「zzz...」
「・・・」
昼の日差しが照りつける紅魔館の昼過ぎ。その日差しは春まっさかりでどこぞの妖精が春ですよ~とあちこちを飛んでいるくらいである。この陽気の中では昼寝をしたくなるのも分からなくは無い。分からなくは無いんだ。決して。
しかしこの場合はどうだろうか。1年中昼寝。仕事をサボって。たったコレだけの理由が加わるだけでその昼寝をしたくなる気持ちと言うものは脆くも崩れ去る。
「幻符「殺人ドール」」
今日も門には悲鳴が響き渡った。
「酷いですよぅ・・・」
「あなたが居眠りをしなければいい話よ。」
「だってこんなに天気がいいと・・・」
「あなたの場合1年中でしょうが」
ズポっと頭に突き刺さったナイフを抜く。その抜いたところから血が流れ出ているのだがすぐにその傷はふさがる。もしも人間ならばこのような大傷は即死だ。でも彼女紅 美鈴は違う。妖怪なのでその程度の傷では死なない。
でも――――――忘れてはならない。万物には限界と言うものがあることを。
「ほら、あなたの分の昼食よ」
「え!?」
「何か文句でもある?今は12時よ。ああ、そうねあなた寝ていたから時間がわからないのね」
皮肉たっぷりの嫌味である。
「す、すみません~・・・」
「じゃ、仕事に戻るから」
「はい、ありがとうございました」
「次に寝たら夜霧の幻影殺人鬼よ」
「は、はいっ!」
帰り際にギロリと睨まれたため背筋を伸ばして応答する美鈴。
咲夜が去っていく所を見つめ、姿が完全に消えたところでふぅと一息つき門の横の壁を背に地面に座った。
「あ、あれ・・・?頭が・・・」
美鈴は頭がフラつく。何故だろうか美鈴は何時もとは違う感覚を覚えた。それは何か頭の中がぼーっとし、何かを考えるたびに頭がズキズキ痛む。まるで見えない何かが頭を蝕んでいるかのような。
「いけない、早く食べて仕事に戻らなきゃ・・・」
美鈴は咲夜の持ってきてくれたハコを空ける。中にはサンドイッチが入っていた。それを口へと放り込む。食事をしている間にも何故か頭の頭痛が取れることは無かった。
「さて、ご馳走様でした・・・と。後でお礼いわな・・きゃ・・・」
(あ・・・れ・・・?体に・・・ち・・から・・・が)
もう口すら動く気力が無い。瞼も重い。そしてバタりと横に倒れる。美鈴を支えるものは何も無い。
(こ、のまま・・・だと・・ま・たさ・くや・・・さん・・に・・)
そしてその予想通りに。
「め~い~り~ん~?さっき来たと思えばまた昼寝かしら・・・?」
咲夜のほうからは美鈴の顔が見えないのだろうか。彼女は再びナイフを構えた。
「幻葬「夜霧の幻影殺人鬼」」
殺人ドールよりも多くのナイフが宙を舞い美鈴へと襲い掛かる。
ストトトトトトッ!
