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作品集その52の光によって生み出された闇の続き物ですのでそちらを先に読まれたほうがいいかもしれません。
また、今回も*によって視点などが変わるのでご了承ください。
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「ルーミア」
アカオニがルーミア呼んだ、その時ルーミアは外の世界の漫画という物を読んでいた。
「何?いまいいところだったのに」
名残惜しそうに歩み寄るルーミア。
「知ってのところこれから宣戦布告でもしようと思うのだが」
「何よ?すればいいんじゃないの?」
興味なさ気に返事をするルーミアであった。
「馬鹿を言うな、これだけの人数でどうこうなるほど幻想郷は衰えていない」
その言葉でルーミアは察したようである、もしかしたら最初から知っていたのかもしれないが。
「そうね、戦力集めをしたいというのね・・・でも今の幻想郷にいるかしら?そんな物好き」
そのときアカオニがちっちっちっと言いながら指を振り自分の頭を指差した。
「要は頭の使いようだ、相手の感情に付け込んだり人質を駆使したり・・・少し手を回すだけでどうにでもなる、それに・・・」
「それに?何かしら?もったいぶっちゃって」
「・・・3人ほど目をつけてるのだ」
そう言いながらニヤっと笑みを浮かべ三本指を立てた。
「霖之助みたいのは勘弁してよね・・・?」
「当たり前だろう・・・」
実は幻想郷とってあの類はあまり珍しくないという事は知るよしもなかった。
「まぁそれでだ、どんなに目をつけようが手を回そうが切っ掛けがなければ何も起こらない」
「それで私にいくつか回ってほしいといいたいのかしら?」
ルーミアが腕を組み椅子に座る。
「いくつかってほどでもない、一つだけだ・・・ここのな」
アカオニが穴を開き映像を映し出した。
「成る程ね、これは骨が折れるわね・・・霖之助じゃだめなのかしら?」
「まず無理だろう」
「・・・でしょうね」
そしてアカオニが立ち上がった。
「ん?もう行くのかしら?」
「違う、風呂入って寝るだけだ・・・この身体も基本は人間でな、ある程度の睡眠がまだ必要だ」
そういって風呂場へと向かったアカオニ。
「転生っていうのも大変なのね・・・」
そしてまた漫画に目を通すルーミアだった。
「今戻ったよ」
それと同時に穴から出てきたのはこーりんこと霖之助であった。
ちなみ現在も褌である。
「何かおいしそうな者は居たかしら?」
「物騒だねぇ、僕は鳥が食べたかったから雀をつかまえてきたよ」
その手に摘まれていたのは・・・。
「ワ・・・ワタシハオイシクナイヨ」
ミスティアであった。
「小骨が多そうだけどいいわそれで」
相変わらず漫画に夢中なルーミアだがわずかに涎が垂れたのは彼女だけの秘密である。
「いやぁああああゆるしてええええ」
こーりんのよこでぴーぴー泣いているミスティア・・・だがその表情は一瞬で固まった。
「さて、食事でも・・・」
ルーミアが蛇のような目でミスティアを睨んでいたのだった。
「死亡フラグ?」
「多分」
こーりんと一言の会話をしたあといつもと変わらないルーミアとミスティアの鬼ごっこが開始された。
「二人とも適度に運動したら身体を休めるのも忘れないほうがいいよ」
しかし今の二人には何を言ってもムダだった。
「・・・それじゃあ僕は体の汗を洗い流してくるよ」
そういいこーりんが向かった先は浴場と表札が掲げられている場所。
「あ」
ルーミアがそう声を漏らした瞬間だった、物凄い激突音とともに勢いよくこーりんは浴場の反対側の壁に叩き付けられた。
「どうだったの?」
「ナ・・・ナイスボディ」
すると風呂場から目にも止まらぬ速度で桶が飛来し、こーりんの頭でスッコーンっといい音を奏でつつその桶は見事空中分解を果たした。
「ナイスコントロール」
じたばた暴れるミスティアを後ろから抱きしめているルーミアが風呂場に向かって親指を立てていた。
* * * * *
夜が明けた人間の里、そこには今現在数多くの妖怪が潜伏していた、いや・・・出るに出られない状況であった。
「萃香、もう霖之助はいないのかしら?」
紫が広場に置かれた黒板の裏でそう呟くと霧状となっていた萃香が姿を現した。
「居ないみたいだね、それにしてもあれは居たとしても直視したくないね」
誰もが頷いたであろう。
「それじゃあ隠れてる皆を集めてもらえないかしら?」
萃香の能力だとその程度は容易い事であった。
「ん・・・萃まれ!」
するとひょこひょこと人や妖怪がそのへんから姿を現しまた広場に集まりだした。
「あーなんだったんだよあれ・・・」
「もういないわよね?」
「幽々子様、早くしてください」
「あんな勇m・・・いや、不潔な者・・・橙がいなくてよかった」
「集まったわね」
全員集まったようだがまだ周囲を警戒していた。
「大丈夫よ、霖之助ならもう居ないわよ」
その言葉を信じたかどうかは定かではないが若干ざわめきが小さくなった。
それと同時に魔理沙が立ち上がった。
「紫、さっきの説明できるか?」
「あれのことね・・・多分アカオニが感情を弄ったのよ」
その言葉でまたざわめきが広がった。
「さっきの霖之助は本能と理性の境界が曖昧、いえ・・・境界に穴が開いてたのよ」
「そんなことまで・・・ん?まて、私もその境界に穴をあけられたらああなるのか!?」
その場の全員が再び凍りつく、決してあの氷精の仕業ではない。
「人によるわ・・・たぶん彼が異常だっただけよ・・・。ただ深い悩み事を抱えている者や普段自分の感情を抑えているのは注意が必要ね」
「・・・そうか、わかったぜ」
そして魔理沙が座る、それと入れ替わるように幽々子が立ち上がった。
「それで、そのアカオニってやつをどうこうして美羽を取り戻せばいいのかしら?」
「そうね、まずアカオニを美羽の体ごと封印してそれからアカオニの精神だけを封印する方法を探ればいいこと」
「そうなの?なら結構簡単に済みそうね」
霊夢が横から口を出す。
「そう簡単にいけばいいんだけどね・・・」
そう言う紫の表情は硬かった。
* * * * *
「あがったぞ」
