退屈というのは、毒にも薬にもなる。退屈な時間が新しい発想を生み出し、退屈な時間が精神を病ませる。
八雲紫にとって退屈とは主に後者に当たるのだが、それを紛らせてくれる事は滅多に起きない。だから、自分で起こすのだ。もっとも、大抵は夢の中にいるので退屈を感じることすら無いわけだが。
気まぐれに起きて、屋敷の中をうろつく。いつのまにか庭の桜は散り始めていた。どうやら春は終わり、夏が到来しようとしているらしい。心なしか、頬を撫でる風も生暖かい。
「幽々子の所にでも行ってみようかしら?」
紫と違って、幽々子にとって退屈とは薬である。彼女はどうやら、暇な時間を楽しむ才能を持っているらしい。紫には無い才能だが、近くにいるだけで恩恵を受けられる。だからよく遊びに行くのだが、白玉楼まで行って様子を窺ってみたら、どうにも忙しいそうだった。
さて、いよいよ何をしたものか。考えながら居間に入ると、式神の藍とその式神の橙が仲良く本を読んでいた。
橙の住処は妖怪の山にあるが、希にこうしてマヨイガまで遊びにくる。藍はもっと自立してくれないと困るなどと言っていたが、紫にはそれが嘘だと分かっていた。それもそのはず。九本の尻尾が嬉しそうに揺れていれば、誰にだって感情が分かる。
素直じゃない式神だと思う。さすがは自分の式神、といったところか。
「あっ、紫様」
襖の開いた音で気付いたのか、藍が本から顔を上げた。
「私のことは気にしなくていいわ。それより、続きを読んであげたら」
「わかりました」
藍は再び朗読を続けようとするも、不満そうな橙の声がそれを遮る。
「えー、でも藍様。私、この本はもう読み飽きました。もっと、違う本を読んで欲しいです」
覗き込むようにタイトルを見れば、桃太郎と書かれた旗を背負った男の子の姿が見える。幻想郷でも、これほどポピュラーな絵本は無い。なるほど、これでは橙が文句を言うのも頷ける。
「えっと、じゃあ何を読もうかな?」
膝の上に乗せていた橙を降ろし、本棚を物色する藍。
「そうだ! 紫様のお話が聞きたいです!」
キラキラと輝く瞳が、紫に向けられた。好奇心を持って見つめられるのはいいが、あまりにも純真な目で見られると困る。
確かに紫は長生きだし、話すとなればネタは尽きない。
だからといって、橙に読み聞かせられるような話など……
「ああ、それじゃあ一つだけお話してあげようかしら」
「わーい!」
子供のようにはしゃぐ橙。藍は取り出していた本を棚に戻し、お茶を入れてきますね、と言って台所へ向かった。
腰を下ろすと、膝の上に橙が頭を乗せてきた。足が痺れそうだが、どけるわけにもいかない。
溜息をつきながら、紫は口を開いた。
「それじゃあ、八雲紫に関するくだらない話を一つ」
ある日、雛がいつのものようにクルクルと回っていたら、大地を抉り、岩盤を打ち砕き、いつのまにか温泉を発掘していた。
嘘のような話だが、本当のことだ。雛の回転力を舐めていけない。一説によると、金剛石すら削ることができるのだとか。故に雛の元へは、宝石職人からの暑いラブコールが耐えなかったそうだ。
契約金に億の金を出すところもあったが、雛はきっぱりと断っている。
「私、神様ですから。お金儲けとか興味ないんです」
あれから十五年。沸きだした温泉を利用して、雛は新しい療養施設を作り出した。
その名は鍵山スパ。メインは各種取りそろえた温泉で、水着着用の混浴施設だ。ちなみに男性は五百円。女性は無料というから、女性客が絶えないのだと言う。そして、女性客目当ての男性客も。
一部からは無料で開放すべきでは、という意見もあったが一蹴された。
「私、神様ですから。お金が無いと生きていけないし」
十五年という歳月は、神様も色々と変えてしまうらしい。
ちなみに、鍵山スパの中で最も人気があるのは『厄の湯』である。一見するとただのコールタールにしか見えない。どす黒い湯の底からは、気泡がぷかぷかと浮かんでくる。
神様が掘り当てたせいか、鍵山スパには変わった湯が多いのだ。例えば病に効く湯とか、恋愛が成就する湯だとか。その中でも厄の湯は、ある意味では最も鍵山雛らしいお湯だと言えるだろう。