美鈴は一瞬の間にハリネズミと化した。
「・・・」
「・・・?」
何時もだったらばすぐあがる悲鳴。いつもだったら普通に起き上がり謝罪文を申し上げる美鈴。だが今日は違う。寝たままなのだ。
そしてピクリとも動かない。
そう。それはまるで――――――――――息絶えてしまったかのように。
「ちょっと、美鈴。美鈴!!」
咲夜は美鈴の横へと周り美鈴の肩をゆすってみた。しかしピクンともしない。
そして揺らしたときの振動だろうか。口の中にたまっていた真っ赤な血が口からこぼれた。
ボサッ
刺さりの浅かったナイフが地面へと落ちる。そのナイフを拾いあげ、刺さっているところの傷を見る。
するとそこには赤い血が噴出しており、その奥には美鈴の真っ赤な肉片が見えた。
その傷が治癒する気配は一向に見られない。何時もの美鈴ならば刺さったそばから傷が治癒し、ナイフも自然に抜けていくはずだった。しかし今の状況はどうだろうか。ナイフは一本も抜ける素振りすら見せずただただ美鈴と言う針山の上に突き刺さっているだけである。
「美鈴!返事をしなさい!!」
「・・・」
何も答えない。
明らかに何時もとは違った。咲夜をだまそうとしている風にも見えない。
「美鈴!美鈴!!」
もう一度ゆすってみるが何の反応も示さない。
「こういうときは落ち着いて・・・」
咲夜はふぅ・・・と一息つくと美鈴を抱きかかえる。それはお姫様抱っこでどこにその力があるのだ。とつっこみたくなってしまう。
「っ・・・重いわね・・・」
咲夜は時を止め、竹林の方向へと飛び去った。お嬢様のお世話も忘れて。
自分の手の中にはぐったりと首が垂れた美鈴。彼女を手に持ちつつ昼間の空を飛んだ。何よりも早く、早く。
~竹林~
「迷った・・・」
その竹林は何もかもが複雑に入れ込み、1日ごとに姿を変える。慣れた人じゃなければこの竹林を抜けるのは難しいというが、慣れた人はどのように道を認識しているのかが不思議である。
「ん・・・?あれは」
目の前に時間の流れが止まった妹紅が見えた。ちょうどいい。彼女に道を聞こう。
美鈴は妹紅に見えないように大きな竹の裏に置く。ここで見られてしまった場合あっという間に噂が広まってしまうだろう。
妹紅の前に立ち時間の流れを平常に戻す。時間を止めて運んだため衣服に血は付いていない。
「こんにちは藤原 妹紅」
「うわっ!?驚かせるな!!!」
「ごめんなさい。それより今急いでいるのよ。永遠亭はどっちかしら。」
「永遠亭ならそこに屋根が見えるだろう?」
「あ・・・。」
竹と竹の間から永遠亭の屋根が見えた。こんなに近くにあったなんて。やはりこの竹林は良く分からない。
「悪いわね!じゃ!」
(時間をロスした・・・!)
そういうと再び時間を停止。
美鈴を抱え上げ屋根の方向へと飛び去った。
門を許可なしで飛び越え、永琳を探す。その時ちょうど良く鈴仙・優曇華院・イナバを発見。
時間操作を解き、うどんげに話しかける。
「ちょっとうどんげ。」
「うわぁ!?」
後ろから話しかけたため相当驚かれたようだ。
「さ、咲夜さん・・・?それとそのナイフの山になった美鈴さんは・・・?」
「美鈴の調子が悪いのあなたの師匠はいるかしら。」
「師匠ですか・・・?ならこの部屋に」
それは本当にちょうど良かった。真後ろが永琳の部屋だったなんて。
うどんげはノックをし中からどうぞ~と言う声が聞こえたため襖を開ける。
「どうぞ・・・」
その時何故かうどんげは目を伏せた。そう、彼女は気が付いてしまった。紅 美鈴の容態に。
「永琳悪いのだけど美鈴を見てくれないかしら」
「・・・そこに寝かせて」
そういうと咲夜はベットに美鈴を寝かせる。そして永琳が歩み寄りのど元に人差し指を中指を当てた。
そしてやはりと言う目をし、手を引く。そしてナイフを頭に刺さったナイフを引き抜きはじめた。
「ちょ、ちょっとそんなことして大丈夫なの!?」
