この物語は作品集54の『キスして欲しいの!』の設定を使っています。
読んで無くても大丈夫とは思いますが、過去作を読んでいるとカップリング等が分かりやすいかもしれません。
日の出。それは外の世界と何一つ変わらない幻想郷の一日の始まり。
そして、それは幻想郷のなかにある妖怪の山においても当然何ら違いは無い。
ザッザッと箒を小気味良く掃く音が境内に響き、一通りの掃除を終えた巫女――東風谷早苗はふうと小さく息をついた。
幻想郷に最近現れたばかりである新たな神社の巫女さんの朝は早い。
早朝から巫女としての務めに励むその姿は、どこぞの自堕落な貧乏巫女も少しは見習うべきではないかと思うくらいである。
箒を片付け、次なる仕事に向かおうとした早苗だが、ふと神社に来客の気配があることに気付き、
視線を入り口の方へと向ける。そこには最近知り合ったばかりの友人の姿があった。
「おはようございます、にとりさん」
「おはよう早苗。今日も朝から精が出るね」
ぺったぺったと近づいてくる友人、河城にとりに早苗は頭を下げて一礼する。
早苗とにとりが知り合ったのは、大体ニヶ月くらい前の事だろうか。
彼女達が巻き起こした異変(本人達は異変とは思っていないのだが)を霊夢達が解決し、
この神社の主である八坂神奈子が妖怪の山に棲む妖怪達と毎日のように宴会を楽しむようになってから、
その宴の際に早苗が仲良くなった友人の一人がにとりである。
他にも一人、犬走椛という白狼天狗の友人がいるのだが、彼女は日々妖怪の山の身回りで忙しいようだ。
まあ、ただ単に彼女の上司が仕事そっちのけで新聞家業(?)に精を出しているからなのかもしれないが、
その事に椛は不満を抱く事も文句を言うつもりもサラサラないらしい。本当に健気なくらい尽くすタイプである。
「今日はこんな早朝に一体どうされたんですか?何かご用でも?」
「用というか、ただの連絡役だよ。私の上司であるお偉いさんから貴女の神様へのね。
とりあえず、神奈子は居る?居なかったら別に諏訪子でもいいんだけど」
「あ、お二人とも多分まだ寝てると思いますけど…えっと、どうします?起こしますか?」
「ありゃ、ちょっと早過ぎたかな。
無理に起こさなくて構わないよ、待たせてもらうから。大体こんな朝早くに来た方が悪いんだしね。
妖怪の山の妖怪は気が長いのさ」
よっこいしょと声を発し、にとりは神社の縁側へと腰を下ろした。その様は年季の入った妖怪とは思えず、少しばかり可愛らしい。
そんなにとりに、早苗は笑みを零しつつ、来客の為にお茶の用意をする。
一度屋内に入り、湯飲みに来客用の少しばかり上質の緑茶を注いで、にとりの元へと戻る。
再び縁側の方へ戻ると、いつの間にやらにとりはキュウリを口に加え、ガリガリと食べていた。
先ほど手に持っていなかったところを見るに、どうやら彼女が背負っていたリュックから取り出したらしい。
そんなにとりを気にすることもなく、早苗は熱い緑茶を注いだ湯飲みをにとりへと差し出した。
「どうぞ。まだ少しばかり飲むには熱いかもしれませんが」
「ありがと。早苗もキュウリ食べる?おいしいよ?」
にとりの申し出に早苗は苦笑を浮かべてフルフルと首を振る。
流石の早苗も何の味付けもされていないキュウリを朝から丸齧りするのは遠慮したいらしい。
まあ、少し前までは外の世界、それも近代化された社会の中で生きてきた女の子なのだから、当然と言えば当然なのだが。
そんな早苗の答えを最初から分かっていたのか、にとりは『そっか』と楽しそうに笑いながら、二本目のキュウリに手を出していた。
「幻想郷の生活には慣れたかい?
外の世界とは勝手が色々と違うからね。戸惑う事もまだまだ沢山あるでしょ?
生活の点で困ったりしてる事はない?」
にとりの質問に、早苗は『そうですね』と少し考える仕草を見せる。
確かにこの世界は自分が今まで生きてきた世界とは大きく異なっている。
この世界にはテレビや携帯電話なんて存在しないし、車もなければ電気もガスも水道すらも通っていない。
しかし、早苗はそのような事に不満を感じる事など一切無かった。むしろその事が心地よくすら感じてしまう。
この大自然に包まれ、独自の文化を育み、妖と人間が混じりあい、生活しあうこの世界こそ早苗が望んでいたものだった。
早苗が居た外の世界のように、この世界は神々に見捨てられるようなことはない。
外の世界の人々は神への信仰を捨て、自らの足だけで歩く事を選んだ。神々の奇跡は機械という名の代役が果たしてくれる。
その事に早苗は別段文句を言うつもりはない。それは人が歩んだ歴史の証。自らの力で切り開いた道。
ただ、向こうの世界にはもう自分達の居場所が無かっただけなのだ。
神々の力は、信仰の想いは…少なくとも、早苗の信仰する神の力を、人々はもう必要としていなかった。
だから、早苗はこの世界に来た。そして、己が求めた理想郷に身体を震わし、涙した。
ここなのだと。私の、私達の生きるべき本当の世界はここだったのだと。現人神である彼女は、幻想郷で初めて本当の居場所を手に入れたのだ。
だからこそ、彼女は今の生活で悩む事など何一つ無かった。
確かに不便なことはある。高度化した生活になれ、時々些細な事に四苦八苦することだってザラだ。
けれど、今ではそんな事すら愛おしく思える。不慣れな異文化に戸惑う事も、困る事も全てが大切な経験だ。
この世界に出会い、この世界で生きていく事が出来る。そして、己の信じる神の信仰を集める事が出来る。
早苗にとって、にとりの言うような事は少しも苦にはならないのだ。
「大丈夫ですよ。私は今、本当にこの世界が楽しくて仕方ありませんから。
この幻想郷に来て、にとりさんをはじめ、多くの人々に出会えたこと。私はその事に心から感謝したいくらいです」
「そっか、嬉しい事言ってくれるねえ。
まあ、何か困った事があったら相談してよ。私達河童は古来より人間とは盟友なんだ。
そして何より、早苗は親友だと思ってるからね。何かあったら河童が手を貸すよ。それこそ伸ばしてまでね」
びょーんと片腕を伸ばしてけらけらと楽しそうに笑うにとりにつられ、早苗も思わず笑みを零してしまう。
笑顔を浮かべながら、早苗は思う。にとりには申し訳ないが、そういう面で相談する事はないだろうな、と。
この幻想郷で戸惑った事など幾らでもあるし、その度に何の抵抗も無く自分はその事を受け入れてきた。
だから、未だにこの幻想郷の事で頭を抱えてる事など――
「――あ」
その刹那、早苗は思わず声に出してしまった。
そんな早苗を、にとりは不思議そうに首を傾げて声をかける。
「ん?どうしたの、早苗」
「え…あ、い、いえ…何でもないです」
「そう?それならいいけど。それよりも早苗、キュウリ食べる?美味しいよ?」
「いえ、遠慮しておきます」
にとりからの再度のお誘いをやんわりと断りつつ、早苗は引きつった笑みを必死に取り繕う。
彼女が無理に表情を作る理由。それは、彼女が思い当たってしまったからだ。幻想郷において、彼女が未だに理解出来ないただ一つの事。
この幻想郷に来て二ヶ月弱。早苗は多くの幻想郷の住人に出会った。人間から妖怪、亡霊から半獣。
そんな彼女達の事で、早苗が唯一理解することも受け入れる事も出来ないこと。
ただ、それを自分の隣に座っている大切な親友に相談する事など出来はしない。その内容が余りにアレ過ぎるからだ。
それに、その事はあまり人に話したりするものではないのではないか。少なくとも外の世界ではそうだった。
だからこそ、早苗は一人悩むのだ。こんなこと、誰にも相談なんか出来やしない。
彼女が小さく溜息をついた。それはにとりがリュックから三本目のキュウリを取り出すのと同時であった。
現人神にして祀られる風の人間、東風谷早苗。
そんな彼女が未だに幻想郷で受け入れる事が出来ないたった一つの事。それは…
「よう、誰かと思えば妖怪の山に住んでる緑の腋巫女じゃないか。
こんなところまで信仰集めとはお前も暇人だなあ」
「私は東風谷早苗ですっ!!緑の腋巫女でも緑の狸でも緑の配管工でも何でもありませんっ!!」
「そうよ魔理沙、それはちょっと失礼だわ。
ごめんなさいね…えっと、渚だったかしら。魔理沙がとんだ失礼な事を言ってしまって」
「渚って誰ですか!?ですから私は早苗ですってば!!むしろアリスさんの方が何気に酷いじゃないですか!?」
人里で信仰の尊さを説いたその帰り道。空を飛んでいた最中、早苗はバッタリ知った顔と遭遇した。
それは幻想郷一のバカップルと評判の黒白魔法使いと七色人形遣い、霧雨魔理沙とアリス・マーガトロイドだ。
二人と早苗は勿論会話のように互いに面識がある。魔理沙はご存知の通り、異変に際して守矢神社に
襲撃(魔理沙はただ訪れただけなのだが、あの時の事を早苗はこう表現している)をかけてきた時に。
アリスとは、その異変の後、博麗神社で行われた宴会の時に知り合ったのだ。といっても、アリスとは互いに少し会話を交わしたりした程度だが。
しかし、この二人は早苗にとって、幻想郷住人の中でも一際頭の中にこびり付いて離れなかった。
何故なら彼女達こそ、早苗が幻想郷で唯一理解出来ない悩みを生み出した張本人だったりするからだ。
「えっと…そ、その…お二人とも、今日は、その…や、やっぱり、デデデ、デートなんですか…」
「おおう?何をいきなり言い出すかと思えば。
そりゃまあ、私とアリスが二人で何処かに出かけたなら、それは何だってデートになるだろうな」
「ちょ、ちょっと魔理沙!?そんな当たり前のように恥ずかしい事を言わないでよ!」
「そう言われてもなあ。私はただ尋ねられた事にキチンと解答しただけだぜ?文句なら早苗の奴に言ってくれよ」
あーだこーだと相変わらずの甘い口論を始める二人に、早苗は顔を真っ赤にして小さく溜息をついた。
早苗が幻想郷に来て、少しも理解が出来ないと頭を痛めている唯一の事、それがコレだ。
