Coolier - 新生・東方創想話

東風谷早苗の受難

2008/05/03 05:47:22
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鼻がつまる。くしゃみが頻繁に出る。鼻水も出る。ちょっと喉がイガイガする。
ポケットティッシュ片手に、神社の拝殿前をほうきで掃きながら、私はひとりごちた。
 
「風邪……だよね……。」

ハァ……、風の神様を祀る者が、風邪をひくだなんて……
人里で評判の薬師さんに診てもらおうかしら……。
いや、いやいや、だめだ。 風祝(カゼハフリ)が風邪をひきましたーだなんて冗談じゃない。猿が木から落ちたり、犬が目の前の棒に当たったりするのと同じだ。
あれ? そう考えると、意外と気にするほどのことではないんじゃないかしら。
木から落ちる猿とか、電柱に頭をぶつける犬って、結構チャーミングじゃない?
……いやいやいや、だめだわ、やっぱり。
 
猿も木から落ちるとは、いくら得意でも失敗することがあるという意味だ。そりゃそうだ。どれだけ修練を積んだ名人でも、体調が悪かったり、何百回も同じことを繰り返していたりすれば、失敗することはあるだろう。
そして、信仰の力も万能ではない。どれだけ信心深い生活をしたとしても、100%心穏やかで健康な一生を送ることができるとは限らない。
しかし。
しかし、この風祝たる私が、風邪をひくということはあってはならないのだ。
今、このときに限っては。

たとえば、今から10年ほど後、守矢信仰が十分広まった時点で、私が風邪をひいても、問題は少ない。ああ、あそこの巫女さんも風邪をひくことはあるのね、程度の話になるだけだ。

だが、今はいけない。

守矢神社の幻想郷への引越しは、超巨大湖と神社の境内ごとの移転という大規模なものだった。突然現れた未知の光景に、幻想郷の先住者たちは、度肝を抜かれただろう。
当初の守矢神社のプランは、その壮大なお引越しによって、神奈子様の力の偉大さを見せつけ、その神威を背景に信仰を求めるというものだった。
しかし、このプランは、砲艦外交を行っている最中に、突如襲撃してきた紅白色の巫女によって、頓挫する。
あの巫女の強さはただごとではない。聞けば、山のふもとから手当たり次第に妖怪を叩き伏せながら、守矢神社に突入してきたという。その上で、風祝とその神を倒したのだ。ごぼう抜きである。
これが幻想郷なのか、と思った。
そういうわけで、幻想郷教化プランは、当初の予定から変更を余儀なくされた。
幸い、神奈子様は、崇め奉られるよりは酒を酌み交わすほうがいいなあ、というフランクな神様なので、まあ地道にいきましょうか作戦が採られることとなった。

その後、神奈子様は当地の妖怪や実力者と何度も折衝を重ねた。その結果、話し合いにより、やっと山の妖怪たちの信仰を得ることができた。そして、次はいよいよ幻想郷の人間から信仰を集めようという段階なのだ。
 
第二作戦がやっと軌道に乗り始めたこの時期に。
風の神に仕えるこの私が、風邪をひいたらどうなるか。
ただでさえ、博霊の巫女によって、ズタボロにされた神の威光は。

 

パターンその1


 こんにちわー、守矢神社でーす。神徳いりませんかー?
 山と風雨の神、八坂印の神徳ですよー。
 5分祈れば風は凪ぎ、10分祈ればにわか雨
 農家の方にぴったりの神様でーす。

 本当かよー、そんな手軽なんて怪しいぜ

 信じる者は救われる、です。八坂様を信じ、一心に祈れば、その心は八坂様に通じるのです。そうすれば、お優しい八坂神奈子様のこと、必ずや神徳を授けていただけッヘヒッゴホッゴホッ!

 んー? お嬢ちゃん、風邪かい? ハッハァ、こりゃいけねえや! 風の神様も風邪には勝てないってか? こんな寒い中突っ立ってないで、さっさとけえってあったかくして寝てな!



パターンその2
 

 風邪の神様なら、風邪なおせるでしょ。治してみせてよ!
  
 いえ、八坂様は風邪の神様ではなく、風の神様で、あ、風というのは、病気の風邪ではなくて

 できないんだー、なおせないんだー

 というよりですね、風邪は手洗いとうがいで十分予防できます。神様の力というのは、安易に頼るべきものではなく、自分の力ではどうしようもない時や、大きな不安を抱えてしまった時にこそ、あ! ちょっと待って! 話はまだ終わってないです!



