メリーは夢を見ていた。
なぜ夢とわかるか? それは簡単だ。
見たこともない、鬱蒼とした夜の森を一人で歩いていたのだから。
(これは……また幻想郷に来ちゃった、ってことかしら?)
ねえ蓮子。そう言おうとしてメリーは自分が一人であることを思い出した。
心細い反面、メリーは少しだけ安心する。
蓮子はいつも遠足気分でいるけれど、この幻想郷は常に危険と隣り合わせなのだ。
だから“つい”その境を越えてしまう私に、彼女を巻き込まなくて良かった、と。
とはいえやはり一人は心細い。いつも隣にいた相棒の存在をメリーは何よりも必要としていた。
(蓮子ったら今頃寝てるに違いないわ……こっちの気も知らないで、まったくもう)
心の中で愚痴っても気は晴れなかった。少しだけ薄まった不安もすぐまた元通りになってしまう。次第に早くなっていく心臓の鼓動を感じながらメリーは夜道を急いだ。
先へ、先へ、先へ。
夜の森は危険だ。それはこの幻想郷ならなおさら。
いつかの竹林での記憶がさらにメリーを急かす。
またあんな妖怪に襲われたら今度こそ命はない。別の妖怪が助けてくれるなんて奇跡が二度も起こるとは思えなかった。
気づけばメリーは息を切らしながら走っていた。
何度か木の根に足を取られかけたものの、止まろうという気にはならなかった。足を止めたが最後、何かに追いつかれるような気がして、メリーは走り続けた。
しかしそれもすぐに限界がやってくる。
木の根に足を取られたメリーは転んでしまった。
何とか腕で顔は庇ったものの、足に鋭い痛みを感じた。捻ったのかもしれない。
それでも何とか体を起こしたその時、メリーは横合いの茂みから何かが飛び出してくるのを見た。
月明かりに照らされた、幽霊を思わせる青白い肌。が、息も荒く、歯を食いしばり血走った目で辺りを睨みつけるその様はまさに鬼女そのもの。
「ひっ……!」
思わず声を出してしまってからメリーは後悔した。じっとしていれば気づかれなかったかもしれないのにと。
が、誰しもこういう時に限って予想はよく当たるもの。
女はピタリと動きを止めると、ゆっくりとメリーへ向き直る。
「……見つけた」
そう言って女は笑う。そして目があった瞬間、メリーは心臓を鷲掴みにされたような恐怖を味わった。
あれは獲物を見つけた狩人の目。きっと私は生きたまま体を引き裂かれて、美味しくいただかれてしまうんだ。
そんな諦めにも似た感情が体を満たしていく中、メリーの頭を友人の顔がよぎる。
――宇佐美蓮子。
同じ大学に通う学生であり、メリーを秘封倶楽部に誘った張本人。
そしてちょっぴり寂しがり屋な困ったさん。時間にルーズでお金にもルーズ。だからしょっちゅうお金が無くて困っているの。今までに何度、彼女のピンチを救ってあげたかわからないわ。
◆
「……ってちょっと待ちなさいメリー」
「?」
アイスクリームの乗ったスプーンを口に入れたまま首を傾げるメリー。端から見れば可愛らしい仕草だが、向かいに座る蓮子は震える手で拳を握りしめていた。心なしかこめかみの辺りが引きつっているようにも見える。
「『?』じゃないわよ。確かに私はよく遅刻するけどお金は別問題」
「だって昨日お昼ご飯おごってあげたじゃない」
「それはアンタが夢の話する度に好き勝手に飲み食いして帰るからでしょうが! しかも支払い全部私に押しつけて!!」
鼻息も荒くバン、とテーブルを叩いて立ち上がる蓮子。
が、すぐに周りの視線に気づいたのだろう。蓮子はわずかに赤くなった顔を隠すように、俯いて腰を下ろした。
「えー。だって蓮子が「交換条件よ」って言ったんじゃない。「私だけ何もしないのはフェアじゃないわ」とか言って」
「だからって普通は遠慮とかするでしょうが。何なのこの前の「蓮子ごめんね。ちょっと食べ過ぎちゃった。はいお会計にまんさんぜんえん」って」
「だめ?」
「……もういいわ」