勿論、コレと言っても魔理沙とアリスの事ではない。彼女が悩んでいるのは、二人のその『関係』だ。
魔理沙とアリスの二人は今更言うまでも無く『恋人同士』である。その事が早苗の頭を大いに悩ませたのだ。
つまるところ、魔理沙とアリスは所謂ところの『同性愛』であり、二人は『同性愛者』ということになる。
しかし、その事を二人は隠すどころか大っぴらにしている。そして、その事を幻想郷の誰もが何も言わない。
まるでそれが普通の事だとでも言うように、女同士で付き合っていても何らおかしくはないと言うように。
早苗がその事に気付いたのは、博麗神社での飲み会の席でだ。宴会では多くの人間や妖怪が参加し、沢山の人で賑わっていた。
ただ、参加者は一人残らず全員女性で。そして更に驚かされたのが、女同士で仲が余りにも良すぎる人々が多過ぎて。
それは決して友人同士とかそういう意味での仲の良さではない。それはまるで異性間同士のような仲の良さ。
魔理沙とアリスをはじめ、名も知らない人々が互いにどのように見ても恋人同士のように振る舞い、楽しそうに時を過ごす。
思い切って、魔理沙にその事を尋ねてみたら『そんなの当たり前だろ。あいつ等はみんな付き合ってるんだから』などと
トンでもない回答を投げつけられる始末。それは、外の世界で一人の女子高生だった早苗には余りに衝撃的で、かつ理解が追いつかない世界だったのだ。
勿論、そういう人々が外の世界にも居た事くらい早苗は理解している。
だが、こうしてそういう同性愛を実際にする人々を見たのは早苗は初めてで、
しかもここではそれが当たり前の世界なのだ。むしろ大多数、政治で言えば同性愛が与党なのだ。
(※勿論幻想郷で同性愛が当たり前という訳ではない。幻想郷歴が少ない早苗さんの先走ったとんでもない勘違いである)
恋愛というモノをしたことの無い早苗には、それは本当に目を疑うような光景で、そして全く理解が出来なくて。
ましてや彼女だって年頃の女の子なのだ。同世代の幻想郷の女の子達が、『それ』を当たり前のように受け入れる
姿を見て、色々と思うところはあるのだ。ぶっちゃけ、『もしかして考えが間違っているのは自分なのではないか』と。
女は男と付き合うもの。男は女と付き合うもの。そんな当たり前が、この幻想郷では異なっているのではないかと。
そして、最終的に、自分もいつの日か好きな人が出来た時、その人はこの二人のように女性なのかと。
眉を顰めて頭を悩ませる早苗を疑問に思ったのか、魔理沙は尋ねるように口を開く。
「どうしたんだ?そんな難しい難題にでもぶち当たったような顔して。
どこぞの蓬莱ニートにでも何か言われたのか?仏の御石の鉢ならぬ神の御柱のど根性ガエルか?」
「難しい難題って言うのも変な言葉よね。普通に難題だけでも良いと私は思うんだけど」
「チッチッ、まだまだ甘いぜアリス。難題が更に難しいからこそ『難しい難題』なんだぜ?
頭痛が痛いってよく言うだろ?あれと同じだぜ。強調だよキョーチョー」
「頭痛が痛いも私はどうかと思うんだけど…激しく激怒したとか、酷く酷似するとか。
…というか魔理沙、話が逸れちゃったじゃない。早苗が困ってるわ」
「おいおい、最初に話を脱線させたのは他ならぬお前だろ。今回ばかりは私の責任じゃないぜ?
という訳で早苗、何かあったのなら悩み相談に乗るぜ?無論報酬は後払いで結構だからな」
むしろ私に悩みを作った一番の原因は貴女達なんですけど。
そう言いたい気持ちは山々だったが、早苗は何とかグッと堪えた。流石に本人達にそんな事を言える筈も無く。
「えっと、大丈夫です。悩みなんて全然ありませんから。
ただちょっと、何というか…不思議な出来事というか、知識でしか知らなかった世界を垣間見て、
それに少しだけ戸惑っているだけだと言いますか…なかなか覚悟や理解が出来ずにいると言いますか…」
「何と言うか、要領を得ない悩みだな。まあ、何もなけりゃそれでいいんだ」
「何かあったらどうしたの?」
「そりゃ勿論、トコトン追求探求即解決、だぜ。もしかしたら何か面白い異変でも起こってるかもしれんだろ?
早苗達が異変を起こして以来、面白い出来事が全然…いや、あったな。
というかむしろ有り過ぎたくらいだな。しかも全部中国絡みでってところがアレだが」
「美鈴絡みというより、紅魔館絡みじゃない。
全くもう…レミリアといい咲夜といいパチュリーといい、本当に変なことばかり美鈴にしようとするんだから。
少しは自制してフランを見習って欲しいわね」
「おお、姑の心情的には今のところフランが中国の恋人候補最右翼なのかー?そーなのかー?」
「誰が姑よ誰がっ!!」
再び始まった二人のイチャイチャ口論を聞く事無く、早苗は魔理沙の発した一言に耳を奪われた。
『もしかしたら何か面白い異変でも起こってるかも』。その一言が早苗の思考回路を急速に回転させたのだ。
もしかしたら、この同性愛で溢れている幻想郷(※溢れていません。早苗さんの激しい勘違いです)では、
何か異変が起こっているのではないか。異変については以前、博麗の巫女である霊夢に話を聞いたことがある。
この幻想郷は幾度と無く不可思議な異変が生じたという。そして自分はそれを度々解決させてきたのだと。
幻想郷が赤い霧に包まれたり、春がなかなか訪れなかったり、夜が永くなったり、花が咲き乱れたり。
では、今の幻想郷に置いて同性愛が溢れているのも(※だから溢れていません。早苗さんの以下略)、
もしやその異変の一つなのではないか。人々に仲の良い人物と恋愛を促させるような何かが発生しているのでは。
もし、仮にそうならば、早急に解決しないといけない。そうすれば、今のように自分が変なのではないかと悩む必要も無くなる筈だ。
そして、幻想郷での異変を自分が解決すれば、それこそ人々から信仰が集るのではないか。
そんな幻想郷の異変をいつも解決しているからこそ、博麗の巫女は人々に必要とされるのではないか。
ならば、これはチャンスだ。自分の手で異変を解決すれば、必然的に信仰も集る筈。
悩みも解決出来、神奈子様や諏訪子様の名をこの世界に響かせる事も出来る最高の機会ではないか。
決意を秘めた少女の決断は早い。思考の海にダイブしていた意識をしっかり覚醒させる。
そんな早苗の様子に驚き、ビクリとする魔理沙とアリスに、早苗は目を輝かせて言葉を告げる。
「突然ですが、今からやるべき事が見つかりました!お二人には感謝します、ありがとうございました!!」
彼女の言葉に二人が返事する間もなく、早苗は高速で空を駆け、その後ろ姿はどんどん小さくなってゆく。。
「な、何だったんだアイツ…」
「さあ…とりあえず、理由は分からないけど感謝されてるみたいだし、ここは素直に喜んでもいいんじゃない?」
首を傾げる二人を他所に、とうとう早苗の姿は二人からは見えなくなった。
勘違いするお年頃の早苗さん、どうやら彼女は最後まで気づかなかったらしい。
異変がどうこう以前に、そもそも異変を解決して人々から信仰を集めている筈の霊夢が何故あんなにも賽銭不足の貧困に苦しんでいるのかを。
魔理沙達と別れ、早苗が向かった先は博麗神社であった。
異変が起こっていると考えた彼女が、最初に思い当たったのは博麗霊夢の存在だった。
もし仮に異変が起こっていると考えれば、異変解決のスペシャリストである彼女が何ら動いていない訳が無い。
餅は餅屋、解決に動くにしても、まずは先人の動きを確認する事こそ一番であると早苗は考えたのだ。
冷静に現状を思考する力、判断力、そして器量。全てにおいて早苗は常人とは逸したモノを持っている。
それこそ、少し前までは普通の女学生として平和な世界で生きてきたとは思えない程に。流石は現人神といったところだろうか。
それだけに心から勿体無いと思う。彼女のその訳の分からない勝手な勘違いに暴走し、空回りしてしまう悪癖が。
それはきっと、彼女がどこまでも真っ直ぐ過ぎるが故の事。それは彼女の長所でもあるのだろうが短所でもある。
容姿端麗で他人に優しく思いやりもあり、そして何より心が強い守矢の巫女の唯一の傷。きっと、これこそが真の意味で玉に瑕と言うのだろう。
話を戻そう。博麗神社を訪れた早苗は、霊夢に見つからないようにこっそりと境内を歩いてゆく。
まずは霊夢の姿を確認する事が第一。そして接触するにしてもしないにしても、何より気をつけなければいけない事は、
自分が異変解決に動いている事を悟られない事。きっとその事を知れば、霊夢はすぐに異変解決へ動くだろう。
それでは悩みは解決出来たとしても、信仰を集める最良の手段がお釈迦になってしまう。それは少し旨くない。
早苗が求める最高の形とは、異変解決を自分一人の力で行う事。そして、その結果が人々の信仰へとつながることだ。
その条件を満たす為には、何としても霊夢に自分の動きを悟られてはならないのだ。
考えを固め、早苗は神社の壁からそっと縁側の方を覗き込む。普段の霊夢なら、きっとそこに居る筈だから。
その早苗の考えは案の定的中し、縁側には霊夢がいつものように座っていた。その様子を早苗は陰からじっと観察する。
さあ、次の一手はどう動くべきか。早苗が一人考え始めようとしたその時、ふと早苗はあることに気がついた。
先ほどから霊夢の様子がどうもおかしい。先ほどから一人溜息をついては何やらボーっとしているように早苗には見えた。
それは普段の彼女からは考えられない様子で、それはまるで恋に悩む一人の少女のようで――
そんな事を考えていた刹那、早苗にある考えが脳裏を過ぎった。まさか、博麗の巫女である霊夢も異変に陥っているのではないか、と。
もしそうならば、今の彼女は知り合いの女性に恋する乙女という事になる。
そして、きっと彼女には異変を解決する力も無くなっているのではないか。その考えに辿り着いた瞬間、早苗は迷う事無く霊夢の元へ駆け出した。
「霊夢さんっ!!大丈夫ですか!?
