Coolier - 新生・東方創想話

過去、現在、そして…

2008/05/13 15:44:03
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注意)登場キャラの設定は作者のイメージによるものが強いので

   キャラ等のイメージが崩れる、という方はバックをお勧めします



   では、どうぞ





























――――――――――――――――――――――――


"いつからだろうこの虚しさは"

"いつからだろうあの頃を懐かしく思うようになったのは"


――――――――――――――――――――――――





※※※過去、現在、そして…※※※





近頃考え事をする事が多くなった気がする

一度考えてしまうと中々抜け出せなくなりふと気づくと何時間も経っていたりすることもあった


「――め、姫?」


いつの間にかまた周囲が見えなくなっていたらしい


「…ん、何かしら永琳」

「考え事をしてる姫なんて姫らしくないですよ、何かあったのですか?」


永琳が少し心配な様子で聞いてきた

――なんでもないわ。と、答えはしたもののやはり頭についたもやもやは取れそうに無い

思い切って尋ねてみる事にした


「ねぇ、永琳」

「何です、姫?」

「過去に…戻る事はできないかしら?」


少々突飛なこの質問に戸惑いながらも、


「それは…、不可能だと思います」

「そう…」



正直この答えが返ってくる事だろうとは予測していた

常識的に考えても過去や未来に行けるようなら誰も苦労はしない


「ですが、いったいどうなされたんです?過去に行けるかとは?」

「………そうね、あえて言うなら刺激の無い日常に飽きてきたってとこかしら」


そう、そうなのだ

私はこの何も無い日常に耐え切れなくなってきている

―――以前は妹紅との殺し合いという遊び(暇つぶし)が有ったがここ最近妹紅の姿を見ていない



いつからだろうか妹紅の姿を見なくなったのは



殺し合いをする仲とはいえ決して嫌いなわけでは無かった

妹紅が日常から居なくなるだけでこんなにも寂しくなる

もう一度妹紅を見なくなった日を思い出してみる



―――そうだ、あれは慧音が―――










△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△















そう、今の幻想郷に慧音はいない

白黒の魔法使いも、博麗の紅白巫女も、紅魔館のメイド長も皆とうの昔に逝ってしまった

魔法の森に居たもう一人の魔法使いは白黒の魔法使いが逝ってしまってからしばらくしてどこかへ行った、とだけ聞いた

酒と宴会好きな鬼もいつのまにやら姿を消していた


今も変わらず幻想郷に居るのは相変わらず寝てばかりのスキマ妖怪とその式神達

紅魔館に居る吸血鬼姉妹と本ばかり読んでいる魔法使い、門番

食べてばかりの幽霊とその従者

…そして、私達



"いつからだろうあの頃を懐かしく思うようになったのは"



