$月○日
今日はお嬢様がどこから見つけたのか、
暇だからチェスをやろうとチェス盤と駒を持ってこられた。
咲夜とはやった事ないからやってみたいとおっしゃられてしまうと断る事はできない。
時折時を止めて掃除をしてたから仕事に関しては大丈夫だったわよ?一応。
本気でやらないと駄目よ、手加減されて勝ったなんてほうが私は許せないんだからと
おっしゃられたので本気でやらせてもらった。
そしたらボコボコにしてしまい、お嬢様は少しいじけてしまった。
うーん・・・もう少し拮抗しているようにするべきだったわ。
$月×日
錠剤が切れたので永遠亭へ。
相変わらず人里からの客だったりあんたどこの妖怪よ?な奴もいたりで
ある意味紅魔館以上に多種多彩に客が来ていた。
まぁ紅魔館にくる連中は面子が面子だしねぇ・・・
月兎は一生懸命こき使われてます、な感じに働いてたけど不満事はもう然程無いみたい。
前に色々とアドバイスしてあげたり八意永琳のおかげなのかもしれないわね。
強いて言うなら詐欺兎のツケを毎度払わせられる貧乏くじだけは引いてるみたいだけど。
八意永琳の診断の後、少し雑談を交わした。
やれ詐欺兎のせいとは思わなかった、やれ今度やったら鍋にしてやろうかしらなどなど。
とりあえず彼女の後ろで宙吊りにされている詐欺兎は見なかったことにしておいた。
その下にぐつぐつと煮えている釜が見えたような気もしたけどそれも見なかったことにした。
ていうか診察室でやるのはどうかと思うんだけど、普通の客が逃げるわよ・・・
それと蓬莱山輝夜が三日間いなくなってた事を聞いた。
気づいたのは帰ってきた時だそうだ、いったいここの姫は普段何をやってるのよ。
そしていくらなんでも気づきなさいよ永遠亭の連中・・・
$月□日
庭の花の手入れをしていたら前にハリセンで引っ張ったいた白いのと黒いのが。
一瞬黒に身構えちゃったのは内緒よ?まだちょっとトラウマ気味なんだから仕方ないのよ。
また春ですよーとか春だーとか言いながら弾幕張るのかと思ったら普通にお客だった。
まずお土産として人里の桜饅頭を貰った。
お土産を持ってくる客を久々に見た、ちょっと感動して泣きかけた。
幻想郷じゃどこぞの巫女とかどこぞの白黒とかどこぞのスキマとかに代表されるように
土産一つ無く我が物顔で来る奴が多くて困るわ、常識を持った奴が少なすぎるのよ。
でもこの春の妖精2匹が常識持ち側だったのは意外だったけど。
何の用か聞いてみたらメイドって楽しいのか、ということだった。
初めてだわ、こんな事聞かれたの。
何でそんな事を聞くのか尋ねてみたら紅魔館に妖精がいっぱいメイドしてるから
どんな理由があるのか、楽しいからかどうなのか知りたい、聞いてみよう、ということだった。
楽しいのか、と言われると私にはわからないわねぇ、メイドは。
もう私にとっては生きてる意味みたいなものですもの、楽しいかどうかなんてわからなくなったわ。
というわけで白いのと黒いのにはメイド妖精達に聞いてみれば?という許可を出して
後で報告してほしいと頼んでみた。
あの連中が何考えてやってるか一つの参考になるでしょ。
そして結果・・・
曰く、メイドって何か凄くね?
曰く、紅魔館ならただ飯できるじゃん!
曰く、来た理由は忘れたけどメイド長面白いじゃん?だからやってるのよ、この前お仕置きされたけど。
曰く、曰く、曰く・・・・・・・・・どいつもこいつも・・・!
