「うぉぉおらぁぁぁ!」
あたりに炎を撒き散らす。
迫ってくる兎を追い払い奥へ進んでいく。
まわりは火の海、私は無傷に近かった。
「でぇぇぇぇぇぇい!!」
もう一回炎を撒き散らす。
「まちなさーーーーーい!」
向こうから一匹の兎がまた来る。
奴は鈴仙だ。
「おらぁ!」
炎を放つ。
それを余裕を持って鈴仙はかわす。
「ふん、少しは楽しめそうだな」
にやりと笑う。
「バトルといこうじゃないか、鈴仙」
「ここは通しませんよ、藤原妹紅!」
互いに身構え、スペルカードを取り出す。
「正直者の死!」
「月兎遠隔催眠術!」
・
・
・
・
・
少女対戦中…
・
・
・
・
・
「いった~、一回もろにくらったからなぁ~」
私は自分の右腕を見る。
血まみれだ。折れているかもしれない。
ここに奴の弾丸をもろにくらった。
「じゃあ、先に進ませてもらうよ」
鈴仙との戦いはしばらく続いたが、今やっと倒してやった。しぶとかったなぁ~。
床でのびている鈴仙を見る。可哀想に。永琳の実験台になるな。
そう思いながら奥へ進む。
言わなくても分かっているだろうが、今永遠亭を攻撃している。
理由はただ輝夜が喧嘩しにこないからだ。
一週間程度の間隔で来ていた輝夜がもう一ヶ月あまりもこないから久しぶりにこっちから攻めてやっている。
永琳は里に下りて薬を配りに行った。
これはチャンスだ。邪魔者がいない。
ふと上を見上げると壊した天井のすきまから大きな月が見えていた。
まだ満月になりきっていない一歩手前の状態で歪だが、これでもかなり綺麗だ。
そのまま上を見ながら歩いていると前から新しい兎の群れがやって来た。
さて、急がないと永琳が帰ってきてしまう。
それに久しぶりの再開、もとい殺し合いだ。体を動かすのは楽しい。
「さぁ、どこに隠れている!蓬莱山輝夜!」
そういい、前の兎の群れへ走り出す。
…おかしい。
どこにもいないではないか。
私の輝夜レーダー、もとい全自動輝夜探知機能(90%が憎しみ)が永遠亭をさしているのに、自室にいない。
食堂にもいない、居間にもいない。
…くそっ腹立たしい…、簡単に見つかると思っていたのに!久しぶりに喧嘩にきたのに!なんだこのありさまは!!
「くそぅ!!」
やけくそになってあたりを壊しまくる。
理不尽だ、いつもアイツは簡単に私に会いに来るのに、どうしてこっちからいくとみつからないんだ!
と思いながら早足で歩き回る。
私は気が短いんだ。ストレスがたまる。
しかし私も伊達に長年生きてはいない。こういうときはまず深呼吸。
スーハー、スーハー。
そして少しでも物音がしたら気づくんだ。そうすれば簡単に見つかるだろう。兎だったら脅せばいい。
・
・
・
・
・
ガラッ
「そこか!」
一つの部屋から聞こえる。
戸にさえぎられているが、その音は確かに聞こえた。
いままでのもやもやを吐き出すように、その戸のもとへ走り出す。
ダダダダダッ
思いっきり戸を足で蹴る。簡単に外れた。
ドンッ
そこにあったのは確かに輝夜の姿だ。
「見つけたぞ!勝負だ!わがライバル蓬莱ざ…」
・・・・・あれ?
そこにいるのは間違いなく輝夜だった。
…でも何故全裸なんだ?
タオルにすら包まれていない輝夜は驚いた表情でこちらを向いている。
「…もこう?何でここに・・・?」
??何故輝夜は服を着ていないんだ?
