Coolier - 新生・東方創想話

紅魔永夜運命譚.6 最期の閃光

2008/06/27 23:35:41
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様々な二次創作ネタの影響を受けて創作されています
原作のイメージを壊したくない人はご注意ください

この小説は続き物となっております
できれば第1章からご覧ください




6章 最期の閃光

「妖夢ってば格好良すぎだわ~。やっぱり私の教えが良いのかしらねぇ」
「あんたが教えてちゃ本末転倒じゃないのか・・・」
 妖夢の活躍にはしゃぐ幽々子を、慧音がたしなめる
「魔理沙も動いたみたいだし、紅魔館は苦戦を強いられそうね」
 魔理沙が何やら湖の方へと飛び去るのを見て、霊夢は感慨深そうにため息をつく。結果などはどうでもよかったが、正直永遠亭と紅魔館がここまで対等に渡り合うとは思っていなかった。外部の力を借りたと言う意味では、永遠亭の方が力不足ではあったように思える。しかし紅魔館も妹紅を投入していたり、あらかじめ戦場を整えていたのだ、互角と言って差し支えはないだろう
 と、そこへ――
「どうやら――間に合いましたか」
 強く、だがどこか優しい風が吹き付ける。まるで、何らかの意思を持つかのような風と共に、空から一人の影が降り立った
「来たわね。この戦いの元凶が」
 霊夢が影に向かって冷たい言葉と冷たい視線を送る。どうやら、その人物にあまりいい印象を抱いていないようだった
「相変わらずとげとげしいですね・・・。巫女は永世中立じゃないんですか?」
 大げさに疲れたため息さえ、霊夢は完璧に無視をした
「まさかそんな虚実を信じていたのか? まぁ、とりあえずその翼を休めるといい」
 慧音が楽しそうに酒を勧めるが、彼女はそれには応じなかった。幻想郷でも酒豪として知られる彼女の、それは珍しい一面だった
「いえ、今は取材中ですのでアルコールはお断りします」
 取材中。彼女は確かにそう言った
「取材って、今度はどんな記事を書くつもりかしら? 記事は争いのもとよ、射命丸」
「失敬な。私は事実を広めたいだけですよ」
 幻想郷の大妖、紫の言葉にも彼女は動じない。それは、彼女が絶対の信念のもとに動いているからに他ならなかった
 射命丸文。この戦いの原因となった、文々。新聞の発行者である
「それでは早速。まずは幻想郷の巫女である博霊霊夢さんにインタビューです」
 手帳と筆を取り出すと、霊夢に向かってインタビューを試みる。はたから見ても鬱陶しそうである
「今回の戦いに関して、まずは率直な意見をお聞かせください」
「つまみに焼き鳥があれば最高でしたー」
 そして始まる取っ組み合い(と、罵声の飛ばし合い)。いつもの光景なので、紫以下二名は放っておくことにした
「それにしても、永琳とレミリアはよくやるな・・・」
「どちらも人や妖怪を超越した異形ですもの。そう簡単に勝負なんてつかないわ」
 霊夢と射命丸を完全に無視して、慧音と紫が二人の戦いを見つめる。ときに激しく、ときに冷たく、二人の人外は争いを繰り広げていた
「相手は紅い悪魔ね。妖夢が助けに行ったくらいで、何か変わるのかしら?」
 幽々子が優しげな眼差しで、永琳の下へと急ぐ妖夢を見つめる。その発言とは裏腹に、妖夢が倒れることは心配していないようだった
「幽々子ってば、いい加減あの子を子ども扱いするのはよしなさいな」
 紫が優しげな笑みを浮かべる幽々子を叱る
「あの子がどれだけ強いのかって言うことぐらい、貴女にはわかっているでしょう? あの子は強いわ。それだけは間違いない」
 紫の言葉に、慧音は驚く。あの冥界の庭師が、それほどまでに評価されているとは・・・。どうやらそこには、私の知らない背景がありそうだ
「知ってるわよ。あの子はその気になれば、なんだって斬ることが出来るもの」
 瞳を瞑ると、幽々子は楽しそうに言葉を紡ぎ出した
「永遠も、運命も、歴史も、生も、死も、境界でさえも。あの子が心の底から斬れると思えば、斬れないものなんてほとんどないわ」
 それが、魂魄妖夢の強さであると幽々子は言う。信じることが出来る限り、無限に力を得ることができる強さだと
「でもね、真っ直ぐすぎる力は、同時に自らも傷つけるものなのよ。本当に自分は正しいのか? 本当は間違っているのでは? 本当は斬ることはできないのでは? そう疑えば、その刀の鋭さは自らに向くわ」
 幽々子の発言に、慧音は意外そうな顔をする。なるほど、ふざけているようでいて、物事の本質をしっかりと見ている。流石は冥界の主と言ったところか
「諸刃の剣、と言うことか」
「あら、その比喩は言い得て妙ね。どこか一線を越えてしまえば、強さは脆さにつながっていくものよ」
「強さは脆さ、ね。それはこの巫女には当てはまらないんでしょうけどね」
 紫はいつの間にか大の字で寝転んでいる霊夢を指さす。その近くには同じように横たわる射命丸の姿もあった。取っ組み合いの結果、らしい
「そうね、霊夢は強くて大きくて、およそ脆さとは無縁だわ」
 でも――幽々子はさらに続ける
「妖夢は真っ直ぐすぎるもの。それが妖夢の強さであり、脆さである。諸刃の剣って、良い例えね」
 真っ直ぐであれば在るほどに、自らを傷つけていく。慧音は老いることも死ぬこともなくなった少女を脳裏に描いた
「・・・さってと。そろそろこの戦いもおしまいかしらね」
 漂う空気を一切読まずに、霊夢が立ち上がる。周囲のことはお構いなしのその姿に、思わず慧音は笑い出す
「なるほど、こいつは最強かも知れんな」
 慧音の言葉に、紫と幽々子がうなずく。当の本人はきょとんとしていたが、それこそが彼女の強さである
「いやいや、お前の言うとおりこの戦いも終焉を迎えるだろう。終焉のない戦いなどありはしないさ。だが――」
 慧音がモニタの方を向く。激しさを増していく、異形同士の戦いを
「彼女たちがこのままで終わる筈がない」
 誰しもが、慧音の言葉に頷いた
 月はいつしか大きく傾き、それはこの戦いの終わりを予兆するかのようだった

