*にとりと魔理沙の関係にオリジナル設定が含まれます(というか殆ど)
苦手な方はご注意ください。
「ん、んんーーーっ」
目が覚めたので体を起こして伸びをする。
ふぁ、よく寝た。
さて、さっさと身支度してご飯を食べるかな。
サクサクとトーストをかじりながら今日の予定を立ててみる。
基本、いつもどおりだと何も問題が無い。しかしそう行かないのが幻想郷だ。
普通に過ごしたい時に限って何かあるのよね。
未来は分からないからそこを考慮できないし、する必要も無くなる。しても無駄だから。
とりあえず新作の人形を仕上げちゃうかな。そしたら……そうだ、素材が足りなくなってるから里にでも買い出しに行こう。
大量にまとめ買いして家に貯蓄すればあまり出歩かずに済むから。
よし。予定は立った。後は行動するだけだ。
でもまず食器を洗わないと…
ひとしきり仕事を終え、新たな人形の服の細かい部分の仕上げにかかる。
手先の器用さには自信があるが、細かい作業にはやはり相当な集中力と精神力を要する。
「さてと……」
小さな人形に小さなフリルを付け、整える。ひたすらその繰り返し。
しかしここで力を抜くと完成してから荒が出てしまう。とても重要な作業。
…………
……………
………………
どれくらい経ったか分からないがついに人形が完成した。
見た目は現行の上海人形とほぼ変らないが、リボンやドレスの微妙な形状やつくりをよりこだわってみた感じ、いわゆるマイナーチェンジだ。
もちろんこの子に爆弾を搭載したりなどしない。
ただ友達を増やしただけだ。
……なんか今、ちょっと虚しくなった気がする……
そのとき。
トントントン。
ドアがノックされた。
「はーい」
ほら、お客さんぐらい来るじゃないの。
「どなた?」
おおかた、霊夢か魔理沙あたりかな?
ガチャリ。
「あら?」
「こんにちは~」
なんか、予想外の人が立っていた。
緑の帽子に青いワンピース、大きなリュックを背負った整髪の少女。
「えっと、あなたは…」
どこかで見たことがあるけど……
「あ、私は河城にとり。始めまして」
「え、あぁ、始めまして。あの?何か御用で?」
質問をしながらも思い出した。この妖怪は山の河童だ。以前魔理沙と一緒に居たのを見たことがある。
「今日はちょっとお尋ねしたいことがあってですね」
「何かしら?」
「いやね、なんで庭にあんないいもの置いてあるのかなぁ?って思ったから」
「いいもの?何かあったかしら?」
ガクッ!
にとりがすっころける。
「あるよあるよ、大いにありますとも!」
「?どれの事を言っているのかしら?」
少しドアから出て確認してみる。
「ほら、花壇の隅においてある…」
花壇の隅?
……鉄の塊があるわね。あれの事かしら?
「あれのこと言ってるの?」
「そうですとも。なんであんなもんがここに有るんですか?」
「あれ魔理沙に押し付けられたのよ。私じゃ手に負えない、とか言って。自分でどうにかできないものも拾ってきちゃうんだから…」
「えー!魔理沙、なんで私に流してくれなかったんだろ?」
「面白くなさそうに思ったからじゃない?あれの事」
「面白いですよ!まぁちょっと近づきまひょ」
なんかこの河童さん、だんだんテンションが上がってきているような…
しかも「お尋ねしたいこと」には答えてあげたはずだけど…
すると河童さん、背中のリュックやスカートの裾のポケットから工具を取り出し、塊の解体を始めた。
「ちょ、何散らかしてくれてんのよ!?」
人んちの庭で何始める気?
