「あの子、大分聞き分けよくなったのねぇ。」
ある昼下がりの紅魔館、霊夢は紅茶の入ったカップを置き、紙になにやら描いているフランドールを見てそう言った。フランドールの横では魔理沙がパチュリーと調べ物をしている。
「うん、初めてあなた達と会ってからすこし大人しくなって…遊び相手ができたからかしらね。」
霊夢の対面に座るレミリアがそう言う。
霊夢は初めてフランドールと対面したときの弾幕ごっこを思い出す、あれはもう二度と体験したくない出来事らしく苦笑いを思わず浮かべた。
「勘弁してよ…。もうあんなのコリゴリ。あの子の遊び相手は魔理沙一人で十分でしょう。」
「そうかしら。まぁ…魔理沙にはよく懐いているみたいだけど。」
レミリアは横目でちらりとフランドールを見た。落書きにも飽きたらしく、フランドールは魔理沙をちらちらと見ている。
「魔理沙とはこの間、ちょっとあったから。当然と言えば当然ね。」
「なになに?また魔理沙が何かやらかしたの?」
興味を示したらしく、霊夢はテーブルに身を少し乗り出した。その反動でカップがカタカタと音を立てる。
「一言で言うならキツいお灸ってやつね…そうね、暇だし話してあげましょうか。」
その日、いつものように霧雨 魔理沙は紅魔館の入り口を強行突破し、図書館を訪れていた。
「ふぅ、ちょっとやりすぎたかな。まぁいいか、門番とメイド長がなんとかしてくれるだろ。」
パンパンと埃をはらいながら、キョロキョロと辺りを見回す。
「おっ…いたいた。おーい!」
ブンブンと手を振る魔理沙の先にはパチュリーがいた。魔理沙は広い図書館を小走りし、読書にふけるパチュリーの元に急ぐ。パチュリーは呆れ顔で本を置いた
「またあなた、破壊して来たの?」
「破壊とは人聞きが悪いな。いきなり、門番が襲ってきたんだ。」
「いつもいつも、本を強奪しにくるからでしょ…。で、今日は何の用なの?」
「とりあえず本を借りにきたのと、あとちょっと薬作るのを手伝ってほしい。一人だと工程が多すぎて日が暮れる。」
「はいはい、借りたい本のリストはこれね。小悪魔に集めさせておくから。」
パチュリーは突き出された乱雑な文字で書名が書かれている紙切れを受け取り、小悪魔に渡した。受け取った小悪魔は一通り目を通すと、その冊数の多さに頭を抱えながらも図書館の奥に消えていった。
「さて、と、薬、作りましょうか。で、何を作るの?」
「この本に書いてあったやつなんだがな…材料集めるのが大変だったぜ。」
「こんなの作るつもりなの?いったい何に…」
「ちょっと池にでも、な。実験ってやつだ。」
「実験ってあなたねぇ。…この館に迷惑かけないならよしとしましょうか。」
はぁ、とため息をつきながらも、準備を始めるパチュリー。パチュリーの私物ながらも勝手を知っている魔理沙も準備を進めていく。
準備が終わり、実作業に移るところだった。図書館内がドォン!と一つ大きく揺れた。魔理沙はこらえていたがパチュリーはそのまま倒れてしまった。
「おいおい、大丈夫か。外に出ないからだぜ。」
「ありがと、でもあとの言葉は余計。」
魔理沙はパチュリーの手を取り、起こしてやると図書館を見回す。振動は無いがミシッという軋む音が時折聞こえる。
「いったい何の騒ぎだ。この館は改修工事でもするのか?」
「そんな話聞いてないし、あんな音を立ててここにくるのはあなたしかいないわ。」
「と、するとだ、残るのは一人しか思い浮かばないな…」
パチュリーがコクンとうなずくと、また大きな音を立てて図書館の壁にひとつ大きな穴が開いた。もくもくと煙があがり、人影がひとつ突き抜けてきた。
「魔理沙~!」
そう元気な声を上げて飛び出してきた人影の正体は、フランドールだった。
「ゲホッ!やっぱり、お前か!また派手に出てきたな…。それにとんでもないことしてくれて…また…」
魔理沙が振り返った先にはあったはずの、準備をしていた薬品類はすべて吹き飛び、機材も傷ついてしまっていた。
「妹様~」