 そして、その傾く月をぼんやりと眺めながら、彼女もまた、再び立ち上がった


「――なんですって?」
 門の内側へと完全に後退したパチュリーは、信じられないものを見る。紅い装備の兎兵たちと、小悪魔の率いるメイド兵との拮抗した勝負であった
「パチュリー様!」
 小悪魔がパチュリーの姿を見つけて近寄ってくる。いつの間に、こんな内部まで潜り込まれたのか? そう問い詰めようとしたとき、その姿を確認する
「随分と遅い到着ね。急襲、挟撃は戦の基本よ」
 そこに居たのは、幻想郷最古の妖怪兎、因幡てゐ。どうやらこの部隊を率いているのは彼女らしい。小聡い真似をしてくる。パチュリーは疑問を解消すると同時に、冷静さを取り戻した
 先ほどの魔理沙の特攻。その瞬間に、彼女の部隊は一気に門の内側へと侵入したのだろう。恐らくは紅魔館を直接目指し、混乱に乗じて攻めきろうとしたのだ。当然、パチュリーが魔理沙を警戒して移動が鈍くなるのも計算のうちである
「戦において最も攻めるべきは脆い場所。そして最も守るべきは脆い場所なのよ。攻め時を誤ったわね、魔法使い」
 てゐはパチュリーを挑発するが、パチュリーはそれに介さずに考察を続ける。なるほど、魔理沙の姿がないのはそのためか
 あの捨て身の特攻、間違いなく彼女は傷を負っただろう。そんな彼女をそのまま放置すれば、当然の如く強制退場(リタイア)となってしまう。恐らく、てゐの部隊が大急ぎで安全な場所へと運びだしていることだろう。そうすることによって、こちらがその存在に怯えることも計算の上だ。実に小聡い。幻想郷最古の妖怪と言うのは伊達ではないようだ
 しかし、パチュリーはてゐが焦っていることをわかっていた
「残念だけど、挑発には乗ってあげないわ。確かにここまで潜り込んだ度胸と、行動力は大したものね」
 てゐが眼の色を変える。パチュリーが冷静でいることに対して危機感を持ったのだ。このままではまずい、てゐは本能で悟る
「けれど、攻め時を誤ったのは貴女の方。まさか私の後方にも部隊を用意しているとは思わなかったのね」
 パチュリーは魔力を練る。展開された魔法陣に、兎兵たちの動きが固まる
「まずい・・・! みんな、全速力で逃げるわよ!」
「愚かなる兎どもよ、魂までも燃え尽きるがいい!」
 兎兵たちが一斉に動き出す。ここは既に門の内側である。それゆえに、逃げ道は一つしかない。パチュリーはその場所を目指す兎兵に、容赦ない一撃を放つ
「火符・アグニシャイン」
 ごぅ、と言う音を伴いながら、無数の火炎が周囲から発生する。周囲の温度は一気に高まり、逆に兎兵たちは身を震わせる
「・・・! もっと急ぎなさい!」
 炎が兎兵へと迫る。が、それを完全に捕えるほんの少し前に、炎の勢いが急激に衰える。てゐはそれをチャンスと見るや、パチュリーに向かって弾幕を放つ
「エンシェントデューパー!」
「・・・! く・・・っ!」
 流石にこのままスペルを展開しては逃れられない。パチュリーはスペルを中断すると、回避に専念する。近くに居たメイド兵が避けきれずに被弾するのを見て、パチュリーはてゐを睨む
 しかし、時は既に遅い。既に彼女の部隊は離脱してしまっていた
「・・・そうか、酸素が足りなかったのね」
 狭い場所へと優先的に炎を発生させたため、その場所だけ酸素が一気に消失してしまったらしい。その結果、炎の勢いが衰えたのだ
「火符にしたのは失敗だったかしらね・・・。小悪魔」
 パチュリーは周囲の状況を見渡しながら小悪魔を呼ぶ。大した被害ではないらしく、倒れているメイド兵も見当たらない
「申し訳ありません! まさかここまで侵入を許すとは・・・」
 門の外は美鈴、内側は小悪魔に守らせていたのだが、まさか内側に這入られる事態は想定していなかった。その為、少数のメイド兵しか守りにつかせていない。そんな少数の部隊で、良くぞ持ちこたえてくれたと思うのだが・・・
「・・・引き続き警戒なさい」
 今は褒める時ではない、これまで以上に警戒が必要な時なのだ。すぐに増員を命じなければ。パチュリーは褒めること無く、防御の継続を小悪魔へと命じる
「はい!」
 小悪魔は命令を受けると被害を確認しに走る。本当に、危なかった。小悪魔の部隊がいなければ、間違いなくアウトである。パチュリーは今更のように危機感を取り戻す
「レミィは何をしてるのよ・・・」
 か細いつぶやきは、誰にも聞かれることなく消えていく。門の外では、尚も激しい戦いが続いていた


