百合風味、て言うか百合
ご注意願います
爽やかな風が吹く初夏の朝
小鳥たちがさえずるのを聞いてアリスは目を覚ました
いつもはこのぐらいの時間帯には起きているのだが今日は体が動かない
昨日遅くまで人形達の調整をしてあげていたせいだ
それが悪いことだとは思っていないがさすがにまぶたが重い
たまには気ままに二度寝するのも悪くはないだろう
そう思ったアリスは本能の赴くまま また睡眠をとろうとして
「もうっ、いつまで寝てるのアリス!もう朝ごはんできたわよ!?」
布団を剥ぎ取られてたたき起こされた
願いの果てに
「むぅ~、おこさないでよ~。れいむ~。」
布団を剥ぎ取られて少しむくれながらアリスは霊夢に抗議した
霊夢はそんなアリスを気にもかんせず布団を持っていく
「いつまでも寝てる貴方が悪いんでしょ、アリス?まったく、だからある程度の所でいったんやめて寝なさいって言ったのに。」
「しょうがないじゃない、仲間はずれを作ったらかわいそうでしょ~?」
「ちょっと位なら許してくれるわよ。それともなに?その程度で崩れちゃうような絆なの?」
「そんなことはないけど…。」
「クスッ、まぁいいけどね。今日はお布団干そうと思ってたから実力行使。悪いけど起きて。」
霊夢が微笑みながらドアを出て行く
それを起き上がって見送りながらアリスは返事をした
「は~い。」
まだ寝ぼけてるらしい
部屋を出て顔を洗う
タオルは人形達が持ってきてくれた
「おはよう、ありがとね。」
今度はちゃんと起きたアリスは人形達に朝の挨拶と礼を言った
始めの頃人形達が働いてくれていることに霊夢は驚愕していたものだ
『そんな!人形達が何から何までやってくれるなんて天国じゃない!!』
もちろんそんなことはないのでその間違った理解はきっちり矯正させてもらったが
ダイニングに入る
棚で並んでいる人形達にそれぞれ挨拶しながらアリスはテーブルに座った
今日の朝食はパンにスクランブルエッグ サラダとハム 飲み物に紅茶だった
今日の朝ごはんの当番は霊夢だ
彼女は基本的に和食を好むので当番のときはパンでなくご飯のときが多い
自分自身和食が嫌いというわけでもないのでそこは気にしなかった
だが今日はパンだった
霊夢にしては珍しかったが特に問題ない
しかしテーブルには二人文の食事が揃っていたが肝心のもう一人がいなかった
「霊夢~?ご飯食べましょうよ?」
辺りを見回した後アリスは外に向かって霊夢を呼んだ
さっき布団を干すといっていたからまだ外にいると思ったからだ
予想通り霊夢は庭から駆けてきた
「ゴメンゴメン、ちょっとお布団干すのに時間かかっちゃって。」
少し息を上がらせながら霊夢が席につく
「気にしてないわよ、さぁ食べましょ。」
朝の日差しが柔らかく入る中 食器がカチャカチャと音を立てる
「アリス、今日は何か予定はあるの?」
霊夢の言葉にアリスは少し考えながら言った
「人形達の調整は昨日済んだからね。今日はのんびり過ごすわ。」
そう返すアリスに霊夢は嬉しそうに提案する
「そう、じゃあどこかに出かけない?」
「いいわよ、どこいこっか?」
「そうね、今日は天気もいいしちょっと暑くなりそうだから川のほうに行ってみない?」
「OK、じゃあ川に行きましょう。お昼作っていこっか。」
「賛成。なにつくろっか?」
「まだパンが結構あまってるからサンドウィッチにしましょ。」
「いいわよ。じゃあちょっと作るの頼んでいい?その間にお洗濯終わらせるから。」
「わかったわ。そっちお願いね。」
「うん。」
今日の予定を決め二人は朝食を進めていく
そうして時折紅茶の御代わりを入れてくれる人形達に感謝しながら朝の時間を過ごした
「これでよし。」
アリスはキッチンでお昼用のサンドウィッチを作っていた
中身はシンプルに卵やハムレタスをはさんだものにした
それでも卵にマスタードをいれてアクセントにするなどの工夫はもちろんしているが
隣では上海人形と蓬莱人形が持って行く紅茶の準備をしてくれていた
そしてたった今両方とも完成した所だ