アカオニが浴場から出てきた、白いTシャツと黒いズボンというかなり外の世界に寄った服装であった。
「ふいふんふぉふぁふぁはっはふぁふぇ」(ずいぶんと長かったわね)
ルーミアがミスティアをくわえながら言った。
相変わらずミスティアは泣きながら抵抗しているがその様子が楽しいのか更にルーミアはつついたり引っ張ったりくすぐったりしている。
「まぁそのまま寝てたからな」
「風呂で寝るのは溺死と風邪のもとだぞ」
「半身浴だ、それに風邪はお前に言われたくない何か着ろ」
こーりんの格好はやはり褌一丁であった。
「僕としたことが服の回収を忘れてしまってね、だから僕の店までの穴を開けてくれないか?」
「わかったから早く行け!」
そしてアカオニは穴を開きこーりんを蹴り入れた。
「どうしてもあいつが居るとうまくいかないな」
「わかるわそれ」
「やめて!そこ!わ・・・腋は!」
そしてアカオニはもう一つ穴を開いた。
「どこにいくのかしら?」
「3人のうちの一人だ、お前はまだ後でいい」
そしてアカオニが棚の上の酒瓶をとり穴の中に消えた。
「またまつのねぇ・・・れいぞうこっていうのに何かないのかしら」
そしてやっとミスティアを開放したルーミアが厨房の方へと歩いていく。
「ち・・・窒息死するところだった・・・」
擽りには弱いミスティアだった。
* * * * *
ここは幻想郷のとあるところにある山、山というより小高い丘の上の林に囲まれたところ。
「1233!・・・1234!・・・1235!」
そこの小さい山小屋の前で刀の素振りをしている老人がいた。
そしてその老人の背後に穴が開きアカオニが現れた。
「1236!・・・1237!・・・1238!」
しかし老人は気づかずに素振りを続ける。
そこでアカオニが酒瓶を勢い良く投げつけた。
「1239!・・・1240!・・・1241!」
酒瓶は目にも止まらぬ速さで回転しながら老人の後頭部へと向かう。
「1242!・・・124・・・・ぬん!」
しかし酒瓶はその老人の左手により受け止められた。
「手荒い酒のお誘いだのう、いつからそこにおったのだ?」
硬い表情で振り返る老人。
「とぼけるな、最初から気づいていただろう」
不機嫌そうにアカオニが答える。
「はっはっは、気分を損ねたか・・・若いのう」
言葉とは裏腹にその老人は刀を構えた。
「折角酒を持ってきたのに手荒いのはどっちだ」
一層不機嫌そうに言うアカオニ。
「なんじゃ久しぶりに楽しめると思ったんじゃがのう」
すこし残念そうに老人は構えを解いた。
「貴様は酒をもってきた客人をなんだと思っているんだ」
アカオニはもう飽きれた様子であった。
「これは失敬、酒で油断させる作戦かと思ったんじゃが・・・」
「どんな物騒な思考をしているんだ貴様は」
「はっはっはっは、まぁそういうなかれ・・・どれ、杯でももってくるかのう」
そして老人は山小屋へと入っていった。
「本当にどんな生活をしていたんだここのじいさんは・・・」
「毎日妖怪を斬り潰し食料を探す生活じゃのう」
老人が二つの杯をもって山小屋から出てきた。
「とんでもない生活だな、まるで昔の世界のようだ」
「ほう、ぬしも昔の世界をしっているのか」
そういい老人は座り酒を注ぎ始めた。
「ああ、昔はもっと妖怪が跋扈していたな」
「今も妖怪は跋扈しておるぞ?」
そう言い老人が酒を一口飲む。
「だが人間に格段に甘くなっている、それに妖怪全体の能力も低下している」
「確かに最近の妖怪は弱いのが多いのう」
そして老人は立ち上がった。
「・・・」
アカオニは何もせず酒を飲みながら見上げた。
「やはりそこまで知っている妖怪となれば只者ではないのは確実となった、ましてやこのわしの居場所を知るのはほんの一握りしかおらぬ」
そして老人は刀を抜きアカオニに向けた。
「すぐに刀に訴えるのはやめろ、酒もまずくなるし第一嫌われるぞ」
アカオニは老人を見上げたまま注意を促す。
「む・・・それはわるかったのう」
悪意がないのを完全に悟ったのかまた座る老人。
「ところでだ、たしか貴様の名前は妖忌といったはずだが?」
「そうだ、わしの名前は魂魄妖忌、幽々子御嬢に使える者・・・といいたいがいまは見ての通り老いぼれでな」
妖忌はどこか遠くを見ていた。
「そうか・・・ところでだ、私から話があるのだが・・・」
「なんじゃ?」
「妖忌、貴様私のところに来る気はないか?」
アカオニが微笑みながら言った。
「断る」
しかし妖忌は見向きもせずに断った。
「だろうな、ちょっと失礼するぞ」
「ん?」
そしてアカオニは妖忌の頭に手を乗せた。
「んん!?これは!」
「理解できたか?事の重大さが」
アカオニの力で妖忌の頭の中に全てが書き込まれた。
「だが断る」
妖忌は一向に応じる気配はみせなかった。
「そうか、なら仕方ない・・・だが最後にもう一回失礼するぞ」
「ほう」
そしてまたさっきと同じように頭に手を乗せた。
「これだけは私の口からは言いたくないのでな」
「これは・・・」
妖忌が何かに引っかかったようだ。
「後は何も言う事はない、強いて言えば酒に困らないといったところか」
妖忌はアカオニの方を向くと口で笑った。
「気が変わったぞ、お前さん等に協力しようかの」
そしてアカオニも口で笑った。
「感謝する」
* * * * *
「藍様も紫様もおそいなー」
マヨヒガにて留守番させられていた橙であった。
「皆何処行ったんだろう・・・」
そうして欠伸をしてごろんっと横になる橙。
「もどったわよー」
「にゃ!?」
橙がうとうとし始めたころに紫が帰ってきた。
「あら?寝てたの?」
「いいいえいえいえいえ寝てません!」
橙は首を横に大きく振った。
「そう、寝てたのね」
だが通用しなかった。
「良いのよこんな事ぐらいで、それよりも今日は客がいっぱい居るから、藍の手伝い頼めるかしら?」
「はい!」
橙は顔を上げるとスキマから出てきた藍に駆け寄っていった。
そして藍がスキマからでると後に続いて魔理沙やレミリアといった人妖達がでてきた。
しかし最初に集まっていた数の半分以下であった。
「結局、いつもどおりのメンバーねぇ」
レミリアがため息をつきながら言う。
「でもこれだけ居れば十分じゃないかしら?」
輝夜が自身有り気に言う。