 ――破られたか
 レミリアは紅魔館での戦闘の気配を感じ取る。それは自らの能力と言うよりも、吸血鬼に備わった感覚である。本能と言ってもいいかもしれない
 足止めとは言え、長い間遊びすぎたかもしれない。レミリアは目の前で息を切らせている永琳に苛立ちを覚える。なにしろ、いくら被弾させようとも倒れる気配がないのだ。与えられているのは疲労だけだろう
「流石に飽きたな。私を傷ついた紅い魔と呼んだくらいなんだ。もう少し楽しませてくれてもいいんじゃないか?」
 不敵な笑みを浮かべて、レミリアが永琳へと問いかける。永琳は心の内で舌打ちをした
 ・・・思ったよりも早く、冷静になられてしまった
「残念だけど、私に出来ることはあなたを足止めする程度よ。特別な趣向は、あなたの部下たちにしか用意してないわ」
 肩で息をしながら永琳が答える。相手の弾幕を避けることにも限界が来ていた。不死と言うのがこんなにも辛いと認識したのは、いつ以来だろうか?
「なら私はそろそろ戻らせてもらうとするか。どうやら、状況はあまり良くないらしい」
 させないわよ。永琳がそう言うよりも早く、レミリアは行動を開始した。疲労と言う問題が、ここにきて大きく影響したらしい
「私を傷ついた紅と呼んだことを、後悔するんだな。全世界ナイトメア!」
 そのスペル宣言と共に、視界の全てを弾幕が埋める。それはもはや目眩ましというレベルではなかったが、その役割を果たすには十分すぎた
「く・・・っ!」
 不死である永琳に、被弾することへの恐怖などない。しかし、この弾幕は前へ進むことを完全に阻む
「やってくれる・・・!」
 永琳は自らも弾幕を展開することで、放たれた弾幕を相殺する。そのすべてが消えた頃には、レミリアの姿は遥か遠方へと消え去っていた。今からでは、とても追いつきはしないだろう
 だが――
「甘いわよ、お嬢さん」
 永琳は複数の矢を手に、握った弓を引き絞る。狙いは、そこを飛行しているであろうレミリア・スカーレット
 ここから紅魔館まで戻るならば、どういったコースを飛翔していくのか? その速度はどれくらいか? そう言ったすべての観点を、永琳は計算からはじき出す。彼女が成すであろう、最善の形を
「悪いけど、寝ていなさい!」
 一息に矢を全て放つ。背中を向けている今でなら、この矢をかわす術はないだろう
 しかし、その矢はレミリアに届くことはなかった。その全てが、一度に迎撃されたのである
 その瞬間を、永琳は確かに目撃した
 突如として出現した銀の刃が、矢を全て弾き飛ばす瞬間を
「・・・そう、悪魔の狗ね」
 その姿は見えないが、彼女の存在を永琳は認識する。どうやら、いつの間にか戦場へと復帰していたらしい
 永琳は無言で移動を開始する。まさか、レミリアの足止めに失敗してしまうとは。彼女の歯車は確実に狂ってしまった
 彼女にも、この戦いの結末がわからなくなっていた


「敵の思惑を外すと言うのは、存外に気分がいいものなのね・・・」
 心地よい倦怠感に包まれながら、十六夜咲夜はゆっくりと落下していく
 月夜に再び立ち上がった彼女は上空へと昇り、戦場への復帰を試みた。しかし、傷ついた体は移動することすらもままならない。このまま戦線復帰は出来ないかと思っていたその瞬間、その存在に気づいたのだ
 紅魔館へと向かうらしいレミリアと、それを狙うかのように放たれた無数の矢に
 傷ついた体に鞭を打ってみたが、時を操るのは一度が限界だったらしい。全ての矢を迎撃すると、途端に体が動かなくなった。結局、自分は戦線復帰出来なかったのだ
「それでも、私たちにはお嬢様がいらっしゃる・・・」
 レミリアを守ること。それが、自分に出来る最後の仕事だった。だが、それすらできずに終わるよりはよっぽどいい
 眼を閉じると、自分の意識が遠のくのを感じた
 後は、紅魔館の仲間たちに任せよう。たまには休んでも、罰は当たらない筈だわ
 そのまま意識を失うことを善しとしたその時であった
「全く、瀟洒な従者が聞いてあきれるわね」
 不意に、体が持ち上がる感覚に襲われる
「まぁ、あなたはよくやったわ。後は私に任せて、ゆっくりと休みなさい」
 誰だろうか? 私を支えているのは?
 薄れゆく意識の中、咲夜の口は言葉を紡ぐ
「――仰せのままに」
 最後まで、彼女は完全にして瀟洒な従者だった

「咲夜、あなた…」
 レミリアは咲夜を支えたまま、その眼を見張る。そして、無意識に発したであろうその言葉に、ゆっくりと頷いた
「任せなさい・・・」
 咲夜を支えていた腕をそっと放すと、蝙蝠を操り紅魔館へと咲夜を運ばせる
「助かったわよ、咲夜」
 弾かれた矢の奇跡を見た瞬間、レミリアは何が起こったのかをすべて理解していた。永琳の思惑と、咲夜による時の干渉を
 レミリアは紅魔館へと向き直ると、加速を再開した。その頭には、瀟洒な従者が発した言葉が残っていた