メリーの手元では、半分近く残っていたはずのチョコレートパフェがもう空になっている。今月は水を飲んで生き延びよう。蓮子は少しだけ泣いた。
「で、それからどうなったの?」
「ちょっと待って。えーとね、次はレアチーズケーキと紅茶のセッ……」
最後まで言い終わらないうちにメリーの手からメニューが消える。代わりに無理やり笑っているとしか思えない蓮子の顔があった。
「は、や、く、は、な、し、な、さ、い」
「わかったわよ。ええとね……」
◆
「まったく、貴方はこんなところで何をやっているんですか! ここは妖怪たちの住まう山、普通の人間がいていい所ではありません!」
じゃあそっちはどうなのよ。そう突っ込みたい衝動を堪えながら、メリーは巫女服を着た少女に説教されていた。
年の頃は自分と同じか、少し下くらい……妹に怒られるとこんな感じなんだろうか。メリーはついついそんなことを考えてしまった。
「貴方の存在に気づいたのが私だったから良かったようなものの、天狗たちに見つかろうものなら今頃……って聞いているんですか!」
「もちろん聞いてるわ。でも、私だってどうしてここにいるかわからないのよ」
真顔で答えるメリーの顔を覗き込むように見て、少女はぽんと手を叩いた。
「夢遊病?」
「違うわよ!」
半分は当たってるけど。
病人扱いされるのは癪だけど、理由を説明できないメリーはそれ以上何も言わなかった。
「……まあどちらにしても、貴方のような人間がここにいるべきではありません。……ちょっと待ってくださいね。今から貴方に災いを退ける術をかけますから」
そう言って少女は手で印を組み、目を閉じて何やら呟き始めた。
すると静かだった森に柔らかな風が吹き始め、それらは次第に集まってメリーの体を覆っていく。
しばらくして風が止むと、少女は目を開けた。どこか疲れたような顔をしている。顔色が悪いのは月明かりのせいだけではないらしい。
「終わりました。あとは……この先の……か…うっぷ………」
と、そこまで言って崩れ落ちるように倒れてしまう。
メリーが慌てて抱き起こすと少女は気を失っていた。
「……何かお酒臭い」
「そりゃそうよ。早苗は日が暮れる前から、私たちと一緒にずーっと飲んでたんだから」
声の方を向くと、そこには幼い少女が立っていた。目の付いた妙な帽子を被っている。近くに住んでいる子供だろうか?
(でも、ここは人間の棲む場所じゃないって……?)
「そんな状態で走り回った挙げ句に力まで使えば、気を失うのも無理ないわね。ホント真面目なんだから」
言いながら少女はてくてくと歩く。
ほんの一瞬、その姿が蛙に見えたような気がして、メリーは目を擦った。
「んじゃ、この娘はもらってくわね。……よいしょっと。む、また何か育ってる予感?」
少女は自分の倍近くある相手を背負って歩きだそうとして、「あ、そうだ」と振り返った。
「はいこれ」
そう言って差し出したのは、彼女が今まで被っていた帽子。二対の目に見つめられたメリーは自然とその帽子を受け取っていた。
「これを被っていれば妖怪に襲われることはないから。あとは私と反対方向に歩いていけば山を下りられるはずだよ」
じゃあね、と手を振って少女は暗闇の中へ消えていった。
◆
「それで、その後はどうなったの?」
「別に何も。女の子が言ったとおりに歩いてたら布団の中だったわ。で、枕元にはこれがあったの」
言いながらメリーは足下の大きな紙袋から一つの帽子を取り出した。
見れば二つの大きな目がくっついている。そこいらで売っていそうな物ではあったが、どこか歴史の重みを感じさせる妙な帽子だった。
「いやに大きな袋を持ってると思ったら、これを入れてたわけね」
「……えーと、蓮子。実は今回はもう一つあるのよ」
「何――うわひゃっ!?」
素っ頓狂な声を上げて転がる蓮子。
……ケロケロ。
メリーの手に乗っていた蛙は申し訳なさそうに頭を下げた……ように見えた。
「――どうなさいました、お客様?」
