このSSはフィクションです。
実際の人物、団体とは一切関係ありません。
7:59(プッ)
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8:00(ポーーーン)
オープニングテーマ『厄神少女の通り道』
作曲:ZUN氏 作詞:暇人KZ
暗めく空 蠢く闇に
蔓延る悪 踊る影
平和を乱す 不貞の輩
そんな奴らは 許せない
厄神少女カギィの名を お空に叫べば
すぐに 笑顔デリバリィ
あなたのもとへ (お届け♪)
厄神少女カギィの名を 彼方に叫べば
すぐに 平和デリバリィ
あなたのもとへ
「この番組は、ご覧のスポンサーの提供でお送りします。」
提供
スキマ運送
八意製薬
スカーレットカンパニー
『第1話 厄神少女、誕生』
厄神少女からのお願い:テレビを見るときは、お部屋を明るくして、離れて見てね!
ゴロゴロと6畳間に寝そべりながら、
だらしない格好で新聞を捲る。
文々。新聞と銘打たれたその新聞は、
普段ならば4コママンガの『ボコちゃん』しか読まないのだが、
今回ばかりは4コママンガには目もくれずにある記事を探す。
第5回東方シリーズ人気投票結果発表。
これである。
初登場にて1位を華麗にかっさらう私。
ふふふ、素敵だわ。
びりっ、とポテトチョップス・コンソメキック味を背中を破って開封。
ちょっとセレブリティに3枚重ねで口に運びながら、
私は新聞の活字に目を落とした。
1位:博麗 霊夢
ちょッ!?
あの万年腋役がついに1位!?
まさか、買収・・・?
いや、あの貧乏巫女にそんな資金があるわけないし・・・。
ま、まあいいわ。
初登場で1位なんて、流石に厚かましいわよね。
ええ、そうよ。
1位は古参に譲ってあげたのよ。
私は慎ましやかに2位の座に
2位:霧雨 魔理沙
あンの黒白、少しは自重しなさいよ!
あれだけ1位を獲っておきながらまだ上位を取り足りないって言うの!?
まったく、厚かましいったらありゃしないわ!
ぱりぱりっ。
うん、美味しい。
やっぱりポテトチョップスはコンソメキック味に限るわぁ。
濃い塩味とか、高血圧まっしぐらじゃない。
ありえないわ。
・・・さて、気をとりなおして。
きっと3位ね。
3位ならまだメダル圏内。
まあ100歩譲って3位でも我慢しましょう。
3位:射命丸 文
―ばしゃァ!!
あら、いっけなぁい!
お茶こぼしちゃったわ。射命丸 文の文字にピンポイントで。
まあいいか。カラスだし。
きっと4位よ、4位。
4位:十六夜 咲夜
・・・・・・。
ご、5位ね!
5位:レミリア・スカーレット
ま、まだまだ!!
6位:西行寺 幽々子
7位:八雲 紫
8位:アリス・マーガトロイド
9位
10位
11位
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
な、無い。
私の名前がない。
これだけ人間のために自身を犠牲にして人間達に尽くしてあげてるのに・・・。
どうして私の名前がないのォ!?
19位:中国
20位:風見 幽香
20位より下は載せる価値なし!(by文)
「なっ―――」
余りの衝撃に新聞を取り落とすと、
わなわなと震える自身の体を抱きしめた。
無い。
どこにもない。
鍵山 雛の名が。
いつも陰ながら人類に尽くしている私の名が。
慌ててもう一度確かめようとして、
・・・しかし出来ない。
もう一度確認するのが怖い。
だって、そこに並んでいるのは、
自分よりも優れた者達の名だけなのだから。
「・・・・・・はぁ。」
ポテチョを5枚同時に大人食いしてから、
今度はテレビのリモコンに手を伸ばした。
直視するには、現実はあまりに厳しかったのだ。
人間や妖怪たちの中で人気投票が20位以下。
神様なのにィ!!