「なぁ~に、ちょろちょろっと遊ぶだけさぁ~♪」
「遊ぶ?」
「うん。まぁ見てなさいって」
そういうと黙々と作業を始めた。
しばらく私はだまって見ていたが、用事を思い出す。
里に行くんだった。
「あの、河童さん?」
「何ですか?」
「私ちょっと用事あるから少しここで勝手にやっててくれないかしら?すぐに戻るつもりだけど…」
庭でこんな変なことをしているのに長時間離れるわけにもいかないし…
「うん。わかりました……うひょー、やっぱ錆びてない!油膜ってすごいですよね!?」
「え、えぇ…」
言葉が通じません。
とにかく急いで買出しに行かなくちゃ。
「散らかしっぱなしだったら許さないからねっ!」
「大丈夫ですよ~」
どうも信用ならないのでとにかく急ぐことにした。
里で買い物を済ませ、自宅へ急ぐ。
魔理沙との付き合いが長いせいか、色々な事態が想定できる。殆どがネガティブな方向に。
庭は予想どおり散らかっていた。
「こらっ!散らかすなって言ったはずでしょう!?」
「うぇ!ごめんなさい!でもまだ作業中なんで許してください~」
「ったく……しょうがないわね。終わったら片付けるのよ?」
「はーい!」
そう返事した顔は本当に、おもちゃで遊ぶ子供のように輝いていた。
しばらく私は家の中からにとりの様子を観察した。
ぐるぐる回して……引っこ抜いて……磨いて……はめて……ぐるぐる回して……
ずっとその繰り返し。
人形を作っている時の私も傍から見ればあんな感じだったのだろうな。そう思うとにとりの行動が理解できるとともに、親近感が沸いてきた。
ちょっと外にお茶とお菓子を持っていこうかな。
「ほら、お茶とお菓子よ…。にしてもやたら熱心ね」
トレーを渡しながら話しかける。
「あ、ありがとうございます。……こうゆうの、好きなんですよ」
先ほどに比べかなりおとなしくなった。さっきはとても興奮していたようだ。
あっ…そういえば私、まだ名前言ってなかったっけ……
「そうそう、自己紹介が遅れてごめんなさいね。……私はアリス・マーガトロイド、人形遣いよ」
「あ、魔理沙が話していましたよ。器用なんですってね」
「え、そうかな、えへへ……」
ちょっと照れる。
魔理沙もそういうこと言ってくれてるんだ…
「こういうの分かりますか?」
にとりが穴だらけの塊を指差す。
熱意は理解できるが、これの構造は全くもって理解できない。
「正直分からないわ。でもあなたが夢中になっちゃう気持ちは分かるわよ。私も人形触ってるとね、つい時間を忘れちゃうのよね…」
微笑みかける。
「はい。楽しい時間は早いものでね…」
にとりも微笑んだ。
なかなか気が合うかもしれない。
「ねぇ、私達似たもの同士かも知れないわね」
「ええ、わたしもそう思いますよ」
友達……になれたのかな?
しばらく、にとりの横にいた。
部品を磨いたり、はめるのを手伝ったり、私も作業に参加してみた。
油でべとべとになったけど、なんとなく楽しかったので良しとする。
にとりが構造を説明してくれたけど、ちょっと難しかった…
「動かせば分かるよ」
そういってくれたにとり。しかもいつの間にか言葉遣いが変っている。
おそらくは、親近感を持ってくれたと考えていいと思うけど…。うん、多分大丈夫。
「それで、ここを締めれば……よしっと!」
「完成?」
「うん。一応動くようになったと思うよ」
「どうやって動かすの?」
「まぁこのままじゃ暴れて危ないから台の上で動かすよ。それに他の装置もいるから、今日はこれ私の家に持って帰っていい?」
「ええ、構わないわ」
「ありがと。じゃあ今日帰って準備してるから、明日私の家で動かそう。朝に迎えに来るよ」
「そう。じゃあ待ってるわね」
「わかった。じゃあまた明日~」
「またね」
にとりは手を振ると、歩いて帰っていった。
と言うのも、いつ組み立てたか分からないが大きな台車で塊を引っ張って行ったからである。
明日が楽しみだな。
翌朝。私はいつも通り朝をすごし、指で人形をコロコロと撫でて遊んでいた。
「おはようアリスー」
外から元気な声がした。
「おーい、アリスー起きろー」
もっと元気な声も…
「とっくに起きてるわよ」
外に出てみるとにとり、そしてやはり魔理沙がいた。
「おはよう、にとり、魔理沙」
「おはようだぜ」
相変わらずの魔理沙。
「おはよ、アリス。魔理沙も誘っちゃったけどいいかな?」
「構わないわよ。友達だし」
「よっし、じゃあいくか!」
「なんであんたが仕切ってるのよ…」
そんなわけで、3人、にとりの家を目指す。
森を抜け、山に入り、河の近く。ガラクタが積んであった。その横ににとりの家があった。
「ちょっと汚いけど入って待ってて」
「お邪魔します」
「おーう……ちょっとは片付けたらどうだ?足の踏み場も無いぜ」
「それ多分あんたに言われたくないと思うわ」
魔理沙の家も相当アレだから…
「よいしょ…っと。おーけー。こっち来てー」
にとりが呼んできたので奥へと進む。
そこは思いのほか広く、様々な道具が置いてあった。
「じゃあ、動かすけどV型8気筒のマフラー無しだから相当うるさいと思う。耳押さえておいて」
「え?なに?うるさいものなの?」
「まぁ、音を消す装置が無くなってるから仕方ないよ。じゃ行くよー」
「あ、ちょまっ!」
にとりが操作盤のボタンを押した。それと同時に、
キュウン、キュキュキュキュ、ボバッ、ボボボボボボボ…ッ!
