革の焼ける匂いで目が覚めた。
机でうたた寝をして、蝋燭をいつの間にか倒していたらしい。放置してあった本の古風な表紙がすこし焦げているが、穴が開くほどではない。中の紙が燃えなかったのも幸いだった。
長くはないが決して短くもない、私はそんな中途半端な眠り方をしていたようだ。喉がひどく渇いていた。夏の低い月が頼りない光を窓から投げかけていたが、再び蝋燭を付けるとそれもほとんど見えなくなる。時刻は零時を少し回った頃だろう。
再び眠る気にはなれなかった。温めのお茶が欲しいところだったが、人を呼びつけるにはやや遅い時間だ。自分でお茶を淹れようにも、私は茶葉の位置を知らない。
目の前には、寝入る前に私が書きものをしていた跡がある。
私は気を取り直し、羽根ペンをインク壺に浸けた。紙に向かってから、自分が寝入る前、いったい何を書いていたのか抜け落ちたように忘れていることに気がついた。
馬鹿馬鹿しくなって羽根ペンを置く。傍らの缶からミントの小さな葉を一枚つまんで口に含んだ。葉脈を歯で破ると、口の中が強い香味で塗りつぶされる。寝起きの頭はいくぶんすっきりしたが、何を書いていたのかはまだ思い出せない。前の紙を繰ってみても、それを自分が書いていたことが上手く飲み込めなかった。確かにそれは良くできた考察だとは思う。筋道が立っているし、引用も豊富だ。でも、だから何だというのだろう。それはのっぺりした価値のない模様に思えた。まるで眠る前と後で、自分が分裂したかのような錯覚を私は覚える。
ミントをもう一枚口に含みながら、私は紙の続きにすらすらとペンを滑らせた。
意識は殻が外れて、鹿の背中のようにすっかり無防備になっていた。私は気がつくと今見た夢を書き連ねている。夢の解釈や占いの冷めた分析とはほど遠い、主観的で、あいまいで、彼女の出てきた夢の話。
論理的な考察に、のぼせた少女の恋文のような文章が接ぎ木されると、私は大声で笑いたくなった。ちょっと、私はいったい何を書いているの、と。
いよいよもって分裂病かと思ったが、ペンが気持ちの良いくらいに進むのだからどうしようもない。二枚ほど紙を埋めた時点で、私は噛んだままだったミントを思い出し、飲み下そうとした。渇ききった喉ではなかなかうまくいかず、唾液で流し込むようにしてようやく飲み込んだ。それがきっかけで頭が冷える。
ミントの葉を飲むのに一苦労することと、自分の行いを反省することに何ら関係はないが、とにかく飲み込んだ瞬間に私はここに戻ってきたという感じがした。あんなに熱心に書いたレポートへ、なぜ私はがらくたのような文章を詰め込んでいるのだろう。
水をちょっと飲んで、ついでに顔も洗おうか、と私は机を立った。一瞥した紙にはびっしりと小さな文字が書き連ねてある。熱に浮かされた文章は、祭りの後の空虚な飾り付けを思わせた。
再び書斎に戻ると、足を組んで椅子に腰掛けている友人の姿があった。眠れずに退屈しているのか、羽根を小刻みに振るわせ、天井の一角をじっと眺めている。
「こんばんはレミィ」
声をかけると、レミィは牙を誇示するように口を歪め、そのくせ目だけは子犬か何かのように甘えるような光を見せた。おおかた天狗あたりに迫力ある身振りか何かを吹き込まれたのだろうが、目が口よりものを言うとはこのことだった。どうせやるなら徹底してもらいたいと思う。よくできました、と一応言ってやるとレミィは満足そうに椅子に座り直した。足の間に両手をつく座り方はいつにも増して子どもっぽい。
私は自分の机に座ったが、目の前のこの紙をさあどうしようかと悩んだ。レミィの前で続きなんて書くわけにもいかない。第一、夢の内容は刻一刻と記憶からすり切れ始めている。丸めて捨てるのが最善だ。
ただ、文章が気に入らない反面、夢そのものが失われていくことが惜しいと感じられる矛盾が不思議だった。これを捨ててしまうと、あとからそれを後悔しそうに思う。あのときなんであれを捨てたんだ、なんてそんな風に。
「ね、それ何?」
そしてレミィは人のこうしたためらいに聡い。私が紙を前に固まっているのを見て、それに何か特別なことが書いてあると察したらしい。彼女は返事も待たずに、私の肩口からひょいと一番上の紙――つまり一番見せてはいけない部分――をつまみ上げた。
「何じゃこりゃ。小説?」
「別に大したものじゃない」
「いつも以上の仏頂面だね。やっぱり恥ずかしいものなの?これ」
「ちょっと夢を見て、分析がてら書いただけ」
「『頬杖をつきながら彼女はその変な口調で――」
「読むな!」