「――攻めきれない!」
 その叫び声に、周囲の兵はビクリと身を震わせる。その叫びに対してと言うこともあるが、何より彼女がここまで必死になっているのを、初めて見たからでもある
 そこは永遠亭軍の後方。帰還した因幡てゐによって作られた、臨時の本陣である
「攻めきれない・・・!」
 てゐはその事実を再認識すると、絶望にも似た感情を抱いた。状況を打開する要素が、一切見当たらないのである
 魔理沙は先ほどの特攻で大きく疲弊していた。その身には大した怪我を負いはしなかったが、膨大な魔力の酷使が原因である。ちらりとてゐはその場に横たわっている魔理沙に目をやる。魔理沙はよくやってくれた。実際、永遠亭軍は魔理沙による重力魔術の介助がなければ、今頃は壊滅である
「せめてメディスンでもいれば――」
 このような白兵戦になれば、メディスンの能力は大いに役立ったであろう。しかし、そのメディスンを永琳の下へと向かわせたのは、他ならぬてゐである
 魔理沙、メディスン、妖夢、鈴仙。今この場に居ないものが欲しくなる
 まさか攻めきれないとは思っていなかったのだ。ましてや、パチュリーの後方にもしっかりと部隊が用意されているとは
「味方は依然優勢で陣を展開しています」
 苛立った様子のてゐに、兎兵が現状を告げる。そう、状況はこちらが圧倒的に優勢だった
 しかし、だと言うのに攻めきれていないのだ。先ほどからいっこうに戦線が移動していない
 一押しが足りない――てゐが必死で頭を働かせるが、状況を覆せる要素は見当たらない
 彼女の、信じられない言葉を聞くまでは
「・・・私に任せろ」
 その言葉は、寝かされた状態の魔理沙から聞こえてきた。てゐは驚いて魔理沙を見る
「魔理沙あんた――そんな体で何をふざけたこと――」
 信じられなかった。何しろ、目の前の彼女は呼吸にすら苦痛を伴っている筈である
 だと言うのに、不敵な笑みを浮かべながら彼女は言った
「もう一度だけ言うぜ? 私に任せてくれ」
 ゆっくりと魔理沙は立ち上がる。その額には、異様なほどの汗が滲んでいた
「・・・馬鹿を言わないことね! 今のあんたはもう戦えるような体じゃないのよ!」
 てゐには信じられなかった。何がそこまで彼女を動かすのか。何がそこまで彼女を支えているのか
 当然の話だが、因幡てゐは最初から妖怪兎だったわけではない。もともとはただの兎である。妖怪兎となったのは、ひたすらに自分の体を大事にし、健康を追い求めた末に成り得た結果である。生き残るためになら、傷つかないためになら、あらゆる手段を尽くしてきた
 だから、目の前で傷つき、尚も傷つこうと言う魔理沙のことが、理解できなかった
 しかし、魔理沙は実に楽しそうに嘯いて見せる
「戦えはしなくても、突破口を開く役目くらいは受け持つさ。私はまだ、依頼を果たしちゃいないんだ」
 てゐは恐ろしくなった。目の前に立つ少女は、いかなる制止をも振り切るだろうと予測できたからだ。たとえその結果に、何が待とうとも
「あんた・・・死にたいの?」
 てゐは思わず口にする。周囲の兎兵たちは気まずそうに二人の様子を見ていた
「まさか、死にたいだなんて思ってやしないさ」
 魔理沙は完全に立ち上がると、てゐの頭の上にぽんと手を置いた
「知ってるだろう? 魔理沙さんは簡単に死んだりなんかしないのさ」
「魔理沙、あんた・・・」
 頭に乗せられた手が、小刻みに震えているのをてゐは敏感に感じ取った。しかし、それは弱々しい鼓動ではなく、どこか力強さを伝えてくる
 何が彼女を動かすのか。何が彼女を支えるのか。それはわからない。けれど、彼女ならば――
「・・・全員聞きなさい。私たちは今、敵軍を退けさせる決定打に欠けている」
 てゐが頭に乗せられた魔理沙の手をに握る。どちらにせよ、彼女に賭けるしかないのだ
「霧雨魔理沙を部隊長として、ここにいる全兎兵に対する指揮権を認めるわ。私たちは、全力で魔理沙を援護する」
 てゐの言葉に、魔理沙は驚く。プライドの高いてゐが、自分の下につくと宣言したからだ。しかし、周囲の兎兵の反応は違った。てゐの言葉を聞くと、兎兵たちは大きくうなずいて見せた。魔理沙はその事実にまたしても驚く
「てゐ・・・お前ら・・・」
 全く・・・。これだけ期待をかけられてちゃ、失敗なんか出来っこないぜ
「わかった、私に任せてくれ」
 魔理沙は、彼女たちの思いに自信を持って応える。自分にこの軍の明暗が掛った事実に、気合いを入れなおす