辺りを見回すと、そこが脱衣所で、輝夜はいま風呂から上がったばかりだと分かる。
…そうすると、何だ?私、ただの変態ではないか…。
視線を再び輝夜に戻す。
白い肌は輝きを持っているかのように見えた。
その瞬間頭から血が失せていき、私はその場に倒れた。
ドピューという音とともに赤い液体が鼻から勢いよく出て行くのが分かった。
「ちょ!妹紅!大丈夫!?」
輝夜が駆け寄ってくる。
…だってそんなもん見せられたら誰だって倒れるわ…。
薄れ行く視界の中に輝夜の顔を見た・・・。
一ヶ月ぶりの再開がこれだなんて・・・
「無念・・・・・」
私の意識はそこで途絶えた。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
「…ぅ、あ」
目を覚ます。
自分は布団に横になっている。
回りには鈴仙、永琳、輝夜がいた。
…そうだ、私は倒れて…
「あら、やっと目が覚めた?」
永琳が言う。私が寝ている間に帰ってきたのだろう。
「別に体に異常は無いけど、もう少しゆっくりしていった方がいいわね」
その後一息ついてから
「しかし駄目じゃない、うどんげ、真っ先に姫に知らせなきゃ」
「ぅぅ…すみません…姫の入浴を邪魔してはいけないかと…」
「まったく、もし姫に何かあったらどうするの?」
永琳はお怒りの様子だった。
「まぁそこらへんにして上げて、永琳、鈴仙の心遣いはうれしい物だし、おかげでこうやって妹紅と熱い夜を過ごせるじゃない」
こいつ、後半にとんでもない事いいやがった。
「そんなわけ無いだろう、私は今から帰らせてもらう」
と言い立とうとするが、
「あら、家を壊されて、そうやすやすと帰すと思うのかしら?」
と永琳。
「このあたり全てに朝まで結界を張っているわ、中からは出られない」
「何故!?」
「姫の命令だもの」
綺麗な笑顔で言ってくる。
「さすが永琳!天才ね!」
と言う輝夜を睨みつけて
「出せ」
と言う。
「いや」
「だせ」
「いや」
「出してください」
「いや」
「何故?」
「だから、熱い夜を過ごすからよ」
と可愛らしく微笑んで言う。
「…バ輝夜」
「あら、そんなこと言っていいのかしら?永琳、媚薬の準備は?」
「万事OKですよ」
そんなこと言われたので仕方なく土下座した、三人の前で、羞恥プレイだ…
「では姫、私とうどんげはここの修理を手伝うので、何かあったら腕を上げてえーりん、えーりん、とおよびください」
「分かったわ、ありがとうね、二人とも」
「それと妹紅、無理に出ようとして暴れたら実験台になってもらうからね」
そうして鈴仙と永琳は部屋を出て行った。
やばいぞ…この状況はやばい…
「ねぇ」
ビクッ
「なっ、何だ?」
「…むぅ、そんなに身構えなくても、さっきの会話は冗談よ」
そして私の寝ている布団にもぐりこむ。
「何故入る?」
「いいじゃない、この部屋には私の命令で布団が一つしかないんだし」
「…じゃあ私は畳の上で寝るよ」
そういって布団から出ようとすると
「…人の裸を見ておいて…」
「……くそっ!ここで寝ればいいんだろ!」
ヤケクソだ。
「それでいいのよ、私は右側に寝るから妹紅は左側ね」
というと、私に背中を向けて寝る。
…そっちは左側だ、バカ。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
「・・・・・・んぁ」
目が覚める。
もうすっかり暗くなっている。
物音が聞こえない限りウサギ達も眠りについているのだろう。
輝夜と私はお互い背中を向けて寝ていた。
「ぁー…」
同じ布団に輝夜が寝ていると思うと変な気持ちになる。
こういう時に早く眠りたいものだがなかなか落ち着けない…
この調子だとまだ眠ることはできないな。
かといって起きたまま同じ布団に入っているのも恥ずかしい。
そう思い私は布団を出て縁側にいった。座ってゆっくりしていこう。
月は雲に隠れることなく輝いていた。
「あら、どうしたの?」
横から声のする。
永琳だ。
「別に…単に眠れないから…」
と答えるとそう、と言い私の横に座る。
「綺麗な満月ね」
「えっ?満月は明日だろ?」
「何を言っているの、見てみなさい」
月を見上げる。
…ホントだ、完璧な満月だ。こんなに長く生きていればこんなの一発で分かるのだけれど…
じゃあ何故ここに来たとき見た月は欠けて見えたのだろう…
「あなたは気持ちに左右されやすいのね」
「?」
「この前にも月を見て、欠けてるな、っと思ったのでしょう?」
何故知っているのだろう?侮れない。
「心が欠けていればそう見える、人間にはよくあることね」
そうなのだろうか。
私は欠けていた?何故?
