を感じ取ったのか、声に焦りが含まれる。
「何って、鶏肉は捌かなきゃ食べられないでしょ?」
捌く。
Q・誰を?
A・自分を
結論:ウマー
「ちょっとまっ・・・でえぇぇぇ!?」
問答無用で射出される歯車。
後ろに退がらなければ、確実に切られてた。
状況は最悪。
そう判断し、即座に逃亡を図る。
逃げる。必死になって逃げる。
「じゃーねー!!バイバーイ!!」
何とか振り切ったところで、少し速度を落とす。
途中で羽に掠ったときは心臓が止まるかと思ったが。
散らばった羽を吸い込んで、咳き込んだ隙に、逃げることに成功した。
後はその辺に隠れて、あの紫もやしが通り過ぎるのを待つ。
それで今夜は寝床に帰れる。
それでハッピーエンド。
確かに、普段のパチュリー相手ならば、それで良かった。
だが、今夜のパチュリーは、心のハードルが、随分低いところに置かれていた。
そう、今夜のパチュリーはジェノサイド・パチュリーだった。
「・・・あそこか、・・・」
探知魔法を使い、パチュリーは、既に、相手の位置を掴んでいた。
ある程度、距離をとったようだが、まだまだ甘い。
そこは、魔女の射程内だった。
日符「ロイヤルフレア」
宣言し、生まれる小型の太陽、少々指向性を持たせれば、この距離でも十分届く。
そして、いざ、炸裂させようとした、その時。
「ちょ、ちょっと!!パチェ!!何やってんのよ!?」
その声で、ハッと我に帰る。
そうだ、この場所にはレミィもいる。
そんな場所でロイヤルフレアを炸裂させたら。
考えるだけでぞっとする。
「こんな所で炸裂させたら、私達だって危ないでしょうが!!」
「そんな事を言ってもね、レミィ、もう発動させちゃったわ・・・・・・あ」
言って、思いついた。
「今度は何よ!?」
「いやね?、何で今まで気づかなかったのかしら・・・」
「・・・はあ?」
ようは、セントエルモピラーと同じだ。
高熱体の規模に違いはあっても、ある程度動かせる。
慣性の法則も通用する。
「・・・簡単な事じゃない・・・」
嫌な予感に駆られ、パチュリーに話し掛ける。
「な、何、するつもり・・・?」
「まあ、簡単に言えば」
よいしょ、と太陽を構え、狙いを定める。
そして。
「頭上で炸裂できないなら、直接ぶつければいいじゃない」
「お前はどこの中世貴族だあぁぁぁ!!」
えいや、と太陽投げつけた。
着弾。
閃光。
大爆発。
途中、鳥の鳴き声が聞こえた気がする。
きっと気のせいだ。
「さ、次に行くわよ・・・レミィ」
くるりと振り返るパチュリーは、とってもいい笑顔だったという。
次回予告
テンポ良く昆虫少女と夜雀を撃破した紅魔組。
ようやく人間の里に差し掛かる、が、そこに立ち塞がるのは半獣、上白沢 慧音。
パチュリーが迎え撃つが、夜雀との戦いのダメージは、思ったよりも遥かに深かった。
パチュリー「ご、ゴフォ!?」
レミリア「しっかりして、パチェ!!」
パチュリー「レ、レミィ・・・私・・・貴女の親友で・・・本当に・・・よかっ・・・た・・・」
レミリア「パチェ!?、パチェー!!」
倒れるパチュリー、慟哭するレミリア。
それを見て、上白沢 慧音は何を思う!?
次回、~永夜抄IF パチュリー・レミリア編~ 第4話 幻想郷の中心でパチェと叫ぶ! お楽しみに!!
「お前達の歴史、ここで無かったことにしてやろう!!」
今日のNG
「ちょ、ちょっと!!パチェ!!何やってんのよ!?」
その声で、ハッと我に帰る。
そうだ、この場所にはレミィもいる。
そんな場所でロイヤルフレアを炸裂させたら。
考えるだけでぞっとする。
「こんな所で炸裂させたら、私達だって危ないでしょうが!!」
「そんな事を言ってもね、レミィ、もう発動させちゃったわ・・・・・・あ」
言って、思いついた。
「今度は何よ!?」
「いやね?、何で今まで気づかなかったのかしら・・・」
「・・・はあ?」
ようは、セントエルモピラーと同じだ。
高熱体の規模に違いはあっても、ある程度動かせる。
慣性の法則も通用する。
「・・・簡単な事じゃない・・・」
嫌な予感に駆られ、パチュリーに話し掛ける。
「な、何、するつもり・・・?」
「まあ、簡単に言えば」
よいしょ、と太陽を構え、狙いを定める。
そして。
大・爆・発
・・・・・・・・・・
「やっぱり無理だったみたいね」
反省点:手榴弾は、ピンを抜いたらさっさと投げましょう。
大きい爆弾は、射出してから爆発させましょう。