厄の湯の効果は、浸かった者に厄を与えるのだ。
五秒浸かれば家が壊れて、十秒浸かれば家族が逃げる。一分浸かった終いには、厄神様のできあがり。などと、専用の歌も作られる有様だ。
普通なら、こんな曰く付きの温泉に入りたがる者はいないのだが、そこは敏腕経営者。雛はこの湯の前に、ある立て札を作っておいた。
『厄の湯に一分間入っていた人に、百万円を進呈』
以来、この湯にチャレンジしては見事に砕け散る人が続出。かの紅魔館からも主自らが挑戦にやってきた。
「よし。まずは咲夜、あなたから紅魔館の強さを見せつけてあげなさい。私たちには、厄神如きの厄など通用しないということを」
「はい、お嬢様」
瀟洒な感じで湯に入った咲夜。五秒付近で顔を顰めるものの、何と十秒まで耐えきって見せた。
「咲夜、何を見せられたのかしら?」
「お嬢様と……出会う前の頃の事を……」
辛い過去を見せられて尚、彼女は賢明に耐え抜いたのだ。従者の強さにレミリアは胸を張り、湯に入ってから三十秒が経過した。
しかし、ここからが湯の真骨頂である。
「ほらほら、妖夢。メイドが厄の湯にチャレンジしているわよ」
「持ち帰って成分を研究したいわね。何かの薬に活用できないかしら?」
「頼むから、それでぽっくり逝ってあたいの仕事を増やさないでくれよ」
「咲夜さん、頑張って!」
熱いエールを送られるものの、咲夜の表情は冴えない。それどころか、逆に苦しそうでさえある。
やがて、耐えきれずに咲夜は湯から上がった。そして涙を流しながら、全速力でどこかへと走り去っていく。
「お腹の肉が、もう少し上の方にあれば!」
これにはレミリアも思わずもらい泣き。恐るべし、乳の厄。
「しかし、ここで引き下がれば紅魔館の名が廃る。悪いけど、私に同じ技は通用しないわ。むしろ、喜ぶ」
割と最悪の台詞を吐きながら、真っ黒の湯に入るレミリア。見た目とは裏腹に、感触は普通のお湯と大差ない。
なんだ、これなら一分ぐらい楽勝ね。
そう思った矢先、急に天候が変わった。今日は塾があるのでとばかりに雲が消え去り、元気な顔の太陽が姿が表す。加えて、雨も降り始めた。いわゆる、狐の嫁入りである。そして吸血鬼は雨を嫌がる。
「いやぁーっ! 日傘! 雨傘プリーズ!」
こうして、かの紅魔館も厄の湯の前に無惨な姿を晒したのだ。
雛が休憩所にやってきたとき、咲夜はワンサイズアップと鏡の中の自分に向かって繰り返しており、レミリアは荒い呼吸で床に倒れ伏していた。
「その様子だと、駄目だったみたいね」
熱いお茶をレミリアに手渡す。寝そべったまま、レミリアはそれを飲み干した。
「恐ろしい湯ね。正直、舐めていたとしか言いようがないわ」
「でも、どうせなら私に言ってくれないと。本当に一分間浸かったとしても、証明できなければ賞金は出ないわよ」
「金なんてどうでもいい。私が欲しかったのは、誰も達成できなかったことを達成したという事実。その栄誉が欲しかったのよ。まあ、達成できなかったわけだけど」
忌々しげに呟くレミリア。神様たる雛にはイマイチ理解できなかったが、吸血鬼が誇り高い種族だというのは分かった。
たかが温泉。されど温泉。
希に妖怪達もチャレンジしにくるのだが、彼女達もまたお金目当てというわけではなかった。だったら、どうして挑戦しているのか疑問だったのだが、レミリアの言葉で何となく察する。
「いつまでも落ち込んでないで。咲夜、戻って対策を練るわよ」
「……はい、お嬢様」
幽霊のような顔色のメイドを引き連れ、爪を噛み噛み、レミリアは館へと帰っていった。
数多の挑戦者を葬り去ってきた厄の湯。多くの者達の悲しみを背負い、その厄はより一層パワーアップしたともっぱらの評判だ。
おかげで挑戦者は増えたものの、リピーターは殆どいなくなった。
ただ、忘れがちだが、あくまで厄の湯は余興的な役割の湯である。いわば客寄せパンダ。あるいは超檄辛ラーメン。難攻不落であればあるほど、人々の興味を集めるのだ。
雛としては、できることなら入りきる者がいて欲しくはなかった。それだけに、リピーターがいないというのは有り難い。