「これから先は部隊長である魔理沙の指揮に任せるわ」
 てゐは魔理沙の手を放すと、自らも兎兵たちの中に混ざる。指揮って、私は依頼を果たしに来たはずなんだがな。魔理沙は思わず苦笑する
 しかし、これでやりやすくなった
「じゃぁ・・・すまないがみんな、私の指示に従ってくれ」
 魔理沙の言葉に、てゐを含む兎兵たちがうなずいた。何故だろうか? 彼女の為になら、彼女の指示の下でなら、死力を尽くせる気がしてくるのは
 恐らく彼女は、自分たちを本気で救おうとしているのだ。そのことが、ひしひしと伝わってくる。伝えられずとも、伝わってくる
 だから、応えよう。彼女の思いに、行動で応えよう
「まずは、今敵軍と交戦中の部隊と合流、これを今ここに居る部隊と統合する。そして、徐々に敵軍と戦う兵を減らすように伝えてくれ」
 誰しもが魔理沙の言葉に注目していた。魔理沙は自らの作戦を彼女たちへと告げていく
「私はそれを上空から確認する。そして、頃合いが来たらお前たちに合図をする。それを確認したら、全員で一斉に後退してくれ。そこに私が、魔砲を放つ」
 魔理沙の言葉に、てゐが伝令を走らせる。どうやら、交戦中の部隊と連絡を取るらしい。その対応の早さに、魔理沙は舌を巻いた
「でも、魔砲を撃つような魔力、魔理沙さんに残ってるんですか?」
 兎兵の一人が不安げに質問する。事実、彼女の魔力はほとんど残っていなかった。先ほどまであれほど辛そうな様子だったのだ。不安になるのも無理はないだろう
「甘いな、魔理沙さんはそこまで呆けちゃいないぜ。実は、魔砲には魔力をほとんど必要としない」
 魔理沙はスカートの中から自慢のマジックアイテムを取り出す。それはミニ八卦炉と言う、箒と並んで彼女が愛用するマジックアイテムである
「こいつがあれば、少ない出力でもどでかい魔砲を放てるのさ」
 尤も――それでも一発が限度だろうけどな。魔理沙はそう自覚する
 つまり、外しちまえば二発目はない。一発っきりの大勝負ってわけか。私らしいと言えば、私らしいか
 魔理沙の言葉に安心したのか、兎兵たちは次の言葉を待つ。それに気づいた魔理沙は、慌てて次の指示を出した
「私が敵兵を一掃したら、後はお前たちに任せる。一気に門の内側まで突入してくれ」
 依頼された身だと言うのに、依頼主たちに頼らなければならないなんてな。魔理沙は自虐的な笑みを浮かべた
 私は、弱いな。魔理沙は己の中にある想いを再認識する
「・・・以上だ。今すぐに行動を開始してくれ。相手に感づかれたらまずいからな。私もすぐに上空へと向かう」
 てゐと合図に関することを打ち合わせなければ。魔理沙は秘めた思いをしまいこむと、てゐの姿を探す。しかし、その姿はどこにも見当たらない
「・・・? あいつ、どこに行ったんだ?」
 その声は不意に、真後ろから聞こえた
「しっかりしなさいよね」
「あ? なんだ、驚かすなよ。ちょうど話しておきたいことがあって・・・」
 てゐと話すために振り返ろうとするが、それは叶わなかった。何故なら、魔理沙は後ろから思いっきり蹴飛ばされたからである。危うく、顔を地面にぶつけるところだった
「ぶぉっ! 何すんだよいきなり・・・!」
 ぎりぎりセーフ。魔理沙は両手を地面につくと、てゐの方を振り返ろうとするが、それよりも先にてゐがきつい言葉を放つ
「あんたね、もっとシャキッとしなさいよ!」
「・・・・・・・・・」
「あんたが自分をどう受けとめていようと勝手だし、そんなのはこっちの知ったこっちゃないわよ」
「・・・そんなの、分かってるさ」
 私が弱いのは、私の責任だ
 それを誰かに押し付けるつもりは、ない
 それを誰かのせいにしているつもりは――ない
「でもね、私たちはあんたを頼るしかない。だから、あんたを信じて戦うわ」
「・・・・・・・・・」
 私は、弱い。魔理沙はその想いを再び脳裏に浮かべる
「だからあんたも私たちを、何よりも自分を信じなさい! あんたなら、私たちを救うことができるのよ」
「私は――」
 私は弱い。それは変えようのない事実だ
 だが――
「私は強くて格好良い魔理沙さんだぜ? 心配しなくても、お前たちを勝利に導いてやるさ」
 どんなに弱かろうが、何よりも自分を信じている
 私は私だ。何よりも、信頼できる存在じゃないか
 あぁ、そうさ。私が救ってやる。私が救ってみせるんだ
「ったく、世話が焼けるわね」
 呆れたようにてゐが言う。魔理沙の心に、迷いはなかった
「さぁ、作戦開始といくぜ!」