次に慌てて図書館に入ってきたのは美鈴だった。
「門番。少し遅いぜ。」
「うう、面目ない…。あなたが来ていると聞いて一目散に一直線に向かったもので。さぁ、妹様お部屋に戻りましょう。そこの白黒は今日はパチェ様に用事があるようですよ。」
「いや!魔理沙と遊ぶの!」
美鈴が、連れ戻そうと手を差し出すと、フランドールはその手を払い、大きな声でそう拒絶した。瞬間空気がピンと張り詰め、当人以外全員が感じた。
(これは対応を誤るとマズい…)
硬直した空気の中で最初に口を開いたのは魔理沙だった。
「しかたないなぁ…フランドール遊んでやるよ。でもちょっと用事が済むまであっちで美鈴とお絵かきでもして待っててくれるか?」
「うん!いいよ!」
満面の笑顔を浮かべて美鈴をグイグイひっぱるフランドール。
「ごめんなさい。妹様はあなたがお気に入りみたいで。」
「気にしなくてもいいぜ、門番。それに謝ってくれるよりも、壁の破壊とかを帳消しにしてくれたほうがいい。」
「それは無理。…じゃあ、妹様あちらで遊びましょうか。」
「うん!魔理沙ー、待ってるからね!」
フランドールは手をブンブンと振り、美鈴と隣室に入っていった。その姿を見送り苦笑いをしながら魔理沙は惨状となった実験器具達を見る。
「ふぅ、まったく元気な吸血鬼だ。さて、パチュリーやり直すぞ…。」
「はいはい…。」
がっくりと肩を落とす魔理沙とやれやれといった表情のパチュリーは、ふたたび実験を始めるのであった。
「ふぅ、後はこれを調合して…時間をおくだけで終わりだな。いや、助かったよ、パチュリー。」
「礼には及ばないわよ。それよりもこの図書館から持ち出した本を返してくれたほうがいいわね。」
「手厳しいなぁ…。」
ぐぅっと体を伸ばし、魔理沙は片方のビンに入った薬品をもうひとつのビンに入れる。薬品がひとつになった瞬間、ビンがカタカタと音を立て激しく揺れ、高温になっているらしくビンの上に陽炎が出来る。
「さてと、もうちょっとしたらフランドールに構ってやるか。少し待たせすぎたかな。」
フランドールが隣室に行ってからすでに3時間ほど経っていた。
「美鈴もいるし、大丈夫でしょ。暴れたら手に負えないでしょうし。」
「それもそうだな。とりあえず、一服でもするかな。ほら、この間作った…」
魔理沙が鞄の中から菓子を取り出そうとしたその時だった。魔理沙が作った穴、先ほどフランドールが突き破った穴、その間からピキピキと音がたち、ヒビが入った。
「ん?なぁパチュリー、壁から音がしなかったか?」
「そうかしら?あっちから…ということはフランがちょっとやんちゃをしているんじゃ…。」
二人が壁に注目した瞬間、轟音と弾幕が図書館に響き渡った。音も弾幕も止まず、その出所にはひとつ影が見えた。
「あっちゃあ…ひょっとして私のせいかな?」
起こっている事態は一目瞭然であり、事の経緯も一瞬でわかる。フランが我慢を出来なくなり、癇癪を起こした、というそれだけのことだった。魔理沙はその影にむけて呼びかける。
「おーい!フランドールだろ?ごめん、もう少し待っててくれ!」
図書館内に立ち込める煙が晴れる、煙の出所には呼びかけられた影、フランドールがいた。幼い吸血鬼は紅色の目でキっと魔理沙を睨み付ける。
「もうやだ!我慢できない!魔理沙遊んでくれないもん!」
「悪かったって!もう少しで終わるから、頼むから降りてきてくれ。」
「嘘!ウソ!うそ!魔理沙のうそつき!ちょっとって言ったのに!」
泣き喚きながらフランドールは弾幕を展開し続け、図書館の棚、壁、机、あるものすべてが壊れていく。
「ごめんなさい~…私には無理でしたー…。」
隣の部屋から這い出した美鈴は、謝ってそのまま力尽きていた。
「門番には荷の重い作業だったみたい。誰にでも荷が重いでしょうけど。」
「それにしたってどうにかしないとな。こっちにも弾幕飛んでくるぞ。」
カシャン、と小さな音がした。本当に小さな音だったが魔理沙はきになりチラと音のした方向を見てみる。
