Coolier - 新生・東方創想話

紅魔永夜運命譚.蛇足 当日談と後日談

2008/06/28 02:14:12
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様々な二次創作ネタの影響を受けて創作されています
原作のイメージを壊したくない人はご注意ください

この小説は続き物となっております
できれば第1章からご覧ください(ただし、この作品は読まなくても完結してますが・・・







当日談と後日談

「――っ」
「ぁ――」
 二人同時に倒れ込む。疲労はピークに達していた
 どれくらいの時間を戦っていたのだろうか。周囲の竹林は完璧に焼けきってしまっている
「ちょっと妹紅・・・今日って・・・満月だったかしら?」
「いや・・・違うな。紅い月は出てたが、それだけだ」
「だってのに・・・なにしてるのかしらね」
「―――さぁな」
 きっと、未来永劫、その答えは出ない
 未来永劫、その答えは要らない
 私も彼女も――消える事はないのだから
「――ふふっ」
「はは――っ」
 ゆっくりと、二人同時に立ちあがる。相手の体はどう見ても満身創痍。それでも、お互いに弾幕を放ちあう
「楽しいか、輝夜?」
「えぇ、楽しいわ」
 二人は、休むことなく戦った。朝が来るまで、戦った
 その顔に、生を感じる事の悦びを隠さずに

 生きているって、なんて素晴しいんだろう



「って、納得いくかぁー!!」
 霊夢は戻ってきた紫に指を突き刺すと怒鳴った。紫が楽しそうに笑っているのが、より一層気に食わなかった
「結局みんなフランの為の噛ませ犬だったってわけ?」
 ばたりとその場に倒れた霊夢に、紫は呆れたようなため息をつきながら言った
「本気でそんな事を言っているの?」
「は――まさかね。わかってるわよ、それくらい」
 心中を言い当てられ、ますます面白くなさそうに霊夢は言う
「永遠亭は、いざとなれば紅魔館程度の力を持っていることを示せた。永夜の異変で生じた周囲とのわだかまりを、共通の意識を持つことで消去できた。紅魔館からしても、フランをようやく外へ出してやれることができた。全く、完璧じゃないの」
「あら、それだけなの?」
 紫の言葉に、霊夢はん? とか考え込む。はて、他にも何かあっただろうか
「全員本気で戦ったのよ? 誰もが力を使い尽くして、すっきりしているにきまってるじゃない」
「あぁー・・・それはそうかも。みんな単純だものね・・・」
 倒れている者も、最後まで戦い抜いた者も、ここまで本気になるのは久しぶりだったに違いない。要は、息抜きだ。たまった鬱憤を晴らすのに、今回はうってつけだっただろう
「じゃぁ誰も文句は言わないわけだ・・・」
「あら、それはどうかしらね?」
 紫は意地の悪い笑みを浮かべると、手にした扇で月を指し示す
「このままじゃぁ、悪魔の妹によって月が壊されちゃうわよ?」
「・・・あんたこそ、本気でそんなことを言っているの?」
 霊夢は紫の様子に笑うと、よっこいしょと上半身を起こした
「まさか――ね」
 そして、二人して小さく笑い合った
 全く、何から何まで虚構だらけだ。天才は本音と建前の使い方も完璧らしい
「幻想郷は全てを受け入れる。それはそれは残酷な話ですわ」
 紫の呟きと共に、夜が明け始める
 幻想郷は、いつもと変わらない日々を迎えようとしていた


