ぼんやりする意識の中で、私は昔を思いだしていた。
あれは、今この季節のように過ごしやすい冬だったと思う。
あの頃の私は、何の意思もなく彷徨い、ただただ日々を徒労するだけの生活だったと記憶にある。
どうしようもなく孤独で、寂しくて。
どうして私のような存在があるんだろうって、毎日考えてた。
私には、寒気を操る能力があった。
妖怪だからそりゃ、何かしらの力を持っているだろう。
でも、こんな力があっても意味がないってずっと思ってた。
寒くする力なんて、みんなに迷惑かけるだけって知っていたから。
きっとそのせいで、自分には友達もいないってずっと思ってた。
でも、でもね、私の日々は変わった。
そう、それは今のように頭が重く、ぼんやりしている日だったと思う。
冬なのに体も頭も重くて、ぼんやりして、ふらふらしていて。
でも、頼れる人も存在もなくて、居る場所もなくて・・・。
ちょうど、霧のかかった湖の湖畔を歩いてる時だったっけな。
女の子の声が聞こえたんだ。
「アイシクルフォール!!」
そう、女の子の声と同時に氷の粒も飛んできたんだった。
今思い返すと少しおかしいんだけど、あの時の私はただただ攻撃されただけだと思ったんだよね。
冷静に考えてみると、氷の粒の弾幕も隙だらけで全く当てようとしてなかったんだよね?
でも、その時の私にそんな判断力はなくて、反撃しなきゃって必死だった気がする。
氷の粒が飛んできた方向、つまり声のした方向を急いで振り向いた。
目の前に居たのは、なんと妖精だった。
妖精が何かしら自然の力を使って攻撃してくるとは思わなかったのだ。
「…あなた、妖精よね?」
思わず質問してしまう。
妖精が妖怪に対して攻撃する事なども滅多にないので、頭ではわかっていつつも疑問に思ってしまったのだ。
するとその妖精は、思いもよらない答えを返してきた。
「違うね、あたいはさいきょうのようせいだよ!!」
また氷の粒が私の元に飛んでくる。
こっちが温厚に出ているのに、とイラっときてしまう。
それに頭もふらふらで、まともな判断が出来ていない状態だったと思う。
普段ならこれくらいの事は堪えられるのだろうけど、その時は違った。
「いつまでも下手に出てるとは思わないでよ、フラワーウィザラウェイ!」
「そうこなきゃ!アイシクルフォール!」
私は寒気を纏った氷の礫で応戦する。
その妖精の少女もよしきた、と言わんばかりの顔で弾幕を少しだけ濃くしてくる。
きっとそれが妖精の力の限界なのだろう。
私は少し良い気になり、更に弾幕をばら撒く。
目の前の妖精に向かって氷の礫が降り注いだ。
みるみるうちに、氷の礫が重なり山となっていく。
少しやり過ぎたかもしれない…。
「…あなた、大丈夫?」
返事がない。
相手がいくら妖精で、向こうから仕掛けてきたとはいえこれでは後味が悪いではないか。
妖精が妖怪に勝ち目がないのは初めから目に見えていた。
一瞬で勝負がついてしまう事も、最初からわかっていたはずなのに。
つくづく、自分という存在がわからなくなる。
こうやって、何かを傷つけたりする事くらいしか出来ないのだろうか。
「へへ、油断大敵!!パーフェクトフリーズ!!」
「え!?」
後ろから急に声が聞こえ、振り向くとたくさんの氷の塊が空中に止まっていた。
まさかそんな、妖精がこんな事出来るなんて・・・。
って、考えてる場合じゃないと気付いた時にはその声の主が指を鳴らしていた。
瞬間、止まっていた氷は動き出し私にぶつかる。
痛みはそんなにないが、冷め始めていた私の頭が熱くなるのを感じた。
あれ、頭・・・?
