※ この作品は作品集その47に投稿した「霖と囚われの自由人」、作品集その49「夢で逢いましょう 」の続きの話になります。
あらすじ
輝夜に火鼠の皮衣を売り、対価として永琳の薬学書受け取った霖之助。
輝夜が帰った後、薬学書を開いたのだが、月人文字で書かれていた為、霖之助にはそれを読む事ができなかった。
さらにページをめくると
「蓬莱語の辞書をお求めの場合は以下のものをお持ちのうえ永遠亭までお越しください。
・月のイルメナイト
・エイジャの赤石
・金閣寺の一枚天井
・ミステリウム
永遠亭代表 蓬莱山 輝夜」と、書かれた紙切れがはさんであった。
(ここまで「霖と囚われの自由人」)
輝夜が香霖堂を訪れた日からしばらく後のこと、毎日のように夢に輝夜が出てきて、早く逢いに来てほしいと言われる。
ついに根負けした霖之助は、迷いの竹林に出かける事にする。
以前要求された品を持っていく事はできないが、お土産として携帯できる丸い物を鞄に詰め込み、霖之助は香霖堂を後にした。
しかし、何度も霖之助が輝夜の夢を見るのは、輝夜が幽体離脱をして霖之助の夢に入り込んでいた為だった。
(ここまで夢で逢いましょう)
以下本編です。
太陽の光が、幽かに地上に降り注ぐ。
大地へと伸びる光を遮るのは笹の葉であった。
空を見上げれば、覆いかぶさるような笹。
地面を見下ろせば、枯れ落ちて絨毯のように敷き詰められた笹。
そんな鬱蒼とした竹林の一角にて、僕はスコップを片手に土と格闘をしていた。
今日は朝から、すずめのつづらや竹の花でも仕入れようかと迷いの竹林まで足を伸ばした。
しかし、昼もいくらか過ぎた頃まで彷徨っても、それらを見つけることはできなかったのだ。
せっかくここまで来たのに手ぶらで帰るのもシャクなので、そこいらに生えている筍でも掘って帰ることにした。
こんな事もあろうかとスコップを用意しておいて正解だったようだ。
そうして筍を5本ほど掘った頃だろうか、聞きなれない声が背中に投げられた。
「野山に混じりて筍をとりつつ万の事に使いけり」
筍の使い道など食べる以外にあるのだろうか。
などと思いつつ振り返ってみると、そこに人影は無く視線の先にあるのは藪だけだった。
しばらくすると、再びその藪から声が聞こえて来る。
「おじいさん、名前は何て言うの?」
「おじ……」
まぁ、こんなに白い頭をしているし、人間で考えればお爺さんといっても差しさわりの無い位に生きているのだ、間違いではないかもしれないな。
こんな事もあるのだろうと、人語を操る藪に答えを返す。
「さかきのみやつこ……と言いたい所だけど、僕の名前は森近霖之助だよ」
人の言葉をしゃべる怪しげな薮を分け入ってみると、そこは四十と三寸ばかりなる妖兎がとても可愛らしい様で座っていた。
「えーと、君は?」
「あたしはてゐ。お腹が空いて動けないの、何か食べ物をちょうだい」
そう言う兎は血色もよく、とても空腹で弱っているようには見えない。
何か胡散臭いものを感じながらも、物は試しと食べ物を差し出してみる。
「さっき取れたばかりの筍をあげよう」
……すごく嫌そうな顔をされてしまった。
無理をすれば生でも食べる事が出来ると思うのだが……
妖兎だからだろうか、筍は生で食べるような無理はしたくないのだろうか。
流石に野生の兎と同じにしては失礼か。
しょうがないので鞄を漁り、たまたま入っていた飴の詰った小瓶を取り出す。
「飴玉でいいかい?」
言うが早いか、兎は信じられないほどのスピードで僕の手から小瓶を奪い取る。
こんなに早く動けるなんて、お腹が空いて動けないなどと言っていたのは絶対に嘘だ。
まぁ、半ば嘘だと思いつつも瓶を差し出したのだ、僕もなかなか人がいいのかもしれない。
いや、そこは否定しておこう。
親切心だけで飴玉を差し出した訳ではない。
この妖兎を無視し、廻れ右をした所で、無事に香霖堂へ帰れない。
その様な、何か予感めいたものを感じ取れたから付き合っている訳なのだが……
とりあえず、モゴモゴと飴玉を舐める兎の寸劇が終わるのを待つしかないのだろう。
そう思うと、僕の口からは諦めと不安が混じった息がこぼれた。
しばらくすると、ようやく飴玉を食べ終えた兎が口を開いた。
「えーっと、助けていただきありがとうございます。お礼に永遠亭にご招待します……だったっけ?」
助けた兎に連れられて永遠亭へ?