「・・・咲夜。あなたはもう気が付いているはずよ。」
「な、何を?」
咲夜の腕は微妙にだが震えていた。
「・・・美鈴は、紅 美鈴はもう死んでいるわ」
死。
その一言が咲夜の頭の中へと突き刺さる。
「そんなわけ!美鈴は妖怪よ!?」
「・・・知ってる?この世の全てのもの・・・いや一部は例外ね、には限界があるの。あなたのお嬢様に八雲 紫にも限界があるわ。じゃあ話を変えるけど何で人間は老いるか?それはね細胞の限界なのよ。細胞は生まれてから死ぬまで細胞分裂する回数は決まっているといわれているわ。つまり限界があるのよ。でも八雲 紫やあなたのお嬢様は長年生きているわ。それは何故か?理由はね人間の血や人間を食べているから。それで細胞の限界を補っているのよ。ただ食べたいから食べるのではないの。自分が生きるために他人を食べるのよ。それが妖怪達の定理。そして紅 美鈴も妖怪。とっても人間くさいね。あなたは美鈴が人間を食べた所を見たことがあるかしら?」
「・・・無いわ」
「でしょう。つまり、もうこれ以上細胞を作れなくなった。人間を食べなかったから。でも1度人間を食べれば相当長くの間は持つわ。でも・・・あなたのナイフ。この傷が美鈴の細胞寿命を縮めたのよ。傷口がふさがるときはそれは細胞分裂による細胞の増加によって傷はふさがるわ。そしてあなたのナイフは勿論、頭にも刺さっていたわ。頭は心臓の次に大切な機関と言ってもいい。それが再生されなくなれば・・・わかるわね?」
その言葉を聴いた瞬間咲夜は全身に鳥肌が立つ。その間にも美鈴のナイフをズボズボと抜く永琳。
「つまりは、あなたが美鈴を殺したのよ。」
その言葉を聴いた瞬間咲夜はついに膝を折った。
「私が・・・美鈴を、殺、した・・・」
全てのナイフを抜き終わり、ナイフを水の中に投げ込む。そして永琳は部屋を出てしまった。永琳なりの気遣いであろう。
パタンと襖が閉まり、部屋には咲夜と美鈴だけになった。
そして床に滴り落ちる涙。その涙は多分はじめてみることが多いだろう。あの紅魔館のメイド長十六夜 咲夜の涙。
「め、いりん・・・」
咲夜は立ち上がり、美鈴の近くへと歩み寄る。
「美鈴・・・。お願いだから・・・目を覚まして・・・。今までのことは全部謝るから・・・!目を覚まして・・・!」
しかし
美鈴が
返事をすることは
2度とない。
「う、うわああああああああああああ!!!!」
完全なパーフェクトメイド。そんな肩書きを持つ彼女、十六夜 咲夜の鳴き声は永遠亭全体に響き渡った。
「師匠・・・あそこまではっきり言わなくても」
「いいのよ。」
そう一言言うと永琳は違う扉へと姿を消した。
それから咲夜は美鈴を抱き起こし、永遠亭を出た。もう美鈴の肌は冷たくなりつつある。
それから咲夜のほほにはまだ涙の後が残っていた。
彼女紅 美鈴は昔からの友達。まだ紅魔館のメイドになりたてで下っ端の頃、唯一美鈴だけはやさしく接してくれた。そして何か辛いことがあればいつでも聞いてくれた。さらにいつの間にか入れ替わった地位。
簡単に言えば美鈴は昔の姉と言う感じで咲夜は好感を抱いていた。
その姉を殺したのは自分。その事実がただただ自分の胸に突き刺さる。
竹林を抜け、湖へと出る。そしてふらふらと飛んでいると赤を基調とした館が見えてくる。そして彼女の居た門。そして門には人影が見えた。日傘を差した小さな人影。
「お嬢様・・・」
「美鈴は・・・死んだのね?」
「申し訳ありません!私がっ。私がっ!!」
「あなたに1週間休暇を言い渡すわ。」
「はっ・・・?」
「1週間休めと言っているの。美鈴が喜びそうな所に埋めてきて上げなさい。それから1週間私の前に現れないで。あなたの顔は見たくないわ」
「・・・了解いたしました。失礼します」
そういうと時を止めたか美鈴ごと姿を消した。
「ちっ・・・」
「あら。ずいぶんとご立腹ね。」