「無理よ」
 あの戦いから一夜明けて。泥のように眠る兎兵たちを尻目に、永琳と輝夜がフランドールからの話を聞いていた
「私があの彗星を壊せたのは、彗星の中にある点を掴むことができたからなの。だけど、月は博霊大結界の外側にある。だから、月の点を掴むこともできないし、月を壊す事は出来ないわ」
 その話を聞くと、永琳はしまったと言うような顔を浮かべた。輝夜は話半分に聞いていた。フランは少しだけ、こいつら大丈夫かと疑った
「いやはやぬかったわー・・・まさか博霊大結界を壊すわけにいかないわ」
「わざとね・・・」
 輝夜は呆れたようにため息をつく。そんなことの為に私は妹紅と一晩中ダンスをしていなきゃいけなかったのかと、頭が痛くなる。イナバが知ったらきっとショックを受けるだろう・・・真面目だもんなぁ
 まぁ、だとしても――
「それで、えっと・・・フランドールだったかしら?」
「あ・・・フランで良いわ」
「それじゃぁフラン。もう一つだけお願いを聞いてくれるかしら?」
「出来る事なら・・・」
 輝夜の提案に、永琳は怪訝な顔を浮かべる。一体この姫は何を考えているのだろうか? まぁ、あまり良くないことだろうとは思うけれど・・・
 どうやら永琳には聞かれたくなかったらしく、輝夜はこそこそとフランに耳打ちをする。その内容を聞いたフランは、眼を思いっきり見開いた。なるほど、と永琳は思い至った
「そんな・・・!?」
 あまりの事に、フランは身を震わせる。無理もない。そんなことを許容できる存在の方が珍しい。しかし、輝夜はそれに介さず笑みを浮かべる
「いいから、やってみなさい?」
 その表情に気圧されたのか、フランは小さくうなずくと言われたとおりにして――
「・・・え?」
 掌を握りしめる前に、顔を歪める
「やっぱり・・・無理なのね?」
「あ・・・うん、無理みたい。掴めない・・・」
「そう・・・ありがとう」
 輝夜は少しだけ悲しそうな顔を浮かべると、フランに礼を言った。フランは何が何だかわからないまま、永琳の方を見た
「そういう存在も在るって言うことよ・・・。ごめんなさいね、うちの姫様は我が儘だから」
「ちょっと永琳、言っていいことと悪い事があるのよ?」
 在りえないことを頼んで、在りえない存在であると自ら告げたにも関わらず、彼女たちはいたって普段通りにやりとりを交わす。その様子に、フランは複雑な表情を浮かべた
「どうやら・・・貴女を外に出したのは無駄じゃなかったみたいね」
 輝夜は少しだけ嬉しそうに言った。それを聞いて、フランはまたしても眼を見開く。頼まれたことは、何一つとして実行出来ていない。だと言うのに、無駄ではなかったと言うのだ。一体どうして――
「だって貴女、良い子だもの」
 くすりと、輝夜は笑ってみせる。良い子がいつまでもお家にいたら勿体ないでしょう? と
「・・・・・・・・・」
 フランは呆気にとられて輝夜を見た。輝夜は微笑むと、立ち上がってフランの頭に手を置いた
「ま、たまになら遊びに来なさいな。夜中だとろくなおもてなしなんか出来ないけどね」
「え・・・ありが――」
 呆気にとられたまま、フランは礼を言いかける。しかし、輝夜はそれを手で制すると、更に言葉を紡いだ
「その様子だと、ごめんなさいしか言えていないんじゃないかしら? 駄目よ、ちゃんとお礼を言ってあげなきゃ」
 なんのこと、と言おうとして、フランはそのことに気づいた。そうか、私はちゃんと言うべきことを言えてない。みんな言うべきことを言ってくれたのに
「・・・わかった」
「そう、それでよろしい。流石は永琳、見どころあるわね。なかなか者わかりの良い子を連れてくるじゃない」
「はぁ・・・ですが姫、あまり子ども扱いするのも如何なものかと」
「――え?」
「私――500歳くらいなんだけど」
 輝夜は口を開けたまましばらく停止した

「それじゃ、白玉楼に行ってくるわ」
「行ってらっしゃい。あの子はどうするの?」
 フランは今はてゐと会話をしているようだった。今の幻想郷がどんな状況なのかを聞いているらしい。きっと、あらゆることが今の彼女には新鮮なんだろう
「気に入ったから永遠亭に住まわせてもいいのだけれど」
「そんなことしたら紅い悪魔が飛んでくるわよ・・・勘弁してよね、あれの相手するの大変だったんだから」
「私だって妹紅の相手してなきゃいけなかったんだからね・・・」
 二人してため息を吐く。死なないと言うのは楽ではない
「そのうち白黒の魔法使いが迎えに来るはずですから。そうしたら報酬の月の石を渡しといてちょうだい」
「あんなもんの何がいいんだか理解しがたいわ・・・」
 輝夜はぶつぶつと言っているが、今はそれに構ってはいられない。あと始末くらいしなければ
「それじゃ、行ってきます」
「はい、行ってら~」