「あ、いえ……なんでもないです」
慌てて駆け寄ってきた店員に頭を下げて、蓮子は椅子に座り直した。
メリーの手の上では今もケロケロと蛙は鳴いている。が、店員も周りの客もそれを見ても何も言わなかった――というより、見えなかった、と言った方が正しいのかもしれない。
「この子ね、自分の姿を隠すことが出来るんだって」
そりゃそうだ。見えてたら今頃、二人して店からつまみ出されているに違いない。
「それで?」
「『自分は洩矢諏訪子様の眷属で、彼の方の命により、帽子の持ち主である貴方をお守りしているのです』って言うのよ」
「……それで?」
「どうしよう?」
やっぱりそうきたか。
立ち上がるとまた人目を引きそうなので、蓮子はテーブルに突っ伏した。
まあ、メリーの気持ちはわからないでもない。
ちょっと変わった力を持っているとはいえ、彼女だって普通の女の子なのだ。
四六時中蛙のボディーガードにつきまとわれれば困るに違いない。
そして蛙も、いつまでもこちら側に留まっているわけにもいかないのだろう。
帽子の持ち主を守っている、ということは、帽子を元の持ち主に返せば良いはずだ。
けれど一人で幻想郷に行くのは危険だし、蓮子としてもメリーが危ない目に遭うのを見過ごすわけにはいかない。
「わかったわ。秘封倶楽部の出番ってわけね?」
蓮子の言葉にメリーの顔がぱっと明るくなる。
「ありがとう、蓮子」
ケロケロ。
蛙もお礼を言っているような気がした。
何だかこそばゆい感じ。でも悪い気はしない。
――どういたしまして。それからこちらこそありがとう。
そんな思いを込めて、蓮子は微笑んだ。
なぜ夢とわかるか? それは簡単だ。
見たこともない、鬱蒼とした夜の森を一人で歩いていたのだから。
(これは……また幻想郷に来ちゃった、ってことかしら?)
ねえ蓮子。そう言おうとしてメリーは自分が一人であることを思い出した。
心細い反面、メリーは少しだけ安心する。
蓮子はいつも遠足気分でいるけれど、この幻想郷は常に危険と隣り合わせなのだ。
だから“つい”その境を越えてしまう私に、彼女を巻き込まなくて良かった、と。
とはいえやはり一人は心細い。いつも隣にいた相棒の存在をメリーは何よりも必要としていた。
(蓮子ったら今頃寝てるに違いないわ……こっちの気も知らないで、まったくもう)
心の中で愚痴っても気は晴れなかった。少しだけ薄まった不安もすぐまた元通りになってしまう。次第に早くなっていく心臓の鼓動を感じながらメリーは夜道を急いだ。
先へ、先へ、先へ。
夜の森は危険だ。それはこの幻想郷ならなおさら。
いつかの竹林での記憶がさらにメリーを急かす。
またあんな妖怪に襲われたら今度こそ命はない。別の妖怪が助けてくれるなんて奇跡が二度も起こるとは思えなかった。
気づけばメリーは息を切らしながら走っていた。
何度か木の根に足を取られかけたものの、止まろうという気にはならなかった。足を止めたが最後、何かに追いつかれるような気がして、メリーは走り続けた。
しかしそれもすぐに限界がやってくる。
木の根に足を取られたメリーは転んでしまった。
何とか腕で顔は庇ったものの、足に鋭い痛みを感じた。捻ったのかもしれない。
それでも何とか体を起こしたその時、メリーは横合いの茂みから何かが飛び出してくるのを見た。
月明かりに照らされた、幽霊を思わせる青白い肌。が、息も荒く、歯を食いしばり血走った目で辺りを睨みつけるその様はまさに鬼女そのもの。
「ひっ……!」
思わず声を出してしまってからメリーは後悔した。じっとしていれば気づかれなかったかもしれないのにと。
が、誰しもこういう時に限って予想はよく当たるもの。
女はピタリと動きを止めると、ゆっくりとメリーへ向き直る。
「……見つけた」
そう言って女は笑う。そして目があった瞬間、メリーは心臓を鷲掴みにされたような恐怖を味わった。
