「ん……、う」
「っ、うく……」
火照った肌。乱れた寝巻き。艶やかな黒髪を汗で湿らせ、博麗霊夢は唇を噛む。
「……あ、はぁ、ぁ」
熱い吐息。床の間に敷かれた布団の上で、しなやかな身体をくねらせる。潤んだ瞳。たわんだ眉。何かを求めるように伸ばされた指先。
「は……ん。ぁ……」
異常なまでに荒い呼吸を抑えるように、口元を手で覆う。我慢できない。そう察した霊夢は幼い子供のように身体を丸め、ぎゅっと目を瞑る。
もうだめっ
「……ぁ。ばふぁっくっしょん! いひっしょん! ぶぇぇっしょん! ぶぇ……ごはげほぐへほはえぇほっ!」
ものすごいくしゃみを機関銃のように連発した挙句、肺が馬鹿になって死ぬほどむせた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。……う。もういやぁ」
珍しく弱音を吐く。
身体はひどい熱を持っているのに、死にたくなるような悪寒。布団を鼻の上まで引き上げているのに震えが止まらない。身体中の関節という関節がおぞましいほど軋み、つばを飲む度に千本の針で突かれるような激痛を味わう。
「苦しいよぉ」
風邪だった。
性質の悪さでは八雲紫にも比肩する凶悪な夏風邪だ。昨晩からずっと吐き気と頭痛と眩暈と発熱に七転八倒しており、いい加減限界が近かった。なけなしの力を振り絞り、弱々しい声を張り上げる。
「だ、誰かー。おねがい助けてー。誰かいないのー。まりさー」
しーん。
いつもならうんざりするくらい人妖入り乱れてやかましい神社が、今日に限っては猫又の子一匹いなかった。おまえは狛犬ですかというくらいに入り浸っていた親友の霧雨魔理沙すら、今日は来ていないようだ。
「こほっ、けほっ」
無理して声を出したら咳が出た。枯れ草を擦るような嫌な咳だ。もしかしたら肺炎を患いかけているのかもしれない。
「……うぅ、ばかぁ。役立たず。どうして肝心なときにいてくれないのよぉ」
鼻の奥が熱くなった。心細かった。ずっと一人で暮らしてきた霊夢だが、本当に久しぶりに、孤独を感じた。
何というか、もうだめかもしれない。私はこのまま死ぬのだろうか。うつぶせになって枕に顔を埋めながら、漠然と思う。
死んだらどうなるのだろう。体調の悪さが霊夢を弱気にさせていた。その気もないのに死んだ後のことを考えてしまう。高熱で変なスイッチが入ったのかもしれなかった。
私が死んだら、お葬式ではみんな泣いてくれるかなぁ。
ぼんやりと夢想する。怒鳴り散らすレミリア。顔を伏せ、それを必死に押さえる咲夜。幽々子は目の焦点が合わない妖夢を無言で抱き寄せ、紫は顔すら出さない。
魔理沙はどうだろう? レミリアのように怒るのか。それとも言葉もなくうなだれるのか。
いや、違う。きっと魔理沙は普段と変わらないエプロンドレスで現れる。周りの静止も聞かず、棺の蓋をばーんっと開け、思いがけない笑顔で叫ぶのだ。
『霊夢、起きろ! 静かに寝てるのなんておまえには似合わないぜ!』
目の前が真っ白になるほど激しい頭痛が襲い、霊夢は歯を食いしばってそれに耐えた。小刻みな呼吸が自分のものではないみたい。額を枕にこすり付け、弱々しく布団に爪を立てる。
……それとも、邪魔者がいなくなってせいせいしたって言われちゃうかな。
絶望的なほど弱気になった霊夢は、暴れだす妄想を抑える術を持たない。全身に脂汗をかくほど悪化した体調がそれをますます加速させた。
そしたら急に悲しくなった。
霊夢は布団を噛み、うんうん唸りながら湿っぽく泣いた。
廊下を歩く落ち着いた感じの足音が聞こえたのはその時だ。ほどなくして襖が開き、肩に愛らしい人形を乗せた金髪の頭が覗いた。
「こんにちは、霊……、うっ」
形の良い眉をしかめる。久しぶりに神社を訪れたアリス・マーガトロイドが見たのは、力なく布団に横たわり、真っ赤な顔で湿っぽく枕を濡らす当代の博麗の巫女の姿だった。
そこにいつもの凛とした強さは欠片もなく、まずいところに来ちゃったなぁとアリスは早くも後悔した。
「……ちょっと、霊夢どうしたの?」
「あ、アリス……。ごめん、ごめんねアリス。私が死んでも元気でね。上海と仲良くやるのよ」
「は? 何よ意味分からない。どうしたの? どこか痛いの?」
「う、うぅ~」
霊夢は呻いた。それは普通の唸り方ではなくて、アリスは嫌な予感がした。そしてそれは当たった。
「気持ちわる……。と、トイレ」
「え、な、ちょ。報告しなくていいわよ。行ってきなさいよ」
「……立てない」
「はぁ!? わ、分かった! 連れてってあげるから少しだけ我慢しなさい!」
慌てて霊夢を抱き起こし、肩を貸して歩かせる。
「うぇ」
「わーコラふざけんな! もう少しだから我慢! 我慢しなさいって!」
「うぇぇ」
「ばかーーーーっ!」
「まったく……」
「うぅ、ごめん」
非常に際どいところで危機を脱した二人は、寝室に戻っていた。霊夢は布団に横たわり、アリスは疲れた顔で座布団に腰を落ち着けている。
アリスの後をちょこまか付いて歩いていた上海人形は、今は心配そうな仕草で霊夢の顔を覗きこみ、病人は布団の下からどうにか腕を伸ばして、そんな上海の頭を優しく撫でた。
「風邪ね」
「うん」
「ばかねぇ。あんなに腋を出して歩いてるからそういうことになるのよ」
「ほ、ほっといてよ」
「私だってほっときたかったわよ」
「う。ごめんね、ほんと」
「もういいわ。それより体調はどうなの? まだひどい?」
「ううん。吐いたら少しだけ落ち着いた」
「そ。薬は飲んだの?」
「飲んだ」
「ご飯は?」
「食べてない」
「それね。具合悪くても何かお腹に入れないと、風邪は治らないわ。乗りかかった船だし、何か作ってあげる。少し待ってなさい」