普通に生きていたつもりだ。何も変わったことなんて無いと思うけれど・・・
「前見たときと今、何か違いは?」
…物凄く認めたくないようなことのような気がする。
「まぁ考えてみることね、今日はもう遅いわ、寝ないと明日起きれないわよ?」
といい微笑むと暗闇の中へ去っていった。
…風が吹く
寒い、変なことを聞いた。
部屋に戻り私は輝夜と距離を置いて布団に横になる。
なんなのだろう。今のこの気持ちは。
欠けていた心が満ちた、なんて永琳は言っていた。
…それじゃあまるで私が輝夜のことを…
好いているみたいではないか。
「あほらしっ」
自分で自分を罵倒する。
こうしないとまわりの静けさが気になるから。
…しかし何も考えない、と思うほどいろいろと頭に浮かんできてしまう。
私は何のためにここに来た?
輝夜と喧嘩をするためだろう。
しかし私は今日一度も輝夜と戦っていない。
なのにもやもやとした気持ちは何時の間にか取れて普通に寝ようとしている。
…欠けた心が満ちた。
私が輝夜と会うだけで?
もう憎しみなんて忘れてしまっているのだろうか?
私は寂しかったのだろうか?
・
・
・
しばらく自分の中に沈黙が訪れる。
だってそれ以外考えられない。認めたくないが…
体を反対に向ける。
そこには輝夜の小さい背中があった。
認めなくちゃいけないんだろうなぁ。
……今だけならいいよね。
そう思い輝夜に後ろから抱きつくように腕をまわす。
とても温かかった。
今ぐらい素直になろう。
ちょっとの間だけでいいからこうして………
「お前が悪いんだぞ、輝夜…」
輝夜の体は小柄でいい匂いがした。
「寂しかったんだからな…」
そう、寂しかったのだ。
明日からは認めることのないであろう思いを口にする。
明日からまた少しの憎しみを持って接するだろう。
これじゃあ輝夜レーダーが使えないかもしれないが。
今度からは自分からも会いに行こうと思う。
もうこんなこと、思わないように。
私がこいつを許す日が来ることは無いだろう。
だから、今だけ…
「…大好きだ、輝夜…」
そういうと私の意識は遠のいていった…
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
「・・・ぅ~ん・・・」
(永琳早く!シャッターチャンスよ!)