パターン3


 『守矢神社の神徳に陰り 風の巫女の容態は?』
 『八坂神奈子、風邪に力及ばず!』
 『信仰詐欺!? 守矢神社がひた隠す、負の神徳に迫る!!』

 『八坂株ストップ安、混乱拡大』
 『博霊神社、緊急事態宣言』
 『信仰サプライ3割減、幻想郷衰退の兆し』
 




…………。
誰にも言えないわ。
そう、風邪をひいたなんて誰にも言えない。薬師さんにも、参拝客の人にも、ましてや天狗になんて絶対に。
 
あ、鼻水垂れてた。
誰にも見られてない……わね。
やばいやばい。
チーン

今日はちゃんと栄養を摂って、早めに寝よう。





 翌朝


守矢の社務所の中の自室で、私は布団から起き上がれずにいた。

「あ゛ーーー……」

頭痛がする。吐き気もだ。風祝たるこの私が、風邪に屈して立ち上がることもできないなんて……。
本格的に風邪をひいてしまった。

「早苗、朝ごはん作ったけど、食べられる? 無理ならお粥つくるわよ。」
 
最初に私の異変に気づいたのは、神奈子様だった。おはようのチューを額にしたところ、明らかに平熱ではないことに気づいたそうだ。起き上がって、支度を整えようとする私を制し、しばらく寝ていなさいと言い付けて、朝食を運んできてくれたのだ。
 
「ゴホッ、食べます。食べられます。だいじょうぶです。」

咳をする度、ズキンズキンと痛む頭を首ごと引っ張りながら、上体を起こす。
 
「そう、じゃあ、枕元に置いておくからね。」

そういって、お盆を私の布団の横に置くと、神奈子様はいそいそと部屋から出て行った。

なんかちょっと素っ気ない。熱でぼやける頭で考える。やっぱり、呆れただろうか。風祝らしからぬ失態に、嫌気が差した?
 
ああ、どうしよう。今日は本腰を入れて、人里で勧誘活動をする予定だったのに。これでは、行けない。だって、ゴホゴホいいながら風の神を祀りましょうなんて、とても言えない。そんなの神奈子様をバカにしてるとしか思えない。
やっちゃった……。神奈子さまに嫌われた……。嫌われないまでも、失望はされたに違いない。どうしよう……。
不意に涙が溢れる。惨めだ。

と、そこに大きな洗面器を抱えて、神奈子様が現れた。

「よいしょ…っと。あれ、食べてないの? やっぱりお粥にする?」

神奈子様だ! 見捨てられてなかった!
寝巻きの袖で、急いで涙を拭った。

「あ、ごめんなさい。食べます。すぐに」
「うん、急がないでゆっくりね。体弱ってるだろうから。」

久しぶりに食べる神奈子様の料理は、鼻が詰まってて、ちゃんと味わえなかったけど、本当に美味しかった。




「はい、バンザイして。体拭くからね。」
「ちょっとシーツ替えるよ。」
「寒気はある? 掛け布団増やしましょう。」
 
見捨てられてはいなかった……のだが。
朝から、神奈子様は、私に付っきりだ。今も、私の額の熱で温もったタオルを替えている。
心を砕いて世話をしてもらえるのは、嬉しいのだが、神様にこんなことをさせていていいのだろうか。
 
「あの、お手を煩わせてしまってすいません。もう大丈夫です。あとは寝ていれば治ると思います。」
「気にしないの。神は疲れないのだから、遠慮はいらないわ。」
「いえ、疲れの問題ではなくて、ですね。これ以上ご迷惑をおかけするようでは、風祝としての立場といいますか……。」
「そう、あなたは私の大切な風祝。看病くらいさせて頂戴。」

私の頭を撫でながら、神奈子様は労わるような微笑を浮かべて囁いた。
私の、大切な、風祝。
優しく髪を梳かれる心地よい感触とその言葉に、私はそれ以上言い募る気を無くし、神奈子様の手に甘えることにした。




甘えることにした……のだが。

「早苗、桃が好きだったわよね。」
「はい、早苗、あーん。」
「子守唄を歌いましょうか。昔を思い出すわあ。」
 
ちょっとこれはやりすぎなのでは……。
私がちょっと水を飲もうと水差しに手を伸ばそうとすると、神奈子様は僅かな腕の動きだけで私の意図を察し、コップに水を注ぎ、私の背中を手で支えて起こし、手ずから飲ませてくれる。
何度も私の額のタオルを冷水で洗って絞り、再び載せてくれる。ついさっき気づいたのだが、丁度15分間隔で行われている。
空気が、それと疑わなければわからないくらいの速さで、流動している。心なしか、朝起きたときより部屋の空気が澄んできたような気が……。
諏訪子様が、障子の隙間からニヤニヤしながら見ていた。