これ書いてる間やっぱり錠剤噛み砕いてるのは言うまでも無いわね。
とりあえず数名にしっかりと教育的指導をしておいた。
結局春妖精2匹はメイドって面白いんだーという認識になってしまった。
もうなんでもいいわ・・・
$月◎日
珍しいところから助けて欲しいと言われた、まぁどこぞのハクタクなんだけど。
何でも藤原妹紅に関してで何かあったそうで人里に関して世話になってるから
その住まいに行ってみたら異臭がするじゃない。
時を止めて一気に入って部屋の窓という窓を開けて状況を確認したら
上白沢慧音は居間の机に突っ伏して死にかけてるわ、
何か得体の知れないものを藤原妹紅は食べてるわでなんというか今直ぐ見なかったことにしたかった光景ね。
とりあえず時を動かして事情を聞いてみたら得体の知れないものは創作料理だって。
あぁ、これか、これが困り事なのねとその瞬間把握したわ。
まさに舌は下を知り尽くした、とでも言うべきかしら。
野良暮らしが長かったのかどうか知らないけどあれは創作じゃない、創造の域だ。
料理は器に世界を作るものだというけれどあれ程の次元は見たことが無かったわ。
本人がうん、今日も美味いとか言い出すから始末におえなかった。
とりあえず、以後必ずレシピ通りの品を作らせるようにと上白沢慧音に頼み、
こういった創作料理は絶対にするなと当人に言っておいた。
不満げにしていたけど一度宴会場でやってみなさい、あなた絶対ボコられるから。
$月△日
今日はまぁ大した事件は無かった、胃にちょっと優しい日。
またあの駄目門番がサボり入れてたのだけは錠剤一噛み砕きだけど。
まったくあの門番は・・・・・・
毎度毎度昼寝しては私にお仕置きされてるのに懲りないのかしらねぇ。
言い訳聞いてみればお腹いっぱいだったからとかいい日差しがとか
私からのお仕置きレベル上げたいのか、むしろそっちの側か、と言いたくなる様なもんだし。
まぁそれでもちゃんと今まで紅魔館の門番してきてたのは事実なんだけど、ね。
だからといって寝ていいわけじゃないけど。
そういえば前に聞いた事がある、私にこうもお仕置きされて反撃しないのかと。
返答は確か・・・メイド式フルネルソン喰らわせた後に言ってたわね、えーと・・・
あぁ、思い出した。
―――美鈴、何で私にこうまでされて何もしないのよ?悔しいとか思わないの?
―――咲夜さんは誰もが認める紅魔館のメイド長じゃないですか。
―――咲夜さんは立派にやられているからこそ、私がサボっているのが許せないんでしょ?
―――そんな方に手をあげたら門番失格ですよ、ていうかお嬢様や妹様に殺されちゃいますよ。
だったかな、確か。
あの時は珍しく真剣な顔になって言ってたわね、そういえば。
でも結局あれから何にも進歩してない、進歩する気があるのかすら疑わしい。
わかってるんだったらいい加減どうにかしなさいよね。
・・・・・・でもそれが美鈴らしい、ってことなのかしら。
まったく、本当に困った門番だわ、あの子は。
$月@日
何と珍しいというか時期を間違えた客が来た。
秋の神姉妹が何か不満そうな顔でやってきた。
とりあえず何かやった覚えは無いので話を聞いてみると単なる愚痴だった。
瞬間的に蹴りだしてやった、しかし神様なんだぞーえらいんだぞーと涙目で訴えられたので
仕方なく愚痴に付き合ってあげることに。
やれ秋以外じゃ存在してないような扱いだわとか