あれは獲物を見つけた狩人の目。きっと私は生きたまま体を引き裂かれて、美味しくいただかれてしまうんだ。
そんな諦めにも似た感情が体を満たしていく中、メリーの頭を友人の顔がよぎる。
――宇佐美蓮子。
同じ大学に通う学生であり、メリーを秘封倶楽部に誘った張本人。
そしてちょっぴり寂しがり屋な困ったさん。時間にルーズでお金にもルーズ。だからしょっちゅうお金が無くて困っているの。今までに何度、彼女のピンチを救ってあげたかわからないわ。
◆
「……ってちょっと待ちなさいメリー」
「?」
アイスクリームの乗ったスプーンを口に入れたまま首を傾げるメリー。端から見れば可愛らしい仕草だが、向かいに座る蓮子は震える手で拳を握りしめていた。心なしかこめかみの辺りが引きつっているようにも見える。
「『?』じゃないわよ。確かに私はよく遅刻するけどお金は別問題」
「だって昨日お昼ご飯おごってあげたじゃない」
「それはアンタが夢の話する度に好き勝手に飲み食いして帰るからでしょうが! しかも支払い全部私に押しつけて!!」
鼻息も荒くバン、とテーブルを叩いて立ち上がる蓮子。
が、すぐに周りの視線に気づいたのだろう。蓮子はわずかに赤くなった顔を隠すように、俯いて腰を下ろした。
「えー。だって蓮子が「交換条件よ」って言ったんじゃない。「私だけ何もしないのはフェアじゃないわ」とか言って」
「だからって普通は遠慮とかするでしょうが。何なのこの前の「蓮子ごめんね。ちょっと食べ過ぎちゃった。はいお会計にまんさんぜんえん」って」
「だめ?」
「……もういいわ」
メリーの手元では、半分近く残っていたはずのチョコレートパフェがもう空になっている。今月は水を飲んで生き延びよう。蓮子は少しだけ泣いた。
「で、それからどうなったの?」
「ちょっと待って。えーとね、次はレアチーズケーキと紅茶のセッ……」
最後まで言い終わらないうちにメリーの手からメニューが消える。代わりに無理やり笑っているとしか思えない蓮子の顔があった。
「は、や、く、は、な、し、な、さ、い」
「わかったわよ。ええとね……」
◆
「まったく、貴方はこんなところで何をやっているんですか! ここは妖怪たちの住まう山、普通の人間がいていい所ではありません!」
じゃあそっちはどうなのよ。そう突っ込みたい衝動を堪えながら、メリーは巫女服を着た少女に説教されていた。
年の頃は自分と同じか、少し下くらい……妹に怒られるとこんな感じなんだろうか。メリーはついついそんなことを考えてしまった。
「貴方の存在に気づいたのが私だったから良かったようなものの、天狗たちに見つかろうものなら今頃……って聞いているんですか!」
「もちろん聞いてるわ。でも、私だってどうしてここにいるかわからないのよ」
真顔で答えるメリーの顔を覗き込むように見て、少女はぽんと手を叩いた。
「夢遊病?」
「違うわよ!」
半分は当たってるけど。
病人扱いされるのは癪だけど、理由を説明できないメリーはそれ以上何も言わなかった。
「……まあどちらにしても、貴方のような人間がここにいるべきではありません。……ちょっと待ってくださいね。今から貴方に災いを退ける術をかけますから」
そう言って少女は手で印を組み、目を閉じて何やら呟き始めた。
すると静かだった森に柔らかな風が吹き始め、それらは次第に集まってメリーの体を覆っていく。
しばらくして風が止むと、少女は目を開けた。どこか疲れたような顔をしている。顔色が悪いのは月明かりのせいだけではないらしい。
「終わりました。あとは……この先の……か…うっぷ………」
と、そこまで言って崩れ落ちるように倒れてしまう。
メリーが慌てて抱き起こすと少女は気を失っていた。
「……何かお酒臭い」
「そりゃそうよ。早苗は日が暮れる前から、私たちと一緒にずーっと飲んでたんだから」
声の方を向くと、そこには幼い少女が立っていた。目の付いた妙な帽子を被っている。近くに住んでいる子供だろうか?