私達が起こした異変すらとうの昔の話


ふと気がつくと思うのはあの頃の事ばかり

毎回出会えば殺しあう私と妹紅

一度博麗神社で宴会があれば人妖構わずドンチャン騒ぎの大騒動

天狗が作っている新聞に書かれている事で笑いあった私や永琳、うどんげ、てゐ、永遠亭の皆




『ねぇねぇこの記事見て、【博麗神社半壊!?】だって』

『どうせ魔理沙あたりがやらかしたんじゃないですか?』

『まぁあの白黒だったらいつもの事でしょ』



―――普段通りの何気ない会話


でも、あの頃はそれだけでも楽しかった

飽きることなんて何一つ無かった

一瞬すらも愛おしい程に



遠い、遠い過去の話













△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△












また今日が来た


永遠を生き続ける私には今日があれば明日がある

そして明日になれば今日は昨日となる

そんな事を何千、何万と繰り返してきたのだろう



しかし、今日は昨日とは違った






始まりはきまぐれで竹林に散歩に出たこと


少し歩いた所で永遠亭に向かう人影を見つけた

それは、


「妹紅っ!?」

「お、輝夜かちょうどいいな」

「何がちょうどいいって?ってそれよりも、今まで何処に行ってたの?いつもなら私を見た瞬間襲い掛かってくるくせに今日はどういう事?」

「そんなに詰め寄ってくるなって、とりあえずこの手を離せ」


はっとして妹紅の胸倉を掴んでいた手を離す


「何から話せばいいか…、取り合えず今日は殺し合いに来た訳じゃない」

「そうでしょうね、殺し合いに来たなら互いにもう一回は死んでるでしょうし」


苦笑しながらも話を続ける


「まぁまず今まで何処にいたかってのだが、私は今まで村に居て色々とやっていたわけさ」

「何故?」

「…あいつが、慧音が最後に、『私が居なくなった後この村を頼む』って」

「慧音は最後まで自分の心配じゃなくて他人の心配ばかりで、自分が居なくなったらこの村はどうなるんだろうかとか…」

「私が一人になってしまうんじゃないかとか…本当に…」

「………」


段々と悲しみが覆っていく妹紅の顔を見て私は何も言えなかった


周りの人が自分を残して死んでいく

それはもう何度も繰り返してきて私は何も感じなくなってしまっていたのかもしれない

しかし、私の側には私と同じ永遠を生きる永琳が居た


だが、妹紅は違った


ずっと一人、今まで復讐の念に駆られ

歳を経ても変わらない容姿に人々は怯え誰も理解してくれぬまま年月が過ぎていった

そして始めて自分の事を理解してくれたのが慧音だった


その理解者を失った痛みは容易に想像ができるような物では無いだろう



少し涙が溜まった目を擦りながら、無理に笑った顔をつくって


「それでだ、慧音の家をそのまま私が譲り受けて村に来る妖怪を追い払ったり寺小屋の真似事をしていたんだ」

「あなたが先生ですって?まさか子供達に人の殺し方なんて教えてないでしょうね?」

「酷い事を言うな…こう見えてもどこかのお姫様よりかはずっと上手く教えられると思っているが」

「へぇ、言うわね。じゃあ勝負でもする?」

「今日は勝負をしに来たわけじゃないって言ったはずだが?」

「つまらないわね…じゃあ、何をしに来た訳?」


再度問いただすと手に持っていた袋から二通の手紙を取り出した


「これは…?」

「慧音の手紙。お前と永琳宛だとさ」

「ふぅん…」

「じゃあ私は用事もすんだし帰るか」

「もう帰るの…?」

「あぁ、用事はこれだけだしあまり村から長い間離れる訳にもいかない」

「そう、じゃあね妹紅」

「じゃあな、輝夜」


そのまま背を向けて帰ろうとしたとき


―私は慧音の家に居るから


そう聞こえたのは決して空耳では無いだろう








―――――――――――永遠亭――――――――――――




妹紅と別れて手紙ももらったことだし、という事で永遠亭に戻ってきた


「ただいまぁ」

「あら、おかえりなさい姫。やけに長い散歩でしたね?」

「そのことなんだけど…」

「?」



永琳に妹紅との話を話した

そんな所じゃないかとは思っていたが、というのが永琳の感想らしい


「で、姫はこの手紙を読んだのですか?」

「まだよ。何となく一人で読むのは気が引けたから」


ふふふ、と笑っている永琳を見て何が可笑しいのかとつっこみたくなったがそれは置いといて


「じゃあ、永琳の手紙から開けるわね」

「ちょっと、それは私宛ですよ?」

「いいじゃない、どうせあなたが読んだあと私が読むのだったら今読んでも変わらないでしょう?」


やれやれといったような永琳の隣で慧音の手紙を開けた




"八意 永琳様へ


このようなお願いをするのは大変申し訳ないでしょうが無理を承知でお願いします


私はもう長くはありません、私はこれまで村を妖怪達から守ってきましたが私が居なくなることで村を襲いに来るとも考えられません


そこで、お願いがあります。もし村に何かあった場合は手助けをしてもらえませんでしょうか


妹紅にもこの事は頼むつもりですが妹紅一人で対処できるものには限りがあります


あなたの頭脳と能力があればきっと何があっても大丈夫でしょう


他人任せとは存じますがどうかお願い致します


                                       上白沢 慧音"