「え、いいよ。食べたくない」
「だめよ。不摂生がたたって紅魔館の紫もやしみたいになっちゃってもいいの? 嫌でしょ? ここは私の言うことを聞いておきなさい。お台所、借りるからね」
上海人形を引き連れて、土間に降りるアリス。霊夢はそれをため息混じりに見送る。無理に引きとめようとはしなかった。相変わらず食欲はなかったが、かすかに空腹を感じないでもなかったからだ。一度戻したのが良かったのかもしれない。
食器の触れ合う音。コトコトと煮込む音。それから柔らかな良い匂いがこっちまで届いた。ほどなくして、アリスはお盆を抱えて戻ってきた。
「お待たせ。簡単なお粥くらいしか作れなかったけど、文句は言わないでよ? 無理はしなくてもいいけど、少しはお腹に入れること」
「わ、ありがと」
畳の上に置いた土鍋の蓋を開けると、ふんわりと湯気が広がった。微かに香る鰹出汁の匂い。柔らかく煮込まれたお粥はほのかな黄色を帯びており、それが卵粥であることを教えてくれた。真ん中にちょこんと乗った梅干の色合いも良い。知らぬ間に喉がごくりと鳴る。茶碗によそうアリスの手元から目が離せない。
「起きられる?」
「んっ。何とか」
自分の力で上体を起こし、控えめに粥が盛られた茶碗を受け取る。空っぽの胃が、昨日の昼食以来何も食べてなかったことを唐突に思い出す。
霊夢はたどたどしく箸を操り、粥を口に運んだ。
目が丸くなる。
「あ、美味し……」
「そう。ありがと」
「こっちのお椀は?」
「お澄ましよ。薄味だから、今の霊夢でも飲めると思う」
アリスの言葉に偽りはない。優しい味付けの吸い物を啜り、霊夢は感極まって目を閉じた。
「はぁ~。アリスは、良いお嫁さんになれるわ……」
「ふふふ。生憎、それを作ったのは私じゃないの。上海よ。半自律型だから、私と糸が繋がっている限り、このくらいの芸当ができるようには仕込んであるの。
褒められたわよ。良かったわね、上海」
アリスの膝の上で、てれてれと頭をかく上海人形。
「そうなの? すごい! お嬢さんを私に下さい!」
「あんたみたいなのに、うちの上海はやれないわね」
お粥とおすましを綺麗に平らげた霊夢は再び横になった。アリスが手ぬぐいを濡らし、火照った額に乗せてくれる。その間、上海人形は汚れた食器を洗ったり、残った料理に新聞をかぶせ、ちゃぶ台の上に置いたりしていた。
小さな人形に羨望の眼差しを送る霊夢は、怖いお母さんに睨まれて目線を逸らした。
さっきより霊夢の顔色が幾分ましになったことを見届けると、アリスは上海を肩に乗せ、立ち上がった。
「さてと。私はもう行くわ。今日中に紅魔館の大図書館で調べ物をしてしまいたいから。あんたは、今日は寝ていなさい。調子に乗って起きだしたりしなければ、じきに良くなると思うわ」
「ん。そのつもり。色々ありがとう。手間かけさせてごめんね」
「いいわ。この貸しは、今後宴会にお呼ばれしたときにでも返してもらうから。とびっきりのお酒を用意しておきなさいよね」
「うん。覚えておくわ」
アリスは軽く微笑み、そして去っていった。肩に乗せていた上海人形が去り際まで手を振っていた。霊夢は横たわったまま小さく手を振り返し、それから目を閉じた。
少し眠ろうと思った。
お腹がふくれ、体調も少しだけ良くなった霊夢は、穏やかな気持ちで目を閉じていた。うつらうつらと眠りの境界線を彷徨う。静かだし、暖かい。爽やかな木々のざわめきが聞こえる。それが良い子守唄になっている。
しかしそんな平穏は、間もなく破られた。暖かかった陽気が急に冷たく翳り、あれ? と霊夢が片目を空けた瞬間、襖がばぁんっと乱暴に開いた。
「あたい参上!」
「帰れ」
「なんでよ!」
幻想郷で最も頭の不自由な生物が膨れっ面でそこにいた。氷精チルノ。霊夢はごろんと寝返りを打ち、目つきの悪い妖精の子供を視界の外へ追い出した。
体調の悪いとき、馬鹿ほど相手にしたくないものはない。布団の中でため息をつく。心なしか、また熱が上がってきたような気がする。
「さあ霊夢! 今日こそはそれとなくあんたに勝てそうな気がするわっ! あんたを倒して、このあたいが、再びさいきょうの座を手にするのよ! じゅんじょうに、勝負しろ!」
尋常に、だろ。
それにあんたが過去に一度でも最強だったことがあるのか。
「私、パス」
「はぇ?」
「見て分からないの? 具合が悪いのよ。風邪ひいたの。今の私に勝っても、最強は名乗れないわよ」
「かぜ? 何それ。知らない」
妖精は風邪をひかないのか。あ、違う。馬鹿だから……。
「ふっふっふっ。まあ、かぜでもはぜでもどっちでもいいわ。大事なのはあたいがあんたに勝つことよ。というわけで、覚悟ぉーー!」
「え、ちょ、ふざけんな!」
とっさに飛び起きて氷弾を回避した。
「むっ!」
チルノが追撃弾を放つ。螺旋を描いて次々に着弾するアイシクルアタック。霊夢は前方に身を投げ出す。転がりながら畳を叩き、反動と全身のバネで跳ね起き、障子を突き破って隣の部屋へ。チルノから距離をとる。
「ふぅ」
「おぉ、やるわね。さすがあたいのライバル!」
「ずうずうしい」
霊夢は上がった呼気を整えるのに必死だった。やはり厳しい。いつものように動けない。そしてチルノは腐っても妖怪レベルの最強妖精。頭は軽くても狙いは確かで、霊夢が辿った筋道には正確に弾痕である霜の花が咲いていた。
長くはもたない。決めるなら一瞬。霊夢は体勢を低く保ったまま、袖の中に指先を差し込む。
「今日は体調が最悪だから、悪いけど手加減はできないからね。お灸程度じゃ済まないかもしれないけど、こんな日に私を狙った自分を恨む、の……よ?」
あれ?