「あぁ!?」
そこには無残に割れた調合中のビンが転がっていた。魔理沙の目が据わった。
「パチュリー…図書館の天井に穴を開ける。ちょっとカチンときてしまった。」
「はいはい、でも無理はしないでね。」
「心配無用。ちょっと喝を入れてくる。」
箒に跨り、魔理沙は手のひらに魔力を集中させる。弾幕を掻い潜り、フランドールの下に入り込んだ。
「お仕置きついでにとことん遊んでやるよ、フランドール。マスタァァァスパァァク!」
魔理沙の手から一気に魔力が開放され、フランドールを打ち上げ天井を破り空に撃ちだされた。フランドールが打ち上げられた空は日が落ち始め真っ赤に染まった夕焼け空だった。
「いったぁ…!やっぱり魔理沙は私に意地悪するんだ!」
金切り声が魔理沙の耳に届く。
空に上がった二人が、最初にしたことは一方的にフランドールがキーキーと喚き、魔理沙がじっとフランドールを見据えるということだった。
「ねぇ!聞いてるの!聞いてないでしょ!?」
ずっと見ているだけの魔理沙にフランドールは痺れをきらした。まっすぐ、一直線に魔理沙に飛び掛っていく。
「そうやって、やりたいことをストレートにやるのはいいが…たまには考えるのも大切なんだぜ?…スターダストレヴァリエ。」
そう小さく魔理沙がつぶやくと魔理沙の周囲に弾幕が展開される。とっさのことにフランドールは突っ込むのを躊躇った。
「ちょっと…!いたっ、後ろからなんて…!やぁっ!」
目の前に見える弾幕を瞬時のところで回避できたと思えば、小さな弾幕にあたり、そこに気をとられるとまた次、次とあたり続ける。
「こうなるんだ。もういっちょ、ミルキーウェイ!」
羽を弾幕に当てられ思うように飛べないフランドールはゆっくりと下に落ちていく、そこに更に魔理沙は弾幕を展開した。一回、一回とあたるたびにゆっくりと地面に近づいていく。羽ばたこうとしてもすぐに弾に当たる悪循環。
(やだ、落ちちゃう…!痛いのイヤ…!)
思っても思っても飛べない、次第に地面が近づいてくる。
「助けてよぉ!魔理沙ぁ!」
半べそになり、思わず目を閉じ叫んだそのとき、落ちていくフランドールの背中にそっと、触れる感覚がする。
「呼ばれたから助けに来たぜ。ちっとは反省したかい、妹さん?」
背中に手を添えていたのは魔理沙だった。ここまで痛めつけた当人だったがそんな様子は微塵も感じさせない、ゆっくりと地面に降り立ち、フランドールの肩に手を添え、座るように促す。。
「ま、魔理沙のバカぁ!すっごくすっごく痛かったんだよ!なんであんなひどいことするの?!」
「まだわかんないかぁ…。だから、私はもともと薬を作るっていう予定があったんだぜ。で、フランドールは待っていてくれるっていったよな。」
「うん、でも魔理沙が遅いから私我慢できなくて…。」
「そこなんだ。たまには我慢しないといけないときもあるんだ。まぁ・・・今回は私も様子見せずにほったらかしにしていたけど…。なんでも自分の思うように我侭が通るっていうのは少ないものなんだぜ?」
フランドールの頭をポンポンとなでながら、諭すように話す魔理沙。その様子からは先ほどまでの大暴れを引き起こした人物とは思えない。
「えー…やだ!」
しばらく、考えたフランドールの答えがそれだった。魔理沙は一瞬固まる、彼女の脳からプチんと何かがキれた音が聞こえた。
「あぁ!もう!悪い子にはやっぱりこうしないとだめだ!」
フランドールの腰を抱え、しりを向けさせ叩く。いい音が日の落ちた空に響いた。
「痛いよ!痛い!魔理沙ぁ!」
「うるさい。悪い子にはお仕置きと相場が決まっている。」
パァンとまたひとつ音が響いた。
「ごめんなさい!ごめんなさいってばぁ!」
「だーめ。あと10くらい。」
二人の様子を見に来た紅魔館の捜索隊が発見した時、魔理沙はフランドールの遊びにつき合わされ文字通りくたくたになっていた。
「…ということがこの間あったのよ。」
