※ まず初めに、シリアスではありません。ギャグです。
一部キャラにおいて、都合のいい性格、及び趣味・嗜好の改編等が施されております。
お読みになる際はご注意ください。
今日は七夕。一年に一度織姫と彦星が出会える日、らしい。
そんなことは私たち幻想郷の住人にはあまり関係なく、ただ騒ぐための口実にしかならない。
そんなわけで、この博麗神社で宴会が催される運びとなったのである。
毎回思うのだが、どうして私の神社で宴会するのだろうか。
「おーす。霊夢飲んでるかー?」
宴会の主催者というか元凶の一人、魔理沙だ。あとは、紫とかレミリアとかその辺が黒幕だろう。
「飲んでるわよ。飲まないとやってられないわ」
「なんだよ霊夢、せっかくの宴会だってのにそんなにむっつりしてたんじゃ損するぜ?」
「そりゃ私だって楽しみたいわよ。でも、どうして宴会ってことになるとこの神社なわけ?
さすがに辟易するわよ。というかみんないつも一緒の場所で飽きないの?」
「なに言ってんだよ。この神社が一番わかりやすいじゃんか。
それに、みんなが騒げる場所だったら飽きるなんてことあるはずないだろ」
「騒げる場所って… ここ神社なんだけど」
「いいじゃないか。細かいこと気にするなって!」
そう言って豪快に笑う魔理沙に、何を言っても無駄だということがわかった。
まぁ、いいか。確かにせっかくの宴会だし、楽しまないと損だ。
「はぁ、もういいわ。あんたに言っても聞くはずないものね。
だったら私も素直に楽しむことにするわ」
「お? ようやく悟ったか。というわけで一杯飲めよ」
「どういうわけよ… 飲むけど…」
「おお~! 相変わらずいい飲みっぷりだな。
あまりの男らしさに思わず惚れちまうところだぜ!」
「乙女に向かってなんてこと言うのよ」
「もちろん冗談だぜ」
まったくこいつは… この軽口だけはきっと永遠に治らないのでしょうね。
もし治ったとしたら、それはきっと魔理沙じゃない。なにか別の生命体だ。
ちょっと想像してみる…
魔理沙が… 軽口をたたかず… 真面目で… 素直…
うん、異変認定ね。
さようなら魔理沙。あなたは幻想郷の平和のために滅びないといけないの。あなたが悪いのよ…?
「ちょっと待て霊夢! どうして攻撃態勢なんだよ!?」
「…あら?」
「そんなに男らしいって言ったのがムカついたのか!?
だったら謝るから許せよ!? な!?
ホントすいませんでした!!」
いけない、脳内異変認定魔理沙を退治しようとしていたら、いつの間にか現実の魔理沙を攻撃しようとしていたみたい。
魔理沙は魔理沙で本気で怯えちゃってるし、どうしたらいいのかしら?
仕方ない、勘違いはそのまま使ってやるとしましょう。
「…以後気をつけなさい」
「はい! マジですいませんでした!!」
「…もういいわ。水に流してあげるから、普通に戻りなさい」
「わかりましたぜ。霊夢さんの寛大なお心に感謝しますぜ!」
「…戻ってないし、混ざってる」
「ん? 何か変だったか?」
いつもの魔理沙なら『わかったぜ。霊夢の寛大さに感謝だぜ!』だったのだろうが、中途半端に戻ったから魔理沙が小悪党っぽくなった。これはこれで面白いのかも知れない。
でももう戻ったみたいだし、少し残念だ。なので、これからはたまに魔理沙を威圧してみるとしよう。また見れるかもしれない。
「いいえ、何でもないわ。
それにしても、立派な竹ねぇ… それもこんなに…」
「お? やっぱりそう思うか。
なんたってこの私が厳選した竹だからな。七夕と言えばこれが無いと雰囲気出ないぜ」
「それは賛成だけど、どうせ永遠亭の連中に手伝わせたんでしょ?」
「やっぱりわかるか?」
「当然でしょ」
どうせ魔理沙のことだ。選んだのは魔理沙だろうが、竹林を歩き回ったのは永遠亭の連中のはずだ。ついでに言うと、運んだのも。
「でも、私だって鬼じゃないんだぜ? ちゃんと報酬はやったさ」
「報酬って、どんな?」
「一番高い所に短冊を付ける権利だぜ」
「…それって、何かいいことあるの?」
「さぁ」
「さぁ、ってあんたねぇ…」
「まぁいいじゃないか、それで輝夜が納得したんだから」
「それで納得したの?」
「あぁ。なんでも、
『一番高い所に短冊…? はっ!