「ありがとね、ふたりとも。」
手伝ってくれたことに礼を言うと二人はくるくる飛び回って喜んでいた
アリスは出来上がったものをバスケットにいれて二人を連れて玄関のほうに向かった
アリスが玄関につくとちょうど霊夢が部屋から出てきた
「あらジャストタイミング。」
霊夢は笑ってアリスに近寄った
「準備できたみたいね。」
「お互いにね。」
アリスはお互い準備ができたことを確認しながら霊夢を見た
彼女は巫女服でなく白を基調とした赤のチェックラインの入ったワンピースを着ていた
「その服かわいいわね。」
アリスがほめると
「ありがと。お気に入りなの、これ。」
と霊夢は少し顔を赤くした
「そういえば、洗濯物の取り込みはどうするの?」
その後靴をはきながらアリスはふと思ったことを口にした
「あの子たちが任せてくれって、だからお言葉に甘えちゃった。」
と霊夢はぺろっと舌を出して少し申し訳なさそうに言った
「またあの子たちをメイドかなんかと勘違いしてない?」
それにジト目でアリスが霊夢を見ると
「そ、そんなことはないわよ!」
霊夢は憤慨しながら言い返し
「ならいいんだけどね。」
アリスは苦笑いしながら外に出た
「あー!信じてないわね!?」
「そんな事ないわよ?でも前科があるとね~?」
「やっぱり信じてないじゃない!!」
そんな痴話げんかをしながら二人は飛び立つ
その様子を見て上海と蓬莱は笑いながら追いかけていった
霊夢が自分の家に来たのは数ヶ月前になる
事の発端は自分が幻想郷に来て暫くたった後
霊夢が博麗の巫女をやめることを決めたことが始まり
その頃の彼女はまだ力も十分にあったが時期を考えると代を変えるには今が一番良かったらしい
そしてその少し後 霊夢は新しい巫女を連れてきて修行を始めた
修行は滞りなく終わりやがて霊夢が神社を出て行く日が来た
そこで問題が出てきた
霊夢がこれからどうするかだ
彼女自身どこかで隠居する気だったらしいがどこに住むかまったく決めてなかったらしい
里で暮らさないのかと聞くと静かに日々を過ごしたいらしいので却下
だからと言ってこのままでは野宿だ
そこで私が家に来ないかと提案したのだ
私の家は森の中にあるから静かだし家事も分ければ楽だろうと
その提案に霊夢は乗ってくれた
魔理沙も立候補したが霊夢が却下した
あんなゴミゴミした家でゆっくりできるものかと
魔理沙は憤慨していたがあの時いた面子は全員がその言葉に納得していた
そんなこんなで霊夢は巫女を辞め私の家に転がり込んできたわけである
サラサラと気持ちの良い音が聞こえる
二人は薄着で行ったがその日の気温は思った以上に高かった
なので川に着くと二人はまず靴を脱いで足をつけた
「あー気持ちいい。」
「ほんとね~。」
「こんなことなら水着でも持ってくればよかったわ。」
「霊夢って水着持ってたっけ?」
「あるわよ。さらしが。」
「それは水着とは言わないわよ。」
「いいのよ。別に泳げれば。」
「どうなのよそれは。と言うより…。」
「なによ?」
アリスが霊夢の胸を見る
「何かをつける意味はあるのかしら?」
目線の意味に気づいた霊夢が胸を隠しながら叫ぶ
「うるさいわね!人の事言えないくせに!!」
それにアリスはハンッと鼻で笑い
「私は日々成長しているのよ。」
霊夢に勝利宣言をした
その様子に霊夢は悔しそうにうめいた
「クッ。……そんな事言ってもいいのかしらね。」
「なによ、負け惜しみ?」
「いいえ、べつに~。ただ大きくなったのは胸だけなのかしらね~?と。」
「…どういう意味よ。」
「アリスさんたら最近おなか周りが大きくなってるご様子なので?」
「な、なんでそれを!?」
「お風呂上りにお腹押さえて鏡と睨めっこしてればねぇ、このことって上海と蓬莱も知ってるわよ?」
「ちょ、ちょっと!?二人ともほんとに!?」
「シャンハーイ」
「ホラーイ」
形勢は逆転したらしい
慌てるアリスに上海と蓬莱は気まずそうに目を合わせなかった
それは全てを物語っている
「まぁ、見た目そこまで変わってないから?別にいいんじゃない?」