体調を鑑みずに日符を使おうとする私を見ると、レミィは少し慌てた様子で紙を私に返した。たぶん、自分が痛いという話ではなく、私の喘息を心配してだと思う。なんというか、小憎らしい配慮だ。
私は少し乱暴に紙をまとめると、先ほどの表紙が焦げた本に挟み、適当な書棚に戻そうとした。本をかき分けて無理やり隙間を作っていると、後ろからレミィが呼びかけてきた。
「どんな夢だったの?ちょっと想像はつくけど」
私は振り返ることもせず、冷淡に言う。
「他人の夢の話なんて、あなたが一番聞きたくない種類の話じゃないの?」
なんせ、幻想入りした我々の抱く幻想なわけだ。もはや破綻している他人のそれは、聞いたところでちっとも中身に近づけない。外の世界でもそうなのだろうか。
「別にいいじゃないか。パチェの話、久々にききたいな」
甘えるような声でレミィが言った。私はますます顔を固くする。何が悲しくて、レミィの好奇心を満たすのに恥部を晒さなくてはならないのだ。
「ほら、パチェもちょっと話したそうな顔してるじゃない」
「え?」
思わず驚いた声が出る。私は頭の空いたスペースを使って、覚えている限り、夢の内容を分かりやすいよう整理していた自分にはっと気がついた。そのあとレミィがくすりと笑ったのを見て、かまかけだったと知る。
「怒らない怒らない、私はお茶を淹れてくるから」
「ちょっと、レミィっ、お茶くらい」
なにもあなたが、と止める間もなく、レミィは鼻歌を歌いながらぱたぱたと書庫をかけていった。私は椅子にもたれ、息をついた。脇の書棚には黒い本に紛れて一冊だけ、ろくでもない紙が挟まった、茶色い革の本が紛れている。
再び鼻歌が近づいてきた。ぱたぱたした足音と、かちゃかちゃした磁器の音がする。私が書斎の扉を開けてやると、レミィは両手で持った盆を私の机の上にかしゃと置いた。
レミィがお茶を淹れている。
そんな不思議な光景を前に見たような気もするし、絶えて見ない気もする。どちらにしても珍しい事態だ。こぼすようなこともなく、それなりに慣れた手つきでお茶を淹れるレミィを私は不思議そうに眺めた。それはあるべき濃さ、あるべき量で、カップの中にさらりと収まっている。
「ほら」
「ありがと」
取っ手をこちらに向けながらレミィがカップを置いた。一口すすってみるとふんわりと華やかな風味がする。あるべき味だ。私はむぅと考え込む。濃さ、量、味となるとこれはもうあるべきお茶そのものだ。どうよと言いたげにレミィが目配せをしてきた。少し腹が立ったので、熱いのを我慢して一気に飲んだ。底の澱をレミィに示し、「大凶」と一言言ってやった。「他のところは文句のつけようがなかったのだけれどね」
レミィは呆れた顔で私を見て言う。
「おかわりは?」
私は素直に頷く。
「頂きます」
レミィは憮然とした表情で私からカップを受け取った。こぽこぽとお茶を注ぐ音がし、カップから湯気が立つ。それが終わると、レミィは膝を揃えて私の方をじっと見る。一瞬、書斎はとても静かになった。
そして私は渋々話を始める。
―――○―――○―――
彼女は前に本を盗んだことを悪びれる様子もなく、釣り竿を持って図書館に顔を出した。彼女とはまだ知り合って間もなかった。
――目の前に湖があるんだから、釣りに行こうぜ。
目の前に湖がある。そこでは時々釣りをしている物好きがいる。つまり、今の紅魔館の立地なら簡単に釣りができる。
――行かない。
それで当の私が行かないのだから、彼女は私が釣り好きでないことくらい考えに入れるべきなのだ。だいたい、私は日の光が嫌いだと言ったし、釣りをして魚を捕まえる意味も分からない。私は魚なんて食べないし、魚を見たかったら図鑑を見ればことが足りる。
――行ってきてください。
そこで誰かが口を挟んだ。赤い髪をしている。ああ、これから片付けをするのだった。片付けをするのに私は邪魔なんだな、と私は思った。
(あなたがあの子の言うことに従ったことなんてあったかしらね。とレミィが笑う。あの子と分かっていたら従わなかった、と私は言う)
私はつばのついた帽子を被り、薄手のカーディガンを羽織った。外に出て、意を決して日向に一歩踏み出したが、思ったほど暑くはなかった。この分なら日射病にはならなくて済む。それどころか細胞が日を浴びて喜んでいるような感覚もある。
彼女は私を振り返り、夏の緑のような笑みを浮かべる。
館の門のところに、汽車が止まっていた。寸の短い客車が二両ほど繋がっている。
(汽車?とレミィが言った。「誰がそんなものを私に断りもなく!」)
――釣り場まではこれに乗っていくんだ。
――すぐそこが湖よ?