天辺 = 下々を見下ろす = 私って実は凄い! = これってカリスマ?
魔理沙! その話乗ったわ!』
だってさ」
「…かける言葉が見つからないわね」
「本人が幸せならそれでいいんじゃないか?
ところで、霊夢は短冊になに書いたんだ?」
「それが、まだ書いてないのよね。いまいち何お願いしたらいいかわからなくて」
「なんだよ、つまんねーな」
「だったらあなたはなんて書いたのよ?」
「実は私もまだ書いてないぜ」
「それなのにそんな偉そうだったの…」
「別にいいじゃないか。
そんなことより、あいつら短冊にどんな願い事書いたんだろうな?」
「それは確かに気になるわね」
「だろ? だからさ、ちょっとみんなの短冊を拝見することにしようぜ」
「ちょっと、魔理沙。それはみんなに失礼じゃないかしら?」
「いいじゃないか。宴会の余興の一つだぜ。
それに、霊夢だって気になるんだろ?」
「それはまぁ…」
「だったら決まりだ! 早速見に行こうぜ!」
「あっ! ちょっと魔理沙!」
相変わらずの素早さで竹まで飛ぶ魔理沙を慌てて追いかける。
…確かに気になるが、こんなことしてはいけない。だから私は魔理沙を止めに行くんだ。そう、あくまでそれが目的だ。そのついでに目にしてしまうということはあるかもしれないけどね…
「お? ようやく追い付いたか。
見ろよ霊夢、この辺が永遠亭のやつらの短冊だぜ」
「魔理沙、やっぱり止めた方がいいわよ」
「短冊に釘づけのやつが言う台詞じゃないな。
それじゃあ早速、っとこれは輝夜のだな? どれどれ…
『久しぶりにえーりんのふかふかおっぱい枕で寝たい 輝夜 』」
「「………」」
久しぶりに、ということはかつてやったことがあるのだろう。何をしているのだあいつらは…
「…見なかったことにしようぜ」
「そうね… あれ? 魔理沙、それ二枚重なってるわよ」
「ん? あ、ホントだ。誰の短冊だろ…
『 どんと来い!!!! 永琳 』」
「…どうやら今夜あたりその願いは叶うみたいね」
「お幸せに… としか言えないな」
「それは置いといて、その近くにあるのはあの因幡たちの短冊かしら?」
「そうだろうな。まともであることを祈るぜ…
『お願いします… どうか師匠にもう少し理性を… 鈴仙 』」
「…まとも過ぎて涙が出てくるわ」
「苦労してんだな… あいつにはもっと優しくするとしようぜ」
「そうね… 次は誰かしら?」
「お? 霊夢も乗ってきたな? 次はあの詐欺兎だぜ」
「あぁ、それだったら読まなくても想像つくわね」
「そうだな。どうせ『世界平和』とか書くに決まってるぜ。まぁ一応読むか…
『 鈴仙が欲しい てゐ 』」
「どう突っ込んだらいいのかしら? それともいつもみたいに嘘なのかしら?」
「そんなのわかんねぇよ… お幸せにアゲイン、とでも言っとけばいいのか?
次行こうぜ、次! え~っとこれは… お? 妹紅のだぜ」
「あの娘は何をお願いするのかしらね?」
「えっとだな…
『たまにはけーねのふかふかおっぱい枕で寝たい 妹紅 』」
「一緒じゃない!? 蓬莱人ってのはみんなこうなの!?」
「どうなんだろう… で、やっぱり二枚重なってるよ… オチが見えたな…
『 むしろ毎日でおk!!!! 慧音 』
…ほらな?」
「ちょっと変えたみたいだけど、所詮二番煎じね。突っ込む気も起きないわ」
「そうだな。
お? 次は紅魔館組の短冊がぶら下がってるぜ」
「あれ? その割には数が少なくないかしら?」
「そういやそうだな。
まぁ、多分どこかに隠れてるんだろ。後で探そうぜ」
「そうね。ところで、その短冊は誰のかしら?」
「これは…紅 美鈴? 誰だこれ?」
「誰って、門番の娘じゃないの?」
「あぁ、そんな名前だったのか? 咲夜と仲がいいって印象しかなかったぜ」
「あんた、図書館襲う度に撃破しといてそれは酷いんじゃない?」
「まぁ覚えるように努力はするぜ。そんなあいつは短冊には何を書くのかなっと…
『咲夜さんの胸がおっきくなりますように 美鈴 』」
「こんな日に自分じゃなくて他人のために願い事するなんて… いい娘なのね」
「そうだな… 見直したぜ。内容はともかくな。
それでだ。案の定これも重なってるわけだが…」
「読んだ方がいいのかしら?」
「ここまで来たらなぁ… とりあえず読んどくか…
『よし、戦争だ! 私に叛旗の由、申し開きはあるかしら? 咲夜 』
と、こうなるんだな」
「想定の範囲内ね」
「そうだなぁ… ん? これ、まだ重なってるぜ。何かべったり張り付いてて… ようやく取れたぜ。なんだろう…?