「そうね、それで今集まってくれた皆、今日からここで寝泊りしてもらうわ」
紫のその発言により全員が沈黙した。
「「「「「「「はぁ!?」」」」」」」
お次は罵声である。
「当たり前よ、アカオニはもう幻想郷の全てを知っているといっておかしくない、もちろん隅々までね・・・。
ましてやアカオニは穴をつかって何処にでも出てくる事が出来るのよ?そんななか無防備に寝ていられるのかしら?」
あくまでも寝る事が基準だが説得力は十分にあった。
「言われてみればそうね、確かに敵陣の中で踊るようなまねはしたくないわ・・・でもここで寝泊りなんて・・・」
そういいアリスは頭を抱えながら唸りはじめた。
「そんなこといってもしょうがないじゃない、今幻想郷に安全な場所はないの・・・安全な場所は幻想郷とは剥離されているこのマヨヒガだけなのよ」
紫が真剣になって話す。
「でもねぇ、うちのメイド達をほうっておくわけにもいかないわ」
「そうね、イナバたちも寂しくて死んじゃうわ」
確かに永遠亭と紅魔館には大勢のメイドと兎が居た。
「大丈夫よ、マヨヒガの空間を広げるのは簡単、そしてここにこの家の設計図と改築図が・・・」
「美鈴」「ウドンゲ」
「「はいぃ!?」」
咲夜と永琳はほぼ同時に指名した、彼女等の繋がりは配下に弄られキャラがいることなのだろうか。
「門番メイドと共に今すぐやりなさい」
「技術系のイナバを集めて万膳の体制でやりなさい」
「「はい!」」
「はい、永遠亭はこっち、紅魔館はこっちよ」
そしてウドンゲとめいりんはそれぞれ逆のスキマへと入っていった。
「「はぁ」」
一同、ため息。
* * * * *
「もどったぞ・・・おい」
「あら、おかえり」
「ドナドナ~」
アカオニが戻ってきたとき最初に目に映ったのは食べ物のごみの散らかり様であった。
「貴様・・・冷蔵庫のもの平らげたな」
アカオニは呆れていた。
ちなみ冷蔵庫は氷を使って冷やすタイプである。
「いいじゃない、外から幾らでももってこれるんでしょう?」
「・・・まぁそうだがな・・・だがごみはちゃんと片付けろ」
「わしがやろう」
横から妖忌が出てきてどこから持ち出したのか箒でごみを集めだした。
「すまないな」
「はっはっは、昔もよく幽々子様が食い散らかした物をこうやって片付けていたものじゃ」
妖忌は笑いながら掃除をする、しかしその動きには無駄はまったくなかった。
「新入りかしら?」
「あぁ私が交渉してきたんだ」
すると妖忌が掃除の手を止めた。
「わしの名は魂魄妖忌と申す、これから行動を共にする者としてよろしゅう」
そして礼をする。
「あ・・はいこちらこそ・・・」
ルーミアは呆気とられていた。
「礼儀正しい奴だな・・・そういえば霖之助がいないな・・・どれ」
そう言い香霖堂につづく穴を覗き込んだ。
「やぁ、今は客としてかい?」
何事もなかったかのように店主をやっているこーりんが居た。
「何をしている」
「見れば解るじゃないか、この店の管理だよ・・・僕の店は良く襲われるからね、それにここが一番落ち着くんだ」
そう言いカウンターで寛ぐこーりん。
「そうか、ならいい・・・必要なときになったら呼ぶ」
「わかった」
そしてアカオニは穴から顔を引っ込めた。
「むしろこの方がいいな」
「そうね、彼が居ないほうが落ち着くわ」
「パラッパッパッパ~」
空気を読んでいるのかいないのかふぬけた音を綺麗な声で歌うミスティアであった。
「ちょっといいか」
「なんじゃ?」
「何かしら?」
突然呼びかけるアカオニ。
「多分やつらは私の能力のことに気づいていると思う」
「ふぅん」
興味ない、といいたげなルーミア。
「だから奴らは多分マヨヒガに避難するだろう、そこは私の能力も管轄外だからな」
「紫殿のところか」
「そこでだ・・・夜になったときに紅魔館を攻撃しようと思う」
アカオニがにやける。
「ちょっと待ちなさい、紅魔館を襲うなら昼の方が良いんじゃないのかしら?」
ルーミアの言うとおりレミリアは夜行性である。
「甘い、紅魔館には大量のメイドがいる、マヨヒガに全員移動させるのには時間が掛かるはずだ・・・それにあの吸血鬼はまず妹を最初にマヨヒガに送ると思う。
そしてその吸血鬼自体もいろいろと敏感だ・・・つまり、紅魔館の戦力を削りつつ真っ先に飛んでくるであろう吸血鬼を潰し他の奴らが駆けつけるまでに戻る。
やつらの戦力を一つ一つ潰すのだ」
「考えたわね」
「なかなかの策士だのう」
「くくっ夜が楽しみだ・・・」
* * * * *
「師匠!とりあえず美鈴さんの部下たちを連れてきました!」
「咲夜さん!とりあえず技術力のありそうな方たちを連れてきました!」
何故つれてこられたのか、そんな疑問を覚えた一同。
「そうね・・・じゃあ早速取り掛かるわよ、美鈴」
「てゐ、ウドンゲ、咲夜の言う事を聞いてイナバたちに指示をだしなさい」
「「はい!」」「え~・・・ごめんなさい、ちゃんとやります。だからその弓とナイフをしまってください」
こうしてマヨヒガの改築と建築が始まった。
「欠陥住宅にはしないでね」
紫が横から一声いれると誰にも気づかれずに咲夜が舌打ちをした。
「それにしても良く違う場所の人を集められたわねぇ・・・」
霊夢が半分感心、半分呆れながらもお茶をすする。
「まぁ中国だしな」
「中国ってあんた・・・」
「何故かは解らないが中国って単語が出てくるんだ、美鈴って読みづらいだろ?」
「読みづらいと言いづらいは違うと思うんだけど・・・まぁいっか」
良くない!・・・そんな罵声が響いたような気がした。
「ところでいまアカオニって奴は何処に居るのかしら?」
輝夜が紫に聞く。
「解らないわ、もしかしたら幻想郷には居ないのかもしれないし、それかどこか漂ってあの人みたいのを更に生み出しているのかもね・・・」
「聞かないほうが良かった・・・」
輝夜はあの惨劇を思い出してしまい真っ青になっていた。
「そういえば魔理沙、あの時よく霖之助さんが普通じゃないってわかったわね」
霊夢がお茶をすすりながら隣に居る魔理沙に聞く、そして魔理沙は得意げに答えた。
「そんなの簡単だぜ、香霖は私に会うと最初に必ず嫌な顔をするんだ、あの時はそれがなかったんだ」
その答えに霊夢は本気で呆れた。
「あのねぇすこしは悔い改めなさいよ・・・」