そういえば私、いつから頭が軽くなったんだろう。
「やっと気付いたか?」
「え…、あなたいったい何を…」
頭がはてなマークだらけの私に軽く笑いながら、彼女は告げる。
「あんた、冬の妖怪でしょ?それなのに今年の冬は妙に暖かいし、おかしいと思ってたのさ。
冬の妖怪なんだからそれらしく、力を使わないといけないじゃんか」
「だって…、使わなければ私の能力だって無くなると思ってたから…」
「あたいが言うのもなんだけど、あんたばかでしょ。
自分の象徴の力セーブなんてしたら、パンクしちまうって」
「そうなんだ・・・、じゃあもしかしてその事に感づいて私に攻撃を?」
「少し力は違うけど氷と寒気っていう冷たい仲間のよしみって事でな。
普通に話すのも良かったんだけど、良い言葉浮かばなかったから」
ほら、あたしって直感で動くのよ!と言いながら笑って親指を立ててくる。
私も、笑いながらその女の子に向かって親指を立てる。
その日から私は、その子と毎日のように会い、話すようになった。
冬って、必ずなければならない季節だという事。
寒さが好きな妖怪や存在もある事。
いっぱいいっぱい、私の存在価値を教わった。
それを教えてくれた、女の子の名前。
「チルノ」
私は気付くと、自分の小屋のベッドの上に居た。
頭は重く、頭痛がするが何かひんやりしたものが額にのっていて気持ちが良い。
額の上には、女の子の手がのっていた。
「チルノ」
先ほどと同じ名前を口にする。
そうだ、柄にもなく熱を出して、チルノが来てくれたんだったね。
私が名前を呼んだのに気付くと、チルノは額から手をのけて、自分の額をくっつけてくる。
「おはよう、レティ。まだ熱下がらないのね」
「うん、迷惑かけちゃってごめんね?」
「いいってことよ、長い付き合いだし」
親指を立てて笑うチルノに、私は力づけられる。
ずっとずっと、一緒にいようね、チルノ。
心の中で囁き、私は笑い返した。
そんな冬の一日でした。
あれは、今この季節のように過ごしやすい冬だったと思う。
あの頃の私は、何の意思もなく彷徨い、ただただ日々を徒労するだけの生活だったと記憶にある。
どうしようもなく孤独で、寂しくて。
どうして私のような存在があるんだろうって、毎日考えてた。
私には、寒気を操る能力があった。
妖怪だからそりゃ、何かしらの力を持っているだろう。
でも、こんな力があっても意味がないってずっと思ってた。
寒くする力なんて、みんなに迷惑かけるだけって知っていたから。
きっとそのせいで、自分には友達もいないってずっと思ってた。
でも、でもね、私の日々は変わった。
そう、それは今のように頭が重く、ぼんやりしている日だったと思う。
冬なのに体も頭も重くて、ぼんやりして、ふらふらしていて。
でも、頼れる人も存在もなくて、居る場所もなくて・・・。
ちょうど、霧のかかった湖の湖畔を歩いてる時だったっけな。
女の子の声が聞こえたんだ。
「アイシクルフォール!!」
そう、女の子の声と同時に氷の粒も飛んできたんだった。
今思い返すと少しおかしいんだけど、あの時の私はただただ攻撃されただけだと思ったんだよね。
冷静に考えてみると、氷の粒の弾幕も隙だらけで全く当てようとしてなかったんだよね?