やれ宴会にも呼んでくれないのは酷すぎるとか
まぁそれこそ色々なうっぷんを口々に言って少しすっきりした顔で帰っていった。
んで、この私の溜まったうっぷんはどうすればいいのよ・・・
はぁ・・・錠剤のラムネ味が美味しいわ。
$月$日
何ていうかもう休んだのに疲れがいっぱいっていう感じね。
実は今、この日から二日経っている。
理由は日記をつけられなかったから。
なので順々に書いていこうと思う。
この$日に、永遠亭にて療養する事になった。
理由はまぁ普段から錠剤噛み砕く程の心労と過労が祟ったみたいなんだけどね。
脅迫紛いのことされて一日か二日程休んでいくようにと八意永琳に言われ、
詐欺兎が紅魔館にその旨を伝えに行ったんだけど・・・
まさか、あんな事になるとは思わなかったわよ、はぁっ。
「たぶん心労、それと普段の疲労がここにきて体の許容量を突破しつつあるってところかしら」
今私は永遠亭に来ている。
どうにも今朝から調子が悪かったので空き時間に診察してもらったわけだ。
無論完璧で瀟洒なメイド長である私が周囲に気づかれるなんていうヘマはしていない。
普段通りにお嬢様と妹様のお世話をし、館内の掃除もしてきた。
その代価として悪化したけどね、調子の悪さ。
「うーん、参ったわね・・・確かに最近睡眠時間も少なかったし。
錠剤を噛み砕く量も増えてたわね・・・」
経理を夜中にまとめたりしてて最近睡眠時間を削ってたのと
昨日の秋の神姉妹の愚痴が引き金になったのかもしれないわね・・・
あーこういう時自分の人間としての弱さを感じるわね。
「全く、幻想郷一の働き屋ねあなたは。
そりゃ皆から相談屋とか苦労人とか言われるわよ」
言い返せないところがあるのが痛い。
「それで・・・どうすればいいのかしら?」
薬で何とかなるならそれに越した事はないわ。
これから仕事は山ほど出てくるでしょうし。
「そうねぇ・・・・・・一日二日ここに泊まっていきなさい」
「え? 」
ちょっと待って・・・泊まっていけ?永遠亭に?私が?
「どうせ帰ったらあなた止めても仕事するでしょうし。
ここなら私達が監視できるから大丈夫だし。
あぁ、時を止めて逃げようとしたら以後あの錠剤出さないからね?」
ぐっ・・・それは困るわね。
というか脅迫紛いの事してくるなんてとんだ藪医者ね。
「あら、幻想郷じゃこのくらいじゃないとやってられないでしょ?
ただでさえ人の話聞かない奴、我が道つっぱしる奴ばっかりなんだから」
・・・・・・・・・・納得してしまった自分が嫌。
「はい、こちらのお部屋です。
何かあったらベッド横の鈴を鳴らしてください」
月兎に案内された病室は掃除の行き届いた綺麗な和室だった。
さすが八意永琳、こういうところも抜け目無しね。
「ありがと、まぁたぶん暇で呼ぶくらいでしょ」
単なる心労過労なんだから。
「では、紅魔館のほうには私達の方で伝えておきますね。
たぶんてゐ辺りが行く事になると思いますが」
えぇ、よろしくね、と返すと月兎は静かに出て行った。
とりあえず渡された服に着替えて布団に横になった。
今頃紅魔館はどうなってるかしら・・・
美鈴や妖精メイドはしっかりと働いてるかしら?
暴走しやすいパチュリー様を小悪魔はしっかり抑えられてるかしら?
妹様が何か壊したり落書きしたりしてないかしら?
お嬢様が私を呼びながら館内をウロウロと探してないかしら?