「霊夢には言われたくないぜ」
本当にやっている事は余り変わらない。
「失礼ね、私はただ転がっている物を拾っているだけよ」
「私だって借りていってるだけだ、たまにちゃんと返したりしてるしな・・・本当に香霖のものかどうかは知らんが」
「そんなこと言われたら私だって・・・私だって・・・・・・・う」
「ふ、私の勝ちだぜ」
「いいじゃない、どうせ使われないんだし」
霊夢が開き直ったようだ。
「ところで霖之助さんのあれって直るのかしら?」
「2,30発殴れば直るだろ」
いきなり恐ろしい事を言い出す魔理沙。
「素直に紫に見てもらったほうがいいんじゃない?違う意味でおかしくなるわよ」
「む・・・そうか」
そのとき何かを霊夢が呟いた。
「・・・本当に」
「ん?なんだ?」
「ん?あぁ、本当に美羽はトラブルばっか持ち込んでるなぁって」
「たしかにな、宴会のときは今まで以上に盛り上がったぜ」
「早く戻ってきて食料調達行って来てほしいわ・・・もう野菜しかないもん」
「それはそれでひどいな」
そして笑いあう二人であった。
* * * * *
日が傾き始めたころ、アカオニたちは作戦会議をしていた。
「いいか?ルーミアと妖忌は中から穴を通じて、私は正面から行くとしよう・・・こ・・こーりんは裏口から突破だ」
呼び名を訂正されたらしい。
「それで、メイドは邪魔する者は生かさず殺さず・・・再起不能にするんだ・・・特に戦闘能力のあるものは殺してもかまわない」
「わしはみね打ちしかせんぞ」
「それでいい、要は戦力を削ればいいんだ・・・それよりもメイドより吸血鬼のほうが問題だ、メイドで余り体力を消耗するなよ・・・邪魔するメイドだけでいいんだ。
それと紅魔館の破壊工作だがこの廊下の壁とここの部屋の壁を破壊すれば移動がスムーズになるはずだ・・・あとここの床だ、これを破壊すれば図書館の方に出る」
「そんな程度意味あるのかしら?」
ルーミアがやる気なさそうに言った。
「いつ誰が呼んでもすぐ集まれるようにルートの確保は大切なんだ、ましてや私はともかく紅魔館の地の利は無いに等しい・・・そんななかの単独行動ほど危険な物はないんだ」
「ふぅん・・・私はあまり頭を使うような事は出来ないわ」
そう言いルーミアは頭を掻いた。
「だからこそ集団行動が大切なんじゃないのか?むやみやたらに敵陣に突っ込んでも罠にはまったりするだけだしね」
こーりんがもっともな意見を述べた。
「その通りだ、紅魔館ならまだしも永遠亭などは何故か罠がかなり仕掛けられている・・・だからこそ紅魔館はまず最初の一歩として一番適切だろう」
「冥界へだけはゆずれんぞ」
妖忌がアカオニを睨み付けた。
「わかってる、それに冥界には援軍となるものが殆ど居ない・・・行く手を阻むと思われるのはプリズムリバーか西行寺、それと貴様の孫だ」
「幽々子様と妖夢の相手はわし一人にしてもらいたい」
「解った、だがそれは今すべき事ではない・・今すべき事は紅魔館の見取り図を頭に詰めることだ・・・ここまで複雑になると私の力じゃどうにもならないからな」
「つまり自分も把握しきれないってこと?」
「・・・そうだ・・・私も普通の妖怪に過ぎん、力を使ってもせいぜい図面事態を覚える程度しか出来ない、だが図面に文字を書きすぎると次は見づらくてしょうがない。
だから根気よく覚えるしかないんだ」
「役に立つんだかたたないんだか・・・はぁ」
ルーミアは深くため息をついた。
「まぁ一応覚えが悪いのにはこの複製品を持っていってもらおう」
「悪かったわね覚えが悪くて」
「あ、そういえば」
こーりんが何かを思い出したようだ。
「どうした?」
「里に行った時に聞いたんだけど月には妖怪たちが恐れる物があるらしいんだ」
「興味はあるな、だがいくのは無謀だ・・・なにしろいまの月は科学と幻想のどっちが勝っているかもわからないし戦争中という情報もある」
「そうか・・・それでレミリアの方はどうするんだ?」
こーりんの表情はすこし残念そうだった。
「吸血鬼は4人いっせいに掛かるんだ、たとえ素早い吸血鬼であろうと4人一斉では敵うまい・・・そして動けなくなったところで穴の中の別次元に閉じ込めればそれでいい」
「レミリアはそう簡単に倒せないとおもうんだけどなあ・・・ここは連携プレイを試してみないか?」
「連係プレイねぇ・・・いいんじゃないかしら?」
「確かにばらばらになって戦うよりも連携した方がはるかに効率は上がるかもしれんのう」
「なるほど・・・いい案だ・・・しかし具体的にどのようなことが出来るのかを知る必要がある・・・ちょっと失礼するぞ」
アカオニが一人一人の頭に触れ情報を読み取っている。
「次はおまえか」
「あぁ、僕だ」
そして頭に手を乗せた。
「ぬぅお!?」
突然アカオニが倒れそうになった。
「ちょっと大丈夫?」
「あぁ・・・なんとか大丈夫だ・・・まぁこれで全員の力量や技などが解った・・・これは楽しい事になりそうだ」
そういいまた紙を取り出し何かを書き始めたアカオニ。
「ここに吸血鬼がいるとしよう・・・それでだ...」
そうしてまた説明が始まった。
しかしアカオニたちはある大きな計算違いに気づいてはいなかった。
そしてその計算違いは後に大きな被害をもたらすことなど知る由もなかった。
続く。
作品集その52の光によって生み出された闇の続き物ですのでそちらを先に読まれたほうがいいかもしれません。
また、今回も*によって視点などが変わるのでご了承ください。
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「ルーミア」
アカオニがルーミア呼んだ、その時ルーミアは外の世界の漫画という物を読んでいた。
「何?いまいいところだったのに」
名残惜しそうに歩み寄るルーミア。
「知ってのところこれから宣戦布告でもしようと思うのだが」
「何よ?すればいいんじゃないの?」
興味なさ気に返事をするルーミアであった。
「馬鹿を言うな、これだけの人数でどうこうなるほど幻想郷は衰えていない」
その言葉でルーミアは察したようである、もしかしたら最初から知っていたのかもしれないが。
「そうね、戦力集めをしたいというのね・・・でも今の幻想郷にいるかしら?そんな物好き」
