Coolier - 新生・東方創想話

紅に染まりゆく白

2008/05/07 22:58:14
最終更新
サイズ
7.6KB
ページ数
1
閲覧数
1045
評価数
3/17
POINT
770
Rate
8.83
今回話が暗い+オリ設定です

ご注意を














見渡す限り何もない暗い場所


空は夕暮れの赤を通り越した紅が広がり


足元にも空と同じ色の水溜りが存在していた


生命の息吹が感じられない呪われたような世界


私はそこに立っていた


私はその世界を何の感慨もなく見ていた


風も音もなく自分以外何もない


そんな中で私は血の色に近く染まった空を見ながらすごした


――グチャリ


何秒か、何分か、あるいは何時間か


何も起こらず、何も変わらないと思われた世界に変化が訪れる


―ビチャ、ボトトグチャ


私が音のほうに目をやるとそこには手が生えていた


血に濡れ私のほうに自身を伸ばしてくる手


普通なら恐怖に駆られ自分を見失うような状況


それでも私はそれに何も感じられなかった


その間にも手は増え続けた


―ビチャチャビチャ、ボタッ


周りから手が生え、血が落ちる音がする


気がつけばあたり一面は手で埋め尽くされていた


異形の手、腐っている手、部位が欠けている手、手、手、手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手


手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手


手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手


手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手


手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手


手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手


手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手


手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手


手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手


手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手手



それらは形は様々だったがどれも自分に向けられていた


呪い、蠢き、追い詰め、迫ってくる


ひとつが私の足を掴む


続いて手を掴まれる


体が幾多の手によって捕らえられ動けなくなる


ズブリと血の中に引き摺り込まれる


ゆっくりと視界が下がる


唯一動く頭を上げ空を見る


空がどろりと溶け始めていた


世界が終わる


完全に血の中に引き摺り込まれる


私はゆっくりと目を閉じ







――――その夢を終わらせた――――




意識が覚醒する


目を開けて周りを見る


そこは紅い世界ではなくいつもの自分の寝床だった


(――また「あの」夢か)