一度、トイレに起きたのだが、「一人で大丈夫?」などと言いながらドアのノブを放さない神奈子様に風邪の悪寒とは別種の何かを感じて、冷や汗を流した。
ドアのノブを押さえながら、無事用を足した後トイレを出ると、オムツと尿瓶を持った神奈子様が壁に背を預けていた。
「もう寒い廊下は歩かせないわ。下の世話は任せて。」
全力で固辞した。

どうやら、私が朝食を食べている間にすっかり体制を整えた神奈子様は、全精力を私の看病に費やすことにしたようだ。
何から何まで、神奈子さまの手で助けられる。熱に潤んだ頭では、それを砂漠での甘露のように受け入れてしまいそうになる。
 
「神奈子様、ゴホッこれじゃあ本当に病人になっちゃいます。」
「何言ってるの、本当の風邪引きさんじゃない。」
「病は気からっていうことです。気持ちだけは、ゴホッ、しっかり持って、早く治したいんです。」
「……病は気から、か。いいこと言ったわ早苗。」

神奈子様が真剣な表情で頷く。
 
「よし、プラシーボ効果ね。あの薬飲んだ瞬間に楽になるやつね。そんなに早く効くわけないのに。」
私の言葉に、ちょっと神奈子様の解釈が加わったようだ。

「これぞ風邪の対処法というものをしておけば、早苗も安心して眠れるわよね。」



  
「こっちがしょうが湯、こっちが葛湯、これが卵酒ね。」
「キンカン、オレンジジュース、と。」
「蜂蜜大根つくってみたわ。」

神奈子さまは民間療法を片っ端から試すつもりのようだ。
でも、これはありがたいかも。風邪を引いた身にピッタリだわ。
熱や悪寒もだいぶ楽になった。

「あと風邪に効きそうなのは……、ネギね。」
「あ、それ知ってます。のどに巻くんですよね。」
「いや、お尻に挿すのよ。」


…………。


「もう、神奈子さま、病人に変な冗談言わないでくださいよ。」
「あははははは」
神奈子様は、洗面器を持って部屋を出て行った。





 

戻ってきたとき、左手にネギが握られていた。

「ちょ、ちょっとまっ!」
「大丈夫、ちゃんと効果はあるから。諏訪子もこれで治したのよ。」
「喉に、喉に巻くんですよね。」
「喉にも巻きましょう。」
「喉にも!? ……い、いや!」
「座薬みたいなものよ。」
「じゃあネギじゃなくて、座薬でいいじゃないですか!」
「座薬も入れましょう。早苗のために。」
「いや! やっぱり座薬もいやです! それにもうプラシーボ分は十分足りてますから!!」
「ネギには発汗作用があるのよ。単なる風邪を治す儀式じゃなくて、実際の効果もあるの。」
「ネギなら首に巻きます! お尻はダメです! 絶対ダメです!」

今日の神奈子様は何かおかしい。乙女のお尻にネギだなんて、オムツに尿瓶より笑えない。

「早苗」
微笑みを一転、きゅっと唇を引き結んで、神奈子様が言った。

「私は早苗が心配なの。昔はね、早苗のおばあさんのおばあさんがまだ生まれていないころはね、ふとしたことですぐに人が死んでしまったの。」

切々とした調子で神奈子様は続ける。

「元服ってあるでしょ。成長した子供に、新たな名前を授ける儀式よ。あれはね、子供がすぐに死んでしまうから出来た儀式なのよ。真剣に名前を考えて、そして生まれた子供でも、昔はすぐに死んでしまった。食べ物も少なかったし、早苗の時代ほど清潔じゃなかったから。だから、大人になったとき、初めて本当の願いがこもった名前がつけられた。」
 
いつの間にか、神奈子様の目が潤んでいる。瞳は私を見つめるようで、しかし、見ていないような……。何を思い出しているのだろう。神奈子様の親しい人で、大人にならないまま亡くなった人がいたのだろうか。
おそらく、いたのだろう。
星霜を越えて生きる神様から見れば、人間とは生まれ、死ぬものなのだ。ごく短い間に。それこそ瞬きの間と言うほど、短い間に。
私のように、何でもない風邪でも、それが原因で死ぬ人はたくさんいたのだ。神奈子様はそれを見てきた。だから?
だから、こんなに、一生懸命に私を?