そのときアカオニがちっちっちっと言いながら指を振り自分の頭を指差した。
「要は頭の使いようだ、相手の感情に付け込んだり人質を駆使したり・・・少し手を回すだけでどうにでもなる、それに・・・」
「それに?何かしら?もったいぶっちゃって」
「・・・3人ほど目をつけてるのだ」
そう言いながらニヤっと笑みを浮かべ三本指を立てた。
「霖之助みたいのは勘弁してよね・・・?」
「当たり前だろう・・・」
実は幻想郷とってあの類はあまり珍しくないという事は知るよしもなかった。
「まぁそれでだ、どんなに目をつけようが手を回そうが切っ掛けがなければ何も起こらない」
「それで私にいくつか回ってほしいといいたいのかしら?」
ルーミアが腕を組み椅子に座る。
「いくつかってほどでもない、一つだけだ・・・ここのな」
アカオニが穴を開き映像を映し出した。
「成る程ね、これは骨が折れるわね・・・霖之助じゃだめなのかしら?」
「まず無理だろう」
「・・・でしょうね」
そしてアカオニが立ち上がった。
「ん?もう行くのかしら?」
「違う、風呂入って寝るだけだ・・・この身体も基本は人間でな、ある程度の睡眠がまだ必要だ」
そういって風呂場へと向かったアカオニ。
「転生っていうのも大変なのね・・・」
そしてまた漫画に目を通すルーミアだった。
「今戻ったよ」
それと同時に穴から出てきたのはこーりんこと霖之助であった。
ちなみ現在も褌である。
「何かおいしそうな者は居たかしら?」
「物騒だねぇ、僕は鳥が食べたかったから雀をつかまえてきたよ」
その手に摘まれていたのは・・・。
「ワ・・・ワタシハオイシクナイヨ」
ミスティアであった。
「小骨が多そうだけどいいわそれで」
相変わらず漫画に夢中なルーミアだがわずかに涎が垂れたのは彼女だけの秘密である。
「いやぁああああゆるしてええええ」
こーりんのよこでぴーぴー泣いているミスティア・・・だがその表情は一瞬で固まった。
「さて、食事でも・・・」
ルーミアが蛇のような目でミスティアを睨んでいたのだった。
「死亡フラグ?」
「多分」
こーりんと一言の会話をしたあといつもと変わらないルーミアとミスティアの鬼ごっこが開始された。
「二人とも適度に運動したら身体を休めるのも忘れないほうがいいよ」
しかし今の二人には何を言ってもムダだった。
「・・・それじゃあ僕は体の汗を洗い流してくるよ」
そういいこーりんが向かった先は浴場と表札が掲げられている場所。
「あ」
ルーミアがそう声を漏らした瞬間だった、物凄い激突音とともに勢いよくこーりんは浴場の反対側の壁に叩き付けられた。
「どうだったの?」
「ナ・・・ナイスボディ」
すると風呂場から目にも止まらぬ速度で桶が飛来し、こーりんの頭でスッコーンっといい音を奏でつつその桶は見事空中分解を果たした。
「ナイスコントロール」
じたばた暴れるミスティアを後ろから抱きしめているルーミアが風呂場に向かって親指を立てていた。
* * * * *
夜が明けた人間の里、そこには今現在数多くの妖怪が潜伏していた、いや・・・出るに出られない状況であった。
「萃香、もう霖之助はいないのかしら?」
紫が広場に置かれた黒板の裏でそう呟くと霧状となっていた萃香が姿を現した。
「居ないみたいだね、それにしてもあれは居たとしても直視したくないね」
誰もが頷いたであろう。
「それじゃあ隠れてる皆を集めてもらえないかしら?」
萃香の能力だとその程度は容易い事であった。
「ん・・・萃まれ!」
するとひょこひょこと人や妖怪がそのへんから姿を現しまた広場に集まりだした。
「あーなんだったんだよあれ・・・」
「もういないわよね?」
「幽々子様、早くしてください」
「あんな勇m・・・いや、不潔な者・・・橙がいなくてよかった」
「集まったわね」
全員集まったようだがまだ周囲を警戒していた。
「大丈夫よ、霖之助ならもう居ないわよ」
その言葉を信じたかどうかは定かではないが若干ざわめきが小さくなった。
それと同時に魔理沙が立ち上がった。
「紫、さっきの説明できるか?」
「あれのことね・・・多分アカオニが感情を弄ったのよ」
その言葉でまたざわめきが広がった。
「さっきの霖之助は本能と理性の境界が曖昧、いえ・・・境界に穴が開いてたのよ」
「そんなことまで・・・ん?まて、私もその境界に穴をあけられたらああなるのか!?」
その場の全員が再び凍りつく、決してあの氷精の仕業ではない。
「人によるわ・・・たぶん彼が異常だっただけよ・・・。ただ深い悩み事を抱えている者や普段自分の感情を抑えているのは注意が必要ね」
「・・・そうか、わかったぜ」
そして魔理沙が座る、それと入れ替わるように幽々子が立ち上がった。
「それで、そのアカオニってやつをどうこうして美羽を取り戻せばいいのかしら?」
「そうね、まずアカオニを美羽の体ごと封印してそれからアカオニの精神だけを封印する方法を探ればいいこと」
「そうなの?なら結構簡単に済みそうね」
霊夢が横から口を出す。
「そう簡単にいけばいいんだけどね・・・」
そう言う紫の表情は硬かった。
* * * * *
「あがったぞ」
アカオニが浴場から出てきた、白いTシャツと黒いズボンというかなり外の世界に寄った服装であった。
「ふいふんふぉふぁふぁはっはふぁふぇ」(ずいぶんと長かったわね)
ルーミアがミスティアをくわえながら言った。
相変わらずミスティアは泣きながら抵抗しているがその様子が楽しいのか更にルーミアはつついたり引っ張ったりくすぐったりしている。
「まぁそのまま寝てたからな」
「風呂で寝るのは溺死と風邪のもとだぞ」
「半身浴だ、それに風邪はお前に言われたくない何か着ろ」
こーりんの格好はやはり褌一丁であった。
「僕としたことが服の回収を忘れてしまってね、だから僕の店までの穴を開けてくれないか?」
「わかったから早く行け!」
そしてアカオニは穴を開きこーりんを蹴り入れた。
「どうしてもあいつが居るとうまくいかないな」
「わかるわそれ」
「やめて!そこ!わ・・・腋は!」
そしてアカオニはもう一つ穴を開いた。
「どこにいくのかしら?」
「3人のうちの一人だ、お前はまだ後でいい」
そしてアカオニが棚の上の酒瓶をとり穴の中に消えた。
「またまつのねぇ・・・れいぞうこっていうのに何かないのかしら」