私はふぅ、と溜息をついた


服を見ると寝汗が酷い


夢で見ていた以上にうなされてたらしい


私は風邪を引かないようにと朝風呂にはいることにした





温かい湯の中で先ほどの夢を思い返す


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


あの夢を見始めたのはいつごろだっただろうか


もう思い出せないくらい前な気がするし最近な気もする


最初は単なる悪夢だと思っていた


疲れているせいなのだろうと、休めば問題ないだろうと


それでもあの夢はなくなることなく何回も出てきた


手も回を重ねるごとに増えていった


そしてある日、気づいた、気づいてしまった


その日私は巫女としての仕事をした


いつもの神社の掃除などではなく博麗の巫女としての仕事


人間の子を殺したのだ


厳密に言えば見殺しにした、だが


私は子供が妖怪に襲われていることに気づきながら無視した


結果子供は妖怪の食料となり無残な姿になった


博麗は幻想郷を管理する一族だ


自らが規律となり世界のバランスを保つ


むやみやたらと暴れる妖怪が現れるようなら現場に行き退治する


妖怪側に天秤が傾くのを防ぐためだ


しかし逆もまたありうる


人間側に天秤が傾くようなら博麗は人間の数を調節する


世界のために同じ人間をも殺す


何からも中立である博麗としての役割だ


この時もそうだった


その夜私は手の悪夢を見た


私はいやな仕事をしたせいだと踏んであきらめていた


何の気なしに周りを見渡していると


「え?」


何かが引っかかった


気になった方向を見るとそこには手があった


手ならほかにもいくらでもあった


だがその手には見覚えがあった


それは子供の手だった


所々食いちぎられ欠けている子供の手


間違いなかった


「あ、……。」


間違うはずがない


「い、いい…。」


それは紛れもなく


「イやァァァァァァァァァァァァぁァァ!!!」


自分が見殺しにしたものだったのだから




夢から覚めた後私は吐いた


胃液が出るほどはき、苦しんだ挙句倒れこんで気絶した


朝になって気がついた後も食事はのどを通らなかった


歯の根が合わずガチガチ音を立てながら部屋の隅でがたがたと震えていた


怖かった


恐ろしかった


知ってしまったのだ


単なる役割だと思っていた自分の行いがどれほど酷く重たいものだったか


自分が殺したものが自分をどれほど憎んだか


そしてあの夢はそれらが見せているものなのだと


それからも夢の中の手は増え続けた


当たり前だ


たとえ私、霊夢の体調がよくなくても博麗の巫女の役割はやらなければならない


妖怪や人間を殺せば手も増える


私はそのことに怯えながらも解決策を探した


博麗にある書物、先代の手記


普段見もしないものを片っ端から調べていった


しかし結果は私を絶望させるものだけだった


手がかりになるものはまったく見つからなかった


私は自暴自棄になり、ものに当り散らした


まるで子供が駄々をこねるように


後には純然たる1つの事実しか残されなかった


―――あの夢から逃れることはできない


それだけだった




夜眠ることができなくなった


眠ってしまうとまたあの夢を見てしまうから


しかし心が嫌がっても体は眠ることを欲していた


そしていつの間にか寝てしまい夢を見、叫びながら目を覚ます


最悪の悪循環だった


でも、それでも人間というものはそれに対処してしまう


惨状はいつしか状況に変わり


非日常は日常へと変化する


私は夢に現れる手に慣れてしまった


いや、慣れたのではなく何も感じなくなってしまったのだろう


悪夢を見ることは私の日常となった


夢の中の手はもう数えることができないほどの量になっていた


今でも何故夢のことについて何も見つからないのか理由はわからない


もしかするとこうなったのは私だけなのかもしれない


あるいは書くことすらはばかられる博麗の秘密なのかもしれない


ならばk「ハックシュ!」



自分のくしゃみでハッとする


長く入りすぎたのだろう


入っていたお湯はすでにぬるくなっていた


私は思考を止めて風呂から出た







その後朝食を済ませいつもどおりの日課、神社の掃除をしていた


しかしその最中



―ザッ――


突如視界にノイズが走る


私は眩暈と立ちくらみにあったときに見るような砂嵐に襲われた


―ザザザ――


(…また、か)


顔を顰め、私は断続的に襲ってくるそれを我慢した




―ザザ、ブツッ――


砂嵐は酷くなり、ある一瞬で形を変える





そこには――――


「くっ…!」


私は見てしまったものを目をつぶって頭に入らないように遮断した


それでもその一瞬で見てしまった光景はまぶたに焼き付いてしまっていた


頭を振って無理やり忘れようとする


「っはぁ、はぁ。」


少し震える足を持っていた箒で支え、荒かった呼吸を落ち着ける


息が整った後私は自嘲的に笑った


「まさか、こっちにまで溢れてくるとわね。」


先ほど見た光景


紅く染まった世界、そして見慣れてしまった数え切れないほどの手


一瞬だったがあれはまさしく


自分の夢の中の世界だった


「もう、あんまり持たないのかもしれないわね。」


遠くを見ながら呟いた


予感はしていた


あの夢が私を飲み込んだとき


私は終わるのだろうと


死ぬのか、または取り込まれて紅い世界を永遠にさまようのかもしれない


なんにせよこの場所から自分は消える


そう感じた


夢が殺してきたものの呪いでできているかどうかはわからない


単に私が持つ罪悪感が肥大しただけという可能性もある


いつか夢は私を紅い世界に飲み込むだろう


それは明日かもしれないし何年も後かもしれない






―――でも、ただもう少しだけ、この極彩色の世界を見ていたい―――




そう思った




そして私は神社から見える風景を太陽が傾くまで眺めていた












体を「なにか」に捕まれているのを感じながら
こんばんわ犬です

前回危険なものを書いたので今回は方向転換

霊夢でダーク+一人称視点

初挑戦なのですがどうだったでしょうか

ともに初なのであまりうまくいかなかったやも知れません

そこまで鬱な感じは出なかったかも

一応続かせます

作者が救われるエンドじゃないといやなへたれだからです

読みにくかったり変な所があったら教えていただけると幸いです

前回かなりポカしましたので

では~
犬にほえられる程度の能力
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.590簡易評価
1.70煉獄削除
うむぅ・・・続きが気になるところですね。

私としては面白いです。

別に読みづらい場所はなく、逆に読みやすかったと思います。

続きがあるんですね。楽しみにしてますよ。
3.60名前が無い程度の能力削除
考えてみれば人が増えすぎる事も考えなければいけないのですよね

見殺しにする、中立で有りながらそれを許せない霊夢

そりゃ苦しむよなー
5.50名前が無い程度の能力削除
……パンプキンシザーズ(ボソッ)
7.無評価犬にほえられる程度の能力削除
■2008/05/07 23:32:29

喜んでいただけたのはうれしいです

ですが過度の期待はしないよう願いますwwはいww

■2008/05/08 01:36:27

今回次につなげるためにあえて「見殺し」にしてたりします

文才そこまでないくせに伏線ですw

■2008/05/08 10:54:43

ナ、ナンノコトヤラサッパリ(読んでる人いたーーー(゚∀゚)ーー