(分かってますよ姫、はい、撮りますよ~)
「・・・・・ぅあ?」
目を覚ます。
と同じにパシャッという音が聞こえる。
「やったわ!永琳!まさか私に抱きついている妹紅が撮れるなんて!!」
グッと親指を立てあう二人。
……やっと理解できた。もっと早く起きるべきだった。
「輝夜ぁぁぁ~!!お前~~~!!」
「そんな積極的だとは思わなかったわ!」
といいイヤンと腰をくねらせ顔を赤く染める輝夜。
「はいはい、そこまでですよ~」
と鈴仙が出てくる。
「朝ごはんが出来ましたので妹紅さんも食べていってください」
あぁ、というと輝夜を睨みつける。
私はあまり素直ではないけれど。
そこも私らしいところだと思う。
こんな目覚め方もたまにはいいと思う。
「ほらっ!いくわよ!妹紅!!」
という輝夜といっしょに歩き出す。
とりあえず
週一のペースで会いに行くことにしてみようかな。
あたりに炎を撒き散らす。
迫ってくる兎を追い払い奥へ進んでいく。
まわりは火の海、私は無傷に近かった。
「でぇぇぇぇぇぇい!!」
もう一回炎を撒き散らす。
「まちなさーーーーーい!」
向こうから一匹の兎がまた来る。
奴は鈴仙だ。
「おらぁ!」
炎を放つ。
それを余裕を持って鈴仙はかわす。
「ふん、少しは楽しめそうだな」
にやりと笑う。
「バトルといこうじゃないか、鈴仙」
「ここは通しませんよ、藤原妹紅!」
互いに身構え、スペルカードを取り出す。
「正直者の死!」
「月兎遠隔催眠術!」
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少女対戦中…
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「いった~、一回もろにくらったからなぁ~」
私は自分の右腕を見る。
血まみれだ。折れているかもしれない。
ここに奴の弾丸をもろにくらった。
「じゃあ、先に進ませてもらうよ」
鈴仙との戦いはしばらく続いたが、今やっと倒してやった。しぶとかったなぁ~。
床でのびている鈴仙を見る。可哀想に。永琳の実験台になるな。
そう思いながら奥へ進む。
言わなくても分かっているだろうが、今永遠亭を攻撃している。
理由はただ輝夜が喧嘩しにこないからだ。
一週間程度の間隔で来ていた輝夜がもう一ヶ月あまりもこないから久しぶりにこっちから攻めてやっている。
永琳は里に下りて薬を配りに行った。
これはチャンスだ。邪魔者がいない。
ふと上を見上げると壊した天井のすきまから大きな月が見えていた。
まだ満月になりきっていない一歩手前の状態で歪だが、これでもかなり綺麗だ。
そのまま上を見ながら歩いていると前から新しい兎の群れがやって来た。
さて、急がないと永琳が帰ってきてしまう。
それに久しぶりの再開、もとい殺し合いだ。体を動かすのは楽しい。
「さぁ、どこに隠れている!蓬莱山輝夜!」
そういい、前の兎の群れへ走り出す。
…おかしい。
どこにもいないではないか。
私の輝夜レーダー、もとい全自動輝夜探知機能(90%が憎しみ)が永遠亭をさしているのに、自室にいない。
食堂にもいない、居間にもいない。
…くそっ腹立たしい…、簡単に見つかると思っていたのに!久しぶりに喧嘩にきたのに!なんだこのありさまは!!
「くそぅ!!」
やけくそになってあたりを壊しまくる。
理不尽だ、いつもアイツは簡単に私に会いに来るのに、どうしてこっちからいくとみつからないんだ!
と思いながら早足で歩き回る。
私は気が短いんだ。ストレスがたまる。
しかし私も伊達に長年生きてはいない。こういうときはまず深呼吸。
スーハー、スーハー。
そして少しでも物音がしたら気づくんだ。そうすれば簡単に見つかるだろう。兎だったら脅せばいい。
・
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ガラッ
「そこか!」
一つの部屋から聞こえる。
戸にさえぎられているが、その音は確かに聞こえた。
いままでのもやもやを吐き出すように、その戸のもとへ走り出す。
ダダダダダッ
思いっきり戸を足で蹴る。簡単に外れた。
ドンッ
そこにあったのは確かに輝夜の姿だ。
「見つけたぞ!勝負だ!わがライバル蓬莱ざ…」
・・・・・あれ?
そこにいるのは間違いなく輝夜だった。
…でも何故全裸なんだ?
タオルにすら包まれていない輝夜は驚いた表情でこちらを向いている。
「…もこう?何でここに・・・?」
??何故輝夜は服を着ていないんだ?