いえ、もう心配なんかする必要はありません!貴女が思い悩んでいることくらい、私はすぐに理解しましたから!」
霊夢の前に立ち、興奮した口調で霊夢に捲し立てる早苗さん。
どうやら彼女のいつもの暴走スイッチがONに切り替わってしまったらしい。本当、玉に瑕である。
早苗の言葉に反応しない霊夢を他所に、早苗の言葉は止まる気配が無い。
「貴女も異変に侵されてしまったんですね…でも大丈夫です!その異変、私が解決してみせますから!
霊夢さんはゆっくりここでお体をご自愛して下さい!私がこの異変を解決する頃には、きっと全て悩みが無くなっている筈です!」
目をキラキラを輝かせて霊夢の両手をガッシリと包み込む早苗さん。
どうやら彼女の中では幻想郷の同性愛=異変が原因と完全に決め込んでしまっているらしい。
確かにそういう事に疎い世界で暮らしていた普通の女の子である彼女が、そう考えたくなるのも無理は無いのかもしれない。
しかし、ここはハッキリともう一度言わせて頂きたい。自分の勘違いで暴走する癖、本当に玉に瑕である。
というか、先ほど彼女が決めた霊夢の異変の事は話さないという件はどうなったのだろう。早苗さん、思いっきり異変って言っちゃってる。
「そうです!私がこの異変が解決した暁にはここに守矢神社の分社を立てましょう!
勿論お賽銭は霊夢さんの収入にして頂いても結構です!私が欲しいのは尊き信仰だけですから!
いいえ、最早そんな程度では生温いです!ここはいっそ博麗神社を守矢神社に改名して霊夢さんの巫女服も私と同じものに変えて…」
何かとてつもなく勝手な事をほざいて…ではなく、おっしゃっている早苗さん。
どうやら彼女の脳内では博麗神社は守矢神社の分社になってしまっているらしい。
これはもしかしなくても、そろそろ玉に瑕で済ませるにはシャレにならないレベルなのかもしれない。
そんな事はお構い無しに話を続ける早苗さん。だから、霊夢の様子の変化には気づく事が出来なかった。
フルフルと拳を震わせ、どう考えても怒りが限界点に達しておられる様子。これはもう色々と駄目かもしれない。
「…アンタね、突然現れたかと思えばいきなり訳の分からない巫山戯た事を捲し立てて…」
「いいですか?ですから今すぐこの誓約書に霊夢さんの署名と捺印を…って、あれ?」
懐から何かどう見ても怪しい書類を一枚取り出したところで、早苗はようやく霊夢の異変に気付いた。
どうやら、守矢の巫女は危険察知能力がまだまだ乏しいようだ。これでは幻想郷を生きていくのは大変かもしれない。
膨れ上がる霊夢の殺気を早苗はようやく感じ取り、あわあわと身体を恐怖に竦ませる。本当、遅過ぎです。
「え、えっと霊夢さん!?あ、あの、何をそんなにお怒りになっておられるのか私には…
何なんですか…?何で私、殺気を向けられているんですか…?何で、すすスペルカードを用意してるんですか!?」
「いいからとっとと神社から出て行けえええええええええ!!!!!!!!!!」
「あやややややーーーーーーーーーーーー!?」
神霊『夢想封印 瞬』を直撃され、どこか聞きなれた不可思議な断末魔と共に早苗は幻想郷の大空へと散った。
この後、妖怪の山に住んでる某パパラッチ天狗から著作権使用料を徴収される早苗だが、今は関係ない話なので割愛する。
ただ、暴走ばかりで頓珍漢な思考ばかりに陥っていた早苗だが、霊夢への洞察力だけは褒めてあげたいと思う。
「ったく…一体何だってのよ。
はあ…今頃藍は妖夢と買い物に行ってるのよね。どうして素直に私もついて行くって言えなかったのかしら…
…って違う!!これじゃ私がまるで藍の事が好きみたいじゃない!?私は全然そんなのじゃなくて、ただその…」
勝手な思い込みだったとはいえ、
彼女――博麗霊夢の悩みが恋の悩みであることを、早苗は一目で見抜いてみせたのだから。
「うう…霊夢さん、どうして怒っていたのかしら…」
霊夢のスペルカードに吹き飛ばされ、ボロボロにされた早苗はフラフラと再び空を飛行していた。
どうやら彼女、どうして自分が霊夢の怒りに触れてしまった理由をサッパリ理解していないらしい。見事な天然である。
霊夢からは異変に関する情報を何も得られず、次は一体どうしたものかと考え込む早苗だが、
人里の方から二つの人影がこちらに飛来してくるのを視界に入れた。
小さな影はどんどん大きくなっていき、その姿が肉眼でハッキリ捉えられる頃には二人が早苗に声を掛けてきていた。
「誰かと思えば早苗さんじゃないですか。どうしたんですか、こんなところで」
声を掛けた方の人物の方に早苗は視線を向ける。
確か彼女は二ヶ月前の宴会の時に魔理沙さんを通じて自己紹介を交わした…
「えっと、確か妖夢さんでしたよね。魂魄妖夢さん。お久しぶりです」
早苗の挨拶に、その少女――魂魄妖夢は笑顔を浮かべ、ペコリと頭を下げる。
その二人の挨拶に、早苗の方をじっと見つめていた一人の女性が小さく首を傾げて妖夢へと話しかける。
「妖夢、この方は知り合いか?」
「えっと、以前お話した妖怪の山に最近引っ越して来られた東風谷早苗さんです。
そう言えば藍さんは二ヶ月前の宴会に参加出来なかったんですよね」
「成る程な。この人があの噂の…」
視線を妖夢から外し、こちらの方をじっと観察してくる女性に早苗はビクリと身体を反応させる。
初対面の相手だが、どうやら妖夢の知り合いらしい。そして自分の事を他の人から聞いてもいるらしい。
どうしたらいいのか戸惑う早苗の内心に気付いたのか、藍は真剣そうな表情を崩して優しい笑みを浮かべなおす。
「済まなかった。初対面の相手に向けるような態度では無かったな。
私は藍。八雲紫様の式で、八雲藍という。まあ、見ての通りしがないただの狐だ。以後よろしく頼む」
「え…あ、私は東風谷早苗です。よろしくお願いします」
一礼する藍につられるように、早苗は慌てて自己紹介に併せて頭を下げる。
礼儀正しく挨拶を返す早苗に、藍は嬉しそうに微笑み返す。どうやら初対面の早苗に対する警戒を解いたようだ。
顔を上げる早苗だが、ふと藍と妖夢の両手が買い物袋で塞がっているのを見て、何気なくその事に関して問いかける。
「お二人は買い物の帰りですか?」
「ええ、今日の夕食を買う為に人里の方に行ってまして。
一人で行くのも何ですから、藍さんをお誘いしたという訳です」
「うん、妖夢が誘ってくれたのは嬉しかったな。それに凄く助かったよ。
おかげで牛乳の特売でお一人様一本のところを、私と妖夢で三回ずつ、計六本も買えてしまった」
よしよしと藍から頭を優しく撫でられ、妖夢はくすぐったそうにしつつも、心から嬉しそうに笑みを零した。
それは本当に綺麗な笑顔で。あまり二人の事を知らない早苗でさえ、妖夢の藍に対する想いが伝わってくる程だった。
その光景を早苗は『ああ、このお二人も異変に…』などと相変わらずアクセル全開で勘違いしていたものの、
そもそも異変など起こっていない上に、この光景は妖夢が自分の力で切り開いたモノである。
先日、ちょっとしたドタバタ騒ぎがあって以来、妖夢は藍に対して積極的に動く事が出来るようになっていた。
勿論、それは面と向かって好きだと言ったり行動で示したりするようなモノではない。
ただ、今日のように買い物に誘ったり、マヨヒガに幽々子に背中を押される事なく足を運ぶようになったりと言った本当に小さいものだ。
けれど、それは彼女にとっては確実な第一歩で。いつも藍の背中を見つめ続けていただけの妖夢が、今はこうして藍と並ぶ日々を送っている。
想いは届けることは出来なかったが、藍に向かって『好きです』のたった一言が伝えられたこと。
それは、今の妖夢の確かな自信となり、そして心の強さへとつながっていたのだ。
まあ、そんな由を当然知る訳も無い早苗には、藍に恋する乙女の視線を向けている妖夢の姿は
『ブルータス、お前もか』としか思えなかったが。出会う人出会う人が早苗の悩みを増幅させる辺り、流石は奇跡を起こす能力である。
二人の仲睦まじい光景を眺めている早苗に、妖夢はふと彼女の服が
ところどころボロボロになっていたり汚れていたりしている事に気付き、早苗に向かって口を開く。
「…ところで早苗さん、どうしてそんなに服がボロボロなんですか?