轟音が響き、箱から飛び出ている軸が回転しだした。
「うへぇ……」
相当うるさい。耳を押さえるのが間に合ってよかった。
「うるせぇー!!」
魔理沙が怒鳴るが、その声さえ呑み込まれる。
「おおおお!動いた!!」
そんな中、にとりは興奮状態だった。しかもまだ何か操作盤をいじっている。
「……りょ……げるよ……!」
にとりが何か言ったが聞こえなかった。
そして操作盤のつまみを回す。すると…
ブワッボアアアアアアアアアアアア!!!!
もう、騒音ってレベルじゃ無いわよ……
しかも軸の回転が大変なことになっている。確かに台の上に乗っかっていないと危険なことこの上ない。
でも今は言葉がお互い聞こえないのでにとりが止めてくれるのを待つしかなかった。
がまん、がまん…
およそ3分ほどで騒音が止み、それと同時に動いていた部分も止まった。
「どうだった?」
にとりが寄ってきた。
「何あれ?騒音兵器?」
「いや。原動機だよ?シャフトがちゃんと回っていたでしょ?」
「確かに動いていたけれど…」
どうしてこれに夢中に寝れるかは理解しがたかった。
「なぁ、にとり。アレがどう動くのかは分かったが、何に使うためにあるんだ?」
「そうよ。おおよそ外の世界の物でしょうけど、用途が気になるわ」
すると、待っていましたといわんばかりに、
「そう!外の世界の乗り物の心臓部!」
「乗り物?」
幻想郷じゃ乗り物といえば死神の船か魔理沙の箒ぐらいしか思い当たらない。
「分かりやすくいうと、荷物を載せる車があるよね?それにこいつを積んで高速移動が可能なの」
ああ、里で見る車輪がついた引き車か。
あれで高速移動は怖いな。私は絶対乗りたくないし、外の世界ってひどくデンジャラスだ。
「魔法が使えないってのは不便なんだな。私は飛べるからこいつの世話にはならないぜ」
「ま、外の世界ではこれが重宝してるわけさ」
「でもなんでにとりはこんなものを直してまで動かしたかったの?無益じゃない」
「だって凄いと思わない?魔法を使っていないんだよ?部品の組み合わせだけで動いてるんだよ?」
「確かに勉強にはなるな。魔法に応用も利きそうだし」
「まぁ、そう言われればそうね」
「でしょ?ロマンだよね~」
にとりはこうゆうの詳しいわね。でも何で今更これを組み立てたのだろう?彼女の事だから今までにも絶対にこれと同じようなものには触っているはずだ。
「ねぇ?にとりってこれの実物初めて見たわけ?それともいつも見つけるたびに直してるの?」
「えっと…今回のは特に大きい型だったんでやってみたかったのと……アリスと……仲良くなってみたかったし……」
にとりの顔が心なしか赤くなった。
「え?」
つまり、私に近づきたくて?
何?私のこと知ってたの?……そういえば知ってたわね。魔理沙から聞いたんだっけ?
でもなんで?