でも、その時の私にそんな判断力はなくて、反撃しなきゃって必死だった気がする。
氷の粒が飛んできた方向、つまり声のした方向を急いで振り向いた。
目の前に居たのは、なんと妖精だった。
妖精が何かしら自然の力を使って攻撃してくるとは思わなかったのだ。
「…あなた、妖精よね?」
思わず質問してしまう。
妖精が妖怪に対して攻撃する事なども滅多にないので、頭ではわかっていつつも疑問に思ってしまったのだ。
するとその妖精は、思いもよらない答えを返してきた。
「違うね、あたいはさいきょうのようせいだよ!!」
また氷の粒が私の元に飛んでくる。
こっちが温厚に出ているのに、とイラっときてしまう。
それに頭もふらふらで、まともな判断が出来ていない状態だったと思う。
普段ならこれくらいの事は堪えられるのだろうけど、その時は違った。
「いつまでも下手に出てるとは思わないでよ、フラワーウィザラウェイ!」
「そうこなきゃ!アイシクルフォール!」
私は寒気を纏った氷の礫で応戦する。
その妖精の少女もよしきた、と言わんばかりの顔で弾幕を少しだけ濃くしてくる。
きっとそれが妖精の力の限界なのだろう。
私は少し良い気になり、更に弾幕をばら撒く。
目の前の妖精に向かって氷の礫が降り注いだ。
みるみるうちに、氷の礫が重なり山となっていく。
少しやり過ぎたかもしれない…。
「…あなた、大丈夫?」
返事がない。
相手がいくら妖精で、向こうから仕掛けてきたとはいえこれでは後味が悪いではないか。
妖精が妖怪に勝ち目がないのは初めから目に見えていた。
一瞬で勝負がついてしまう事も、最初からわかっていたはずなのに。
つくづく、自分という存在がわからなくなる。
こうやって、何かを傷つけたりする事くらいしか出来ないのだろうか。
「へへ、油断大敵!!パーフェクトフリーズ!!」
「え!?」
後ろから急に声が聞こえ、振り向くとたくさんの氷の塊が空中に止まっていた。
まさかそんな、妖精がこんな事出来るなんて・・・。
って、考えてる場合じゃないと気付いた時にはその声の主が指を鳴らしていた。
瞬間、止まっていた氷は動き出し私にぶつかる。
痛みはそんなにないが、冷め始めていた私の頭が熱くなるのを感じた。
あれ、頭・・・?
そういえば私、いつから頭が軽くなったんだろう。
「やっと気付いたか?」
「え…、あなたいったい何を…」
頭がはてなマークだらけの私に軽く笑いながら、彼女は告げる。
「あんた、冬の妖怪でしょ?それなのに今年の冬は妙に暖かいし、おかしいと思ってたのさ。
冬の妖怪なんだからそれらしく、力を使わないといけないじゃんか」
「だって…、使わなければ私の能力だって無くなると思ってたから…」
「あたいが言うのもなんだけど、あんたばかでしょ。
自分の象徴の力セーブなんてしたら、パンクしちまうって」
「そうなんだ・・・、じゃあもしかしてその事に感づいて私に攻撃を?」
「少し力は違うけど氷と寒気っていう冷たい仲間のよしみって事でな。
普通に話すのも良かったんだけど、良い言葉浮かばなかったから」
ほら、あたしって直感で動くのよ!と言いながら笑って親指を立ててくる。
私も、笑いながらその女の子に向かって親指を立てる。
その日から私は、その子と毎日のように会い、話すようになった。
冬って、必ずなければならない季節だという事。
寒さが好きな妖怪や存在もある事。
いっぱいいっぱい、私の存在価値を教わった。
それを教えてくれた、女の子の名前。
「チルノ」
私は気付くと、自分の小屋のベッドの上に居た。
頭は重く、頭痛がするが何かひんやりしたものが額にのっていて気持ちが良い。
額の上には、女の子の手がのっていた。
「チルノ」
先ほどと同じ名前を口にする。
そうだ、柄にもなく熱を出して、チルノが来てくれたんだったね。
私が名前を呼んだのに気付くと、チルノは額から手をのけて、自分の額をくっつけてくる。
「おはよう、レティ。まだ熱下がらないのね」
「うん、迷惑かけちゃってごめんね?」
「いいってことよ、長い付き合いだし」
親指を立てて笑うチルノに、私は力づけられる。
ずっとずっと、一緒にいようね、チルノ。
心の中で囁き、私は笑い返した。
そんな冬の一日でした。
時期を外しているのが個人的に凄い好きです。
一人称が凄い上手ですね。羨ましいです。
色々言いたいんですけれど、良い作品をありがとうございました。
このチルノはかっこよすぎる、大好きだわ
とても綺麗なお話でした。
次回も期待しています。
テンポもいい感じで、サクサク読めました。
うん、チルノはやっぱりこうでなくっちゃね。