コンコン
「どうぞ」
部屋にやってきたのはうどんげだった。
「師匠、お客様です」
「誰?」
「咲夜さんです。薬が欲しいそうで」
紅魔館の魔女の使いが薬を分けて貰いに来ることはあるが、メイド長とは珍しい。
軽い病気なら『図書館の魔女』の知識だけで充分だろうし、
運命を操る吸血鬼がいて薬を欲するほどの病気にやられるとは思えない。
では、何の薬だろう?
あ、一つ心当たりがある。
あの薬に違いない。
「いいわ。通して」
「わかりました」
ぱたぱたと駆けていくうどんげ。うーんかわいいなぁ。
しばらくして咲夜がやって来た。うどんげは気を利かせたのか、もういない。
「こんにちは、八意永琳」
「久しぶりね、十六夜咲夜」
フルネームで言われたからフルネームで返す。
「薬が欲しいそうね…。あなたの求めている薬を確かに私はつくれるわ」
「つくれるのね!?って私まだ何の薬が欲しいか言ってないけれど?」
ものがものだ。
本人の口に出させるのは少々酷だろう。
「私は天才よ?それくらい言わなくてもわかるわ。
それは誰もが求めるものだだけど、わずかしかない。
需要の方が圧倒的に大きいわけね。
だからその存在が明るみにでれば、それを巡って戦争さえ起きるわよ?」
なにせ幻想郷は貧乳が多いから。
巨乳の連中だって自分のアイデンティティを守るために阻止にまわるだろうし。
姫様も欲しがるだろうし、それは個人的に嫌だ。今のままの姫様でいてほしい。
「う…だけど…」
「それでもし霊夢の手にでも渡ってみなさい。」
「それは…確かに危険ね
幻想郷のパワーバランスが崩壊するわ」
「そうよ!脇のチラ見せだけであの人気なのに、
横乳まで見えたら……ただでさえ低い私の人気なんて…胸だけが取り柄の私なんて…」
「……何の薬の話?」
「胸を大きくする薬?」
「殺すわよ?」
「違ったかしら?」
「そんなことしたらまたパッド長って言われるじゃない」
「今付けているパッドサイズまで大きくすれば、パッド疑惑も消えるんじゃない?」
「本気で殺るわよ?」
ヤバい、眼がマジだ。
っていうか気付いたら頭にナイフが刺さってる。
これが時を操る程度の能力か。すごいな。
「えっと…じゃあ何の薬が欲しいのよ?」
とりあえず頭の治療をしながら尋ねる。
「蓬莱の薬よ」
「蓬莱…の薬?」
「えぇ対価ならいくらでも払うわ」
「不老不死なんてそんないいものじゃないわよ?」
「いい悪いの問題じゃないわ」
「………妖怪と人間の寿命に差があるのは確かだけれど、あなたはまだ若いじゃない?」
まぁ咲夜が蓬莱の薬を望むのも当たり前か。
自分が死んでも、主人にはこれから何十、何百年という生があるのだから。
「若いからこそよ。ババアになってから不老不死になったら足手まといでしかないわ」
「じゃあ聞くけれど…主が亡くなったらどうするの?主亡き世界で永遠に生きるのよ?」
「第一に優先されるのはお嬢様よ。私は別に」
自己を省みず、主に尽くす。
メイドの鏡ね、てゐにも少しだけ見習わしたいわ。
でも、少しだけね。だってそんな自己犠牲は間違っているから。
「私達は千年も姿を隠しいたし、冥界が近づいたのだって最近のこと。
鬼や天狗が姿を見せ始めたのも。あなた達だってそうでしょ?」
「……………」
今の幻想郷しか知らない彼女には想像できないかもしれない。
昔の幻想郷は今よりつまらなかったとか、悪かったなんて言うつもりはない。
どっちがよかったかなんて、人によって違うし、どんな天才にだってわかりはしない。
でも、少なくとも…姫様はつまらなそうだった。
「…今の巫女、博麗霊夢が生きているうちは楽しいでしょうね」
永遠が約束されても、永遠の幸せが保証されるわけじゃない。
「幸せな時代を生きて死ねる。これ以上の幸せはないわよ?」
「でも……あなたは不幸じゃないでしょう?」
「………ずるいわね、答えの決まっている質問なんて」
蓬莱ニートな主に、いじめて欲しいオーラ全開の弟子、言うこと聞かない腹黒兎。
これだけ揃っていて『幸せじゃない』なんてどの口が言えようか。
「でも私は私。あなたに薬をあげるわけにはいかないわ」
「なら……力づくでもいただくまでよ」
「なっ!?」
………少女戦闘中