「へぇ。そういえばこの前なんか近くに見える流れ星があったけどそういうことだったのね。」
紅茶を置いて霊夢は納得したように頷いた。
「しかし、あのフランドールが言うことを聞くなんてね。私たちと始めて会った時は本当に手がつけられないと言うかなんというか…」
思わず苦笑する霊夢。
「あの子なりに外の人間や妖怪に触れて成長しているのかもしれないわね。なにしろそのことだってフランが私にだけ『ひみつ』って言うことで教えてくれたのだから。そうじゃなければ紅魔館の者は、いつものようにフランが魔理沙とじゃれあったってくらいだと思うでしょうね。」
「それもそうね。」
紅茶を飲み終わり二人は魔理沙たちを見る。
「魔理沙ー。まだ終わらないー?」
なにやら描いていたものを放り投げ、魔理沙のところへトコトコと歩いて聞くフランドール。
「んー、すまん。あとちょっと。」
「わかった。待ってるからね!」
「おー、いい子だ。」
ある昼下がりの紅魔館、霊夢は紅茶の入ったカップを置き、紙になにやら描いているフランドールを見てそう言った。フランドールの横では魔理沙がパチュリーと調べ物をしている。
「うん、初めてあなた達と会ってからすこし大人しくなって…遊び相手ができたからかしらね。」
霊夢の対面に座るレミリアがそう言う。
霊夢は初めてフランドールと対面したときの弾幕ごっこを思い出す、あれはもう二度と体験したくない出来事らしく苦笑いを思わず浮かべた。
「勘弁してよ…。もうあんなのコリゴリ。あの子の遊び相手は魔理沙一人で十分でしょう。」
「そうかしら。まぁ…魔理沙にはよく懐いているみたいだけど。」
レミリアは横目でちらりとフランドールを見た。落書きにも飽きたらしく、フランドールは魔理沙をちらちらと見ている。
「魔理沙とはこの間、ちょっとあったから。当然と言えば当然ね。」
「なになに?また魔理沙が何かやらかしたの?」
興味を示したらしく、霊夢はテーブルに身を少し乗り出した。その反動でカップがカタカタと音を立てる。
「一言で言うならキツいお灸ってやつね…そうね、暇だし話してあげましょうか。」
その日、いつものように霧雨 魔理沙は紅魔館の入り口を強行突破し、図書館を訪れていた。
「ふぅ、ちょっとやりすぎたかな。まぁいいか、門番とメイド長がなんとかしてくれるだろ。」
パンパンと埃をはらいながら、キョロキョロと辺りを見回す。
「おっ…いたいた。おーい!」
ブンブンと手を振る魔理沙の先にはパチュリーがいた。魔理沙は広い図書館を小走りし、読書にふけるパチュリーの元に急ぐ。パチュリーは呆れ顔で本を置いた
「またあなた、破壊して来たの?」
「破壊とは人聞きが悪いな。いきなり、門番が襲ってきたんだ。」
「いつもいつも、本を強奪しにくるからでしょ…。で、今日は何の用なの?」
「とりあえず本を借りにきたのと、あとちょっと薬作るのを手伝ってほしい。一人だと工程が多すぎて日が暮れる。」
「はいはい、借りたい本のリストはこれね。小悪魔に集めさせておくから。」
パチュリーは突き出された乱雑な文字で書名が書かれている紙切れを受け取り、小悪魔に渡した。受け取った小悪魔は一通り目を通すと、その冊数の多さに頭を抱えながらも図書館の奥に消えていった。
「さて、と、薬、作りましょうか。で、何を作るの?」
「この本に書いてあったやつなんだがな…材料集めるのが大変だったぜ。」
「こんなの作るつもりなの?いったい何に…」
「ちょっと池にでも、な。実験ってやつだ。」
「実験ってあなたねぇ。…この館に迷惑かけないならよしとしましょうか。」
はぁ、とため息をつきながらも、準備を始めるパチュリー。パチュリーの私物ながらも勝手を知っている魔理沙も準備を進めていく。
準備が終わり、実作業に移るところだった。図書館内がドォン!と一つ大きく揺れた。魔理沙はこらえていたがパチュリーはそのまま倒れてしまった。
「おいおい、大丈夫か。外に出ないからだぜ。」
「ありがと、でもあとの言葉は余計。」
