*微量に緋想天分を含みますが、地霊殿分は含まれておりません。
基本的に頭カラッポにして読むこと推奨です。その方が夢詰め込める。
【Piece.01】
「……あれ?」
妖怪の山の中腹に威容を構える守矢神社の風祝こと東風谷早苗は、掃除中にふと見つけたそれに目を留めた。
よくある菓子折りのふた周りほども大きな箱が、丁重に油紙で包装し保存されていたのである。
「……なんだろ、これ」
掃除の手を止め、その中身不詳の箱をとりあえずひょいひょいと振ってみる。
見た目の割に存外と軽いそれの中は硬めの細かいものがたくさん詰まっているらしく、ざらざらとか、がらがらとか、そんな具合のサウンドが不規則に聞こえた。感覚としては、袋入りの飴玉やあられなんぞを想起させる。
「うーん……乾物とかかな、だったら助かるんですけど」
幻想郷へとやって来てからそろそろ一年になる。
当初それなりの量を用意していた保存食――缶詰だのレトルトだの――の類は、彼女や同居人にして家族である神二柱によって消費されるよりも早く、物珍しさも手伝って瞬く間に宴会の肴と消えた。
あるいはそのおかげか、以前と比べ食材や調味料が限られる中、守矢神社で日々供される食事の質的な低下は住人たちの技量の上昇によって補われているわけで、そんな経緯から正体不明の箱の中身を安直に食品と結びつけた早苗の判断は、彼女の食い意地などと別段深い関わりのあることでもない。
現人神東風谷早苗の名誉にかけて、とりあえず念を押しておく。
「でも、相当古そう……大丈夫かな」
几帳面に折られて箱を包む油紙は、降り積もった年月を主張するかの如く、黄色というより焦げかけたカラメルのような色合いを醸し出しており、紙を固定している接着テープもほとんど一体化してしまっている。
既に中身が食物であることを前提に早苗の思考は展開しているが、これはあくまで生活習慣の及ぼしたことであり、けっして彼女の食い意地がそうしたわけではないことを重ねて強調しておこう。
さて、早苗は何となく開けるのをためらった末、箱をひっくり返したりまた上下左右に揺すってみたりと検分に余念がない。
「……えい」
ぺりりと、接着テープとしての生涯を全うしたそれを引っ張ると難なく剥がれる。お勤めご苦労様でした、と心の中で手を合わせてから、何となく心躍る気分で早苗は油紙を広げた。
と、まろび出てきたのは味も素っ気も無い紙箱。何ぞラベルなりが書いてあれば中身を想像することも出来るが、これではそれも難しくなった。
「む」
梱包状態から箱そのものはさほど痛んだ様子はなく、また箱自体は単に箱であり、蓋を持ち上げればすぐさま中身と対面できるようではある。
ここまでほどいた上で異臭も何も無いのだから中身も別段腐っているとかそんなこともなさそうだが、早苗は何とはなしに箱をじっと見た。
「……」
見るが、透視能力のない早苗が見ただけで中身を識別できるはずもない。
まあ彼女の能力は奇跡を起こす程度であるからして、果たして箱の中身を透視することが奇跡の一貫だと言われればそれもありそうだった。
だが早苗は蓋を持ち上げようとはせず、おもむろに左右周囲を見渡し、特に人も妖怪も神も妖精も居ないらしいことを確認すると、ぐいと持ち上げた右腕を振り下ろし、箱にびしりと人差し指を突きつけて宣言する。
「インパス!」
箱は赤くも青くも黄色くもならず、ちょっとシミの滲んだボディを初夏の風にさらすだけだった。
【Piece.02】
「…………」
守矢神社の真の神、土着神の頂点にしてミシャグジの統率者たる洩矢諏訪子は、大蝦蟇を筆頭とする地元の蛙種連合――通称『カ連』――との定例会に早朝から出席し、帰宅したところだった。
気配から、もう一柱の神たる八坂神奈子が不在で、また子孫でありなおかつ家族であるところの早苗の在宅は把握していたので、さてではちょっとおやつでも洒落込もうかと早苗の居る母屋の一室に入ろうとしたところで、彼女はそれを見た。正確には見聞した。
そよそよと自然の風が舞い込む居間、卓の上に置かれた何かに向けて風祝がびしぃと指を突きつけ、どこかで聞いたような呪文を唱えた、その光景を。
(……どうしよう)
あらかじめ断っておかねばならない事は、諏訪子が早苗の背後に居る、ということである。
つまるところ諏訪子はほぼ一方的に硬直し沈黙せざるを得なくなったわけだが、早苗はまだ諏訪子の帰宅に気付いていない様子であり、要はこれをなかったことにして立ち去り、五分前からの己の行動を最後のオチだけ抜きにしてリピートするという権利も諏訪子には発生していた。
そして諏訪子は当然のようにその選択を行使しようとしたのだが、普段から不平の一つも言わない母屋の床板はこんな時に限って、諏訪子の軽い体躯のそのまた慎重を期した一歩で小さく悲鳴を上げた。曰く、きしっ。
「!!」
「……あー……」
弾かれたように、そして怯えた様に急速回頭した早苗の視線と諏訪子の視線がばっちりと合う。
夏に入って蒸し暑くなってきた空気が、不意に出現した気まずげな沈黙におされて何処へともなく退散した。
どこからどう見ても、まずいもん見ちゃったとりあえず逃げよ的な姿勢の諏訪子とやっちまった的な表情で固まる早苗。
とりあえず、諏訪子は耐えた。
早苗が不意に笑顔――この際苦笑でも良い――になって「やだなぁ諏訪子さま帰ってらしたんですかあはは」などとのたまってくれることを期待して、耐えた。
普段から生真面目な早苗のことである。たまに冗談の一つもやりたくなってしまう、その気持ちは分かるつもりだ。
だがしかし、目尻に涙を浮かべ、小刻みに震えている早苗にこの上のボケや切り返しを期待するのはいかにも酷だった。
だから諏訪子はむんと心中で気合を入れ、ともかくこの事態を流さねばと必死になって考え、考えに考えた挙句、つい先刻早苗がそうしたように、びしりとその幾分か小さめの人差し指を早苗に突きつけ、抑揚を極力排した声で宣言する。
「し、しかしえむぴーがたりにゃいぇわ!?」
めいっぱい噛んだ。
【Piece.03】
「……で、これは一体何事?」
「あーうー、神奈子ぉー」
およそ十分後。緊急の神様通信を聞いてかけつけた神奈子が見たのは、居間の隅っこで膝を抱えて背を向ける早苗と、その脇っちょであうあうとフォローになってるんだかなってないんだか分からない諏訪子の姿だった。
事態のきっかけとなった箱は、依然としてふてぶてしく卓の上に横たわっているが、さしあたって神奈子の眼中にはない。