そこへ霊夢が止めを刺す
オーッホッホッホと笑っている姿は同考えても悪女にしか見えない
それによってアリスは完全にへこんでしまっていた
その後上海たちの協力の下何とかアリスを復活させた霊夢は昼食をとった
アリスの作ったサンドウィッチは簡素ながらもおいしく霊夢は喜んだ
お昼を楽しんだ後二人は持ってきた紅茶を飲みながら木陰で涼んだ
そしてまた川に入り今度は水のかけ合いもしたりした
そのために帰るころには二人ともびしょぬれだった
その間で
バシャ
「甘いわよっアリス!」
「くっ、やるわね霊夢、しかたないわ。上海!蓬莱!援護して!!」
霊夢のすばやい攻撃にこちらも奥の手と人形達にアリスは援護を求める
が
二人はふよふよと飛ぶと霊夢側についてしまった
「え、ちょっと二人とも!?貴方達のマスターは私でしょ!?」
焦って叫ぶアリスに二人は首を振って
「シャンハーイ」
「ホラーイ」
霊夢の肩に降りてしまった
霊夢は不適に笑って
「ふふふ、この子達は既に私の仲間よ。やっておしまい!」
指令を出す
上海と蓬莱はその指令に忠実に従いアリスを水浸しにした
そのあまりにも完璧な扱い振りに
「霊夢、恐ろしい子!!」
アリスは戦慄した
ということがあったりした
夕暮れ時になって二人は家に帰った
水に濡れて冷えてしまっていたので最初に風呂に入った
そこでも
「やっぱり小さいわね。」
「うるさい!!」
などとひと悶着合ったりした
昼の事をまだ根に持ってたらしい
風呂のあとは準備が遅くなっていたので二人で夕食を作った
メニューは霊夢の意向で和食
焼き魚や味噌汁を作った
夕食が終わった後は食後のお茶を飲みながらのんびり過ごした
窓の外には月がきれいに出ていたので簡単なお月見気分だった
寝る時間になって
人形達におやすみを言った後二人はベッドに入った
あいにくアリスは一人で住んでいたのでベッドは一つしかなかった
霊夢が来た頃はどうしようか考えていたが
ベッドが大きめであったためか二人で寝ても特に問題なかったので結局今も同じベッドで寝ている
「今日は楽しかったわ。」
「そうね。」
「明日はどうするの?」
「今作ってる途中の子がいるからその続き。」
「ふ~ん、でも明日は寝坊しないでよね?当番はアリスなんだから。」
「はいはい。」
「……。」
「霊夢?」
話している途中に急に黙ってしまった霊夢にアリスは怪訝そうに尋ねた
「いや、何か忘れてる気がして…。」
「何を?」
「わかんない、けど何か大切なことを忘れてる気がする。」
霊夢は必死に何かを思い出そうとしていた
自分が忘れている何かを
「そうなの?でも…。」
アリスが優しく霊夢の頬を撫でる
その手は暖かく霊夢を落ち着いた気持ちにさせた
「本当に大事なことならいつか思い出すわ。無理に思い出そうとしないほうがいい。」
「そうね。」
アリスの言葉に納得した霊夢は思い出そうとするのをやめて目を閉じた
「おやすみ、アリス。」
「ええ、おやすみ。」
暫くした後 ベッドからは寝息が聞こえるようになった
明日もまた楽しい日になるだろうと眠りにつく直前に霊夢は思った
「霊夢、寝た?」
霊夢が寝息を立てるようになった後
アリスはゆっくりと体を起こした
そして霊夢の頭に手をかざし
「―――――」
何かの術を行った
小さな光が霊夢を包み 収まる
「これでよし。」
アリスは息をついた
「まだ、まだ駄目よ、霊夢。もうちょっと、もうちょっとだから。」
霊夢の髪を梳きながら呟く
まだ 全部を思い出すのは早い
先ほどアリスが使ったのは記憶を封印する魔法だった
アリスはこうやって毎夜霊夢が寝た後に魔法を使っている
そうしないと封印が解けてしまうからだ
霊夢の“自分が死んだ”という記憶が
この思いの始まりはまだ自分が魔界にいた頃
貴女は異変解決のために魔界に乗り込んできた
自分と同じくらいの年齢でありながら自分の母親さえも圧倒する力
それに憧れを覚えた
暫くたって貴女を追って幻想郷に来た
長く会ってなかったので貴女が自分を覚えているか心配だった