まるで今しがた戦闘でも行ってきたような…何かあったんですか?」
「えっと…その、先ほど霊夢さんにお会いしたんですが、その時にスペルカードで吹き飛ばされちゃいまして。
自分では良く分からないんですが、霊夢さんを怒らせちゃったみたいなんです…」
未だに理由が分からないと言ってのける辺り、早苗も結構天然を通り越してちょっとアホの子かもしれない。
あんな事をされれば霊夢どころか、温厚な鈴仙辺りだって怒りそうなものだが。早苗さん、どこまでも真っ直ぐである。
しゅんとする早苗に、妖夢と藍はううんと首を傾げつつも、彼女を励まそうと言葉をかける。
「そんなの全然気にする事ないですよ、早苗さん。
霊夢が不機嫌だったり訳の分からないことで怒ったりするのはいつもの事ですし」
「…そういえば最近、霊夢が私と口を聞いてくれないんだが、私も何か霊夢にしてしまったのかなあ。
それだけならまだしも、皿洗いとかしてる時、背後から霊夢が私を殺気立って睨んでいる気配とか感じるし…」
妖夢に続き、ふと自分の最近の事を思い出したのか、何やら物凄いことを言い出す藍。
藍の発言に『みょん!?』と不可思議な擬音でも出そうなくらい驚く妖夢。どうやら彼女も藍のその発言は初耳らしい。
ちなみに先に訂正しておくが、藍の背中を貫く霊夢の視線は言うまでも無く殺気ではなく恋する乙女の視線である。
ただ、その事を藍はおろか、霊夢自身すら気付いていないのだから性質が悪い。他人に鈍感と自分に鈍感の恋は得てして難しいものである。
「お二人とも余り気にする事はないと思いますよ。霊夢の事ですから、そのうちいつもの霊夢に戻ってるでしょうし。
それこそ、異変でも起こればパッと切り替わったりするんでしょうけど」
「それもそうか。まあ、異変などそう簡単に起こるものでもないけどな。
日々是平和、これに勝るもの無しだ。紫様が幻想郷の異変を何も感知しておられない以上、
霊夢には自分の力で立ち直って貰うしかないか。まあ、一応私が何か傷つけてしまったかもしれないし、
帰ってから頭を下げるつもりではあるんだが…」
「それこそ必要ないです。でも、本当に霊夢はどうしたんでしょうね」
再び小さく首を捻る藍と妖夢。
実際、霊夢がああなった原因は藍にあるのだが、本人はそんなことは当然微塵も知る由は無かった。
そんな二人に、早苗は慌てて『ちょ、ちょっと待ってください』と割って入る。先ほどの二人の会話でどうしても聞き流せない事があった為だ。
困惑した表情を浮かべる早苗に、二人は不思議そうな表情を浮かべつつ、早苗の次の言葉を待っていた。
「あの…先ほどのお二人の会話の事なんですが…今現在、幻想郷で異変は起こっていないんですか?」
「ううん?何やら面白い質問だな。
異変とは一体何を指すのかにもよるが、霊夢が動いたりする必要がある異変は今のところ起こってないな。
先ほども言ったように、幻想郷は日々是平和、結界にも異常無し。良い事だよ」
「えっと…じゃあ桃色異変とか恋愛異変とかは…」
「…?よく分からんが、幻想郷に影響を及ぼしているような外力はここ最近は何も働いていないよ。
幻想郷に何か異常があれば、まず博麗の巫女と私の主である紫様が感知される。
その二人が行動を何も起こしてない事、それはつまり異変は起こっていないということだからな」
「そ、そんなあ…それではどうしてお二人はそんなに仲が良いんですかあ…
そんな仲睦まじく恋人みたいに…やっぱりこれが幻想郷のスタンダードなんですか…」
異変では無いとハッキリ断言され、張っていた気を思いっきりブロークンされてしまったのか、
ガクリとうな垂れながら早苗は二人に相変わらず吹っ飛んだ質問を投げかける。
どうやら幻想郷に同性愛が溢れている(※何度もしつこいようですが溢れていません。早苗さんの勘違いです)事が
異変によるものではない事と、異変解決による信仰集めがパアになった事が大層ショックらしい。その落ち込み方は半端ではない。
だが、そんな早苗を他所に、質問の方に喰らいついた半人半霊が一人。
「こ、恋人に見えますか!?私と藍さんが恋人に見えたりするんですか!?」
「ううう…それ以外の何に見えるって言うんですか…
魔理沙さんやアリスさんとお二人は一体何が違うって言うんですかあ…
不可解です…理解不能です…幻想郷の普通が全然分かりません…これが幻想郷での普通なんですか…」
「恋人…恋人…私と藍さんが恋人…」
早苗の落ち込み具合も耳に入る事無く、顔を真っ赤にして舞い上がる妖夢。
藍に対する消極的な態度は幾らか治ったものの、こういう事には相変わらず弱いらしい。
だが、そんな妖夢に止めを刺すように鈍感狐がとんでもないことをやってのける。
あわあわと慌てふためく妖夢を背後から優しく抱きしめ、妖夢の肩の上から顔を出して優しく微笑み、
「フフッ、私には勿体無い言葉だよ、妖夢みたいな可愛い女の子の恋人役なんて」
「かっ可愛っ!?」
妖夢を優しく抱きしめ、ポンポンといつものように優しく頭を撫でる藍。どうやらこれが今回の決定打だったらしい。
ぷすんと頭を蒸気させ、顔を真っ赤にした妖夢の意識と言う名のブレーカーは見事に落ちる事になった。
西行寺家の庭師にして冥界の剣士、魂魄妖夢。切れぬものはあんまりない。例えば己の緊張の糸とか。
そんな気絶した妖夢に気付くこともなく、彼女の意識を冥界の底に叩き落した張本人は妖夢を抱きしめたまま早苗に口を開く。
「何が理解出来ないのかは分からないが、己の知識のみでは手に負えないことは他人に相談する事だ。
そうだな…知識に関してなら上白沢慧音に頼ってみるのはどうだ?
彼女なら誰の相談にも乗ってくれて力になってくれると思うぞ。それこそ私なんかよりもよっぽど博識だからな」
「上白沢慧音さんですか…慧音さんなら確かに力になってくれるかもしれません」
早苗は藍の告げる人物、上白沢慧音とは親交があった。
それこそ彼女の知る幻想郷の知り合いの中では、もしかしたら一番関わりがあるかもしれない。
二ヶ月ほど前、初めて博麗神社の宴会に参加した時に、見知らぬ人々に早苗を紹介してくれたのが慧音とその友人である藤原妹紅だし、
その後の人里での信仰を集める際、何度も協力してもらい、人里の人々と早苗の距離を縮めることにも力を貸してくれた。
彼女達がいたからこそ、力を貸してくれたからこそ、人里の人々と早苗が仲良くなれることが出来たのだ。
彼女なら、自分の悩みを馬鹿にすることも笑う事も無く聞いてくれるかもしれない。
ただ、慧音の元を訪ねるにしても大きな問題が一つあった。早苗は慧音が今どこにいるのか全く分からないのだ。
一ヶ月ほど前から人里で慧音の家が再建されている事は知っている。何があったかまでは知らないが、彼女の家が崩壊したという事も。
けれど、肝心の慧音がその家に代わって現在何処に住んでいるのかを早苗は把握していなかった。
その旨を早苗は藍に伝えると、藍は人里の位置から少し東方を指差し、小さく溜息をついて早苗に告げる。
「この先をまっすぐ行って湖を越えた先、そこにある館に慧音は居る筈だ。
ただ、気をつけるんだぞ。慧音の元を訪れてみてはと提案した身でなんだが、そこに至るまでの過程が大変だからな。
ここから先は自分の意識をしっかり持つ事だ。そうしなければ、すぐに逃げ出したくなるだろうからな」
藍の言葉を、早苗は『はあ』と頷くだけで微塵も理解する事が出来なかった。
歯にものを挟んだような物言いをする藍を早苗は不思議に思っていたものの、
どうして彼女がそんな風に言葉を濁していたのかを、早苗が理解するのに一時間と掛かる事は無かった。
「それでは少々お待ち下さいね。今、私の部下が慧音さんを呼びに向かいましたので。
恐らく十分もすれば慧音さんがこちらに来ると思いますから」
藍に教えられた場所、紅魔館の門前。
門番を務めていた少女、紅美鈴の言葉に早苗は『分かりました』と頷いた。
一息つき、早苗は目の前に聳え立つ雄大な館をぐるりと一望する。西洋風に建てられた巨大な館は、
外の世界で普通平凡な一女学生であった彼女にとって、テレビや雑誌でしか見た事の無いモノであった。
その大きな館に感嘆の表情を浮かべていると、それに気づいたのか、美鈴が笑顔を浮かべて早苗に声をかける。
「紅魔館を見るのは初めてですよね?貴女がここを訪れたのを見たのは今日が初めてですし」
「え、ええ…初めてなんですけど、凄いですね…
何というか、実際にこんな建物を見るのは初めてで…ちょっと圧倒されちゃいました」
「ふふ、ありがとうございますっ。紅魔館は悪魔の館、誇り高き吸血鬼、レミリア・スカーレット様の居城。
レミリアお嬢様に心奪われ、あの方の為ならば己が命を捨て去る事すら惜しまぬ従者の集う我等が聖地。
どうか努々悪魔の瞳に魅入られぬようお気をつけ下さいませ」
微笑みながらサラリと凄いことを言ってのける美鈴に、早苗は思わず息を呑んだ。
今、彼女は何と言った。彼女は今、ここが吸血鬼の居城だと言ったのか。その事に、早苗は思わず身を強張らせる。
まさかここがそのような恐ろしい場所とは微塵も知らなかったからだ。
警戒の意を示す早苗を見て、美鈴は鋭く張りつめた笑みを崩し、そして先ほどの威圧感が嘘のように微笑んで口を開く。
「…なーんちゃって!どうでした?今のは少し格好良く無かったですか!?」
「…へ?」
突然の変わり様に驚きを見せる早苗を気にする事も無く、
美鈴はいつものように人懐っこい笑みを浮かべて言葉を続ける。その様子に早苗は呆然と口を開いたままだ。
「いや~、実は最近紅魔館に魔理沙さんやアリスさんしかお客さんが来なくてですね。
お二人とも当然顔パスな訳ですから、門番の仕事をする機会が無くて。
もし、知らないお客さんが来たら、どんな台詞を言ったら門番らしいかなあってずっと一人考えてまして。
…あ、えっと魔理沙さんとアリスさんと言うのは、この館の常連さんの名前でして」
「は、はあ…」
先ほどまでの威厳に溢れた門番の姿からは考えられないほどに
フランクに話しかけてくる美鈴の話を、早苗はただ相槌交じりでただただ頷く事しか出来なかった。
実はこの姿こそが紅美鈴の本当の姿であるのだが、そんな事は当然早苗が知っている筈も無く。
久々の訪問客が嬉しいのか、呆気に取られたままの早苗に、美鈴は絶える事無く話を続けていく。
「それでですね、私も一応この館の門番長ですから少しは格好良いところを部下達に
見せてあげたいなと思いまして。という訳でその第一弾に考えたのが先ほどのこの館の決め口上だったのですが…」
「美鈴、ちょっと良いかしら」
「ひええええええええええっ!!!!?
