「あいつら… またこんなに散らかして…」
私の名前は博麗 霊夢。この神社の素敵な巫女さんだ。
今日も今日とて人妖入り乱れる大宴会がここ博麗神社で催された。
宴会というからには私も参加するし、楽しみではあるのだが…
「どうも片づけてから帰るって考えがないみたいね…」
今や宴会は終わって、みなそれぞれの住家に帰り、私は一人境内の掃除に駆り出された。
楽しいし、ご飯もおいしいから私も宴会は大好きなのだが、こればっかりは面倒だ。
これまで、あいつらが自主的に掃除したことがあっただろうか? いや、ない。
それもそうだろう、宴会が終わるころには、みんな酔っ払っているのだから、掃除まで頭が回るはずもない。
私の知り合いは基本的には全員自己中で、自分が楽しければそれでいいのだ。
…まぁ、私も似たような考えではいるんだけどね。
「ぶつくさ言ってても始まらないか。 掃除しよ」
時刻はもう真夜中ではあるが、さすがにこの状況を無視して眠れるほど私はいい加減ではない。
こんなに散らかっていては、神様だって心が休まらないというものだ。
私だってこのまま放っておくのは気分が悪い。 少し眠いが我慢するしかない。
「でもまぁ、今回も楽しかったわね」
いつも通り魔理沙が騒いで、アリスとパチュリーがそれに巻き込まれたりしてた。
プリズムリバー姉妹の演奏に合わせてミスティアが歌ったのも、宴会の彩りの一つだ。
幽々子がその歌声に反応して、彼女を追い回した時など場が盛り上がったものだ。
そうそう、諏訪子とチルノが喧嘩したんだ。 低レベルだったけど、見てて愉快だった。
思い返せば思い返すほど、楽しかった記憶が甦る。
自然と口元が緩むのも仕方のないことだろう。
「思えば、この神社にもいろんな奴が来るようになったわね…
誰一人としてお賽銭入れていかないけど」
昔は神社に来るといえば魔理沙くらいなものだった。
それが、数々の異変を解決するうちに、いろんな奴らと関わりを持つようになった。
みんな、話をしてみると割と気のいい連中ばっかりだった。
今日みたいに宴会があれば、一緒になって騒いでくれる、楽しい連中だ。
本当に騒がしくなったものだ。
「昔は静かだったわね…
こんな風に宴会が開かれるなんてなかったし」
異変を解決するのはしんどかったけれど、今日みたいにバカ騒ぎできるんだったら、それもまた良し、と思える。
静かなのは好きだけど、騒がしいのだって好きなのだ。
なにより、大勢いるとそれだけで楽しくなる。
昔と比べると、この神社も本当に様変わりしたものだ。
「でも… どれだけ関わりが増えても、誰も掃除しないこの現実…
どうして幻想郷の住人ってのはこうなのかしら?」
良識人はもちろんいるにはいる。
しかし、こと宴会の場となると真っ先に潰されるのだ。 早苗なんかがいい例だろう。
ああいった性格が、非常に加虐心をそそるというのは、正直わからなくはない。
いじめてオーラが滲み出てるような気がするのだ。
とりあえず合掌。
「同情するわ… 損な星のもとに生まれたのね。
早いとこ幻想郷に慣れることを祈るわ」
そういえば、今日だって潰されていた。 …なんというか、哀れだ。
そうして、神奈子と諏訪子に支えられて帰っていった。
あの三人だけじゃない。
もうみんな帰った。
私は今、この神社で一人だ。
みんな帰る場所がある。
だから宴会が終わればいなくなるのは当然だ。
もちろん、私だってこの神社が帰る場所だ。
みんな帰る場所があって、そこには必ず誰かが傍にいる。
「どれだけ繋がりが増えても、どれだけ騒がしくなっても…
私は結局一人…かぁ」
この神社には私だけ。 だけどみんなは違う。
魔理沙にはアリスがいて、レミリアには紅魔館のみんなが傍にいる。幽々子には妖夢が付き従っているし、紫にだって式たちがついている。あの輝夜だって、永琳に因幡たちと暮らしている。妹紅には慧音という親友、早苗には神奈子と諏訪子という家族がいる。
みんなそれぞれ、傍に誰かいる。
だけど、私は違う。
私は一人で、孤独だ。
大勢と知り合い、みんなが集まるからこそ、私が浮き彫りになる。
私一人が、みんなと違う。
そんな思いが頭をめぐり、思わず上を向く。
空にはまんまるお月さま。