しかし、何事にも例外は存在する。
ざわざわとざわつき始める客達。何事かと雛も現れる。
そして、モーゼの如く人の波が割れ、悠々と厄の湯に向かって歩く女が二人。
永遠に紅い幼き月、レミリア・スカーレット。
完全で瀟洒な従者、十六夜咲夜。
紅いツーピースが麗しい主と、白いワンピースが眩しい従者。もはや後光すら差しかねない二人の姿に、男性のみならず女性客も息を呑む。
「また来たわよ」
レミリアの不適な笑みに、言いようのない不安感を覚える。
「ひょっとして、また挑戦しに来たの?」
分かっていて、敢えて訊いた。これだけの風格で登場しながら、よもや健康の湯でお茶を濁すことがあるわけない。
雛の言葉を鼻で笑い、レミリアは当然と言い放つ。
「私は敗北を思い出に変えられるような器用な吸血鬼じゃないの。リベンジさせて貰うわよ。咲夜共々ね」
「勿論です」
かつての撤退っぷりが嘘のような力強い言葉だ。
「どうやら、何か秘策があるみたいね」
そうでなければ、この自信に説明がつかない。それに、いくら誇りを傷つけられたとはいえ、無策で挑み直すような真似はしないはずだ。
何か対策があるのだろう。
レミリアが咲夜に目配せをする。頷いた咲夜が指を一つ鳴らすと、いつのまにかその手に傘が握られていた。
「これが、私たちの最終兵器。アンブレラ・スカーレット!」
どれだけ勇ましく名前を叫んだところで、傘は傘である。
雛は拍子抜けした。どんな対策を練っているのかと思えば、単に傘を用意しただけとは。
それでは厄から逃げることはできない。思わず溜息をつく。
経営者としては失敗して欲しかったが、心のどこかでは少し成功を期待していた。
「ふふふ、残念ながら私たちの秘策はここからが本番よ!」
はっ、と顔をあげる。
「傘をさした私では意味がない。だから、互いに互いを助け合う。オールフォアワン、ホールインワンの精神こそが私たちの本当の秘策!」
言いにくいが、それはゴルフだ。
「いくわよ、咲夜!」
「わかりました、お嬢様!」
とうっ、とかけ声勇ましく、二人は厄の湯に飛び込んだ。
咲夜は空中で前転しながら傘を広げ、レミリアは両手を広げながら湯に着地する。
背伸びしながら広げた両手で咲夜の目を覆い隠し、レミリアを咲夜の傘が守る。
「私が咲夜を乳から守り、咲夜が私を空から守る」
「これぞ、紅魔館フォーメーション!」
「今の二人に!」
「厄など通用しない!」
湯に雷が落ちて、二人は感電した。
つまりね、と真っ黒焦げのレミリアは切り出した。
「どんな奇抜な対策をとろうと、あの湯はそれに合った対抗策を出してくる。いくら考えたところで、後手が有利なのだから私たちに勝ち目なんて無かったの」
事実上の敗北宣言に、同じく真っ黒焦げの咲夜が唇を噛みしめる。そして、鋭い目つきで厄の湯を睨みつけた。
湯から少し離れたところで作戦会議を開いたレミリア達。それはいいのだが、何故か雛もそこに加えられていた。とても焦げ臭い。
「ですが、お嬢様。このままでは紅魔館の名が廃ります」
「わかっているわよ。それに、私はまだ諦めたとは言ってないわ。単に対策を考えるのが無駄と言っただけよ」
雛に視線をよこし、レミリアは嫌らしい笑みを浮かべた。
「要するに、前提を何とかすればいいの。厄の湯を厄の湯で無くせばいい」
レミリアの視線の先を追って、咲夜も同じような笑みを浮かべる。二人から注目を浴びた雛。思わず一歩、後ずさる。
「あの湯から厄を持っていってくれってのは無理ですよ! あの湯は名物なんですから!」
先手を打つ。二人の考えそうな事といえば、それぐらいしかない。
厄の湯から厄を抜けば、それはただの湯。温泉の素を抜いた温泉みたいなものだ。不正を前提にした、その雛の考え方もどうかと思うが。
「勘違いしないで。そんな事を頼むつもりなんて無い。相手を無力化したところで、私たちの勝利にはならないもの」
なんだ、と胸を撫で下ろす。根本的な所は分かっているらしい。
さすがは誇り高き吸血鬼か。だが、それなら何を頼もうというのか?