すみませんごめんなさいサボってません全然サボってませんからナイフだけは勘弁して下さいいいい!!!!」
そんな楽しげに話をしている美鈴だからこそ、背後から近づく人物に気づく事すら出来なかった。
突如背後から聞こえた声に、美鈴は条件反射と言わんばかりに額を地面にすり付け土下座する。
状況の変化に全くついていけない早苗は、とにかく視線を美鈴が土下座している方向へと向けた。
そこには、博麗神社での宴会の時に見かけたメイドの姿があった。メイド長、十六夜咲夜である。
「…あのね、一体何を謝っているのよ貴女は」
「へ…?え、えっと…てっきり仕事をサボっていたからナイフでも刺されるんじゃないかと…」
「馬鹿ね、そんな事する訳ないでしょ。
一体何時の話をしてるのよ、何時の。私が貴女にナイフを向けることはもう未来永劫ありえないわ。
それに貴女は今日も明日もずっと休みなのに、勝手に門番をしているだけじゃない。
いわばサービス残業も良い所だわ。そんな貴女をどうして私が怒る必要があるのよ」
「ううう…お願いですからもう一度労働条件の見直しをして下さいいい…
休みが無いのも嫌ですけど、こんなに休みがあり過ぎるのも嫌過ぎますよおお…」
「駄目よ。仕事を増やして、また美鈴に負担を掛けてしまうなんて絶対に許さないわ。
そもそも私がOKを出したところで、お嬢様が首を縦に振るとは到底思えないし」
「そ、そんなあ…これじゃ私、本当の意味でただ飯食らいも良いところじゃないですかあ…」
「いいのよ。貴女の仕事はこの紅魔館に笑顔を振りまくだけでいいの。
それだけで私達は幸せになれるのだから。という訳で労働条件の見直しは却下ね。今のまま週休五日制で頑張りなさい」
咲夜の言葉にガクリと肩を落とす美鈴。
これまでの経緯を全く知らず、二人の話を聞いていた早苗にとっては何故美鈴が労働改善を訴えているのかサッパリ理解できなかったりする。
過労死という言葉を生み出した国の出身である早苗にとっては、美鈴の悩みなど到底理解出来ないものだったのだ。
レミリア達が美鈴への過剰な愛情の余り与えた役職、『最終鬼畜門番長』は未だ健在であり、
どうやら彼女の待遇である就労時間は朝の九時から十時までの一時間、給与は一般メイドの138倍、
完全週休五日制と多種の休暇制度による併せ技の年休暇数353日は改善されそうにないらしい。この場合、改悪と言うべきか。
そんな早苗の存在に気付いたのか、咲夜は視線を早苗の方に向け、『あら』と声を発した。
「貴女は確か守矢神社の。紅魔館に何かご用かしら?」
「あ、えっと、この館にいらっしゃる慧音さんに話がありまして。
それで今、待たせて頂いてるところなんです」
「そう。それじゃ、もう少しだけ待って頂戴。そんなに時間は掛からないと思うから」
どうやら早苗の来客には余り興味が無かったのか、咲夜は話をすぐに打ち切った。
そして再び視線を美鈴の方に向け、最初の用件を伝える為に彼女へと言葉を紡いだ。
「ところで美鈴、今時間の方は空いてるかしら?
もしよければ、クッキーを焼いたから一緒にお茶でもしようと思って誘いに来たのだけれど」
「えっ、本当ですか!?咲夜さんの作るクッキーは凄く美味しいから私大好きなんですよ!
もし私でよければ是非ご一緒させて下さい!」
「フフッ…嬉しい事言ってくれるじゃない。それじゃあトコトン喜ばせてあげようかしら。
最近人里で買ったばかりの新しい紅茶もあることだしね」
咲夜の言葉に子供のように目を輝かせて大喜びする美鈴。
その姿を見て、早苗は微笑ましい光景だと感じる反面、何故か心から純粋にそう思うことは出来なかった。
それはきっと、美鈴に微笑んでいる咲夜の笑顔から、何故かどす黒いモノが色々と吹き出ていたからだろう。
確かに愛情は感じ取れるのだが、それ以外の何か強烈なモノが。主に欲望とか欲望とか欲望とか己の欲望とか。
それを感知できる辺り、やはり早苗さんは勘だけは鋭いのかもしれない。どこぞの腋巫女と同じように。
「それじゃ美鈴、私の部屋で準備しているから早速…」
「待ちなさいッッッ!!!!!!!」
美鈴の手を優しく握り、咲夜が館へ足を踏み出そうとしたその刹那である。
突然紅魔館の門前に響き渡る誰かの声に、その場の三人は驚きの表情を浮かべる。
何故ならその声の主の姿が何処にも見えなかったからだ。そんな三人を気にすることもなく、その声は言葉を止める事無く語り続ける。
「人は誰しも他人を愛する心を持っている…
他者を愛し己がその想いに悩む事は苦しく、しかしその姿は夜空に浮かぶ紅い月よりも美しい。
けれど、その苦しみから逃げる為にモノを利用して不当な愛を得ようとすれば、そこに残るのは深い悲しみだけとなる…
人、それを悲恋と言う!!!」
「クッ…!一体誰!?姿を現しなさい!!」
ナイフを構え、咲夜は大空へと声を上げる。
そんな咲夜の叫びに応えるかのように、一つの人影が大空へと翻った。
その少女は何処までも華麗に、そして優雅に。美しく宙を舞い、音も無く大地へと着地する。
手には日傘を、目にはサングラスを。咲夜達の前に降り立ち、少女は咲夜に向かって凛とした声を発するのだ。
「貴女に名乗る名前は無いっ!!!!」
腕を組み、ビシッと決める少女に三人は言葉を発する事が出来なかった。
それは少女の正体が分からなかったからではない。どう見ても、誰が見ても、というか知ってる人間が見たら誰だって分かるだろうという人物だったからだ。
というか、宴会でその姿をチラリと見ただけの早苗ですら、それが誰なのか分かるくらいだ。
長年この館に棲んでいる美鈴に至っては言わずもがな。果たしてこれは従者として突っ込んでいいものかどうか悩んでいる最中だった。
美鈴がどうするべきか頭の中で苦悩している中、先に言葉を発したのは咲夜の方であった。
完全で瀟洒な彼女が、一体目の前の方にどのような指摘をするのか。息を呑んで見守る美鈴の期待を背負い、咲夜は言葉を口にする。
「…貴女、一体何者?その身のこなし、そのオーラ…只者じゃないわね」
「うええええええ!!!!??いやいやいやいやいやいやいやいやいや!!!!!
咲夜さん一体何を言ってるんですか!?この人はどう見てもお嬢様じゃないですか!!!?」
ある意味とんでもない事を口にしてくれやがった完全で瀟洒な咲夜さんに美鈴は思わず絶叫突込みをする。
そう、美鈴の言う通り、目の前の人物は誰がどう見てもレミリア・スカーレットその人だった。
だって思いっきり背中から吸血鬼の羽生えてるし、服がいつものお嬢様の服だし、そもそも外見まんまだし。
変わっている事と言えば、ただサングラスを掛けているだけ。そんな美鈴の突込みをスルーし、レミリア(仮)は咲夜に言葉を返す。
「クッキーで美鈴を釣ろうとし、その中に睡眠薬を含ませてあわよくば寝床まで連れ込もうという
その死ぬほど羨ましい…じゃなくて悪行、見逃すわけにはいかないわ!
こんな白昼堂々私の美鈴のえっちな身体を隅々まで堪能しようとするなんて…それは私の役目よ!!」
「…ふう、面倒ね。一体何処の誰かは分からないけれど、貴女は私と美鈴の大切な時間の邪魔をした。
その償いは勿論その命で払ってもらえるのよね?それが分かっていて私にケンカをふっかけているのよね?」
「えええええええ!!!?で、ですから咲夜さん、その方はどう見てもレミリアお嬢様ですってば!!!
ていうかホラ!!さっきその人はテラスから飛び降りてきたじゃないですか!?