「…………」
「どうしたんだい、早苗?」
無数のタテ線と暗色のグラデーションを引きつれ、そのまま地の底にまで潜って行きそうな早苗の傍らにしゃがみこみ、つとめて優しく声をかける。
このヘビ女この機にポイント稼ぐつもりかこのやろーと恨みがましく見てくる諏訪子はひとまず無視。
「神奈子……さまぁ」
「いいかい早苗」
情けなさでくしゃりを顔をゆがめる早苗を優しく抱きしめながら、神奈子は実にオトコマエな声で続ける。
「アレを使う場所は三つ、宝箱か、壷か、箪笥だけだ」
「……は?」
「そしてね、効果の無い場所で使った時のメッセージは『しかし何もおこらなかった!』だよ」
「いやそっちかよ」
反射的に突っ込む諏訪子だが、どこからともなく現れた薔薇とか百合とかそんな感じの花々に囲まれたふたりには通用しない。くっ、無意味にキラキラを振り撒きよって。
「だけど早苗の判断も行動も間違っちゃいない。よって、アレに反応がなかったってことは……これの中身は、空だッ!」
背後に嵐模様の絵を背負い、斜め45度で件の箱に向かって傲然たる宣言を下す風の神。物々しい効果音がどこかで鳴り響き、大気が震動した。
余談だがこの時、はるか上空の天界で比那名居の総領娘がその絶対領域をさらけ出しつつ盛大にすっ転んだ、と後日の文々。新聞は伝えるも、真偽の程は例によって不明である。
「……」
「……」
「……」
三者三対プラス二の視線が箱に凝縮する中、諏訪子がひょいと箱を手に取り、振った。
曰く、ざらざら、もしくはがらがら。
「……何か入ってるみたいだけど?」
「いやぁ、いい天気だねぇ、富士山が見えそうだ」
「そっちは東でしょ。大体結界で囲われてる幻想郷から富士山がどうやって見えるっつーのよ」
「……」
ごく自然な動作で障子を開け放ってのたまった神奈子だが、諏訪子の冷静な追撃は続くボケを許さない。
硬直し即座の反撃を行えなかった神奈子はしばし明後日の方向を向いて口笛なんぞを吹いていたが、やがて開き直ったか二回転に半分の捻りを加えて振り向くと、突如線の太い劇画タッチになって、言った。
「はかったな諏訪子っ!!」
「……」
「おぶっ!?」
諏訪子は無言のまま愛用の帽子を神奈子にかぶせた上で首まで引き降ろすと問答無用で蹴っ飛ばした。
そろそろ神奈子の部屋に転がっている全43話プラス劇場版3本のDVDを処分すべきかと、わりあい真剣に検討しながら。
【Piece.04】
「おー、懐かしいね、パズルだ」
「パズル、ですか?」
「あり、早苗はパズルって知らなかった?」
「あ、いえ、パソコンとかでやったことはあるんですけど、紙で出来てるものがあるとは知りませんでした。……変でしょうか?」
「……ジェネレイションギャップって奴かなー」
何の変哲も無い箱を何の変哲もなく開け、中身の話題で盛り上がる早苗と諏訪子。一方の神奈子はといえば、隅っこで帽子に頭部を封じられたままピクリともしない。
時折「見える、見えるよ……」などとウワゴトのように呟いているが、くぐもって聞こえるので気味が悪かった。
「結構数がありそうだねー。んー、3000くらいかな」
「さ、3000ですか?」
「ちょっと大きめだね。もっと上になると10000とかあるけど、まぁ暇つぶしには手頃なサイズってとこで」
パズル――特にこの場合はジグソーパズルだが――とは言うまでもなく、一枚の絵なり何なりを一定数量のピースに裁断し、それを組み合わせる遊びである。
これを暇つぶしと取るかストレス蓄積装置ととるかは人それぞれだろうが、全体として暢気度と春度の高い幻想郷においては概ね前者となり得る。
また、完成しても崩して何度でも遊ぶ派と、一度完成させたら糊を塗って額に納める派とが居るが、両者の比率について正確な統計は為されていない。
製作途中で掃除機に踏み荒らされてピースが欠けたり、調子よく進んだのに最後の数ピースが行方不明になっていて未完成に終わるというのも良くある話だ。
ただ、3000というのは普及サイズの中でも最大級であり、これを暇潰しに手頃などと言い張るのは神々や妖怪の時間尺度くらいのものである。
「これ、絵柄は何なんでしょう?」
「見た感じ静物画や風景画じゃないっぽいけど、んー?」
幾つかのピースを取り上げ睨む二人。よほど巧妙に裁断されているのか、細かいものがたくさん描かれているらしき全体絵に対し、しかし個々のピースには一見したところ何と明確に判別できるものは一つもなかった。
それもそのはずで、数百程度の小ぶりなサイズのものならともかく、千を越えて分割された個々のピースから全体像を想像するのは不可能に近い。
「普通なら完成予想図ってのが入ってるんだけど、無いねぇ」
「箱もただの紙箱みたいですから、元のから入れ替えたんでしょうか」
味も素っ気も色気もない箱に手荒な扱いを受けた形跡はないから、無理に包装を剥がした等の乱行があったとは思い難く、となれば、元々のパッケージなり箱なりは何らかの理由により廃棄されたと考えるのが自然だろうか。
「完成させれば何が描いてあるかも分かると思うんですけど…」
「だよね。それじゃ早速……あ」
ぺろりと舌なめずりをひとつ。箱にうじゃうじゃと蠢くピースの大群を前に腕まくりの諏訪子だが、さあいざ行かんと手を伸ばしかけて、ふと壁のカレンダーに目をやる。
外界から引越して一年近くになる現在、守矢神社で使用しているそれも無論幻想郷産とでも言うべきものだが、存外に現代的な二ヶ月一枚のエコノミー仕様には無数の『宴』の字が散らばっていた。
遠目にも月間日数の半数を埋めているのが丸分かりの朱色の字が、本日にあたるところにもでかでかと書かれていて、脇には小さく『博』ともある。
「…早苗?」
「はい?」
「今日は麓だったっけ?」
宴会かどうかは聞くまでもないらしい。
「あ、えっと……そうですね、今日は博麗神社で宴会です」
「むむ……そっかぁ」
唸る諏訪子。
ジグソーパズルというのは実に気の長い遊びであり、その作業は数日、場合によっては月を複数またぐことさえあり得る。
外周を埋める作業から始まり、ひとつひとつのピースの収まるべき場所を探していく工程には、時間と共に、組みあがっていくそれを安置するスペースも必要とされる。
しかして、何より必要なのは『勢い』だ。
勢いのない時には、たとい残りのピースが少なくても上手く組み上げられないし、逆に勢いさえあれば始めたばかりでも面白いように組み上がるものであり、諏訪子にとって発見直後の今こそがそれだった。
