Coolier - 新生・東方創想話

僕だって半分は妖怪だぞ<前編>

2008/06/02 21:44:50
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「じゃあな! ちょっと借りてくぜ!」


 そう言って帚に跨がり、普通の魔法使い"霧雨魔理沙"は雲一つ無い空へと消えていった


「……また、やられた」



◇ ◇ ◇



 僕の名前は"森近霖之助"

魔法の森の入口付近の古風な道具屋、香霖堂の店主である


「被害は少ないか……」


 被害と言うのは、白黒衣装の魔法使いと言う台風である

その台風は突然に僕の店を直撃して、商品を棚から落としながら一つ(稀に二つ)

しかも、かなりの頻度で持ち去って行くのである


「これは商品として出せないな……」


 香霖堂は足の踏み場が無く汚い店。そんなイメージを持つ者が殆どだろう

だが、それは根も葉もない噂だ。店内は常に整理整頓されている(自室を除いて)

どこぞの烏天狗の新聞を読んだ天狗が、ほんの少しだけ脚色した同じネタの新聞を

その新聞を更に別の天狗が脚色して……と、僕の店のイメージは幾多に渡り塗り替えられた


 そして遂に、僕の店のイメージは"古風な店"から"ゴミ屋敷"へとグレードアップしたのだ

……うむ、笑えない


「よし、これくらいで大丈夫だろう」


 一通り店内の陳列棚を整頓した僕は、いつものカウンターの椅子へと腰を下ろした


「困ったな……」


 魔理沙に商品を盗まれることを経験して以来、

僕は価値の低い物から陳列棚に並べるようにしていた

価値の高い物を危険に晒すくらいなら、手放しても未練が残らない物を並べておく


 つまり身代わりだ、がらくたと言う名のスケープゴート

その身代わりは倉庫に大山の如く眠っている

では、僕が頭を悩ませている理由は何か


 もう少ないのだ(身代わり的な意味と、僕の心のゆとり的な意味で)