しばらくしてから、テレビから音と映像が流れ出す。
とりあえず気を紛らわせようと、適当につけたチャンネル。
やっていたのは子供向けのアニメだった。
よくある、変身魔法少女モノというやつだ。
魔法のステッキをくるくる回すと、主人公の少女が変身するのである。
変身すると魔法が使えるようになったり、
巨大化して十字に組んだ腕から光線が出るようになったり、
3分以内に怪獣を倒さないといけなくなったりするらしい。
最近見始めたばかりなのであまりよく知らない。
さて、ブラウン管のなかでは、丁度主人公の魔法少女が悪者を撃退するシーンだった。
* * *
「いくわよ、スーさん!」
魔法少女がステッキをくるくる回しながら、舞うようにステップを踏んだ。
フリフリした装飾過多のスカートが可愛く舞う。
「コンパロ、コンパロ~。毒よ集まれ~!」
すると、どこからともなく毒々しい色の煙が噴き出して、
悪の戦闘員を包みこみ始めた。
「げほっ、げほっ!! ちょ、これホント苦しいッ!?」
「しっかりしなさい戦闘員1号!」
「無茶言わないでくださいよ咲・・・、げほごほっ!!」
煙を大量に吸い込んでしまった戦闘員の動きが鈍る。
その隙を、魔法少女は見逃さない。
「動きが鈍ったわ。今よ!
マジカル―――」
魔法少女の決め技だ。
精神を集中させるように目を閉じて、
びしっ、と魔法のステッキを戦闘員に向けて振るった。
「―――ポイズンブロウ!!」
―ぼしゅッ!
という音と共に、戦闘員1号の足元から毒の煙が噴き出した。
戦闘員1号の体が跳ね上がるほどの勢い。
哀れ戦闘員1号は空の彼方に消えていった。
「くっ、覚えていろ、マジカル・メディ!」
口惜しげに捨て台詞を残して、悪の幹部は退散していった。
魔法少女の勝利だ!
「私と鈴蘭畑がある限り、この幻想郷の平和は乱させないわ!」
強いぞマジカル・メディ!
可愛いぞマジカル・メディ!
幻想郷に悪の野望がある限り、マジカル・メディの戦いは続く!
次回予告
「わ、私の毒団子が効かない!?」
マジカル・メディの得意技、『マジカル毒団子』を破る敵が現れた!
ホワイトスフィアという謎の集団からやってきた新たな敵とは!?
我らがマジカル・メディはそれを打ち破ることができるのか!?
次回、毒殺人形『マジカル・メディ』
第24話『ピンクのあくま』
来週もまた見てね!
* * *
最近放送している人気番組だ。
ついつい魅入ってしまった。次回予告までしっかりと。
主人公の魔法少女の可愛さと、得意技は暗殺というエグい設定がなんとも言えず『モエ』らしい。
いかに戦わずして勝利を納めるかという、なんともストイックで不思議な番組だ。
ほとんどの話では、戦闘の前に『マジカル毒団子』で悪役がやられてしまうことが多い。
今回の戦闘シーンはごく稀な例である。
そんな不思議な番組が、実は今猛烈なブームとなっている。
主人公役のメディスン・メランコリーも人気大高騰だ。
・・・ん、人気大高騰?
「こ、これだわ!!」
雛に雷で打たれたような衝撃が走った。
まさに天啓。
天のお告げだ。
「ふ、ふふふふ、これで私も人気者よ!!」
そうと決まれば善は急げ!
思い立ったが吉日!
据え善成さぬは神の恥!
雛は早速計画を実行に移すべく、その6畳間を飛び出していったのだった。
「・・・・・・やっと帰りましたよ、八坂様。」
「ったく、まるで我が家のようにくつろぎよってからに。
いくら自分の家に『てれびじょん』がないからって、毎日のように通うのはよして欲しいね。」
「あ~あ。なんでちょっとしか食べないのにポテトチョップスの袋背中から開けるんですかねぇ。
これじゃあ輪ゴムで密封できないじゃないですか。」
「おっ、水戸紅門の時間じゃないか。早苗、何チャンだっけ?」
「3チャンネルですよ。あとこれ食べちゃってくださいね。」
* * *
ぴくっ。
不機嫌そうに眉が動いた。
苦虫を噛み潰したような顔で、本から顔を上げる。
整然と並ぶ本棚の列の隙間。
わずかに動く黒い影が視界をよぎった。
「・・・またか。」
パチュリー・ノーレッジは、砂糖を入れ忘れてミルクだけ入ったコーヒーを飲んでしまったかのような、
もう不機嫌すぎてそろそろ悟りが開けそうという顔になる。
「あの、パチュリー様・・・。」
「またいつもの侵入者よ。なんのためにあなたがここにいると思ってるの、小悪魔?
