上白沢慧音は授業をしながら嘆いていた。
目の前には生徒達が十人程、歳の幅は十歳から十四歳でちょうど男女の比率が半分である。
その殆んどの生徒が眠っており、起きている生徒も意識を保っているのでいっぱいいっぱいといった感じだ。
だが彼らに罪は無い。
全ては己の授業が退屈なのがいけないのだ。
目の前の男の子などは起きていようと努力していた証拠に耳に筆を突っ込んだまま寝ている。
ここまでの苦行を強いてる事実に慧音は心の中で涙していた。
「ふあ~ぁ、よく寝た。それにしてもあんたの授業とやらはすんげ~退屈ね」
そうのたまったのは紅魔館当主レミリア。
なぜ彼女が寺子屋で慧音の授業を受けていたかというと単なる気まぐれである。
ちなみに授業開始五分で爆睡していた。
「・・・そんなに私の授業は退屈なのか?」
「この教室の惨状を見れば一目瞭然じゃない。そうだ! 不眠症の奴らに授業をすれば感謝されるんじゃない?」
グサッ
「あ~ぁ、こんなのだったら私が授業をやったほうが百倍は面白いわね」
ウギギ・・・って待てよ。
悔しいが一理あるかもしれない。
この際知識うんぬんは置いといて、自分以外の誰かに授業をさせてみるのもいいかもしれない。
生徒達にもいい刺激になるかもしれないし、面白い授業ならば参考にもできる。
そうと決まれば行動あるのみ。
「よし! 今日の授業はこれで終了。皆また明日会おう!」
慧音は挨拶もそこそこに教室を飛び出す。
そして、先生募集のチラシを幻想郷中に配って廻った。
翌日、寺子屋の前にはチラシに興味をもって集まったメンツが揃っていた。
咲夜、幽香、にとり、阿求の四人である。
微妙に不安なメンツなのは気のせいだろうか?
「え~と、まずは来てくれたことに礼を言う」
一同に頭を下げてから、それぞれ何を教えるつもりなのかを聞く。
最初は咲夜。
「まさかお前が来るとはな。昨日の様子だとてっきりレミリアが来るものだと思っていたが」
慧音の言葉に咲夜は苦笑して答える。
「昨日チラシを見たときはそのつもりでいらっしゃったのですが、今日になって面倒くさくなったみたいで急遽私が紅魔館代表として来ました。考えてみればお嬢様が毎日朝早く起きれるはずもございません」
「確かにな・・・それで何の授業をするんだ?」
「算数などを」
「算数か。よし、わかった」
咲夜の次は幽香。
今回のメンツでは一番コイツが不安要素である。
目的が解からないし、仮にも幻想郷最強クラスの妖怪である。
もし暴れられたりでもしたら自分でも止められるかどうか。
「おまえ・・・何か企んでないだろうな?」
「あら? ずいぶんな質問じゃないの」
慧音の失礼とも言える発言にも幽香はニコニコと微笑んでいる。
「ご安心を。ただの退屈しのぎよ。たまには人間と触れ合うのも良いかなと思ってね」
「そうか・・・ちなみに何を教えるんだ?」
問われた幽香は手のひらでポンッと花を咲かす。
「私が教えるのは花や植物について。適任でしょ?」
「確かにな。まぁ今日はよろしく頼む」
「まかせなさい。哀れな子供達に楽しい授業も存在することを教えてあげるから」
慧音のハートの100のダメージ!!
イジメッ子ゆうかりんの言葉に傷心しながらも次はにとりに質問をする。
「にとりは工作か?」
「あたりっす! 皆さんに物を作る楽しさを知って欲しいんで」
「ちなみにそのリュックの中に危険物なんかは入っていないな?」
慧音の脳裏には、にとりのリュックから変な物体がギガゴゴゴと出てきて教室で暴れる光景が浮かぶ。
「そのへんは大丈夫っす。ちゃんと危険物は置いてきましたよ」
どうやら問題は無さそうだ。
さて、最後は阿求。
こやつは幻想郷縁起で自分より面白い授業が出来ると書いていた。
このこしゃまっくれた少女がどれほどの授業をするのかには興味がある。
「やあ阿求殿。今日はあなたの授業楽しみにしてますよ」
「まかせておいてください。寺子屋で精神修行を強いられている生徒の為にも今日は一肌脱ぎましょう」
こ、この餓鬼は・・・
おもわず阿求のこめかみにこぶしをぐりぐりしたい衝動に駆られるも、なんとか自重してこれからのことについて説明を始める。
「今日は皆が先生を出来るかどうかを見させてもらう。私は教室の一番後ろで授業を受けるので思う存分力を振るってくれ」
そろそろ授業が始める時間だ。
今回の試みでもしかしたら、自分は生徒からつまらない先生として見放されるかもしれない。
そう思うと恐怖感が沸き起こってきたが、これも生徒の為だと思い己を奮い立たせた。
一時間目算数。
「皆さん初めまして。本日皆さんに算数を教える十六夜咲夜といいます。どうかよろしく」
生徒の皆は見慣れないメイドということもあってか、咲夜に興味津々のようだ。
お近づきの挨拶にと咲夜はお得意のタネ無し手品を一通り披露する。
(なるほど・・・授業に関係ないことでも興味をひくことは大事なのだな)
おおーと喜ぶ生徒達の反応を見て慧音はふむふむとメモをとる。
最後の手品ですと言って咲夜は卵を一つ取りだす。
その卵にハンカチをかけて三つ数を数える、そしてハンカチをとると卵からはヒヨコが孵っていた。
一際大きい歓声の中一礼する咲夜だったが、ヒヨコを手に持ってそわそわし始める。
どうやらヒヨコをどうするかで迷っているようだ。
ふと何か閃いたらしい咲夜は後ろに座っている慧音に近づいていく。
?マークを浮かべる慧音の帽子を取ると頭の上にヒヨコを置いて再び帽子を被せた。
「・・・」
無言の慧音の様子に教室は爆笑の嵐となっていた。
「さて、場が和んだことですし授業を始めますよ」
すっかり、生徒達に馴染んだ咲夜は皆を上手にまとめていく。
その様子に慧音はすっかり感心していた。
「なるほど、笑いを取るのも大切と・・・」
ぴよぴよ
何もない空間からチョークを出すなど、簡単な手品をまじえて行う授業に皆寝ることもなく順調に進んでいた。
しかし、この年頃の子達はおしゃべりしたい盛り。
しばらくするとどこからともなくヒソヒソ話が聞こえてきた。
「なあ、咲夜先生って変な服だけど美人だよな」
「美人っぷりなら慧音先生にも負けてないな」
授業中のお喋りを注意しようかと思った慧音だったが、咲夜の対応を見ようと考え様子を見ることにした。
「でも、胸は慧音先生の圧勝だな」
「あぁ・・・胸はな」
「誰の胸が貧乳ですって?」
『!!』
お喋りをしていた男の子二人の間にいつの間にか咲夜が立っていた。
気のせいか空間がゆがんでいるように思えなくも無い。
咲夜の雰囲気に慧音は不穏な気配を感じとった。
(まずい! このままでは)
慧音の予想、もやもやもや・・・
「あなたたち、よくも貧乳なんて言ってくれたわね」
「ひいぃ、言ってないですけどごめんなさい!」
バキッ!