「・・・・・・不安だわ、やっぱり紅魔館に戻ったほうがいいかしら」
どうにも落ち着かない、職業病にもかかってるみたいね。
あぁでも詐欺兎が私の事を伝えに行ったら直ぐ様お嬢様や妹様はいらっしゃるかもしれないわね。
とか思っていた矢先、障子に人影が映った、察するに八意永琳かしらね。
失礼するわね、と障子を開けたのはやはり八意永琳だった。
「どう?部屋は気に入ってくれたかしら? 」
「えぇ、掃除の手も行き届いてるしさすがね」
ありがと、と言いながら微笑する八意永琳。
それにしても、とその笑みが少し変わった。
「メイド服を着てないあなたを見るのは新鮮ねぇ~
何か別人のような感じよ」
私の着るものってメイド服しか無いと思ってるのかこの医師は・・・
しばらく雑談していた後、八意永琳は他の客の診察の為に出て行った。
再び一人きりの状況に。
うーん、やっぱり居心地が悪い。
これじゃ人にアドバイスしてる面じゃないわよねぇ・・・
無理矢理にでも寝ないと駄目よねぇこの場合。
「・・・・・・ふぅ」
そういえば・・・詐欺兎が紅魔館に伝えてくると言ってたけど・・・
なんでかしら、何かとてつもない不安になってきたんだけど・・・
気づいたらもう夜が訪れていた、いやもう深夜にまで行っちゃってるかしら。
どうやら自分が思っていた以上に疲れは溜まっていたみたい。
周囲を見てみたが変わり映えは無し、お嬢様達はいらしてないみたいね。
「あら、起きたのね」
八意永琳が入ってきた。
「えぇ、おかげ様でぐっすりよ。
これなら明日にでも退院できると思うわ」
というか二日も空けると心配でしょうがないのよ、紅魔館が。
それに、絶対仕事が増えまくってると思うし。
あの妖精メイド達が私がいない間、全部やれてるとは思わないし。
「はいはい駄目よ、後1日はここで休んでいきなさい。
大丈夫大丈夫なんて思ってても実際そうでもなかったりするんだから」
ぬっ、確かに。
だから今こうなってるんだものね・・・
「何か経験からきてそうな言葉ね」
「まぁ、ね」
苦笑いをした辺り、何かあったのかしら。
「あぁ、そうだ、紅魔館からは何か通達は無かったかしら? 」
「うーん、てゐが言うにはしっかり療養するようにと仰せつかってきただけみたいね」
私はそう、とだけ答えた。
ちょっと腑に落ちない、いや普通ならそれでいいんだけど・・・
前に私が怪我した時の惨状を考えると必ず様子を見に来るはず。
詐欺兎の言い方がよかったのかしら?それとも自惚れかしらね。
「あら、何か不満そうね。
お見舞いがきてないのがご不満? 」
「不満というより心配かしらね・・・」
自分で言うのも何だが止め役不在の紅魔館がどうなるか・・・
言いたい事がわかったのか八意永琳が苦笑いをした。
「でも確かに心配にはなるわよねぇ、前の時の事だと。
それとお見舞いも無いのが気になるわね、確かに。
何か一波乱でもありそうな・・・・・・」
お互い何か嫌な予感を感じて渋い顔になった。
そしてこういう時に限って、面倒事というのは起こるものだということをよーく教えられた。
「十六夜咲夜を返せえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! 」
お嬢様の怒声と轟音と共に永遠亭が揺れた。
「ちょっと・・・一体何が起こったのよ!? 」
「今のは・・・お嬢様!? 」
未だに轟音と破壊音は続いていた。
「咲夜ぁぁぁぁぁぁ助けにきたよぉぉぉぉぉ!!! 」
・・・・・・どうやら妹様もいらっしゃるようだ。
いったい何でこんな事になってるのか・・・
「ししょ~なんとかしてくださ~い、私達じゃどうにもなりませ~ん」
「えーりん、ちょっとどうにかしなさいよ、うるさくておちおち寝てられないわ! 」
半泣き、しかもボロボロな月兎と睡眠妨害されたらしい蓬莱山輝夜が駆け込んできた。
むしろよく生きてたわね、それだけでも充分すぎるほどよ。
それとそこの不死身、怒るところそこなのか、壊されてることじゃないのか。
「まったく、いったい何なのよ・・・」
八意永琳が立ち上がった、それに私も倣ってベッドから出て、時を止めてメイド服に着替えた。
「先に謝っておくわ、私の主人二人のせいで永遠亭壊しちゃって」
「・・・何か裏ありそうだわ、ウドンゲ、てゐを探して連れて来なさい」
八意永琳はそれだけ言って出て行った、私も直ぐに後を追った。
永遠亭内の大広間に着くとさながらそこは戦場のような状況だった。
お嬢様と妹様を囲むようにして妖怪兎がバリケードを作り、必死に説得しようとしていた。
「あんた達は包囲されているー!大人しく降伏しろー!ていうかしてくださーい!!!