「パチェ?珍しいわね」
「そりゃ美鈴が死んだって言えば出てこないわけにも行かないでしょ」
「・・・そうね」
「咲夜をどうするつもりかしら?」
レミリアは少し下を見、
「別にどうもしないわ」
「あなた相当腹が立っているように見えるけど?」
「ああ、それはね美鈴の運命が不安定だったのは知っていたのに、この事実を回避できなかった自分に腹が立っているだけよ。」
「そう。じゃあ私は戻るわ。」
「ええ、後で紅茶でものみましょう。」
「・・・レミィ」
パチュリーは後ろを向きながらレミリアに問う。
「何・・・かしら」
「・・・泣いてもいいのよ?」
レミリアは一瞬ビクっとしたがすぐに平常を装う。
「別に泣きたいわけじゃないわ。私は・・・」
レミリアは手で自分の顔の目の下を少し拭った。決してパチュリーに見られないように。
レミリアと美鈴の付き合いは多分だが咲夜より遥かに長い。パチュリーは100歳前後でレミリアは500歳。もしかするとパチュリーより付き合いが長いのかもしれない。そんな美鈴が居なくなれば辛いであろう。風がそよぐ中、一つの水滴が地に落ちた。
そのころ咲夜は紅魔館と湖をはさんだ反対側に居た。そこは少し小高い丘になっており紅魔館のすべてを見ることが出来る。アレだけ大きく広大な紅魔館をココから見ると一望できる。咲夜は美鈴を里より購入した棺おけに入れた。中には美鈴が痛くないように大量の花を摘んで入れた。
中国風のチャイナドレスに龍と書かれた帽子。咲夜は美鈴の顔へと手を伸ばし、ほほをなでた。しかしその頬は暖かさが無くもう冷たく硬くなっていた。妖怪も死後硬直を起こすみたいだ。
咲夜は大量の木片を拾い、棺の周りに並べる。そして十分集まったと判断したのか美鈴の前へと立ち、どこからか取ってきたのかライターを取り出した。そしてシュッとすると先端に炎が付く。便利なものだ。
それを美鈴の棺の横の木へと落とそうとした。が、手が震える。咲夜の手はブルブル震え続けライターの炎が大きく揺れていた。
ジュゥ。
「あ・・・」
ライターの炎が消えた。そのライターの炎を消したのは自分。自分の涙。
咲夜の目からはとめどなく涙があふれ自分の手と美鈴の棺をぬらした。
「美鈴は・・・私を恨んでるわよね。私のせいで死んだんだもの」
咲夜は再びライターの火種をすり、火をつけた。
「ごめんなさい・・・」
咲夜はライターを美鈴の棺へと落とした。3歩ほど下がり、燃え上がる美鈴の棺おけを見続ける。
その瞳からは再び涙が溢れ出した。
「ごめんなさい・・・さようなら美鈴姉さん・・・」
完全に燃え、炭だけになった棺おけの残骸を咲夜は土をかけてお墓を作る。そしてそこに石を置きナイフで刻を入れる。「紅魔館門番長・紅 美鈴ここに安眠す」
ポツっ、ポツッ。
気が付けば周りは大雨であった。しかしまったくそんなのを気にする余地も無く、美鈴の墓の前に腰を下ろした。そして
「うぁああああああああああああああああああああ!!」
2度目となる大きな声での泣き声。しかし今度の泣き声は土砂降りの雨の音の中に消えていくだけであった。目を手でこするがぬかるんだ地面に触ったため顔に泥が付く。しかしまったく気にしていないようだ。
もう何時間雨の中美鈴の墓の前に居続けただろうか。辺りは暗くなりいまだに雨が降り続いている。
体温も雨に奪われ相当低下していた。その証拠に歯がガチガチと震える。このままでは本当に死にかねない。でも咲夜は美鈴の後を追えるなら・・・と考えてしまうと腰を上げることができない。
すると突然不意に雨がさえぎられる。
「・・・なにしてるの?こんな所で」
それは白い傘を掲げたアリスであった。
「とりあえず・・・家にくる?」
アリスは咲夜の腕をつかみ立たせ、
「ほらしっかり歩きなさいな。何があったかは知らないけど風邪引くわよ?」
そういいつつ2人はアリスの家を目指した。
少女歩行中...