咲夜がナイフを突き立てた机は真っ二つに叩き折れた。
あまりの事に言葉を失っている男の子達のほっぺたを、ナイフの腹でぺちぺちたたいて囁く咲夜。
「・・・男の子やめてみる?」
『あわわ』
「それがいやなら下半身丸出しで踊りなさい。さあどうするのかしら? ウフフフフ」
もやもやもや
「咲夜、ま」
強行に及ぶ前に咲夜を止めようとする慧音だったが
「もう! いいですか? 女性の価値は胸で決まるものではありませんよ」
「えっ?」
予想とは裏腹に男の子達を優しく諭す咲夜に呆然となる慧音。
「確かに私は慧音先生と比べると控えめな胸です。しかし、貧乳ではなく美乳!」
そう言いながら咲夜はビシッとポーズを決める。
「それに脚だって十分女性の武器として魅力的なんですよ」
確かにスラリと伸びる咲夜の脚は女の慧音から見ても魅力的である。
咲夜の意見に生徒の皆、特に一部の少女が熱烈に賛同した。
そんな様子を見ていて、なぜ咲夜が胸のことを言われても暴走しないかに合点がいく。
「そうか・・・私以外は自分より胸が大きい子がいないと思っているからだな」
確かにこの教室の少女達は皆十歳から十四歳、咲夜より年下だ。
咲夜は年下になら胸の大きさが勝っているという優越感ゆえに冷静でいられたのだ。
だが
「咲夜、現実は時に残酷なのだよ」
皆の賛同を得られたことに満足した咲夜は授業にもどろうとしたが、おさげの女の子(以後おさげっ娘)が顔を赤くして俯いているのに気がついた。
「あなた、どうしたの?具合でも悪いのかしら?」
「い、いえ、咲夜先生の脚があまりにも綺麗なのでつい照れちゃって」
あははと笑うおさげっ娘はなぜか胸元を隠している。
その様子を見て無言の咲夜だったが、突然おさげっ娘の胸をガシッと鷲つかみにする。
「きゃっ!さ、咲夜先生?」
おさげっ娘の問いかけにも無反応だった咲夜は一言。
「・・・ある」
そして自分の胸の大きさを確かめた後、おさげっ娘に質問する。
「あなた、歳はいくつ?」
「ええっと、十二歳です」
それを聞いた咲夜の目からはツーと一筋の涙が流れ、彼女は一切の動きを止めた。
そんな咲夜にほかの少女達が涙ながらに駆け寄る。
「先生! しっかりしてください! 女は胸じゃないって言ってたじゃないですか!!」
その少女達の中でも一番年長さん(十四歳)のツリ目っ娘などは特に必死だ。
しかし、咲夜だった物体が再び動きだすことは無かった。
呆然とするおさげっ娘と男の子達。
そんな中、慧音はおさげっ娘の頭に優しく手を置き囁く。
「お前はなにも悪くない。成長の度合いは人それぞれだからな」
咲夜、活動停止により失格。
二時間目理科
「はぁ~い、今日は花や植物について教える幽香といいます。よろしくね」
ニコニコとしている幽香だったが、教室は緊張感に包まれていた。
幽香がただならぬ存在であるのは生徒達にも無意識に理解できるようだ。
「なるほど、威圧感を利用するのもありか」
感心しながらも、慧音は自分には無理そうだと考えていた。
そんな中、幽香は綺麗な花を次々と咲かせ、皆に配っていく。
「最初だから緊張するかもしれないけど、そんなに気おわなくても大丈夫よ」
一人一人に丁寧に接する幽香に、皆緊張がとけたところで授業が始まった。
幽香は授業に実物の植物を使って説明していく。
食虫植物などの説明のときも実際に虫を使って説明していた。
虫にリグルちゃんと名前をつけているところなどはさすが幽香というべきか。
そんなこんなでおおむね順調に授業を進めていたが、幽香は小休憩もかねて花や植物を自由に触れる自由時間を作った。
生徒は皆、見たことも無い花や植物に興味津々のようである。
「休憩するのも一理ありと」
メモしていた慧音は、生徒の中でも一番年齢の低いおかっぱっ娘に幽香が何か耳打ちしているのに気がついた。
何か嫌な予感がしたが、幽香が授業を再開したためとりあえずはおとなしくしておくことにする。
「さて、今度はおしべとめしべについて教えるけど」
幽香がそう言うと、先ほど耳打ちされていたおかっぱっ娘が手をあげる。
「幽香先生、私知ってます」
「あら、あなた賢いわね。それじゃあ説明してくれる?」
「おしべとめしべを人間に例えると」
幽香がニヤニヤしている・・・まさか、この展開は!