――遠くに行かないと釣れない。
青張りの客席に向かい合って座っていると、やがて汽車がごとりと動き始めた。線路ははじめ湖の縁に沿って曲がっていたが、すぐに汽車は湖に沿うのをやめ、真っ直ぐ進み始めた。やがて線路は渓流沿いの森を通っていく。ちょっと、と私は言う。
――湖で釣りをするんじゃなかったの?
――誰も湖で釣りをするとは言っていないぜ。
――「目の前に湖があるんだから」って貴女は言ったわ。
――「目の前に湖があって、釣り人を見ていると、とにかくどこであれ釣りがしたくなるだろう」って意味だ。
私は彼女の屁理屈に腹を立てた。騙されたとさえ思った。しかし、汽車は止まる気配はないし、図書館に帰ることもできない。私はむかむかとしながら肘掛けを使って頬杖をついた。
――まあそう怒るなよ。
彼女は手荷物から小ぎれいな魔法瓶を取り出した。それから、割れないようにケースに収められた陶器のマグカップを三つ。彼女はそこから二つ選んで取り出した。
――こういう時は美味いお茶を飲めばいい。
彼女はそう言って、カップを一つ私へ差し出した。落ち着いた赤さのお茶だった。
(お茶、とレミィは自分のカップをじぃっと覗き込む。少なくとも、と私は言う。「レミィのお茶より色は薄かったわね」)
――自分で淹れたの?
彼女は頷く。
――自分で美味いお茶を淹れられないと、人生は楽しくない。
私は少し呆気にとられたが、こう答えた。
――そこにいつもお茶を淹れてくれる人がいるとは限らないから?
――そういうことだぜ。
彼女は頬杖をつきながら、その変な口調で重々しく頷いた。いつのまにか汽車は森を抜け、街の中を走っていた。白と暖色でできた古い街だ。両脇を高くそびえる白塗りの壁が遮っている。線路に面した家の壁だった。それは線路のカーブにあわせて、左右にくねくねと形を変える。時々思い出したように、渡り廊下が二つの壁を繋いでいる。
行く手が大きく左へ曲がっていた。
――このカーブの向こうに、海が見えるんだ。
――知ってる。
私はそこで壁が途切れ、青く染まった海が目の前一杯に広がることを知っていた。私は海の予感に焦がれる。次に目を向けたとき、彼女はもうそこには決して座っていないことももう知っている。
そこで目が覚めた。
―――○―――○―――
「つかみ所のない夢だね」
レミィが少し困惑したように言った。
「最初に言ったでしょうに」
その様子を見て、私は話さない方が良かったかなと、少し思った。
「レミィに分析をお願いしようかしら。その能力で」
レミィは任せなさい、と胸を張る。両手を顔の前でがっしりと組み、何かを呟きながら念じている。私はそのいかにも適当な動作にぷっと吹き出してしまった。こんなことくらいでレミィが能力を使うはずがないし、私がそう思っていることをレミィも十分承知している。
「パチェがあいつを好きだってことは分かったよ。あとは逃避願望かしらね」
当然のように出た適当な結果に、私は思わず口ごもる。
そうなの?
「そうね、きっとそうだと思う」
素直にそう答えた。今さら否定してどうなるものでもない。
レミィはちょっと目を見張った後、柔らかく微笑んだ。
私は少しだけ大人びた顔立ちのレミィをじっと見た。
もちろん、私の体はそれ以上の影響を月日から受けているはずだった。
あんなにも惹かれた彼女の名前さえ、私は思い出せずにいる。
果物のような月が窓枠で半分に切られている。私はふっと蝋燭を吹き消した。レミィは椅子から立ち上がり、両手で伸びをした。
ねえ、と私は暗がりからレミィへ声をかける。レミィの背中の羽根は月の光でつやつやと光っていた。
「レミィは、覚えているんでしょ?彼女の名前が何だったのか」
何となく感じていたことを聞いてみた。私とレミィでは体の仕組みが違うし、寿命だって違う。記憶の仕組みだって違うはずだ。特に何百年も経ってしまったときは。
レミィはくるりと振り返る。目には柔らかな紅い光が湛えられていた。
「本当に知りたいのなら、天狗の新聞でも漁ってみれば良いでしょう?なのになぜ貴女はそれをしないの?」
私は口ごもる。あの天狗に頼めば、きっと喜んで今までの新聞を山ほどくれるには違いない。さすがに書庫が埋まりはしないだろうが、有能な助手のいない今だとだいぶ困る。だが、本当に知りたいのであればそれは特に致命的な障害ではない。
私が黙っていると、レミィは次の質問を投げかけてきた。
「彼女はどんな服装だった?」
私はこめかみに手を当て、一つずつ思い出したことを言っていく。
