Coolier - 新生・東方創想話

星に願いを、貴方に夢を。

2008/06/23 02:29:49
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  「メリーは警戒心が無さ過ぎなのよ」

  「蓮子が警戒しすぎなのよ」

  「だってどう見ても怪しいでしょ」

  そう言って私、宇佐見蓮子は目の前の紙を指差す。

  「どこらへんが?」

  「全部」

  失礼ね、と言って私の相棒であるマエリベリー・ハーンは憤慨した。

  何故私達がこのような言い合いをしていると言うと、目の前においてある一枚の紙が問題であった。

  その紙にはこう書いてあった。








  『銀河鉄道乗車券』







  と。

  これをマエリベリー・ハーン(以降メリー)が持って来た経緯については本人が言うには

  ―― 夢で胡散臭そうな紫のドレスを着た人に渡されて、起きたら何故か持ったままだった

  らしい。しかも二人分貰ってきていた。

  どう考えても怪しいのでその審議をしている最中なのである。

  私は怪しいから捨てた方がいいと思ったのだが、本人が行ってみたいと譲らないのである。

  大体、嘘かもしれないじゃないか。とも言ったのだが

  「蓮子には夢が無いのね」

  と言われた。

  夢ならいっぱいある。結界の内側には行ってみたいし、ポッケに入れて叩くと財布の中身が二倍になったらいいな、と思っている。

  だが、これは…

  「銀河鉄道ってあれだよね?宮沢賢治とかで有名な」

  「きっとそうでしょうね」

  乗ったら最後帰ってこれないのではないだろうか…。

  「メリー」

  「なに?」

  「東北には銀河鉄道って名前がついた鉄道路線があるって知ってる…?」

  「やっぱり夢が無いわね、蓮子」

  二回目。

  「乗るとしても駅とかどこにあるの?」

  「裏に書いてあるわ」

  まじですか。乗車券の裏側を見る。

  『夜、外で乗車券を持って待っていて下さい、大体どこでも迎えに行きます。』

  大体ってなんだ大体って。

  「で、やっぱり待つの?」

  「だから呼び出したんじゃない」

  「はぁ…」

  思わずため息を吐く。

  「でも、乗ってみたくはあるでしょ?」

  「それは、まぁ…」

  十分怪しいが興味が無いわけじゃない。

  「それに…」

  「それに?」

  「結界関連かもしれないわよ?」

  「そうかもしれないけど…」

  ましてや夢から取ってきてるのだ、可能性は高いだろう。

  「それじゃ決まり!夕方に公園で待ち合わせよ、遅れたら承知しないからね?」

  「はいはい…」

  意見を言う前に決定されてしまった。



















  ―― 逢魔時 公園

  「メリー…」

  私は口が開いたまま閉じなかった。

  「なにかしら?蓮子」

  普通だ、と言わんばかりの返事にこめかみを押さえながら問う。

  「なんで旅行鞄持ってきてるの…?」

  メリーはベンチに座っていて、その横にはパンパンに膨れ上がった旅行鞄が置かれていた。

  「旅行行くからじゃないの?」

  「いや、でも……えぇー…」

  「蓮子はそんな荷物でいいの?」

  私が持って来たのはいつも倶楽部の活動に持ってきている物だけだ。

  「いいの」

  「いいの?」

  「うん、何か足りなかったら、メリーが貸してくれるでしょ」

  「まぁ、いいけど」

  いつまでも立っているのも辛いのでメリーの横に座る。

  「ところでいつ頃来るの?」

  「さぁ?」

  「さぁ、って…」

  「これを持っていればそのうち来るでしょ」

  メリーの手には例の乗車券。

  「そんなんでいいのか」

  「そんなんでいいのよ」

  まっすぐすぎる相棒に何度目か分からないため息を吐く。

  「あ!そうそう」

  「?」

  メリーが鞄をあさり出したので私はそれを見守る。

  「はい」

  メリーは青い缶を取り出して私に渡した。

  「銀河高原ビール…?」

  「もってきてみました~♪」

  「ゲン担ぎね」