あそこ見てくださいよ!!テラスでパチュリー様が紅茶を飲みながらこっちを眺めてますから!!!」
紅魔館のテラスを必死に指差し、咲夜に訴えかける美鈴。
ちなみに彼女の言う通り、テラスではパラソルを差したパチュリーが、どう見ても『私楽しんでます』といった
表情を浮かべながら呑気に紅茶を啜っていたりした。
そんな三人の光景を呆然と眺めていた早苗だが、トントンと肩を叩かれ、そちらの方を振り返った。
そこには、疲れたような呆れたような何とも言えない表情を浮かべた慧音が、小さく溜息をついていた。
「…見ない方が良い。いや、紅魔館の名誉の為にも、今見た光景は無かった事にしてやってくれ…
ここは悪魔の館、紅魔館。人々の畏怖の象徴である誇り高き吸血鬼の元に集いし悪鬼達の住まう場所。
決して今お前が見たような三流コントな光景など、ありはしなかったんだ…」
「は、はあ…」
早苗の手を握り、慧音はズンズンと紅魔館の中へと彼女を連れ込んで入った。
これ以上、このカオスな光景を視界に入れさせない為に。きっと紅魔館の事を全然知らない彼女には、刺激が強過ぎるだろうから。
二人が紅魔館内に去った後も、レミリア達の騒動は終わらない。
自分の変装が完璧だと思い込んでるレミリア。その正体に本気で気付いておらず、主にナイフを構える咲夜。
そしてこの状況をどうしたらいいのか本気でオロオロと困惑する美鈴。
最早カオスを通り越えて『不幸な時代だ、常識人ほど早死にする』とでも次回予告が流れそうな状態である。
「どこの誰だか知らないけれど、貴女には早々に退場してもらうわ。私と美鈴の蜜月の時間の為に。
――牢記せよ、自分が何者かを。我々こそ、レミリアお嬢様の牙である――」
「フフッ、本気の貴女と殺りあうのは一体何年振りかしらね?
咲夜、全力できなさい。遠慮は不要、貴女のその力をこの誇り高き吸血鬼、レミリア・スカーレットに証明してみせなさい」
「いやいやいやいやいや!!!
今お嬢様思いっきり自分で名前言いましたよね!?自分の名前普通におっしゃいましたよね!?名乗りましたよね!?」
「あ、今のは無し。私はえっと…華蝶レミリア。
そう。蝶のように華麗に舞い、美鈴と言う名の美しき花を求め彷徨う正義の使者、華蝶レミリアよ」
「華蝶レミリアって…いやいやいや!!ですから普通にレミリアって名前を出しちゃってるじゃないですか!?
その訂正に一体何の意味が!?」
「貴女の正体なんてどうでも良いわ。これから死にゆく者に興味は無いし、持つつもりもない。
貴女の敗因はたった一つ。たった一つの単純な答えよ。貴女は私と美鈴の時間の邪魔をした。ただそれだけの事」
「全然どうでも良くないですよね!?ですからこの人はお嬢様だって何度も言ってるじゃないですか!?
というかお二人とも、ここで戦うのだけはお願いですから止めて…あいやああああーーーー!!!!??」
美鈴の叫びも虚しく、紅魔館の門前で一際大きな衝撃が爆ぜる。
奇術『エターナルミーク』と紅符『スカーレットシュート』のぶつかり合う爆発で、美鈴は思いっきり巻き添えをくらい遥か彼方へと吹き飛ばされてゆく。
目を回して気絶した美鈴が湖に浮かんでいるのを発見したのは、またも氷精だったりしたのは完全な余談である。アタイったら最強ね!
早苗を紅魔館内の自室に連れ、慧音は紅茶を用意して彼女に差し出した。
それを早苗は一礼して受け取り、紅茶を口にし、その味に驚きを見せる。
少なくとも、それは彼女が今まで生きてきた中で一番美味しい紅茶の味であったからだ。
「凄く美味しいです…紅茶って余り飲まないんですが、こんなに美味しかったんですね」
「ああ、私も最近それを知ったよ。
以前は緑茶以外の飲み物は滅多に口にしなかったんだがな。最近は紅茶も悪くないと思うようになってしまった」
これも全てはここでの生活の影響だろうな、と慧音は満更でもない笑みを零す。
早苗にカップを差し出した後、慧音も早苗と向かいの席に腰を下ろし、早苗に問いかける。
「早速だが、用件を聞こうか。
わざわざこのような場所まで私を訪ねてくれたんだ。早苗の力になれるといいのだが」
「えっと…とりあえず現在外から度々聞こえる爆音に関してお聞きしたいのですが…」
「…頼むからそれには触れてくれるな。美鈴が絡んだあいつ等の行動なんて私が説明出来るものか。
いや、というかしたくない。理解も出来ないしするつもりもない。私だって、話したくない事くらい、ある…」
早苗から視線を逸らし、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる慧音さん。
どうやら流石の彼女も身内の恥話を披露したくは無いらしい。といっても、慧音はこの館の主の身内ではないのだが。
ちなみに早苗の言う通り、紅魔館の外からは相変わらず激しい爆音が間髪居れずに響き渡っている。
それも当然だ。何せ幻想郷でも強者の集う場所、紅魔館のナンバー1とナンバー3が本気で弾幕勝負を行っているのだから。
ちなみにナンバー2はお休みタイム、ナンバー4は楽しそうに二人の弾幕勝負を眺め、
ナンバー5に至ってはスペルカードに巻き込まれ、現在は湖で目を回していたりする。今日も紅魔館はパラダイスだ。
「まあ、レミリア達の事はその辺に…いや、簡単には戻って来られないよう、冥界辺りに投げ捨てて置いてだ。
何か話があって来たんだろう?私でよければ、どんな話でも聞くつもりだぞ。…勿論、レミリア達の事以外でだが」
「はい…えっと、あの、ちょっとした悩み事なんですが…
何と言うか、他の人に対して面と向かって聞けるような事じゃなくて…聞いて頂けますか?」
「ふむ…まあ、お前も年頃の女の子だ。そういう悩みも確かにあるだろう。
聞くのは一時の恥、聞かぬは一生の恥とも言う。分からない事は須らく先人に頼るべし。
先人とは少々大袈裟かもしれないが、私とてお前よりはしっかりと歳を食っているからな。遠慮なく話してみるといい」
優しく微笑む慧音に、早苗はホッと安堵する。
やはりこの人に相談を持ちかけたのは正解だったと。この人なら、きっと自分の相談に真剣に乗ってくれると。
そして、早苗は己の悩みをゆっくりと慧音に語りだす。幻想郷に来て数ヶ月、この幻想郷内で
何故か女の子同士で付き合っている人々が溢れ(※くどいようですが全然溢れてません。早苗さんの以下略)、
外の世界ではありえない事に困惑しているということ。もしかして、その事を変に感じているのは自分だけなのではないかということ。
その悩みを聞き終えた時、慧音は小さく息をつき、早苗に対して口を開く。
「成る程な、お前の悩みは大体は把握した。
つまり、外の世界では異性同士が付き合うことが普通だったのに、その根底がこの幻想郷では異なるように感じる、と。
…ううむ、まずはお前のその大きな勘違いから訂正する事が先か」
「えっと…勘違いと言いますと?」
「あのな、早苗。先に言っておくが、幻想郷で別に同性愛で溢れているという訳ではないぞ。
大体、お前は人里に毎日のように信仰を集めに向かっているのだろう?人里の人々は皆同性愛ばかりだったか?
仲睦まじい夫婦やその間に授けられた稚児や童の姿を見なかったのか?」
「………あ」
慧音の指摘に、早苗は『私今更気付きました』と言わんばかりに目を丸くして、ポンと手のひらを叩く。
その様子に、慧音は小さく溜息をついた。そして心の中でこっそりと呟いた。
一度思い込んだらどこまでも止まらなくなる辺り、この娘も相当危なっかしいなと。
「そう言われて見れば確かに…むしろ少数派のような気も…
あれが幻想郷の恋愛のスタンダードという訳ではなかったんですね…」
「あれが幻想郷のスタンダードなら人里は百年と持たずに人の姿が絶えてしまうだろうに。
余程の力技を行使しない限り、同性同士では子を生す事は出来んからな」
「…へ?ここでは同性同士でも赤ちゃんが出来るんですか?」
「可能か不可能かと言われれば恐らく可能と言っておこう。ただ、本当に強引な方法だからな。確実という保障はしないが。
八雲の妖怪に境界を弄ってもらうにしても、永遠亭の薬師に秘薬を貰うにしても、リスクが高過ぎる。まあ、それは良いとして…」
話題転化の為か、一度言葉を切り、慧音は紅茶を口に運ぶ。
軽く喉を潤し、再び視線を早苗の方に向けて、慧音は再び口を開く。
「早苗、お前に一つ聞きたい事がある。女同士で付き合うこと、互いが愛し合う事は変だと思うか?」
「え…?」
「勿論、お前の感じている気持ちをそのまま言ってもらって構わない。
自分の発言が誰かを傷つけるのではないかとか、失礼なのではないかとか、そのような事は一切考えずにな」
慧音の質問に、早苗は顔を俯かせたまま、何も答える事が出来なかった。
それはつまり、肯定の意。女性同士で交際している事への違和感を拭えないからこそ、何も言えない証。
まるで授業中に問題を当てられ、答えに詰まる寺小屋の子供のような仕草を見せる早苗に、
慧音は表情を崩した。それは本当に優しい表情で。思い悩む早苗に、慧音は優しく言葉を紡いでゆく。
「何も悩む事はない。早苗は外の世界で生まれ、その文化の中で生きてきたんだ。
お前が同性同士で付き合っていることにどう感じても、それは決しておかしな事ではないだろう。
女性同士で付き合うという行為は、お前にとっては見慣れぬモノで、それだけ衝撃が大きかった。
その事を否定するつもりも無いし、お前を咎めようとする事なんてもっての他だ。
異性同士が愛し合う事は自然の摂理であり、同性間の恋愛に抵抗を感じるのは悪いことだとは私は思わない」
予想していなかった慧音の言葉に、早苗は驚き言葉を失う。
てっきり弾劾でもされるものだと思っていた。幻想郷でその考えは許されないと。狭量だと。
呆然とした表情を浮かべる早苗に苦笑しつつ、慧音は『だが』と付け加える。
「その固定観念によって他者を見るその視界を曇らせてしまう事だけは避けねばならん。
例えある人が女性同士で付き合っていたとしても、その人物の人間性が何ら変わることはない。
…まあ、そんな事は私が言う必要はないか。お前がそのような事で人を貶めるなど考えられんからな」
「も、勿論です!!そんな事は絶対にしません!!