「どうして私と?」
「どうしてもこうしても……アリス言ったよね?似たもの同士ってさ…。だから…」
ああ、確かに。私達は好きなことに夢中になっちゃうあたり似ているとお互いに確認した。
きっと魔理沙から話を聞いて興味が出たのだろう。そこで家の前にきたらあの塊を見つけたと。
「だからさ……アリス、友達になってよ」
もじもじとにとりが言う。
しかしあの言葉遣いからもうとっくにそう思っているかと思ったから、
「あら、もう友達かと思っていたわ」
そう言って、にっこり笑って見せた。何よりにとりの言葉が本当に嬉しかったから。
「…あ、ありがとう。アリス」
にとりも微笑んだ。
「いいのか、にとり?アリスは妖怪だぜ?」
「私は確かに人間好きだよ。でも妖怪が嫌いなんて言った覚えは無いよ?」
「そっか。じゃあこれからはにとりも交えて楽しくやってくか。良かったなアリス。友達増えて」
そういってにやける魔理沙。失礼なやつだ。
「そうだ、魔理沙、アリス。うちでご飯食べて行ってよ」
「お、ご馳走になるか」
「そうね、お腹空いちゃったし…」
実のところかなり空腹だった。
「よっし!じゃあ作ってくるね!」
何をご馳走してくれるんだろう?
「アリス野菜好きか?」
ふと魔理沙に尋ねられた。
「は?何で?嫌いじゃないけど…」
「ふふ……そうか……」
魔理沙がまたニヤニヤしだした。不気味だ。
「お待たせ~」
「ん?早かったわね」
にとりがお盆を持って入ってきた。
「本日のメニューは、にとり特製かっぱ巻き、きゅうりサラダ、きゅうりの糠漬け!」
魔理沙の言葉の意味が分かったわ。
苦手な方はご注意ください。
「ん、んんーーーっ」
目が覚めたので体を起こして伸びをする。
ふぁ、よく寝た。
さて、さっさと身支度してご飯を食べるかな。
サクサクとトーストをかじりながら今日の予定を立ててみる。
基本、いつもどおりだと何も問題が無い。しかしそう行かないのが幻想郷だ。
普通に過ごしたい時に限って何かあるのよね。
未来は分からないからそこを考慮できないし、する必要も無くなる。しても無駄だから。
とりあえず新作の人形を仕上げちゃうかな。そしたら……そうだ、素材が足りなくなってるから里にでも買い出しに行こう。
大量にまとめ買いして家に貯蓄すればあまり出歩かずに済むから。
よし。予定は立った。後は行動するだけだ。
でもまず食器を洗わないと…
ひとしきり仕事を終え、新たな人形の服の細かい部分の仕上げにかかる。
手先の器用さには自信があるが、細かい作業にはやはり相当な集中力と精神力を要する。
「さてと……」
小さな人形に小さなフリルを付け、整える。ひたすらその繰り返し。
しかしここで力を抜くと完成してから荒が出てしまう。とても重要な作業。
…………
……………
………………
どれくらい経ったか分からないがついに人形が完成した。
見た目は現行の上海人形とほぼ変らないが、リボンやドレスの微妙な形状やつくりをよりこだわってみた感じ、いわゆるマイナーチェンジだ。
もちろんこの子に爆弾を搭載したりなどしない。
ただ友達を増やしただけだ。
……なんか今、ちょっと虚しくなった気がする……
そのとき。
トントントン。
ドアがノックされた。
「はーい」
ほら、お客さんぐらい来るじゃないの。
「どなた?」
おおかた、霊夢か魔理沙あたりかな?
ガチャリ。
「あら?」
「こんにちは~」
なんか、予想外の人が立っていた。
緑の帽子に青いワンピース、大きなリュックを背負った整髪の少女。
「えっと、あなたは…」
どこかで見たことがあるけど……
「あ、私は河城にとり。始めまして」
「え、あぁ、始めまして。あの?何か御用で?」
質問をしながらも思い出した。この妖怪は山の河童だ。以前魔理沙と一緒に居たのを見たことがある。
「今日はちょっとお尋ねしたいことがあってですね」
「何かしら?」
「いやね、なんで庭にあんないいもの置いてあるのかなぁ?って思ったから」
「いいもの?何かあったかしら?」
ガクッ!