「黒いつば広の帽子。それから、えっと、ふわふわした金髪に、白いリボン、白いブラウス、黒いスカート、あとは、白いエプロンね」
自分でも驚くほど、彼女の格好をすらすらと述べることができた。
「どんな声で、どんなしゃべり方?」
「女の子にしては少し低めの声。だけど口調のせいで、ずいぶん高い声に聞える。飄々としても、時々こんなことを言っても大丈夫かなって探っているときがあって、そういうとき少しゆっくり喋る」
「ほら」
レミィはそう言ってほわっと笑った。
「だから、貴女はもう気づいているのよ。名前がなくてもそこには本質がある」
彼女の意見はそのまま飲み込むには問題があると私は思った。
でも、私の荷物はその言葉で軽くなった。燕の羽が生えたみたいに。
「でも、私は何をすればいいのか分からない。きっと私は明日も本を読むだけで、海への行き方なんて何も知らない」
レミィはこれ以上私の弱音なんか聞きたくない、とでも言いたげに背中を見せた。ぱたりと一度だけ羽根が動いた。
「じっとしているのが嫌だったら、まずはお茶の淹れ方でも覚えなさい」
そう言って、レミィの横顔は少し、ほんの少しだけ、寂しげに笑った。
「私みたいにね」
レミィの言葉で、ふっと記憶の鍵が開く。彼女と釣りに出かけたのは本当にあった出来事だ。時期はずいぶんずれている。いくら彼女だって、会って間もない頃に私を釣りに誘うわけはない。ついでに言えば、海のはずもなかった。釣りの場所は湖のほとりで、すぐ後ろに門番がいたのを覚えている。
彼女といても気持ちの弾みよりまず寂しさを感じるような、そんな時期だ。彼女は人間だから。私はそう割り切らなければいけなかった。
彼女は釣りをしながら、魔法瓶からお茶を注いだ。カップは、三つ。私と彼女と、それから後ろにいた門番の分だ。彼女はいつにも増して、元気のない様子で釣り竿を垂らしている。私はこの何月かで起こったことを知っていた。彼女が私を釣りに誘い出したのも、それが理由だったと思う。
私たちは草の上に、半ば寝転ぶようにして座りながら、波一つない湖面を見つめた。曇り空。湖は少し陰気な表情だった。私が思い出したようにカップに口をつけた。魔法瓶に入れられていた割に、それは淹れ立てとほとんど遜色ない味を保っていた。
「あなたってこんな特技あったかしら?」
私がそういうと彼女は悪戯が成功したみたいに笑った。笑いが済むと、彼女は不思議な目で湖面をじっと見ていた。人がいなくなって、まずしなきゃいけないことは何か、彼女はそう私に聞いてきた。話題がそちらに向かってしまうのは私としては避けたかったが、私は考え、答えた。
悼むこと。
彼女はまた、悪戯めいた笑いを、いくぶん小さく浮かべた。それは行動ではない、と彼女は言う。正解は、まずお茶を飲んで落ち着くこと。ただし、そのお茶はいなくなった人の代わりに自分で淹れなければいけない。だから理想的な解答はこうだよ。
曰く、美味しいお茶の淹れ方を覚えること。
次にやることなんかその後で考えればいいさ。私はこうして釣りをしているけどな。
思えば、ずいぶん遅くなってしまった。
その晩、私は夢を見る。
ねえ、と夢の中の私は言う。これでいいの?
――そうだな、それでいいんじゃないか。
彼女の声は、夏の丘へ吹く風のように、今の私の場所まで聞こえてくる。
(了)
机でうたた寝をして、蝋燭をいつの間にか倒していたらしい。放置してあった本の古風な表紙がすこし焦げているが、穴が開くほどではない。中の紙が燃えなかったのも幸いだった。
長くはないが決して短くもない、私はそんな中途半端な眠り方をしていたようだ。喉がひどく渇いていた。夏の低い月が頼りない光を窓から投げかけていたが、再び蝋燭を付けるとそれもほとんど見えなくなる。時刻は零時を少し回った頃だろう。
再び眠る気にはなれなかった。温めのお茶が欲しいところだったが、人を呼びつけるにはやや遅い時間だ。自分でお茶を淹れようにも、私は茶葉の位置を知らない。
目の前には、寝入る前に私が書きものをしていた跡がある。
私は気を取り直し、羽根ペンをインク壺に浸けた。紙に向かってから、自分が寝入る前、いったい何を書いていたのか抜け落ちたように忘れていることに気がついた。
馬鹿馬鹿しくなって羽根ペンを置く。傍らの缶からミントの小さな葉を一枚つまんで口に含んだ。葉脈を歯で破ると、口の中が強い香味で塗りつぶされる。寝起きの頭はいくぶんすっきりしたが、何を書いていたのかはまだ思い出せない。前の紙を繰ってみても、それを自分が書いていたことが上手く飲み込めなかった。確かにそれは良くできた考察だとは思う。筋道が立っているし、引用も豊富だ。でも、だから何だというのだろう。それはのっぺりした価値のない模様に思えた。まるで眠る前と後で、自分が分裂したかのような錯覚を私は覚える。