あとで折檻ね。」
「ああん♪」
なぜか嬉しそうに腰をくねらせる小悪魔にアグニシャインの上級を叩き込みつつ、
パチュリーは立ち上がった。
そろそろこいつも代え時かも知れない。
最近わざとミスを重ねているように思えてならない。
「さて、ネズミをつまみださなくちゃ。」
探査の魔法を張りながら、パチュリーは本棚で形作られた通路を歩く。
迷うことなく一直線。
あっさり探査に引っかかる辺り、もう開き直ってるとしか思えない。
まもなく、意気揚々と本棚を漁るネズミを発見した。
満面の笑顔で手当たり次第に本を見繕っては、
後ろに積まれた本の山に乗せていく。
既にネズミの身長を大きく越えている高さ。
「よっ! ほっ! ぬっ!!」
限界まで背伸びをして、本をまた一冊重ねた。
もう背伸びしても一番上には届かないだろう。
ところが、そのネズミはさらにもう一冊、本を棚から引き抜くと、
パチュリーのほうを見て手を振った。
「おう、パチュリー。いいところに来てくれた。
ちょっと肩車してくれないか?」
「てめぇマジぶっとばす。」
「まあそう言うなよ。減るもんじゃなし。」
「減ってんだよ本が!! 現在進行形で!!」
「パチュリーどうした? いつもとキャラが違うぜ?」
「お前が代わりにキャラ変えろよもぉー!!」
どたんばたんと地団駄を踏みながら、パチュリーは怒鳴り散らす。
それに霧雨 魔理沙は、
「変な奴だなぁ。」
と呆れた顔で見つめ返し、
「変なのはあんたでしょ!? 常識的に考えて!!」
やれやれ、付き合いきれないな、というため息をついてから、本棚との格闘に戻った。
「あるェ~!? 変なのは私のほう!? そんな気がしてくるから不思議!?」
もう相手にもしてくれない。
なにこれ?
私が困ったちゃん?
もう駄目。
こいつと対話してると頭がおかしくなりそう。
もう誰でもいいからこいつをなんとかしてくれ。
「待ちなさい!」
図書館に威勢のいい声が反響した。
「だ、誰だ!?」
魔理沙がそれに反応して、注意深く辺りを見回す。
咲夜の声ではない。
今はフランドールのお茶の時間。
今頃、咲夜は鼻血を吹き出しながら、その勢いでトリプルアクセルしているはずだ。
かといって、レミリアの声であるはずも無い。
レミリアは基本的に、図書館の侵入者に対しては基本的にノータッチなのだ。
レミリアに図書館の被害について訴えると、
よちよち歩きを始めた赤ん坊を見るような目で微笑んでくるからむかつく。むかつく!
それはともかく、パチュリーは今の声を聞いたことはない。
「とうっ!」
本棚の上から一つの影が舞う。
それは空中でクルクルと回転し(縦ではなく横)、
すたっ、と詰まれた本の山の上に降り立った。
「って本の上に立つなコラァ!!」
「それ以上の悪事は見逃せないわ!」
「スルーかよ!!」
ビシッ、と何事もなかったように魔理沙を指差すその人物は、
「・・・なにやってんだ、雛?」
「正義のヒロインよ!」
そう。我らが正義のヒロイン、鍵山 雛。
その正義のヒロインを、助けてもらうはずのパチュリーは心底迷惑そうに見上げている。
これはまた、とんでもなく厄介そうなのが来た・・・。
「とりあえずその本の山から降りてくれない?
もしくは、せめてそのブーツを脱いで。」
「私が来たからにはもう安心!」
「できねぇよ!! いいから降りてよもぉー!!」
紫色のもやしっ娘はもう半泣きだった。
おのれ、悪の手先め。
こんないたいけなもやしっ娘をいぢめるなんて!
なんてうらや
なんてひどいことを!
断じて見逃すわけには行かない!
「変身よ! マジカル・アミレット、トレースオン!!」
説明しよう。
どこにでもいる普通の厄神様、鍵山 雛は、
魔法のアミュレットの力を借りることにより、
正義のヒロイン、厄神少女に変身できるのだ!!