「・・・とりあえず、終わった・・・」
 妖夢はぐったりと項垂れる。倒れた者の収容で体力を使い切ってしまった。漂う半霊も、心なしか元気がない。結局のところ、安静に寝かせているだけだが、それでも転がしておくよりはましだろう
「幽々子様の話だと、永琳が来るはずだけど・・・」
 それより先に何かできる事はないだろうか、と悩んでいると、こちらに近づいてくる影に気づいた
「――ここは、冥界?」
「あ、気づいたんですね? 体の方は大丈夫ですか?」
 それは鈴仙の姿だった。あれほど強烈な一撃を受けて倒れたと言うのに、やはり他の兎たちとは鍛え方が違うらしい
「まぁ、おかげさまで・・・。あぁ、あの紅い悪魔にやられたんだっけ・・・やっぱり強いなぁ」
 鈴仙はしみじみとそんなことを言う。その様子に妖夢は安心する。やっぱり、誰も恨みを抱いたりするようなことはないらしい。きっと、死力を尽くしての敗北には誰もが納得しているのだ
「えっと・・・戦いは結局どうなったのかしら?」
 言いにくそうにして鈴仙が訪ねる。結果からいえば、永遠亭の勝利なのだが・・・。妖夢は真実を伝えるか否かをほんの少しだけ迷った後、事の顛末を告げた
「あぁ・・・やっぱりね」
 鈴仙は納得する。そもそも、月を破壊すると言い出した時からおかしいと思っていたのだ
 師匠が月を破壊できるわけなんかない。師匠は月に恨みなんか抱いていない――
「まぁ、とにかく私は永遠亭に戻るわ。どうやら御世話になったみたいだから、いつかこの恩は返しましょう」
「いえ・・・戦場では対して役にも立てませんでしたから・・・」
 妖夢は申し訳なさそうに鈴仙に告げる。どうやら大局を動かせなかったことや、紅い悪魔に敗れたことを悔いているらしい。しかし、それは本人が悩み、背負うべきこと。鈴仙はそれを否定しなかった
 ただ――
「それでも、永遠亭のみんなが感謝していることは確かですよ。いつか遊びに来て下さい。きっとみんな喜びますから」
 鈴仙はそれだけを告げると、妖夢から離れようとして――
「・・・あれ、師匠?」
「あら、ウドンゲ」
「あ、八意殿。遅いですよ~・・・」
 妖夢はやっと頼りになる人が来たことに安堵の息をつく。永琳は申し訳なさそうな素振りを見せたが、それよりも先に自らの弟子に一言告げる
「良く頑張ったわね」
「あ・・・はい」
 鈴仙は呆気にとられてその言葉を受け取ると、永琳に尋ねた
「ひょっとして、手伝った方がいいですか?」
 それは間違いなく、ここに寝かされている者たちの治療を意味しているのだろう。誰がどうみても、人手がいるのは明らかである
「そうね、お願いするわ。私一人ではしんどいだろうし・・・」
「私も手伝いますけど・・・」
 妖夢の申し出を、永琳はやんわりと断る
「貴女は行きたいところがあるのでしょう? だったらそっちを優先しなさい。ここは専門職に任せておけばいいのよ」
 言うが早いか、永琳は手慣れた様子で治療具を展開する
「えっと・・・でも」
 妖夢は迷っていた。確かに向かうべき場所はあるのだけれど、目の前に倒れている者たちを放っておいていいのか?
「今回の戦いね。私たちは本当に感謝しているのよ。貴女がいなければ、間違いなくうまくいかなかった」
 永琳は妖夢の方を見ずに着々と準備を進めていく。それを見て、妖夢は自分が必要ない事を悟った
「だからこの場は私たちに任せて、貴女はしたいようにしなさい」
「・・・では、この場はお願いしますね」
「任せておきなさいって」
 永琳はどこまでも堅い妖夢に少しだけ笑うと、ふと思いついたように質問する
「ところで――貴女の主はどこかしら? 出来れば礼を言いたいのだけれど」
「あぁ、幽々子様なら・・・えっと」
 言いにくそうにする妖夢に、永琳は眉を寄せる。まさか、あれだけの出来事があったと言うのにあの亡霊――
「昨日から爆睡してまして――」
「・・・・・・・・・」
 礼を言う気も失せたので、永琳は治療に専念することにした


