※この物語には大変ショッキングな内容が含まれます。そういうのが苦手な人はお戻りください。
紅は二度死ぬ
辺り一面には口と鼻を覆いたくなるような濃い血の臭いが漂っている。
それもそのはず。
ついさっきまでわたし、蓬莱山輝夜と藤原妹紅はこの場にて殺しあっていたのだから。
アイツはすでに人の形として歪で片腕と片足が無い状態で転がっている。
まあ、わたしが毟り取ってやったんだけどね。
「ぐっ…糞っ!」
呻くような耳障りな声が聞こえる。
どうやら、意識を取り戻したようね。
でも失った腕と足を回復できるほどの体力は戻ってないようね。
そりゃそうよね、散々殺したわけだし。
おかげでわたしも何度死んだことか。
数えるのも面倒くさい。
「随分と遅いお目覚めね。少し退屈してしまったわ。」
そう言って挑発してやる。
アイツはすぐ頭に血が上るから、怒った時の反応がまた面白いのよ。
「輝夜ぁぁ…貴様だけは殺してやるっ…!」
ずるずると芋虫みたいに這って此方に向かって来ようとする。
ほら、面白いでしょう?
さて、今日はどうやって虐めてやろうかしら。
また生きたまま釜茹でにしてやろうかしら。
それとも達磨にして塩漬けにするのも良いわね。
そうそう、丸焼きにして焼き鳥だって偽ってイナバに食べさせたこともあったわね。
ナニを食べたか知ったときのイナバの顔ったら本当にケッサクだったわ。
その後わたしの手料理を一切口にしなくなったのは不本意だけど。
…どうやらあいつをどうやって苛めるかを考えるのに夢中になってたらしい。
がしっと足を掴まれてからようやく妹紅が足元にいることに気がついた。
「くたばれっ!『パゼストバイフェニックス』」
足元から凄まじい熱気と炎が吹き上がる。
ちっ!アイツまだこんな力が残ってたのか。
「無駄よ…『神宝 サラマンダーシールド』」
この身に纏う炎を巻き込んでそのままアイツに返してやる。
「ぐああぁぁぁああぁっ」
アイツは無様にも吹っ飛ばされて、ゴロゴロと転がる。
お互い体力は殆んど残ってないしスペルとしてもまともに発動できてなかったからまあ生きてるだろう。
どっちも不完全だったからわたしもこうして立っていられる。
まあ発動できなかったら無様にも転がっていたのはわたしのほうだったかもね。
さて、今日はどういうふうにいたぶってやろうかなんて考えながらアイツに近づいていくとその時、
「きゃあああああああぁあぁあぁあっっ!!」
後ろから、絹を裂くような叫び声が耳に飛び込んだ。
声の方を向くと十を少し過ぎた位の娘だろうか…
この惨状を見て腰を抜かしているようだった。
内心面倒くさいことになったと思った。
別にわたしだって無関係の人を傷つける気なんてさらさらない。
何見てんのよあっち行きなさいってなカンジで追い払ってもいいのだがそうするとあの口うるさい半獣が
飛んでくる。
別にあんな半獣怖くもなんとも無いんだけど、半獣を傷つけると今度は里の人間たちの態度が硬化するだろう。
里の恩恵を預かる永遠亭としてもそのような事態は避けたいところだ。
さてどうしよう?なんて考えてると後ろからアイツが蚊のような声を出す。
「に…げろ。ここか…ら、……は、早く……!」
「っ!お、おねえちゃん!?」
あらあら?この二人どうやら顔見知りのよう。
その途端にょきにょきっと悪戯心がわたしの頭から顔を出す。
いつも思う。わたしの悪い癖だ。
あの子には申し訳ないけどもう、逃がすわけにはいかなくなっちゃった。
そう決めたからには行動あるのみ。
素早く娘の後ろを取り、隠していた脇差を抜いて目の前にかざす。
「ひっ…ぅ…」
「か…ぐ…やぁ!!」
捕らえられた娘は恐れからか最早身動きさえできないだろう。
わたしの言いなりね。
地獄の釜のハエみたいな声をだしてるのがいるけど無視しておこう。
「貴方、あそこに転がってる奴と面識があるみたいだけど、どういう関係なのかしら?」
刃物を抜いて見せ付けているのだ。
答えなければどうなるかぐらいこの娘にもわかるだろう。
もちろん傷つけるつもりなんて毛頭無い。
ただあの場に居合わせた。
そう、運が悪かったのよ。
「ま…前、竹林で迷ってるところを…た、助けてもらって…」
ああ、そういうことね。
ここでわたしはさっき考えた作戦を実行する。
「そう、まあ誰であろうとわたしの姿を見てしまった以上生かして返すわけにはいかないわ。」
びくりと娘の体が強張るのがわかる。
そして妹紅は凄まじい形相でこっちを睨んでくる。
娘の反応をみながら、わたしはある提案をする。
「た だ し 、わたしの提案を受けてくれるというのなら貴方を見逃してあげてもいいわ。」
「…て、提案?」
「そう、貴方の手であそこに転がっているアイツに止めを刺すのよ。」
「…!!そっそんなこと」
「よく見て、そしてよく考えなさい?アイツはもう腕と足をなくして虫の息。放って置いたって死ぬわ。
そして、わたしはそう簡単に殺すつもりも無い。死ぬまで痛めつけるつもり。それを救えるのは貴方だけ。
楽に死なせてあげられるのよ?そして貴方の命も助かる。とても魅力的で素敵な提案だと思わない?」
娘は絶望的な顔をする。
ああ…心が痛むわ。
ホントよ?