「……よし早苗、すぐ行くよ」
「え、はい?」
「ちょうどいい宴会の肴にもなるし、あ、わたし先行ってるねー!」
「あ、ちょ、諏訪子さま!?」
返事も待たずピースを乱雑に突っ込み箱を閉じるや抱え込むとすばしっこく飛び出す諏訪子。
たちまちに遠ざかるその姿を見送りつつ、玩具屋でねだった挙句買ってもらった子供みたいだなぁという感想を早苗が持ったのも無理からぬところだろう。
【Piece.05】
「……で、あれは何」
「ジグソーパズルです。掃除をしてたらたまたま出てきたんですよ」
「へぇ、そう」
うららかな昼下がり、定位置で茶を飲む巫女と、その隣に落ち着いた風祝。
境内側から見て二人の背後では、ひと部屋まるまるを制圧しパズル製作作業に余念の無い諏訪子が居た。
しゃがみこんでもくもくと作業を行うその後ろ姿は、こう言っては何だが、かぶった帽子と相まって蛙そのままである。
「で、あれってそんなに面白いの? 諏訪子はやけに張り切ってるみたいだけど」
「……どうでしょう。私もほとんどやったことがないので何とも」
「あ、そう」
特に興味もなさそうな霊夢。宴会日であろうがなかろうが、住居たる神社を好き勝手されることにはもはや慣れてしまったのか特にコメントもなかった。
ちなみに、帽子を引っぺがされたことで蘇生した神奈子は、到着直後から神社在住の悪霊さん&鬼と奥に引っ込んで一足早い酒盛りとなっている。
ずずず、と腋巫女二人がそろって一服。
「静かですねー」
「嵐の前だもの」
「……なるほど」
幻想郷では嵐の宴会と書いてシュトゥルム・ウント・ドリンクと読む。(文々。新聞、コラム『天風禄』より)
【Piece.06】
十五分後。
「あー……うー……」
べしょりと縁側に寝そべり、羊羹をもにゅもにゅする土着神の頂点の姿があった。
「……煮詰まった」
勢いも何もあったもんじゃない。
「ま、まあ諏訪子さま、また帰ってからでもやればいいじゃないですか」
「うー」
「……ん」
神の智謀の限りを尽くしても、3000ピースの紙は手強い。
そんなどうでもいい文句を考えながら空を見上げていた霊夢の眼が、接近する飛行物体を捉えた。
例によって例の如く高速で飛来するそれの正体について、わざわざ言及する必要性もあるまいか。
「よーし! 一番乗りだぜ!」
「残念、四番乗りくらいよ」
「ん? ああ何だ山の巫女一家じゃないか」
「こんにちは、魔理沙さん」
「しくじったな、もうちょっと早く出てれば私が一番乗りだったって言うのに、チィッ!」
いつも以上に高いテンションの魔法使い。
ひょっとしたらこいつ徹夜明けかと、一同がほぼ同じことを考えていると、やや遅れて降り立つ人物もうひとり。
「別に魔理沙が一番乗りだったら何か良い事があるわけでもないでしょうに」
こちらもこの期に及んで説明は不要かもしれないが、森の同居人、人形遣いアリス・マーガトロイドである。
さてそのアリスの言にぐいとトレードマークのトンガリ帽子を抑え、霧雨のお嬢は断言する。
「いいや、ある!」
「……一応聞いておくけど、何?」
「霊夢の腋を舐める権利が私に発生す「ないわ」おぼぉっ!?」
「…こんにちは霊夢、それから早苗にそっちの神様も」
「いらっしゃい。別に誰も呼んだつもりはないけどね」
「こんにちは、アリスさん」
「あうー」
通常の倍(当社比)の大きさの座布団アミュレットで大地に貼り付けにされた白黒いのを放っておいて進むいつもの挨拶。
わずかに突き出た腕が印象的だったと早苗は後に語った。
【Piece.07】
「ところで、あれ、パズル?」
「ん? らしいわね」
「らしいって……」
「あ、うちの神社で出てきたんですよ」
「あぁ道理で。こっちの神社にこんな洒落たものがあるはずないものね」
特に組もうとするでもなく、何とはなしに手でざらざらとピースを弄ぶアリス。
「悪かったわね、洒落てなくて」
「ああ、そうね……洒落てないというより、霊夢の場合食糧難の時に食べちゃうものね」
「誰が食べるのよ、紙でしょそれ」
「山羊は紙を食べるって聞きますけど……」
「見損なってもらっちゃ困るわ」
ふふんと、巫女は胸を張る。
「山羊に食べられて、私が喰えないワケがないでしょ」
全員が、心の汗をそっと拭った。
「……でも、これって相当数があるみたいだけど、完成するまでここを占拠するの? まさか一日でどうこうできるとか思ってたわけでもないでしょうし」
「諏訪子さまは、そのつもりだったみたいですけど……」
「あーうー」
「志半ばってところかしら」
「だったらだな!」「わぁ!?」
ぐぁばりと突如割って入ってきたのは普通の魔法使い。
どうやら座布団の拘束から抜け出したようだったが、ぺしゃんこになったトンガリ帽子が妙に痛々しい。
「ひとりじゃ無理でも三人寄ればマスターブレードってやつだぜ」
「……つまり?」
「全員でやればなんとかなる!」
「…………」
あからさまに、または自然な風を装って視線を外した者が二名、苦笑しつつやはり視線を外した者一名、寝そべったままあーうーと応じた者、一名。
【Piece.08】
「手強いぜ……」
「あーうー……」
手数は倍になったが、効率は倍には程遠く、かくして脳細胞が茹だった二人は縁側にべちょりと寝そべる結果になった。
「うーむ、ああいう細かいのがたくさん並んでるのは駄目だぜ……」
「整理整頓が苦手な人には向かない遊びね」「うぐっ」
「……んー、ちょっと失礼」
「? アリスさん?」
敗残者二人を脇に何事か考えていたアリスが今度はパズルに向かった。ざらざらと山を漁り、幾つか目当てのものをより分けていく。
「んぁ、何やってるんだアリス」
「確か…こういうパズルって、まず外側を先に作るんじゃなかったかなーって」
「あ、そういえば」
「ん、何だ、そんなセオリーがあったのか?」
攻略法発見と同時にむくりと起き上がったのは誰あろう魔理沙である。
「ほら、普通のピースは四方向全部に繋がるようになってるけど、角とかそれぞれの辺のパーツは真っ直ぐな部分があるのよ」
「お、言われて見れば確かに」
「だからまずはそれから揃えていくのよ。最初から全部やろうとするんじゃなくて、外堀から埋める感じね」
「ふむふむ、それなら何とかなりそうだぜ」
「よーし、一気に行くよー!」
「とりあえず山から辺と角のピースだけ選り分けて、そこから組むわよ」
「おー!」「おー」
魔理沙と諏訪子の気力が回復した!
アリスが戦線に加わった!