「止まりなさい、紅い悪魔。動けば撃つわ」
 レミリアは目前で構える人物を睨みつける。成るほど、少しもその身を竦ませないところを見ると、本気で言っているらしい。厄介な奴が現れたもんだ
「信じられんな。たかだか月の害獣の分際で、私の相手を勤めようと言うのか?」
 月の害獣、確かにレミリアはそう言った。そう、レミリアの目の前に居るのは、鈴仙・優曇華院・イナバの姿であった

「自惚れは身を滅ぼすわよ」
 まさか、師匠よりも先に悪魔に出くわしてしまうとは・・・私はつくづくついていない。鈴仙は心の中で毒づく
 気がついたら、湖の畔に寝かされていた。傷は大したことがなかったのか、体に異常はない。気を失ったのは、狂気の瞳を無理矢理に発動させたせいだったのだろう
 ならば、戦線復帰を試みるのは当然である。そして、その結果がこの状況である。この戦場で最も出くわしたくない相手と対峙している
 だが、私がここで止めなければ。今もなお戦い続けている仲間たちを思うと、退くことは許されなかった
 それに――私は、一人じゃない
「それに私は一人じゃないことを忘れないことね。今なお戦い続けている仲間がいる限り、私は最後まで戦って見せる」
 一人じゃなければ――何とかなる

「ふん・・・兎が何匹集まろうと一緒だ。それに、自惚れなんかじゃないさ。こいつは夜の王としての自覚だよ」
 一方のレミリアも内心は穏やかではなかった。とっととこいつを突破しなければならない。さっきから何か、嫌な予感がする。早くしなければ取り返しのつかないことになる様な、そんな気がしてならない
 大体、どうしてこいつはここに居るんだ? 咲夜と相討ちになったはずじゃないか・・・。しかし、当の咲夜もさっき意識を取り返したのだ。ならばこういった可能性も当然否定できないのか・・・
「夜の王(ノーライフ・キング)として、月を背負う者として、月の害獣などには負けられないな」
 何にせよ、まともには相手していられない。まともに戦えば、時間を無駄に消費するだけだ
「だから――とっとと抜けさせてもらう!」
 言うが早いか、レミリアはその羽を力の限り羽ばたかせる。目にも止まらぬ速さに、鈴仙はその場を一歩も動けなかった
 なんだ? まともに戦わなければ、それほど手間取るような相手じゃないのか。月のとはいえ、所詮は兎に過ぎないか。レミリアは大した役目を果たせなかった鈴仙を嘲笑った
「・・・とにかく、今は急ぐとしよう」
 その勢いを落とすことなく、レミリアは猛スピードで夜空を駆ける。しかし、意外な応酬がすぐ目の前から訪れた
「狂視・狂視調律イリュージョンシーカー
 眼前から奇妙な弾幕が襲いかかる。大した密度ではない筈だが、異様なほどに回避しづらい
「くっ・・・!? 紅符!不夜城レッド!」
 思わずスペルを宣言し、弾幕を相殺する。レミリアの目の前に広がっているのは、信じられない光景だった
「そんな・・・馬鹿な!」
 恐らく今の弾幕を放ったであろう人物を確認する。それこそが、レミリアを驚愕させた理由だった
「だから、動けば撃つと言った」
 間違いない。レミリアは混乱する
 何故なら、そこに存在しているのは、先ほど後方へと追いやった鈴仙なのだから――
「まさか、私より早く飛行するなんて有り得ない・・・」
 先回り、と言う可能性は有り得ない。ならば、何が今の状況を可能にする?
 そしてレミリアは、彼女の能力を思い出す
「やってくれたな・・・月の害獣が!」
 狂気を操る程度の能力――私はまんまとしてやられたと言うことか!
「そうよ、貴女は大急ぎでぐるりと私の所へ戻ってきたの。動いたのは私じゃなくて、貴女よ」
「随分と舐めた真似をしてくれる・・・」
 要は、目の前に居る月の兎を倒さなければいけないと言うことらしい。しかし、それならば話は早い。とっとと倒してしまえば良い
「一度でも私の邪魔をしたのなら、もはや手遅れだ。悲惨な様をさらすがいい!」
「幻朧月睨(ルナティックレッドアイズ)!」
 レミリアの言葉を受けて、鈴仙が弾幕を展開する。やはり、先ほどの弾幕と同じように避けづらい。どこか波長をいじられているのだろうか
 それでもレミリアは確実に鈴仙へと近づいていく。高速弾を展開しつつ、鈴仙の逃げ道をなくしていく
「紅符!ヴァンピリッシュナイト!」
 スペルを解放することで、鈴仙の弾幕を完全に無効化する。そして自らは加速を開始すると、直接鈴仙へと近づいていく。弾幕では手ごたえが分からない。直接この手で、息の根を止めてやる
「もらったぞ――!」
 レミリアが勝利を確信したその瞬間
 鈴仙の顔が、狂った笑みを浮かべた
 哂う、だと――?!

「だから、彼女は言った。自惚れは身を滅ぼすと」
「だから私は言ったのよ。私は、一人じゃないと」
 声はレミリアの前後から聞こえた。そして、無慈悲な宣言が彼女の耳に届く
「妄執・修羅の血」
 しまったと思う間もなく、彼女の体を斬撃が襲った
 そして、彼女は落下を開始したのであった

 言うまでもなく、レミリアを襲った斬撃の主は、冥界の剣士魂魄妖夢である
 メディスンと共に永琳の下へと向かっていた彼女は、途中で鈴仙と出くわした。鈴仙はメディスンの波長を感じ取り、その近くまでやってきたらしい。自分にならメディスンよりも正確に師匠の位置が分かると言う鈴仙の言葉に従い、妖夢は鈴仙と行動を開始した。その際、鈴仙の進言によりメディスンは紅魔館へと引き返すことになる
 そして、二人で飛行していると、鈴仙が敏感にその存在を感知した
「まずいわ――」
 こちらへと高速で飛行する、レミリア・スカーレットの存在である。相手が悪い、鈴仙は絶望を覚えかけていたが、妖夢の言葉に勝機を見出す
「私の姿を消す事が出来れば、或いは――」
 例え波長を弄り姿を消しても、レミリアほどの能力の持ち主ならば、その存在に勘付くことだろう。しかし元々、妖夢は鈴仙の能力を受けやすい体質である。それは永夜の異変の際にもわかっていることであった。そのため、妖夢はレミリアにすら気づかれないほどまでにその存在を隠す事が出来たのだ
 後は、タイミングを計るのみである。レミリアが最も油断するその瞬間を狙って、妖夢は一撃を繰り出す
 そして――紅い悪魔は永い夜に落下を開始した