そのアミュレットから、キラキラとした不思議な光が放たれ、
突如、目も眩むような激しい閃光を発した。
「うわっ!?」
とっさに、魔理沙とパチュリーは目を閉じた。
反応が遅れた小悪魔は、「目が、目がぁぁぁあああ!!」と床をのた打ち回っている。
あともう少し反応が遅れていたら、アレと同じように地べたに這いつくばっていたことだろう。
いきなり不意打ちの目潰しとは、正義のヒロインが聞いて呆れる。
やがて、アミュレットの発光が収まると、
そこには雛が 変わらぬ姿で 立っていた。
「って、変身してねぇし。」
「うん。このアミュレット壊れてるから。」
「直してから来いよ!?」
「いやもういっそ来んな!! つか本の山から降りろぉ!!」
アミュレットの力を借りて厄神少女のなった雛は、
その場でくるりとターンしてから、
「本気と書いてマジと読む。
厄神少女、本気狩ル・カギィ!
神に代わって―――」
―ビシッ!
決めポーズ。
「―――天誅よッ!!」
* * * 『厄神少女カギィ』(アイキャッチ) * * *
「たたたたた大変だァァァアアア!!!」
「ちょっと、落ち着きなさい藍。どうしたの?」
「橙が、橙が傘を忘れて出かけてしまったんですよ!!
見てください紫様、この土砂降りを!!
きっと今頃、橙は雨宿りしながら寒さに震えているはずです!!」
「だから落ち着きなさいって。」
「これが落ち着いていられますか!?」
「スキマ運送があるじゃない。」
「・・・そ、そうですね!! もしもし、スキマ運送さんですか?」
いつでも、どこでも、どこまでも。
貴方のまごころ、届けます。
『スキマ運送』
* * *
「痛ッ。」
「あら、ウドンゲ。大丈夫?」
「あう、師匠・・・。ちょっと包丁で切ってしまったみたいです。」
「そんな時はこの、八意製薬の『ヤゴコ・オロナイン』の出番よ!」
「い、いいですよ! 唾でもつけとけば治ります!!」
「駄目よ。さ、指を出しなさい。」
「いやいやホントいいですから!
その軟膏なんだか煙吹いてますし!! うじゅるうじゅると蠢いてますし!!」
『ビギィィィイイイ!!』
「鳴いた!? 普通軟膏に鳴き声なんかありませんから!!
や、やめ、アッーーーーー!!!」
「塗り塗りっと。さ、もう大丈夫よ。」
「ヤッターナオッター! ヤゴコロスゴイヨー!!」
切り傷擦り傷、火傷に捻挫。
恋に破れた硝子のハート。
貴方の傷を、癒したい。
『八意製薬』
* * *
「はぁ~、疲れたぁ。ご飯作るのしんどいなぁ。」
お任せください。
「やっべー、今から彼女来るってのにこの部屋きたねぇ!!
急いで掃除しねぇと・・・!!」
ご心配なく。
「激ロリかわいいメイドさんにご主人さまって言わせたい! さまは平仮名でッ!!」
X歳からXXX歳まで、幅広く取り揃えております。
「村長、大変だ!! 西の洞窟のドラゴンがこの村に向かってる!!」
「なんじゃと!? このままでは村が・・・!!
どこかに腕の立つ戦士はおらぬものか・・・。」
スタッフの平均LVは80です。
「たいへん!たいへん!
おうさまがこんな すがたに かえられたよ!
まほうのつえを とりかえしてください。」
どんなヒゲよりも早く取り返します。
貴方のニーズに応えること。それが私たちの誇りです。
信頼と安心のメイド・イン・スカーレット。
メイド派遣会社『スカーレットカンパニー』
* * * 『厄神少女カギィ』(アイキャッチ) * * *
「本気と書いてマジと読む。
厄神少女、本気狩ル・カギィ!
神に代わって―――」
―ビシッ!
決めポーズ。
「―――天誅よッ!!」
「お前も神だろ!!」
魔理沙が思わず我を忘れてツッコミ。
あの、傍若無人に手足を付けてグレースケールにしたような魔理沙がだ。
パチュリーは魔理沙よりもヤバい奴が乱入してきたと、このときようやく確信した。
駄目だこいつら、早くなんとかしないと・・・!!