袖の中をいくら弄っても退魔符が見つからない。
「あ」
すぐに気が付く。これ寝巻きじゃん。護符や封魔針を仕込んである巫女服は、今はぞんざいに畳まれて箪笥の中だ。
「すきありー!」
子供は容赦も加減も知らない。チルノ渾身の弾幕は、密度はなかなか精度はイマイチで普段の霊夢ならどうということはなかったが、眩暈と発熱でぶれまくった視界では分が悪い。大きく迂回して回避――
「、あれ、れ?」
がくんと膝が落ちた。凄まじい動悸、悪寒。視界が真っ白に染まり、もう弾幕も見えない。
「うそ……」
震える両腕で頭を庇うことしかできなかった。うずくまった霊夢に、無数の氷弾が殺到する。
被弾。
冷気が炸裂し、誘爆し、霜と雪片を撒き散らす。衝撃に小柄な体躯が吹き飛び、畳の上をごろごろ転がり、壁にぶつかって止まった。
「あ、たった?」
本人が一番信じられないような顔で、チルノは呆然と呟いた。霊夢は起き上がらない。伏せったまま、ぴくりとも動かない。チルノは恐々と、そんな霊夢の様子を遠巻きに眺めた。
立ち上がってこないという確信を得るまで、呆れるくらいの時間が必要だった。
「勝った、の?」
ポツリと呟く。懸念が少しずつ解けていく。
「勝った? あたい勝った? 勝ったんだよね。……うん。勝った! 勝ったっ! 勝ったぁっ!!」
小さな拳を天に突き出し、チルノは炸裂した。
「やったぁーーー! やったやった! 勝ったあの霊夢に勝ったんだ! すごい! 最強! あたい、最っ強!!」
短い手足をぶんぶん振り回し、狂喜乱舞する。顔中を口にして笑い、氷柱の羽根から雪の結晶を撒き散らす。畳の上を転げ回り、襖に頭から突っ込んだ。
すぐに跳ね起き、ふんぞり返って霊夢を見下す。
「ふんだっ! 思い知った!? もうでかい顔させないんだから! あたいの方が強いんだから! あんたは今日からあたいの家来ね! あたいのことはチルノ様って呼びなさい! それから……」
霊夢は起き上がらない。ぴくりとも動かない。
「……霊夢?」
楽しい気持ちに水を差されたような気分になって、チルノは唇を尖らせて倒れた霊夢に近づいた。膝を付き、その肩をそっと揺する。
「熱っ!」
驚いて手を離す。人間の体温って、こんなに熱かったっけ。手を押さえながら、チルノはじぃっと、霊夢を見下ろす。
落ち着いて初めて気付く、霊夢の荒い吐息。小刻みに震える肌。何だか普通じゃなかった。チルノは少し怖くなった。もう楽しくなかった。
「れ、霊夢?」
怒られたような表情で、チルノは倒れた巫女の名前を呼ぶ。返事はない。今頃になって、霊夢の口から『具合が悪い』 というような言葉を聞いていたことを思い出した。
うっふっふっふ、く~ろ~ま~く~。
「いやぁっ、堪忍してぇ!」
恐ろしくふとましいレティ・ホワイトロックに押し潰される悪夢を見て、霊夢は飛び起きた。布団を跳ね飛ばし、上半身を起こす。はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。呼吸が自分のものではないみたい。耳鳴りがひどい。しかしひとまず、夢が現実でなかったことに安堵する。
「あれ?」
あごまで滴った脂汗を拭いながら、霊夢は周囲を見渡した。記憶が曖昧だ。馬鹿に襲われて不覚にも被弾したところまでは覚えている。なのにどうして、自分は布団に寝ているのだろう。
小首をかしげた拍子に、額に張り付いていた手ぬぐいがぼろりと落ちた。
「ん?」
手ぬぐいはかちんこちんに凍っていた。不思議なものを見るような顔で、凍った手ぬぐいをつまみ上げ、まじまじと眺める。
「はぁ~、あの馬鹿」
大きなため息。知らず知らずのうちに漏れる苦笑。霊夢の枕元には一枚の紙切れが無造作に置かれ、そこにはみみずがのたくったような文字でこうあった。
『ごめんぬ』
誰の手によるものかは言うまでもない。
「ま、報復は3夢想封印くらいで勘弁してやるかな……」
枯れ果てた声で呟き、再びごろりと横になる。布団を鼻の上まで引き上げ、額に心地よい冷たさの手ぬぐいを置きなおした。
こほっ、こほっ。布団の中で咳をする。体調はいまだ最悪だった。目を閉じると、眠りはすぐに訪れた。
白。
一面の白。
輝く白。
上下左右に色はなく、音もなく、距離や時間も存在せず、ただ幼い少女がひとり。
光の草原を少女は歩いていく。軽い足取り。柔らかくそよぐ黒髪。迷いも不安も恐れもなく、ただ歩いていく。
やがて少女は成長し、黒髪をリボンでまとめる。紅白の特徴的な巫女服をまとう。ふんわりと重力の束縛から逃れ、靴底が地面を離れる。自由に、あくまで自由に空を飛ぶ。
ふいに、空が真っ赤に翳る。真紅の霧を撒き散らす強大な闇が激しく乱舞する。少女は躊躇なくそこに飛び込み、際限なく放たれる力の波動を踊るようにかわす。闇と踊るダンス。激しくも典雅な舞踏の果てに、少女は紅い闇を突き抜ける。
ぱぁっと、桜の花びらが散る。霞むように優美な桜の雨。桜の海。それを切り裂いて殺到する華やかな蝶の群れ。少女も紅白の蝶となり、くるくると舞いながらそれでも前に進む。
一際強い風が吹き、桜の花びらは漆黒の虚空に溶けて消える。そのとき天に座したのは真円の月。輝く月。その煌きを映し込んだ七色の光条が奔り、空間を虹色の飛沫で満たす。少女は残像すら閃かせ、天の月の、そのさらに上へ。
空間に四季の花が咲き乱れ、紫色の闇が弾ける。峻厳な光の粒が舞い散り、溢れ、螺旋を描いて少女に迫る。渦巻く閃光を掻い潜り、四季折々の花を散らし、少女は無明の果てへと飛翔する。
焦げ色の湖。黄昏色の向かい風。巨大な注連縄が縦横無尽に天を閉ざし、そこから飛来する数限りない光の柱。空間を埋め尽くした輝きの中から、長い長い影を先行させた少女が飛び出してくる。光柱を羽毛のように軽やかに避け、一目散に昇る。どこまでも昇る。
ふいに、少女は放り出される。それはいつか見た白い空間。無の世界。構わず、少女は前を向く。弾が掠めた肌からは血が流れ、痣や打ち身も少なくなかった。それでも少女は飛び続ける。
飛ぶために生まれてきた少女。ずっと闘い続けてきた少女。そんな彼女にだって、立ち止まって休む時間くらいあってもいいはずだ。
少女の身体が縮む。瑞々しく伸びた手足が丸みを帯び、ほっそりとしたあごはあどけない柔らかさを取り戻す。巫女服が消え、リボンも解け、幼い乳飲み子となった少女は不安そうに泣きながら、白い空間を漂う。
そんな少女を、暖かい両手が優しく抱き寄せる。懐かしくて、愛おしくて、瞑った少女の目の端から、一筋の涙が零れ落ちた。
そっと抱き起こされ、陶器の器を口元に当てられた。中身の液体は苦くて、むずかるように首を振った霊夢だったが、すぐに観念してそれを飲み下す。閉ざされた目元から溢れた涙を優しい指先に拭ってもらうと、それだけでひどく安心した気持ちになる。
「おかあさん……」
夢うつつのまま、掠れた声で懐かしい名前を呼んだ。頬に触れた暖かい手に縋る。あやすように頭を撫でてもらうと、霊夢は安心しきった表情で規則正しい寝息を立てた。優しい体温に包まれて、夢の世界に戻っていった。