「敵軍は徐々に撤退を開始しています。弾幕も薄れ、勢いがなくなりました」
「・・・凌いだ、と言うことかしら」
 パチュリーは伝令からの報告に思わず息をつく。何とか、苦しい状況は脱したようね。でもひょっとしたら、何か敵軍が仕掛けているのかもしれない。またしても、何かしらの策を講じようとしているのかも・・・
 いや、それは無いか。パチュリーはそう判断する
 敵軍に脅威となる存在が居ない。妖夢と魔理沙が戦線を離脱している今、こちらを崩壊させるだけの何かを敵軍は持ち得ていない筈だ
 それゆえの撤退なのだろう。こちらの軍を突き崩す、決定的な要因が欠けているからこその。それでも、引き続きの警戒は必要である。パチュリーはそう判断した
「危険な状態なのは変わらないわ。逃げる敵を無闇に追うような真似は避けなさい」
 逃げる敵を負うべきではない。彼女の判断は正しかっただろう
 しかし、認識が甘かった
 今まで敵の猛攻に耐え、辛い思いをしてきたメイド兵たちが、そう簡単に敵兵を逃がすだろうか? 命令に素直に従い、敵をあっさりと許すであろうか?
 答えは、言うまでもない。結果として、ほとんどの兵が敵を追いかけて前に出てしまった。恐らく、本人にすら無意識のままに
 自分たちが、無防備な様を晒しているとも、知らずに

「・・・頃合いだぜ」
 魔理沙は敵軍が前へと出てきたのを確認すると、地上近くに居るてゐへと合図を送った
「来たわね・・・全軍反転して最速で逃げるのよ!」
 常に魔理沙へと注目していたてゐは、その合図を見逃さなかった。魔理沙の存在を隠すために、なるべく地上近くで戦っていたのがここで役立つ。左右にのみ展開した味方へと、伝令は瞬く間に伝わった
「来たぞ! 全軍後退!」
「急げ急げ! 巻き込まれちゃたまったもんじゃないぞ!」
 それこそ脱兎の如く、永遠亭軍は撤退を開始する。てゐの指示により、伝令を一定の間隔で配置しておいたことも作用したのだろう。こうして、紅魔軍と永遠亭軍の間は一気に広がった

「な、なんだこいつら・・・!」
 急に背を向けて逃走を開始した兎兵たちに、メイド兵たちが戸惑う。いくらなんでも、ここまで無防備に敗走を開始するものなのか?
 今度は、それを追う者は居なかった。それほどまでに、その光景は異様だったのである。追撃と言う思考が浮かぶよりも早く、疑念が湧いた
 そして、上空からその音が聞こえてくる。ヴ―――ンと言う、異界への扉を開く独特の音。その音を初めて聞く者は眉を寄せ、以前に聞いたことのある者は顔を強張らせる
「まさか・・・これは!」
 門番たちが次々とその姿を探す。回避しようと言う思考には至らなかった。もはや、それが間に合う段階はとっくに過ぎているからだ。ならば、放たれるよりも先に撃墜するしか方法はない!
 しかし、それすらも間に合わない。地上の敵に気を取られていた彼女たちに、上空への意識は全くと言っていいほど欠けていた
 そして、届く。閃光を統べる者マスター・スパークの宣言が
「こいつは、とっておきだぜ・・・!」
 上空からの声に、誰もが空を見上げた。そして、口々に叫ぶ。中には、青ざめた顔をする者もいた
「白黒の魔法使い・・・!」
「霧雨魔理沙・・・っ!」
 慌てて下がろうとするメイド兵。撃ち落とさんとする門番たち。しかし、あまりにも遅すぎた
「魔砲ッ!ファイナルスパァ―――ァアクッ!!」
 抗いようのない閃光が、容赦なく降り注ぐ
 その光景を間近で見ている者がいたのなら、恐らく恐怖に身を震わせていただろう
 この時、紅魔館の周囲に存在していた門場及びメイド兵の数は、およそ120
 その内の半数が、この閃光を受けて倒れたのだから――

「今よ! 全軍腰の抜けた敵軍へ突撃を開始しなさい!」
 てゐの命令を受けて、兎兵たちが雄叫びと共に突撃を開始する。紅魔館を守る使命を負った者たちは、恐怖を必死で拭いながら、それを迎え撃つ
「パチュリー様・・・!」
 唯一の望みは、後ろに控えている魔女の存在だった。彼女たちは決死の覚悟で敵軍へと挑む
 しかし、もはやどちらに勢いがあるかは明らかだった

 もし、鈴仙と妖夢がレミリアを食い留めていなければ
 もし、パチュリーが妖夢の存在に気づいていれば
 もし、咲夜が戦線復帰を果たしていたのならば
 結末は、変わっていたのかもしれない
 状況は、変わっていたのかもしれない
 しかし、遂に