 倉庫の大山は連日直撃する台風で徐々に削られ、今や童子の作った砂山程度となっていた

これでは、価値の高い物も近いうちに陳列棚に並べないといけない


「本格的に防犯対策を考える必要があるな」


 防犯対策と言っても、できる限りのことは全て試してしまっているのだ


 魔理沙を遠目に確認したら閉店するように考えたことがある

結果は失敗、魔理沙は閉店の札を下げているにも関わらず扉をレーザーで撃ち抜いてきた


 魔理沙が金銭を払わずに商品を持って店を出ようとした時に力ずくで引き止めてみたこともある

流石に男と女、力の差は歴然である。僕は魔理沙の腕を全力で掴み続けた

痺れを切らしたのか、魔理沙は商品を棚に戻して僕に頭を下げる


「解った、普通に持ち出すことはしない。すまん」


 そう言って、魔理沙は僕に星弾の雨を浴びせて商品を強奪した

失敗だった、これは閻魔様に直談判しても良いくらいの大罪じゃないだろうか


 そんな過去の記憶を思い出している時だった

目の前の空間に亀裂が走り、その隙間から金色の髪の女性が姿を現す

境界に潜む妖怪"八雲紫"である


「随分と悩んでいる様子ね」


 僕の店には、珍しい外の道具も商品として並べられている

そのような外の道具は、ここにいる彼女が全て提供してくれているのだ


「それよりも今日は良い物を見つけたわ、これよ」


 隙間からドサドサと音を立てて、何かに包装された薄い形状の物体が現れる

僕は、その一枚を手に取り書かれている字を読む


「使い捨て……カイロ?」


 この"カイロ"とは何を指し示しているのだろうか

僕の能力で知る限り、これは暖を取る道具らしい


「これは、そうね……幻想郷で言う温石みたいな物ね」


 そう言うと、紫は僕の持っていた使い捨てカイロを手に取り、

包装されていた袋を破り、中から白い紙切れのような物を取り出す


「これを振るとね? ほら、触ってご覧なさい」


 僕は言われるままに、紫に差し出された白い紙切れに触れてみる


「暖かいでしょう? この暖かさが数時間も続くと言ったら、あなたは信じるかしら?」


 正直に言うと、信じれそうにない

温石なんて一時間もすれば温もりが感じられなくなってしまう


「冷めてしまったら使えなくなるんだけど、冬は重宝するわよ?」


 紫は紙切れを頬に当て、満足そうな顔をする

だが、この使い捨てカイロが僕の悩みを緩和してくれるとは思わない

今は商品を補充するよりも……


「商品を守る方法を考えないといけない、そうでしょう?」


 僕の心を読み取ったかのように、紫は続けて話し出す


「あなたも半分は妖怪の血が流れているのだから、力ずくで商品を守ればいいでしょう」


 ここで、僕は星弾の雨を浴びて商品を強奪された時のことを思い出す

魔理沙には勝てそうにない


「一度だけ力ずくで止めようとしたんですがね、奴の魔法には敵わず……ですよ」


 その言葉を聞いた紫は、少し考える素振りをする

しばらくして、何かを思いついたかのように手を叩く


「おもしろいこと考えちゃったわ! うふふ……」


 紫は、楽しそうに笑いながら隙間へとスルスル戻っていき、数十秒後に隙間から再び姿を現した

手に変なカードを何枚か持って


「それは、何ですか? もしかして……スペルカード……」

「うふふ……ご名答」


 そう言って、紫は一枚のカードを僕に手渡す


「ちょっと外に出てみましょう、できるだけ広い場所が良いわね」


 僕と紫は、店から少し獣道を進んだ先にある空き地へと向かった



◇ ◇ ◇



「霖之助さん、そのカードに書かれている文字を集中して読んでみてくれるかしら?」


 僕は、手元のカードに書かれた文字を確認する

気を集中(と言っても目を瞑って深呼吸するくらい)して、そっと声に出してみる


「夢と現の呪……」


 すると突如、目の前で何か音がした

目を開くと無数の光がバチバチと四方八方に激しく弾け飛んでいる


「な……何だ! これは……」


 僕が驚いている様子を見て、少し可笑しかったのか

紫は楽しそうに笑みを浮かべながら言った


「あなたはスペルカードが発動している様子を見たことが無いかしら?」


 スペルカードという名は知っていた

それを用いて決闘を行うことも、幻想郷では常識中の常識である

だが、店の中で長く引き蘢っている僕が、スペルカードの発動を見る機会など皆無だ

一度だけ、魔理沙がマスタースパークなるスペルカードを発動しているのを見たことがある

ただの極太レーザーである。少なくとも目の前の、光がバチバチと弾けるような派手さは無かった


「幻想郷でも屈指の実力を持つとは聞いていたが、まさかここまでとは……」


 僕は開いた口が塞がらなかった

確かに魔理沙のスペルカードも違う意味で派手だったが、これは比にならない


「おもしろいでしょう? あなた、スペルカードを作って白黒を負かしてやったらどうかしら」


 そう言うと、紫は真っ白の厚紙を何枚か僕に手渡す


「これを持って霊夢の所へ行きなさい、基本的なことくらいなら教えてくれると思うわ」


 スペルカードルールで魔理沙を負かして商品を守る

無理だろう。僕が魔理沙を負かす?冗談じゃない

あんな極太レーザーで焼かれる僕自身を想像するだけで足が震えるぞ(武者震いだ)


「心配しないの、霊夢も私も。何なら私の式も……全員であなたをバックアップするわ」


 まさか僕自身が紫の退屈しのぎに巻き込まれるとは思わなかった

だが、ここまで言われたら引く理由も無い。非常に心強いぞ

"霖之助+紫&紫の式&霊夢vs魔理沙"……。ちょっとハンデキャップが過ぎるだろうけど気にしない

何せ僕はスペルカードルールを用いての決闘は始めてだ

これくらいのハンデは許容範囲だろう?(多分)


「解った、こんな僕で退屈が紛れるのなら協力しようじゃないか。

外の世界から色々と提供してくれるんだからな。それに、あれだ。

魔理沙の手癖の悪さを矯正できるのなら、僕も喜んでやってやろう」


 そう言って、僕は博麗神社へと向かった

幻想郷でも数少ない、紫に並ぶ実力の持ち主である"博麗霊夢"を訪ねに


「うふふ……どんな面白い対決が見れるかしら」


 紫も、期待に胸を躍らせて博麗神社へと隙間を開いた


「まずは、霊夢に事情を説明しておかなくちゃね……」



◇ ◇ ◇



「霊夢、いるかい! いたら返事をしてくれないか!」


 僕は魔理沙の商品強奪を止めるべく、今スペルカードの台紙を持って博麗神社に来ている

スペルカードによる決闘は初心者だからだ、だから博麗の巫女である霊夢に基本を教わりに来た


 期待なんてしてなかった。だって、あの博麗の巫女だぞ?