「んぁ……?」
何の前触れもなく、霊夢は覚醒した。胸元まで涎が垂れている。大口を開けて爆睡していたせいだ。女の子として激しく致命的なので、慌てて袖口でごしごし拭い取った。
「よぉ、起きたか」
振り返る。チルノがぶっ壊した襖の戸口から、熟れすぎた杏のような西日が斜めに差込んでいる。その前に誰かがいる。
戸口の縁に背中を預け、片膝を抱えたシルエット。
眩しい。目を細める。
「……魔理沙?」
「そう、魔理沙さんだぜ」
勢いを付けて立ち上がる。お馴染みのエプロンスドレスが西風を受けて広がる。輪郭を琥珀色に輝かせ、黒い大きな帽子を風から守りながら、霧雨魔理沙はにぃっと子猫のように笑った。
「お前のお母さんではないぜ」
「んなっ!」
絶句する。熱に浮かされて懐かしい夢を見たのは覚えている。その中で夢うつつが混濁し、何かとんでもなく恥ずかしいことを口走ってしまったような気がしていたが、まさか現実だったとは。
「ああああんた、いつからいたの!?」
「んー、しばらく前だぜ。昼過ぎくらいかな。アリスに、おまえが風邪で死に掛けてるって聞いて、飛んできたんだ。ちなみにおまえに飲ませたのは、霧雨印の魔女の妙薬だ。蓬莱の薬ほどじゃないにしろ万病に効く。もうだいぶ具合も良いだろ?」
「む……」
そう言われれば。あれほどあった頭痛や眩暈が消えている。喉はまだ少し痛むし微熱もあるようだが、快復に向かっているのは明らかだった。
「あ、ありがと」
「ちなみに、寝汗でびしょびしょになった寝巻きを替えてやったのも私だ。霊夢、おまえ、結構着痩せするタイプなんだな」
「ぎゃああっ! 真顔で言うな! 忘れろ! 今すぐ忘れろっ!」
「馬鹿言うな。私は楽園を見たんだ。思い出は墓の下まで持っていくぜ」
がははと腰に手を当てて笑う魔理沙。苦虫を噛み潰したような顔の霊夢。そこはかとなくいつも通りの日常がそこにあった。
「……なぁ霊夢」
ひとしきり笑った後、魔理沙はにこにこ微笑みながら、だけど少し真面目な瞳で霊夢を見た。
「なによ」
「ん。……そりゃあさ、私はおまえのお母さんにはなれないよ? でも、私たちは友達だろ。おまえに比べたら、私は頼りない奴だが、それでもやれることだってあるんだ。だから、」
魔理沙の顔が赤いのは、何も夕日のせいだけではあるまい。霊夢は軽く目を細め、心地よさそうに親友の声を聞いていた。
「――だから、もっと頼ってくれてもいいんだぜ? 助けてって言ってくれれば、できる限りのことはしてやる。出来ることが何もなくても、話くらいなら聞ける。つまりさ、私が言いたいのは、何もかも一人で抱え込むなってことだよ。博麗の巫女の宿命だか何だか知らないが、そんなに重たい荷物なら、私にも少し背負わせてみろよ」
霊夢はあははと笑い、それから柔らかく目を閉じた。
「あら、頼ろうとしたわよ、今日だって。すっごく苦しくて助けを呼んだのに、誰も来てくれないんだもん。あんななんか普段頼みもしないのにうちに入り浸っているくせに、こんなときに限っていないだなんて。この役立たず!」
「そ、そういうことじゃないぜ……」
「分かってるわ」
詠うように、霊夢はささやく。
「ありがとう、魔理沙」
「お、おう」
何だか照れくさくなってしまって、魔理沙はそれ以上何も言えない。黙って向かい合う。やがて賑やかな色彩だった夕日が翳ると、霊夢はあごが外れるような大きな欠伸をして魔理沙を呆れさせた。
「おまえ、仮にも女の子なんだからそんな欠伸はするもんじゃないぜ」
「お黙り。あふ、まだ少し寝足りないわ」
「寝ろよ。風邪のときは寝るのが一番だ。そんで起きたら、きっともう風邪なんか治ってるぜ」
「ふふ、そうね。悪いけど、寝かせてもらおうかしら」
「おう。う、ふあぁ……。うーん、実は私も連日徹夜の実験で、睡眠不足なんだ。眠たくなってきたぜ。霊夢、今日泊まっていってもいいか?」
「いいけど、風邪伝染るかもしれないわよ」
「そんなヤワな鍛え方はしてないぜ」
無駄口を叩きながら、もう魔理沙は押入れを開け、自分のための布団の準備を始めている。だがその手がはたと止まる。意地悪な顔で笑い、霊夢の方に振り返る。
「霊夢、添い寝をしてやろうか」
「は? いらないわよ。何言ってんの?」
「いや、今夜くらいおまえのお母さんになってやるのも悪くないかなぁって」
「ぐ。そのこと、他の誰かにバラしたら、酷いんだからね。絶対に許さないんだから」
「あははは。おまえの弱みを掴むというのは気持ちいいな。今年いっぱいはこのネタで引っ張るぜ。可愛い霊夢にご褒美だ。今夜は手を握って眠ってやろう」
「いらないわよ!」
賑やかに笑い、騒ぐ。やがて夜も更け、静かになる。
夏の星座が照らし出す博麗神社の寝室を、そっと覗いてみよう。
隣り合う布団に横たわった二人の少女が、固く手を繋いで眠っている。
「っ、うく……」
火照った肌。乱れた寝巻き。艶やかな黒髪を汗で湿らせ、博麗霊夢は唇を噛む。
「……あ、はぁ、ぁ」
熱い吐息。床の間に敷かれた布団の上で、しなやかな身体をくねらせる。潤んだ瞳。たわんだ眉。何かを求めるように伸ばされた指先。
「は……ん。ぁ……」
異常なまでに荒い呼吸を抑えるように、口元を手で覆う。我慢できない。そう察した霊夢は幼い子供のように身体を丸め、ぎゅっと目を瞑る。
もうだめっ
「……ぁ。ばふぁっくっしょん! いひっしょん! ぶぇぇっしょん! ぶぇ……ごはげほぐへほはえぇほっ!」
ものすごいくしゃみを機関銃のように連発した挙句、肺が馬鹿になって死ぬほどむせた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。……う。もういやぁ」
珍しく弱音を吐く。
身体はひどい熱を持っているのに、死にたくなるような悪寒。布団を鼻の上まで引き上げているのに震えが止まらない。身体中の関節という関節がおぞましいほど軋み、つばを飲む度に千本の針で突かれるような激痛を味わう。
「苦しいよぉ」
風邪だった。
性質の悪さでは八雲紫にも比肩する凶悪な夏風邪だ。昨晩からずっと吐き気と頭痛と眩暈と発熱に七転八倒しており、いい加減限界が近かった。なけなしの力を振り絞り、弱々しい声を張り上げる。
「だ、誰かー。おねがい助けてー。誰かいないのー。まりさー」
しーん。
いつもならうんざりするくらい人妖入り乱れてやかましい神社が、今日に限っては猫又の子一匹いなかった。おまえは狛犬ですかというくらいに入り浸っていた親友の霧雨魔理沙すら、今日は来ていないようだ。
「こほっ、けほっ」
無理して声を出したら咳が出た。枯れ草を擦るような嫌な咳だ。もしかしたら肺炎を患いかけているのかもしれない。
「……うぅ、ばかぁ。役立たず。どうして肝心なときにいてくれないのよぉ」
鼻の奥が熱くなった。心細かった。ずっと一人で暮らしてきた霊夢だが、本当に久しぶりに、孤独を感じた。
何というか、もうだめかもしれない。私はこのまま死ぬのだろうか。うつぶせになって枕に顔を埋めながら、漠然と思う。