「神奈子さま……。」
「ここは幻想郷。早苗のいた世界とは違う。食べ物はあそこほどないし、洗濯に洗剤は使わないわ。もしかしたら、もしかしたら。そう思うと、私は……。もし、早苗がいなくなってしまったら、私はどうすればいいの……?」

話しているうちに、だんだん神奈子さまの瞳は潤んでいき、そしてついに雫がこぼれた。
神奈子さまは、本当に私を心配してくれているんだ。
神奈子さまは、私を必要としてくれているんだ。
ちょっとトイレで空回りする姿を見ただけで、私は疑ってしまった。
心のどこかで、私をおもちゃにしているのではないか、と。
疑ってしまった罪悪感と、必要とされた喜びと、神奈子様の情の深さに。
涙が後から後から湧いて、頬を伝うのを感じた。


 
 
「じゃあ、はい、足を抜いて……。お尻をこっちに向けて。」
「ゴホッじゃあ、お願いします。」

やはり恥ずかしい。けれど、うん、戦国時代はこうやって風邪を治したはず。多分。
神奈子さまは全くの善意でしてくれているのだ。お医者様が見たら、指を指して笑うだろう。だけど、神奈子さまの風邪の治療は、これなのだ。私は笑わない。笑わない。

「力を抜いて。大丈夫、心配しないで。」







「アッーーーー」










日が赤みを帯び始めたころ、目が覚めた。
……まだ、頭がズキズキする。でもだいぶ楽になったようだ。神奈子様に感謝しなければ。これなら、もう一眠りすれば、元気になっているはず。調子がもどってくると、遅れが出てしまった守矢神社振興計画第2作戦が気になってきた。
  
額には、ひんやりとしたタオルが載っていた。神奈子様はいない。ついさっきまで、ここで私を見てくれていたのだろう。
部屋の中には、布団と私、枕元に洗面器と紙切れ、水差し、コップが置いてあった。
ふと紙切れを手にとって見る。



『洩矢じんじゃしんこう計画 だい2作せん ほうこくしょ

                    洩矢 諏訪子

 今日のせいか 

 信者かくとくすう

 おじいさん2人 
 おばあさん3人
 お姉さん1人
 お兄さん4人
 うさぎ1ぴき


   神さまが自分で地回りなんて今回だけだからね
   はやく元気になってね 』



たどたどしい文字が見えた途端、胸に暖かいものが溢れる。
思わず、それを掻き抱いてしまった。
諏訪子様、神奈子様、早苗は幸せです。幻想郷に来て、よかった。

足音が聞こえてきた。
多分神奈子さまだ。
朝から今の夕方になるまでの看病、どうやってお礼をしよう。
それに、早く風邪を治して、諏訪子様にありがとうございますと言わなければ。

障子が開いた。
神奈子様だ。
神奈子様、私の神様。世界で一番優しい、私の神様。
自然と笑顔になってしまう。

「神奈子さ……」


  !??



柔らかな微笑を浮かべた神奈子様がいた。

左手にネギを持っている
右手にはビニール袋を持っている。

ネギ……。袋……?
思わず、自分の感覚を確かめる。……うん、まだ入ってる。
喉にも……巻いてる。
なぜネギを?そして袋を?
当然の疑念が湧き起こる。

「起きたの。体調はどう?」

言いながら、神奈子様は布団の横に座り、私の額のタオルをとって、冷水につけた。 

「よくなってます。明日には元気になれそうです。……あの、神奈子様」

絞ったタオルをまた、載せる。

「大事にはならないみたいね。よかったわ。」
「神奈子様、あの、どうしてネギを持っているのですか?」

「うん? 新しいネギよ?」
「え?」
「さ、ネギ替えましょうね。」

何をいっているんだ
 
「早苗、起きれるならお尻を出して。」
 
お尻、つまり、その新しいネギは。

「どうしたの?」

そして、そのビニール袋は。

 

 
「いや!絶対いや!死んでもいや!! 入れるだけならまだしも、出すなんてダメ!!」
入れるは難く、引き出すは易い。
背筋を貫く寒気と怖気に襲われるままに、絶叫した。

「突然どうしたの、早苗」

神奈子様は、驚いた顔をした。なんでそんな顔するの。
なんで驚くのだ。

「絶対許されません! いくら神奈子様でも、それは許されない!!」

ゴホッゴホッと咳が出る。急に大声を出してしまった。喉が痛い。
しばらく目を丸くして私を見つめた後、ふ、と頬を緩める神奈子様

「大丈夫よ、さっきもしたでしょう。」

たち膝になり、布団の上ににじり寄ってきた。
目に冗談の色がない。
本気だ。本気でネギの交換をするつもりだ。

逃れなければ。逃れなければ。
きっとネギを引き出されてしまう。

死力を尽くし、神奈子様ごと布団を跳ね除ける。
「うわっ!!」
転がるように立ち上がり、障子に手をかける。
急に立ち上がったため、ひどい鈍痛が頭を苛んだ。が、構っていられない。
頭痛などどうでもいい。絶対に譲れないものがかかっているのだ。
障子を叩きつけるように開き、廊下に駆け出そうと足を踏み出した。
そこで、肩に手がかかった。