辺りを見回すと、そこが脱衣所で、輝夜はいま風呂から上がったばかりだと分かる。
…そうすると、何だ?私、ただの変態ではないか…。
視線を再び輝夜に戻す。
白い肌は輝きを持っているかのように見えた。
その瞬間頭から血が失せていき、私はその場に倒れた。
ドピューという音とともに赤い液体が鼻から勢いよく出て行くのが分かった。
「ちょ!妹紅!大丈夫!?」
輝夜が駆け寄ってくる。
…だってそんなもん見せられたら誰だって倒れるわ…。
薄れ行く視界の中に輝夜の顔を見た・・・。
一ヶ月ぶりの再開がこれだなんて・・・
「無念・・・・・」
私の意識はそこで途絶えた。
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「…ぅ、あ」
目を覚ます。
自分は布団に横になっている。
回りには鈴仙、永琳、輝夜がいた。
…そうだ、私は倒れて…
「あら、やっと目が覚めた?」
永琳が言う。私が寝ている間に帰ってきたのだろう。
「別に体に異常は無いけど、もう少しゆっくりしていった方がいいわね」
その後一息ついてから
「しかし駄目じゃない、うどんげ、真っ先に姫に知らせなきゃ」
「ぅぅ…すみません…姫の入浴を邪魔してはいけないかと…」
「まったく、もし姫に何かあったらどうするの?」
永琳はお怒りの様子だった。
「まぁそこらへんにして上げて、永琳、鈴仙の心遣いはうれしい物だし、おかげでこうやって妹紅と熱い夜を過ごせるじゃない」
こいつ、後半にとんでもない事いいやがった。
「そんなわけ無いだろう、私は今から帰らせてもらう」
と言い立とうとするが、
「あら、家を壊されて、そうやすやすと帰すと思うのかしら?」
と永琳。
「このあたり全てに朝まで結界を張っているわ、中からは出られない」
「何故!?」
「姫の命令だもの」
綺麗な笑顔で言ってくる。
「さすが永琳!天才ね!」
と言う輝夜を睨みつけて
「出せ」
と言う。
「いや」
「だせ」
「いや」
「出してください」
「いや」
「何故?」
「だから、熱い夜を過ごすからよ」
と可愛らしく微笑んで言う。
「…バ輝夜」
「あら、そんなこと言っていいのかしら?永琳、媚薬の準備は?」
「万事OKですよ」
そんなこと言われたので仕方なく土下座した、三人の前で、羞恥プレイだ…
「では姫、私とうどんげはここの修理を手伝うので、何かあったら腕を上げてえーりん、えーりん、とおよびください」
「分かったわ、ありがとうね、二人とも」
「それと妹紅、無理に出ようとして暴れたら実験台になってもらうからね」
そうして鈴仙と永琳は部屋を出て行った。
やばいぞ…この状況はやばい…
「ねぇ」
ビクッ
「なっ、何だ?」
「…むぅ、そんなに身構えなくても、さっきの会話は冗談よ」
そして私の寝ている布団にもぐりこむ。
「何故入る?」
「いいじゃない、この部屋には私の命令で布団が一つしかないんだし」
「…じゃあ私は畳の上で寝るよ」
そういって布団から出ようとすると
「…人の裸を見ておいて…」
「……くそっ!ここで寝ればいいんだろ!」
ヤケクソだ。
「それでいいのよ、私は右側に寝るから妹紅は左側ね」
というと、私に背中を向けて寝る。
…そっちは左側だ、バカ。
・
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「・・・・・・んぁ」
目が覚める。
もうすっかり暗くなっている。
物音が聞こえない限りウサギ達も眠りについているのだろう。
輝夜と私はお互い背中を向けて寝ていた。
「ぁー…」
同じ布団に輝夜が寝ていると思うと変な気持ちになる。
こういう時に早く眠りたいものだがなかなか落ち着けない…
この調子だとまだ眠ることはできないな。
かといって起きたまま同じ布団に入っているのも恥ずかしい。
そう思い私は布団を出て縁側にいった。座ってゆっくりしていこう。
月は雲に隠れることなく輝いていた。
「あら、どうしたの?」
横から声のする。
永琳だ。
「別に…単に眠れないから…」
と答えるとそう、と言い私の横に座る。
「綺麗な満月ね」
「えっ?満月は明日だろ?」
「何を言っているの、見てみなさい」
月を見上げる。
…ホントだ、完璧な満月だ。こんなに長く生きていればこんなの一発で分かるのだけれど…
じゃあ何故ここに来たとき見た月は欠けて見えたのだろう…
「あなたは気持ちに左右されやすいのね」
「?」
「この前にも月を見て、欠けてるな、っと思ったのでしょう?」
何故知っているのだろう?侮れない。
「心が欠けていればそう見える、人間にはよくあることね」
そうなのだろうか。
私は欠けていた?何故?