魔理沙はパチュリーの手を取り、起こしてやると図書館を見回す。振動は無いがミシッという軋む音が時折聞こえる。
「いったい何の騒ぎだ。この館は改修工事でもするのか?」
「そんな話聞いてないし、あんな音を立ててここにくるのはあなたしかいないわ。」
「と、するとだ、残るのは一人しか思い浮かばないな…」
パチュリーがコクンとうなずくと、また大きな音を立てて図書館の壁にひとつ大きな穴が開いた。もくもくと煙があがり、人影がひとつ突き抜けてきた。
「魔理沙~!」
そう元気な声を上げて飛び出してきた人影の正体は、フランドールだった。
「ゲホッ!やっぱり、お前か!また派手に出てきたな…。それにとんでもないことしてくれて…また…」
魔理沙が振り返った先にはあったはずの、準備をしていた薬品類はすべて吹き飛び、機材も傷ついてしまっていた。
「妹様~」
次に慌てて図書館に入ってきたのは美鈴だった。
「門番。少し遅いぜ。」
「うう、面目ない…。あなたが来ていると聞いて一目散に一直線に向かったもので。さぁ、妹様お部屋に戻りましょう。そこの白黒は今日はパチェ様に用事があるようですよ。」
「いや!魔理沙と遊ぶの!」
美鈴が、連れ戻そうと手を差し出すと、フランドールはその手を払い、大きな声でそう拒絶した。瞬間空気がピンと張り詰め、当人以外全員が感じた。
(これは対応を誤るとマズい…)
硬直した空気の中で最初に口を開いたのは魔理沙だった。
「しかたないなぁ…フランドール遊んでやるよ。でもちょっと用事が済むまであっちで美鈴とお絵かきでもして待っててくれるか?」
「うん!いいよ!」
満面の笑顔を浮かべて美鈴をグイグイひっぱるフランドール。
「ごめんなさい。妹様はあなたがお気に入りみたいで。」
「気にしなくてもいいぜ、門番。それに謝ってくれるよりも、壁の破壊とかを帳消しにしてくれたほうがいい。」
「それは無理。…じゃあ、妹様あちらで遊びましょうか。」
「うん!魔理沙ー、待ってるからね!」
フランドールは手をブンブンと振り、美鈴と隣室に入っていった。その姿を見送り苦笑いをしながら魔理沙は惨状となった実験器具達を見る。
「ふぅ、まったく元気な吸血鬼だ。さて、パチュリーやり直すぞ…。」
「はいはい…。」
がっくりと肩を落とす魔理沙とやれやれといった表情のパチュリーは、ふたたび実験を始めるのであった。
「ふぅ、後はこれを調合して…時間をおくだけで終わりだな。いや、助かったよ、パチュリー。」
「礼には及ばないわよ。それよりもこの図書館から持ち出した本を返してくれたほうがいいわね。」
「手厳しいなぁ…。」
ぐぅっと体を伸ばし、魔理沙は片方のビンに入った薬品をもうひとつのビンに入れる。薬品がひとつになった瞬間、ビンがカタカタと音を立て激しく揺れ、高温になっているらしくビンの上に陽炎が出来る。
「さてと、もうちょっとしたらフランドールに構ってやるか。少し待たせすぎたかな。」
フランドールが隣室に行ってからすでに3時間ほど経っていた。
「美鈴もいるし、大丈夫でしょ。暴れたら手に負えないでしょうし。」
「それもそうだな。とりあえず、一服でもするかな。ほら、この間作った…」
魔理沙が鞄の中から菓子を取り出そうとしたその時だった。魔理沙が作った穴、先ほどフランドールが突き破った穴、その間からピキピキと音がたち、ヒビが入った。
「ん?なぁパチュリー、壁から音がしなかったか?」
「そうかしら?あっちから…ということはフランがちょっとやんちゃをしているんじゃ…。」
二人が壁に注目した瞬間、轟音と弾幕が図書館に響き渡った。音も弾幕も止まず、その出所にはひとつ影が見えた。
「あっちゃあ…ひょっとして私のせいかな?」
起こっている事態は一目瞭然であり、事の経緯も一瞬でわかる。フランが我慢を出来なくなり、癇癪を起こした、というそれだけのことだった。魔理沙はその影にむけて呼びかける。
「おーい!フランドールだろ?ごめん、もう少し待っててくれ!」