今ならトマトジュースあげるから、いや、秘蔵のキャロットジュース恵んであげるから!!! 」
リーダー格と思しき妖怪兎の必死の説得も空しくグングニルを投げようとするお嬢様。
しかし、私と八意永琳が到着したのに気づき、それを止めていただけた。
ホッとする妖怪兎達だったが周囲の空気は未だに張り詰めている。
「咲夜!よかった、無事だったのね・・・! 」
何でホッとなされたような顔をなされるのですかお嬢様、妹様。
あの詐欺兎、いったい何を言ったのかしら・・・?
それにこの様子じゃしっかり療養するようにって言ったのは嘘ね・・・?
・・・ともかく、こんな事になったからにはこの十六夜咲夜、言うべきことを言わせていただきます。
「お嬢様、妹様、いったい何をなさっておられるのですか・・・!
お二人程の方がこのような事をなさるなどと、誇り高きスカーレット姉妹が聞いて呆れますわ!!! 」
私の怒声にお二人はすっかり意気消沈、妹様は少し半泣きモードに入られてしまっている。
ですが、私は続けねばなりません、これも従者の務め。
「上に立つお方がこれでは紅魔館の品位も問われます。
いいですか、そもそ「だって!!! 」・・・・・・・妹様? 」
私の声を掻き消すかのように妹様が涙ながらに大きな声を発せられた。
その表情に私は言葉を失ってしまう。
「だって・・・だって咲夜が・・・咲夜が何時まで待っても帰ってこないんだもん、心配だったんだもん・・・! 」
「フラン、止めなさい」
お嬢様が止めようとするも妹様は止まらなかった、そればかりか
「お姉様だって私と一緒でしょ!? 」
「うっ・・・そりゃ・・・心配だったわよ・・・夜になっても帰ってこない、音沙汰もない。
何かあったのか、と思うと心配でいてもたってもいられなくなってたわよ・・・! 」
気づけばお嬢様の目尻には涙が。
うぅ・・・立場が逆転というか通常に戻ったというか・・・
この状況で私がお叱りの言葉など言えるわけが無い。
こらそこの薬師と兎ども、その笑みは何よ・・・
「・・・お嬢様、妹様、申し訳ありませんでした。
私をそこまで心配してくださっていらしていたとは。
それなのに私は・・・お二人を責めるような言葉を・・・どうかこの愚者をお許し下さい」
私は頭を垂れた。
何を言われようとも何をされようとも私は甘んじて受けるつもりだ。
お二人の気持ちを私は知らずに踏みにじったのだ、覚悟は出来ているわ。
「本当よ、咲夜の馬鹿、次は無いんだからね」
「許してあげる、だって、私達の大事な、大事な咲夜だもん」
ようやくお嬢様達の顔に笑みが浮かんでいただけた。
まだまだ私も駄目ね・・・・・・
「おっほん、さて、話は終わったようだけど・・・
どうやらお互い、話に食い違いがあるみたいね」
八意永琳が割って入ってきた。
そうね、お嬢様達の話だと私が永遠亭で療養してるのは知らないような感じだったわね。
「私達は咲夜が全然帰ってこないから心配で色々と探して
夜雀の屋台にいたスキマが昼間、永遠亭に連れてかれるのを見たっていうから
てっきりあんたに実験の材料か何かで攫われたのかと思ったわよ」
なるほど、それで返せと永遠亭を襲撃したわけですか。
となると・・・
「てゐの奴、紅魔館に伝えずに帰ってきたのね・・・しかもさも言ってきたような嘘ついて」
「えぇ、しかもおそらくスキマも一枚噛んでるわね」
何が目的だか知らないけれどこのまま済ませるのは癪ね。
直ぐにあの詐欺兎辺りを締め上げて・・・
「大変です師匠!てゐがどこにもいません! 」
月兎が駆け込んできた、あら、服もしっかり着替えたのね。
「やはり逃げたか!追いなさいウドンゲ!奴はそう遠くには「お探しの品はこれかしらー? 」・・・え? 」