ミントをもう一枚口に含みながら、私は紙の続きにすらすらとペンを滑らせた。
意識は殻が外れて、鹿の背中のようにすっかり無防備になっていた。私は気がつくと今見た夢を書き連ねている。夢の解釈や占いの冷めた分析とはほど遠い、主観的で、あいまいで、彼女の出てきた夢の話。
論理的な考察に、のぼせた少女の恋文のような文章が接ぎ木されると、私は大声で笑いたくなった。ちょっと、私はいったい何を書いているの、と。
いよいよもって分裂病かと思ったが、ペンが気持ちの良いくらいに進むのだからどうしようもない。二枚ほど紙を埋めた時点で、私は噛んだままだったミントを思い出し、飲み下そうとした。渇ききった喉ではなかなかうまくいかず、唾液で流し込むようにしてようやく飲み込んだ。それがきっかけで頭が冷える。
ミントの葉を飲むのに一苦労することと、自分の行いを反省することに何ら関係はないが、とにかく飲み込んだ瞬間に私はここに戻ってきたという感じがした。あんなに熱心に書いたレポートへ、なぜ私はがらくたのような文章を詰め込んでいるのだろう。
水をちょっと飲んで、ついでに顔も洗おうか、と私は机を立った。一瞥した紙にはびっしりと小さな文字が書き連ねてある。熱に浮かされた文章は、祭りの後の空虚な飾り付けを思わせた。
再び書斎に戻ると、足を組んで椅子に腰掛けている友人の姿があった。眠れずに退屈しているのか、羽根を小刻みに振るわせ、天井の一角をじっと眺めている。
「こんばんはレミィ」
声をかけると、レミィは牙を誇示するように口を歪め、そのくせ目だけは子犬か何かのように甘えるような光を見せた。おおかた天狗あたりに迫力ある身振りか何かを吹き込まれたのだろうが、目が口よりものを言うとはこのことだった。どうせやるなら徹底してもらいたいと思う。よくできました、と一応言ってやるとレミィは満足そうに椅子に座り直した。足の間に両手をつく座り方はいつにも増して子どもっぽい。
私は自分の机に座ったが、目の前のこの紙をさあどうしようかと悩んだ。レミィの前で続きなんて書くわけにもいかない。第一、夢の内容は刻一刻と記憶からすり切れ始めている。丸めて捨てるのが最善だ。
ただ、文章が気に入らない反面、夢そのものが失われていくことが惜しいと感じられる矛盾が不思議だった。これを捨ててしまうと、あとからそれを後悔しそうに思う。あのときなんであれを捨てたんだ、なんてそんな風に。
「ね、それ何?」
そしてレミィは人のこうしたためらいに聡い。私が紙を前に固まっているのを見て、それに何か特別なことが書いてあると察したらしい。彼女は返事も待たずに、私の肩口からひょいと一番上の紙――つまり一番見せてはいけない部分――をつまみ上げた。
「何じゃこりゃ。小説?」
「別に大したものじゃない」
「いつも以上の仏頂面だね。やっぱり恥ずかしいものなの?これ」
「ちょっと夢を見て、分析がてら書いただけ」
「『頬杖をつきながら彼女はその変な口調で――」
「読むな!」
体調を鑑みずに日符を使おうとする私を見ると、レミィは少し慌てた様子で紙を私に返した。たぶん、自分が痛いという話ではなく、私の喘息を心配してだと思う。なんというか、小憎らしい配慮だ。
私は少し乱暴に紙をまとめると、先ほどの表紙が焦げた本に挟み、適当な書棚に戻そうとした。本をかき分けて無理やり隙間を作っていると、後ろからレミィが呼びかけてきた。
「どんな夢だったの?ちょっと想像はつくけど」
私は振り返ることもせず、冷淡に言う。
「他人の夢の話なんて、あなたが一番聞きたくない種類の話じゃないの?」
なんせ、幻想入りした我々の抱く幻想なわけだ。もはや破綻している他人のそれは、聞いたところでちっとも中身に近づけない。外の世界でもそうなのだろうか。
「別にいいじゃないか。パチェの話、久々にききたいな」
甘えるような声でレミィが言った。私はますます顔を固くする。何が悲しくて、レミィの好奇心を満たすのに恥部を晒さなくてはならないのだ。
「ほら、パチェもちょっと話したそうな顔してるじゃない」
「え?」
思わず驚いた声が出る。私は頭の空いたスペースを使って、覚えている限り、夢の内容を分かりやすいよう整理していた自分にはっと気がついた。そのあとレミィがくすりと笑ったのを見て、かまかけだったと知る。
「怒らない怒らない、私はお茶を淹れてくるから」
