――――からりと乾いた音を発して、それは燃え尽きた。
さらり、さらりと風が吹く。
ざぁざぁと竹の葉が擦れて音を発てる。
汗が首筋を流れて、地面に音も無く着地した。
ぐいっと額の汗を拭い、憂鬱に頭上を見上げれば、太陽がギラギラと殺人光線をぶっ放す。
ソレを隠すように雲が集まる。
さらり、さらりと風が吹く。
涼しげな風にもかかわらず、相も変わらず汗は流れる。
暑さを促進させるかのように蝉は求愛行動に励み続ける。
「――――」
嗚呼、今日も此処は暑い。
畜生、あいつはまだか?
疑問の声は、竹に呑まれて消えた。
◆
ポタリ、雨が降ちる。
ポタリ、ポタリ、ざぁざぁ、ざぁざぁ。
降り続ける。
止む気配は無い。
長い髪をつたって地面に水滴が落ちた。
ざぁざぁ、ざぁざぁ。
竹の葉も同じ音で笑う。
演奏会は終わらない。
蝉は雨にも、負けず私達に出せない音を奏でる。
それが、雨の音と混ざり合い、何とも美しい。
「――――」
もう真っ暗。
でもそれは、曇っているから。
本当の時刻は判らない。
◆
汗は遠の昔に流れることを止め、かわりに雨が体を濡らす。
服は、体を隠す役割を放棄して、透けてしまった。
それでも私は動かない。
何時間こうしていただろう。
何分間こうしていただろう。
何秒間こうしていただろう。
それとも何年?
何十年?
何百年?
何時からなんて覚えていないし興味も無い。
髪が額に落ちて何とも鬱陶しい。
しかし私はそれを払う事はしない。
動かない。
人形のように。
莫迦みたいに棒立ちだ。
まだか、まだかと私は待つだけ。
それは、苦ではない。
待ち続ける。
今か、今かと心待ちにしている。
そこを異常ととるか、正常ととるかは人次第だろう。
――――カサリと濡れた落ち葉が軋んだ。
「こんばんは」
くるりと振り向けば濡れぼそった黒髪が目に入った。
「待たせちゃった?」
「いんや、今来たとこ」
「そう、良かった。遅れちゃったかと思った」
「びしょ濡れだね」
「あなたもね」
笑い声が竹林に響く。
嗚呼、素晴らしきかな。
――――さあ、今宵、命燃やして死に急ごう。
【了】
些かすっきりさせすぎた感じがありますので、もう少し話に厚みがあると読みごたえがある文章になったのではと思います。
妹紅の輝夜を待っている時間が現れていて良かったです。
ただ、もうちょっと話の内用が濃ければと思ったりもしましたが、野暮かな?
>こんばんわ
こんばんは