神奈子様と諏訪子様のお二人に誓って約束します!!」
拳を握りしめて固く誓う生真面目な早苗に、慧音は『そうか』と微笑み返した。
ふっと息を吐き、慧音は早苗を見つめながら、心の中に愛する想い人を思い描く。
それはどこまでも不器用な優しさを心に秘めた女の子。ぶっきらぼうだけれど、本当は誰よりも女の子らしい娘で。
彼女と初めて出会ってから一体どれ程の時間が流れただろう。それは一瞬のように思えるし、永遠のようにも感じられる。
けれど、どれだけ時が流れても忘れたりはしない。初めて彼女に出会った時の光景を。初めて彼女を瞳に入れた時の胸の高鳴りを。
出会った瞬間に悟った。私はこの人と出会う為に、この人の心の枷を解き放つ為に、この世界に存在するのだと。
陳腐な言葉で言い表すならば、それはきっと一目惚れで。彼女の内面を知り、その想いは更に強くなって。
そして気付けば自分は彼女の手を握り締めていた。共に歩くと、決して離さないと心に誓って。
だから、早苗の言うような同性だからどうこうなどと考える事など無かった。自分にとって、彼女が必要だったから。
「…きっと、性別などは関係ないのだろうな。
私の愛する人が、出会うべくして出会った運命の人が、私と同じ女だった…きっと、ただそれだけなんだろう」
「慧音さん…」
「笑ってる顔が見たかった。
いつも憂いを秘めて全てを諦念していたようにも見えた、あの表情を笑顔に変えてあげたかった。
アイツが幸せになってくれるなら、私はその為にどんな事でもしてあげたかった。ただ笑っていて欲しかった」
軽く息をつき、慧音は『昔の話だ』と苦笑交じりに呟く。
そして、じっと耳を傾ける早苗に、慧音は優しく諭すように言葉を続けていく。
「きっと、他の者達も同じなんだろうな。好きになった人が、ただ自分と同じ女だった。本当にそれだけなんだ。
相手がもし男として生まれていても、きっとその人は同じようにその相手を愛しただろうな。
お前の見てきた者達はどうだ?女性同士でありながら、恋に身を落とした者達は幸せそうに笑っていたか?」
慧音の言葉に、早苗は今日出会ってきた人々の姿を振り返る。
アリスと魔理沙は笑っていたか。藍と妖夢は笑っていたか。美鈴と咲夜は笑っていたか。
その姿に、早苗は思わずクスリと笑みを零す。そんな事、今更思い出す必要も無い。彼女達は確かに笑っていた。幸せそうに、互いを想いあうように。
「――はい。皆さん、凄くお幸せそうに笑いあっていました。
同性がどうだとか、何だかそんな下らないことで悩んでる自分が馬鹿らしくなるくらいに」
「そうか。ふふっ、羨ましい事だ。
まあ、私から言えることはそれくらいだな。他の者が同性同士で恋愛してるからと言って、思い悩むことはない。
他の者と同じように、お前はお前の好きな人を遅かれ早かれ見つける事になる。
その人が男になるか、女になるかは分からんが、性別の事で足踏みする必要は無いんだ。
自分の気持ちに素直になること、お前のすべき事はただそれだけだ。
…まあ、多少結論がずれてしまっている気がしないでもないが、こんなもので構わないか?」
こくりと力強く頷く早苗を見て、『それは良かった』と慧音は嬉しそうに笑みを浮かべた。
心に蟠っていた悩みを解消し、早苗は一礼して席を立つ。その早苗に合わせるようにして、慧音も腰を上げた。
「送っていこう。外から騒音は聞こえなくはなったものの、レミリア達の事だ。油断は出来んからな。
万が一にも巻き込まれてしまっては大変だからな」
「すみません、悩みの相談に乗ってもらったのに、お手数をおかけして…」
「何、構わないさ。それに仮とはいえ、今の私は紅魔館の住人だからな。
身内の起こす問題で他の人に迷惑をかける訳にはいかん」
『本当に困った主人だ』と笑いかける慧音に、早苗はあははと苦笑交じりで返すしか出来なかった。
あとは何も語らず、そのまま紅魔館を後にする。――そうすれば良かったのだ。この数分後、早苗は強くそう後悔することになる。
悩みも解決してもらい、良い話も聞かせて貰う事が出来た。それで良かったではないか。それで充分だったではないか。
これでメデタシメデタシ、ハッピーエンド。そうすればよかったのに、早苗はつい迂闊な事を口にしてしまったのだ。
先ほどの慧音の『紅魔館の住人』という言葉。その一言さえ、スルーしておけば――
「そう言えば慧音さん、どうして人里ではなくこの館に住んでいらっしゃるんですか?」
早苗の何気ない一言に、慧音の笑顔にピシリとヒビが入る。
それは物凄く小さな亀裂であるが、確実に慧音の心に突き刺さる、そんな言葉で。
まだ引き返せた。ここならまだ引き返せたのだ。だが、早苗の持ち前の勘の鋭さがここでは致命傷となってしまった。
慧音に投げかけた自分の質問から、何か不可思議な事を発見したのか、『そういえば』と早苗は言葉を続けていく。
「どうして慧音さんの家は壊れてしまったんですか?
現在立て直されている最中である事は知っているのですが、その理由までは知らなくて…」
ピキピキピキ。そんな音が聴こえてきそうなほどに、慧音の笑顔は明らかに強張っていく。
ただ、実際に顔にヒビが入るはずも無く、必死に笑顔を保とうとする慧音さん。けれど、身体はどこまでも正直で。
髪の色がゆっくりと変化し始め、頭からは角がにょきにょきと生え始めてる。相変わらず満月でも無いのに。
そんな慧音に気付く事無く、最後のダメ押しとばかりに早苗は言ってはならない禁句を口にする。
「…あれ?そういえば、妹紅さんはどうされたんですか?ご一緒ではないのですか?
慧音さんが人里におられた時には、いつも家の方に妹紅さんが居られたので、てっきり同棲しているものかと…」
終わった。何かもう色々と終わった。第三者がいれば今すぐその場から逃げ出す準備をしている頃だろう。
K.Y.東風谷は空気読めないのかと言われても仕方が無い程に徹底振りをみせる早苗さん。
まさに空気に水を差す、これが天然巫女こと東風谷早苗であります。
どうして慧音が話中で妹紅の名前を出そうとしなかったのか。その辺りをもう少し考えていれば…もしかしたらこの事態は防げたのかもしれない。
しかし、それも全ては結果論だ。仕方が無い、これは仕方が無いのだ。
何故なら早苗は、慧音と妹紅の事を…今現在、慧音が妹紅に一方的に喧嘩別れされている事を知らなかったのだから。
プルプルと拳を震えさせる慧音に、早苗は驚き心配そうな表情を浮かべて言葉をかける。
何か数時間前も同じような光景があったような気がしないでもないが。
「え、えっと…慧音さん?あの、一体どうし…」
「うがあああああああああああ!!!!!妹紅の事は言うなあああああああああああああ!!!!!!!!!」
「ええええええええええええええ!!!!!!?????ど、どうしてえええええええええ!!!?????」
館中に響き渡る咆哮と共にきもけーね降臨。無論、角も髪の色も完璧です。
彼女の発動させたラストワード『無何有浄化』を直撃され、悲鳴と共に窓の外に叩き出される早苗さん。
ちなみに早苗さんの吹き飛ばされた距離は美鈴の記録を塗り替え、人里近くの森の中まで更新したという。
仕方ない。これも仕方ないのだ。毎日謝りに行ってはフジヤマヴォルケイノされている慧音に、
妹紅に関する話題は厳禁な事など、一月の間会っていなかった早苗が知る筈も無かったのだから。
かくして、少女の悩みは解決した。
恋愛の形とは自由な形。たとえそれが同性同士でも異性同士でも想いの形は変わることは無い。
今日は本当に良い経験をしたと彼女は思う。こうして幻想郷の事を一つ一つ知っていくこと、それが今の彼女には何より大切な事。
そして、心の奥底で少女はひっそりと願うのだ。自分もいつか、他の人達のように素敵な出会いが待っていますようにと。
こうしてスッキリしたカタチで、少女の悩み事から始まった物語は終わりを迎えたのだが…
「う~ん…挨拶をきちんとする、これは出来てると思うんだけど…他には…」
神社の縁側に腰を下ろし、本を読み耽る早苗を背後からこっそり見つめる女性が二人。
「ちょっと神奈子、早苗ったらどうしたの?
ボロボロになって帰ってきたと思ったら、一心不乱に読書に耽ってるし…」
「さあねえ…あの娘も難しい年頃だからねえ。色々あるんだろ。
それにしても、いつになったら夕飯の準備を始めてくれるんだろうね…」
「あうう…お腹空いたなあ…」
その二人の神様――神奈子と諏訪子は互いに顔を合わせて大きな溜息をつく。
どうやら彼女達が晩御飯にありつけるのは、まだまだ先にことになりそうだ。
一心不乱に本に集中する早苗だが、そんな彼女を気にする事も無く隣に腰掛け、彼女に話しかける少女が一人。
「信仰を集めたり勉強をしたりと早苗も色々大変だねえ。
ところで早苗、キュウリ食べる?美味しいよ?」
「いえ、お気持ちだけ頂いておきます」
「そう、それは残念。ホントに美味しいのに。きゅーかんばーきゅーかんばー」
早苗にやんわりと断られ、その少女――河城にとりはリュックから本日16本目となるキュウリを取り出し、美味しそうに齧っていた。
ちなみに早苗が読み耽っている本は、慧音に吹き飛ばされたその帰り道、香霖堂で買い求めたものである。
その本のタイトルは『人や妖怪を怒らせない為の100の方法』。どうやら早苗の苦悩が尽きる日はまだまだ訪れそうにないようだ。
東風谷早苗、守矢の巫女にして祀られる風の人間。そして少しばかり思い込みの強い、空回り少女。
彼女の幻想郷での苦労人伝説はまだまだ始まったばかりなのである。
慧音にいい日々がくるのを楽しみにしています
もこたんも仲直りしてやれよwwww
爆笑したwww
藍様みたいにピュアな美鈴の心情(恋愛的な意味での)にもっと突っ込んでくれたら…
次回作も待ってます
次の組み合わせは何かな?