わずか数分。
既に勝負は着いた。
なんてメイドだろうか。
月の異変の時は吸血鬼の凄さで霞んでいたがなんて強さ。
颯爽と駆け付けたうどんげもてゐもあっさりやられてしまった。
どーでもいいけど服がボロボロなのがちょっとエロい。
他のうさぎ達では勝負にさえならないだろう。
姫様は騒ぎに駆けつけてさえこない。イヤホンでゲームでもやってて気づいてないんだろうな。
今来られても守ることはできないからむしろ好都合だけれど。
「あの時は本気じゃなかったのね」
「主に華を持たせるのもメイドのたしなみです。
あなたが本気なら勝負はわからなかったけどね。
さぁ薬を渡しなさい」
本気じゃない、か。
確かにその通りかもしれない。
不老不死が幸せか不幸かまだ迷っている。
例え不幸だとしても咲夜が不老不死になるのを止めてやる義務も権利もない。
そもそもそんな親しくない。
蓬莱の薬だって希少価値で、存在自体がとんでもない代物だけれど、
妹紅に無駄遣いするくらいの代物でしかない。
「そうね本気じゃないわ。でもなぜかしらね?負ける気がしないわ」
そう勝負は始めから決していた。
だって、きっと、そういう運命なのだから。
傷ついて意識を失った咲夜をベッドへ寝かせる。
私が傷つけたのに私が治すというのもおかしな話だ。
「運命を操る程度の能力…か」
運命なんて信じる質ではないが、まったくとんでもない力だ。
「お嬢様は私が不老不死になるのを良く思わなかったの…?」
目を覚ました咲夜が呟く。
「蓬莱の薬なんてなくても、あなたはそう簡単に死なないわよ。
あのレミリア・スカーレットがいるんだから」
運命って字はは命を運ぶって書くことだし、
彼女なら寿命なんて運命くらい操れるかもしれない。
「……たまに不安になるのよ、お嬢様が私をずっと必要としてくれるのか。
…だから薬がほしかった。例え必要とされなくても、ずっとそばにいたいから…」
仮にレミリアが寿命を操れるとしても、
ただ運命を操つられて生きるということは、レミリア次第でいつでも死ぬということだ。
だから必要とされなければそれでおしまい。
「そうね。私もたまに不安になるわ…主にいらないと言われた私達は終わりだものね。
でも今は私たちを必要としている。それでいいじゃない。
未来にびびって目の前の幸せを逃すなんてマヌケのすることよ」
「………そうかもね」
「全くお互い大変ね」
「ただいま戻りました、お嬢様」
「おかえりなさい、咲夜」
「あの…」
「ごめんなさい咲夜。あなたのを邪魔してしまって」
「やはりあれはお嬢様が?」
「えぇ運命を操って薬を手に入らないようにしたの。
薬なんて使うことないわ。あなたはあなたじゃない」
「でもいつかは……変わってしまいます」
「仮に変わっても失っても、なくても、私は咲夜が好き。
それは変わらないし、それでいいじゃない。ムリすることはないわ」
「でも私はずっとお嬢様と……」
「まぁいろいろカッコつけてみたけどね、咲夜。ぶっちゃけていうと私……貧乳の方が好きなの!!」
「は?」
「ロリとは一味違う妙齢の女性の貧乳…。
パッドで強調したり強がったりするのもまた萌えなの。
まぁその…仮にパッドじゃなくて本物の巨乳でも構わないけど……」
「あのぉ、お嬢様…つかぬことお伺いしますが、私がなんの薬を取りに行ったと思ってるんです?」
「胸を大きくする薬でしょう?」
…………………………………………………………
…………………………………………………………
「うわあぁぁぁん!!!」
「咲夜……。あんな泣いて駆け出すほど私の言葉に感動してくれたのね。
それにしても変わってしまうってことはやっぱりパッドだったのかしら?」
この日八つ当たりされた中国には30本のナイフが刺さってたという。特に胸に。
「どうぞ」
部屋にやってきたのはうどんげだった。
「師匠、お客様です」
「誰?」
「咲夜さんです。薬が欲しいそうで」
紅魔館の魔女の使いが薬を分けて貰いに来ることはあるが、メイド長とは珍しい。
軽い病気なら『図書館の魔女』の知識だけで充分だろうし、
運命を操る吸血鬼がいて薬を欲するほどの病気にやられるとは思えない。
では、何の薬だろう?