その心配はすぐになくなったが
貴女は覚えていてくれたし友達になってくれた
それから私も力をつけて貴女の隣に立てるようにまでなった
いろんな人に会った
妖怪人間神西洋の妖
貴女は誰に対しても物怖じしなかった
自分の目で物事を測り 誰かの示す定規に沿わない
その姿はあの頃とかわらず格好よかったし美しかった
日々を過ごす中で貴女と親密になっていった
私の中にある感情もまた育っていった
私はその感情が何か解っていた
恋だった
同性だったし 憧れもあった
だから最初は勘違いだと思っていた
でも日々強くなっていくこの感情は嘘じゃないとわかった
そして私は貴女に告白した
貴女の返事は私に絶望と希望を与えた
『ありがとうアリス。私を好きになってくれて。私もあなたのことが好きよ、友達としてではなくてね。』
『じゃぁ。』
『でも駄目なの、ごめんなさい。私と貴女では寿命が違いすぎるわ。私が先にいってしまってあなたを一人にするのは寂しすぎる。』
『そんなの!!』
『それにね…。』
『……』
『わかっているでしょう?私は博麗、誰かにつくことはできないのよ。たとえそれが好きな人だとしても。』
あのときほど幻想郷に恨みを持ったことはない
愛する人が目の前にいるのに結ばれることができない世界をぶち壊してやりたかった
でも貴女は約束してくれた
『もし…。』
『もし私が生まれ変わって、ただの何かになっていて、それでも出会えたら。』
『そのときは一緒になりましょう。』
転生したその先
いつか出会えたらあなたは受け入れてくれると
それから私は貴女とともにあるための準備をし始めた
貴女がもしまた短命な存在になっていたとしても一緒にいられるようにあなたに似せた人形を
貴女を探し出せるように術式を
そして貴女と暮らしていけるように家の準備を
耐えなければならない事もあった
貴女が好きでもない男の元に嫁ぐのを見ること
その男との子供を育てている貴女を見ること
何よりまだ私を大事に思っていてくれていること
何もできずただ待っていなければならなかった
連れ去ってしまおうかと思うことも何度もあった
相手の男を殺してやろうとさえ思った
それでも私は待ち続けた
そして時は来た
待ち続けたその時が
貴女はある日の夜 眠るように息を引き取った
周りの人が悲しむ中私は急いで家に戻った
術式の前に立ち発動させる
あれから知ったことがある
亡くなってしまった存在の魂は輪廻の中でリセットされてしまうことだ
前の記憶を持っていることはまれらしい
私は焦った
それでは一緒になれなくなってしまうから
術式を変えた
貴女を探すものから貴女の魂を呼ぶものに
失敗は許されない
失敗すれば二度とあなたに会えなくなる
術は成功してくれた
貴女はここに来てくれた
私ははやる心臓を抑えて貴女の魂を人形に埋め込んだ
早く目覚めさせたかったが問題があった
死んだ人間の魂は向こう側へ行こうとしてしまうのだ
もし無理に起こしてしまうと記憶が戻ってきて人形から離れてしまう
しかし魂にこちらとのつながりが強くあれば離れてしまうことはない
一種の地縛霊と同じ考えだ
だから記憶の封印を行った
いつかその封印をとく日が来てもそれまでに絆を作ればいい
大丈夫だ
私達は相思相愛なのだから
今までずっと待っていたのだ
ようやく手に入れられたのだ
もう絶対に
離 し は し な い
「愛してるわ、霊夢。」
アリスは眠る霊夢にゆっくりとキスをした
ご注意願います
爽やかな風が吹く初夏の朝
小鳥たちがさえずるのを聞いてアリスは目を覚ました
いつもはこのぐらいの時間帯には起きているのだが今日は体が動かない
昨日遅くまで人形達の調整をしてあげていたせいだ
それが悪いことだとは思っていないがさすがにまぶたが重い
たまには気ままに二度寝するのも悪くはないだろう
そう思ったアリスは本能の赴くまま また睡眠をとろうとして
「もうっ、いつまで寝てるのアリス!もう朝ごはんできたわよ!?」
布団を剥ぎ取られてたたき起こされた