  「ゲン担ぎよ」

  「…」

  「まぁ、気長に待ちましょう?」

  「そうね」

  全てを諦めて来るかわからない鉄道を待つことにした。















  「そうさーきーみーはーきづいーてーしまぁーったー」

  「…」

  あれから何時間経っただろうか。待ち人ならぬ待ち鉄道はまだ来ていない。
  
  まっすぐすぎる相棒は何を思ったか、歌を歌っている。

  「やすらぎーよりーもーすばらしーものーにー」

  「…」

  空を見上げる、曇ってはいない。むしろ雲一つない。そして自然と口にしてしまう。

  「00時03分33秒…」

  「また時報癖?」

  「悪かったわね…」

  「別にいいけどね。ちへいせんにーきえるひーとーみーにはー」

  3時間以上待っていたのだ、そろそろ言わないでいた事を言ってもいいと思う。

  「ねぇ、メリー」

  「もう、何?」

  「そろそろ諦めて帰らない?」

  「嫌よ」

  ため息を吐きながら、メリーの正面にまわる。

  「だけどこれ以上待ってたら風邪ひくわよ?」

  「嫌」

  「私はそろそろ帰りたかったりするのだけど?」

  「…」

  メリーは私を無言で睨みつけて来る。

  「…本当に帰らないの?」

  「…」

  メリーは無言で肯定する。

  「そう、じゃぁ私は「蓮子!」…なに?」

  「なに、じゃなくて後ろ!」

  ため息を吐きながら後ろを振り返る。

  「…嘘でしょ?」

  そこにはSLが止まっていた。乗客がいることもここから見える。

  思考回路がフリーズする私に対してメリーは目を輝かせて荷物を持ち立ち上がる。

  「蓮子、行くわよ」

  「…」

  「蓮子!」

  「はっはい!」

  私とメリーは荷物を持ち銀河鉄道であろう、それに近付いていく。

  すると車掌っぽい人(?)が車両内から出て来た。

  「…」

  「あなたが車掌さん?」

  車掌(仮)が頷く。頷くと言っても巨大な帽子とコートでまったく容姿がわからないのだが。

  「…」

  車掌は無言で手をこちらへ差し出す。手袋もしていた事がわかった。

  「あ、はい」

  メリーは夢で貰った乗車券を差し出す。

  「…」

  車掌は無言で改札鋏でそれに穴をあけて、また無言でメリーに返す。

  「…乗っていいの?」

  「…」

  そう、不安な声でメリーが尋ねると、車掌は無言で頷いた。

  「わ~い!」

  歓声をあげてメリーは車両内に入っていく。

  「はぁ…」

  急に子供になった友人にため息を吐きながら、車両内に入る。

















  車両内は外見通り木造だった、メリーは既に席に座っていた。

  またため息を吐きながらメリー横に座る。

  「まさか本当にくるとは…」

  「蓮子ったら信じてなかったの?」

  「少し…」

  「少し、ねぇ…」

  そんな話をしていると汽車が動き出した。

  「窓あけましょ?」

  私は頷く。

  走り出した汽車はあきらかに空中に敷かれたレールの上を走っていた。

  「重力とか以外にも色々無視してそうね」

  「そうね、でも重力とか言う蓮子はやっぱり夢が足りて無いと思うの」

  「…うるさい」

  意外と痛いところを突かれた恥ずかしさを紛らわす為に車窓の外を見ると星空が広がっていた。

  「すごい…」

  私は素直に感嘆の声をあげる。

  くすくすと笑ってるのが聞こえるので聞こえる方向を見るとメリーが笑っていた。

  「ね?きてよかったでしょ?」

  こういう時のメリーは卑怯だ。

  「…えぇ」

  私の答えを知ってて言うのだから。

  その後も景色を堪能した後、メリーが寝ぼけて二段ベッドから落ちた話や

  遅刻しそうで私がネクタイが首にそのまましていた話などの昔話をしていた。
















  「ん…」

  あぁ話疲れて寝てしまったらしい。我ながらまだまだ子供だ。

  後頭部にやわらかい感触がするのでさわってみる。ふにふにした感触とすべすべ布の感触が心地いい。

  「蓮子にはそんな趣味があったのね?」

  聞こえた声で一気に意識が覚醒する。