『そ…そんな! 私はただ咲夜さんのためを思』」
「…? どうして読むのやめるのよ?」
「いや… 血塗れで読めないんだ…
張り付いてたのは、血のせいだったようだぜ…」
「…R指定の短冊はさすがに初めてだわ。
ていうか、短冊で会話するんじゃないわよ…」
「こんな短冊飾る割にはあそこでいちゃついてんだもんなぁ… 意味わかんないぜ」
「あ、本当だ。何あれ? すごいピンク空間ができてるけど」
「それに見ろよ、咲夜の鼻血すっごいぜ。
もしかしてこれ、あいつの鼻血なんじゃないのか?」
「それはない、と言いきれないのが悲しい所ね…
うろたえるあの娘に興奮したとかかしらね?」
「あり得るぜ。まぁあんなのは放置するのが一番だな」
「そうね。次に行きましょう」
「そうだな。次は… あれ? あの蛙の神様の短冊だぜ。
他の紅魔館の短冊はどこにあるんだ?」
「どこか他の所にあるでしょ。とりあえずそれ読みましょう?」
「あぁ…
『 神奈子が欲しいです! 諏訪子 』」
「…なんでかしらね。この手の願い事がまともに見えてきたわ」
「安心しろ。私もだから。
なぁ… これ、かつてない分厚さなんだけど…」
「…この際全部読んじゃいましょう」
「そうだな… 一気に行くぜ…
『えっ? 諏訪子… それ本気かい?』
『…うん。私、本当に神奈子のことが…』
『そうだったのか…』
『迷惑だった…?』
『まったく、そんな泣きそうな顔するんじゃないよ…』
『だってぇ…』
『安心しな。迷惑なんかじゃないから』
『えっ?』
『だから、迷惑なんかじゃないって言ったんだよ』
『それって… どういう…?』
『言わなくたってわかるだろ?』
『…ううん! 言ってくれないとわかんないよ!』
『え、言わないとダメなの? 恥ずかしいじゃないか…』
『それでも、私は神奈子の口から聞きたいの!』
『わかったよ! 言えばいいんだろ言えば!』
『うん、聞かせて…?』
『一度しか言わないからね。よく聞くんだよ?』
『うん…』
『私も… 諏訪子が欲しいよ…』
『神奈子! 嬉しい!!』
『諏訪子!』
『二人の愛は…』
『フォーエヴァー…』
以上、短冊合計24枚に及ぶラブストーリーでした」
「七夕なめんな」
「めんどくせー奴らだなぁ。もう結婚しちゃえよぉ」
「こんなに鬱陶しい短冊も初めてだわ。もう無視しましょう。
で、次は早苗の短冊なのかしら?」
「いや、あいつのは見当たらないぜ。その代わり、あの狐のがあったぞ」
「…まともであることを祈るわ」
「私もだぜ…
『 橙かわいいよ橙!!!! 藍 』
願い事ですらなかったぜ…」
「数少ない良識人だと思ってたのに…」
「その傍には当人の短冊があるわけだが…
『藍様の引っ付き癖が度を越しているので直してください 橙 』」
「報われない愛なのね… 反抗期かしら?」
「まぁ、家庭の事情に首突っ込むもんでもないしな。
これもスルーの方向で」
「それが一番ね。次はだれの短冊なの?」
「これは… 妖夢の短冊だぜ。なに書いたんだろう…
『 幽々子様 それは鳥では ありません 妖夢 』
なんだこれ、意味わかんないぜ? それにどうして俳句調なんだ?」
「それはわからないけど、多分幽々子が何か書いて、それに突っ込んでるんでしょうね」
「ということは、私はボケを飛ばしてツッコミから読んじまったってことか。
私ともあろうものが、とんだ失敗しちまったぜ」
「でも文から察すると、大体なに書いたかわかるわね」
「そうだな。で、すぐ傍に幽々子の短冊があるけど、どうする?」
「まぁ… 一応読んどきましょうか。
これをスルーすると、妖夢のツッコミが虚しくなるし」