「門の内側に味方が到達しました!」
「遂に・・・! 全軍死力を尽くしなさい! 一気に押すのよ!」
 紅魔館は、敵の侵入を許したのだった


 何やら、騒がしい音がする・・・。早く、味方の援護につかなければ・・・
 紅美鈴はぼやけた頭で、味方の為に何をすればいいのかを考える
「早く・・・立ち上がらなければ・・・」
 うっすらと瞳を開く。しかし、その先には何も見えなかった
「貴女は、寝ていなさい。私に、任せておくのよ」
 声が真上から聞こえる。美鈴は思わず手を伸ばす
「貴女は倒れるまで戦った・・・。次は、私の番」
 ぎこちない。そう表現するしかない感じで、伸ばした手が握られる
 そこに込められた意志に、美鈴は無意識に涙を流していた
「私は・・・」
 あぁ、そうだ。私は門を守れなかったのだ。私は、私の敵に敗れたのだ
「美鈴・・・貴女・・・」
 そこで再び、紅美鈴は意識を失った

「パチュリー様! 敵がすぐそこまで・・・!」
 小悪魔が報告に走ってくる。私が美鈴の手を握っているのを見て、言葉を飲み込んだようだ
「・・・すぐに出るわ。味方の指揮は貴女が執りなさい」
「あ・・・はい!」
 小悪魔が慌てて戻っていく。守らなければ、紅魔館を。守らなければ、皆の想いを
「門を守る・・・。貴女はいつもこんな重圧に耐えていたのね」
 ぎゅっと、手を握りしめる。彼女の涙を、そっと拭った
「貴女の覚悟を、貰うわ」
 パチュリーは手を放すと、立ち上がる。敵を滅せんと、立ち上がる
 そこにいつもの彼女は居ない。そこに居るのは、誇り高き紅魔の魔女


 始まれば、必ず終わりは来る
 始めたならば、終わらせなければならない
 最期の時が、やってきた

To be continued?
まず最初に
 この章からちょっと筆が鈍りました
 プロットが無茶しすぎたんだと思います 詰め込みすぎた
 だから、なんかプロットをそのまま打ち込んでる様な感じに・・・
 明らかに前の章までとくらべてクオリティが下がってます なんてこったい

永琳の狙撃・咲夜の阻止
 ここは結構気に入ってますね 咲夜さん格好良いよ咲夜さん
 2章での悪役っぷりが嘘の様です って、悪役じゃないですけど
 レミリアも格好良く書けたんじゃないかなぁー、と
 さりげなく永琳にも結末がわからなくなっているので 結構重要な文章だったり

魔理沙、再び
 無茶しすぎたのはここです
 魔理沙自身も無茶しすぎてます
 じつはこの部分には、魔理沙の暗い部分も書いてたんですが・・・
 詰め込みすぎたと思ったので、ばっさりカット 歪なのはその為
 あんまり綺麗な形で魔理沙の再起を書けなかったので、悔しくて仕方ない
 だからといってごちゃごちゃ書くのも・・・くぅー・・・
 書きなおすなら、第一にここを書きなおしたいな
 書きなおさないけど

レミリア、墜つ
 うどみょん万歳 鈴仙と妖夢が大活躍です
 レミリアがこのまま紅魔館に行ったら、当然台無しですからね
 なんとか時間を稼ぐ必要があった その為に倒れてもらいました

最初は
 ここまでが6章でした
 しかし、あまりにも締まりが悪くなったので、急遽次章の分を追加
 結果的に6章の締まりと、次章の出だしがいい感じになった
 だけど、相対的に文章が増えてしまった・・・ やれやれ

ファイナルスパーク
 タイトルにもなってますね 魔理沙を出したからには、撃たせなきゃ
 元々、こんな強引な手を使うつもりはなかったんですが
 先述の通り、永遠亭に勢いがなくなりすぎてしまって
 結果、こんなことになってしまいました
「白黒の魔法使い・・・!」 こんなこと実際に言う奴なんか、居ないよね

美鈴の涙
 泣かせるシーン(嘘
 無くてもいいはずですが、あるのとないのとでは大違い そんな一幕です
 章の締めくくりには最高過ぎる
 密室に閉じこもった少女が、最期の戦いに赴く
 しかし・・・今にして思えばフランの存在がおざなりだなぁ
 紅魔館自体が狙われてる様な描写だよね まぁ、間違っちゃいないんだけど
DawN
http://plaza.rakuten.co.jp/DawnofeasterN/
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コメント



0.260簡易評価
7.無評価名前が無い程度の能力削除
レミリアに鈴仙の狂気の瞳がいい様に効き過ぎているといわざるを得ない
とてもじゃないが永琳と対等に渡り合ったレミリアが永琳よりも遥かに格下の鈴仙にヤラレルのが不自然すぎます
焦っていたにしても限度がある
これじゃ永琳の存在が何の意味もないただの道化にしか見えないじゃないか
ついでに咲夜と戦ったはずなのに鈴仙がほぼ無傷なのもおかしい
復帰させるにしても酷すぎるだろと
つまりは、これなんて最強の鈴仙?状態ですよ。ぶっちゃけ妖夢なしでも勝てたと言っても信じれるくらい強く描写しすぎてます
狂気の瞳を平然と三種類同時に使うとかありえんだろ・・・レミリア誘導・妖夢隠し・弾幕
狂気の瞳は一度に一種類しか使用できないと思うんですけど・・・
あとパチュリーがアグレッシブすぎる
パチェはいつ喘息で倒れるのかと思ってたら・・・バリバリ戦ってるし・・・
これはちょっと酷いです