そんな知識、面倒くさがって教えてくれそうにないじゃないか

だが、襖をスライドさせて現れた霊夢は、僕の考えとは裏腹に言った


「紫から聞いてるわ、どうぞ」


 客室に通された僕は目を疑った

紫はいい、その式の狐もいい。霊夢もいて当然だ

だが……何故だ?何故、魔理沙もいるんだ?

魔理沙も気付いたのか、右手を上げて「よう、こーりん」と僕を迎え入れる

ここは博麗神社だ、魔理沙の家じゃない


「後々で面倒になるから魔理沙にも話しておいたわ」


 そう言って紫は大きく伸びをする


「御茶でも飲みながらゆっくり話しましょう」


 霊夢が卓袱台の上に湯呑みを並べ始めたので、僕も早々に靴を脱いでお邪魔した


「まずは、挨拶しないといけないのがいるわね。藍」


 そう言って、紫は式の名前を呼ぶ


「紫様の式、八雲藍です。以後よろしくお願い致します」


 これまた堅苦しい挨拶で

両膝に手まで乗っけちゃって頭を深々と下げて……こっちが恐縮してしまう

とりあえず僕も同じ様に名前を名乗って負けじと頭を深々と下げておいた


「それじゃあ本題に入るわ」


 紫は僕が持っていたスペルカードの台紙を取り上げ卓袱台に並べる


「今日から一ヶ月後に魔理沙と霖之助さんでスペルカードルールを用いた決闘をして貰うわ」


 誰も意見は無い、それを確認して紫は更に続ける


「お互いに五枚ずつで勝負すること、霖之助さんが勝ったら魔理沙は二度と香霖堂から物を盗まない」


 だが、ここで魔理沙が口を開いた


「勿論、私にも勝った場合の御褒美があるんだよな?紫」


 正直、僕は大体の予想はできていた

相手は魔理沙だ、どんな酷い条件を出してくるか

もしかしたら香霖堂自体を頂くぜなんてことを言いかねない


「私が勝ったら、香霖堂自体を頂くとするぜ」


 な?魔理沙だろ?

だが、魔理沙を除く三人のバックアップがいるのだから負ける気がしない

もう僕は止まらなかった


「いいだろう、僕が勝ったら金輪際! 店の物を盗まないことを約束して貰おうじゃないか」
これで二回目の投稿でしょうか、Phです

前作で内容が薄いとか、そんな感じのコメントがあったので

自分なりに内容を濃くしてみたつもりです



前言撤回!多分、前作よりも内容薄くなってると思います。あばばばばば

こんなオナニーSSでも「読んでやるよ」ってな心優しい方は、

是非、後編も続けてどうぞ!いや、後編も続けて読んで頂けると幸いでございます!
Ph
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コメント



0.1000簡易評価
11.80名前が無い程度の能力削除
自分の中の霖之助とは少し性格が違いますね

それと外の道具は無縁塚で拾ってると聞いたことがあるんですが二次設定でしたか?

15.60名前が無い程度の能力削除
無縁塚で拾っているのは公式のはず・・・

思うのだが、盗むのがそもそも悪いのになぜ魔理沙は開き直って香霖堂を頂くとか抜かしてるのだろうか
魔理沙の性格なら言うだろうが、それで霖之助が納得してるのがわからん・・・
そもそも魔理沙が盗まなければ起こりもしない決闘でこーりんがそれだけのものを賭けるっていうのは
どうみても条件的に魔理沙が有利すぎる気がするのだが・・・
17.80無銘削除
こーりんを中心に魔理沙、紫、霊夢が『らしく』描かれていて好みです。
上の方々がおっしゃっている点ですが、たしか燃料などは紫から供給してもらっているはずですし、
遠からず店の品物が全て魔理沙に取られてしまう(であろう)崖っぷちのこーりんがこの賭に乗るのも理解できると思うので、クリティカルではないかと。
今から楽しみに後編を読ませていただきます。