「竹取物語をなぞっているのかと思ったけど、別の物が混じってないかい?」
「あははは、気にしない気にしない、別に玉手箱が出てきたりしないし、あなたも鶴になったりはしないでしょ」
混じっている物語は浦島太郎だろうか。
助けた亀に連れられて竜宮城に行った浦島太郎は《中略》玉手箱を開けてお爺さんになり、最後には鶴になって空へと飛んでいったという。
「確かに僕は鶴になったりはしない。だけど浦島太郎の話も太郎が鶴になったという訳じゃないんだよ。あれは鶴と吊るを掛けてあり、竜宮城から帰ってきた太郎は世界があまりにも変わりすぎていることに絶望し、一気に老け込んでしまう。そして最後には首を吊って死んでしまったという話になる。そうそう、鶴といえば有名な話に鶴の恩返しがあるね。あれは機を織っている間は開けてはいけないと言われた襖を開けてしまい、嫁だと思っていた鶴に逃げられてしまう話、約束を守らないと不幸になってしまう話だと思われがちだけど実はそうじゃないんだ。鶴が吊ると掛けてあるように機織もまた別の意味がある。この場合機織は男女の営みじゃないかと考えられる。つまり、生活を苦にした妻が体を売り金品を受け取っていた。しかし、その現場を夫に見つかってしまい、いたたまれなくなった妻は首を吊ってしまったとなるわけだ。こうなると襖を開けず、妻の秘密を知らないままでいれば幸せでいられるとも限らない。秘密を知らないままでいれば夫のほうは何も知らない馬鹿な男と笑われ、妻は周りの女達から後ろ指を指されるようになるだろう。だからといって妻が何もしなければ二人とも飢え死にだ。つまり、鶴の恩返しは甲斐性の無い男が不幸になるべくしてなったという話になるわけだね」
「おーい、何してるの? ボーっとしてたらおいてくよ」
遠くの方からてゐが僕を呼んでいた。
……うん、少女達が人の話を聞かないのはいつも事だ、気にしてはいけない。
……うん。
~☆~
てゐに連れられてしばらく進むと、急に開けた場所に出た。
目の前には大きな門。
そして、その向こうにはこんな竹林の奥にどうやって作ったのか不思議でならないほど大きな屋敷が聳え立っていた。
これまでにも何度かこの竹林には来たことがあるのだが、こんな巨大な建物は一度たりとも見たことは無い。
人を迷わすだけでなく、こんな大きな建物まで隠してしまうとは、さすがは”迷いの”竹林といったところだろう。
「おーい、姫様ただいま戻りましたよ~」
てゐが声を掛けるが早いか、待っていたかのようなタイミングで門が開かれる。
そして、開かれた門の中には、久方ぶりに会うはずなのだが不思議とそのような感じがしない少女が一人。
何度も夢で見た姿そのままのお姫様……蓬莱山輝夜がそこにいた。
「おかえりなさい。それとお久しぶりね香霖堂。今日はそこの兎がお世話になった様で感謝していますよ」
僕もこの兎も食べ物をくれてやったことなど一言も口にしていない。
だが、この口ぶりからすると、兎を助けさせ此処に連れてくるようにしたのは彼女の差し金だろうか。
そうすると僕は、まんまとおびき出された事になる。
出合って早々嫌な流れを感じた僕は、無茶な要求をされる前に先手を打つ事にした。
「今日はお招きいただいてありがとうございます。つまらないものですがこれをどうぞ」
別に彼女から招待を受けた訳ではないが、皮肉も込めて挨拶をする。
僕の言葉にお姫様は上品に笑っただけだった。
僕は鞄から小袋を取り出し輝夜に差し出す。
「これは……まぁ、綺麗な珠ね。ありがたくいただいておくわ」
そう、輝夜に会うことがあるかもしれないと考えていた僕は、お土産に携帯できる丸い物を鞄に入れておいたのだ。
兎を助けた事とお土産を渡した事、これで形の上では貸しが二つになった。
そうそう無茶な要求もされはしないだろう。
……そう思いたい。
「これは何か御礼をしないといけないわね。香霖堂、もう昼食はとられたかしら?」
「いえ、まだですが」
「それではうちで食べていって下さいな」
「いやいや、そこまでして頂かなくても結構ですよ」
「ふふ、そう言わずに。此処ではたまに訪れる客、こんな素敵なお土産を持ってきてくれる珠のお客は歓迎する事にしているの」
/
僕の遠慮も何のその、広間に通された僕の前へと次々に料理が運ばれ、いつの間にかテーブルは豪勢なおかず達で埋め尽くされていた。
川魚の塩焼きに、山で採れたのであろう山菜の天ぷら。
更には炊きたてだろうか、ご飯の良い香りに具沢山の味噌汁がこれまた良い匂いを漂わせている。
他にも、煮物やらサラダやらキノコの類の天ぷらも用意されている。
「これは、君が作ったのかい?」
「えぇ、お口に合うといいのだけれど」
口に合うかどうか?