そしてやっとミスティアを開放したルーミアが厨房の方へと歩いていく。
「ち・・・窒息死するところだった・・・」
擽りには弱いミスティアだった。
* * * * *
ここは幻想郷のとあるところにある山、山というより小高い丘の上の林に囲まれたところ。
「1233!・・・1234!・・・1235!」
そこの小さい山小屋の前で刀の素振りをしている老人がいた。
そしてその老人の背後に穴が開きアカオニが現れた。
「1236!・・・1237!・・・1238!」
しかし老人は気づかずに素振りを続ける。
そこでアカオニが酒瓶を勢い良く投げつけた。
「1239!・・・1240!・・・1241!」
酒瓶は目にも止まらぬ速さで回転しながら老人の後頭部へと向かう。
「1242!・・・124・・・・ぬん!」
しかし酒瓶はその老人の左手により受け止められた。
「手荒い酒のお誘いだのう、いつからそこにおったのだ?」
硬い表情で振り返る老人。
「とぼけるな、最初から気づいていただろう」
不機嫌そうにアカオニが答える。
「はっはっは、気分を損ねたか・・・若いのう」
言葉とは裏腹にその老人は刀を構えた。
「折角酒を持ってきたのに手荒いのはどっちだ」
一層不機嫌そうに言うアカオニ。
「なんじゃ久しぶりに楽しめると思ったんじゃがのう」
すこし残念そうに老人は構えを解いた。
「貴様は酒をもってきた客人をなんだと思っているんだ」
アカオニはもう飽きれた様子であった。
「これは失敬、酒で油断させる作戦かと思ったんじゃが・・・」
「どんな物騒な思考をしているんだ貴様は」
「はっはっはっは、まぁそういうなかれ・・・どれ、杯でももってくるかのう」
そして老人は山小屋へと入っていった。
「本当にどんな生活をしていたんだここのじいさんは・・・」
「毎日妖怪を斬り潰し食料を探す生活じゃのう」
老人が二つの杯をもって山小屋から出てきた。
「とんでもない生活だな、まるで昔の世界のようだ」
「ほう、ぬしも昔の世界をしっているのか」
そういい老人は座り酒を注ぎ始めた。
「ああ、昔はもっと妖怪が跋扈していたな」
「今も妖怪は跋扈しておるぞ?」
そう言い老人が酒を一口飲む。
「だが人間に格段に甘くなっている、それに妖怪全体の能力も低下している」
「確かに最近の妖怪は弱いのが多いのう」
そして老人は立ち上がった。
「・・・」
アカオニは何もせず酒を飲みながら見上げた。
「やはりそこまで知っている妖怪となれば只者ではないのは確実となった、ましてやこのわしの居場所を知るのはほんの一握りしかおらぬ」
そして老人は刀を抜きアカオニに向けた。
「すぐに刀に訴えるのはやめろ、酒もまずくなるし第一嫌われるぞ」
アカオニは老人を見上げたまま注意を促す。
「む・・・それはわるかったのう」
悪意がないのを完全に悟ったのかまた座る老人。
「ところでだ、たしか貴様の名前は妖忌といったはずだが?」
「そうだ、わしの名前は魂魄妖忌、幽々子御嬢に使える者・・・といいたいがいまは見ての通り老いぼれでな」
妖忌はどこか遠くを見ていた。
「そうか・・・ところでだ、私から話があるのだが・・・」
「なんじゃ?」
「妖忌、貴様私のところに来る気はないか?」
アカオニが微笑みながら言った。
「断る」
しかし妖忌は見向きもせずに断った。
「だろうな、ちょっと失礼するぞ」
「ん?」
そしてアカオニは妖忌の頭に手を乗せた。
「んん!?これは!」
「理解できたか?事の重大さが」
アカオニの力で妖忌の頭の中に全てが書き込まれた。
「だが断る」
妖忌は一向に応じる気配はみせなかった。
「そうか、なら仕方ない・・・だが最後にもう一回失礼するぞ」
「ほう」
そしてまたさっきと同じように頭に手を乗せた。
「これだけは私の口からは言いたくないのでな」
「これは・・・」
妖忌が何かに引っかかったようだ。
「後は何も言う事はない、強いて言えば酒に困らないといったところか」
妖忌はアカオニの方を向くと口で笑った。
「気が変わったぞ、お前さん等に協力しようかの」
そしてアカオニも口で笑った。
「感謝する」
* * * * *
「藍様も紫様もおそいなー」
マヨヒガにて留守番させられていた橙であった。
「皆何処行ったんだろう・・・」
そうして欠伸をしてごろんっと横になる橙。
「もどったわよー」
「にゃ!?」
橙がうとうとし始めたころに紫が帰ってきた。
「あら?寝てたの?」
「いいいえいえいえいえ寝てません!」
橙は首を横に大きく振った。
「そう、寝てたのね」
だが通用しなかった。
「良いのよこんな事ぐらいで、それよりも今日は客がいっぱい居るから、藍の手伝い頼めるかしら?」
「はい!」
橙は顔を上げるとスキマから出てきた藍に駆け寄っていった。
そして藍がスキマからでると後に続いて魔理沙やレミリアといった人妖達がでてきた。
しかし最初に集まっていた数の半分以下であった。
「結局、いつもどおりのメンバーねぇ」
レミリアがため息をつきながら言う。
「でもこれだけ居れば十分じゃないかしら?」
輝夜が自身有り気に言う。
「そうね、それで今集まってくれた皆、今日からここで寝泊りしてもらうわ」
紫のその発言により全員が沈黙した。
「「「「「「「はぁ!?」」」」」」」
お次は罵声である。
「当たり前よ、アカオニはもう幻想郷の全てを知っているといっておかしくない、もちろん隅々までね・・・。
ましてやアカオニは穴をつかって何処にでも出てくる事が出来るのよ?そんななか無防備に寝ていられるのかしら?」
あくまでも寝る事が基準だが説得力は十分にあった。
「言われてみればそうね、確かに敵陣の中で踊るようなまねはしたくないわ・・・でもここで寝泊りなんて・・・」
そういいアリスは頭を抱えながら唸りはじめた。
「そんなこといってもしょうがないじゃない、今幻想郷に安全な場所はないの・・・安全な場所は幻想郷とは剥離されているこのマヨヒガだけなのよ」
紫が真剣になって話す。
「でもねぇ、うちのメイド達をほうっておくわけにもいかないわ」
「そうね、イナバたちも寂しくて死んじゃうわ」
確かに永遠亭と紅魔館には大勢のメイドと兎が居た。
「大丈夫よ、マヨヒガの空間を広げるのは簡単、そしてここにこの家の設計図と改築図が・・・」