にとりがすっころける。
「あるよあるよ、大いにありますとも!」
「?どれの事を言っているのかしら?」
少しドアから出て確認してみる。
「ほら、花壇の隅においてある…」
花壇の隅?
……鉄の塊があるわね。あれの事かしら?
「あれのこと言ってるの?」
「そうですとも。なんであんなもんがここに有るんですか?」
「あれ魔理沙に押し付けられたのよ。私じゃ手に負えない、とか言って。自分でどうにかできないものも拾ってきちゃうんだから…」
「えー!魔理沙、なんで私に流してくれなかったんだろ?」
「面白くなさそうに思ったからじゃない?あれの事」
「面白いですよ!まぁちょっと近づきまひょ」
なんかこの河童さん、だんだんテンションが上がってきているような…
しかも「お尋ねしたいこと」には答えてあげたはずだけど…
すると河童さん、背中のリュックやスカートの裾のポケットから工具を取り出し、塊の解体を始めた。
「ちょ、何散らかしてくれてんのよ!?」
人んちの庭で何始める気?
「なぁ~に、ちょろちょろっと遊ぶだけさぁ~♪」
「遊ぶ?」
「うん。まぁ見てなさいって」
そういうと黙々と作業を始めた。
しばらく私はだまって見ていたが、用事を思い出す。
里に行くんだった。
「あの、河童さん?」
「何ですか?」
「私ちょっと用事あるから少しここで勝手にやっててくれないかしら?すぐに戻るつもりだけど…」
庭でこんな変なことをしているのに長時間離れるわけにもいかないし…
「うん。わかりました……うひょー、やっぱ錆びてない!油膜ってすごいですよね!?」
「え、えぇ…」
言葉が通じません。
とにかく急いで買出しに行かなくちゃ。
「散らかしっぱなしだったら許さないからねっ!」
「大丈夫ですよ~」
どうも信用ならないのでとにかく急ぐことにした。
里で買い物を済ませ、自宅へ急ぐ。
魔理沙との付き合いが長いせいか、色々な事態が想定できる。殆どがネガティブな方向に。
庭は予想どおり散らかっていた。
「こらっ!散らかすなって言ったはずでしょう!?」
「うぇ!ごめんなさい!でもまだ作業中なんで許してください~」
「ったく……しょうがないわね。終わったら片付けるのよ?」
「はーい!」
そう返事した顔は本当に、おもちゃで遊ぶ子供のように輝いていた。
しばらく私は家の中からにとりの様子を観察した。
ぐるぐる回して……引っこ抜いて……磨いて……はめて……ぐるぐる回して……
ずっとその繰り返し。
人形を作っている時の私も傍から見ればあんな感じだったのだろうな。そう思うとにとりの行動が理解できるとともに、親近感が沸いてきた。
ちょっと外にお茶とお菓子を持っていこうかな。
「ほら、お茶とお菓子よ…。にしてもやたら熱心ね」
トレーを渡しながら話しかける。
「あ、ありがとうございます。……こうゆうの、好きなんですよ」
先ほどに比べかなりおとなしくなった。さっきはとても興奮していたようだ。
あっ…そういえば私、まだ名前言ってなかったっけ……
「そうそう、自己紹介が遅れてごめんなさいね。……私はアリス・マーガトロイド、人形遣いよ」
「あ、魔理沙が話していましたよ。器用なんですってね」
「え、そうかな、えへへ……」
ちょっと照れる。
魔理沙もそういうこと言ってくれてるんだ…
「こういうの分かりますか?」
にとりが穴だらけの塊を指差す。
熱意は理解できるが、これの構造は全くもって理解できない。
「正直分からないわ。でもあなたが夢中になっちゃう気持ちは分かるわよ。私も人形触ってるとね、つい時間を忘れちゃうのよね…」
微笑みかける。
「はい。楽しい時間は早いものでね…」
にとりも微笑んだ。
なかなか気が合うかもしれない。
「ねぇ、私達似たもの同士かも知れないわね」
「ええ、わたしもそう思いますよ」
友達……になれたのかな?