願いの果てに
「むぅ~、おこさないでよ~。れいむ~。」
布団を剥ぎ取られて少しむくれながらアリスは霊夢に抗議した
霊夢はそんなアリスを気にもかんせず布団を持っていく
「いつまでも寝てる貴方が悪いんでしょ、アリス?まったく、だからある程度の所でいったんやめて寝なさいって言ったのに。」
「しょうがないじゃない、仲間はずれを作ったらかわいそうでしょ~?」
「ちょっと位なら許してくれるわよ。それともなに?その程度で崩れちゃうような絆なの?」
「そんなことはないけど…。」
「クスッ、まぁいいけどね。今日はお布団干そうと思ってたから実力行使。悪いけど起きて。」
霊夢が微笑みながらドアを出て行く
それを起き上がって見送りながらアリスは返事をした
「は~い。」
まだ寝ぼけてるらしい
部屋を出て顔を洗う
タオルは人形達が持ってきてくれた
「おはよう、ありがとね。」
今度はちゃんと起きたアリスは人形達に朝の挨拶と礼を言った
始めの頃人形達が働いてくれていることに霊夢は驚愕していたものだ
『そんな!人形達が何から何までやってくれるなんて天国じゃない!!』
もちろんそんなことはないのでその間違った理解はきっちり矯正させてもらったが
ダイニングに入る
棚で並んでいる人形達にそれぞれ挨拶しながらアリスはテーブルに座った
今日の朝食はパンにスクランブルエッグ サラダとハム 飲み物に紅茶だった
今日の朝ごはんの当番は霊夢だ
彼女は基本的に和食を好むので当番のときはパンでなくご飯のときが多い
自分自身和食が嫌いというわけでもないのでそこは気にしなかった
だが今日はパンだった
霊夢にしては珍しかったが特に問題ない
しかしテーブルには二人文の食事が揃っていたが肝心のもう一人がいなかった
「霊夢~?ご飯食べましょうよ?」
辺りを見回した後アリスは外に向かって霊夢を呼んだ
さっき布団を干すといっていたからまだ外にいると思ったからだ
予想通り霊夢は庭から駆けてきた
「ゴメンゴメン、ちょっとお布団干すのに時間かかっちゃって。」
少し息を上がらせながら霊夢が席につく
「気にしてないわよ、さぁ食べましょ。」
朝の日差しが柔らかく入る中 食器がカチャカチャと音を立てる
「アリス、今日は何か予定はあるの?」
霊夢の言葉にアリスは少し考えながら言った
「人形達の調整は昨日済んだからね。今日はのんびり過ごすわ。」
そう返すアリスに霊夢は嬉しそうに提案する
「そう、じゃあどこかに出かけない?」
「いいわよ、どこいこっか?」
「そうね、今日は天気もいいしちょっと暑くなりそうだから川のほうに行ってみない?」
「OK、じゃあ川に行きましょう。お昼作っていこっか。」
「賛成。なにつくろっか?」
「まだパンが結構あまってるからサンドウィッチにしましょ。」
「いいわよ。じゃあちょっと作るの頼んでいい?その間にお洗濯終わらせるから。」
「わかったわ。そっちお願いね。」
「うん。」
今日の予定を決め二人は朝食を進めていく
そうして時折紅茶の御代わりを入れてくれる人形達に感謝しながら朝の時間を過ごした
「これでよし。」
アリスはキッチンでお昼用のサンドウィッチを作っていた
中身はシンプルに卵やハムレタスをはさんだものにした
それでも卵にマスタードをいれてアクセントにするなどの工夫はもちろんしているが
隣では上海人形と蓬莱人形が持って行く紅茶の準備をしてくれていた
そしてたった今両方とも完成した所だ
「ありがとね、ふたりとも。」
手伝ってくれたことに礼を言うと二人はくるくる飛び回って喜んでいた
アリスは出来上がったものをバスケットにいれて二人を連れて玄関のほうに向かった
アリスが玄関につくとちょうど霊夢が部屋から出てきた
「あらジャストタイミング。」
霊夢は笑ってアリスに近寄った
「準備できたみたいね。」
「お互いにね。」
アリスはお互い準備ができたことを確認しながら霊夢を見た
彼女は巫女服でなく白を基調とした赤のチェックラインの入ったワンピースを着ていた
「その服かわいいわね。」