【Piece.09】
「……駄目じゃないか」
「うっ」
「外側のピースだけでも結構あるよね、ここからどうするんだっけ」
「……ちょ、ちょっと待って、今思い出すからっ」
冷静に考えれば、諏訪子の指摘した通りである。
3000ピースを単純にタテヨコの比率に換算すると60かける50といった具合になるが、これだけでも外周部を構成するパーツ数は200を超える。100かける30で計算すれば250オーバーだ。
その中で互いに組み合わさるのは、一つにつきたった二つ。
つまり一つに合致するピースを探すには、運が悪いと200回以上の組み合わせを試さなければならない。
ああでもないこうでもないと試している内に、いつの間にか試したものとそうでないものが混ざり、似た形のものが多いジグソーパズルならではの特徴も相まって「あれ?これさっき試さなかったっけ?」みたいな状況が多発し始めるともう駄目だった。
前線の将兵達の士気はダダ下がり、たちまち作戦を提案した上官への不満が鬱積し始める。
「弾幕はブレインだとか言ってる割にパズルひとつまともにこなせないんじゃ、頭脳派返上も間近だな」
「ううっ」
「アリスって意外と抜けてるよね」
「ううう……えぐっ、どーせ、どーせ私なんか私なんかブツブツ……」
「ああああアリスさんしっかりして下さいー」
部屋の片隅で膝を抱えて皆に背を向けるアリス。指では「の」の字をエンドレスでなぞることも忘れていなかった。
割と他人事ではない早苗と上海人形がフォローに入るが、先刻の早苗とは落ち込み方の年季が違う。
一度持ち上がりかけて叩き落されただけにダメージも大きかったようだ。
「昼間っからこの神社は騒がしいね。宴会は夜じゃなかった?」
「……昼間から出歩いてる吸血鬼に言われたくはないわね」
救世主!?と早苗が思ったのも束の間。
到着するや霊夢と心温まる会話を交わし始めたのは紅い館の幼い吸血鬼、レミリアとそのご一行である。悪魔討伐に来た救世主を逆に叩きのめしかねない顔ぶれに、救世主側へ傾きかけた早苗の信仰心は危ういところで踏みとどまった。
「……で、それ何?」
「ジグソーパズルだって」
「……」
「……何よ」
「霊夢の非常食?」
「ちゃうわ」
「天然素材の紙と塗料なら大丈夫ですが、合成品が混ざっていると体に毒ですわ」
「喰わんと言ってるでしょーが」
さっきは言ってたくせに。
「えへー、魔理沙だー」
「お、フランじゃないか、今日は一人で日傘差して来たんだな、偉いぞーうりうり」
「きゃははー」
一挙に人数が増えて賑やかさも倍増しの神社。
「それは分かったけど、何であの人形遣いはこの世の終りみたいな状態なのよ」
「あー、それはね」
「パズルに敗北してブレイン派返上の危機なんだぜ」
「……それは聞き捨てならないわね」
「わぁ!?」
にゅっと、音もなく風に乗ってやってきたのは紫色の知識人。唐突な出現に耐性の薄い早苗は思わず後ずさった。
「何千何万何億ピースあろうとパズルはパズルよ。その攻略法は常に一定の法則に基づいて決定されるわ」
「おぉ、何か知らんがパチュリーが燃えてるぞ」
「……燃え尽きないといいけどね、パチェ」
「もやしですから火の通りは早そうですわ」
「そこ、茶々を入れない」
くるりぴしっと暢気な親友とその従者を黙らせると、魔女は携えた分厚い本をばらりと開く。
「? 何か攻略法でも載ってるのか、その本」
「気分の問題よ」
「あ、そ」
「まずアリスのとった戦術は完璧に正しいわ。総数に比して圧倒的に寡兵である外周部はその形態的特徴から分類が容易であり、各個撃破の対象としてはうってつけよ」
「そこから先が問題なんだってば」
「焦らないの。パズルが一枚の絵を分割したものである以上、個々のピースには収まるべき場所によってそれぞれの特徴が現れるわ……例えば」
と、四方のうち一方が平らな外周部のピースを幾つかまとめて取り上げる。
「この6つ。一見バラバラの絵柄のように見えるけれど、それぞれのピースには共通してこれ、紅白黒の三色で構成される曲線が描かれているわ。背景の色が違ってもこの曲線は一定のパターンで描かれている……つまり!」
手にしたピースをひょいと放るや、パチュリーの起こした風が畳の上を吹きぬけ、6つのピースが横に繋がった形で着地した。
若干演出過剰のきらいはあるが、見事である。魔術の徒は形にこだわりつつアレンジを凝らすのだってどこかで言ってた。
「おぉ!」
「すごーい」
「こんな風に、複数毎に共通する特徴を見つけて組み合わせていけば良いのよ。一つ一つ試すのは無駄が多いわ。個々にこだわりつつ大きな視野を持つ、これがパズルのやり方よ」
「なるほど! ぃよーし、いけそうだぜ! フランもやるか?」
「うん!」
「ほー、さすが知識人は伊達じゃないね」
「ふ……それほどでもないわ」
本を閉じてクールに微笑むが、意気込んで作業を再開するや「そのこと」に悪魔の妹フランドールが真っ先に気付いた。
「あれ?」
「どうした、フラン?」
「……おんなじ色の端っこが一杯ある」
「お、本当だ……っておいおいなんか多すぎないか?」
「こっちもそうだね、むしろ特徴の無いのが外側のピースに多いような……」
先にパチュリーが指摘した特徴に合致するのは全体のごく一部だったようで、外周部のピースは大半が非常に似通った色合いになっていた。
これでは特徴もへったくれも無い。またも個々の組み合わせ作業に戻ってしまう。
「なあ、パチュリー大先生、こういう時はどうするんだ」
「……勘よ」
齢100を数える魔女のその発言に場の半数以上の視線が集中し、彼女の線の細く色白の頬を一筋の冷や汗が伝ったのをほぼ全員が看破した。
「……勘、か?」
「ええ、もともとジグソーパズルに限らず、知的ゲームとしてのパズルはその名の通り『惑わせる』ことを念頭において作られているわ。
だからさっきみたいな攻略法が通じないように、あえてまぎらわしい色使いの絵を選び、混乱させるように分割している場合も多いの」
「つまり?」
「攻略法はあくまで基本であり、それが通じない局面もあるということよ」
「いやだから、そういう時はどうするんだよ」
「概ね……勘と、運と、かけた手間、要は時間と試行の回数ね」
沈黙が場に舞い降りた。
それを打破したのは、先刻より後ろから抱きついているレミリアを、体温の低さをいいことに簡易冷房扱いしつつ茶をすすっていた霊夢である。
「つまり、今までと大して変わらないってことね。割と力ずくじゃない」
「むきゅ……」
「何だ、知識人の魔女もアテにならないね」
「むきゅきゅ……」
親友たるレミリアまで、言い様に容赦というものがまるでない。
「……鬱だわ」
パチュリーはアリスの隣に立つと、膝を抱えて座り込んだ。
【Piece.10】
「ねえアリス、私たちって本当にブレイン派なのかしら……」
「私もよく分からないの……だって、最近は蹴ったり本のカドでどついてばかりだったから」
「そうよね、実はアレってやってると結構気持ち良かったりするから、止められないし」
「あぁ、分かる、分かるわ。あのブーツがめり込む瞬間がなんとも言えないのよね……」
「ああああ、おふたりともしっかりして下さいー」
「パチュリー様、お気を確かにー」
落ち込んだ魔導の徒ふたりに、早苗と人形と同行していたらしい小悪魔らによる必死のフォローが入るが、元々がインドア派だけに閉じこもり始めると始末に負えなかった。