アリスの家の前まで行くと扉を開ける。咲夜はその場から動こうとせずただ玄関に立ち尽くしていた。
そして頭にボフとタオルを投げられる。
「とりあえず拭きなさい。私は奥からバスローブ取って来るから」
そういうとアリスは奥へと姿を消した。
咲夜は虚ろな目で周りを見回すと多くの人形が目に入る。金色の髪の毛の人形から銀、黒、茶色・・・。多種多様だ。そして棚の一番上にある人形を見つける。赤い髪の毛に緑を貴重とした服。そして瞳の色。すべてが美鈴似な人形である。
アリスから見ればただの人形。しかし今の咲夜はどうであろうか。
咲夜は一歩後ずさる。
「嫌・・・こっちを見ないで」
咲夜はその人形を見、その瞬きしない人形がこっちをにらんでいるかのように見えた。まるで美鈴の代わりと言わんばかりに。
そして気が付いてみると。すべての人形の視線が咲夜へと集まっていた。
その生気の無い目は、
「ヒトゴロシ」
「ドウホウゴロシ」
「キットウランデル」
「ブカヲコロシタ」
と、語っているかのようであった。人形はただただ座っているだけ。それなのに不思議にそう聞こえてしまう。見えてしまう。
「止めて・・・そんな目でこっちをみないで・・・!」
すべての人形の視線に耐えられなくなった咲夜はアリスの家を飛び出した。
当ての無い魔法の森の中をただただ走り続ける。何度も転び、木に引っ掛け、体は段々とぼろぼろになり、傷ついていった。そして夜になった森が風と雨により大きく揺れる。その姿は不気味としか表現の仕方が思いつかないものである。その中をただただ、必死に時に時間を止めて走った。
そして走っていると話し声が聞こえた。この声は霧雨 魔理沙にさっき家に居たアリス・マーガトロイドだ。
なぜアリスがここにいる?木の幹に隠れて見えなかったが近づくにつれ分かってくる。それは霧雨 魔理沙の家であった。時には時間をとめて走ってきたはずである。ソレも全速力で。なのになぜアリスが先に魔理沙の家へといる?私があちこちを走っているうちにえらく長くの時間が過ぎたのだろうか?咲夜は自分の懐中時計を見て時間を確認してみた。暗くてうっすらとしか分からなかったがアリスの家を出てから10分とて経っていない。アリスの家から魔理沙の家まで最低でも20分はかかる。飛んでも15分はかかるだろう。
それがなんで私より先にアリスがいる?
咲夜は不思議に思い2人の会話に耳を傾けた。決して気がつかれないように。
「紅魔館の紅 美鈴が死んだそうよ」
「ほぇ?ソレまたなぜ」
なぜアリスがそのことを知っている?確かに美鈴の墓の前にはいた。でも墓石を見ては居ないはずだ。
この美鈴が死んだという事実は永琳と紅魔館のレミリアとパチュリーぐらいしか知らないはずだ。それがなぜ知っている?
「そこに隠れている人に殺されたみたいね」
「早く出てきな、殺人犯さんよ」
雨が降っている中、咲夜は窓の横に背を向け張り付くようにして2人の話を聞いていた。そして急に自分に話を振られる。
自分は完全に気配を消していたはずだ。それなのに気づかれた。そしてバクバクと動く心臓。
私が殺人犯?
「美鈴を殺したんだろ?あんたが」
「美鈴はうらんでるでしょうね・・・」
咲夜は耳をふさいだ。その言葉がただただ怖くて。その怖さゆえ、逃げ出したくなる。時を止めると再び漆黒の森へと駆け出した。もう太陽は完全に沈みあたり一面はただの暗闇へ成り果てていた。
森を走り続ける。もうどれだけ長く走ったか。どれくらいの距離を走ったのかすらもう分からない。そして走り続けると明かりが見えてくる。どうやら博麗神社のようだ。あれ?こんなに近かったっけ?