アリスがほめると
「ありがと。お気に入りなの、これ。」
と霊夢は少し顔を赤くした
「そういえば、洗濯物の取り込みはどうするの?」
その後靴をはきながらアリスはふと思ったことを口にした
「あの子たちが任せてくれって、だからお言葉に甘えちゃった。」
と霊夢はぺろっと舌を出して少し申し訳なさそうに言った
「またあの子たちをメイドかなんかと勘違いしてない?」
それにジト目でアリスが霊夢を見ると
「そ、そんなことはないわよ!」
霊夢は憤慨しながら言い返し
「ならいいんだけどね。」
アリスは苦笑いしながら外に出た
「あー!信じてないわね!?」
「そんな事ないわよ?でも前科があるとね~?」
「やっぱり信じてないじゃない!!」
そんな痴話げんかをしながら二人は飛び立つ
その様子を見て上海と蓬莱は笑いながら追いかけていった
霊夢が自分の家に来たのは数ヶ月前になる
事の発端は自分が幻想郷に来て暫くたった後
霊夢が博麗の巫女をやめることを決めたことが始まり
その頃の彼女はまだ力も十分にあったが時期を考えると代を変えるには今が一番良かったらしい
そしてその少し後 霊夢は新しい巫女を連れてきて修行を始めた
修行は滞りなく終わりやがて霊夢が神社を出て行く日が来た
そこで問題が出てきた
霊夢がこれからどうするかだ
彼女自身どこかで隠居する気だったらしいがどこに住むかまったく決めてなかったらしい
里で暮らさないのかと聞くと静かに日々を過ごしたいらしいので却下
だからと言ってこのままでは野宿だ
そこで私が家に来ないかと提案したのだ
私の家は森の中にあるから静かだし家事も分ければ楽だろうと
その提案に霊夢は乗ってくれた
魔理沙も立候補したが霊夢が却下した
あんなゴミゴミした家でゆっくりできるものかと
魔理沙は憤慨していたがあの時いた面子は全員がその言葉に納得していた
そんなこんなで霊夢は巫女を辞め私の家に転がり込んできたわけである
サラサラと気持ちの良い音が聞こえる
二人は薄着で行ったがその日の気温は思った以上に高かった
なので川に着くと二人はまず靴を脱いで足をつけた
「あー気持ちいい。」
「ほんとね~。」
「こんなことなら水着でも持ってくればよかったわ。」
「霊夢って水着持ってたっけ?」
「あるわよ。さらしが。」
「それは水着とは言わないわよ。」
「いいのよ。別に泳げれば。」
「どうなのよそれは。と言うより…。」
「なによ?」
アリスが霊夢の胸を見る
「何かをつける意味はあるのかしら?」
目線の意味に気づいた霊夢が胸を隠しながら叫ぶ
「うるさいわね!人の事言えないくせに!!」
それにアリスはハンッと鼻で笑い
「私は日々成長しているのよ。」
霊夢に勝利宣言をした
その様子に霊夢は悔しそうにうめいた
「クッ。……そんな事言ってもいいのかしらね。」
「なによ、負け惜しみ?」
「いいえ、べつに~。ただ大きくなったのは胸だけなのかしらね~?と。」
「…どういう意味よ。」
「アリスさんたら最近おなか周りが大きくなってるご様子なので?」
「な、なんでそれを!?」
「お風呂上りにお腹押さえて鏡と睨めっこしてればねぇ、このことって上海と蓬莱も知ってるわよ?」
「ちょ、ちょっと!?二人ともほんとに!?」
「シャンハーイ」
「ホラーイ」
形勢は逆転したらしい
慌てるアリスに上海と蓬莱は気まずそうに目を合わせなかった
それは全てを物語っている
「まぁ、見た目そこまで変わってないから?別にいいんじゃない?」
そこへ霊夢が止めを刺す
オーッホッホッホと笑っている姿は同考えても悪女にしか見えない
それによってアリスは完全にへこんでしまっていた
その後上海たちの協力の下何とかアリスを復活させた霊夢は昼食をとった
アリスの作ったサンドウィッチは簡素ながらもおいしく霊夢は喜んだ
お昼を楽しんだ後二人は持ってきた紅茶を飲みながら木陰で涼んだ
そしてまた川に入り今度は水のかけ合いもしたりした
そのために帰るころには二人ともびしょぬれだった
その間で
バシャ
「甘いわよっアリス!」