「ちょっと、レミィっ、お茶くらい」
なにもあなたが、と止める間もなく、レミィは鼻歌を歌いながらぱたぱたと書庫をかけていった。私は椅子にもたれ、息をついた。脇の書棚には黒い本に紛れて一冊だけ、ろくでもない紙が挟まった、茶色い革の本が紛れている。
再び鼻歌が近づいてきた。ぱたぱたした足音と、かちゃかちゃした磁器の音がする。私が書斎の扉を開けてやると、レミィは両手で持った盆を私の机の上にかしゃと置いた。
レミィがお茶を淹れている。
そんな不思議な光景を前に見たような気もするし、絶えて見ない気もする。どちらにしても珍しい事態だ。こぼすようなこともなく、それなりに慣れた手つきでお茶を淹れるレミィを私は不思議そうに眺めた。それはあるべき濃さ、あるべき量で、カップの中にさらりと収まっている。
「ほら」
「ありがと」
取っ手をこちらに向けながらレミィがカップを置いた。一口すすってみるとふんわりと華やかな風味がする。あるべき味だ。私はむぅと考え込む。濃さ、量、味となるとこれはもうあるべきお茶そのものだ。どうよと言いたげにレミィが目配せをしてきた。少し腹が立ったので、熱いのを我慢して一気に飲んだ。底の澱をレミィに示し、「大凶」と一言言ってやった。「他のところは文句のつけようがなかったのだけれどね」
レミィは呆れた顔で私を見て言う。
「おかわりは?」
私は素直に頷く。
「頂きます」
レミィは憮然とした表情で私からカップを受け取った。こぽこぽとお茶を注ぐ音がし、カップから湯気が立つ。それが終わると、レミィは膝を揃えて私の方をじっと見る。一瞬、書斎はとても静かになった。
そして私は渋々話を始める。
―――○―――○―――
彼女は前に本を盗んだことを悪びれる様子もなく、釣り竿を持って図書館に顔を出した。彼女とはまだ知り合って間もなかった。
――目の前に湖があるんだから、釣りに行こうぜ。
目の前に湖がある。そこでは時々釣りをしている物好きがいる。つまり、今の紅魔館の立地なら簡単に釣りができる。
――行かない。
それで当の私が行かないのだから、彼女は私が釣り好きでないことくらい考えに入れるべきなのだ。だいたい、私は日の光が嫌いだと言ったし、釣りをして魚を捕まえる意味も分からない。私は魚なんて食べないし、魚を見たかったら図鑑を見ればことが足りる。
――行ってきてください。
そこで誰かが口を挟んだ。赤い髪をしている。ああ、これから片付けをするのだった。片付けをするのに私は邪魔なんだな、と私は思った。
(あなたがあの子の言うことに従ったことなんてあったかしらね。とレミィが笑う。あの子と分かっていたら従わなかった、と私は言う)
私はつばのついた帽子を被り、薄手のカーディガンを羽織った。外に出て、意を決して日向に一歩踏み出したが、思ったほど暑くはなかった。この分なら日射病にはならなくて済む。それどころか細胞が日を浴びて喜んでいるような感覚もある。
彼女は私を振り返り、夏の緑のような笑みを浮かべる。
館の門のところに、汽車が止まっていた。寸の短い客車が二両ほど繋がっている。
(汽車?とレミィが言った。「誰がそんなものを私に断りもなく!」)
――釣り場まではこれに乗っていくんだ。
――すぐそこが湖よ?
――遠くに行かないと釣れない。
青張りの客席に向かい合って座っていると、やがて汽車がごとりと動き始めた。線路ははじめ湖の縁に沿って曲がっていたが、すぐに汽車は湖に沿うのをやめ、真っ直ぐ進み始めた。やがて線路は渓流沿いの森を通っていく。ちょっと、と私は言う。
――湖で釣りをするんじゃなかったの?
――誰も湖で釣りをするとは言っていないぜ。
――「目の前に湖があるんだから」って貴女は言ったわ。
――「目の前に湖があって、釣り人を見ていると、とにかくどこであれ釣りがしたくなるだろう」って意味だ。
私は彼女の屁理屈に腹を立てた。騙されたとさえ思った。しかし、汽車は止まる気配はないし、図書館に帰ることもできない。私はむかむかとしながら肘掛けを使って頬杖をついた。
――まあそう怒るなよ。
彼女は手荷物から小ぎれいな魔法瓶を取り出した。それから、割れないようにケースに収められた陶器のマグカップを三つ。彼女はそこから二つ選んで取り出した。
――こういう時は美味いお茶を飲めばいい。
彼女はそう言って、カップを一つ私へ差し出した。落ち着いた赤さのお茶だった。
(お茶、とレミィは自分のカップをじぃっと覗き込む。少なくとも、と私は言う。「レミィのお茶より色は薄かったわね」)
――自分で淹れたの?