しばらく、にとりの横にいた。
部品を磨いたり、はめるのを手伝ったり、私も作業に参加してみた。
油でべとべとになったけど、なんとなく楽しかったので良しとする。
にとりが構造を説明してくれたけど、ちょっと難しかった…
「動かせば分かるよ」
そういってくれたにとり。しかもいつの間にか言葉遣いが変っている。
おそらくは、親近感を持ってくれたと考えていいと思うけど…。うん、多分大丈夫。
「それで、ここを締めれば……よしっと!」
「完成?」
「うん。一応動くようになったと思うよ」
「どうやって動かすの?」
「まぁこのままじゃ暴れて危ないから台の上で動かすよ。それに他の装置もいるから、今日はこれ私の家に持って帰っていい?」
「ええ、構わないわ」
「ありがと。じゃあ今日帰って準備してるから、明日私の家で動かそう。朝に迎えに来るよ」
「そう。じゃあ待ってるわね」
「わかった。じゃあまた明日~」
「またね」
にとりは手を振ると、歩いて帰っていった。
と言うのも、いつ組み立てたか分からないが大きな台車で塊を引っ張って行ったからである。
明日が楽しみだな。
翌朝。私はいつも通り朝をすごし、指で人形をコロコロと撫でて遊んでいた。
「おはようアリスー」
外から元気な声がした。
「おーい、アリスー起きろー」
もっと元気な声も…
「とっくに起きてるわよ」
外に出てみるとにとり、そしてやはり魔理沙がいた。
「おはよう、にとり、魔理沙」
「おはようだぜ」
相変わらずの魔理沙。
「おはよ、アリス。魔理沙も誘っちゃったけどいいかな?」
「構わないわよ。友達だし」
「よっし、じゃあいくか!」
「なんであんたが仕切ってるのよ…」
そんなわけで、3人、にとりの家を目指す。
森を抜け、山に入り、河の近く。ガラクタが積んであった。その横ににとりの家があった。
「ちょっと汚いけど入って待ってて」
「お邪魔します」
「おーう……ちょっとは片付けたらどうだ?足の踏み場も無いぜ」
「それ多分あんたに言われたくないと思うわ」
魔理沙の家も相当アレだから…
「よいしょ…っと。おーけー。こっち来てー」
にとりが呼んできたので奥へと進む。
そこは思いのほか広く、様々な道具が置いてあった。
「じゃあ、動かすけどV型8気筒のマフラー無しだから相当うるさいと思う。耳押さえておいて」
「え?なに?うるさいものなの?」
「まぁ、音を消す装置が無くなってるから仕方ないよ。じゃ行くよー」
「あ、ちょまっ!」
にとりが操作盤のボタンを押した。それと同時に、
キュウン、キュキュキュキュ、ボバッ、ボボボボボボボ…ッ!
轟音が響き、箱から飛び出ている軸が回転しだした。
「うへぇ……」
相当うるさい。耳を押さえるのが間に合ってよかった。
「うるせぇー!!」
魔理沙が怒鳴るが、その声さえ呑み込まれる。
「おおおお!動いた!!」
そんな中、にとりは興奮状態だった。しかもまだ何か操作盤をいじっている。
「……りょ……げるよ……!」
にとりが何か言ったが聞こえなかった。
そして操作盤のつまみを回す。すると…
ブワッボアアアアアアアアアアアア!!!!