「咲夜ーとりあえずお茶」
「かしこまりました。えーと……紅茶と緑茶、どちらにしましょう?」
「緑茶で良いわ。神社に入っては神社に従えよ」
「はい、少々お待ち下さい……お待たせしました」
「うん、ありがと、待ってないけどね」
霊夢にぴっとりくっついたまま湯飲みを受け取る。湯気の量から見るに相当熱そうなのだが、大して気にした様子はない。
「それと霊夢、これは何かしら? 台所にほったらかしにしてあったんだけど」
「ん? ……あー」
「何それ」
霊夢とレミリアの視線の先にあるもの、つまり咲夜の持っている箱である。
ちょうど菓子折りらしき大きさのそれは、一面真っ黒で中が窺い知れない。
「今朝スキマから落ちてきたのよ。おおかた紫あたりが今夜の宴会用に送りつけてきたんだと思うけど」
「何ていうか、食べ物なら傷んじゃうんじゃないの」
「あのスキマならそれくらい弄ってそうですけどね」
妖しさ超爆発の真っ黒な箱。
正直、中身が可食物であったとしても余り食指の動くものではない。ましてモノがスキマ産となれば尚更だった。
「とりあえず夜までほっといたら良いと思うんだけどね。宴会があるってのは嗅ぎ付けてるんだろうし」
「んー、でもちょっと中身を見てみたいねぇ」
「ですがお嬢様、あのスキマのことですから、自分以外が開けたら爆発、などのとんでもハップンを仕込んでいる可能性がありますわ」
爆発で済めば良いが。
「ん、誰も開けるとは言ってないよ」
「は?」
「咲夜、とりあえずそれそこに置いて」
「はあ、わかりました」
言われるままに箱を縁側に置いて、警戒心からちょっと離れて座る咲夜。
「この間図書館で魔法の沢山載った本を読んでたら面白いのがあってね、ものの中身を判別するって奴」
「へえ、便利そうね」
「……え?」
魔理沙やフランと共に談笑しつつパズルをあれこれと組み合わせていた諏訪子は、己が耳を疑った。
そしてそれはこの際、致命的な出遅れを招いたのである。
「それじゃあいくよー!」
「ちょ、まっ――」
諏訪子の制止は届かず、レミリアの幼くも張り切った大声がそれを唱える。
「インパスっ!!」
早苗はアリスとパチュリーの隣に立つと、膝を抱えて座り込んだ。
【Piece.11】
「おふたりはまだいいじゃないですか、この間の異常気象騒ぎの時も今度の地下探険もちゃんとオファーがあって。
私や神奈子さまに諏訪子さまはみんなほったらかしですよ。挙句神様全員無視してにとりさんが代表扱いで魔理沙さんのサポートだって言うじゃないですか。私も霊夢さんのサポートがしたかったのに……」
「まだ希望を捨てちゃ駄目よ早苗……私たちは台詞だけ、エンディングには顔見せできるかも知れないけど所詮は裏方よ」
「貴女だって4ボスとか追加パッチとかまだ枠はあるじゃない。私たちは結局霊夢や魔理沙の踏み台だもの」
「ていうかあの河童はなんとかしないとね、パチュリー」
「そうね、いずれ手を打たないといけないわ」
「……その時は参加させていただいてもよろしいですか?」
「「よろこんで」」
「ああああ早苗さんまでー、皆さんしっかりして下さいよー」
「あうー早苗ごめんよー、気付けなかったわたしが悪かったんだよー」
膝突き合わせて、というのには語弊がありすぎるのだが、体育座りで並ぶ少女三名。
騒霊姉妹の長女がいないのに場の気圧が局地的に急降下、諏訪子がフォローに回っても下降線はストップ安のラインを易々とブチ破って尚下がる。
「あれー、色が変わらないねー」
「変わったらどうなのよ」
「青かったらアイテム、黄色かったらお金、紅かったらトラップとかモンスターとか」
「へー、で、変わらないのは」
「……空っぽ?」
「ああ、賽銭箱と同じですね」
「失礼ね、たっぷり入ってるわよ」
「何が?」
「・夢と希望」
「霊夢……辛かったらいつでも言ってね。紅魔館は貴女を歓迎するから」
そっと心の汗を拭う主従。もっとも、主の方は場の流れに任せて巫女にくっついたままなので傍目にはアレである。
「あらあら、まだお早い時間なのに皆さんおそろいで。夜行性の方も多いでしょうに」
「出たな早起き亡霊」
「あら素敵、三文のトクですわね」
「お邪魔するわ、霊夢」
「まったくね」
なにやらちりりーんひゅーどろどろぼぼぇーとかいう効果音をバックに現れる亡霊プラス半人前プラス半死者。
それだけ並べるといかにもらしい筈なのだが、実態が実態であるだけに背筋を寒くするには足りないものが色々と多かった。
「宴会もまだ始まってないのに妙に賑やかね」
「ごく一部の底無しはもう始めてるけどね」
主に底無しどころか底抜けっぱなしだが。
と、幽々子が目ざとく室内で展開中のそれを見つける。
「あら、パズルですわね」
「? 幽々子様はご存知なのですか?」
「へえ、意外ね。和風一辺倒だと思ってたけど」
「あらあら失礼ですわね。いくらなんでも横文字にくらい対応してますわ。アイキャンフライとか」
「はいはい」
「あの……」
と、軌道修正を入れるのは庭師。半分でも命ある常識人は最近こんな役割が多い。
「それで、『ぱずる』とは一体?」
「んー……簡単に言うと」
「バラバラにされた死体を継ぎ合わせて復元する作業よ。妖夢、覚えておきなさい」
「はあ……あの、何だかスプラッタなものに聞こえるんですが」
「概要を端折るとしたら特に異論はないけど、もうちょっと言い様は無いのか」
「だって、紙は草木の屍骸、それを千千に引き裂いて元に戻して遊ぶなんて、野蛮ですわよー」
扇ではらりと口元を隠してのたまう亡霊嬢だが、いかにも楽しそうな目線をそこらへんに振り撒く。彼女の性格からして、意図的な物言いなのはバレバレだった。
「それに、娯楽とはいえ死体弄りに熱中するのは門の上の姥だけで十分。かじりついて取り組むなんてパズルのやり方がなってませんわ」
「……何ですって?」
「……それは聞き捨てならないわね」
「あ、復活した」
幽々子の言に反応し、立ち上がって抗弁するブレイン派約二名。今一人の現人神は膝を抱えたままだったりするが。
「あらら、何故かしら?」
「パズルは知力気力体力をかけて挑む頭脳スポーツよ。噛り付かずにどうするっていうの」
「賛成ね。これは己が感性と知性の全てを武器にピースの流れを読み解く、裁断者との闘いだわ」
「どうでもいいけど、あんたらがそう言ってるのを聞くだけじゃとてもパズルとは思えないわね」
「「霊夢は黙ってて!!」」
「……はいはい」
改めて向き直る頭脳派対亡霊。既に庭師はメイドとの談笑に突入しており、ことの観客は吸血鬼と巫女のみの有様ではあったが。
「風流じゃないじゃないの。パズルなんてものは、お酒の肴に読み解くくらいでちょうど良いんですのよ」
「へえ、つらつらやってればいつかは終わるってわけ? それは知性の敗北よッ!」
「単純計算で考えれば組み合わせと確率の問題だわ。けどそれを上回る感性を磨き流れを読む、これがパズルの真骨頂よ!」
ヒートアップする知識階級。このテンション、白黒いのだけかと思ったが、もしやこいつらも徹夜明けなんじゃなかろうな。
「確かに、目をこらして見つめれば、闇の中の道のように一筋の流れを見る事は出来ましょう。
…しかし、それはあまりに無粋ですわ。大きな絵を見るためには三歩進んで二歩下がるくらいがもっとも具合がよろしいのですよ。
現に、細かい目先の策に溺れたあまりに失敗したんじゃありません?」