「美鈴」「ウドンゲ」
「「はいぃ!?」」
咲夜と永琳はほぼ同時に指名した、彼女等の繋がりは配下に弄られキャラがいることなのだろうか。
「門番メイドと共に今すぐやりなさい」
「技術系のイナバを集めて万膳の体制でやりなさい」
「「はい!」」
「はい、永遠亭はこっち、紅魔館はこっちよ」
そしてウドンゲとめいりんはそれぞれ逆のスキマへと入っていった。
「「はぁ」」
一同、ため息。
* * * * *
「もどったぞ・・・おい」
「あら、おかえり」
「ドナドナ~」
アカオニが戻ってきたとき最初に目に映ったのは食べ物のごみの散らかり様であった。
「貴様・・・冷蔵庫のもの平らげたな」
アカオニは呆れていた。
ちなみ冷蔵庫は氷を使って冷やすタイプである。
「いいじゃない、外から幾らでももってこれるんでしょう?」
「・・・まぁそうだがな・・・だがごみはちゃんと片付けろ」
「わしがやろう」
横から妖忌が出てきてどこから持ち出したのか箒でごみを集めだした。
「すまないな」
「はっはっは、昔もよく幽々子様が食い散らかした物をこうやって片付けていたものじゃ」
妖忌は笑いながら掃除をする、しかしその動きには無駄はまったくなかった。
「新入りかしら?」
「あぁ私が交渉してきたんだ」
すると妖忌が掃除の手を止めた。
「わしの名は魂魄妖忌と申す、これから行動を共にする者としてよろしゅう」
そして礼をする。
「あ・・はいこちらこそ・・・」
ルーミアは呆気とられていた。
「礼儀正しい奴だな・・・そういえば霖之助がいないな・・・どれ」
そう言い香霖堂につづく穴を覗き込んだ。
「やぁ、今は客としてかい?」
何事もなかったかのように店主をやっているこーりんが居た。
「何をしている」
「見れば解るじゃないか、この店の管理だよ・・・僕の店は良く襲われるからね、それにここが一番落ち着くんだ」
そう言いカウンターで寛ぐこーりん。
「そうか、ならいい・・・必要なときになったら呼ぶ」
「わかった」
そしてアカオニは穴から顔を引っ込めた。
「むしろこの方がいいな」
「そうね、彼が居ないほうが落ち着くわ」
「パラッパッパッパ~」
空気を読んでいるのかいないのかふぬけた音を綺麗な声で歌うミスティアであった。
「ちょっといいか」
「なんじゃ?」
「何かしら?」
突然呼びかけるアカオニ。
「多分やつらは私の能力のことに気づいていると思う」
「ふぅん」
興味ない、といいたげなルーミア。
「だから奴らは多分マヨヒガに避難するだろう、そこは私の能力も管轄外だからな」
「紫殿のところか」
「そこでだ・・・夜になったときに紅魔館を攻撃しようと思う」
アカオニがにやける。
「ちょっと待ちなさい、紅魔館を襲うなら昼の方が良いんじゃないのかしら?」
ルーミアの言うとおりレミリアは夜行性である。
「甘い、紅魔館には大量のメイドがいる、マヨヒガに全員移動させるのには時間が掛かるはずだ・・・それにあの吸血鬼はまず妹を最初にマヨヒガに送ると思う。
そしてその吸血鬼自体もいろいろと敏感だ・・・つまり、紅魔館の戦力を削りつつ真っ先に飛んでくるであろう吸血鬼を潰し他の奴らが駆けつけるまでに戻る。
やつらの戦力を一つ一つ潰すのだ」
「考えたわね」
「なかなかの策士だのう」
「くくっ夜が楽しみだ・・・」
* * * * *
「師匠!とりあえず美鈴さんの部下たちを連れてきました!」
「咲夜さん!とりあえず技術力のありそうな方たちを連れてきました!」
何故つれてこられたのか、そんな疑問を覚えた一同。
「そうね・・・じゃあ早速取り掛かるわよ、美鈴」
「てゐ、ウドンゲ、咲夜の言う事を聞いてイナバたちに指示をだしなさい」
「「はい!」」「え~・・・ごめんなさい、ちゃんとやります。だからその弓とナイフをしまってください」
こうしてマヨヒガの改築と建築が始まった。
「欠陥住宅にはしないでね」
紫が横から一声いれると誰にも気づかれずに咲夜が舌打ちをした。
「それにしても良く違う場所の人を集められたわねぇ・・・」
霊夢が半分感心、半分呆れながらもお茶をすする。
「まぁ中国だしな」
「中国ってあんた・・・」
「何故かは解らないが中国って単語が出てくるんだ、美鈴って読みづらいだろ?」
「読みづらいと言いづらいは違うと思うんだけど・・・まぁいっか」
良くない!・・・そんな罵声が響いたような気がした。
「ところでいまアカオニって奴は何処に居るのかしら?」
輝夜が紫に聞く。
「解らないわ、もしかしたら幻想郷には居ないのかもしれないし、それかどこか漂ってあの人みたいのを更に生み出しているのかもね・・・」
「聞かないほうが良かった・・・」
輝夜はあの惨劇を思い出してしまい真っ青になっていた。
「そういえば魔理沙、あの時よく霖之助さんが普通じゃないってわかったわね」
霊夢がお茶をすすりながら隣に居る魔理沙に聞く、そして魔理沙は得意げに答えた。
「そんなの簡単だぜ、香霖は私に会うと最初に必ず嫌な顔をするんだ、あの時はそれがなかったんだ」
その答えに霊夢は本気で呆れた。
「あのねぇすこしは悔い改めなさいよ・・・」
「霊夢には言われたくないぜ」
本当にやっている事は余り変わらない。
「失礼ね、私はただ転がっている物を拾っているだけよ」
「私だって借りていってるだけだ、たまにちゃんと返したりしてるしな・・・本当に香霖のものかどうかは知らんが」
「そんなこと言われたら私だって・・・私だって・・・・・・・う」
「ふ、私の勝ちだぜ」
「いいじゃない、どうせ使われないんだし」
霊夢が開き直ったようだ。
「ところで霖之助さんのあれって直るのかしら?」
「2,30発殴れば直るだろ」
いきなり恐ろしい事を言い出す魔理沙。
「素直に紫に見てもらったほうがいいんじゃない?違う意味でおかしくなるわよ」
「む・・・そうか」
そのとき何かを霊夢が呟いた。
「・・・本当に」
「ん?なんだ?」
「ん?あぁ、本当に美羽はトラブルばっか持ち込んでるなぁって」
「たしかにな、宴会のときは今まで以上に盛り上がったぜ」
「早く戻ってきて食料調達行って来てほしいわ・・・もう野菜しかないもん」
「それはそれでひどいな」
そして笑いあう二人であった。
* * * * *