これはまずい! と静止をかけようとする慧音だったが少し遅かった。
「男と女がちゅーすることです」
「ぎゃー! ストップって、えぇ?」
ポーカンとする慧音をよそに幽香はウフフと満足そうである。
「ああ、純粋な子になんて卑猥なことを言わせてしまたのかしら」
「幽香・・・本気か?」
微かに頬を染めている幽香の様子だと本気のようだ。
こいつ、案外純な奴だったんだな・・・
慧音が妙な感心をしていると。
「ぷっ!」
失笑が聞こえた。
その主はツリ目っ娘。
それを見た幽香はカチンときたようで、ひくひくと笑顔を引きつかせながらもツリ目っ娘に話しかける。
「あなた、言いたいことがあるなら遠慮なしに言いなさい」
そう言いながら拳を鳴らすのはいかがなものか。
だがツリ目っ娘は怯む様子も無い。
「すいません、先生が思いのほかかわいくて」
「なっ何ですって、人間の分際で!」
「まあまあ、カッカしないでくださいよ。」
予想外の返答に混乱している幽香をツリ目っ娘はちょいちょいと手招きする。
不審がりながらもやってきた幽香と肩を組むと、教室の隅へ移動して耳打ちを始めるツリ目っ娘。
最初は怪訝そうな顔をしていた幽香だったが、しだいに顔が赤くなっていき
「ふっ不潔よー!!」
と叫んで教室を飛び出していってしまった。
「うふふ、幽香先生また会えるかしら」
自分の生徒ながら将来が末恐ろしい。
いったい何言ったんだとか、大妖怪を手玉にとるってどんだけなんだ、などと思うところは色々ある慧音だったがとりあえず先生として言わなければならないことは言っておく。
「とりあえず皆、おしべとめしべとちゅーは全く関係無いから誤解しないでくれ」
幽香、逃亡により失格。
三時間目工作
「どうも~。河童の河城にとりっす。今日は船を作りたいと思います」
フレンドリーなにとりに皆もすぐに馴染んだようで、用意されていた木材や布などで小さな船を作り始めた。
工作の工程も刃物などは使わず、河童特製接着剤を使うなど安全面もしっかり考慮されている。
生徒の質問にもしっかり答えて、教え方も上手である。
(今回は何の問題も無さそうだな)
『激船! 白沢号』を作りながら慧音はにとりの授業に安心していた。
少し気になるところといえば、にとりが男女関わらず、見て廻っているときに尻をなでることだが生徒達も本気で嫌がっている様子はないし、あれもスキンシップの一つだと納得する。
ちなみに慧音もなでられそうになったが、拳骨をかまして撃退した。
授業も無事終わりに差し掛かり、にとりはまとめにはいる。
「みんな上手にできたみたいっすね。その船は実際水に浮かべて遊べるので是非試して欲しいっす。私が先生になったら、もっと色んなものを皆に作ってもらおうと思ってるんでこれからもよろし、うっ!」
突然にとりは口元を押さえてうずくまる。
にとりの豹変に皆心配そうにざわざわとしだし、慧音もにとりのもとへと駆け寄る。
「どうしたにとり! 具合でも悪いのか?」
にとりは震える指で自分の背負っているリュックを指差す。
「なんだ、降ろして欲しいのか?」
コクリとうなずくにとりを見た慧音はすぐにリュックを降ろしてやる。
リュックをうけとったにとりはそれを逆さまにする。
ドサドサドサ
中から出てきたのは大量の胡瓜。
そしてにとりは猛烈な勢いで胡瓜をむさぼり始めた。
すさまじい形相で胡瓜を食べ続けるにとりにドン引きする一同。
しばらく胡瓜を食べていたにとりだったが、食べ終えるとすっかり元通りになっていた。
「いやー、お恥ずかしいところをお見せしてしまったっす。皆もはまりすぎはよくないっすよ。酒や煙草は然り、クスリなんて論外っすからね。そうならない為にも自分の心を強く持つ事が大事っす」
「言ってることはごもっとも。しかしだな、お前が言うな」
「にとりーん」
にとり、色々な意味で危ないので失格。
四時間目特別授業
「やっほー阿求だよー。今日は先生やるけど皆よろしくねー」
皆と時々遊んでいる阿求はコミニケーションに問題は無い。
慧音が気になるのは阿求が自分より先生として優れているのかの一点である。
「見せてもらおうか阿求殿」
慧音の言葉に阿求はニヤリと笑うと授業を開始した。
「私が皆に教えるのは、幻想郷の妖怪についてです。まず身近なところだと慧音先生が半白沢なのはご存知ですね」
阿求の質問に生徒一同こくりと頷く。
慧音が人間ではないと理解したうえで寺子屋に通ってくれる一同に慧音はとても感謝している。
一同の様子を見た阿求は険しい表情になると重々しく言う。
「慧音さん、そして皆さんには酷かもしれませんが、慧音さんの危険度は高と言わざる負えません」
『!!!』
衝撃の発言に唖然とする一同。
(そんな、半白沢の私は危険な存在なのか?)