死んだらどうなるのだろう。体調の悪さが霊夢を弱気にさせていた。その気もないのに死んだ後のことを考えてしまう。高熱で変なスイッチが入ったのかもしれなかった。
私が死んだら、お葬式ではみんな泣いてくれるかなぁ。
ぼんやりと夢想する。怒鳴り散らすレミリア。顔を伏せ、それを必死に押さえる咲夜。幽々子は目の焦点が合わない妖夢を無言で抱き寄せ、紫は顔すら出さない。
魔理沙はどうだろう? レミリアのように怒るのか。それとも言葉もなくうなだれるのか。
いや、違う。きっと魔理沙は普段と変わらないエプロンドレスで現れる。周りの静止も聞かず、棺の蓋をばーんっと開け、思いがけない笑顔で叫ぶのだ。
『霊夢、起きろ! 静かに寝てるのなんておまえには似合わないぜ!』
目の前が真っ白になるほど激しい頭痛が襲い、霊夢は歯を食いしばってそれに耐えた。小刻みな呼吸が自分のものではないみたい。額を枕にこすり付け、弱々しく布団に爪を立てる。
……それとも、邪魔者がいなくなってせいせいしたって言われちゃうかな。
絶望的なほど弱気になった霊夢は、暴れだす妄想を抑える術を持たない。全身に脂汗をかくほど悪化した体調がそれをますます加速させた。
そしたら急に悲しくなった。
霊夢は布団を噛み、うんうん唸りながら湿っぽく泣いた。
廊下を歩く落ち着いた感じの足音が聞こえたのはその時だ。ほどなくして襖が開き、肩に愛らしい人形を乗せた金髪の頭が覗いた。
「こんにちは、霊……、うっ」
形の良い眉をしかめる。久しぶりに神社を訪れたアリス・マーガトロイドが見たのは、力なく布団に横たわり、真っ赤な顔で湿っぽく枕を濡らす当代の博麗の巫女の姿だった。
そこにいつもの凛とした強さは欠片もなく、まずいところに来ちゃったなぁとアリスは早くも後悔した。
「……ちょっと、霊夢どうしたの?」
「あ、アリス……。ごめん、ごめんねアリス。私が死んでも元気でね。上海と仲良くやるのよ」
「は? 何よ意味分からない。どうしたの? どこか痛いの?」
「う、うぅ~」
霊夢は呻いた。それは普通の唸り方ではなくて、アリスは嫌な予感がした。そしてそれは当たった。
「気持ちわる……。と、トイレ」
「え、な、ちょ。報告しなくていいわよ。行ってきなさいよ」
「……立てない」
「はぁ!? わ、分かった! 連れてってあげるから少しだけ我慢しなさい!」
慌てて霊夢を抱き起こし、肩を貸して歩かせる。
「うぇ」
「わーコラふざけんな! もう少しだから我慢! 我慢しなさいって!」
「うぇぇ」
「ばかーーーーっ!」
「まったく……」
「うぅ、ごめん」
非常に際どいところで危機を脱した二人は、寝室に戻っていた。霊夢は布団に横たわり、アリスは疲れた顔で座布団に腰を落ち着けている。
アリスの後をちょこまか付いて歩いていた上海人形は、今は心配そうな仕草で霊夢の顔を覗きこみ、病人は布団の下からどうにか腕を伸ばして、そんな上海の頭を優しく撫でた。
「風邪ね」
「うん」
「ばかねぇ。あんなに腋を出して歩いてるからそういうことになるのよ」
「ほ、ほっといてよ」
「私だってほっときたかったわよ」
「う。ごめんね、ほんと」
「もういいわ。それより体調はどうなの? まだひどい?」
「ううん。吐いたら少しだけ落ち着いた」
「そ。薬は飲んだの?」
「飲んだ」
「ご飯は?」
「食べてない」
「それね。具合悪くても何かお腹に入れないと、風邪は治らないわ。乗りかかった船だし、何か作ってあげる。少し待ってなさい」
「え、いいよ。食べたくない」
「だめよ。不摂生がたたって紅魔館の紫もやしみたいになっちゃってもいいの? 嫌でしょ? ここは私の言うことを聞いておきなさい。お台所、借りるからね」
上海人形を引き連れて、土間に降りるアリス。霊夢はそれをため息混じりに見送る。無理に引きとめようとはしなかった。相変わらず食欲はなかったが、かすかに空腹を感じないでもなかったからだ。一度戻したのが良かったのかもしれない。
食器の触れ合う音。コトコトと煮込む音。それから柔らかな良い匂いがこっちまで届いた。ほどなくして、アリスはお盆を抱えて戻ってきた。
「お待たせ。簡単なお粥くらいしか作れなかったけど、文句は言わないでよ? 無理はしなくてもいいけど、少しはお腹に入れること」
「わ、ありがと」
畳の上に置いた土鍋の蓋を開けると、ふんわりと湯気が広がった。微かに香る鰹出汁の匂い。柔らかく煮込まれたお粥はほのかな黄色を帯びており、それが卵粥であることを教えてくれた。真ん中にちょこんと乗った梅干の色合いも良い。知らぬ間に喉がごくりと鳴る。茶碗によそうアリスの手元から目が離せない。
「起きられる?」
「んっ。何とか」
自分の力で上体を起こし、控えめに粥が盛られた茶碗を受け取る。空っぽの胃が、昨日の昼食以来何も食べてなかったことを唐突に思い出す。
霊夢はたどたどしく箸を操り、粥を口に運んだ。
目が丸くなる。
「あ、美味し……」
「そう。ありがと」
「こっちのお椀は?」
「お澄ましよ。薄味だから、今の霊夢でも飲めると思う」
アリスの言葉に偽りはない。優しい味付けの吸い物を啜り、霊夢は感極まって目を閉じた。
「はぁ~。アリスは、良いお嫁さんになれるわ……」
「ふふふ。生憎、それを作ったのは私じゃないの。上海よ。半自律型だから、私と糸が繋がっている限り、このくらいの芸当ができるようには仕込んであるの。
褒められたわよ。良かったわね、上海」
アリスの膝の上で、てれてれと頭をかく上海人形。
「そうなの? すごい! お嬢さんを私に下さい!」
「あんたみたいなのに、うちの上海はやれないわね」
お粥とおすましを綺麗に平らげた霊夢は再び横になった。アリスが手ぬぐいを濡らし、火照った額に乗せてくれる。その間、上海人形は汚れた食器を洗ったり、残った料理に新聞をかぶせ、ちゃぶ台の上に置いたりしていた。
小さな人形に羨望の眼差しを送る霊夢は、怖いお母さんに睨まれて目線を逸らした。
さっきより霊夢の顔色が幾分ましになったことを見届けると、アリスは上海を肩に乗せ、立ち上がった。
「さてと。私はもう行くわ。今日中に紅魔館の大図書館で調べ物をしてしまいたいから。あんたは、今日は寝ていなさい。調子に乗って起きだしたりしなければ、じきに良くなると思うわ」
「ん。そのつもり。色々ありがとう。手間かけさせてごめんね」
「いいわ。この貸しは、今後宴会にお呼ばれしたときにでも返してもらうから。とびっきりのお酒を用意しておきなさいよね」
「うん。覚えておくわ」
アリスは軽く微笑み、そして去っていった。肩に乗せていた上海人形が去り際まで手を振っていた。霊夢は横たわったまま小さく手を振り返し、それから目を閉じた。
少し眠ろうと思った。
お腹がふくれ、体調も少しだけ良くなった霊夢は、穏やかな気持ちで目を閉じていた。うつらうつらと眠りの境界線を彷徨う。静かだし、暖かい。爽やかな木々のざわめきが聞こえる。それが良い子守唄になっている。