全員が振り向くとそこにはてゐを亀甲縛りで捕らえているスキマ妖怪がいた、何時の間にか。
「犯人確保ーこれで私の罪は不問ってことで・・・」
「「「「「そんな訳あるかぁぁぁぁぁぁ!!! 」」」」」
私、お嬢様、妹様、八意永琳、月兎の全力弾幕がスキマ妖怪と詐欺兎に直撃した。
$月%日
この日も永遠亭に療養の為泊まる事に。
問題事は起きず、お嬢様や妹様が昼間からいらしたのがちょっと困ったくらいで平和に過ごせた。
詐欺兎はしっかりとお仕置きをされ、この日はこき使われていた。
まぁ足とか切られなかっただけよかったと思いなさいよ。
ちなみに詐欺兎がウソの報告をしたのは道中でスキマ妖怪とたまたま会って
事情を話し、スキマの悪巧みに面白そうだから乗ったというのが理由だそうだ。
事情を全て知ったお嬢様と妹様はしっかりと永遠亭の面々に謝罪をし、
お互いスキマの手の上で踊っていただけなのでこれにてお互い遺恨無く終了、と蓬莱山輝夜が締めた。
ていうかあんたなーんもしてないしほとんど関わってもいなかったじゃないのと思ったのは内緒よ。
そして昨日弾幕受けまくったのに平然と逃げ帰ったスキマ妖怪が何故こんな事をしたのかというと
一応、悪ふざけ、ということで終わっている。
まぁ・・・何か他に思惑があった事は誰もが気づいているんだけど。
その点に関しては触れない事にした、というかそういう約束ってところ。
まったく、まどろっこしい事をしたもんよねぇあのスキマ。
「ふぅ・・・重い病気に罹ったわけじゃないっていうのに
お嬢様も妹様も心配性なんですから・・・」
今日は昼間から今までずっとこの部屋にお二人はいらした。
主人もその従者もいない紅魔館がどんな事になっているか想像しただけでも恐ろしい。
帰ったら紅魔館無くなってました、とか嫌よ?
とりあえず夜もいい時間になってきた為、八意永琳のお小言によりお二人は帰られた。
食事に関しては夜雀のところで取っていくようだ、あそこなら味も申し分無いしね。
私のほうも月兎の作ってくれた料理(けんちん汁に筑前煮、それと鮎の塩焼きという純和風、おいしかった)を
しっかりと頂いて後は眠るだけなんだけど・・・
「・・・・・・いい加減声かけないといけないのかしら」
わざとだろう、部屋には私以外の気配がある。
まぁこんなの一人しかいないんだけどね。
「これは親切にどうも~無視され続けてたらどうしょうかと悩んでたところよ」
やはり現れたのは昨日の一件の首謀者、八雲紫だった。
「何の用?私にナイフで針ねずみにでもされに出てきたのかしら? 」
まぁそんな事は絶対に無いでしょうけど。
「痛いのはさすがに嫌ね、昨日相当痛い目見たし。
あなたには一応言っておいたほうがいいんじゃないかと思ってね」
はぁっ、まったくこのスキマは・・・
「あんなまどろこっしくて周囲から反感しか買わないような事して何がお望みなのよあなた。
誰もが悪ふざけでした、なんて信用できるはずがないでしょうに」
あの時の全員の疑いの眼差しの中よくもまぁ平然としてたもんよ。
こいつの心臓には毛どころかわかめでも生えてそうだわ。
「まぁ自分でも厳しいとは思ってたけどそれぐらいしか思いつかなかったのよ。
んで、まぁやった理由なんだけど・・・」
ふぅ、と溜め息をついて
「私はあの姉妹を試したかったのよ、あの吸血鬼姉妹がどんな成長をしたかってね」
と伏目がちに言ってきた。
「お嬢様と妹様を・・・? 」
またよくわからない事を言い出すわね。
「今も昔もあの二人を知ってる者として見定めたかったのよ。
今後彼女達が幻想郷に害を及ぼしすぎないかどうか」
何か言い方が気に喰わないわね。
まるでお嬢様と妹様がとてつもない問題児みたいじゃないの。