今まで里の人間達と仲良く暮らしていけていた慧音は衝撃を受けていた。
自分が本当に危険な存在ならもう先生も続けていられない。
そう考えていた時だった。
「失礼ですが慧音先生が危険な筈ありません。訂正してください」
ツリ目っ娘が立ち上がり抗議する。
それを皮切りにほかの生徒達も
「そうです。先生は今まで私達を守ってくれました!」
「阿求ちゃん酷いよ・・・」
と阿求に反対する。
「お前達・・・」
慧音は自分が思っていた以上に生徒達に慕われている事実にとても感動していた。
思わず皆を抱きしめたくなったが、これからの為にもここは自分の危険性を知っておかなくてはいけない。
「皆、気持ちはありがたいがここは阿求先生の話を聞こうじゃないか」
「慧音先生・・・」
慧音の言葉に皆静かになる。
そんな様子に嬉しそうな表情になった阿求だったが、表情を引き締めて授業を再開した。
「続けます。慧音さんが危険な理由。それは肌の露出が少ない服装からでもわかるおっぱいとお尻故なのです!」
『・・・はい?』
あまりにも予想外の答えに唖然とする一同に対してなおも阿求は熱弁を続ける。
「慧音さんのスタイルは素晴らしい! ただ真面目すぎる性格が危険度を高に抑えてしまっているのです。しかしですよ。こうすると」
そう言いながら阿求は黒板に服がはだけて上目遣いの慧音の絵を描き始める。
それはもう魂を削って描いてるんじゃないかという気迫と画力であった。
「ぜえぜえ、こうするとどうです! 危険度は激高になるんですよ!」
阿求の言葉にうんうんと頷く生徒一同。
そんな様子に慧音は突っ込む気力も無くし、出来ることは机に突っ伏すことだけであった。
生徒の心をしっかりつかんだ阿求のテンションは更にヒートアップする。
「いいですか皆さん。危険度を測るのに大切なのはスタイルだけではありません。大切なのはどれだけ萌えるかということです! 例えばミスティアローレライ。彼女の萌えポイントは耳です。あのちっさい羽のような耳、先っちょを触ると物凄く気持ち良さそうです! たまらん! しかもですよ。触るとくすぐったそうに『もう、やめてよ~』とか言っちゃったりして。ハアハア」
皆かつて無いほど授業に集中している。
しかし、そんな授業風景をみても不思議と負けたという気持ちが慧音には湧かなかった。
とにかく脱力感で体がいっぱいである。
「あはは。もう考えるのやめよう」
あいかわらず阿求が力説を続ける中
「失礼しま~す」
と阿求に仕えるお手伝いさんが入ってきた。
「幽香の場合はいかにもイジメッ子なのに時折晒してしまう純な部分がって、ちょっと今いいところなんですから」
とお手伝いさんを追い返そうとする阿求だったが、お手伝いさんは心配そうな顔をして
「阿求様・・・相当頭にキているみたいですね。今日はもうお休みください」
と言うが早いが阿求を抱っこする。
「なっ、皆が見てるんですよ! 恥ずかしいから離して、降ろして!」
とジタバタと暴れていた阿求だったが、しだいに顔を赤らめておとなしくなってしまう。
そんな阿求の様子に満足そうに微笑んだお手伝いさんは失礼しましたーと言って去ってしまった。
そんな様子を見ていたツリ目っ娘が呟く。
「阿求ちゃん・・・あなたの危険度も激高よ」
そして机に突っ伏している慧音のもとへ歩みよっていく。
「慧音先生。今日私は改めて確信しました。先生はやはりあなただけだと」
ほかの生徒達も慧音の周りに集まってきて慧音を励まそうとする。
「私、先生のこと大好きだよ」
「俺も先生のおっぱいとお尻が大好きです」
「僕も先生が慧音先生でよかったと思ってるよ」
「授業は退屈だけどそんなの関係ないぜよ!」
生徒達の優しい言葉に慧音は感動の涙を流して体を起こす。
「お前達・・・ありがとうー!!」
そう叫ぶと生徒達を両手いっぱいに抱え込む。
対する生徒達も慧音に抱きつく。
「よし、お前達! あの夕日に向かって走るぞ!!」
ちなみに今はお昼頃で夕日なんぞあるわけがない。
しかし、そんな突っ込みをするほど空気の読めない生徒は一人もいなかった。
太陽に向かって走る慧音と生徒達の光景はとても美しいものだった。
「ありがとう皆! 先生はこれからも頑張るぞー!!」
愛しい生徒達の為にと決意を新たにする慧音であった。
がんばれ慧音先生! 負けるな慧音先生!!
幻想郷の未来はあなたに掛かっているぞ!!
目の前には生徒達が十人程、歳の幅は十歳から十四歳でちょうど男女の比率が半分である。
その殆んどの生徒が眠っており、起きている生徒も意識を保っているのでいっぱいいっぱいといった感じだ。
だが彼らに罪は無い。
全ては己の授業が退屈なのがいけないのだ。
目の前の男の子などは起きていようと努力していた証拠に耳に筆を突っ込んだまま寝ている。
ここまでの苦行を強いてる事実に慧音は心の中で涙していた。
「ふあ~ぁ、よく寝た。それにしてもあんたの授業とやらはすんげ~退屈ね」
そうのたまったのは紅魔館当主レミリア。
なぜ彼女が寺子屋で慧音の授業を受けていたかというと単なる気まぐれである。
ちなみに授業開始五分で爆睡していた。
「・・・そんなに私の授業は退屈なのか?」
「この教室の惨状を見れば一目瞭然じゃない。そうだ! 不眠症の奴らに授業をすれば感謝されるんじゃない?」
グサッ
「あ~ぁ、こんなのだったら私が授業をやったほうが百倍は面白いわね」
ウギギ・・・って待てよ。
悔しいが一理あるかもしれない。
この際知識うんぬんは置いといて、自分以外の誰かに授業をさせてみるのもいいかもしれない。
生徒達にもいい刺激になるかもしれないし、面白い授業ならば参考にもできる。
そうと決まれば行動あるのみ。
「よし! 今日の授業はこれで終了。皆また明日会おう!」
慧音は挨拶もそこそこに教室を飛び出す。
そして、先生募集のチラシを幻想郷中に配って廻った。
翌日、寺子屋の前にはチラシに興味をもって集まったメンツが揃っていた。
咲夜、幽香、にとり、阿求の四人である。
微妙に不安なメンツなのは気のせいだろうか?