日が傾き始めたころ、アカオニたちは作戦会議をしていた。
「いいか?ルーミアと妖忌は中から穴を通じて、私は正面から行くとしよう・・・こ・・こーりんは裏口から突破だ」
呼び名を訂正されたらしい。
「それで、メイドは邪魔する者は生かさず殺さず・・・再起不能にするんだ・・・特に戦闘能力のあるものは殺してもかまわない」
「わしはみね打ちしかせんぞ」
「それでいい、要は戦力を削ればいいんだ・・・それよりもメイドより吸血鬼のほうが問題だ、メイドで余り体力を消耗するなよ・・・邪魔するメイドだけでいいんだ。
それと紅魔館の破壊工作だがこの廊下の壁とここの部屋の壁を破壊すれば移動がスムーズになるはずだ・・・あとここの床だ、これを破壊すれば図書館の方に出る」
「そんな程度意味あるのかしら?」
ルーミアがやる気なさそうに言った。
「いつ誰が呼んでもすぐ集まれるようにルートの確保は大切なんだ、ましてや私はともかく紅魔館の地の利は無いに等しい・・・そんななかの単独行動ほど危険な物はないんだ」
「ふぅん・・・私はあまり頭を使うような事は出来ないわ」
そう言いルーミアは頭を掻いた。
「だからこそ集団行動が大切なんじゃないのか?むやみやたらに敵陣に突っ込んでも罠にはまったりするだけだしね」
こーりんがもっともな意見を述べた。
「その通りだ、紅魔館ならまだしも永遠亭などは何故か罠がかなり仕掛けられている・・・だからこそ紅魔館はまず最初の一歩として一番適切だろう」
「冥界へだけはゆずれんぞ」
妖忌がアカオニを睨み付けた。
「わかってる、それに冥界には援軍となるものが殆ど居ない・・・行く手を阻むと思われるのはプリズムリバーか西行寺、それと貴様の孫だ」
「幽々子様と妖夢の相手はわし一人にしてもらいたい」
「解った、だがそれは今すべき事ではない・・今すべき事は紅魔館の見取り図を頭に詰めることだ・・・ここまで複雑になると私の力じゃどうにもならないからな」
「つまり自分も把握しきれないってこと?」
「・・・そうだ・・・私も普通の妖怪に過ぎん、力を使ってもせいぜい図面事態を覚える程度しか出来ない、だが図面に文字を書きすぎると次は見づらくてしょうがない。
だから根気よく覚えるしかないんだ」
「役に立つんだかたたないんだか・・・はぁ」
ルーミアは深くため息をついた。
「まぁ一応覚えが悪いのにはこの複製品を持っていってもらおう」
「悪かったわね覚えが悪くて」
「あ、そういえば」
こーりんが何かを思い出したようだ。
「どうした?」
「里に行った時に聞いたんだけど月には妖怪たちが恐れる物があるらしいんだ」
「興味はあるな、だがいくのは無謀だ・・・なにしろいまの月は科学と幻想のどっちが勝っているかもわからないし戦争中という情報もある」
「そうか・・・それでレミリアの方はどうするんだ?」
こーりんの表情はすこし残念そうだった。
「吸血鬼は4人いっせいに掛かるんだ、たとえ素早い吸血鬼であろうと4人一斉では敵うまい・・・そして動けなくなったところで穴の中の別次元に閉じ込めればそれでいい」
「レミリアはそう簡単に倒せないとおもうんだけどなあ・・・ここは連携プレイを試してみないか?」
「連係プレイねぇ・・・いいんじゃないかしら?」
「確かにばらばらになって戦うよりも連携した方がはるかに効率は上がるかもしれんのう」
「なるほど・・・いい案だ・・・しかし具体的にどのようなことが出来るのかを知る必要がある・・・ちょっと失礼するぞ」
アカオニが一人一人の頭に触れ情報を読み取っている。
「次はおまえか」
「あぁ、僕だ」
そして頭に手を乗せた。
「ぬぅお!?」
突然アカオニが倒れそうになった。
「ちょっと大丈夫?」
「あぁ・・・なんとか大丈夫だ・・・まぁこれで全員の力量や技などが解った・・・これは楽しい事になりそうだ」
そういいまた紙を取り出し何かを書き始めたアカオニ。
「ここに吸血鬼がいるとしよう・・・それでだ...」
そうしてまた説明が始まった。
しかしアカオニたちはある大きな計算違いに気づいてはいなかった。
そしてその計算違いは後に大きな被害をもたらすことなど知る由もなかった。
続く。
酒で釣られた(そもそもそれが不自然に思えますが)妖忌がノリノリで陣営への意見を行ったり、そもそもアカオニのところに攻撃を行うのではなく籠城を選択する紫だったり、何より東方キャラが何か踏み台になってしまっている描写が気にかかります。アカオニの幻想郷侵略絵巻とでも題した方がいいような………、そんな感じです。
辛口意見が、ということでしたので遠慮なく書かせていただきましたが、このような書き方を続けるのはちょっと良くないと思います。続くにしても、もう少し推敲や多作との比較、文章チェックを行った方がいいと思います。
以前から感じていたことですが、貴方の作品は周囲の作品郡と比べて激しく浮いています。
まだまだ終わりそうにないのではっきりと言わせていただきますけど、自己満足は程々にしましょう。
東方に登場しないオリキャラは、端的にいえば作者の自己満足の集大成ですから。
作者的には有るのかも知れないけど、私にはただ出したかっただけに思えました
前回の作品はさっぱり覚えていない(読んでいなかった)のですが、なかなか楽しめました。
それだけでも、誤字脱字や文法間違い、矛盾点などは驚くほど少なくなります。
他のコメントでも言われていますが、ただアカオニを暴れさせたいだけですよね?
はっきり言わせてもらいますが『原作蹂躙俺SUGEEEEE』は誰もいい評価はしませんよ?
ある程度文章力があり、物語上仕方なくならまだわかりますがね。
これは淡々と『つえーだろ』を繰り返してるだけ。
最後に一言、次にも期待はしておりません。悔しいなら、見返してください。
オリキャラのアカオニ、キャラ改変されたルーミアとこーりん、公式設定の少ない妖忌……。
見事に、作者が都合よく動かせる者ばかりじゃないですか。
今後はオリキャラ軍団vs.東方原作キャラの戦いとなるようですが、作品のこれまでの描かれ方からすると、東方ファンが楽しめる内容になるとは思えません。
アカオニは最後に花火を打ち上げて散るのでしょうけど。
でも、オリキャラが主で東方キャラが脇役って書き方はちょっと…って感じかな。