問題児だったら他のところのほうがいっぱいじゃないの・・・・・・・・・・・・たぶん。
「そう怖い顔で睨まないでくださいな、まぁわからないでもないけど。
そして、結果は今は合格、でもあくまであなたがここで生きている間の事だけどね。
あなたを真剣に心配し、そして真剣に助けようとしていたあの心は本物だったわ。
まぁその手段はちょっと問題だったけど」
「は?私? 」
何でそこで私が出てくるのよ。
「あなたをあの二人は心底信頼してるしあなたの言葉だったら素直に聞くでしょうね。
主人と従者というより子供と母親みたいな感じだけど」
・・・・・・・・・そんなに老け込んで見えるのか私は。
どいつもこいつも母親母親って・・・・・・
「別にあの姉妹に限ったわけじゃないわよ、あなたは紅魔館の母、みたいなもんだと思うわよ。
たぶん結構な連中がそう認識してるんじゃないかしら? 」
うぐっ、私はまだ独身でしかもまだ10代なのに・・・
ちょっと胃と頭が痛くなった。
「幻想郷に来た当初の彼女達は表じゃレミリア・スカーレットが、
裏ではフランドール・スカーレットが暴れてたものよ。
一時期私や幽香や幽々子、レティ、それにその時の博麗の巫女が集結して
戦争紛いの事をやらかそうとしたレミリアを懲らしめたりしたものよ。
他にもまぁ色々と、ね・・・
だけど今は違う、昔とはまるで別人とすら思えるほどに」
お嬢様と妹様の過去、ねぇ。
知ろうとは思わないけれどおそらくお嬢様は自由奔放に色々としていたのだろう。
妹様は地下で幽閉されながらも時折与えられる生贄をそれこそおもちゃのようにしていたのだろう。
血に塗れた、今では想像もつかないような光景を思い描いた。
初めの頃はそれを感じる時があった、しかし今やそんなものは無かったかのように感じなくなった。
お嬢様は紅魔館で平和に紅茶を飲んだり博麗神社に遊びに行ったりしながら今を楽しんでいらっしゃる。
そう・・・まるで過去とは別人のようにだ。
妹様も地下から解き放たれ、紅魔館の中を自由に歩き回っておられる。
昨今では少しだけですが外への外出も許可されておりますし、私との里への買出しを希望なさる事も多い。
それは昔からお二人を知っている者から見ればありえない、と言われるような光景かもしれない。
しかし・・・・・・
「それは私がいるから、って言いたいわけね? 」
「えぇ、あなたがいるからこそあの姉妹の今がある。
そしてあなたがいてくれているからこそあの姉妹は成長しているわ」
・・・・・・そこまで言われるとちょっと照れくさいわね。
「これからもあなたは生きてる間ずっとあの二人の世話をするんでしょ? 」
「当たり前よ、それが今の私の生きている意味でもあるもの」
あの日、お嬢様と出会い、その従者となったその日から、
妹様と会い、そして妹様とも主従の関係となったその日から、
私はあのお二人に生きている限り尽くしていくつもりだ。
いつか私が死んでしまった時、その時までにお二人が立派な方になられているように。
「ならばこれからも頼んだわね、あの姉妹を。
それと・・・藍の友人としてあの子と今後とも仲良くしてあげてね」
前の相談に来た時、このスキマ妖怪は相談などではなく、自分の式とこれからも仲良くしてほしいと頼みに来たのだ。
無論言われなくても向こうがこちらを嫌わぬ限りそのつもりだったが何を思ってあんな事頼みに来たのか、
今でも私にはわからないし聞いても答えてくれない。
でもまぁ、それでもいいかと最近は思いつつあるんだけどね。
「言われなくてもそのつもりよ、まったく、余計なおせっかいだったわね。
年寄りの冷や水ってやつよ、私の主人であるお二人をを見縊らないでほしいわね」