あ、一つ心当たりがある。
あの薬に違いない。
「いいわ。通して」
「わかりました」
ぱたぱたと駆けていくうどんげ。うーんかわいいなぁ。
しばらくして咲夜がやって来た。うどんげは気を利かせたのか、もういない。
「こんにちは、八意永琳」
「久しぶりね、十六夜咲夜」
フルネームで言われたからフルネームで返す。
「薬が欲しいそうね…。あなたの求めている薬を確かに私はつくれるわ」
「つくれるのね!?って私まだ何の薬が欲しいか言ってないけれど?」
ものがものだ。
本人の口に出させるのは少々酷だろう。
「私は天才よ?それくらい言わなくてもわかるわ。
それは誰もが求めるものだだけど、わずかしかない。
需要の方が圧倒的に大きいわけね。
だからその存在が明るみにでれば、それを巡って戦争さえ起きるわよ?」
なにせ幻想郷は貧乳が多いから。
巨乳の連中だって自分のアイデンティティを守るために阻止にまわるだろうし。
姫様も欲しがるだろうし、それは個人的に嫌だ。今のままの姫様でいてほしい。
「う…だけど…」
「それでもし霊夢の手にでも渡ってみなさい。」
「それは…確かに危険ね
幻想郷のパワーバランスが崩壊するわ」
「そうよ!脇のチラ見せだけであの人気なのに、
横乳まで見えたら……ただでさえ低い私の人気なんて…胸だけが取り柄の私なんて…」
「……何の薬の話?」
「胸を大きくする薬?」
「殺すわよ?」
「違ったかしら?」
「そんなことしたらまたパッド長って言われるじゃない」
「今付けているパッドサイズまで大きくすれば、パッド疑惑も消えるんじゃない?」
「本気で殺るわよ?」
ヤバい、眼がマジだ。
っていうか気付いたら頭にナイフが刺さってる。
これが時を操る程度の能力か。すごいな。
「えっと…じゃあ何の薬が欲しいのよ?」
とりあえず頭の治療をしながら尋ねる。
「蓬莱の薬よ」
「蓬莱…の薬?」
「えぇ対価ならいくらでも払うわ」
「不老不死なんてそんないいものじゃないわよ?」
「いい悪いの問題じゃないわ」
「………妖怪と人間の寿命に差があるのは確かだけれど、あなたはまだ若いじゃない?」
まぁ咲夜が蓬莱の薬を望むのも当たり前か。
自分が死んでも、主人にはこれから何十、何百年という生があるのだから。
「若いからこそよ。ババアになってから不老不死になったら足手まといでしかないわ」
「じゃあ聞くけれど…主が亡くなったらどうするの?主亡き世界で永遠に生きるのよ?」
「第一に優先されるのはお嬢様よ。私は別に」
自己を省みず、主に尽くす。
メイドの鏡ね、てゐにも少しだけ見習わしたいわ。
でも、少しだけね。だってそんな自己犠牲は間違っているから。
「私達は千年も姿を隠しいたし、冥界が近づいたのだって最近のこと。
鬼や天狗が姿を見せ始めたのも。あなた達だってそうでしょ?」
「……………」
今の幻想郷しか知らない彼女には想像できないかもしれない。
昔の幻想郷は今よりつまらなかったとか、悪かったなんて言うつもりはない。
どっちがよかったかなんて、人によって違うし、どんな天才にだってわかりはしない。
でも、少なくとも…姫様はつまらなそうだった。
「…今の巫女、博麗霊夢が生きているうちは楽しいでしょうね」
永遠が約束されても、永遠の幸せが保証されるわけじゃない。
「幸せな時代を生きて死ねる。これ以上の幸せはないわよ?」
「でも……あなたは不幸じゃないでしょう?」
「………ずるいわね、答えの決まっている質問なんて」
蓬莱ニートな主に、いじめて欲しいオーラ全開の弟子、言うこと聞かない腹黒兎。
これだけ揃っていて『幸せじゃない』なんてどの口が言えようか。
「でも私は私。あなたに薬をあげるわけにはいかないわ」
「なら……力づくでもいただくまでよ」
「なっ!?」
………少女戦闘中
わずか数分。
既に勝負は着いた。
なんてメイドだろうか。
月の異変の時は吸血鬼の凄さで霞んでいたがなんて強さ。
颯爽と駆け付けたうどんげもてゐもあっさりやられてしまった。