「私は博麗の巫女だ… それがどうした…
弱音を吐くんじゃない霊夢。 私は大丈夫、これからもこれが普通なんだ…」
月明かりが目に少し痛い。
でも、こんな思いを少しでも紛らせてくれる。
大丈夫、私は大丈夫。
一人はもう慣れた。
だから、こんなことで涙なんて見せてはいけない。
私はこうやって生きてきた。
だから、こうして生きるんだ。
「相変わらず無理しちゃってるわね、霊夢」
ふと、そんな声が後ろから聞こえた。
声だけで誰かわかったから振り返るまでもないし、まして振り返れない。
こんな無様な姿を誰かに見せるなんてできない。
特に…
「紫…」
こんな奴には絶対に、見せられない。
だから私は上を向いたまま、振り返らずに返事をするのだ。
「何しに、来たの…?」
「別に~。 忘れものしちゃっただけよ」
なんて見え透いた嘘。
こいつはいつだってそうだ。
いつだって人を食った話し方をする。
それに、いつだって会いたくない時に来る。
まるで私の心を見透かしているようで、それが腹立たしくて、悲しかった。
「そう… だったらさっさと見つけて早く帰りなさい」
やっぱり私はそのままの姿勢で、少し強めに返事をしてやる。
今、こいつの相手をしたくない。
「そうね。 そうさせてもらうわ。
でも、忘れものはもう見つかってるのよ」
こんな話し方をするこいつは大嫌いだ。
だからこいつの相手はしたくないのだ。
「そう… だったら早く帰りなさい」
私はこいつが心底嫌いだ。
だって…
「寂しくて泣いてる子供を、放っておけないわ」
こんなことを、言うのだから…
「泣いてなんか…いない」
こいつの態度が腹立たしいから、精一杯強がって見せる。
それでも、私の心を見透かすこいつには通用しないのだろう。
やっぱり私はこいつが嫌いだ。
「はいはい」
声が近くなった。
それと同時に柔らかな感触が私を包む。
背中から抱きしめられたようだ。
「何…してんのよ…?」
「子供をあやしているのよ」
くそぅ… 何なんだこいつは…
どうしてこんなことをする?
こいつの行動はいつだって理解できない。
こいつの行動はいつだって私を混乱させる。
もう頭の中はぐちゃぐちゃだ。
こいつのせいでこんなにかき乱されてしまう。
だから…
「あんたなんか… きらいよぉ…」
「はいはい」
だからこいつの相手はしたくなかったのだ。
心に沁みつつも可愛さのある良い作品をありがとうございます。
ヤバい!! 砂吐いちゃうくらいゲロ甘ゆかれいむだ!!!!!
霊夢とって「いてほしくない時」ってのは自分が弱ってるときなのね
なんてツンデれいむw
このゆかりんは一生れいむを囲ってて下さい!!
大成功です。
>6
そうだぞー。 ツンデレイムー。
>9
そんな… 恐れ多いですよ。
>10
ほら… あなたの後ろに…
>16
私も書いてて、甘くて甘くて…
>22
あざーっす!
>23
ん~… 構想はないのですが…
やるとしたらプチですね
>24
おそまつさまです!
いい話だったんだけどなぁ
上品な甘味でした。ご馳走様。
いいですね。
改行と短いセリフからなのでしょうが、短歌のように詠っている風にも感じ取れました。
ごめんなさい 修正しました
それでもいい話だったと言っていただき、ありがとうございます。
>34
あとがき修正前は上品もへったくれもなかったのですが…
楽しんで頂けたようで安心しました。 お粗末さまです。
>38
心に残して頂けたのなら幸いです
あと、同じ単語を繰り返し使うということもやってみました。
なので、読者様次第では多少しつこいと感じる部分があるかもしれません。
とにかくリズムに気を遣いました。
でも孤独っぷりでいえば萃香も負けてないよね
れいむがツンで可愛くてゆかりんがあったかいですね
文章のリズムとっても良かったです
萃香にも「いっしょに怒られてあげる」って言ってくれるゆかりんや、鬼の友達がいるから孤独じゃないさ
あれ? 次回作の構想、読まれちゃいましたか?
ともあれ、ありがとうございます!
>50
あまーいですよねぇ。
そうです、萃香はきっともう孤独じゃありません!
帰る場所は違っても、れいむはみんなと繋がってるから大丈夫さ
楽しませてもらいました♪