「不甲斐無いなぁ・・・」
 ぐったりとしているパチュリーと咲夜を見て、レミリアが溜め息を一つこぼす。瀟洒な従者とやらが聞いて呆れる
「申し訳ありません・・・」
 咲夜がか細い声を出すが、どう考えても無理をしているようにしか思えない。レミリアはわかったわかったから休めと指示を出すと、ふらふらと自室へと向かって行った
「流石に人間には重労働だったみたいね・・・」
 パチュリーが毒々しい響きで言葉を紡ぐ。別に咲夜に恨みがあるわけではないが、疲労のせいでそう言った声しか絞り出せないのだ
「パチェも少しは休んだら? と言うか、なんで図書館に居ないのよ・・・」
 ここは紅魔館の居間である。日頃から図書館に居るパチュリーがここに居ることはあまりない。そもそも、決まった集まりなんかないのだから、仕方がないだろう
 レミリアは朝日が出る前に寝て、朝日が沈んでから起きてみると、いつも通り咲夜が着替えを持って寝室に入ってきた。しかし、どう考えても足取りがおぼつかない。はて、何があったのだろうと思い返してみると、自分がいろいろな問題をほっぽり出したまま寝ていたことに気づいた
 そう、美鈴に咲夜にパチュリーの3人がそろってダウンしていたのだ。メイド達は大慌てで3人を寝かせると、紅魔館の修復作業へと向かった。しばらくは慌ただしい日が続きそうである
「1日で復活したのは褒めるけどさぁー・・・」
「これを復活と呼べるならね・・・」
 机に顔を突っ伏したまま、恨み言の様にパチュリーが毒づく。どうやら、ほこり臭い図書館に居ると必要以上に体力を失うらしい
「で、レミィ?」
「んー? なんだい藪から棒に」
 二人は天井を見上げたまま、言葉を交わす。心ここに在らず、というのがしっくりくるほど、気が抜けていた
「敵を蹴散らしてくると言ったまま、ついに帰還することなく敵と仲良しこよししてたレミリア・スカーレットさん?」
「なんだい、紅魔館は私と美鈴に任せてと言ったまま、主の帰還を待たずに敵に侵入されたパチュリー・ノーレッジさん?」
 二人は皮肉を交わし合う。長い付き合いだ、相手の言いたいことぐらい分かっている
「どんな気分かしら」
「パチェと一緒だよ・・・」
「そう・・・ならよかったわ」
「あぁ、それでいい」
 負けたなぁー・・・。二人は違う相手を思い描きながら感想にならない感想を頭に描いた。それでいて清々しい気分なのは、どうしてだろうか
 きっと咲夜も同じ気分に違いない。相手を出し抜くことも出来たし、相手に出し抜かれる気分も味わった。そこに恨みや嫉みが残る筈がない
「さて・・・それじゃ私は部屋にでも行くわ・・・」
「ん? なんだ、それを確認しに来ただけか?」
「わかってるくせに・・・」
「そりゃぁ失礼」
 ごぼっと嫌な音でせき込みながら部屋を出ていくパチュリーを見て、レミリアは大丈夫かなぁと少しだけ不安になった
「さてさて・・・どうやって過ごすものか」
 咲夜の居ない生活なんて、滅多にあるものじゃない。たまには一人でのびのびと過ごしてみるか・・・と思っていると