「くっ……まさか、見てたの!?」
「いえいえ、単なるあてずっぽうですわ」
「こうなったら……来なさいそこのアンデッド、実戦でケリをつけるわよ!」
「あらら、誘われちゃいましたわ。
よーむ、よーむ、ちょうど良いから貴女も来なさいな。楽しい死体弄りの時間よ」
「え、は、幽々子様?」
「あ、そうそう、ついでにお酒とおつまみもお願いね。こういうのはゆっくりやるのが良いの」
「は、はあ……」
ぞろぞろふわふわどたばたと上がりこむ有象無象。
「……」
「騒がしいねえ、そう思うでしょ、霊夢」
「そうね、多分まだ嵐の前だと思うけど」
ずずずー。背中越しの喧騒を遠くに、巫女と吸血鬼は茶をすすった。
【Piece.12】
「ふう……」
「あ、こっちも復活した」
「ああ、えっと、すみません。ちょっとしたトラウマが……」
「あの呪文にそんな嫌な思い出でもあったの、早苗」
「あ、あはは……ええまあ」
さすがについさっき同じことやってめいっぱい滑ったんですとは、いくら素直な早苗だって言えやしない
さて一方、縁側に並んだ巫女巫女吸血鬼の後ろでは、パズル戦線が一層の盛り上がりを見せていた。
「アリス、こうなったら人海戦術よ」
「任せて頂戴。それは得意中の得意だわ」
かたや持論もどこへやら、手数に任せて挑む戦術を選択したブレイン組。
「妖夢、とりあえずその右の、ああ違うわよ、もう一つ右、そうそうそれそれ」
「はあ、別に良いんですが……ご自分ではなさらないのですか?」
かたや、庭師に指示を飛ばすだけのぐるぐる食通娘。
「あ、これ合う」
「お、本当か? それじゃ次だな」
「あーうー、こっちにも頂戴」
そしてそれら二陣営の火花散る(?)闘いを尻目に、魔法使いが勘でピースを拾い、悪魔の妹と土着神がそれぞれ適当に組み合わせを試す即席混合チーム。
結果として作業が分担され、各々勝手気ままながらも少しずつ形になり始めているようではあった。
ちなみに、メイド長は料理の仕込をするとかで炊事場に引っ込んでいる。
「……ん?」
「どしたの、レミリア」
「んー」
ぴこぴこと背中の羽を心持ち忙しげに動かすお嬢様。
「……ま、いっか」
「何なのよ、気になるじゃない」
「気にしなくていいわよ。どうせすぐだから」
「は?」
「あ、霊夢さん、あれ……何でしょう?」
「あ?」
早苗が指差したのはだいぶ仰角を取った上の上の方。青空にちみっちゃくシミのような何かが浮かんでいた。
「鳥……じゃあないわよね。ちょっとレミリア、あんたアレのこと何か知ってるんじゃないの」
「心配しなくてもすぐに来るわよ」
「あ、何かだんだん大きくなってますよ。……近付いて、ていうか落ちてきてるんじゃ」
「……あー」
三人して空を見上げながら、霊夢がなんとなく心当たりのありそうな顔を思い浮かべた辺りで、ちっこかったそれが急速に拡大し始めた。
ひるるるるるなんてベタベタな落下音が徐々に大きくなりながら三人の耳に届く。
<天にして大地を制し>
「あいつね」
「あいつか」
「え、はい? あいつ?」
「ああ、あんたはまだ会ったこと無かったっけ」
「ええと、誰です?」
<地にして要を除き>
「すぐに来るわね」
「来るわよー、お茶持ったままだと危ないかもね、山の巫女」
「え、あ、はあ……? ていうか何ですかこの声」
落下音と共に聞こえる声はさして大きくもなく、三人にもどうにか聞こえる程度に過ぎない。
そうこうしている内に、米粒程度だったシルエットはピンポン玉ベースボールサッカーバスケットを経由し、たちまち運動会の大玉級になると――
<人の緋色の心を>
「映し出せッ!!!」
「わあ!?」
着弾。どどどんとあたりを一瞬強烈な上下運動が走りぬけ、湯飲みは倒れ、縁側下に乱雑に放り出された皆の履物の類が揃って不調法なタップを踏んだ。
ついでに衝撃を予想できなかった早苗がすっ転ぶ。
「来たわね我侭天人」
「……え、天人?」
「……ふっふっふっふ。宴会と聞いたら上から覗いてるだけなのは勿体無いわ!」
ばさりと豊かな蒼髪をかき上げ、地面にぶっ刺さった要石からひらりと飛び降りる少女ひとり。
先にさっさと来たのか、だいたいセット扱いの竜宮の使いは見当たらない。
「って、ん? 初対面かな?」
「あ、はじめまして、妖怪の山の守矢神社の風祝、東風谷早苗です」
僕らの早苗さんは、ワケの分からない人が相手でもちゃんと挨拶できる子でした。
「あー、話は聞いたことあるわ。よろしく。私は天界に住む比那名居の人よ。いわゆる天人ってやつね」
「はあ、らしいですね」
「さあさあ地上のモノドモよー、この天子ちゃんが来てあげたんだからせいぜい持て成しなさいよー」
…………。
「……ん? どうしたのー?」
ここでちょっと思い出していただきたい。
たった今天子が落ちてきた、というか降りてきた際の衝撃は、局地的ながらも激しい上下運動を神社一帯に巻き起こしたものだった。
現に霊夢やレミリア、早苗がほんの一瞬前まで持っていた湯のみは全てぶっ倒れて中身がこぼれているし、地面に深々とめり込んだ要石を見ればおおよそインパクトの凄まじさは察せられるだろう。
さて、そんな激しい上下動が巻き起こったとなれば当然室内も荒れる。
各々バラバラな方法論ながらなんとかかんとか快調なスタートらしきものを迎えたパズル制作も、その揺れから無縁ではいられなかった。
ようやく組んだいくつもの部分は見事に分解し、さらには各地に積み上げられていた未構築のピースがそこら中に散らばって分解されたものと混ざってしまっている。
つまりは、ふりだしに戻る。という奴だった。
「……ねえ魔理沙……折角、いい所だったのにね」
「ああそうだなフラン、ちょっとこの空気の読めない天人にはオシオキが必要だろうぜ」
八卦炉を、魔杖を取り出す者。
「咲夜」
「はい、なんでしょう」
「久々にフランの涙を見たわ。それも涙ぐんでぐしぐしやるというレアものよ。これはお礼をしないといけないわよね」
「かしこまりました。少々お時間を頂いてよろしいでしょうか?」
「任せるわ」
ナイフを構え、爪を光らせる者。
「何だい何だい今の揺れは!?」
「地震かい、この間ので終わったんじゃなかったっけ?」
「んぉー、何だ、天子じゃないかぁ?」
慌てて奥の間から出てくる酔っ払いが三名。
「そこの風雨の神、ちょっと曇らせるけど良いわね?」
「あー、どうしたのよ。……ん、諏訪子?」
「あーうー、神奈子ぉー」
「……そこな紫の魔女、許可するっていうか私が曇らせる。いやむしろ、もうした」
「感謝するわ。おかげで喘息の調子もすこぶる良好よ」
魔導書を開き、オンバシラを構える者。
「上海蓬莱、露西亜倫敦西蔵京、オルレアンに仏蘭西和蘭ストロー、とりあえずみんな準備は良い?」
何処にそんなにしまっていたのか、次から次へと人形を取り出す者。
「妖夢」
「お任せ下さい幽々子様、目の前の天人を斬るんですね」
「大正解」
扇で口元をひらりと隠し、心底楽しそうな者と、その前に立って物騒な二刀を抜き放つ者。
「……えーと」
わらわらと縁側に出てくる特級危険物の集団に、冷や汗流して天人曰く。
「れ、霊夢さーん。ちょっと、何か私身の危険を感じるんだけどー」
「…………」
紅白の巫女は、しばらく目線を下に向けていた。
揺れで盆からはじき出され、地面に落ちて無残に割れた湯飲みと、大地が乾した愛しのお茶。それにじっと、視線を落とす。