そんな疑問を残しつつ神社に近づく。しかしその咲夜の腕は震えていた。そう、怖いのだ。アリスと魔理沙に言われたような事をもう一度言われそうで。
そんな思いもしつつ神社の階段を上る。そしてあと少しと言う所で人影が見えた。それも2人。その人影とは、その神社の巫女、博麗 霊夢とスキマ妖怪八雲 紫であった。
「こんばんわ」
咲夜はきょとんとした顔をした。しかし次の霊夢の一言によりその顔は崩れ去った。
「姉殺しの咲夜」
咲夜は一歩後ずさると、
「い、いや・・・・いやぁ・・・」
腕をクロスさせ自分を抱え込むようなしぐさを取る。
「いやああああああああああああああああ!!!」
咲夜は自分が飛べるという事も忘れ階段を凄いスピードを出して降りていった。
それからと言うものの咲夜はいろんな人や妖怪に会った。里の半獣の上白沢 慧音に、その友達藤原 妹紅にその宿敵蓬莱山 輝夜、冥界の姫、西行寺 幽々子やその従者魂魄 妖夢に風見 幽香。
そして会うたびに、
「あんたが美鈴を殺した」
「同胞殺し」
「部下殺し」
「姉殺し」
「人殺し」
と罵られた。もっといろいろな事を言われたが覚えていない。
咲夜はそれでも走り続ける。行く当ても無く。そしてもうソレも限界か一本の木下へと座る。
「いや・・・いやぁ・・・・!!」
必死に耳をふさぐ。そしてなにを思ったか自分の足に備えてあったナイフを取り出す。
そして自分の喉へと、突き立てた。いや突きたてようとした。
キーン。
それは何か他の者によってナイフは弾かれた。
・ ・ ・
赤い槍で
「咲夜。そのまま死ぬなんて許されると思って?」
「お、お嬢様・・・」
気が付けば周りにいっぱい人影が見える。それは自分を取り囲んで円になっているではないか。そして全員が不適な笑みを浮かべている。顔は暗くて識別しづらいが格好で誰かは分かる。
「あなたは美鈴を殺した。その罪は一生をもって償うのよ」
「同胞殺し」
「部下殺し」
周りの皆が詰め寄る。咲夜はその場に座っていて腰が抜けているためか立ちあがる事が出来ない。咲夜はそのまま後ずさる。しかし後ろに逃げた分だけ周りのみんなは詰め寄ってくる。すでに雨により全員びしょびしょであった。
「いやっ・・・やめて・・・!」
ドンっ。
咲夜の背中は何か柔らかい物に当たった。そして
ピチャッ。
雨ではない、暖かい物質が咲夜のほほを伝う。周りが暗いためその液体が何かを確認する事は出来ない。
その液体をすっと指で触ると自分の目で見えるところへと持ってきて、その液体が降ってきた上を向く。
そこには―――
「酷いですよ、咲夜さん。殺すなんて」
「い、いやあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
その場所とは咲夜が美鈴を葬って生めた場所であった。
「はっ!!はぁ、はぁ」
咲夜はベットから起きる。その体は汗まみれで呼吸も荒い。
「ゆ、夢・・・?」
咲夜はベットから出るとタオルを取り出し自分の汗を拭く。まだ本来だったら寝ている時間だ。深夜の2時。美鈴はまだ門番をしているだろうか?
なぜか咲夜は何故か心配になった。メイド服を取り出し手馴れた手つきで着替えると部屋を飛び出した。
紅魔館の広い廊下を何回か曲がり広い玄関へと行き着き大きな赤い扉の鍵を開けて扉を開く。そしてその向こうには漆黒の闇にシトシトと雨が降り注いでいた。
そして門を見ると、そこにはまだ美鈴が立っていた。咲夜は雨の中駆け出す。傘も差さず。
「美鈴っ!」
美鈴はその声に気が付いたか振り返る。
「咲夜さん?どうしたんですかこんな時間に」
ああ、よかった・・・美鈴は死んでない。あれは完全に私の夢なんだ・・・
そう思ったか咲夜は美鈴へとダイブした。
「さ、咲夜さん?」
首へと腕を回し美鈴の大きな胸へと咲夜は顔を埋めた。
「どうしたんですか?急に・・・」
「とても・・・怖い夢を見たわ」
「どんな夢ですか?」
「あなたが・・・死んでしまうお話。私が殺してしまうお話」
そういうと咲夜は夢の内容を語り始めた。お仕置きのつもりで放ったナイフがとどめとなった事、今までナイフを刺し続けたせいで寿命が縮まった事、色々罵られた事。
「それは怖かったですね・・・。大丈夫です、きっと・・・私は
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
もう死ねませんから・・・」
え?今なんていった?
咲夜は目を開けて美鈴を見る。すると美鈴の顔は血まみれであった。
よく見てみれば服も真っ赤ではないか。
「そ、その傷は・・・?」
「何言ってるんですか?咲夜さんがつけたんじゃないですか。「夜霧の幻影殺人鬼」で・・・」
ピチャピチャと血が雨と一緒に滴る中咲夜の手にも暖かい物質が伝わる。
ドン!と突き放し距離をとり自分の手を見る。するとそれはあの森では分からなかったが今は紅魔館から漏れる光のせいかそれははっきりと血だと認識する事が出来る。
赤く染まったメイド服と自分の手を見、美鈴へと視線を移す。
「酷いですよね・・・ワタシヲコロスナンテ」
「はっ!!はぁ、はぁ」
咲夜はベットから起きる。その体は汗まみれで呼吸も荒い。
「ゆ、夢・・・?」
咲夜はベットから出るとタオルを取り出し自分の汗を拭く。まだ本来だったら寝ている時間だ。深夜の2時。美鈴はまだ門番をしているだろうか?