「くっ、やるわね霊夢、しかたないわ。上海!蓬莱!援護して!!」
霊夢のすばやい攻撃にこちらも奥の手と人形達にアリスは援護を求める
が
二人はふよふよと飛ぶと霊夢側についてしまった
「え、ちょっと二人とも!?貴方達のマスターは私でしょ!?」
焦って叫ぶアリスに二人は首を振って
「シャンハーイ」
「ホラーイ」
霊夢の肩に降りてしまった
霊夢は不適に笑って
「ふふふ、この子達は既に私の仲間よ。やっておしまい!」
指令を出す
上海と蓬莱はその指令に忠実に従いアリスを水浸しにした
そのあまりにも完璧な扱い振りに
「霊夢、恐ろしい子!!」
アリスは戦慄した
ということがあったりした
夕暮れ時になって二人は家に帰った
水に濡れて冷えてしまっていたので最初に風呂に入った
そこでも
「やっぱり小さいわね。」
「うるさい!!」
などとひと悶着合ったりした
昼の事をまだ根に持ってたらしい
風呂のあとは準備が遅くなっていたので二人で夕食を作った
メニューは霊夢の意向で和食
焼き魚や味噌汁を作った
夕食が終わった後は食後のお茶を飲みながらのんびり過ごした
窓の外には月がきれいに出ていたので簡単なお月見気分だった
寝る時間になって
人形達におやすみを言った後二人はベッドに入った
あいにくアリスは一人で住んでいたのでベッドは一つしかなかった
霊夢が来た頃はどうしようか考えていたが
ベッドが大きめであったためか二人で寝ても特に問題なかったので結局今も同じベッドで寝ている
「今日は楽しかったわ。」
「そうね。」
「明日はどうするの?」
「今作ってる途中の子がいるからその続き。」
「ふ~ん、でも明日は寝坊しないでよね?当番はアリスなんだから。」
「はいはい。」
「……。」
「霊夢?」
話している途中に急に黙ってしまった霊夢にアリスは怪訝そうに尋ねた
「いや、何か忘れてる気がして…。」
「何を?」
「わかんない、けど何か大切なことを忘れてる気がする。」
霊夢は必死に何かを思い出そうとしていた
自分が忘れている何かを
「そうなの?でも…。」
アリスが優しく霊夢の頬を撫でる
その手は暖かく霊夢を落ち着いた気持ちにさせた
「本当に大事なことならいつか思い出すわ。無理に思い出そうとしないほうがいい。」
「そうね。」
アリスの言葉に納得した霊夢は思い出そうとするのをやめて目を閉じた
「おやすみ、アリス。」
「ええ、おやすみ。」
暫くした後 ベッドからは寝息が聞こえるようになった
明日もまた楽しい日になるだろうと眠りにつく直前に霊夢は思った
「霊夢、寝た?」
霊夢が寝息を立てるようになった後
アリスはゆっくりと体を起こした
そして霊夢の頭に手をかざし
「―――――」
何かの術を行った
小さな光が霊夢を包み 収まる
「これでよし。」
アリスは息をついた
「まだ、まだ駄目よ、霊夢。もうちょっと、もうちょっとだから。」
霊夢の髪を梳きながら呟く
まだ 全部を思い出すのは早い
先ほどアリスが使ったのは記憶を封印する魔法だった
アリスはこうやって毎夜霊夢が寝た後に魔法を使っている
そうしないと封印が解けてしまうからだ
霊夢の“自分が死んだ”という記憶が
この思いの始まりはまだ自分が魔界にいた頃
貴女は異変解決のために魔界に乗り込んできた
自分と同じくらいの年齢でありながら自分の母親さえも圧倒する力
それに憧れを覚えた
暫くたって貴女を追って幻想郷に来た
長く会ってなかったので貴女が自分を覚えているか心配だった
その心配はすぐになくなったが
貴女は覚えていてくれたし友達になってくれた
それから私も力をつけて貴女の隣に立てるようにまでなった
いろんな人に会った
妖怪人間神西洋の妖
貴女は誰に対しても物怖じしなかった
自分の目で物事を測り 誰かの示す定規に沿わない
その姿はあの頃とかわらず格好よかったし美しかった
日々を過ごす中で貴女と親密になっていった
私の中にある感情もまた育っていった
私はその感情が何か解っていた
恋だった
同性だったし 憧れもあった