「だめよ、早苗。病人は寝てなさい。」
一気に引き倒され、しかし、衝撃はまったくなく、ポフンと私の体は元の布団に収まる。
額に神奈子様の手のひらが当てられる。だめだ、まったく起き上がれない。

「本当にどうしたの? ちょっと変よ?」
「へ、変なのは神奈子様のほうです! なんで、そんな平然とネギ替えようなんて考えるんですか!」
「そりゃあ、新鮮なほうが効き目があるでしょうに。」
「効き目云々でなくてです! ネギを、だ、出すなんて、汚いです!」
「だから、ほら」
「得意げな顔してビニール袋出さないでください!」
目の前に出された袋を払いのける。

「もう、まだ恥ずかしがっているのね。」
「当たり前です!」
「私はあなたのおしめも替えたことあるのよ。今更じゃない。」
「それとこれとは全く別です!!」
「ふぅ、これは早苗の反抗期かしら。」
「誰だって反抗します! ……いや、いや!触らないで! それ以上、下を触ったら舌を噛みます!!」

涙をボロボロ流しながら、神奈子様をにらむ。
すると、気圧されたのか、私の本気が伝わったのか、神奈子様は慌てて引いた。
 
「そんな泣くほどイヤなの?」
「イヤ!!」
もう恥も外聞も神もない。
人の誇りを守るために、私は全身全霊で神奈子様を拒絶した。

しばらく視線を合わせた後、神奈子様は目をそらし、肩をすくめた。

「わかった、わかった。もう、困った風祝ね。」
 
緊張が解け、全身の力が抜けた。
よかった。
わかってくれた。わかってくれた……。
もう大丈夫だ……。

「こんなに嫌がるのだったら、寝ているときに一回替えておいて正解だったわね。……うわっ!口から血が、早苗!早苗!!ちょ、諏訪子ーーーー!!!!」


 




 




その後、永遠亭に担ぎこまれた私は、セキ、鼻づまり、高熱と頭の鈍痛と悪寒と舌のヒリヒリに苛まれながら、3日の入院生活を送った。
  
そのニュースは、兎たちや人里、山の妖怪たちに瞬く間に広まった。
守矢神社の巫女の入院を知った人の反応は、おおよそ以下の通り。


「インフルエンザなら仕方ないわね。」

「インフルエンザなら仕方ないぜ☆」 


初めて投稿します。

昨晩、風邪をひきながら、猫兵器ねこさんの『かぜみこ』を拝読したところ、言葉では言い表せない感情が湧き起こり、そのまま思いのたけを書きなぐって、投稿まで至ってしまいました。

作中のネギ療法ですが、実際には、刻んだものを入れるようです。(wikipedia 風邪 の項より)
神奈子様には、外皮を剥いて細くしたネギをそのまま使っていただきました。
この場を借りて謝罪します。ごめんなさい早苗さん
六分蜜
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コメント



0.3450簡易評価
1.80名前が無い程度の能力削除
早苗さんがインフルエンザ→薬による治療→タミフル巫女の完成
こうですか?わかりません><

それはおいといてその使用済みネギをくださ(ry
2.80名前が無い程度の能力削除
ネギが尻に突き刺さっている早苗を幻視して吹いたw
4.90名前が無い程度の能力削除
良い話,いい話なのにww
かなこさまはてんねんなんですね
5.60名前が無い程度の能力削除
>言葉では言い表せない感情が湧き起こり
それが一番の原動力になるのです。
6.80名前が無い程度の能力削除
……なるほど、ネギか。よし(何が
7.70名前が無い程度の能力削除
インフルエンザなら仕方ないな
9.100名前が無い程度の能力削除
ああ、なんてかわいい早苗さん
なにより諏訪子の健気さに心が温かくなったぜ!
11.100名前が無い程度の能力削除
早苗は運が良かった。
もしネギでcaved!でアッー!なんてことが天狗に知られたら、もう信仰集めどころの話じゃなかった。

でもそしたらで代わりに少数精鋭の熱狂的信者(別名:変態)が集まってくるかも。
12.100名前が無い程度の能力削除
この作者なんて事をwww
尻にネギを抜き差しなんて…「嫌」→「仕方ないわね」で終わると思ったら
最後までやりやがってwww自重しろwww