「え~と、まずは来てくれたことに礼を言う」
一同に頭を下げてから、それぞれ何を教えるつもりなのかを聞く。
最初は咲夜。
「まさかお前が来るとはな。昨日の様子だとてっきりレミリアが来るものだと思っていたが」
慧音の言葉に咲夜は苦笑して答える。
「昨日チラシを見たときはそのつもりでいらっしゃったのですが、今日になって面倒くさくなったみたいで急遽私が紅魔館代表として来ました。考えてみればお嬢様が毎日朝早く起きれるはずもございません」
「確かにな・・・それで何の授業をするんだ?」
「算数などを」
「算数か。よし、わかった」
咲夜の次は幽香。
今回のメンツでは一番コイツが不安要素である。
目的が解からないし、仮にも幻想郷最強クラスの妖怪である。
もし暴れられたりでもしたら自分でも止められるかどうか。
「おまえ・・・何か企んでないだろうな?」
「あら? ずいぶんな質問じゃないの」
慧音の失礼とも言える発言にも幽香はニコニコと微笑んでいる。
「ご安心を。ただの退屈しのぎよ。たまには人間と触れ合うのも良いかなと思ってね」
「そうか・・・ちなみに何を教えるんだ?」
問われた幽香は手のひらでポンッと花を咲かす。
「私が教えるのは花や植物について。適任でしょ?」
「確かにな。まぁ今日はよろしく頼む」
「まかせなさい。哀れな子供達に楽しい授業も存在することを教えてあげるから」
慧音のハートの100のダメージ!!
イジメッ子ゆうかりんの言葉に傷心しながらも次はにとりに質問をする。
「にとりは工作か?」
「あたりっす! 皆さんに物を作る楽しさを知って欲しいんで」
「ちなみにそのリュックの中に危険物なんかは入っていないな?」
慧音の脳裏には、にとりのリュックから変な物体がギガゴゴゴと出てきて教室で暴れる光景が浮かぶ。
「そのへんは大丈夫っす。ちゃんと危険物は置いてきましたよ」
どうやら問題は無さそうだ。
さて、最後は阿求。
こやつは幻想郷縁起で自分より面白い授業が出来ると書いていた。
このこしゃまっくれた少女がどれほどの授業をするのかには興味がある。
「やあ阿求殿。今日はあなたの授業楽しみにしてますよ」
「まかせておいてください。寺子屋で精神修行を強いられている生徒の為にも今日は一肌脱ぎましょう」
こ、この餓鬼は・・・
おもわず阿求のこめかみにこぶしをぐりぐりしたい衝動に駆られるも、なんとか自重してこれからのことについて説明を始める。
「今日は皆が先生を出来るかどうかを見させてもらう。私は教室の一番後ろで授業を受けるので思う存分力を振るってくれ」
そろそろ授業が始める時間だ。
今回の試みでもしかしたら、自分は生徒からつまらない先生として見放されるかもしれない。
そう思うと恐怖感が沸き起こってきたが、これも生徒の為だと思い己を奮い立たせた。
一時間目算数。
「皆さん初めまして。本日皆さんに算数を教える十六夜咲夜といいます。どうかよろしく」
生徒の皆は見慣れないメイドということもあってか、咲夜に興味津々のようだ。
お近づきの挨拶にと咲夜はお得意のタネ無し手品を一通り披露する。
(なるほど・・・授業に関係ないことでも興味をひくことは大事なのだな)
おおーと喜ぶ生徒達の反応を見て慧音はふむふむとメモをとる。
最後の手品ですと言って咲夜は卵を一つ取りだす。
その卵にハンカチをかけて三つ数を数える、そしてハンカチをとると卵からはヒヨコが孵っていた。
一際大きい歓声の中一礼する咲夜だったが、ヒヨコを手に持ってそわそわし始める。
どうやらヒヨコをどうするかで迷っているようだ。
ふと何か閃いたらしい咲夜は後ろに座っている慧音に近づいていく。
?マークを浮かべる慧音の帽子を取ると頭の上にヒヨコを置いて再び帽子を被せた。
「・・・」
無言の慧音の様子に教室は爆笑の嵐となっていた。
「さて、場が和んだことですし授業を始めますよ」
すっかり、生徒達に馴染んだ咲夜は皆を上手にまとめていく。
その様子に慧音はすっかり感心していた。
「なるほど、笑いを取るのも大切と・・・」
ぴよぴよ
何もない空間からチョークを出すなど、簡単な手品をまじえて行う授業に皆寝ることもなく順調に進んでいた。
しかし、この年頃の子達はおしゃべりしたい盛り。
しばらくするとどこからともなくヒソヒソ話が聞こえてきた。
「なあ、咲夜先生って変な服だけど美人だよな」
「美人っぷりなら慧音先生にも負けてないな」
授業中のお喋りを注意しようかと思った慧音だったが、咲夜の対応を見ようと考え様子を見ることにした。
「でも、胸は慧音先生の圧勝だな」
「あぁ・・・胸はな」
「誰の胸が貧乳ですって?」
『!!』
お喋りをしていた男の子二人の間にいつの間にか咲夜が立っていた。
気のせいか空間がゆがんでいるように思えなくも無い。
咲夜の雰囲気に慧音は不穏な気配を感じとった。
(まずい! このままでは)
慧音の予想、もやもやもや・・・
「あなたたち、よくも貧乳なんて言ってくれたわね」
「ひいぃ、言ってないですけどごめんなさい!」
バキッ!