だから最初は勘違いだと思っていた
でも日々強くなっていくこの感情は嘘じゃないとわかった
そして私は貴女に告白した
貴女の返事は私に絶望と希望を与えた
『ありがとうアリス。私を好きになってくれて。私もあなたのことが好きよ、友達としてではなくてね。』
『じゃぁ。』
『でも駄目なの、ごめんなさい。私と貴女では寿命が違いすぎるわ。私が先にいってしまってあなたを一人にするのは寂しすぎる。』
『そんなの!!』
『それにね…。』
『……』
『わかっているでしょう?私は博麗、誰かにつくことはできないのよ。たとえそれが好きな人だとしても。』
あのときほど幻想郷に恨みを持ったことはない
愛する人が目の前にいるのに結ばれることができない世界をぶち壊してやりたかった
でも貴女は約束してくれた
『もし…。』
『もし私が生まれ変わって、ただの何かになっていて、それでも出会えたら。』
『そのときは一緒になりましょう。』
転生したその先
いつか出会えたらあなたは受け入れてくれると
それから私は貴女とともにあるための準備をし始めた
貴女がもしまた短命な存在になっていたとしても一緒にいられるようにあなたに似せた人形を
貴女を探し出せるように術式を
そして貴女と暮らしていけるように家の準備を
耐えなければならない事もあった
貴女が好きでもない男の元に嫁ぐのを見ること
その男との子供を育てている貴女を見ること
何よりまだ私を大事に思っていてくれていること
何もできずただ待っていなければならなかった
連れ去ってしまおうかと思うことも何度もあった
相手の男を殺してやろうとさえ思った
それでも私は待ち続けた
そして時は来た
待ち続けたその時が
貴女はある日の夜 眠るように息を引き取った
周りの人が悲しむ中私は急いで家に戻った
術式の前に立ち発動させる
あれから知ったことがある
亡くなってしまった存在の魂は輪廻の中でリセットされてしまうことだ
前の記憶を持っていることはまれらしい
私は焦った
それでは一緒になれなくなってしまうから
術式を変えた
貴女を探すものから貴女の魂を呼ぶものに
失敗は許されない
失敗すれば二度とあなたに会えなくなる
術は成功してくれた
貴女はここに来てくれた
私ははやる心臓を抑えて貴女の魂を人形に埋め込んだ
早く目覚めさせたかったが問題があった
死んだ人間の魂は向こう側へ行こうとしてしまうのだ
もし無理に起こしてしまうと記憶が戻ってきて人形から離れてしまう
しかし魂にこちらとのつながりが強くあれば離れてしまうことはない
一種の地縛霊と同じ考えだ
だから記憶の封印を行った
いつかその封印をとく日が来てもそれまでに絆を作ればいい
大丈夫だ
私達は相思相愛なのだから
今までずっと待っていたのだ
ようやく手に入れられたのだ
もう絶対に
離 し は し な い
「愛してるわ、霊夢。」
アリスは眠る霊夢にゆっくりとキスをした
しかし、アリスと霊夢の話だとアリスのヤンデレ率が高い気が…。
あ、ちなみにマリレイじゃなくてアリレイですね。
『わかっているでしょう?私は博霊、誰かにつくことはできないのよ。たとえそれが好きな人だとしても。』
>>博霊ではなく、博麗。
後上の人も言っているがマリレイじゃなくてアリレイ。
別に主流にならなくてもいいけどもうちっと増えないかなー>アリレイ&レイアリ
ほのぼのがコンセプトの物であっても、多少のシリアス抜きでは語れないのがレイアリだと思います。
このアリスの行動の善し悪しを第三者が自分の定規で量る行為は許されないし、
二人の問題に介入する権利は読者を含めた如何なる人妖にもありません。
ですからいかに歪な手段、関係であっても、彼女等が今幸福であるなら私はそれで良かったのだと思います。
レイアリ中毒の私に養分をありがとうございました!できればまたおねg(ry
大変楽しませていただいた。ありがとうございました。
アリレイ最高!!
霊夢には我儘を押し付けてるかもしれないが許してくれそう。
素晴らしい作品をありがとうございました。