もう、騒音ってレベルじゃ無いわよ……
しかも軸の回転が大変なことになっている。確かに台の上に乗っかっていないと危険なことこの上ない。
でも今は言葉がお互い聞こえないのでにとりが止めてくれるのを待つしかなかった。
がまん、がまん…
およそ3分ほどで騒音が止み、それと同時に動いていた部分も止まった。
「どうだった?」
にとりが寄ってきた。
「何あれ?騒音兵器?」
「いや。原動機だよ?シャフトがちゃんと回っていたでしょ?」
「確かに動いていたけれど…」
どうしてこれに夢中に寝れるかは理解しがたかった。
「なぁ、にとり。アレがどう動くのかは分かったが、何に使うためにあるんだ?」
「そうよ。おおよそ外の世界の物でしょうけど、用途が気になるわ」
すると、待っていましたといわんばかりに、
「そう!外の世界の乗り物の心臓部!」
「乗り物?」
幻想郷じゃ乗り物といえば死神の船か魔理沙の箒ぐらいしか思い当たらない。
「分かりやすくいうと、荷物を載せる車があるよね?それにこいつを積んで高速移動が可能なの」
ああ、里で見る車輪がついた引き車か。
あれで高速移動は怖いな。私は絶対乗りたくないし、外の世界ってひどくデンジャラスだ。
「魔法が使えないってのは不便なんだな。私は飛べるからこいつの世話にはならないぜ」
「ま、外の世界ではこれが重宝してるわけさ」
「でもなんでにとりはこんなものを直してまで動かしたかったの?無益じゃない」
「だって凄いと思わない?魔法を使っていないんだよ?部品の組み合わせだけで動いてるんだよ?」
「確かに勉強にはなるな。魔法に応用も利きそうだし」
「まぁ、そう言われればそうね」
「でしょ?ロマンだよね~」
にとりはこうゆうの詳しいわね。でも何で今更これを組み立てたのだろう?彼女の事だから今までにも絶対にこれと同じようなものには触っているはずだ。
「ねぇ?にとりってこれの実物初めて見たわけ?それともいつも見つけるたびに直してるの?」
「えっと…今回のは特に大きい型だったんでやってみたかったのと……アリスと……仲良くなってみたかったし……」
にとりの顔が心なしか赤くなった。
「え?」
つまり、私に近づきたくて?
何?私のこと知ってたの?……そういえば知ってたわね。魔理沙から聞いたんだっけ?
でもなんで?
「どうして私と?」
「どうしてもこうしても……アリス言ったよね?似たもの同士ってさ…。だから…」
ああ、確かに。私達は好きなことに夢中になっちゃうあたり似ているとお互いに確認した。
きっと魔理沙から話を聞いて興味が出たのだろう。そこで家の前にきたらあの塊を見つけたと。
「だからさ……アリス、友達になってよ」
もじもじとにとりが言う。
しかしあの言葉遣いからもうとっくにそう思っているかと思ったから、
「あら、もう友達かと思っていたわ」
そう言って、にっこり笑って見せた。何よりにとりの言葉が本当に嬉しかったから。
「…あ、ありがとう。アリス」
にとりも微笑んだ。
「いいのか、にとり?アリスは妖怪だぜ?」
「私は確かに人間好きだよ。でも妖怪が嫌いなんて言った覚えは無いよ?」
「そっか。じゃあこれからはにとりも交えて楽しくやってくか。良かったなアリス。友達増えて」
そういってにやける魔理沙。失礼なやつだ。
「そうだ、魔理沙、アリス。うちでご飯食べて行ってよ」
「お、ご馳走になるか」
「そうね、お腹空いちゃったし…」
実のところかなり空腹だった。
「よっし!じゃあ作ってくるね!」
何をご馳走してくれるんだろう?
「アリス野菜好きか?」
ふと魔理沙に尋ねられた。
「は?何で?嫌いじゃないけど…」
「ふふ……そうか……」
魔理沙がまたニヤニヤしだした。不気味だ。
「お待たせ~」
「ん?早かったわね」
にとりがお盆を持って入ってきた。
「本日のメニューは、にとり特製かっぱ巻き、きゅうりサラダ、きゅうりの糠漬け!」
魔理沙の言葉の意味が分かったわ。
作者様のキャラクターへの気合いがこの作品を
豊かに彩っているように個人的に感じられました。
やや会話文が多く、状況が流れてしまっているように
感じられたことを、不躾ながら報告させて頂きます。
ありがとうございました。
アリスに対するにとりの心情がもう少し書かれてればもっと分かりやすかったのかな?
オチのアリスの感想は私とシンクロしましたねw
>会話文
確かにそうですね。自分なりに推敲はしたのですが、
どうやら癖になっているみたいですので改善していきたいです。
>にとりの心情
今回はアリス視点で描いたのでつい、にとりの心について書くタイミングを逃していました…。
もっと全体を見ながら作品を書けたらいいなと思います。
>新ジャンル
ええ、新ジャンルです!w
実はこのネタ結構前から考えていたのですが、
新作でにとマリの可能性が出てきたものですから便乗して書き上げちゃいましたw
皆様貴重なご意見どうもありがとうございました!
これからも精進したいと思います。