咲夜がナイフを突き立てた机は真っ二つに叩き折れた。
あまりの事に言葉を失っている男の子達のほっぺたを、ナイフの腹でぺちぺちたたいて囁く咲夜。
「・・・男の子やめてみる?」
『あわわ』
「それがいやなら下半身丸出しで踊りなさい。さあどうするのかしら? ウフフフフ」
もやもやもや
「咲夜、ま」
強行に及ぶ前に咲夜を止めようとする慧音だったが
「もう! いいですか? 女性の価値は胸で決まるものではありませんよ」
「えっ?」
予想とは裏腹に男の子達を優しく諭す咲夜に呆然となる慧音。
「確かに私は慧音先生と比べると控えめな胸です。しかし、貧乳ではなく美乳!」
そう言いながら咲夜はビシッとポーズを決める。
「それに脚だって十分女性の武器として魅力的なんですよ」
確かにスラリと伸びる咲夜の脚は女の慧音から見ても魅力的である。
咲夜の意見に生徒の皆、特に一部の少女が熱烈に賛同した。
そんな様子を見ていて、なぜ咲夜が胸のことを言われても暴走しないかに合点がいく。
「そうか・・・私以外は自分より胸が大きい子がいないと思っているからだな」
確かにこの教室の少女達は皆十歳から十四歳、咲夜より年下だ。
咲夜は年下になら胸の大きさが勝っているという優越感ゆえに冷静でいられたのだ。
だが
「咲夜、現実は時に残酷なのだよ」
皆の賛同を得られたことに満足した咲夜は授業にもどろうとしたが、おさげの女の子(以後おさげっ娘)が顔を赤くして俯いているのに気がついた。
「あなた、どうしたの?具合でも悪いのかしら?」
「い、いえ、咲夜先生の脚があまりにも綺麗なのでつい照れちゃって」
あははと笑うおさげっ娘はなぜか胸元を隠している。
その様子を見て無言の咲夜だったが、突然おさげっ娘の胸をガシッと鷲つかみにする。
「きゃっ!さ、咲夜先生?」
おさげっ娘の問いかけにも無反応だった咲夜は一言。
「・・・ある」
そして自分の胸の大きさを確かめた後、おさげっ娘に質問する。
「あなた、歳はいくつ?」
「ええっと、十二歳です」
それを聞いた咲夜の目からはツーと一筋の涙が流れ、彼女は一切の動きを止めた。
そんな咲夜にほかの少女達が涙ながらに駆け寄る。
「先生! しっかりしてください! 女は胸じゃないって言ってたじゃないですか!!」
その少女達の中でも一番年長さん(十四歳)のツリ目っ娘などは特に必死だ。
しかし、咲夜だった物体が再び動きだすことは無かった。
呆然とするおさげっ娘と男の子達。
そんな中、慧音はおさげっ娘の頭に優しく手を置き囁く。
「お前はなにも悪くない。成長の度合いは人それぞれだからな」
咲夜、活動停止により失格。
二時間目理科
「はぁ~い、今日は花や植物について教える幽香といいます。よろしくね」
ニコニコとしている幽香だったが、教室は緊張感に包まれていた。
幽香がただならぬ存在であるのは生徒達にも無意識に理解できるようだ。
「なるほど、威圧感を利用するのもありか」
感心しながらも、慧音は自分には無理そうだと考えていた。
そんな中、幽香は綺麗な花を次々と咲かせ、皆に配っていく。
「最初だから緊張するかもしれないけど、そんなに気おわなくても大丈夫よ」
一人一人に丁寧に接する幽香に、皆緊張がとけたところで授業が始まった。
幽香は授業に実物の植物を使って説明していく。
食虫植物などの説明のときも実際に虫を使って説明していた。
虫にリグルちゃんと名前をつけているところなどはさすが幽香というべきか。
そんなこんなでおおむね順調に授業を進めていたが、幽香は小休憩もかねて花や植物を自由に触れる自由時間を作った。
生徒は皆、見たことも無い花や植物に興味津々のようである。
「休憩するのも一理ありと」
メモしていた慧音は、生徒の中でも一番年齢の低いおかっぱっ娘に幽香が何か耳打ちしているのに気がついた。
何か嫌な予感がしたが、幽香が授業を再開したためとりあえずはおとなしくしておくことにする。
「さて、今度はおしべとめしべについて教えるけど」
幽香がそう言うと、先ほど耳打ちされていたおかっぱっ娘が手をあげる。
「幽香先生、私知ってます」
「あら、あなた賢いわね。それじゃあ説明してくれる?」
「おしべとめしべを人間に例えると」
幽香がニヤニヤしている・・・まさか、この展開は!