彼女は頷く。
――自分で美味いお茶を淹れられないと、人生は楽しくない。
私は少し呆気にとられたが、こう答えた。
――そこにいつもお茶を淹れてくれる人がいるとは限らないから?
――そういうことだぜ。
彼女は頬杖をつきながら、その変な口調で重々しく頷いた。いつのまにか汽車は森を抜け、街の中を走っていた。白と暖色でできた古い街だ。両脇を高くそびえる白塗りの壁が遮っている。線路に面した家の壁だった。それは線路のカーブにあわせて、左右にくねくねと形を変える。時々思い出したように、渡り廊下が二つの壁を繋いでいる。
行く手が大きく左へ曲がっていた。
――このカーブの向こうに、海が見えるんだ。
――知ってる。
私はそこで壁が途切れ、青く染まった海が目の前一杯に広がることを知っていた。私は海の予感に焦がれる。次に目を向けたとき、彼女はもうそこには決して座っていないことももう知っている。
そこで目が覚めた。
―――○―――○―――
「つかみ所のない夢だね」
レミィが少し困惑したように言った。
「最初に言ったでしょうに」
その様子を見て、私は話さない方が良かったかなと、少し思った。
「レミィに分析をお願いしようかしら。その能力で」
レミィは任せなさい、と胸を張る。両手を顔の前でがっしりと組み、何かを呟きながら念じている。私はそのいかにも適当な動作にぷっと吹き出してしまった。こんなことくらいでレミィが能力を使うはずがないし、私がそう思っていることをレミィも十分承知している。
「パチェがあいつを好きだってことは分かったよ。あとは逃避願望かしらね」
当然のように出た適当な結果に、私は思わず口ごもる。
そうなの?
「そうね、きっとそうだと思う」
素直にそう答えた。今さら否定してどうなるものでもない。
レミィはちょっと目を見張った後、柔らかく微笑んだ。
私は少しだけ大人びた顔立ちのレミィをじっと見た。
もちろん、私の体はそれ以上の影響を月日から受けているはずだった。
あんなにも惹かれた彼女の名前さえ、私は思い出せずにいる。
果物のような月が窓枠で半分に切られている。私はふっと蝋燭を吹き消した。レミィは椅子から立ち上がり、両手で伸びをした。
ねえ、と私は暗がりからレミィへ声をかける。レミィの背中の羽根は月の光でつやつやと光っていた。
「レミィは、覚えているんでしょ?彼女の名前が何だったのか」
何となく感じていたことを聞いてみた。私とレミィでは体の仕組みが違うし、寿命だって違う。記憶の仕組みだって違うはずだ。特に何百年も経ってしまったときは。
レミィはくるりと振り返る。目には柔らかな紅い光が湛えられていた。
「本当に知りたいのなら、天狗の新聞でも漁ってみれば良いでしょう?なのになぜ貴女はそれをしないの?」
私は口ごもる。あの天狗に頼めば、きっと喜んで今までの新聞を山ほどくれるには違いない。さすがに書庫が埋まりはしないだろうが、有能な助手のいない今だとだいぶ困る。だが、本当に知りたいのであればそれは特に致命的な障害ではない。
私が黙っていると、レミィは次の質問を投げかけてきた。
「彼女はどんな服装だった?」
私はこめかみに手を当て、一つずつ思い出したことを言っていく。
「黒いつば広の帽子。それから、えっと、ふわふわした金髪に、白いリボン、白いブラウス、黒いスカート、あとは、白いエプロンね」
自分でも驚くほど、彼女の格好をすらすらと述べることができた。
「どんな声で、どんなしゃべり方?」
「女の子にしては少し低めの声。だけど口調のせいで、ずいぶん高い声に聞える。飄々としても、時々こんなことを言っても大丈夫かなって探っているときがあって、そういうとき少しゆっくり喋る」
「ほら」
レミィはそう言ってほわっと笑った。
「だから、貴女はもう気づいているのよ。名前がなくてもそこには本質がある」
彼女の意見はそのまま飲み込むには問題があると私は思った。
でも、私の荷物はその言葉で軽くなった。燕の羽が生えたみたいに。
「でも、私は何をすればいいのか分からない。きっと私は明日も本を読むだけで、海への行き方なんて何も知らない」
レミィはこれ以上私の弱音なんか聞きたくない、とでも言いたげに背中を見せた。ぱたりと一度だけ羽根が動いた。
「じっとしているのが嫌だったら、まずはお茶の淹れ方でも覚えなさい」
そう言って、レミィの横顔は少し、ほんの少しだけ、寂しげに笑った。
「私みたいにね」
レミィの言葉で、ふっと記憶の鍵が開く。彼女と釣りに出かけたのは本当にあった出来事だ。時期はずいぶんずれている。いくら彼女だって、会って間もない頃に私を釣りに誘うわけはない。ついでに言えば、海のはずもなかった。釣りの場所は湖のほとりで、すぐ後ろに門番がいたのを覚えている。