「失礼します。お客様です」
 小悪魔がそう言いながら部屋に入ってきた。お客様・・・一体誰だろうか? と言って、まさか不審な者をわざわざ小悪魔が連れてくるわけもあるまい
「ん、入ってもらって」
 少し疲れたなぁーと思い、ソファに寝そべる。まかり間違っても客を迎える態度ではなかったが、レミリア本人にその自覚はなかった
 よって
「・・・なんてはしたない格好をしてるんですか貴女は」
 お客様、魂魄妖夢に入ってきてそうそう、そんなことを言われてしまった
「ん、あぁー、あんたか。残念ながら今紅魔館は客をもてなせる状況になくってねー」
「それはわかりますが、だからと言ってソファに寝転がってていいわけではないでしょう」
 まぁ、私は気にしませんが、と彼女はため息を吐く。恐らく彼女の主はもっとだらしのないところを彼女に見せているんだろう。冥界の庭師も楽じゃないな
「で、わざわざ夜の王の城に夜に訪れるとは、何用かな?」
「夜じゃなきゃまともな対応してくれないじゃないですか・・・。いえ、貴女に用があるわけじゃないんですが」
「つれないなぁー・・・どうせ美鈴の様子でも見に来たんでしょ?」
「はい」
 一切の躊躇いなく、彼女は頷く。本当に真っ直ぐな生き方をしているな、とレミリアは思う。ま、だからこそ何の用件かすぐにわかったんだけど
「残念だけど、美鈴はまだ意識が戻ってないよ。間違ってもあんたのせいじゃないけどね」
「・・・そうですか。いえ、あれほどの傷を負っていたのですから、それは当然ですが・・・」
 気にするな、と言っても気にしない方が無理か。全く難儀な性格だな
「そんなに気負う事はないって・・・。どうせ美鈴だって本気で戦えてすっきりしてるに決まってるよ。それにもちろん、私もね」
「・・・貴女との戦いは、こちらの完敗でしたが」
「謙遜するなって・・・ま、美鈴の意識が戻ったら屋敷に呼ぶよ。その頃にはきっと、客をもてなすことぐらいは出来るだろうしね」
「ありがとうございます」
 用件は本当にそれだけだったのか、彼女は最初から最後まで立ったままだった。そしてそのまま立ち去ろうとするので、少しだけ言葉をかけてやることにする
「今回の戦いだけど、さ」
「・・・・・・・・・」
 無言で剣士は振り返る。こんなのが私の役だとは思えないが、誰か一人くらい彼女を褒めてやってもいいだろう
「最初から最後まで自分を貫いたのは、お前くらいのものだよ。剣の腕前だとか、戦い方だとか、そんなもんは私から見たらどうでもいい。ただ、その事実だけは、誇っていいはずだ。だから、誇れ」
「・・・言われなくても、私は自分を曲げるつもりはありませんよ」
 失礼しました、と言って彼女は居間を出ていく。うん、きっと、それでいいんだろう
「やれやれ・・・」
 変な気を使ったせいか、疲れがまた溜まった気がした。かといって、自室にこもるのもどうだかなぁ・・・
 自分で紅茶でも入れてみるか、と思ったところで、またしても小悪魔が入ってきた。ただし、さっきよりも慌てた様子で