これはまずい! と静止をかけようとする慧音だったが少し遅かった。
「男と女がちゅーすることです」
「ぎゃー! ストップって、えぇ?」
ポーカンとする慧音をよそに幽香はウフフと満足そうである。
「ああ、純粋な子になんて卑猥なことを言わせてしまたのかしら」
「幽香・・・本気か?」
微かに頬を染めている幽香の様子だと本気のようだ。
こいつ、案外純な奴だったんだな・・・
慧音が妙な感心をしていると。
「ぷっ!」
失笑が聞こえた。
その主はツリ目っ娘。
それを見た幽香はカチンときたようで、ひくひくと笑顔を引きつかせながらもツリ目っ娘に話しかける。
「あなた、言いたいことがあるなら遠慮なしに言いなさい」
そう言いながら拳を鳴らすのはいかがなものか。
だがツリ目っ娘は怯む様子も無い。
「すいません、先生が思いのほかかわいくて」
「なっ何ですって、人間の分際で!」
「まあまあ、カッカしないでくださいよ。」
予想外の返答に混乱している幽香をツリ目っ娘はちょいちょいと手招きする。
不審がりながらもやってきた幽香と肩を組むと、教室の隅へ移動して耳打ちを始めるツリ目っ娘。
最初は怪訝そうな顔をしていた幽香だったが、しだいに顔が赤くなっていき
「ふっ不潔よー!!」
と叫んで教室を飛び出していってしまった。
「うふふ、幽香先生また会えるかしら」
自分の生徒ながら将来が末恐ろしい。
いったい何言ったんだとか、大妖怪を手玉にとるってどんだけなんだ、などと思うところは色々ある慧音だったがとりあえず先生として言わなければならないことは言っておく。
「とりあえず皆、おしべとめしべとちゅーは全く関係無いから誤解しないでくれ」
幽香、逃亡により失格。
三時間目工作
「どうも~。河童の河城にとりっす。今日は船を作りたいと思います」
フレンドリーなにとりに皆もすぐに馴染んだようで、用意されていた木材や布などで小さな船を作り始めた。
工作の工程も刃物などは使わず、河童特製接着剤を使うなど安全面もしっかり考慮されている。
生徒の質問にもしっかり答えて、教え方も上手である。
(今回は何の問題も無さそうだな)
『激船! 白沢号』を作りながら慧音はにとりの授業に安心していた。
少し気になるところといえば、にとりが男女関わらず、見て廻っているときに尻をなでることだが生徒達も本気で嫌がっている様子はないし、あれもスキンシップの一つだと納得する。
ちなみに慧音もなでられそうになったが、拳骨をかまして撃退した。
授業も無事終わりに差し掛かり、にとりはまとめにはいる。
「みんな上手にできたみたいっすね。その船は実際水に浮かべて遊べるので是非試して欲しいっす。私が先生になったら、もっと色んなものを皆に作ってもらおうと思ってるんでこれからもよろし、うっ!」
突然にとりは口元を押さえてうずくまる。
にとりの豹変に皆心配そうにざわざわとしだし、慧音もにとりのもとへと駆け寄る。
「どうしたにとり! 具合でも悪いのか?」
にとりは震える指で自分の背負っているリュックを指差す。
「なんだ、降ろして欲しいのか?」
コクリとうなずくにとりを見た慧音はすぐにリュックを降ろしてやる。
リュックをうけとったにとりはそれを逆さまにする。
ドサドサドサ
中から出てきたのは大量の胡瓜。
そしてにとりは猛烈な勢いで胡瓜をむさぼり始めた。
すさまじい形相で胡瓜を食べ続けるにとりにドン引きする一同。
しばらく胡瓜を食べていたにとりだったが、食べ終えるとすっかり元通りになっていた。
「いやー、お恥ずかしいところをお見せしてしまったっす。皆もはまりすぎはよくないっすよ。酒や煙草は然り、クスリなんて論外っすからね。そうならない為にも自分の心を強く持つ事が大事っす」
「言ってることはごもっとも。しかしだな、お前が言うな」
「にとりーん」
にとり、色々な意味で危ないので失格。
四時間目特別授業
「やっほー阿求だよー。今日は先生やるけど皆よろしくねー」
皆と時々遊んでいる阿求はコミニケーションに問題は無い。
慧音が気になるのは阿求が自分より先生として優れているのかの一点である。
「見せてもらおうか阿求殿」
慧音の言葉に阿求はニヤリと笑うと授業を開始した。
「私が皆に教えるのは、幻想郷の妖怪についてです。まず身近なところだと慧音先生が半白沢なのはご存知ですね」
阿求の質問に生徒一同こくりと頷く。
慧音が人間ではないと理解したうえで寺子屋に通ってくれる一同に慧音はとても感謝している。
一同の様子を見た阿求は険しい表情になると重々しく言う。
「慧音さん、そして皆さんには酷かもしれませんが、慧音さんの危険度は高と言わざる負えません」
『!!!』
衝撃の発言に唖然とする一同。
(そんな、半白沢の私は危険な存在なのか?)