そんなものは見た瞬間に判断できる。
僕は味噌汁に手を伸ばし、ずずずっと味わう。
程よい塩分に、体は正直にご飯へと手を伸ばした。
炊きたてのホクホクを一口、ほおばる。
美味い。
続けて、天ぷらに手を伸ばし、焼き魚も一口づつ頂く。
「うむ、美味いな」
「うふふ、良かった」
両手を合わせて喜ぶ輝夜。
用意された食事はどれも驚くほど美味しく、見た目もすばらしい物だった。
流石に輝夜ほど力のあるような者となると、食事一つをとっても素晴らしく手の込んだ物が出てくる。
やはり、それだけ人生に余力があるという事だろうか。
目の前のおかずだけでも十分に満足しているのだが、さらに輝夜は「とっておきを用意するわね」と言って再び部屋から出て行ってしまった。
そして、しばらくして輝夜が大きな皿を持って戻って来る。
「遅くなってごめんなさいね。さ、しっかり味わって食べてね」
そういって差し出された皿の上には薄く切られた赤い物体。
微かに漂う血の匂い。
どうやら輝夜の言うとっておきとは刺身のようだ。
そういえば、刺身を食べるのはどのくらいぶりだろうか。
幻想郷には海が無い為、刺身にできるような魚は居ない。
また、獣の肉にしても狩猟を営まず、人里から離れた場所に住んでいる僕は生で食べられるような新鮮な肉を手に入れる機会はあまり無いのだ。
「それでは一ついただくよ」
皿に盛られた肉を一つ箸で摘み、塩を付けて口に運ぶ。
口の中に広がるのはしっとりとした冷たさ。
続いて広がる濃厚な風味と塩の辛味。
美味い!
「どうかしら?」
「ああ、とても美味しいよ。でも、初めて食べる味だ。何かの内臓じゃ無いかとは思うんだけど、何の肉なんだい?」
「これは、とある生き物の胆よ。しっかり食べて長生きしてね。」
さぁ答えは何でしょう、と輝夜は笑った。
ふむ、本当にこの肉は何の肉なのだろう。
物珍しさに釣られて食べてしまったが、正体を教えてもらえないとなると、とんでもない物を食べさせられたのではないかと急に不安になってくる。
長生きするような肝といえば、人魚の肝や妊婦の生き胆といった碌でもないでもないものばかり思いついてしまう。
さすがに人魚や妊婦を捌いたりはしていないと思うが……いや、していないと信じたい。
……そういえば長生きできる物と言えば、不老不死の人間の胆なんて物もあったな。
不老不死の人間の生き胆を食すと、その人も不老不死になる。
例えば、竹取物語の時代から生きる少女の肝などそれに当たるのではないだろうか。
「……まさか」
そういえば輝夜がとっておきを用意すると言って、部屋を空けた時間は長すぎやしなかっただろうか。
それなりに長く生きている僕が始めて味わうような物とは何なのか。
そして、輝夜が着ている着物はあんなにも……紅かっただろうか?