「侵入者です」
「お客様だぜ・・・」
 小悪魔が連れてきたのは霧雨魔理沙だった。そしてそこには、魔理沙に手を引かれたフランドールの姿もあった
「あぁ悪いね、十分なもてなしもできなくて。何しろどこかの馬鹿が派手な一発をかましてくれたみたいでさ」
「いえいえお構いなく。報酬なら永遠亭の連中に貰ったしな。それにこいつは、無料奉仕って奴だ」
 ほれ、と言わんばかりの気軽さで魔理沙がフランを自分の前へと押し出す。フランはおっかなびっくりと言った様子で私を見ていた
 少しだけ、その言葉を言うべきか迷った。いや、迷わなかったのかもしれない。どちらにせよ、その言葉は私の口から放たれていた
「お帰り、フラン」
「えと・・・ただいま、お姉様」
「外は・・・どうだった?」
 他に言うことはないのかと自分でも思うが、気になるのは仕方がない。もし外が嫌だと言うのなら、それもまた運命だろう
「んっと・・・まだ良くわかんない。永遠亭でいろいろな話を聞いただけだし・・・」
「そう・・・でも、これからは外に出たかったらいつでもいいのよ」
 私の言葉に、フランは一瞬だけ驚いたような顔をしたが、すぐにそれを曇らせる
「だけど、まだわからない・・・。私が外に出ていい存在なのか、どうなのかなんて」
 その答えを出す事は、難しいだろう。一度でも外でフランが暴れてしまえば、それは手に負えない事態となる。起こってからでは遅いのだ、答えが出ないのは当然だろう
 でも、と彼女はつづけた
「永遠亭の・・・誰だっけ、あの影の薄い人・・・」
「・・・世の中には言っていいことと悪い事があるのよ・・・」
 恐らくは蓬莱山輝夜のことを言っているのだろう。本人が聞いたら怒り狂って永夜返しを放ちそうだ。そう言ったところも、まだまだ理解できてないらしい。きっと、それを理解するのも一苦労だろうな、とレミリアはため息をついた
「あの人は、私には壊せない存在だった・・・」
「・・・なるほど」
 あの蓬莱人め、どうやらお節介を焼いてくれたらしい。よりによってフランの能力を発動させるなんて、なんのつもりなのか・・・
「他にも、月は私には壊せないし、幻想郷には私に壊せないものがまだまだある・・・」
「・・・・・・・・・」
 たった一度外に出ただけ。それでも、彼女の中には何かしらの変化があったのだろう。フランの様子からレミリアはそれを感じ取る
「だから、私が居てもいいような気がする・・・」
 あらゆるものを破壊してしまうかもしれないけれど
 自分はすでに壊れているのかもしれないけれど
 それでも、幻想郷になら――
「――それだけで、十分よ」
 気づけば、眼から涙が零れかけていた。レミリアは慌ててそれを拭う
 自らを呪いながら生きてきた、たった一人の妹が、生きていることを許容し始めたのだ。その事実に、レミリアは涙を禁じえなかった
 どうやら、永遠亭には大きな借りが出来てしまったらしい。レミリアは涙を拭いながらその事実を受けたとめた
「あ、そう言えば・・・」
「ん・・・?」
 ふと気づいたように、フランがレミリアをじっと見つめる。フランは思い出していたのだ。永遠亭で述べようとしていた事を、誰よりも先に言うべき人がいる事を
 自分をずっと、ずっとずっと見守ってくれていた自らの姉に、言うべき言葉を

 いつか、まだ彼女が壊れる前
 彼女たちが、仲の良い姉妹だったころ
 当たり前の様に、交わし合っていた言葉を
 今、あの日のように――

「ありがとう、お姉様」

 今度は、溢れる涙を止める事が出来なかった
「―――っ!」
 様々な想いが一度に胸を襲い、レミリアは涙をぼろぼろと零す。そんな姉の様子に、フランは戸惑っていたが
「ったく・・・どこまでも世話が焼ける・・・」
 魔理沙の突然の発言に、フランは魔理沙の方を向いた
「そう言うときはな、抱き合えばいいんだよ」
 魔理沙の言葉を真に受けたわけではないが、自らの姉を放ってはおけなかったのだろう。フランはゆっくりとレミリアに近づいていく
 どうやら、これ以上ここに居ても邪魔にしかならなそうだ。魔理沙はその事を感じ取ると、そっと部屋から抜け出した


「姉妹、ねぇ・・・」
 互いが互いを憎んでいると思っていた。互いが互いを怨んでいると思っていた。本当は、触れあいたくて仕方がなかったのに。本当は、誰よりもお互いを思っていたのに
「・・・辛気臭い事を考えるのは、やめだな」
 フランが幻想郷の仲間となるのに、そう時間は要らないのは確かである。今はその事実を素直に喜ぼう。これ以上二人のことを考えていると、自分まで涙を流しそうである
「さて、それじゃ神社にでも行くか」
 今回の話をしたら、きっと霊夢は悔しがるだろう。自分の知らない所でそんな大きな事が起こっているなんて。きっとあいつは何も知らずに寝ていただろうから
 魔理沙は紅魔館を飛びだすと、上空で大きく息を吸った。よくはわからないが、胸は清々しい気分でいっぱいだった。きっと、あの戦いに関与した者は全員同じ気分でいるだろう
「さて・・・そうと決まれば、飛ばすぜ!」