彼女といても気持ちの弾みよりまず寂しさを感じるような、そんな時期だ。彼女は人間だから。私はそう割り切らなければいけなかった。
彼女は釣りをしながら、魔法瓶からお茶を注いだ。カップは、三つ。私と彼女と、それから後ろにいた門番の分だ。彼女はいつにも増して、元気のない様子で釣り竿を垂らしている。私はこの何月かで起こったことを知っていた。彼女が私を釣りに誘い出したのも、それが理由だったと思う。
私たちは草の上に、半ば寝転ぶようにして座りながら、波一つない湖面を見つめた。曇り空。湖は少し陰気な表情だった。私が思い出したようにカップに口をつけた。魔法瓶に入れられていた割に、それは淹れ立てとほとんど遜色ない味を保っていた。
「あなたってこんな特技あったかしら?」
私がそういうと彼女は悪戯が成功したみたいに笑った。笑いが済むと、彼女は不思議な目で湖面をじっと見ていた。人がいなくなって、まずしなきゃいけないことは何か、彼女はそう私に聞いてきた。話題がそちらに向かってしまうのは私としては避けたかったが、私は考え、答えた。
悼むこと。
彼女はまた、悪戯めいた笑いを、いくぶん小さく浮かべた。それは行動ではない、と彼女は言う。正解は、まずお茶を飲んで落ち着くこと。ただし、そのお茶はいなくなった人の代わりに自分で淹れなければいけない。だから理想的な解答はこうだよ。
曰く、美味しいお茶の淹れ方を覚えること。
次にやることなんかその後で考えればいいさ。私はこうして釣りをしているけどな。
思えば、ずいぶん遅くなってしまった。
その晩、私は夢を見る。
ねえ、と夢の中の私は言う。これでいいの?
――そうだな、それでいいんじゃないか。
彼女の声は、夏の丘へ吹く風のように、今の私の場所まで聞こえてくる。
(了)
パチェさんの夢が、モノクロの無声映画のようで素敵でした。
魔理沙が淹れたのが日本茶でなく紅茶なのが、ひねくれ者の彼女らしいなと思ってしまいました。
流れたって事なんですね。
文体と雰囲気が特に個人的に大好きです。
読み終えた後、変に沈む事も無く穏やかな気分になれました。
良い話に出会えました。
卑怯なまでに綺麗だ
有能な助手は契約期間が切れたのでしょうか?
人間組の最後の一人だったのかな、魔理沙は。何にせよ、とても素敵な御話でした。
素晴らしい。
お嬢様が言うようにそこに本質があるからでしょうか。
>時々こんなことを言っても大丈夫かなって探っているときがあって、そういうとき少しゆっくり喋る
ここがとても好きです。喋る彼女も、それに気づいてるパチュリーも
どうしても100点をいれたくなりました。
良い作品をありがとうございます。
美鈴と子悪魔はどうなったんだろう……
この後の彼女らがどう生きていくのか、妄想が止まりませんw
しかしなんだかパチェよりもレミィがメインのような気もします
変に暗くなることなく、素直に感動できました。
こんな表現しかできない自分が情けなくなるほど。
晩年の彼女が釣りをしながら淹れたお茶は緑茶だったのか紅茶だったのか
紅茶だとしたらあの娘はどうしてるんだろうな
などと幻視たくましくしつつ楽しませてもらいました
ネタばれ動画 http://www.nicovideo.jp/watch/sm1001602
静かな雰囲気で、どこかあっさりとした文章で、それで綺麗なお話でした。
うん、気持ちが良かった。
人間組死亡の話は多いですけど、それの死を直接書いてないあたりが心憎いです。
もうなんか文句ないです
夢の表現がすごくリアルな感じですね
ああろくな感想もかけなくてすいません
ありがとうございました
始まりから終わりまで、感受性においし過ぎる内容でした。
何百年も経ってからというのが彼女らしいなー。
(前に書かせて頂いた感想が少し野暮かなと思ったので修正しました)
内容も良いですが、文章も凄く上手いなぁと感じました。
お嬢様の立ち振る舞いに違和感を感じさせるところが複線だったのですね。
あの我侭なレミィがこんなに落ち着くほど時間がたったのに、
パチェはあまり変わっていませんね。それもまたらしいです。
一体、吸血鬼と魔女ではどちらが取り残される方なのでしょうか。気になります。
そんなお話を読んで胸に浮かぶのはもの悲しさとか切なさとか感動とか、そういうんじゃないんだよなあ。
残念ながら言葉にできそうもないので、ただ良かった、とだけ。
「名前がなくてもそこには本質がある」の言葉通り、写実抜きでも彼女達の今が伝わりました。
とても良かった。ありがとう。
こういう作品に出会えて本当によかったです。ありがとうございました