「ふふふ、ほんと、いらない世話だったわね。
あの姉妹にますます嫌われてそうだわ」
お互いに笑みを零した。
これで話は終わりといった具合に。
スキマ妖怪はそれじゃあね~と言いながらスキマで帰っていった。
まだ少し何か引っかかるけどまぁいいわ、とりあえず今は・・・眠たいわ。
$月#日
そして今日の分の日記。
昼前に世話になったわね、と八意永琳に行って永遠亭を出た。
紅魔館は表面上は無事で、
門前には美鈴と、そして日傘を差したお嬢様と妹様、さらにはパチュリー様に小悪魔、ほとんどの妖精メイドがいた。
何時の時間に帰るとも告げてないのに示し合わせたかのようにいたんだもの、びっくりしたわ。
そして皆口々におかえりだのおかえりなさいだの言ってきた。
・・・・・・その時は泣かなかったけれど、自室に戻ったとき、私は何時の間にか泣いていた。
久々だったわ、私が涙を流すなんて。
しばらく時を止めて治まらせるのに苦労したけど、今は大丈夫、うん、大丈夫。
この日記を書いてる間ちょっと涙腺緩みかけてるけど大丈夫。
明日からはしっかりと完璧で瀟洒な従者、十六夜咲夜として私は仕事をしているだろう・・・
レバ剣投げるのは妹様では?
素で間違えました、修正しました
……亀甲?
めーりんかっこいいよめーりん
てゐエロイよてゐ
シリーズとしては長く続いてますし、このシリーズ独特の舞台ができつつありますね。相変わらず、咲夜さんの胃に優しくない日々は続きそうなのがなんともw
でもそう感じたのはそこだけで、お話は良い感じでした。
限界突破しかけの咲夜さんが少し心配になりましたが……何時か本当に倒れそうでヒヤヒヤ。
しかし、何故亀甲縛りなのかw
咲夜さんが遂に入院してしまいましたか・・・。
しっかりと休養を取らないと・・・と、いうよりも他の妖精メイドも
もう少し働かないと負担減らないか。
そしてスカーレット姉妹と咲夜さんのやりとりが私にはもう・・・!
良いなあ。お母さんしてますね~。 この感じとても好きです。
次に出てくるとすれば誰になるかなぁ・・・。神様家族とか・・・アリスの悩み?を聞くとか辺りかな?(笑) 次回が楽しみですね。
>誤字というか文章のおかしい場所があったので報告を。
ここの姫はいったい何を普段やっているのよ
と、ありましたがここは
「いったいここの姫は普段から何をやっているのよ」とかのほうが
良いと私は思ったりします。氏の判断で変えて吟味してみてください。
気になるのが結構なボリュームなのに更新が早目と言うのが気がかりですが・・・
咲夜さんと同じくお体は大切に
けいねがもこう食べてたり、ゆかりんが内の式って言ってたりしてましたぜ。
作者がちゃんと読み直してない証拠ですな・・・
報告どうも。
いや、今回も面白かったです。咲夜さんは本当愛されてるなぁ。
咲夜さんとゆかりんのシーンで番外編の藍日記とかが読んでみたいとも思ったけれど、大半が橙の事で埋まってそうw
度々すみませんです。(汗)
>博麗神社に遊びに行ったりしているまるで過去とは別人のようで、
ここなんですけど、「している」のところを「している。」にしたほうが
良いのではと思いました。氏の考えて修正してみてください。
あと、先日私が指摘した部分がまたちょっと変な風になっている気がします。
以上、報告でした。(平伏)
一から読んできたけど今作が一番好きかも。
吸血鬼異変と繋げてるのも上手いなー。面白かったです。
リリーと秋姉妹かわいいよ。
咲夜さん帰らず(入院)の真の理由を知らない紅魔館メンバー…、真実を知った時、はたして紅魔館はどんな阿鼻叫喚の事態になることか…。
そして、錠剤ラムネ味が主食になりつつある咲夜さんに合掌。