「正義のヒロインだかなんだか知らないが、私は別に悪いことをしていたわけじゃないぜ?」「嘘吐けよ!!」
「ふん、悪者はみんなそう言うわ。」「お前も十分悪者だよ!!」
「本当さ。孤独なもやしっ娘に愛の手を差し伸べていただけだぜ。」「誰のことだよ!!」
「嘘ねッ! ならどうしてそのもやしは泣いてるの!?」「主にお前のせいだよ!! 『っ娘』をつけろよデコ助野郎!!」
睨み合う二人。
もう戦いは避けられない。
せめて神社でやってくれ、とパチュリーは心の底から思うのだった。
「どうやらやるしかないようだな。雛・・・いや、厄神少女カギィ!」
「覚悟が決まったようね、悪の手先め。
そこのもやし、危ないから下がってなさい!」
「テメェはそこから降りろ!!」
―カッ!!
閃光が疾った。
魔理沙の不意打ちイリュージョンレーザー。
しかし、カギィはそれを読んでいたかのように跳躍してかわす。
ブーツの足跡が存分につけられたグリモワールが一冊、灰塵に帰した。
ああ、うん。もうどうでもいいや・・・。
パチュリーは、「そんなことより厄神少女カギィってネーミングセンスどうよ?」と考えることで、
頑張って現実逃避を図ることにした。
厄神少女カギィだって。カギィ。ぷぷっ!
「くっ、ちょこまかと!!」
「無駄よ魔理沙。いくら火力馬鹿の3本レーザーでも、当たらなければ意味は無い。
いくわよ、ヤーさん!!」
「や、ヤーさん?」
周りを見回してみても、カギィの味方はいない。
一体誰のことか。
「そうよ、ヤーさん。厄のヤーさん。」
「ヤクのヤーさん!? ヤクザ屋さんかよ!!」
こいつ、実はとんでもないものを味方につけてるんじゃなかろうな。
そんな奴が加勢してくる前に、さっさと決着をつけなければ。
魔理沙は高火力の高速モードから、命中精度の低速モードに切り替える。
―ガタァン!!
カギィが足場にして蹴った本棚が、収まった本を雨のように降らしながら反対側に倒れた。
その音でパチュリーは現実に引き戻される。
現実は逃がしてくれなかった。
「死にさらせ!!」
日符『ロイヤルフレア』
突如、カギィの目の前の空間が爆裂した。
カギィはふわりと舞うように、しかし素早くそれを回避。
すとっ、と小さな音を立てて床に着地した。
「魔理沙、今だけ協力するわ。あのデコ助野郎を潰すわよ。」
「タダで人の力を借りる気か? ムシのいい話だぜ。」
「アレを潰したら、ここにある本どれでも好きなの50冊くれてやるわ。
それと、力を貸すのは私のほうだ。」
「さっすが、もやしは話がわかるッ!」
「あいつの次はお前だ魔理沙ッ!!」
二人の手から同時にレーザーが放たれた。
ダブルノンディレクショナルレーザー。
カラフルなレーザーをひょいひょいかわしながら、
カギィは表情を険しくした。
「もやしも攻撃してきた・・・。まさか、操られているの!?
どこまでも卑劣なやつね、魔理沙!!」
悪の手先が味方や一般人を操って襲い掛かってくるのはもはや定説。
誤解だがそんなことはどうでもいい。
とにかく一分一秒でも早くあのデコ助野郎を図書館から追い出したかった。
苛烈な弾幕がカギィを攻め立てる。
「くっ、流石に2対1は厳しいわね。
こうなったら必殺技よ!」
カギィはアミュレットを取り出した。
説明しよう。
厄神少女カギィは、魔法のアミュレットに呪文を唱えることによって、
魔法の力を扱えるのだ!!
「いくわよ、ヤーさん!」
カギィはアミュレットを胸元に掲げると、
精神を集中するように目を閉じた。
「ボミオス、ボミオス~。厄よ集まれ~!」
カギィが呪文を唱えると、
なんだかどす黒くてよくわからないもやもやした物体が周囲に集まり始めた。
「よし、動きが鈍ったわ。」
「「そりゃ鈍るよボミオスだもん!!」」
魔理沙のすばやさが72さがった。
パチュリーのすばやさが69さがった。
「今よ、真剣狩ル―――」
「「さっきと漢字違うし!!」」
「―――『ブロークンアミュレット』!!」
「「弾幕ッ!?」」
雨のような豆弾幕が魔理沙とパチュリーに襲い掛かる。
動きの鈍った二人にそれがかわせるはずもなく、
二人はなす術もなく弾幕の雨に巻き込まれた。
「「イ゙ェアアアアアアアア!?!?」」
* * *
静けさを取り戻した図書館。
転がる二つの屍。
ふっ、とカギィの顔に影が落ちる。
「戦いはいつもむなしい。」
「死んでねぇよ!!」
パチュリーが顔だけ上げて怒鳴りつけた。
とはいえ、実際もうぼろぼろで動けないのは事実である。
魔理沙はもうツッコミを入れる気力すら残っていない。
厄神少女の勝利だ!