微かに漂う血の匂い……
もしかすると、この刺身からではなく……
「まさか……君の……生き胆……なのか?」
ごくり、と嚥下する音が聞こえた気がした。
「ふふふ、は・ず・れ♪ それは白と黒の色をした珍しい熊の生き胆よ」
輝夜は悪戯が成功した子供のように笑う。
僕は騙された事への怒りよりも、怪しげな肉ではなかった事の安堵でため息をついた。
「貴方は物事を深く考えすぎなのよ、見事に引っかかってくれたわね。同じ柄の紅い着物に着替えたかいがあったわ」
「ふぅ、あまり脅かさないでくれないか。胆を冷やしたよ」
「ふふふ、お皿の上の胆も良く冷やしておいたの、温くなる前に食べて頂戴ね」
~☆~
昼食を終えた僕は、輝夜に礼を言い帰ろうとした。
しかし、引き止められ、腹ごなしに囲碁か将棋でもどうかしらと誘われた。
最近は囲碁も将棋も相手が居ないため、打つ事はなくなったが、そういった頭を使うような遊びは嫌いではない。
しかし、よく店に来る人間ら、霊夢や魔理沙の遊びと言えば弾幕ごっこばかりで、このような遊びをするようには思えない。
霧雨の店に居た頃は、よく親父さんを相手に打ったのを思い出す。
この機会を逃すと次がいつ訪れるかも分からないし、久々に一局打つのも悪く無いかもしれないな。
「それじゃあ、囲碁でいいかな?」
「嬉しいわ、相手になってくれるのね」
輝夜はいそいそと部屋の隅から碁盤と碁石を持ってきて僕の前に置いた。
「私が先手で良いかしら」
「またまた、ご謙遜を。貴方から言い出したんだ。囲碁には相当自信が有るんじゃないのかい?」
「いえ、本当に得意ではないのよ。永琳はこういった遊びは好まないし、イナバ達はルールさえ知らないの。だから本当に数えるくらいしか打ったことが無いのよ」
そう言うと輝夜は黒い石の入った小箱を自分のほうへと引き寄せた。
そして、中から一つ取り出すとにっこりと微笑む。
「それでは、何か賭けましょうか」
「……ああ」
いよいよ来たか。
ただの訪問者をここまで歓迎してくれたのだ、何か裏があるんじゃないかとは予想していた。
自信が無いのに賭け事を持ち掛けてくるとは、先ほどの自信が無いという言葉が本当かどうかも疑わしい。
大方、僕から珍しい物でも巻き上げようと言うのだろう。
竹取物語に出てきた五つの難題か、それとも新難題の方なのか。
いずれにせよあまり無茶な要求ならば、そんなものは持っていない等と言って、誤魔化さないといけないだろう。
「それで、何を賭けるんだい?」
「そうね……お互いの人生はどうかしら。私が勝った場合は貴方の残りの人生を頂きましょうか」
「な!?」
パチリ
石が盤を打つ音だけがやけに大きく響いた。
思いもよらない要求に声も出せない。
彼女は今何と言ったのだ?
こんな腹ごなしの一局に人生を賭けろだと?
本気……なのか?
いや、本気なのだろう。
彼女の目。
あの目は、こんな賭け事で人生を賭けるのに何の忌避観も抱いていない瞳。
あの目は、敗北も勝利も求めていない凛とした瞳。
あの目は、愉悦も嘲笑も哀愁も寵愛も憂いも受け止める瞳。
仮に僕が同じ物、彼女の人生を要求したとしても何の躊躇いも無く受け入れるのだろう。
そして、勝負に負ければ何の躊躇いも無く人生を差し出す、そんな瞳だ。
チップが大きいほど賭け事は楽しいとでも言いたいのか?
ふざけるなよ、僕の人生は僕の物だ!
こんな賭けは受けるべきではない。
理性ではそう判断しているのに輝夜の試すような目で見られるとプライドが刺激され、出された条件を突っぱねる事ができない。
そもそも、ここで嫌だと言ったところで無事に済むのだろうか。
まとまらない思考だけがグルグルと巡り、口の中がカラカラと乾いて声を出せない。
静寂に包まれた空間で、僕の息遣いと心臓の音がやけに耳についた。
5分か?
それとも10分だろうか?