チリチリになった髪の毛を撫でながら、焦げた唇を開くレミリア。
「つまり、私たちと一緒に湯へ入ってくれればいいの」
雛は一瞬だけ動きを止め、すぐに納得した。
厄の湯に入っても、影響を受けない人物というか神様が一人というか一柱だけいる。ここまで限定すれば分かりそうなものだが、勿論それは鍵山雛だ。毒蛇に毒が効かないように、厄神に厄は効かない。
だから彼女の近くにいれば、厄も効かないだろうと二人は思ったのだ。
しかし。
「残念ですけど……って!」
忠告しようとした頃には、既に手遅れだったようだ。雛は二人に手をとられ、有無を言わさず厄の湯へと連れていかれた。
「これなら、私たちにも厄は通用しない。いわば紅魔館フォーメーション・厄!」
「お嬢様、それだと少し不吉なんですけど……」
そう言いながら、咲夜も足を止める気配はない。
どうしたものか。雛が戸惑っている間に、とうとう厄の湯へと戻ってきてしまった。
「いくわよ、咲夜」
頷く咲夜。雛はやっぱり止めようと思ったのだが。
勢いよく前へと踏み込んだ二人の元へ、偶然二つの石けんが飛んできて、偶然二人の足下にジャストで落ちて、思い切り二人は転倒した。
湯に入ってもいないのに。
当然だ。厄神の側にいるのだから、それだけで不幸になる。
しっかりと握られた両手を見ながら、これからどうしたものか雛は頭を抱えた。
つまりね、と咲夜は切り出した。横に座るレミリアが興味深そうに咲夜の顔を覗き込んでいる。
「情報不足だったのが、今回の敗因よ。まったく、少し考えれば分かりそうなことなのに」
不満そうに唇を尖らせる咲夜。それをレミリアが、まあまあと大人びた仕草で慰める。
なんとも奇妙な光景だった。雛が眉根を寄せているのも、無理からんことだ。
「ですが、そのおかげで知らない事を知りえた。それだけでも、あの挑戦が無駄ではなかったという証になります。どうか気を落とさないでください、お嬢様」
と、咲夜は言った。レミリアの身体で。
なんでも、頭を打ち付けたショックで二人の精神が入れ替わったらしい。何ともベタな話だが、実際の出来事なのだからしょうがない。
ただ、何よりも雛が驚いたのは、二人がそれに動じていないことだった。紅魔館では日常茶飯事なのだろうか、こういった展開。
「そうね、いつまでも反省していては吸血鬼の名折れよ!」
「さすがです!」
力強く拳を握る咲夜の身体に、拍手を送るレミリアの身体。二人を知っている者が見れば、きっと雛以上に怪訝な顔をしただろう。
「それにね、咲夜。頭の打った衝撃で、とてもいいアイデアが浮かんできたの」
そう言って、レミリアは雛へ視線を向けた。合わせて、咲夜も視線を送ってくる。
デジャビュ。くしゃみのような単語が頭に浮かぶ。
「さっきは一緒に入ろうとしたから失敗したの。まずは彼女に入ってもらい、それから私たちも飛び込む。そうすれば、三人仲良く入ることができるわ」
「しかしながら、お嬢様。それでは湯の中で二倍の厄を浴びることになりますよ?」
雛も同じ事を考えていた。
ちっちっちっ、とレミリアは指を振る。
「単純な数学の問題よ。咲夜、マイナスかけるマイナスは?」
「田んぼの田です」
「その答えは使いどころが違うわよ。正解はプラス。厄に厄をぶつければ、きっと互いをうち消してくれるはず。そうすれば、厄の湯に一分浸かることだって夢じゃない!」
おお、と咲夜は目を輝かせる。
しかし、それは厄の湯を無効化するということであり、吸血鬼の誇りに傷がつくのではないか。そう思いはしたが、そろそろ閉店も間近なので敢えて黙っておいた。その作戦が有効かどうかはさておき、これ以上居座られても困る。
「思い立ったが吉日。行くわよ、咲夜、雛」
「はい!」
いつのまにか名前で呼ばれていたが、それを指摘しようと思った頃には既に湯の中へ放り込まれていた。乱暴なやり方だ。
どす黒い湯の中へ沈む雛。
湯から顔を上げると同時に、そういえばマイナスとマイナスって掛けるとプラスだけど、足せばマイナスだったよね、ということを思い出す。
レミリアと咲夜は大きく助走をつけ、そして勢いよく厄の湯へと飛び込んできた。
爆弾が落ちてきたような音と共に、大きな水柱があがる。多数の水滴が落ちてくるも、それらは咲夜の傘で全て防がれた。