「悪は滅びたわ。」
「目の前にいるよ。ふんぞり返ってる巨悪が。」
「困ったことがあったら、またいつでも呼びなさい。
呼ぶときは竹取飛翔のBGMにあわせて『カギィ、カギィ、助けてカギィ♪』よ。」
「はいはい。」
「違うわ。返事は一回。頭とケツにサーとつけるのよ。」
「早く帰れよもぉー!!」
ぴくっ、とカギィがなにかに反応した。
室内で見えるはずの無い、遥か彼方のほうを向いて、
「はっ、誰かが助けを求めているわ!」
「幻聴だよ!!」
「私はもう行かなければならないけど、心配はいらないわ。
私はいつもあなたたちの傍にいる。
だから私が去っても悲しまないでね。」
「やったー! バンザイ! バンザーイ!!」
悲しむどころか、諸手を挙げて泣いて喜ぶパチュリーを尻目に、
厄神少女カギィは図書館を去っていった。
幻想郷のどこかで、助けを求めるか弱き者たちの元へ。
強いぞ本気狩ル・カギィ!
可愛いぞ真剣狩ル・カギィ!
幻想郷に悪ある限り、厄神少女は戦い続けるのだ!
「・・・さて。」
厄神、というか災厄の塊が去ったところで、
改めてパチュリーは図書館を見渡した。
力尽きて動けない者、1名。
目潰しされて転げまわっている者、1名。
倒れた本棚、11架。
焼けた本、・・・・・・数えたくもない。
被害総額、プライスレス。
被害は、それだけで末期の鬱病になれるほど甚大だった。
さてこの被害、どうしたものか。
焼けた本はもう仕方ないとして諦めるが、
この倒れた本棚はなんとかしないと。
メインの労働力である小悪魔は使えないし。
咲夜には時間はあるが力がない。
倒れた本棚を一人で戻すのは無理だろう。
力といえばレミリアだが、
レミリアはこんな下っ端がやるべき仕事はやらないだろうし。
紅魔館のメイドを総出動で働かせればなんとかなるかもしれないが、
それでも流石に時間がかかる。
とにかく必要なのは人手だった。
はぁ・・・。
猫の手も借りたい気分だわ。
「呼んだ?」
「帰れよもぉー!!」
次回予告
ついにあの月の頭脳が動き出した!
エタニティラボより次々と送られてくる刺客。
因幡 てゐの張り巡らせる、卑劣な謀略。
狙った尻は外さない。スナイパー・Uの精密狙撃。
厄神少女カギィにかつてないピンチが迫る!!
次回、厄神少女『本気狩ル・カギィ』
第2話『厄神少女よ、永遠に』(終)
「神に代わって、天誅よ!」
「「打ち切りかよッ!!」」
こういうの好きな人はいるんでしょうけど、自分には合いませんし。
しかし話としてはちゃんとできてますし本気でどうすればいいのかわかりません。点数はそんな自分の葛藤分です。良い意味でも悪い意味でもないんです。
……本当に評価に困りました。
まぁ作中に突っ込みをいれるのならば。
パチュリー先生ずいぶん足が速いんですねw
悪くは無いんですけど楽しくも無く・・・。
ホントになんか微妙でした。
お話はちゃんと作られているとは感じましたが・・・ただ面白みに欠けたかな、と。
次回に期待したいですね。
CMでやられたので80点
センスはあると思うんだけどなぁ
華麗に一位って……何でそんなに自信満々なんだ雛w
戦わない魔法少女マジカル・メディは見てみてえ
「」内の最後の『。』は不必要ですよ
読んでてもそれが伝わってくるほどでしたw
むしろマジカル・メディが見たくなってくるw
個人的にこういうノリは嫌いじゃないです。
スカーレットカンパニーのCMが特にツボ。
スカーレットカンパニーのLV80スタッフにパッチュさん(ついでにこあさん)が入ってるならボミオスの件は頷ける。
あなたアホでしょう?(褒め言葉)
カギィ?打ち切りには興味ありません。
懐かしいw
マジカル・メディ見てみたい