あと神奈子がぶっ壊れている仲で諏訪子は普通にいい子ですね。撫でてやりたい。
13.60名前が無い程度の能力削除
>うさぎ1ぴき
ケロちゃん騙されてる悪寒。

14.90名前が無い程度の能力削除
神奈子様。(滝汗
そして早苗さん哀れ。
なんだかんだで、諏訪子様がおいしい所もって行きましたね。
15.無評価六分蜜削除
>>名前が無い程度の能力さん ■2008-05-02 21:17:55
早苗さんはまだ大人ではないので、タミフルは使用されませんでした。
ネギは、諏訪子様が気を利かせて、処分してくれたようです。

>>名前が無い程度の能力さん ■2008-05-02 21:18:19
昨日の深夜、自分でも試してみたのですが、なかなか入らないものです。
ていうか、入りませんでした。
もし、神奈子様がまるごとそのままのネギを持ってきていたら、早苗さんは死ぬ気で何らかの奇跡を起こして脱出していたと思います。

>>名前が無い程度の能力さん ■2008-05-02 21:22:42
まさかいい話と言っていただけるとは思ってもいませんでした。
こんな下ネタで大丈夫なのか、と思いながら投稿したものでw
ありがとうございます。

>>名前が無い程度の能力さん ■2008-05-02 21:23:02
昨日と今日で、物書きさんの苦労の一端を味わいました。
自分でも驚くくらいのエネルギーを注ぎ込んだなあと思います。
このエネルギーを今後も自由に使えればいいのですが…w

>>名前が無い程度の能力さん ■2008-05-02 21:56:10
ネギの汎用性は異常です。

>>名前が無い程度の能力さん ■2008-05-02 22:08:44
以前一度かかったことがあるのですが、かなりきつい症状でした。
一人暮らしのときに罹患したら、かなりやばいです。
その点、守矢神社は安心、のはずだったのですが…。

>>名前が無い程度の能力さん ■2008-05-02 22:24:27
早苗さんに限らず、守矢神社ご一行はみんなかわいいです。
諏訪子様は、なぜか小学校で習う漢字しか書けないようになってました。

>>名前が無い程度の能力さん ■2008-05-02 22:48:56
永遠亭に搬送されたとき、ネギが刺さっていたかどうかはわかりません。
多分、諏訪子様がなんとかしてくれていたと思います。

>>名前が無い程度の能力さん ■2008-05-02 22:59:52
どうやったら早苗さんがネギ療法を受け入れてくるか、ない頭を絞りました。
結果、こんな話ができてしまいました。どこかの神のお力添えがあったのだと思いますw
17.無評価六分蜜削除
>>名前が無い程度の能力さん ■2008-05-02 23:11:15
鈴仙ちゃんの方のつもりで書いてましたが、てゐちゃんでもありえそうですね。

>>名前が無い程度の能力さん ■2008-05-02 23:14:55
早苗さんには幸せになってもらいたいですね。
いや、こんなの書いてて言えたことじゃありませんがw
18.100コマ削除
またえらい人が来たもんだ。これで初投稿とか天才すぎるwww

大抵は匂わすだけで終わる尻ネギ、その後まで書ききった人を私は始めて見ました。つーか、刺さったまんま寝てたのか、早苗さん。凄い絵面だ。
途中までは和気藹々とした、家族のような暖かい守矢神社。流れを繋ぎつつ、
後半ではじけて、そして伝説へ、って感じでしょうか。

それでは、次回を楽しみにしています。

>遅れが出てしまった守矢神社振興計画
こちらでもニュアンスは伝わりますが、『信仰』ではないでしょうか。
意図してものだったらすいません。
22.70名前が無い程度の能力削除
早苗さんかわいいよ早苗さん
使用済みネギを速くネットオークションに出品するんだ
手持ち金は10万だが・・・果たして落札できるだろうか・・・

地霊殿に早苗さんでないかなぁ
24.100名前が無い程度の能力削除
正直興奮したwww
27.100NA削除
変態を代表してありがとうを言わせてください
33.90名前が無い程度の能力削除
色々アウトだと思います、先生。
ちょっとだけ興奮しました。
本当にちょっとだけなんだからね。
34.70イセンケユジ削除
こんな変態的なSSを投下するとは……全く作者の方は紳士の風上にも置けない人だぜ……。
36.80削除
ハブ・ア・グッド・エッチ!
37.90てるる削除
ヤバイ、今日夢で見そうだ・・・
シュールな光景だなぁ・・・・
あれ?ネギ装備・・・てことはズボンは・・・(ピチューン)
42.90名前が無い程度の能力削除
早苗さんは少なくとも三回はネギを○ナルに出し入れされたんですね。わかります。