(でも、ここは人間の棲む場所じゃないって……?)
「そんな状態で走り回った挙げ句に力まで使えば、気を失うのも無理ないわね。ホント真面目なんだから」
言いながら少女はてくてくと歩く。
ほんの一瞬、その姿が蛙に見えたような気がして、メリーは目を擦った。
「んじゃ、この娘はもらってくわね。……よいしょっと。む、また何か育ってる予感?」
少女は自分の倍近くある相手を背負って歩きだそうとして、「あ、そうだ」と振り返った。
「はいこれ」
そう言って差し出したのは、彼女が今まで被っていた帽子。二対の目に見つめられたメリーは自然とその帽子を受け取っていた。
「これを被っていれば妖怪に襲われることはないから。あとは私と反対方向に歩いていけば山を下りられるはずだよ」
じゃあね、と手を振って少女は暗闇の中へ消えていった。
◆
「それで、その後はどうなったの?」
「別に何も。女の子が言ったとおりに歩いてたら布団の中だったわ。で、枕元にはこれがあったの」
言いながらメリーは足下の大きな紙袋から一つの帽子を取り出した。
見れば二つの大きな目がくっついている。そこいらで売っていそうな物ではあったが、どこか歴史の重みを感じさせる妙な帽子だった。
「いやに大きな袋を持ってると思ったら、これを入れてたわけね」
「……えーと、蓮子。実は今回はもう一つあるのよ」
「何――うわひゃっ!?」
素っ頓狂な声を上げて転がる蓮子。
……ケロケロ。
メリーの手に乗っていた蛙は申し訳なさそうに頭を下げた……ように見えた。
「――どうなさいました、お客様?」
「あ、いえ……なんでもないです」
慌てて駆け寄ってきた店員に頭を下げて、蓮子は椅子に座り直した。
メリーの手の上では今もケロケロと蛙は鳴いている。が、店員も周りの客もそれを見ても何も言わなかった――というより、見えなかった、と言った方が正しいのかもしれない。
「この子ね、自分の姿を隠すことが出来るんだって」
そりゃそうだ。見えてたら今頃、二人して店からつまみ出されているに違いない。
「それで?」
「『自分は洩矢諏訪子様の眷属で、彼の方の命により、帽子の持ち主である貴方をお守りしているのです』って言うのよ」
「……それで?」
「どうしよう?」
やっぱりそうきたか。
立ち上がるとまた人目を引きそうなので、蓮子はテーブルに突っ伏した。
まあ、メリーの気持ちはわからないでもない。
ちょっと変わった力を持っているとはいえ、彼女だって普通の女の子なのだ。
四六時中蛙のボディーガードにつきまとわれれば困るに違いない。
そして蛙も、いつまでもこちら側に留まっているわけにもいかないのだろう。
帽子の持ち主を守っている、ということは、帽子を元の持ち主に返せば良いはずだ。
けれど一人で幻想郷に行くのは危険だし、蓮子としてもメリーが危ない目に遭うのを見過ごすわけにはいかない。
「わかったわ。秘封倶楽部の出番ってわけね?」
蓮子の言葉にメリーの顔がぱっと明るくなる。
「ありがとう、蓮子」
ケロケロ。
蛙もお礼を言っているような気がした。
何だかこそばゆい感じ。でも悪い気はしない。
――どういたしまして。それからこちらこそありがとう。
そんな思いを込めて、蓮子は微笑んだ。
これからこの二人がどうなっていくか凄く気になります。
あの二人も良い味だしてました。
早苗と諏訪子の計らいが凄く良い!
宇佐見
半年かかってもいいから!
それとも値段が高いお店かな?