しかしそんな平穏は、間もなく破られた。暖かかった陽気が急に冷たく翳り、あれ? と霊夢が片目を空けた瞬間、襖がばぁんっと乱暴に開いた。
「あたい参上!」
「帰れ」
「なんでよ!」
幻想郷で最も頭の不自由な生物が膨れっ面でそこにいた。氷精チルノ。霊夢はごろんと寝返りを打ち、目つきの悪い妖精の子供を視界の外へ追い出した。
体調の悪いとき、馬鹿ほど相手にしたくないものはない。布団の中でため息をつく。心なしか、また熱が上がってきたような気がする。
「さあ霊夢! 今日こそはそれとなくあんたに勝てそうな気がするわっ! あんたを倒して、このあたいが、再びさいきょうの座を手にするのよ! じゅんじょうに、勝負しろ!」
尋常に、だろ。
それにあんたが過去に一度でも最強だったことがあるのか。
「私、パス」
「はぇ?」
「見て分からないの? 具合が悪いのよ。風邪ひいたの。今の私に勝っても、最強は名乗れないわよ」
「かぜ? 何それ。知らない」
妖精は風邪をひかないのか。あ、違う。馬鹿だから……。
「ふっふっふっ。まあ、かぜでもはぜでもどっちでもいいわ。大事なのはあたいがあんたに勝つことよ。というわけで、覚悟ぉーー!」
「え、ちょ、ふざけんな!」
とっさに飛び起きて氷弾を回避した。
「むっ!」
チルノが追撃弾を放つ。螺旋を描いて次々に着弾するアイシクルアタック。霊夢は前方に身を投げ出す。転がりながら畳を叩き、反動と全身のバネで跳ね起き、障子を突き破って隣の部屋へ。チルノから距離をとる。
「ふぅ」
「おぉ、やるわね。さすがあたいのライバル!」
「ずうずうしい」
霊夢は上がった呼気を整えるのに必死だった。やはり厳しい。いつものように動けない。そしてチルノは腐っても妖怪レベルの最強妖精。頭は軽くても狙いは確かで、霊夢が辿った筋道には正確に弾痕である霜の花が咲いていた。
長くはもたない。決めるなら一瞬。霊夢は体勢を低く保ったまま、袖の中に指先を差し込む。
「今日は体調が最悪だから、悪いけど手加減はできないからね。お灸程度じゃ済まないかもしれないけど、こんな日に私を狙った自分を恨む、の……よ?」
あれ?
袖の中をいくら弄っても退魔符が見つからない。
「あ」
すぐに気が付く。これ寝巻きじゃん。護符や封魔針を仕込んである巫女服は、今はぞんざいに畳まれて箪笥の中だ。
「すきありー!」
子供は容赦も加減も知らない。チルノ渾身の弾幕は、密度はなかなか精度はイマイチで普段の霊夢ならどうということはなかったが、眩暈と発熱でぶれまくった視界では分が悪い。大きく迂回して回避――
「、あれ、れ?」
がくんと膝が落ちた。凄まじい動悸、悪寒。視界が真っ白に染まり、もう弾幕も見えない。
「うそ……」
震える両腕で頭を庇うことしかできなかった。うずくまった霊夢に、無数の氷弾が殺到する。
被弾。
冷気が炸裂し、誘爆し、霜と雪片を撒き散らす。衝撃に小柄な体躯が吹き飛び、畳の上をごろごろ転がり、壁にぶつかって止まった。
「あ、たった?」
本人が一番信じられないような顔で、チルノは呆然と呟いた。霊夢は起き上がらない。伏せったまま、ぴくりとも動かない。チルノは恐々と、そんな霊夢の様子を遠巻きに眺めた。
立ち上がってこないという確信を得るまで、呆れるくらいの時間が必要だった。
「勝った、の?」
ポツリと呟く。懸念が少しずつ解けていく。
「勝った? あたい勝った? 勝ったんだよね。……うん。勝った! 勝ったっ! 勝ったぁっ!!」
小さな拳を天に突き出し、チルノは炸裂した。
「やったぁーーー! やったやった! 勝ったあの霊夢に勝ったんだ! すごい! 最強! あたい、最っ強!!」
短い手足をぶんぶん振り回し、狂喜乱舞する。顔中を口にして笑い、氷柱の羽根から雪の結晶を撒き散らす。畳の上を転げ回り、襖に頭から突っ込んだ。
すぐに跳ね起き、ふんぞり返って霊夢を見下す。
「ふんだっ! 思い知った!? もうでかい顔させないんだから! あたいの方が強いんだから! あんたは今日からあたいの家来ね! あたいのことはチルノ様って呼びなさい! それから……」
霊夢は起き上がらない。ぴくりとも動かない。
「……霊夢?」
楽しい気持ちに水を差されたような気分になって、チルノは唇を尖らせて倒れた霊夢に近づいた。膝を付き、その肩をそっと揺する。
「熱っ!」
驚いて手を離す。人間の体温って、こんなに熱かったっけ。手を押さえながら、チルノはじぃっと、霊夢を見下ろす。
落ち着いて初めて気付く、霊夢の荒い吐息。小刻みに震える肌。何だか普通じゃなかった。チルノは少し怖くなった。もう楽しくなかった。
「れ、霊夢?」
怒られたような表情で、チルノは倒れた巫女の名前を呼ぶ。返事はない。今頃になって、霊夢の口から『具合が悪い』 というような言葉を聞いていたことを思い出した。
うっふっふっふ、く~ろ~ま~く~。
「いやぁっ、堪忍してぇ!」
恐ろしくふとましいレティ・ホワイトロックに押し潰される悪夢を見て、霊夢は飛び起きた。布団を跳ね飛ばし、上半身を起こす。はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。呼吸が自分のものではないみたい。耳鳴りがひどい。しかしひとまず、夢が現実でなかったことに安堵する。
「あれ?」
あごまで滴った脂汗を拭いながら、霊夢は周囲を見渡した。記憶が曖昧だ。馬鹿に襲われて不覚にも被弾したところまでは覚えている。なのにどうして、自分は布団に寝ているのだろう。
小首をかしげた拍子に、額に張り付いていた手ぬぐいがぼろりと落ちた。
「ん?」
手ぬぐいはかちんこちんに凍っていた。不思議なものを見るような顔で、凍った手ぬぐいをつまみ上げ、まじまじと眺める。
「はぁ~、あの馬鹿」
大きなため息。知らず知らずのうちに漏れる苦笑。霊夢の枕元には一枚の紙切れが無造作に置かれ、そこにはみみずがのたくったような文字でこうあった。
『ごめんぬ』
誰の手によるものかは言うまでもない。
「ま、報復は3夢想封印くらいで勘弁してやるかな……」
枯れ果てた声で呟き、再びごろりと横になる。布団を鼻の上まで引き上げ、額に心地よい冷たさの手ぬぐいを置きなおした。
こほっ、こほっ。布団の中で咳をする。体調はいまだ最悪だった。目を閉じると、眠りはすぐに訪れた。
白。
一面の白。
輝く白。
上下左右に色はなく、音もなく、距離や時間も存在せず、ただ幼い少女がひとり。
光の草原を少女は歩いていく。軽い足取り。柔らかくそよぐ黒髪。迷いも不安も恐れもなく、ただ歩いていく。
やがて少女は成長し、黒髪をリボンでまとめる。紅白の特徴的な巫女服をまとう。ふんわりと重力の束縛から逃れ、靴底が地面を離れる。自由に、あくまで自由に空を飛ぶ。
ふいに、空が真っ赤に翳る。真紅の霧を撒き散らす強大な闇が激しく乱舞する。少女は躊躇なくそこに飛び込み、際限なく放たれる力の波動を踊るようにかわす。闇と踊るダンス。激しくも典雅な舞踏の果てに、少女は紅い闇を突き抜ける。