「確かにな。じゃあ読むぜ…
『 七夕に 骨なし雀 を食べたい 幽々子 』
…ぐにゃぐにゃだぜ?」
「…確かにそれは鳥ではないわね。というか、哺乳類として間違ってるわ。
そんな種無しスイカみたいに言われてもねぇ…」
「よく見ると、これも一応俳句っぽいぜ? リズム感ないけど」
「あぁ、だから妖夢も俳句っぽかったのね。
多分、幽々子の影響を受けたんでしょうね」
「あいつって影響受けやすい奴だよな。みょん、もそうだけど、今回だってしっかり短冊に表れてるぜ」
「それでも、貴重なツッコミ要員には違いないわ」
「短冊使ってまで突っ込まずにはいられなかったんだもんなぁ。尊敬するぜ」
「できることなら、柔軟かつ稀有なその才能を大切にしていってほしい所ね」
「まぁ、結論から言うとちょっとだけ予想から外れたな。概ね予想通りだったけど」
「そうね。結局食べ物の話だったものね。
ところで、これで主だった連中の短冊は見たのかしら?」
「そうだな。でも、気になる奴らの短冊がまだ見つかってないぜ?」
「そうなのよねぇ… ここまで見つからないと逆に不気味ね」
「確かにな… なぁ、こうなったら手分けして探そうぜ?」
「それがいいわね。何か見つけたら教えて頂戴」
「ああ、わかったぜ」
そう言って私たちは別れて、それぞれに探索を開始した。
――――――後になって思ったことだけど、二人で行動してたならまだマシだったでしょうね…
◆◆◆
「この短冊は誰のかしら…
『ルナサ姉さん、メルラン姉さん、やっておしまい! リリカ 』
…七夕って、なんなのかしらね。
そして、これはあの河童の娘の短冊ね…
『 きゅうり にとり 』
文句なしに今日一番の短冊ね。おめでとう、あなたはまさにベストオブ純粋よ。
これは… あぁ、チルノの短冊ね。パス1よ」
しばらく短冊を見て回っていると、私は妙な雰囲気を放つ一角に出くわしたの。
それを見たとき、不覚にもしばらく理解が追いつかなかったわ。
だって…
「次は、っと… ん?
『これより先、霊夢コーナー』?
なにこれ?」
こんなことが書かれていたのだから。
「どうしよう… これ以上踏み込むとただでは帰れない気がする。
…でも気になるわね。もしかして私を誘ってるの?」
ここまであからさまに私の名前を使われるとは、挑発されているようにも見えてきたわ。
「ここに踏み入る… なんだろう、なにか良くないフラグが立つ気がするわ」
種類で言うなら『狼牙○風拳!』に近いものを感じるわね。
「うん、やっぱり止めましょう。君子危うきになんとやらよ」
「あら、見ていかないの?」
ふいに後ろから声がした。
やばい、紫だ。
「いやー、私としては十分楽しめたし、もうお腹一杯だわ。
というわけで、大人しくお酒でも飲むことにするわね」
「レイム、ここまで来てそれはないんじゃないかしら?」
紫だけじゃない。
これはレミリアの声だ。
「そうですねー。ここまで来たからには私たちの願い事も見て欲しいですよね」
「そうだよ、霊夢」
文に萃香までいるわね。
なんてこったい。霊夢コーナーを見つけた時点で『天さん、ごめん…』だったなんて…
「そういうわけで、お一人様ご案内よ」
「はいはい。それでは霊夢さん、こちらへどうぞ~」
「あ、ちょっと! 誰も行くなんて言ってないでしょ!」
「これも運命よ、レイム。大人しくしなさい」
「そうだよ~。それに私たちから逃げられると思う?」
「それは難しいかな… じゃなくて、はーなーしーてー!」
「霊夢さん…」
「あ! 早苗じゃないの!」
救いの神降臨とはまさにこのこと!