>緑の配管工でも何でもありませんっ!!
悲しいけどもう手遅れだよ早苗さん
初登場の時点で赤い同種がすでにいた以上、キミは「永遠の二番手」の称号からは決して逃れられないんだ
マジでどうしようもないよコレwwwwwwwwwwwwwwwww
貴女が空気を読むことは慧音が妹紅と仲直りしたり、紅魔館メンバーが美鈴狂いじゃ無くなる位難題かと。
そう貴女は少し真っ直ぐ過ぎます。みょん並みに。
そんな早苗さんを改善するにはこれしかない!「河童に嫁入り」
あと、耐える事無く話を続けていく→絶える事無く話を続けていく じゃないでしょうか?
流石としか言い様がありません。
そして百合度の異常な高さ。間違いなく作者は手遅れ。(誉め言葉)
気持ちは分からなくも無いですがw
霊夢が堕ちた今、スタンダードなのは早苗さんだけですから。この調子で、突っ込み(そしてぶっ飛び)を続けて欲しいでものです。
あと、にとりんが良いwww
最高です。
レミリアの兄さん化にはビックリ。
だがそれがいい!
後、早苗さん貴方しかまともな人がいないんでがんばって。
ついでに、百合属性は手遅れじゃないよ、師匠と呼ばせください。
共に幻想卿に逝きましょう。Let,GOtothaGensoukyou
天然KYな彼女なのがとても面白かったです
あの蝶仮面つけてるんですかお嬢様wwwwwwwww
今回は正直、初めての風神キャラということもあり、レミリアの過去話の時くらい投稿した後にビクビクしてました。
早苗さんが主役なうえに、題材が女×女に踏み込んでたりしてましたので、もう祈るような感じだったんですが…本当に良かったです。
皆様のご感想、本当に嬉しかったです。本当にありがとうございました。
>13様 慧音にいい日々がくるのを~
頑張った人は報われないと嘘だって士郎が(マテ
個人的に慧音さんは全作を通じて一番の功労者だと思ってますので、幸せになって欲しいです(そういう話を書けよ
>22様 もこたんも仲直り~
このままじゃ妹紅に刺されて中に誰もいない宣言されてしまいそうです。慧音の土下座外交に期待です。
>23様 藍様みたいにピュアな美鈴の~
あれだけ色々されてるのに気付かない美鈴もよっぽどですね。でも藍と美鈴は大体こんなイメージです。おかしいなあ…
>25様 我らのジャスティス~
何という同志…もはや我々は地上に舞い降りた堕天使、金のラッパを吹くことも許されぬ。
もう私達に普通と言う名の大空を翔ける翼はありません。互いに肩を貸し合ってこの荒野を歩いてゆきましょう…
>31様 このシリーズ大好きです~
ありがとうございます。そのお言葉だけであと十年は戦えると戦場で兵士が言っておりました。
次回作は、ちび美鈴あたりで一度触れたかもしれませんが、美鈴の過去話を予定しています。メインはレミリアと美鈴になるかと思います。
>32様 ナチュラルに幻想郷はそういう世界~
勿論幻想郷はそういう世界なんです!(拳を握り締めて鼻血を出して力説)
マリアリとか藍みょんとかそういうのが当たり前の世界なんですよ!もう本当に私は戻れませんか、色々と。
>名前ガの兎様 どうしようもない~
どうしようもない幻想郷、どうしようもない紅魔館、本当にどうしてこんなことに…(今更
本当、このような滅茶苦茶な世界観でも温かく見守って下さる皆様には感謝の言葉もありません…キャラ崩壊とかもうありえませんです、はい。
>37様 そんな早苗さんを改善するには~
なんと、狐の嫁入りならぬ河童の嫁入りとは…でも、早苗×にとりもいいなあ…
今回は風神キャラで好きな早苗さんとにとりを書けた事で満足です。しかし、にとり…また三面キャラか…(美鈴、アリス、慧音)
>39様 ヌルい奇蹟を~
早苗さんは何故か微妙な奇跡を起こしまくるイメージです。くじ引きで五連続4等を当てたり、棒アイスの当たりを連発したり。
それと誤字のご指摘本当にありがとうございます!本当に助かりました。
>41様 間違いなく作者は手遅れ~
本当にありがとうございます…って、あれえ!?良い意味で手遅れって何ですか!?喜んでいいんですか!?
>#15 様 霊夢が堕ちた今、スタンダードなのは~
スタンダードなのが早苗さんしかいないという自体、最早色々とヤバイですよね。早苗さんは新たな常識人キャラとして重宝しそうです。
にとりは何というか、書いてて何故か楽しかったりしました。きゅーかんばーきゅーかんばー。
>49様 レミリアの兄さん化には~
次回作に着手しているのですが、レミリアがシリアス続きなので、こっちで爆発させてしまいました。暴走させたかった、今は反省してます。
何ていうか…レミリアの過去話の時もそうだったんですが、変態レミリアばかり書いてると、レミリアはもう変態じゃないと違和感が(マテ
>幻想の旅人様 今回は爆笑しました~
ありがとうございます。もうシナリオよりもとにかく書きたいことを書き殴った感が否めない話ですが、
そう言って頂けると本当に嬉しいです。多分、今回で幻想郷の常識人ランキングの一位に早苗さんは躍り出たのではないでしょうか。
ちなみに二位は…もう思いつきません。慧音はアレですし、藍もアレですし、霊夢もアレですし…フラン?
>59様 おんな、どうしで~
ふつーです むしろのーまるです おんなのこはおんなのことつきあうものです ぽえーん
>イスピン様 天然KYな彼女~
ありがとうございます。自分なりに早苗さんを書いてみたのですが、ちゃんと彼女の色が出せていたなら嬉しく思います。
早苗さんは何故かこう、必死に奔走しては空回りというイメージが強いです。何でかなあ…
>61様 あの蝶仮面~
メンマではなく納豆を嗜好する正義の使者だそうです。多分親友のパチュリーさんの入れ知恵ではないかと思ったりしてます。
>63様 そろそろ設定リセットがほしいかも~
設定のリセットは…ごめんなさい、多分というか、絶対無いと思います。手を広めることはあっても、設定を捨てる事は…
結局、何だかんだ言って今の美鈴や藍を中心に回る滅茶苦茶な幻想郷が、自分の本当に心から書きたかったモノなんだと思います。
ただ、次回作では今までのまとめというか、集大成に出来ればと考えています。それで一度区切りをつけられれば、と。
もし、そこで連載(?)設定を終わらせるなら、それを投稿の最後にと思います。その後に設定をリセットして新しい幻想郷の世界を考える事は出来ないと思います。
う~…すいません、何か全然上手く伝えられなくて…と、とにかくそんな感じです。本当にごめんなさい…
俺も今のにゃおさん独特の幻想郷が大好きです。
次で最後なんて言わず、これからもどんどん独自の幻想郷を書いてほしいと願います。
藍×妖夢とかだいすきだから!
え?幻想郷って♀×♀が普通じゃないんですか?
フラメイ見たいなと…
この変態しか書けない駄目駄目作者に真っ当なもこけねを求めるとは…何という剛の者(違
冗談はさておき、実はもこけねの話は作りたいとは考えていたりします。美鈴の話の次くらいに書ければいいなあとか思ってたりします。
>67様 リセットは嫌ですぬ ~
す、すいません…何か言葉足らずで誤解を招いてしまったみたいです。
上記しましたように、設定のリセットはしませんし、次のお話で終わるつもりも今のところはありません。
ただ、もし仮に終わらせるならば、次のお話が今までの話を綺麗にまとめられそうだというだけでして…本当に説明足らずでごめんなさい。
でも、独自の幻想郷が好きだと言って下さったそのお言葉、凄く嬉しかったです。本当に本当に嬉しかったです。次回作も頑張ります。
>69様 え?幻想郷って♀×♀~
だから私もこう言ってやったよ!だよねえ~!(M-1幽々子様)
フラメイは良いですよね!私も大好きです!フランに振りまわされる美鈴、幸せすぎてその光景だけで軽く死ねます。
桃色異変……か。早苗さんもなかなかでいらっしゃる。
恋愛に性別はかんけーね!
早苗さんアホの子すぐるw
100以外つけようがねえ
にとりが神様二人に会って用は済んだはずなのに、
帰らずに早苗のそばにいる時点でフラグを見た自分も手遅れですねw
細かいですが、早苗が紅魔館を見ての台詞
「ちょっと圧巻されちゃいました」は「圧倒」のミスかと
しかしアリスよ、それは早苗さんの娘の名前や・・・
真っ直ぐで優しいけど苦労人……あれ、どこかの半霊と門番が連想され(ピチューン)
で、結局にとり何しに来たんだっけ?きゅうり食べに来ただけちゃうんかとw
16本とか食いすぎにも程がww
何しとん、おぜうさま方は・・・
まっ、変わらない紅魔館で良いのですがwww
しかし・・・天然は怖いわ。
ちなみに僕は今回の話を読むまで幻想郷では女の子は女の子と付き合うのが普通だと思ってました。否、今も思ってるw