……早苗さんはエロスが似合うと思います。
46.無評価六分蜜削除
>>コマさん

話の元といいますか、お尻にネギという題材はよかったと思うのですが、投稿してから時間を置いて見直してみると、気になる点が多々でてきてしまい、題材を活かしきれなかったと反省しきりです。

守矢神社振興計画は、村興し、神社興しといったイメージで使ってみました。



>>名前が無い程度の能力さん ■2008/05/03 01:52:12

すいません。使用済みのネギは、今手もとにありません。

諏訪子様の方に問い合わせていただければ、確実かと思います。



>>名前が無い程度の能力さん ■2008/05/03 02:08:22

私も書いてる時は興奮してました。

が、だんだん罪悪感が芽生えてきまして、

後ろめたさからか、5面の早苗さんのお顔を直視できなくなってしまいました。



>>NAさん

こちらこそ、好評価をありがとうございます。



>>名前が無い程度の能力さん ■2008/05/03 10:59:23

ツンデレおいしいです。いただきます。



>>イセンケユジさん

申し訳ありません。風邪と季節のせいにさせてください。



>>冬さん

これからはキャッキャウフフな想像に邁進していく所存です。



>>てるるさん

ズボンは履いていたと思います。

お尻丸出しで寝るなんて破廉恥ですから。



>>名前が無い程度の能力 ■2008/05/05 10:12:47

最初に一回入、寝ている時に一回出、一回入、おっしゃる通り、三回通過しました。

早苗さん、本当にごめんなさい。
47.100名前が無い程度の能力削除
こんな小話を作り出すだなんて……

表現できないのがくやしいっ(ビクンビクン
48.90猫兵器ねこ削除
 『かぜみこ』を書いた奴です。すんません。

 まさか拙作がきっかけでこのような素晴らしいSSが生まれるとは。いや、鳶が鷹を生むとはまさにこのこと。

 実はいつか『かぜみこ2』とでも銘打って早苗さんが風邪を引く話を書こうかななんて思っていたのですが、断言できます。こっちの方が確実に面白い。

 ネギも強烈だけど、すっかり弱ってネガティブな想像しかできなくなっている早苗さんにも、可愛くて笑えました。割と変態なのに微笑ましいというのは、たぶん凄いことなのだと思います。

 次回作も期待しておりますね。乱筆乱文失礼しました。
51.70名前が無い程度の能力削除
報告書のお兄さんの信仰獲得人数が一番多いのは……

それにしても仮名交じりが可愛すぎるw
52.100名前が無い程度の能力削除
神奈子様過保護過ぎwww

早苗さんかわいいよ早苗さん

53.100ぷら削除
定番だから陳腐になりがちな

アッーーー

の使い方が上品で良かったw

ぐっじょぶです
58.70翔菜削除
自重汁、と言いたいところだが。



自重しない神奈子様素敵すぐるwwwwwww
59.無評価名前が無い程度の能力削除
>>名前が無い程度の能力さん ■2008/05/05 14:53:16

評価していただきありがとうございます。

自分で何かを書いて改めて思ったのですが、生き生きとした表現を出来る人は本当にすごいと思います。



>>猫兵器ねこさん

まさかコメントをいただけるとは…。

過分なほめ言葉を頂いて、本当に恐縮です。

しかし、やはり『かぜみこ』の描写の巧みさには及ばないなあと思っております。

特に、霊夢の体捌きや夢うつつで甘えるところのなめらかな流れは読んでいて気持ちがいいです。

ネタを横取りしてしまった身で言うのもあれなのですが、『かぜみこ2』是非読ませていただきたいです。

あ、アリスが酷い目にあう話もとても気になります。お嬢様と門番の激突もかなり気になります。猫兵器ねこさんの次回作が何になるのかはまだわかりませんが、本当に読むのが楽しみです。



>>名前が無い程度の能力さん ■2008/05/05 22:48:34

今度お参りにきてね、といった感じで勧誘したのだと思います。

幻想郷に子供好きが多いのかどうかについては、如何せん母数が11人ですので、ちょっとわからないですね。



>>名前が無い程度の能力さん ■2008/05/05 23:05:53

責任感たっぷりありそうで生真面目そうな早苗さんは、幻想郷では過保護にされるべきだと思います。

妖夢さんも似た性格みたいですが、個人的に早苗さんの方が脆く感じます。人間だからでしょうか。



>>ぷらさん

極力、いやらしくならないよう心がけました。

ネタがネタなため、全年齢、全年齢と唱えながら尻ネギした次第です。



>>翔菜さん

日本の神様は軒並みおおらかであるようですし、その中でも著名な神奈子様ならば、あれくらい朝飯前です。おそらく。
62.無評価名前が無い程度の能力削除
完全な善意にてこんなことしてる神奈子様も影で働いてた諏訪子様もお二方を心配させまいとする早苗さんも最高だ。最高の家族だ。感動した!!!