今まで里の人間達と仲良く暮らしていけていた慧音は衝撃を受けていた。
自分が本当に危険な存在ならもう先生も続けていられない。
そう考えていた時だった。
「失礼ですが慧音先生が危険な筈ありません。訂正してください」
ツリ目っ娘が立ち上がり抗議する。
それを皮切りにほかの生徒達も
「そうです。先生は今まで私達を守ってくれました!」
「阿求ちゃん酷いよ・・・」
と阿求に反対する。
「お前達・・・」
慧音は自分が思っていた以上に生徒達に慕われている事実にとても感動していた。
思わず皆を抱きしめたくなったが、これからの為にもここは自分の危険性を知っておかなくてはいけない。
「皆、気持ちはありがたいがここは阿求先生の話を聞こうじゃないか」
「慧音先生・・・」
慧音の言葉に皆静かになる。
そんな様子に嬉しそうな表情になった阿求だったが、表情を引き締めて授業を再開した。
「続けます。慧音さんが危険な理由。それは肌の露出が少ない服装からでもわかるおっぱいとお尻故なのです!」
『・・・はい?』
あまりにも予想外の答えに唖然とする一同に対してなおも阿求は熱弁を続ける。
「慧音さんのスタイルは素晴らしい! ただ真面目すぎる性格が危険度を高に抑えてしまっているのです。しかしですよ。こうすると」
そう言いながら阿求は黒板に服がはだけて上目遣いの慧音の絵を描き始める。
それはもう魂を削って描いてるんじゃないかという気迫と画力であった。
「ぜえぜえ、こうするとどうです! 危険度は激高になるんですよ!」
阿求の言葉にうんうんと頷く生徒一同。
そんな様子に慧音は突っ込む気力も無くし、出来ることは机に突っ伏すことだけであった。
生徒の心をしっかりつかんだ阿求のテンションは更にヒートアップする。
「いいですか皆さん。危険度を測るのに大切なのはスタイルだけではありません。大切なのはどれだけ萌えるかということです! 例えばミスティアローレライ。彼女の萌えポイントは耳です。あのちっさい羽のような耳、先っちょを触ると物凄く気持ち良さそうです! たまらん! しかもですよ。触るとくすぐったそうに『もう、やめてよ~』とか言っちゃったりして。ハアハア」
皆かつて無いほど授業に集中している。
しかし、そんな授業風景をみても不思議と負けたという気持ちが慧音には湧かなかった。
とにかく脱力感で体がいっぱいである。
「あはは。もう考えるのやめよう」
あいかわらず阿求が力説を続ける中
「失礼しま~す」
と阿求に仕えるお手伝いさんが入ってきた。
「幽香の場合はいかにもイジメッ子なのに時折晒してしまう純な部分がって、ちょっと今いいところなんですから」
とお手伝いさんを追い返そうとする阿求だったが、お手伝いさんは心配そうな顔をして
「阿求様・・・相当頭にキているみたいですね。今日はもうお休みください」
と言うが早いが阿求を抱っこする。
「なっ、皆が見てるんですよ! 恥ずかしいから離して、降ろして!」
とジタバタと暴れていた阿求だったが、しだいに顔を赤らめておとなしくなってしまう。
そんな阿求の様子に満足そうに微笑んだお手伝いさんは失礼しましたーと言って去ってしまった。
そんな様子を見ていたツリ目っ娘が呟く。
「阿求ちゃん・・・あなたの危険度も激高よ」
そして机に突っ伏している慧音のもとへ歩みよっていく。
「慧音先生。今日私は改めて確信しました。先生はやはりあなただけだと」
ほかの生徒達も慧音の周りに集まってきて慧音を励まそうとする。
「私、先生のこと大好きだよ」
「俺も先生のおっぱいとお尻が大好きです」
「僕も先生が慧音先生でよかったと思ってるよ」
「授業は退屈だけどそんなの関係ないぜよ!」
生徒達の優しい言葉に慧音は感動の涙を流して体を起こす。
「お前達・・・ありがとうー!!」
そう叫ぶと生徒達を両手いっぱいに抱え込む。
対する生徒達も慧音に抱きつく。
「よし、お前達! あの夕日に向かって走るぞ!!」
ちなみに今はお昼頃で夕日なんぞあるわけがない。
しかし、そんな突っ込みをするほど空気の読めない生徒は一人もいなかった。
太陽に向かって走る慧音と生徒達の光景はとても美しいものだった。
「ありがとう皆! 先生はこれからも頑張るぞー!!」
愛しい生徒達の為にと決意を新たにする慧音であった。
がんばれ慧音先生! 負けるな慧音先生!!
幻想郷の未来はあなたに掛かっているぞ!!
ここまで壊れている阿求も珍しいwww
阿求どうしたwww
『ぜよ』ツボに入ったww
ゆうかりんはやっぱり純情なのか。
にとりは別に良いと思う俺は異常?
あっきゅんは…ノーコメント
結論 妖夢なら大丈夫じゃね? あ、生徒に弄られるってオチか
にとりだけ妙に尺が短いところが気になりました
あっきゅんの授業には興味あったけど、まさかそうくるとは。
しかし、ませガキ少しは自重してくれwwww
せっかくネタとテンポが良いのでもう少しボリュームがほしくなりました。
だがそれが(ry
土佐弁乙!!
妄想の産物というのも分かります。
書くたびに文章としては読みやすくなっているので、非常に頑張っていると思える作品でした。
しかし幻想郷にもませガキがいるんですねw 慧音先生が可愛そうです。
個人的には回想部分の入りで使われる擬音は無いほうがいいのではないかなー、と思いますよ。
ミスティアの耳! ミスティアの耳! 背中の羽も素晴らしい!
……ごほん。突き進んでいくラストが大好き。
ものすごい収集のつけ方であった。
正直自分も慧音のようにどんな授業をするのかわくわくしていましたが、まさかここまですごいとはwwwwww
だがしかし言ってることはすごく正しいな、うん
普通に色々話してみたいわ
貴方が一番輝いてみえるぜwwwwww
あとラストは吹いた
ただ、阿求のあれはちょっと強引なような気も。
おとうさんとおかあさんに教えられたように子供はこうのとりが運んでくると信じているのです!キャベツから生まれてくるでも可!!
肉体的には強いけど精神的には純で隙が多いゆうかりんうふふ。
…はっ! 取り乱しました。忘れてください。とりあえずゆうかりんうふふで100点追加で…なんだ!ここは100点までしかないではないか!こんなことがゆるさr(スキマ送り
>このこしゃまっくれた少女がどれほどの
こまっしゃくれたではありませんでしたっけ?
俺もだ、同志w