「…だってさ、って永琳それ私宛の手紙でしょ!?」

「姫だって私の手紙を読んだのでしょう?おあいこですよ」

「ぶーぶー、それはいいとしても永琳どうするのこれ?」


手に持った手紙を左右に振る


「…知らない仲じゃありませんし、最後の願いときたら断るにも断れませんよ」

「…そうね」


とは言っても妖怪退治程度なら妹紅が居れば安心のはずだ

永琳が手伝えるとあれば村人の病気などを診る程度だろう


「で、私の手紙を返してもらえない?」

「はいはい、姫はせっかちなんですから、どうぞ」

「素直に返せばいいのよ」

「じゃあ私は研究室に行ってますからね~」

「え?永琳はいっしょに読まないの?」

「私はもう読みましたから」


そういえばそうだった

――では、と永琳は出て行き残された私は一人


「何が書いてあるのかしらね…」


手紙を開きながら永琳みたく願い事が書いてあるのかと予想していたがその予想は外れた




"蓬莱山 輝夜様へ


あなたは妹紅の事をどう思っているのでしょうか


妹紅はあなたへの復讐のために、あなたはその危険から逃れるため


それはもう理由にはならないでしょう


きっと妹紅も気づいています


そしてあなたも


妹紅は私の家に住むはずです これからも妹紅と一緒に…


                                       上白沢 慧音"



「…………」



そうね、本当はとっくに気づいていたのにね














△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△













「妹紅せんせー、この問題はどうやってとくのー?」

「せんせー、この字はなんてよむのー?」

「はいはい、ちょっと待ってなここは――」



慧音の、いや今は妹紅の家兼寺小屋


そこへ向かう一人の影―――



「じゃあ今度来るまでここまでが宿題だから忘れないように」

「「「はーーい」」」

「今日は終わり、皆気をつけて帰るんだぞ」

「せんせーまたねー」

「またねー」

「気をつけてなー、ふぅ、やっと慣れてきたかな慧音はこれを良くやってたもんだ」



「っと、ここで会うのは初めてか」

「そうね」

「まぁお茶でも入れてくるから少し待ってな」

「妹紅」

「ん?」

「これからもよろしく」

「…あぁ、こちらこそよろしく、輝夜」







――――――――――――――――――――――――


"いつからだろうこの嬉しさは

いつからだろう明日が楽しみになったのは"


――――――――――――――――――――――――







END


初めまして、初投稿、初SSです

この作の年代設定は現シリーズからX00年後…?にしているつもりです

話がグダグダな予感がひしひしとしますが取り合えず書き上げたのでどうぞ!





まさか、とは思いますが内容が被ってない事を祈ります

風冥
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コメント



0.580簡易評価
1.50名前が無い程度の能力削除
切ないのお
4.60名前が無い程度の能力削除
あっさりしすぎという感もありますが、良いお話でした。

ただラストに少しでも、今後輝夜が妹紅と一緒にどういう生活を送っていくのか? という点に

触れてほしかったです。
6.70煉獄削除
良いお話でした。

妹紅は慧音のやっていたことを継いだことで何かが変わったんでしょうか・・・。

そうだと良いなぁ。

輝夜もまた新しく一歩を進みだせると良いなと思います。

それをふまえて、少し後日談があればと思ってたり。(苦笑)
7.60名前が無い程度の能力削除
ちょいとモコのセリフが説明臭いですね。

かれこれ億単位で生きてる蓬莱人が改めて生き疲れることがあるのかわかりませんが、話の設定は面白いと思います。

ほかの幻想郷がどうなってるかも気になりました。
10.70500削除
こういう幻想郷の未来を書いた作品の場合

いろいろなキャラがよく登場しますが

あえて輝夜と妹紅の関係のみにスポットをあてて簡潔に終わらせているのが

個人的に好きです。

情景描写がもっとあるとより雰囲気が出るのではと思います。
14.70名前が無い程度の能力削除
で、怪鳥と化猫が探検に来たりするかもね