何しろ数少ない良識人の一人だ。きっと私を助けてくれるに違いない!
「ちょうど良かった! とりあえず助けて!!」
「霊夢さんがいけないんですよ…?」
「…早苗さん?」
「こっちがいくらアプローチしても、いつも変わらない態度のあなたにどれだけ私が苦しんだことか…」
「あぷろーち?」
「私が密かにお賽銭入れてあげても、境内の掃除をこっそり手伝っても、あなたは変わらなかった!」
「そんなの気付かないわよ!!」
「だから、今日という日を借りて私の想いを知ってもらおうと思ったのです。
あなたに拒否権はありません」
なんていうこと…!
普段真面目な人はキレると何するかわからない、の法則がこんなところで炸裂するなんて!
「私、じゃなくて私たちの想いなんだけどね。
それじゃあ行くわよ霊夢。どうせ逃げられないわ」
「…もう好きにしたらいい」
魔理沙… 私は今から死地に赴きます。
どうか見守ってて…
祈る夜空に、いい笑顔した魔理沙の幻が映る。
魔理沙、どうしてお空のお星になってるの?
「ちなみに、別の場所には『魔理沙コーナー』が設けられているの」
あぁ、納得。
きっと向こうは向こうで私の幻を見てることだろう。
強く生きましょうね…?
「ついたよ霊夢ー、ってどうしてそんな仙人みたいな目してるの?」
「何でもないわ… また一つ悟りを開いただけだから」
「変な霊夢さんですね。でもそこがまたいいんですよね~。というわけで激写します」
「そんなの後でもできるでしょう? 今は私たちの短冊をレイムに見てもらうのが先よ」
「そうですよ、射命丸さん。あんまりもたつかせると容赦しませんよ…?」
「わかりましたよぉ… だからそんな睨まないでください」
「まったく、困った子達ねぇ…
それはさておき、霊夢。この一角に私たちの短冊が並んでいるの。
存分に見ていってちょうだい」
紫、そうは言ってもなんとなく予想はついてるの。
ついでにこの後の展開も…
「うぅ… 見たくないなぁ…
わ、わかったわよ! 見るわよ! 見ればいいんでしょ!?」
なんだってみんなしてそんな泣きそうな顔になるのよ。
これじゃ私が悪いみたいじゃないの。
「え~と…
『 霊夢さんが欲しい 早苗 』
『 霊夢さんを、いただきます 文 』
『 霊夢がいい 萃香 』
『 ザ・レイム レミリア 』
『 霊夢と(自主規制)したい 紫 』
…………………」
こんなことだろうと思ったわよ、ちくしょう…
ところでレミリア、それは願い事なの? そして紫、何を書こうとしたの?
「その他にも、本日この霊夢コーナーに来られなかった方々からの短冊を預かってるのよ。
というわけで、どうぞ霊夢」
「…ひぃ!」
それを見て思わず変な声が上がってしまったが、仕方無いというものだ。
その内容が異常の一言だったからね…
なんとその短冊には、一面私の名前だけがギッシリ書き詰められていたのだ。
これは願い事通り越して、もはや呪いなのでは?
「量が半端じゃなかったので、一枚に纏めて寄せ書き風にしました」
「逆効果だと思う」
「まあまあ、霊夢さんはそれだけ愛されてるっていうことですよ」
「こんなに痛い愛はちょっと…」
「気にしちゃダメよ、レイム?」
「そうそう。いつもみたいにどーんと受けとめちゃってよ」
「それはいいとして、これで私たちの願い事が伝わったかしら?」
「…はて、なんのことでしょう?」
我ながら白々しいが、頷けない。頷いてたまるか!
「ふぅ… こんなに直球で私たちの純粋な想いを表現したというのに、わからないなんて言うの?」
だからこそ性質が悪いということに気付いてほしい。
「そんな悪いレイムにはお仕置きしなくちゃいけないわね。ねぇ、みんな?」
「そうですね~。お仕置きついでに、私たちのお願いも叶えてもらうことにしましょう」
「…拒否したいんだけど」
「先ほど申しましたが、霊夢さんに拒否権はありませんよ?」
「そうだよー。それに、願いが叶うのを待ってなんていられないよ。
自分から積極的に叶えるようにしないとね!」
あぁ… やっぱりこんな流れになるのね。
その積極性は、お願いだから別の方向に使ってほしいです。でも、言ったところで無駄な抵抗にしかならないのね…
くそ…! 何とかこの場を切り抜ける方法があるはず!