ぱぁっと、桜の花びらが散る。霞むように優美な桜の雨。桜の海。それを切り裂いて殺到する華やかな蝶の群れ。少女も紅白の蝶となり、くるくると舞いながらそれでも前に進む。
一際強い風が吹き、桜の花びらは漆黒の虚空に溶けて消える。そのとき天に座したのは真円の月。輝く月。その煌きを映し込んだ七色の光条が奔り、空間を虹色の飛沫で満たす。少女は残像すら閃かせ、天の月の、そのさらに上へ。
空間に四季の花が咲き乱れ、紫色の闇が弾ける。峻厳な光の粒が舞い散り、溢れ、螺旋を描いて少女に迫る。渦巻く閃光を掻い潜り、四季折々の花を散らし、少女は無明の果てへと飛翔する。
焦げ色の湖。黄昏色の向かい風。巨大な注連縄が縦横無尽に天を閉ざし、そこから飛来する数限りない光の柱。空間を埋め尽くした輝きの中から、長い長い影を先行させた少女が飛び出してくる。光柱を羽毛のように軽やかに避け、一目散に昇る。どこまでも昇る。
ふいに、少女は放り出される。それはいつか見た白い空間。無の世界。構わず、少女は前を向く。弾が掠めた肌からは血が流れ、痣や打ち身も少なくなかった。それでも少女は飛び続ける。
飛ぶために生まれてきた少女。ずっと闘い続けてきた少女。そんな彼女にだって、立ち止まって休む時間くらいあってもいいはずだ。
少女の身体が縮む。瑞々しく伸びた手足が丸みを帯び、ほっそりとしたあごはあどけない柔らかさを取り戻す。巫女服が消え、リボンも解け、幼い乳飲み子となった少女は不安そうに泣きながら、白い空間を漂う。
そんな少女を、暖かい両手が優しく抱き寄せる。懐かしくて、愛おしくて、瞑った少女の目の端から、一筋の涙が零れ落ちた。
そっと抱き起こされ、陶器の器を口元に当てられた。中身の液体は苦くて、むずかるように首を振った霊夢だったが、すぐに観念してそれを飲み下す。閉ざされた目元から溢れた涙を優しい指先に拭ってもらうと、それだけでひどく安心した気持ちになる。
「おかあさん……」
夢うつつのまま、掠れた声で懐かしい名前を呼んだ。頬に触れた暖かい手に縋る。あやすように頭を撫でてもらうと、霊夢は安心しきった表情で規則正しい寝息を立てた。優しい体温に包まれて、夢の世界に戻っていった。
「んぁ……?」
何の前触れもなく、霊夢は覚醒した。胸元まで涎が垂れている。大口を開けて爆睡していたせいだ。女の子として激しく致命的なので、慌てて袖口でごしごし拭い取った。
「よぉ、起きたか」
振り返る。チルノがぶっ壊した襖の戸口から、熟れすぎた杏のような西日が斜めに差込んでいる。その前に誰かがいる。
戸口の縁に背中を預け、片膝を抱えたシルエット。
眩しい。目を細める。
「……魔理沙?」
「そう、魔理沙さんだぜ」
勢いを付けて立ち上がる。お馴染みのエプロンスドレスが西風を受けて広がる。輪郭を琥珀色に輝かせ、黒い大きな帽子を風から守りながら、霧雨魔理沙はにぃっと子猫のように笑った。
「お前のお母さんではないぜ」
「んなっ!」
絶句する。熱に浮かされて懐かしい夢を見たのは覚えている。その中で夢うつつが混濁し、何かとんでもなく恥ずかしいことを口走ってしまったような気がしていたが、まさか現実だったとは。
「ああああんた、いつからいたの!?」
「んー、しばらく前だぜ。昼過ぎくらいかな。アリスに、おまえが風邪で死に掛けてるって聞いて、飛んできたんだ。ちなみにおまえに飲ませたのは、霧雨印の魔女の妙薬だ。蓬莱の薬ほどじゃないにしろ万病に効く。もうだいぶ具合も良いだろ?」
「む……」
そう言われれば。あれほどあった頭痛や眩暈が消えている。喉はまだ少し痛むし微熱もあるようだが、快復に向かっているのは明らかだった。
「あ、ありがと」
「ちなみに、寝汗でびしょびしょになった寝巻きを替えてやったのも私だ。霊夢、おまえ、結構着痩せするタイプなんだな」
「ぎゃああっ! 真顔で言うな! 忘れろ! 今すぐ忘れろっ!」
「馬鹿言うな。私は楽園を見たんだ。思い出は墓の下まで持っていくぜ」
がははと腰に手を当てて笑う魔理沙。苦虫を噛み潰したような顔の霊夢。そこはかとなくいつも通りの日常がそこにあった。
「……なぁ霊夢」
ひとしきり笑った後、魔理沙はにこにこ微笑みながら、だけど少し真面目な瞳で霊夢を見た。
「なによ」
「ん。……そりゃあさ、私はおまえのお母さんにはなれないよ? でも、私たちは友達だろ。おまえに比べたら、私は頼りない奴だが、それでもやれることだってあるんだ。だから、」
魔理沙の顔が赤いのは、何も夕日のせいだけではあるまい。霊夢は軽く目を細め、心地よさそうに親友の声を聞いていた。
「――だから、もっと頼ってくれてもいいんだぜ? 助けてって言ってくれれば、できる限りのことはしてやる。出来ることが何もなくても、話くらいなら聞ける。つまりさ、私が言いたいのは、何もかも一人で抱え込むなってことだよ。博麗の巫女の宿命だか何だか知らないが、そんなに重たい荷物なら、私にも少し背負わせてみろよ」
霊夢はあははと笑い、それから柔らかく目を閉じた。
「あら、頼ろうとしたわよ、今日だって。すっごく苦しくて助けを呼んだのに、誰も来てくれないんだもん。あんななんか普段頼みもしないのにうちに入り浸っているくせに、こんなときに限っていないだなんて。この役立たず!」
「そ、そういうことじゃないぜ……」
「分かってるわ」
詠うように、霊夢はささやく。
「ありがとう、魔理沙」
「お、おう」
何だか照れくさくなってしまって、魔理沙はそれ以上何も言えない。黙って向かい合う。やがて賑やかな色彩だった夕日が翳ると、霊夢はあごが外れるような大きな欠伸をして魔理沙を呆れさせた。
「おまえ、仮にも女の子なんだからそんな欠伸はするもんじゃないぜ」
「お黙り。あふ、まだ少し寝足りないわ」
「寝ろよ。風邪のときは寝るのが一番だ。そんで起きたら、きっともう風邪なんか治ってるぜ」
「ふふ、そうね。悪いけど、寝かせてもらおうかしら」
「おう。う、ふあぁ……。うーん、実は私も連日徹夜の実験で、睡眠不足なんだ。眠たくなってきたぜ。霊夢、今日泊まっていってもいいか?」
「いいけど、風邪伝染るかもしれないわよ」
「そんなヤワな鍛え方はしてないぜ」
無駄口を叩きながら、もう魔理沙は押入れを開け、自分のための布団の準備を始めている。だがその手がはたと止まる。意地悪な顔で笑い、霊夢の方に振り返る。
「霊夢、添い寝をしてやろうか」
「は? いらないわよ。何言ってんの?」
「いや、今夜くらいおまえのお母さんになってやるのも悪くないかなぁって」
「ぐ。そのこと、他の誰かにバラしたら、酷いんだからね。絶対に許さないんだから」
「あははは。おまえの弱みを掴むというのは気持ちいいな。今年いっぱいはこのネタで引っ張るぜ。可愛い霊夢にご褒美だ。今夜は手を握って眠ってやろう」
「いらないわよ!」
賑やかに笑い、騒ぐ。やがて夜も更け、静かになる。
夏の星座が照らし出す博麗神社の寝室を、そっと覗いてみよう。
隣り合う布団に横たわった二人の少女が、固く手を繋いで眠っている。
ごめんぬで吹いたw
解る、解るぜ!!