なぜか咲夜は何故か心配になった。メイド服を取り出し手馴れた手つきで着替えると部屋を飛び出した。
紅魔館の広い廊下を何回か曲がり広い玄関へと行き着き大きな赤い扉の鍵を開けて扉を開く。そしてその向こうには漆黒の闇にシトシトと雨が降り注いでいた。
あれ・・・?これ前にも無かったっけ?
ああ、そうか、これも夢なんだ。夢なら、早くさめてしまえばいいのに。
いやー怖いですね
私も夢かと思ったら現実だったり、現実かと思ったら夢だったり、夢の中で夢見たりと体験があるだけにこの話には共感を覚えます。
大変個人的には面白かったです。
次回作にも期待しています。
無限ループって怖いですよね
秘月様
ありがとうです~ まさか私と同じ感覚を覚えている方が居るなんてw
次回作も力を入れて作りますー
■2008-04-28 03:04:15様
夢とは怖いものですよ。現実と夢の区別が付かなくなると・・・ またどこぞの妖怪に夢と現実の境界を操られると・・・(以下スキマ送り
■2008-04-28 09:58:26様
美鈴は本望だ!とか叫びそうd(ry
めいさくが私の(ry だが一番はマリアリDA!(カエレ
まぁ死に方については、突っ込んだら負け、方向で・・・(何
特に永遠亭での一件のあたり、何のために妹紅や鈴仙を出したのかが分かりません。あと話しそのものの速度がとても速くて、まさしくジェットコースターのように感じてしまいました。
急転直下といえば聞こえがいいんですが、怖がる前に答えを見せられてしまったような。そんな感じです。
もう少し、作品を読み返して、いらないシーンを削ったり肉付けをおこなったりすればとてもいい作品になると思います。
すべては夢なのです♪
野狐様
ご指摘ありがとうございます。
まず永遠亭にてなぜ妹紅や鈴仙を出したのかと言う事ですが
あの竹林の道を知っているのは妹紅と永遠亭一味と慧音だけと思っています。
姫は閉じこもってるだろうし、永琳はこれから永遠亭に行くのに出歩いていたらアウト、慧音は里の警備があるんじゃないかな?とか勝手に妄想してしまいました。そして残りが妹紅になったので妹紅を出したのですが・・・^^;
永遠亭の中でうどんげが出てきたのは永琳の手伝いをしているうどんげならすぐに部屋に案内できるんじゃないかなと思い出しました。てゐでもいいかな、と思ったのですがてゐは外で無邪気に遊んでいる姿を私は連想したので外出中という設定にしました。
話が急展開過ぎるのは素直に認めますorz
私もまだまだ甘いですね^^;言われて実感します。次回作はもっと内容を煮詰めてみようと思います。是非ご意見をお聞かせください!
それはともかく、タイトルのセンスに惹かれてやってきたのですが、思ったより怖くて驚きました。
なるほど、それで『無限回廊』ですか
最後のほうの何度も、何度も同じ文章が使われるのがさらに恐怖を助長しました。
寝る前に読んでしまったorz
あとがきの、実体験のことですが、私はないです。
きっと幸せなことなのでしょうが、もしそれを経験すると本当に悪夢なのでしょうね……。
後悔してもしきれないでしょうね、美鈴に対する咲夜さんの態度も変わるかな
後、誤字報告です
今までのことは全部誤るから・・・!
↓
今までのことは全部謝るから・・・!
私にネーミングセンスを求めないでくださいねw
今回はたまたまなので♪w
いやはや実感するとホント悪夢です。現実と夢の区別が付かなくなります。
■2008-04-29 23:35:15様
きっと咲夜さんもナイフで刺すのを止めますよ~w
誤字ありです♪また同じ間違いを・・・・。