考えるんだ、霊夢! お前はいつだってそうやって切り抜けてきただろう!
「それじゃ、早速お仕置き執行ね。行きましょう、霊夢?」
紫に捕獲されてしまった。
それに、みんな目が異様に爛々してて、理性というものが感じられない。
もう駄目だ…
ごめんなさい、魔理沙… 私は先に逝くわ…
最後に一目、あなたに会いたかった…
『私もだぜ! 霊夢!!』
夜空の幻が返事をしてくれた。
というか、あんたが手分けしようとか言わなければ二人で協力して逃げれたかもしれないのに、何て事してくれたのよ!?
『お前だって賛成したじゃないかよ!?』
そんな過去のことは忘れたわ。私は今を生きるのよ。
『そんなお前に、厳しい現実が迫ってるぜ?』
何言ってるのかしら? 現実が厳しいなんて当たり前のことじゃない。
「現実逃避はそれくらいにして、早く行きましょうか。
それとも、レイムは野外がいいの?」
…そうだった。今こそが過去最高に厳しい現実だったんだ。
言葉が無駄なら行動あるのみ! 駄目もとで逃げの一手を打つ!
あいつらは不意を突かれたようで、反応できていない。
これならいける!!
「はいは~い。幻想郷最速の私から逃れられるとでも思ったんですか?」
駄目でした。
「この期に及んで逃げようとするなんて… 霊夢さんは本当にいけない人ですね。
ここは私がしっかりと捕まえておかねばなりませんね」
「あ、ズルイよー! 私も捕まえる!」
「じゃあ、みんなで捕まえることにしましょう」
そう言って全員が私に殺到する、だけならまだ良かった。
「ちょっと萃香!首筋に息吹きかけないでよ!
あ…! 文はどうして… 私の胸弄ってんの!?
きゃっ! れ、レミリア! 耳たぶ甘噛み、しないで…!
ひゃん…! 早苗、あんたなんでそんなとこ、舐めてんのよ…
ん… どこに、顔うずめてるのよ… あん… ゆかりぃ…」
マズイ。何がマズイって、これ以上の描写があまりにも危険だ。それと、私の意識。
「ふふふ… 霊夢もいい感じにほぐれてきたし、続きは家の中でしましょう?」
「それがいいわね。屋外も悪くないけど、やっぱりこういうのは落ち着ける場所でじっくりやらないと」
紫とレミリアが何か言っているが、耳に入らない。何も考えられなくなってきた… 本格的にヤバい…
薄れる意識の中で、私はとりあえず短冊に書く願い事が決まった。
なので、最後の力を振り絞ってそれを記すことにした。なぜか都合よく、手元には筆と短冊があるし。
それでは、サラサラ~っと… 書けたわ…
あ、もう無理だ… 意識が、しろ…く…
さよう…なら………
トンデモハップンな妖怪たちに振り回される霊夢は最高だぜ。GJ!
しかし、同じ短冊ネタでも重なる短冊、会話する短冊、俳句短冊、極めつけの霊夢コーナー!
ネタは新鮮で斬新で楽しかったです。
楽しかったです
個人的には魔理沙コーナーも気になる
自分も霊夢コーナーに行けなかった一人です
にとりは良い子だな。うん。
一月近く経過して、返事も何もないと思うのですが…
>2 名前が無い程度の能力さん
霊夢はいつも振り回される側だと思います。
そして、その姿がまた萌える…
>9 名前が無い程度の能力さん
ラブです
>12 名前が無い程度の能力さん
『あたいったらさいきょーね あたい』
きっとこんな感じでしょう
>14 名前が無い程度の能力さん
霊夢と大体同じ状況に陥ってます。
これ以上はネチョ…ゲフンゲフン!!
>19 名前が無い程度の能力さん
二人は夫婦ですからw
楽しんで頂いて幸いです
>21 名前が無い程度の能力さん
気になっちゃいますか?
ですがやっぱりネチョ…ゲフンゲフン!!
>23 名前が無い程度の能力さん
七夕はデンジャーだぜ!
>25 名前が無い程度の能力さん
それでは一緒に霊夢コーナーに念を送りましょう…
霊夢「…(ビクッ) 今何か不穏な空気が…」
>26 名前が無い程度の能力さん
なんといってもベスト・オブ・純粋ですからw
風神コンビは正直ふざけてやってますw