どーでもいいけど服がボロボロなのがちょっとエロい。
他のうさぎ達では勝負にさえならないだろう。
姫様は騒ぎに駆けつけてさえこない。イヤホンでゲームでもやってて気づいてないんだろうな。
今来られても守ることはできないからむしろ好都合だけれど。
「あの時は本気じゃなかったのね」
「主に華を持たせるのもメイドのたしなみです。
あなたが本気なら勝負はわからなかったけどね。
さぁ薬を渡しなさい」
本気じゃない、か。
確かにその通りかもしれない。
不老不死が幸せか不幸かまだ迷っている。
例え不幸だとしても咲夜が不老不死になるのを止めてやる義務も権利もない。
そもそもそんな親しくない。
蓬莱の薬だって希少価値で、存在自体がとんでもない代物だけれど、
妹紅に無駄遣いするくらいの代物でしかない。
「そうね本気じゃないわ。でもなぜかしらね?負ける気がしないわ」
そう勝負は始めから決していた。
だって、きっと、そういう運命なのだから。
傷ついて意識を失った咲夜をベッドへ寝かせる。
私が傷つけたのに私が治すというのもおかしな話だ。
「運命を操る程度の能力…か」
運命なんて信じる質ではないが、まったくとんでもない力だ。
「お嬢様は私が不老不死になるのを良く思わなかったの…?」
目を覚ました咲夜が呟く。
「蓬莱の薬なんてなくても、あなたはそう簡単に死なないわよ。
あのレミリア・スカーレットがいるんだから」
運命って字はは命を運ぶって書くことだし、
彼女なら寿命なんて運命くらい操れるかもしれない。
「……たまに不安になるのよ、お嬢様が私をずっと必要としてくれるのか。
…だから薬がほしかった。例え必要とされなくても、ずっとそばにいたいから…」
仮にレミリアが寿命を操れるとしても、
ただ運命を操つられて生きるということは、レミリア次第でいつでも死ぬということだ。
だから必要とされなければそれでおしまい。
「そうね。私もたまに不安になるわ…主にいらないと言われた私達は終わりだものね。
でも今は私たちを必要としている。それでいいじゃない。
未来にびびって目の前の幸せを逃すなんてマヌケのすることよ」
「………そうかもね」
「全くお互い大変ね」
「ただいま戻りました、お嬢様」
「おかえりなさい、咲夜」
「あの…」
「ごめんなさい咲夜。あなたのを邪魔してしまって」
「やはりあれはお嬢様が?」
「えぇ運命を操って薬を手に入らないようにしたの。
薬なんて使うことないわ。あなたはあなたじゃない」
「でもいつかは……変わってしまいます」
「仮に変わっても失っても、なくても、私は咲夜が好き。
それは変わらないし、それでいいじゃない。ムリすることはないわ」
「でも私はずっとお嬢様と……」
「まぁいろいろカッコつけてみたけどね、咲夜。ぶっちゃけていうと私……貧乳の方が好きなの!!」
「は?」
「ロリとは一味違う妙齢の女性の貧乳…。
パッドで強調したり強がったりするのもまた萌えなの。
まぁその…仮にパッドじゃなくて本物の巨乳でも構わないけど……」
「あのぉ、お嬢様…つかぬことお伺いしますが、私がなんの薬を取りに行ったと思ってるんです?」
「胸を大きくする薬でしょう?」
…………………………………………………………
…………………………………………………………
「うわあぁぁぁん!!!」
「咲夜……。あんな泣いて駆け出すほど私の言葉に感動してくれたのね。
それにしても変わってしまうってことはやっぱりパッドだったのかしら?」
この日八つ当たりされた中国には30本のナイフが刺さってたという。特に胸に。
咲夜さんに幸多からんことを・・・。
オチまで見事に楽しめました。
咲夜、乳、薬、蓬莱、ここまでくると感じるなというほうが難しいかもしれませんね。
レミリアの貧乳好きは、自分のことを正当化するためだと思うんだ!
面白かったです。
おぜうさまwwwwwぶち壊しwwwwww
面白かったですよ。