 幻想郷は、全てを受け入れる
 それはそれは、残酷な話
 だからこそ、彼女たちは生きる
 今日も明日も、笑い合いながら


「――はっ! ここは丘、そして私は射命丸・・・って、巫女はどこに行きました!?」
 この一件が記事となることは、どうやら無かったらしい


――This story is End. But Dream Land is Never End
 はいはい蛇足蛇足
 本編では書ききれなかったその後の模様ですね
 レミリアとフランが仲良くなってくれればいいなぁ、と想いを込めて
 しかし、描写はうまくいかないのである がっくし

 かなり作者の主観が加えられた作品でしたが、それは二次創作だから仕方がない、かな?
 これからは話を短くすることを心がけよう・・・

 08’06/21 執筆了

 まさか一気に読んでくれる人がいるとは思わずupしてなかった・・・
 霊夢がどうしてこの戦いを異変と呼ばなかったのか とかはここに書いてしまったので、反省
 一気にこれもupしとくべきだったなぁ
DawN
http://plaza.rakuten.co.jp/DawnofeasterN/
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コメント



0.490簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
ああ、これを読んで納得しました。
一緒にアップしてくれれば悶々とせずに住んだのにw
次回作期待してます。
ありがとうございました。
2.100幻空混削除
この恨み晴らさでおくべきかぁ
5.30名前が無い程度の能力削除
戦略、戦術の描写には感嘆させられましたが、どうにも納得できない動機と結末のため、この点に。

戦争吹っかけておいて、誰も死ななかったから、全力を尽くしたから、それでよしとするのもどうかと思います。

よりよい幻想郷のために、安全で怪我はするけど死にはしない戦争ごっこをしましょう、なんて甘ったれた考えを永琳がするでしょうか?

誰か死んで永琳がそれに苦しむ描写が合った方が戦争ものとしてはまだ納得できます。
もっと言うならば、双方多大な死者を出した上で、それでもフランを開放する、という永琳(と、レミリア)の「覚悟」を描いて欲しかったです。
6.50名前が無い程度の能力削除
なぜ戦いで終わらせる? なぜ交渉などがない?
どうしてもっと話し合おうとしないのでしょうね?
たとえ時間が掛かっても望めば何かを得られるでしょう。

なんか話も戦闘オンリーでフランに対しての想いがあまり出てこなかったように思います。
それに永遠亭がどうして出張ってくるのかと不思議です。
フランを外に出すのであれば紅魔館や、そこと親しい者でやっても良かったのだと思います。

とはいえ、面白かったのも事実です。
ただ・・・戦闘描写が長く続きすぎて少し飽きがくるのは否めないと思います。
9.100名前が無い程度の能力削除
かなり面白い作品で、最初から一気に読んでしまいましたが、やはり他の人も言うように所々ん?と思う箇所がありました。

次回作にも期待します。
11.90名前が無い程度の能力削除
おもしろかったですが、確かになぜ交渉が無かったのか?というのは疑問でした
次も楽しみです
12.30名前が無い程度の能力削除
この長編含めて十以上の連投がありましたが、こういうのは控えたほうがいいかと。お世辞にも作品として優れているとは言えず、氏のある作品では駄SSとまで評されていました。推敲を繰り返したり創想話以外で高い評価をもらって自信作として出したならともかく、「見てもらう」ではなく「見ろ」と言われた感じで読んでいてそのあたりが不愉快になりました。
文章力を上げたくて作品を出し、他の方に評価を頂いてそれを参考に作品を出し続けるのはありです。ですが自分のホムペでない場所で不特定多数の方が見られる場に作品を晒す場合は相応の「覚悟」を持ちましょう。
辛辣になりましたが、自分の感想と言うことで。
14.20名前が無い程度の能力削除
恩義や依頼があるにせよ、最初の段階で本当の目的を知らない魔理沙と妖夢のやったことは、ただの人さらいの手伝いじゃない?
特に恩義どうのこうの言ってる妖夢が人さらいの手伝いするわ、背後から不意打ちするわ、その辺どうにかならなかったのですか?
15.100名前が無い程度の能力削除
非常に楽しませていただきました。
何よりのことです。
19.無評価名前が無い程度の能力削除
そこはかとなく自演の香りがつきまとうなこの作者
20.40名前が無い程度の能力削除
素直に面白かったんですが、あまり好きじゃなかったです。
人攫いというコメントがでていますが、この話の展開のみだとその通りなのかなと感じました。