長い、長い沈黙の後、天子に向き直って、楽園の素敵な巫女はにっこりと満面の笑みを浮かべた。
当然の如くその手に現れたのは「夢想天生」のスペルカード。片隅には何を意味するのか「チャージ済」とかいう字が浮かんでいる。
「うふふ」
「あ、あははははは……」
後に早苗は文々。新聞の取材にこう応じている。
『それはもう酷い有様でした。本物の地獄でもあんなにはならないんじゃないでしょうか』
「ねえ、あのね、ほんとごめんね、だからせめてもうちょ――」
ぴちゅーん。
【Piece.13】
「こんにちは」
「あら、こんにちは」
大事を成し遂げた後の清々しい笑顔で来客を迎える紅白の巫女。
「あの、総領娘様をご存じないでしょうか、先刻から姿が見えないのですが」
「ん? 天子?」
「はい。今夜はこちらで宴会があると萃香さんから聞いたようで、勇んで先に出られたらしいのですが……」
「あいつなら賽銭箱の上に居るわよ」
「……賽銭箱の上、ですか」
「そう、上」
「はあ、分かりました」
さて、来客たる彼女が拝殿の表へ回ってみたところ、確かに探し人はそこに居た。
「……およ」
思わずそんな言葉が漏れてしまうのも無理はあるまい。
何しろ探し人はそう、何と言うか、見た目が割とRとか18とかでどうのこうのな感じのことになっていたのだから。
ついでに逆さ吊りだったりする。ごく一部の方には何かと堪らないというか溜まらないかもしれない。主にアレ的な意味で。
「ひっく……えぐっ、ひっく……」
「ここに居たのですか、探しましたよ、総領娘様」
「っく……ぅぐっ……い、いく?」
「はい、衣玖です。永江の。
……それで、どうなさったのです? 随分と刺激的な格好ですが」
「うっ……ううぅぅぅぅぅぅ~」
「ああ、駄目ですよほら、鼻をかんで」
「うぅぅぅ、ちぃ―――ん!! っていうかその前にやることあるでしょうが!」
「あら、意外とお元気。なら、もう少し放って置きましょうか」
「うぇぇぇぇぇぇ―――――ん!!! いぃ―――くぅ―――っ!!」
「ああ、分かりました分かりました。分かりましたからそんな風に私の名前を呼ばないで下さい。色々と危ないです」
「ひくっ、うぐぅっ……」
とりあえず色々と怨念の感じさせる縛り方になっていた縄をはごろもドリルで割と無理矢理に切断する。
そのまま重力にしたがい賽銭箱に墜落する天子。微妙に鈍い音が響いたが気にしない。
「あた、たったたたたた……」
「今回は随分とまあ色々と、なんと言いますか、なんとも言い様の無いことになってますね」
「うぅぅぅ……だって、あいつらってばよってたかって……ぇぐっ」
「とりあえず、替えのお召し物を持って来てますから、着替えて下さい。ズタボロでも宴会には出るのでしょう?」
「うん……ってちょっと待って、何で替えの服なんて持ってきてるのよ。それに来るのが妙に遅かったけど、何で?」
「ああ、大したことではないのですが、おおよそこうなるだろうと思いまして、一旦天界に戻って取って来たんですよ」
「…………」
僕らの衣玖さんは空気の読める御方でした。
「うっうっうっ……」
「どうしました? そんなに酷いことをされたんですか?」
「そりゃ……まあ、そうかもしれないけど……とりあえずあんたの能力はフォローにしかならないって分かった」
「光栄です」
「うぅぅぅ~~……」
ふぁさ、とかぱさり、とか、背を向けた衣玖の後ろでぐずぐず言いながらも着替える天子。
まあ、あんな格好よりはマシだろう。同じ服だが。
「……でも」
ぽそりと、着替えながら呟く天子。
「はい?」
「……ちょっと、気持ちよかったかも……」
「…………」
ばちっ。
「あふんっ!? い、いやちょっと待った! 遊泳弾はやめて遊泳弾はっ!」
ばちっ。ばちっ。ばちっ。
「あふんっ、あひゃんっ!? い、いっ――」
「100まんボルト」
「ぅあぎゃばらべらっ!?」
【Piece.14】
さて、その後はさしたる妨害らしきものはなく、ジグソーパズル構築作業は進んだ……ということにしておく。
なにしろ宴会日の博麗神社である、日暮れを迎えるまでにさらに多数の来訪者があり、その都度様々なハプニングやドキュメントやどっきりが存在したことは、もはや恒例とさえ言っていい。
例えば、竹林在住の面々とプラス少々。
「覚悟しなさいよもこたん! 本格派貴族のパズルの嗜み方ってやつを見せてやるわ!」
「抜かせこのてるよがッ! いつもいつもマウスでしこしこやってるからって、得意げになってられんのも今の内だよ!」
「で、止めなくて良いのか?」
「あなたこそ」
例によって例の如くヒートアップする都合二人の不老不死を尻目に、一座を生温かく見守る薬剤師と半人半獣が居たかと思えば…
「んんー? あれ、おかしいな、これ確かさっきも試したような……気のせいかな」
(かかったな、ウサ!)
(……間違いなくさっき試してたやつですけど、まあ楽しそうだからいっか)
最初から自宅の廊下ばりの無限ループへと陥っていく兎一羽と陥らせている兎一羽に、何故かそこに混じっている御阿礼の子。
「ふーん、これ結構いい暇つぶしになるねー、大将棋も最近ちょっとマンネリだし、山で作れるかな?」
「あのー、文さま」
「なんですか、椛」
「……いい加減わたしの耳をもふもふするの、止めていただきたいのですが」
「だが断る」
「えー」
「……ところでにとりさん」
「ん、なーに、あやや?」
「先ほどからあちらの頭脳派お二人が物凄ぇ殺気を飛ばしてらっしゃるんですが、何かお心当たりは?」
「光・学・迷・彩!」
「あ、逃げた」
山の妖怪勢はいつもの様に好き勝手をしていて大して見向きもしない。
「う……えーと、これがここで、こっちが色が似てるから……えーと」
「ち、チルノちゃん、あんまり頑張りすぎない方が……なんか湯気出てるし」
「だ、だいじょーぶよ、あたいはさいきょーなんだから、こ、こんなぱずるくらいへっちゃらへー……」
「まあ、溶けても後でどうせ復活するかな……」
「ねえみすちー、この辺ってなんの絵だと思う?」
「うーん、何だろね……毛がふさふさしてて」
「あー、肉球があって」
「あ、目が四つある生き物っ!」
「「いや橙ちゃん、それ多分『二匹』だから」」
メルトダウンへカウントダウンな氷精が割と放置気味だったりと、まあ要するに、いつもの感じなのであった。
【Piece.15】
「ふわ……」
夜半。神社の宴会はなお騒々しく、いくらかの脱落者や帰宅者を出しながらも続いていた。
「眠いんだったら寝たら?」
「いえ……まだだいじょぶです」
「だったらまあ、別に強いてどうこうはしないけどね」
宴の中心から離れた縁側で、早苗は勢いを増してくる睡魔相手に冷えた水とお茶で抵抗を試みていた。
すぐ隣、昼より少し近い位置に居る霊夢はと言えば、多少頬に赤みが目立つ以外に普段との違いは見られない。飲んだ量は早苗の数倍以上もあった筈だが、これも場数の違いという奴だろうか。
「まったく、毎度毎度どいつもこいつも良く来て騒ぐもんよね、後片付けする身にもなれっての」
「そうですねー……ふぁ」
呆れた様な台詞の割に、霊夢の声音は穏やかで、それがまた早苗の意識を少しずつ沈下させる。
「なんだか……パズルみたい、です」
ぼやけた意識と視界で宴会の様を眺めながら、うわごとの様に言う早苗。
「パズル? 何が」
「みーんなばらばらで、ぐっちゃぐちゃで、あんなに違うのに……」