作品のなかでも十分感じられたことですが、男女関係無く風邪を引いたときは気弱になりがち。
だから人として、そういう状態にある知り合い(友達とか)を見ると特別な感情が芽生えるのは至極自然なことかと。
そういえば霊夢が吐いたとき、アリスの肩にいる上海にかかったとおもった。
上海ごめんw
魔理沙は魔理沙でなかなかいい役得で。
あ、関係ないけどチルノの登場で思ったのは、久しぶりに紅魔郷してて再確認したことがあった。
アイシクルフォールは苦手なままでした(普通にピチュります)
もう、アイシクルフォールのところではボム確定しているという……。
後報復(夢想封印)は鬼すぎると思うよ!
アリスってば良い子。上海が作ったことにしたのは照れ隠しですね。わかります。霊夢と結婚しなさい今すぐ。
チルノってば⑨。でもちゃんと謝れる素直な子。足りないところもあるけど、長所を伸ばす方向で育って欲しい。…成長するの?
魔理沙と霊夢はマブ達。2人の仲に割ってはいるのはそうとう難しいでしょうな。お互い弱いところを曝け出しても全然平気。
終始にやにやしっぱなしでした。久々に温かい話を読めて嬉しかったです。次も期待して待ってます。
アリスに新しいツンを見ました。
どうしてくれる!
しかし気持ちが思いっきりよく分かります。
現在タミフル投入中の一人暮らしでございます…
確かに普段強気な彼女が風邪で寝込んで弱気になってるとめちゃくちゃかわいいですね
だが女の子でない自分は可愛くないので霊夢を羨ましげに見るのであった。
きっと霊夢に限らずどんな人でも弱気になっちゃうもんですよ。
アリスが酷い目にあう話希望
非常にいいよ。うん。
GJ!
そういう時人の優しさ温もりが心にしみるんですよね。
おもしろかった。GJ!
やっぱ風邪引いてるおにゃのこって良いですね。
チルノも素直な良い子だなーと。
夢想封印は可哀想すぎる(笑)
>>名前が無い程度の能力 ■2008/05/01 09:34:09 さん
そうそう。一人暮らしで病気すると寂しいのなんのって。
>>名前が無い程度の能力 ■2008/05/01 09:38:58 さん
解ってくれますか!? 今度一緒にそういう宗教を作りませんか?
>>☆月柳☆さん
いつも感想をありがとうございます!
霊夢のゲロを上海はグレイズしました。
私もアイシクルウォールはダメな派です。しかも下手クソなので、よく抱えボムして最初からやり直します。
>>名前が無い程度の能力 ■2008/05/01 09:46:53 さん
ごめんなさい。冒頭部分は確信犯です。
えろに始まりほのぼので締める。書き手の目論見としてはそんな感じです。たぶん上手くいったみたいなので、やれやれと冷や汗をぬぐっています。
次もあなたを満足させられるようなお話を書きたいです。読んでくれてありがとう。
>>名前が無い程度の能力 ■2008/05/01 11:06:01 さん
ちがうんです ひらがなすらかけないから ちるのちゃんはかわいいのです
>>名前が無い程度の能力 ■2008/05/01 12:45:51 さん
あなたも変態ですね。今度一杯奢ります。
>>名前が無い程度の能力 ■2008/05/01 13:12:53 さん
アリスのツンは烈海王を参考にしました。
ア「美味くはないぞ」
霊「……美味い」
ア「………」
そんなアリス。
>>名前が無い程度の能力 ■2008/05/01 14:28:19 さん
ごめんぬ。
>>欠片の屑さん
む、インフルエンザですか? ご無理はなさらず、暖かくして、ゆっくり寝ていってね!!
それでもダメなら六分蜜さんの素晴らしいSSを参考に、ネギを尻にねじ込んでみてくださいって八意先生が言ってた。
>>名前が無い程度の能力 ■2008/05/01 17:07:55 さん
あんたぁ、違いの解る漢ですなぁ……。
>>名前が無い程度の能力 ■2008/05/01 17:12:36 さん
ドンマイ。わざわざありがとう。
>>名前が無い程度の能力 ■2008/05/01 17:24:19 さん
つまり彼女はこう言いたいわけです。
「夢想天生じゃないことをありがたく思いなさいよね」
>>名前が無い程度の能力 ■2008/05/01 19:53:34 さん
ありがとう。嬉しくてこっちも悶えてます。
>>名前が無い程度の能力 ■2008/05/01 20:58:11 さん
そうそう、一人で風邪を引くとつら……なに男!? 帰れ!
うそうそ。ごめんぬ。
>>じうさん
ですよねぇ。
>>名前が無い程度の能力 ■2008/05/01 23:38:42 さん
アリスの話、了解。
がんばってみる。
>>名前が無い程度の能力 ■2008/05/01 23:59:14 さん
ありがとう。素直に嬉しいです。
>>名前が無い程度の能力 ■2008/05/02 01:03:40 さん
弱ってるときに優しくされると泣けてきます。
逆にそういう人に優しくできたら良いですねぇ。
>>朝夜さん
共感してくれてありがとう。ほっとしました。
>>名前が無い程度の能力 ■2008/05/03 12:16:22 さん
ここにもいたぜ変態が! せんきゅー! 読んでくれて嬉しいよ!
>>名前が無い程度の能力 ■2008/05/03 12:42:43 さん
風邪引き少女愛好会へようこそ。歓迎します。
チルノは素直で、良い子で、打たれ強いのです。
今は彼女の装甲の厚さを信じてやってください。
看病してくれる人との会話、いいものです。(無論、女の子の方がいいですがww)
読んでくれてありがとう。
看病っていいですよね。するのも、されるのも、横で見てるのも好き。これは変態じゃないよね?
書いてみたらことの他面白くなくて、アリスの話は行き詰ってるんだ。
違うのを投稿してしまうかもしれないよ。
それはともかく読んでくれてありがとう。
素敵な作品ありがとうございました.