でも、次回策期待してます~
22.100名前が無い程度の能力削除
最初から一気に読ませて頂きました。

面白かった!

東方SSでは、個々のキャラ達が(能力的にも個性的にも)強過ぎるためか、
こういった「組織VS組織の戦争シミュレーション」は数が多くないのですが、その中でも傑作の部類に入るのではないかと。
文章もしっかりしていたと思いますし、登場キャラ達も(名前の有る無しかかわらず)活き活きしてました。
特に、美鈴VS妖夢、レミリアVS永琳のシーンは、モニタの前で手に汗握りましたよ(笑)

まぁ評価は分かれるかもしれませんが、あまり深刻には受け止めないように(無視しろ、とは決して言いませんがね)
今回に限らずよく議論となります「長編作品の連投」についてですが、これは基本的に作者サイドの判断に任されるもの、と私は思います。
なので、そこら辺は貴兄の裁量によって行えば良いと思いますよ。

ともかく、私はとっても面白く読ませて頂きました。
次回作も頑張って下さい!
23.無評価名前が無い程度の能力削除
言いわすれてましたが、かなり前によく似た作品がありましたよ
24.90名前が無い程度の能力削除
似た作品と言うと紅魔館が月に行くためにロケット作ってその妨害しに永遠亭が攻め込むって奴ですか?
確かに構図は似てましたね、個人的には戦略的な戦いできる勢力はこの2勢力しかないから仕方ないと思うけど。
こういう戦略ものは大好物なんでそれほど文句はないですけど、あえて言えば妹様関係の心情とかをもっと入れればもっと評価されただろうと思うしだいで。
25.80名前が無い程度の能力削除
戦闘描写とか各話タイトルとかすごくかっこよくて一気に読んできました。
最後のオチが喉につっかえる。
茶番のために兎とメイドたちは血を流したのかと。すっきりといわれても。

全話で100-オチでこの点を。
32.50名前が無い程度の能力削除
両軍のパワーバランスのために無理矢理メディスンや魔理沙、妖夢が狩り出されてる気がします。
もう少しフェアな戦闘ならすっきり感も増したかとは思いますが。
34.無評価名前が無い程度の能力削除
結局のところ何が言いたかったのかわからん
妹様の狂気がそんな簡単に解決できるなら八雲紫が狂気と正気の境界でも弄ればすむ話でしょう
そもそも、ありとあらゆるものを破壊する程度の能力を制御仕切れないってのも幽閉されていた理由です
そのまま出したら幻想郷は崩壊しますからね

あと話しの途中から永遠亭側に余計なイレギュラーが出てきたのが不快だ
イレギュラーがいなければまだマシに読めたと思いますが、メディが出てくるのはまだわかるが妖夢と魔理沙はいらなかった
この二人が出た時点で永遠亭側の勝利を確信してしまって後が詰まらなくなりましたし
あとスペルカードルールを無視する理由がわからないし、ルール無視してるのに霊夢が仲裁に入らないのも意味不明
無視していいルールだったら誰も従いませんよね?
35.無評価名前が無い程度の能力削除
高得点つけてるコメントってこれ全部…
36.10名前が無い程度の能力削除
一気に全部見た

ラストに本気でがっかり、寒い
もっと面白い終わり方があったよ、ダークでもハッピーでもさ

1~5章まではよかったよ、本当に思うよ

美鈴の覚悟とかさ、良いと思ったよ

途中から永遠亭が勝つなとか予想して少し冷めたけど

ラストでどう締めるのか楽しみに最後まで見たよ


だから本当に残念