  「メリー?」

  「えぇ、そうよ」

  寝てる間中メリーに膝枕にしてもらっていたらしい。恥ずかしい。

  「や」

  聞きなれない声がしたので起きて聞こえた方向を見ると金髪の女性がいた。

  「…いつからみてました?」

  「膝枕の途中あたりから?」

  恥ずかしい。穴があったら入りたい。

  「起きぬけで悪いけど車掌から話があるそうだよ。伝えたから私は戻るよ」

  金髪の女性はそう言って奥の車両に行ってしまった。よくみると金色の尻尾があった。

  しばらくするとあの巨大な帽子とコートの車掌がやってきた。

  「「…」」

  「…」

  車掌は無言で車窓の外を指さした。

  「私の…家…?」

  車窓の外を見てみると見慣れた我が家があった。

  「んー…?」

  「…あ!」

  私が相変わらず無言な車掌の難解なメッセージに悩んでいると、メリーが声を上げた

  「降りろ…ってこと?」

  「…」

  車掌は無言で頷いた。

  「そう…」

  「メリー…」

  メリーの声から察するに降りたくは無いのだろう。

  「車掌さんが言うなら仕方ないわね」

  「そうね…」

  「さ、蓮子。降りましょ?」

  メリーはそう言って荷物を持って立ち上がった。

  「えぇ」

  私も荷物を持って、先に行ってしまっているメリーを追う。

  出口の前に行くと車掌が立ちふさがっていた。

  「「?」」

  「…」

  私達は車掌の行動の意味がわからなかった。

  悩んでいる私たちを前に車掌は手袋を外してそれを片方づつ私達に渡した。

  手を見るに車掌は女性らしかった。

  「…お土産?」

  「…」

  車掌は無言で頷いて、出口からどいた。私達はありがとうございました、と礼を言って汽車から降りる。

  私達を降ろしてすぐに汽車は発車した。

  車掌が手を振ってきたので、私達は降り返した。

  最後に街の明かりで一瞬見えた車掌の顔はメリーにそっくりだった。

  「メリー…」

  「なに?蓮子」

  「見えてなかったの?」

  「なにが?」

  見えて無いならそれでいい、と思ったので誤魔化す。

  「なんでもない」

  「変な蓮子」














  私達は、車両内から見た星空を思い出しながら、しばらくその場で話をしていた。

  「また乗れるといいわね」

  「乗れるわよ」

  断言するメリーに私が尋ねる。

  「どうして?」

  「私が呼ぶから」

  彼女は楽しそうに言った。

  「そう、私にも呼べるかしらね?」

  「蓮子は夢がないからきっとだめね」

  「…今度見つけておくわ」

  「期待してるわよ?」

  「任せなさい」

  胸を叩きながら言う。

  メリーは笑っていた。











  汽車は今夜もどこかへ走る。幻想の世界を目指して。
 銀河鉄道にのりたいな。どうもルーインです。いつも全力で書いてます。
 キャラの性格などがおかしかったりするのは私の修行不足です。ごめんなさい。
 関係ないかもしれませんが 「ゆかり」 という電車があるそうですね。

 銀河鉄道は今夜も走る。幻想の者たちを乗せて。
ルーイン
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コメント



0.270簡易評価
1.90名前が無い程度の能力削除
胡散臭い車掌に秘封というお馴染みのお話。素敵です。
でもごめんなさい、最初車掌ってアレかと思った
中身が一見がらんどうのあの人w
3.80煉獄削除
車掌って紫様だったんですか。 しかも言伝は藍ですか。
なんとも摩訶不思議な秘封倶楽部のお話でした。
素敵な話でしたよ。

あ、これって紫側のお話しとかってないですよね?
ちょっと気になりました。
4.80名前が無い程度の能力削除
むう、連作クラスの物語が始まるかと思ってしまった
6.80名前が無い程度の能力削除
ジョバンニとカムパネルラに喩えると、どっちがどっちかなぁ
どっちがどっちでも合う気がするけど
ぜひ、次の乗車時の話を!
9.90名前が無い程度の能力削除
サラッと読めてでも心がホワっと作品ですね
秘封の2人はやっぱいいなぁ