普通に生きていたつもりだ。何も変わったことなんて無いと思うけれど・・・
「前見たときと今、何か違いは?」
…物凄く認めたくないようなことのような気がする。
「まぁ考えてみることね、今日はもう遅いわ、寝ないと明日起きれないわよ?」
といい微笑むと暗闇の中へ去っていった。
…風が吹く
寒い、変なことを聞いた。
部屋に戻り私は輝夜と距離を置いて布団に横になる。
なんなのだろう。今のこの気持ちは。
欠けていた心が満ちた、なんて永琳は言っていた。
…それじゃあまるで私が輝夜のことを…
好いているみたいではないか。
「あほらしっ」
自分で自分を罵倒する。
こうしないとまわりの静けさが気になるから。
…しかし何も考えない、と思うほどいろいろと頭に浮かんできてしまう。
私は何のためにここに来た?
輝夜と喧嘩をするためだろう。
しかし私は今日一度も輝夜と戦っていない。
なのにもやもやとした気持ちは何時の間にか取れて普通に寝ようとしている。
…欠けた心が満ちた。
私が輝夜と会うだけで?
もう憎しみなんて忘れてしまっているのだろうか?
私は寂しかったのだろうか?
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しばらく自分の中に沈黙が訪れる。
だってそれ以外考えられない。認めたくないが…
体を反対に向ける。
そこには輝夜の小さい背中があった。
認めなくちゃいけないんだろうなぁ。
……今だけならいいよね。
そう思い輝夜に後ろから抱きつくように腕をまわす。
とても温かかった。
今ぐらい素直になろう。
ちょっとの間だけでいいからこうして………
「お前が悪いんだぞ、輝夜…」
輝夜の体は小柄でいい匂いがした。
「寂しかったんだからな…」
そう、寂しかったのだ。
明日からは認めることのないであろう思いを口にする。
明日からまた少しの憎しみを持って接するだろう。
これじゃあ輝夜レーダーが使えないかもしれないが。
今度からは自分からも会いに行こうと思う。
もうこんなこと、思わないように。
私がこいつを許す日が来ることは無いだろう。
だから、今だけ…
「…大好きだ、輝夜…」
そういうと私の意識は遠のいていった…
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「・・・ぅ~ん・・・」
(永琳早く!シャッターチャンスよ!)
(分かってますよ姫、はい、撮りますよ~)
「・・・・・ぅあ?」
目を覚ます。
と同じにパシャッという音が聞こえる。
「やったわ!永琳!まさか私に抱きついている妹紅が撮れるなんて!!」
グッと親指を立てあう二人。
……やっと理解できた。もっと早く起きるべきだった。
「輝夜ぁぁぁ~!!お前~~~!!」
「そんな積極的だとは思わなかったわ!」
といいイヤンと腰をくねらせ顔を赤く染める輝夜。
「はいはい、そこまでですよ~」
と鈴仙が出てくる。
「朝ごはんが出来ましたので妹紅さんも食べていってください」
あぁ、というと輝夜を睨みつける。
私はあまり素直ではないけれど。
そこも私らしいところだと思う。
こんな目覚め方もたまにはいいと思う。
「ほらっ!いくわよ!妹紅!!」
という輝夜といっしょに歩き出す。
とりあえず
週一のペースで会いに行くことにしてみようかな。
なんか学園ものの幼馴染臭を感じました!