二人は顔を見合わせ、雛の肩をがっしりと掴む。
「さぁ、こい!」
その日、鍵山スパには豆と巨乳が降ってきたらしい。
この珍事を取材しようと訪れた文に、経営者の雛は一言こう語ったという。
「やっぱり足したのね……」
「それからも、レミリアと咲夜は何度も厄の湯に挑戦し、鍵山雛との親交を深めたそうよ。めでたし、めでたし」
紫の背後で、クスリと笑う気配がした。おそらく藍だろう。彼女には、この物語の意味が分かったらしい。
膝の上の橙は、キョトンとした顔で紫を見上げている。残念ながら、こちらは理解できなかったようだ。恐る恐る、口を開く。
「あの、紫様。その話のどこがくだらないんですか?」
予想通りとはいえ、あまりにも純真な顔をするものだから思わず紫は笑ってしまった。橙は不服そうに頬を膨らます。それが一層、紫の笑いを強くするとも知らないで。
笑い続ける紫に代わり、二杯目のお茶を持ってきた藍が言った。
「それじゃあヒントをあげよう。まず一つは、厄神と吸血鬼が親交を深めたこと。そしてもう一つは、出会いには善悪が無いということ」
藍としては精一杯のヒントだったのだろうけど、橙には伝わらなかったようだ。ますます難しい顔をして、腕まで組み始めた。
見かねて、紫が笑いを堪えながら指摘する。
「駄目よ、藍。そんな言い方だと余計にわかりにくくなる。こういうヒントはシンプルで、尚かつ分かりやすくなければ駄目よ」
「しかし、紫様はいつもわかりにくく、回りくどい言い方をされています」
「相手と場合によるわ。こんなくだらない話を婉曲的に伝えるほど、私の精神はねじ曲がってないわよ」
最後の台詞に何か言いたげだったが、結局藍はそれ以上何も言わなかった。良くできた式神だと思うが、それを言えない所だけはつまらない。指摘されて心底怒る主でないことなど、とうに分かっているだろうに。
まあ、お仕置きはするのだが。
「橙、難しく考える必要はないわよ。考えるべきことは、一つだけ」
天井を指さしながら、すなわち、と紫は続ける。
「この物語を話したのは、誰かということ」
五秒。
十秒。
三十秒。
それだけ掛かって、橙はようやく両手を打った。
「ああ!」
キラキラと輝く瞳を紫に向けて、純真無垢なその顔で、橙はただ名前を呼んだ。
でも、それが答え。
話した紫自身も、くだらないことを話したと思う。
「厄も縁!」
入る気失せるw
ところでさなえさんをきらいになってからはいるとさなえさんがふってきますか?
早苗さんを嫌いになってはいれば早苗さんふってくるでしょーw
雛と厄の湯で混浴。厄い。孔明の罠かw
>豆と巨乳が降ってきた
ここらへんをもうちょっと詳しくお願いしますだw
オチもさることながら、そこまでの流れもとても楽しめました!ありがとう!
あ、なんか急に少女的なモノが嫌いになってきたな~
ミζ゚<俺も入るZE☆
._:._..:_._
>「頼むから、それでぽっくり逝ってあたいの仕事を増やさないでくれよ」
>何かの薬に活用できないかしら?」
水着のこまっちゃんやえーりんいたってことか!
しかしそのくだらない話を面白い話に昇華したのがすげぇ。
誰が上手い事w(ry
楽しかった、ありがとう
子供に聞かせる小話にもスパイスが効いてるぜ!!
そもそもこの一文で吹いたww
15年の間に何があった雛www
咲夜脳内の厄はこういう事ですか?
お嬢様と出会う前の事<<<<<越えられない壁<<<<<胸
八雲一家のほのぼのっぷりも素敵です(w
早苗さんを嫌いになんかなれねぇよクソッタレが……
まさか「やくもゆかり」がそういう意味だとは。
>豆と巨乳が降ってきたらしい。
豆持った美鈴が降ってきたんですね分かります。
サクッとテンポ良く読める楽しい作品でした
これはなかなかいいオチw
テンポが良くて読みやすかったです
全く気がつかなかったのは俺だけじゃ・・・俺だけじゃないはずだ!!
咲夜さん過去より胸ですかwww
オチ上手いですね。思わず声上げて納得しちゃいました。
夜中なのにねww
本当にくだらない話をありがとうございますww
だがそれがいい!!
博麗君、座布団3枚持ってきてー
落語っぽいといえばコメントのほうに「茶が怖い」で有名なあの落語みたいな発言がちらほらと
だが途中がなければ成り立たず
全にして一,一にして全
悔しいwww