でもこれ、なまらエロイと言わざるを得ない。ともあれそのネギを抜く権利を俺にくれ!



>昨日の深夜、自分でも試してみたのですが、なかなか入らないものです。

あんた物書きとして最高だ!確証得るためにまず自分で、それは大切なことですね。

でもやってることは尻にねぎ…お腹が苦しい、苦・し・す・ぎ・るwww
63.100名前が無い程度の能力削除
↑はいほかのところでもやりましたがまた点数入れ忘れ…。

やっちゃったんだぜ!
66.無評価六分蜜削除
>>名前が無い程度の能力さん ■2008/05/09 10:44:42

時系列としては、風邪をひく>なんとなく尻ネギ>『かぜみこ』拝読>この話を思いつく

といった順番を辿っております。

体験せずに語ることはできない! といった殊勝な態度で臨んだのではなく、

ちょっと試してみようという破廉恥な好奇心からの行動です。

びっくりするほどユートピアですとか、やってみるとなかなかおもしろいものです。

いえ、一度で十分ですけどw



それと、不注意でコメントに名前を付け忘れてしまいました。

名前が無い程度の能力 ■2008/05/07 04:19:50

この時間の名前の無い人のコメントは私です。
67.90☆月柳☆削除
だす。

これは吹いたwww

普通いれるまでは容易に考えつくことはできても、まさかいれたものはだす、そこまで考えて、さらにやってしまう作者さんに感服です。

そりゃ、舌も噛みたくなるw

69.無評価六分蜜削除
>>☆月柳☆さん

座薬を入れられたり、お尻に注射を打たれたりするのってかなり屈辱的だと思います。

人によってはオムツを替えられる以上のダメージなのではないでしょうか。

そして、出すまでいくと、その、何といいますか……。

すいません、創想話で話すことではないですねwww
71.無評価名前が無い程度の能力削除
既に点数入れちゃってるんでフリーレスですが……



某所でこの話を元にした絵を見て飛んできました

神奈子さん結婚してくれ!
73.無評価六分蜜削除
>>名前が無い程度の能力 ■2008/05/12 00:29:42

ちょ!!!

もう少し詳しいお話を伺わせてください。

ただいま全力を出して捜索してみましたが、見つかりませんでした。

何かキーワードとなるような言葉でもあれば、教えていただけませんか。
74.無評価71削除
作者さんへ連絡

「まぐれ当たり」でググってください

それ以上は……
76.無評価六分蜜削除
>>71さん

了解しました。

ありがとうございます。
77.100時空や空間を翔る程度の能力削除
ごめんなさい、「も」で盛大に吹いたwwwwwwwww



あぁ~深夜なのに大笑いした。
79.無評価六分蜜削除
>>時空や空間を翔る程度の能力さん

過剰な愛情は人間を殺してしまうとかどこかの女王様が言ってましたけど、

神奈子さまの愛情は過剰でもよろしいのではないでしょうか!
86.70名前が無い程度の能力削除
今更ですが、こりゃいいものだ。
体を張って創作されている作者さまも尊敬します
87.100名前が無い程度の能力削除
これは噴いてしまったw
89.100P(大文字)削除
GJの一言に尽きる!
久々にコメントする使命に駆られてしまいました(笑)
90.無評価六分蜜削除
>>名前が無い程度の能力さん ■2008/06/11 12:34:21
体を張ったのは早苗さんです!
僕ではないのです!
投稿から大分日にちが経っても見に来ていただける方がいて嬉しいです。ありがとうございます。

>>名前が無い程度の能力さん ■2008/06/15 19:10:06
本望でございます。thanks for reading!

>>Pさん
こういうお笑い系のほうがコメントしやすいですよね!
真面目なストーリーに対して「アリスかわいいよアリス」とかコメントしづらいですものね!
いえ、弩シリアスなSSであっても、読後に悶える胸の内があればそういった旨のコメントをしてしまうんですけれども
107.90名前が無い程度の能力削除
清純派早苗ちゃん+ネギ…うん、良し!(なにが?
110.100名前が無い程度の能力削除
ネギをかえさせろ!おれはかみになるんだ!
111.90名前が無い程度の能力削除
諏訪子様の信仰が上がった!
神奈子様の信仰が斜めに上がった!
早苗さんの心労が上がった!

洩矢神社は守矢だったような…あれ、守屋だっけ?。
でも元々は諏訪子様の神社だからいいのか?悩む所。

まさか永遠亭での治療は座薬か?