すると、妹紅がポツリと口を開く。
「…くに、楽にしてくれ…」
その言葉に驚く娘。
アイツも中々物分りがいいわね。
暫く戸惑っていたようだがやがて意を決したようにわたしから脇差を受け取る。
「ああ、言わなくても判ると思うけどわたしに刃を向けても無駄だからね。死体が一つから二つになるだけよ。」
聞こえなかったのか無視したのかさっさとアイツのほうに歩いていってしまう。
なあんだ、つまらない。思ったより簡単にコトが進みそうね。
妹紅は諦めたかのように目を瞑ってその時をまっているようだった。
アイツのところまで行った娘は脇差を突き立てるべく逆手に持って振り上げる。
そしてそのまま固まった。
いつまでも動かないものだから後押しでもしてやろうと思ったら、アイツがなにやらポツリと言った。
わたしには聞こえなかったけど娘は、
「うわあああああぁぁぁぁぁ!!」
叫びながら刃をアイツに突き立てた。
返り血がその娘の顔を紅く彩る。
「ぁぁう…ううっぁあああぁああああああん…」
そしてそのまま妹紅に覆いかぶさるようにして泣き始めた。
ちょうど心の臓に垂直に刃が立てられている。
あれは確実に死んだわね。
そしてアイツは娘の見ている前では絶対にリザレクションをしないはずだ。
自分が不死の化け物だなんて知られたくないからだ。
そして、わたしの案はここからなのだ。
「さぁ、約束どおり貴方は自由よ。何処へなりと行くと良いわ。…ただ、何でわたしがソイツを殺したかの
理由を聞きたくない?」
勿論<あなたが>とは言わないわ。
そこまで鬼畜ではないわよ。
娘は憎しみの篭った目で見つめてくる。
無言の肯定と受け取るわね。
「ソイツの肌、髪の色、顔、綺麗だと思わない?わたしにはある特殊能力があってね…実は死んだ人間に
乗り移ることができるの。」
そんなの真っ赤な大嘘。
だけれど娘は大層驚いているように見える。
わたしが何を言いたいかはわかってくれているようだ。
「そう、わたしソイツに成り代わろうと思ったのよ。ああ、安心して頂戴な。わたしが乗り移って、例え貴方に
出会ってもソイツが接してたように貴方に接してあげるわよ。」
意地悪そうに笑ってみる。
娘は拳を震わせて此方を睨んでくる。
なかなかいい目をしているわ。
「わたしが憎いかしら?そいつの仇を討ちたいかしら?…ふふっいいわ。待っていてあげる。わたしは
この竹林に小屋を建ててそこに住んでいるだろうから。モチロンそいつの姿でね。その脇差は貴方に
差し上げるわ。見事わたしに突き刺して御覧なさい。人間の体に入ったわたしは出ざるを得なくなるだろうし…」
そこまで聞くと娘は脇差を抜いて走り去ってしまった。
くすくす…何も知らない妹紅は刃に突き刺されたとき一体どんな表情をするのかしら?
そしてどんな行動をするのでしょうね…?
ああっダメ!
声を殺して笑うことすら我慢できない。
「あははははははっ!!アっははハはははハははははははあははははあはははははっははっはははははハはハ
ハハハははははははハハハハハハハッハハハ!!」
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……………
あれから数日後、わたしはのどかに縁側でお茶を飲んでいると凄まじい殺気が此方に向かってくるのを感じる。
「輝夜ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
いつもより数段紅くて綺麗な炎を纏いながら飛んでくるアイツ。
その胸には見覚えのある脇差が突き立てられていた。
まさに精神をえぐる攻撃ですね…
これだからバカップルは困る
でも、これを考えた飛蝗さん。あなたはもっと黒い?
「乗り移る」って考えはいいと思いました
私がその娘なら、騙されているでしょう
キャラが歪んでいるが、短くまとめているのも良かったです。長くすると
後味の悪さが目立ってキレがなくなりますしね。
妹紅にはけいねせんせいがいるから救済措置がありますしね。
というか、輝夜って面白いことのためなら、平気で残酷なことしそうなイメージがあるな
輝夜が黒過ぎる。
あと、ループしそうで怖い。
少し短いから-10点。
悪いんですがヤンデレだろうがなんだろうがそういうのはご自身のブログなりなんなりでご勘弁願いたいです。
妹紅を殺した(と思いこんでいる)娘が、その後妹紅(輝夜が乗り移っていると思っている)と対峙したときの、娘と妹紅のことを考えたら、かなり辛くなりました。
後、誤字っぽいのを
>そしてそんな行動をするのでしょうね
そしてどんな行動をするのでしょうね
ですかね?