それとも1時間だろうか、耳の痛くなるような静寂を破り輝夜が口を開いた。
「ふふ、これでは勝負が始まりませんね」
しょうがありませんね、と言葉を続ける。
「それでは条件を変更して、貴方の人生の一部でどうかしら。私が勝った場合また永遠亭に遊びにいらして下さいな」
その言葉に、ほっと息をつく。
助かった。
いや、助けられたのだ。
いつまでも固まっている僕に、情けをかけてくれたのだろう。
「どちらにせよ負けられない勝負だな」
安堵のため息をつく僕は、そう強がって見せるのがやっとだった。
「まぁ、そんなに私に会いに来るのが嫌なのかしら?」
「さっきのように肝を試されるのは好きじゃない。僕は君たちほど肝が太くないんだよ」
「それは褒められているのか貶されているのか悩みどころね。それで貴方が勝った場合は何を望むの?」
先ほど情けをかけられておいて何を要求できるというのだろう。
そうだな……あえて、望むとすれば―――
「月の話を聞かせてもらえないだろうか」
「月の話?」
「もともと君は月の住人だったのだろう。月の文化や人々の暮らし、そして月の有る道具の事なんかを、次に此処に来た時にでも聞かせてくれないか」
「まぁ、次に来たときだなんて、そんな条件を出されては勝てなくなってしまうじゃない」
「それこそ僕の思い通りだよ。せっかくの勝負なんだからか勝ちたいじゃないか」
長い、長い時間を掛けた僕は最初の一手を打つ。
パチリ
「あら、まんまと貴方の策略にはまってしまったのかしら。でも、まだまだ勝負はこれからよ」
パチリ
パチリ
パチリ
室内にお互いの石を打つ音だけがリズミカルに響く。
相手がどの様な形を作りたいのかを予想し、それを邪魔するように手を打ってゆく。
先を読み、先手を打つ、この独特の緊張感を楽しむ。
もしかすると、少女達お得意のスペルカード作りや弾幕ごっこも同じような緊張感を味わっているのかもしれないな。
パチリ
パチリ
パチリ
盤上の石が形を成しかけた辺りで輝夜が沈黙を破り口を開いた。
「さて、そろそろ仕掛けてみようかしら」
パチリ
「じゃあ、僕もそれを受けるとしよう」
パチリ
パチリ
パチリ
パチリ
僕の陣に攻め入る輝夜の石は、それを防ぎにかかる僕の石を見事に取り囲んだ。
「ふふふ、白い石いただきよ」
パチリ
「石の一つや二つより大事な物があるんじゃないかい?」
だが、それは僕のの思い通りだった。
今までの流れが正に布石であった様に、今度はこちらの攻撃がはじまる。
パチリ
「あららぁ、そこに置くの……あぁ、私の陣地がぁ……」
パチリ
パチリ
パチリ……
~☆~
結局のところ輝夜との一戦は僕の圧勝に終わった。
輝夜の打ち筋は何処か素人臭く、いくつかミスをつついただけであっさりと勝負がついてしまったのだ。
もしかすると輝夜の言葉に嘘はなく、本当に素人だったのかもしれない。
しかし、そうすると素人が実力も分からない相手に人生を掛けて勝負を仕掛けた事になる。
流石にそれはないと思うのだが、しかし手を抜く理由も見つからない。
彼女が狂っているのか、それとも他に狙いがあったのか。
僕が臆病なだけなのか、それとも危うい橋を渡っていたのか。
分からない、輝夜が理解できない。
いや、日々表情を変える月の様に気まぐれなお姫様を理解しようというのが無理なのかも知れない。
今日の事は忘れてしまおう。
理解できない事は考えないに限る。
「それじゃあ、これで失礼するよ」
「ええ、それじゃあね香霖堂。次は将棋を打ちましょうね。今度はもっと色々な物を賭けて。勝ち逃げは許さないわよ」
また、やるのか……
忘れる事さえ止められては溜息をつくしかない。
「……ああ、楽しみにしてるよ」
/
霖之助を見送る輝夜に永琳はそっと声を掛ける。
「良かったのですか姫様」
「何がかしら?」
「あの男をこのまま帰してもよろしいのですか?姫様の手腕なら宝物のひとつも巻き上げる事ができたでしょうに」
「別にいいのよ。彼に出した難題は4つ。すべて集める前にへそを曲げられては困るもの。それにね……」
輝夜はにっこりと微笑み言葉を続ける。
「珍しい宝を手に入れるのも、宝の持ち主を手に入れるのも同じ事だとは思わない?」
お疲れ様でした。
良い話 良い話
勝手極まりないですが言わせてください
続き気になるうううううううう!!!!
駆け引きの緊張感、でもそこに不快さとか嫌味さを感じさせる雰囲気は無くて、
清涼感すら感じさせる終わり方でした。
でも、やっぱ姫様の方が一枚上手っぽいなwww
まだまだ続きがかけそうな終わり方だったし、これはもう期待して待てということですね(え
しかしこの輝夜はカリスマ多すぎないか?w
輝夜の最後のセリフにマイリマシタw
勝敗に関係なく輝夜のところに行こうとする香霖はカッコいいと言わざる終えないでしたw
ぜひ続きの話があれば読んでみたいです。
輝霖GJ!
昔話の考察の部分、とても勉強になりました。昔話が、本来、残酷なテーマで書かれていることが多いのは知っていましたが、こういったメタファー的な知識がないもので…
パンダの肝というのも、なにか謂れがあるのでしょうか?
どうあっても俺にこのコメントを言わせたいらしいな
「よし、こーりん殺す」
これは続きが気になってしょうがない!!
どうでもいいかもしれないけど、将棋をやってるとどうしてもスルーできないんだ。すまん。