鬼が居て、吸血鬼が居て、魔女が居て、神が居て、天狗が居て、河童が居て、妖怪が居て、人間が居る。
「でも、楽しそうで、隣に居たら肩を組んで……手をつないで、歌って、踊って、食べて、のんで……」
酔いが回りに回ったのか、大声でまるっきり音程を外して歌う夜雀と、負けず劣らずしっちゃかめっちゃかな演奏の騒霊。
潰れて大の字に寝っ転がる魔法使いと、それに寄り添う妹を微笑して見やる姉。その後ろでなにやら密談に余念のない頭脳派。
とすれば、木のてっぺんで『いーっぱいおーっぱい!』などと叫びながら奇怪体操を披露しているのは門番だろうか。
ちょうどその根元では、酔っ払っていぢめてオーラを絶賛放射中の天人がフラワーマスターに傘で突つかれ遊ばれていた。
そこまで視線を巡らせた霊夢がふと、肩にかかる重みに気付く。
「ちがうのに、いっしょで、楽しそうで、パズルみたいで……」
「……まったく」
肩から膝へ、ずるりと滑り落ちてきた頭を支えて固定してやると、身じろぎした早苗はそこに安住の地を決めたらしい。
程なく、落ち着いた寝息が聞こえてくる。
「いるんでしょ、紫」
「はいはーい、お呼びかしら?」
ひょっこりと、スキマからではなく廊下の端から姿を見せる。
「あんたねえ、あんまり回りくどいことするんじゃないわよ」
「あら、何のこと?」
「あのパズル」
くいと、親指で背後を示す霊夢。座敷に鎮座するそれは、完成間際で止まっていた。
最後の最後というところになって数ピースが見つからずに、虫食いのような姿をさらしている。
「あんたの差し金でしょ」
「あら酷い。ゆかりんってばそんなことしないわよぉ」
「ゆかりん言うな、年考えろ」
「いやん」
くねくねと近寄ってくる紫を心底嫌そうな顔で迎える巫女。
「はぁ……で、本当のところは?」
「私はただ、お届けものをしただけよ」
「届け物? あー……もしかして」
「そう。そのもしかして」
ばくりと、虚空に開いた隙間から落ちてくる黒い箱。
「やっぱそれか」
実際、パズルが完成間際となってピースが足りなくなった時、霊夢を含め何人かはその箱を疑った。
だがスキマ産ということで結局誰も手を出さず、その直後本格的に全員が宴会へと突入したため、放置されていたのだった。
「意地の悪いことするんじゃないわよ。いい年こいて」
「だ~か~ら~、違うって言ってるじゃない」
「何が違うっつんのよ」
「ほら」
「あ?」
あっけなく箱を開封する紫。
中に鎮座していた予想外のものに、霊夢の反応も戸惑いを含んだ。
「……封筒?」
「封筒ねぇ」
薄緑色の、そっけない封筒である。
輸送の過程で何度も人の手が加わったのか、『宛先不明』だの『配送局留置き』だのの文字が朱の判で捺されていた。
「パズルはね、ひとつひとつ同じように見えて、全部少しずつ違う形をしてるの」
「らしいわね」
「だから、無くしてしまった部分の形をちゃんとなぞるか、割り当てられた番号を作った所に言えば、その分だけ補充出来るのよ」
実年齢からすればまさに胡散臭いほどたおやかな繊手で封筒を取り上げ、霊夢に渡す。
「……なるほどね」
「あのパズルはかなり古いものなのだけど、持ち主たちが欠損に気付いたのはそんなに昔のことじゃなくてね」
その持ち主が誰か、とここで問うほど霊夢の勘はぬるくない。
「で?」
「補充を問い合わされたメーカーも、予備があるかどうかは分からないって言ったの。いつになるか約束できないと」
「ふーん……」
「言った方はすっかり忘れていたけど、頼まれた方は忘れてなかったのね。けどちょっと遅かった」
「それでわざわざお節介を焼いたわけ?」
「いい機会だと思ったから」
宛名の横には『補充品在中』の文字。
薄い紙を通して分かる手触りと紫との会話から、中身が何であるかは霊夢にも想像がついた。
「ばらばらだけど一緒になると、ね……いい感じ方をする娘だわ。霊夢が気にかけるのもわかるわね」
「別にそこまで世話してやってる気はないわよ」
「照れないのー、もう霊夢ったらツンデレさんなんだからー。こーのツンデレイムー」
「黙れスキマ」
「ふふふ、さ、呑みなおしましょう?」
「まったく……」
隙間からにゅるりと取り出された猪口を受け、乾す。
くせの無い、けれども熱をはらんだ流れが喉を心地良く降りていった。
「……全部」
「あ?」
「この光景を全部眺めていられる奴が居たら、パズルにしたくなるかもしれないわね」
「そらまた、ひどいヨッパライ劇場ね」
「ふふふ、パズルじゃないかも知れない。ひょっとしたらただのお話にしたり、単に絵を描きたくなるかも知れない」
「どっちにしたって、アルコールの匂いがぷんぷんするわ」
「良いじゃないの、別に。今まで酒とお茶を友として生きてきたんなら、酒とお茶はずっとお友達よ」
「お茶と酒にも言い分はあると思うけどねぇ」
宵の酔いに任せた、他愛のない話。
何ということのない時間が流れていく。
「ばらばらで違うから、一緒に居る、一緒になれる」
「あ? 何それ、パズルの話?」
「そうよ、私たちの話」
「あー?」
神社の夜が更けていく。
空になった器に新しい酒を注ぐ。
きっと世界ってやつは、そうやって回っていくのだ。
「この娘が起きたら、パズルを完成させるのも良いわね」
「あはははは! 小生意気な天人め、どう! もっとシテ欲しいでしょ!?」
「も、もぅ怒ったんだからー! 天ちゃんプレスを食らえー!!」
「「あ」」
どすごん。
よいお話でした。
でもってきっと衣玖さんがもう一着着替えを出すに違いない。すげえ!!
楽しませてもらいました^^
巫女巫女スキマにニヤニヤ
天子の「いくぅーーー!」で死亡
>シュトゥルム・ウント・ドリンク
誰が上手いこと言えとw
完成図の無い3000ピースと聞いて宇宙飛行士のパズル(全面真っ白で絵柄なし)を思い出した。
楽しかったです。
そして、我らの早苗さんに愛の手をwwww
パズルの絵柄が何だったのか気になるぜ
300ピースまでなら半日で組み立てられるけど、1000超えるとちょっとね……
ところで、天子ちゃんにひたすら例の宇宙飛行士のパズルを組み立てさせるMプレイはどうかn(
世の中には立体ジグソーパズルなるものもあるそうですねぇ
当然2次元である絵よりもはるかに難しいらしいですが
個人的に地霊殿で魔理沙+にとりペアはそれほど違和感が無い
むしろ、霊夢+射命丸のほうに違和感が・・・
地霊殿に早苗さんと咲夜さん追加されないかなぁ・・・
多汰美ww
やりかけて放置してあるジグソーパズルを完成させようと思ったよ。
幻想郷ではどこの扉が開くのだろうかと考えてみる。
時期的にはフランの扉か?
良いパズルありがとうございました!
てんこちゃんかわいいよてんこちゃん
ネタ満載ながらも話が破綻せずまとまっていたのでとても読み易かったです。
アジなお方だぜスキマ様!
@な子ほど可愛いとは言いますが、この天子ちゃんは皆に愛されてそうw
良いパズル、良いお話をありがとうございました。
てんこが随分と持って行った気がするけど、別にそんなことはあったぜ!
天子にまたもや死亡(M)フラグ
もはやわざと立てているとしか思えない
いいSSでした、天子かわいいよ天子
きっとあれだないくさんが居る分だけ空気が読めない子なんだよきっと。
幻想郷も一つのパズルなんですねぇ、とか思ってしまった。
パズルか…やってみようかな