図書館内に立ち込める煙が晴れる、煙の出所には呼びかけられた影、フランドールがいた。幼い吸血鬼は紅色の目でキっと魔理沙を睨み付ける。
「もうやだ!我慢できない!魔理沙遊んでくれないもん!」
「悪かったって!もう少しで終わるから、頼むから降りてきてくれ。」
「嘘!ウソ!うそ!魔理沙のうそつき!ちょっとって言ったのに!」
泣き喚きながらフランドールは弾幕を展開し続け、図書館の棚、壁、机、あるものすべてが壊れていく。
「ごめんなさい~…私には無理でしたー…。」
隣の部屋から這い出した美鈴は、謝ってそのまま力尽きていた。
「門番には荷の重い作業だったみたい。誰にでも荷が重いでしょうけど。」
「それにしたってどうにかしないとな。こっちにも弾幕飛んでくるぞ。」
カシャン、と小さな音がした。本当に小さな音だったが魔理沙はきになりチラと音のした方向を見てみる。
「あぁ!?」
そこには無残に割れた調合中のビンが転がっていた。魔理沙の目が据わった。
「パチュリー…図書館の天井に穴を開ける。ちょっとカチンときてしまった。」
「はいはい、でも無理はしないでね。」
「心配無用。ちょっと喝を入れてくる。」
箒に跨り、魔理沙は手のひらに魔力を集中させる。弾幕を掻い潜り、フランドールの下に入り込んだ。
「お仕置きついでにとことん遊んでやるよ、フランドール。マスタァァァスパァァク!」
魔理沙の手から一気に魔力が開放され、フランドールを打ち上げ天井を破り空に撃ちだされた。フランドールが打ち上げられた空は日が落ち始め真っ赤に染まった夕焼け空だった。
「いったぁ…!やっぱり魔理沙は私に意地悪するんだ!」
金切り声が魔理沙の耳に届く。
空に上がった二人が、最初にしたことは一方的にフランドールがキーキーと喚き、魔理沙がじっとフランドールを見据えるということだった。
「ねぇ!聞いてるの!聞いてないでしょ!?」
ずっと見ているだけの魔理沙にフランドールは痺れをきらした。まっすぐ、一直線に魔理沙に飛び掛っていく。
「そうやって、やりたいことをストレートにやるのはいいが…たまには考えるのも大切なんだぜ?…スターダストレヴァリエ。」
そう小さく魔理沙がつぶやくと魔理沙の周囲に弾幕が展開される。とっさのことにフランドールは突っ込むのを躊躇った。
「ちょっと…!いたっ、後ろからなんて…!やぁっ!」
目の前に見える弾幕を瞬時のところで回避できたと思えば、小さな弾幕にあたり、そこに気をとられるとまた次、次とあたり続ける。
「こうなるんだ。もういっちょ、ミルキーウェイ!」
羽を弾幕に当てられ思うように飛べないフランドールはゆっくりと下に落ちていく、そこに更に魔理沙は弾幕を展開した。一回、一回とあたるたびにゆっくりと地面に近づいていく。羽ばたこうとしてもすぐに弾に当たる悪循環。
(やだ、落ちちゃう…!痛いのイヤ…!)
思っても思っても飛べない、次第に地面が近づいてくる。
「助けてよぉ!魔理沙ぁ!」
半べそになり、思わず目を閉じ叫んだそのとき、落ちていくフランドールの背中にそっと、触れる感覚がする。
「呼ばれたから助けに来たぜ。ちっとは反省したかい、妹さん?」
背中に手を添えていたのは魔理沙だった。ここまで痛めつけた当人だったがそんな様子は微塵も感じさせない、ゆっくりと地面に降り立ち、フランドールの肩に手を添え、座るように促す。。
「ま、魔理沙のバカぁ!すっごくすっごく痛かったんだよ!なんであんなひどいことするの?!」
「まだわかんないかぁ…。だから、私はもともと薬を作るっていう予定があったんだぜ。で、フランドールは待っていてくれるっていったよな。」
「うん、でも魔理沙が遅いから私我慢できなくて…。」
「そこなんだ。たまには我慢しないといけないときもあるんだ。まぁ・・・今回は私も様子見せずにほったらかしにしていたけど…。なんでも自分の思うように我侭が通るっていうのは少ないものなんだぜ?」
フランドールの頭をポンポンとなでながら、諭すように話す魔理沙。その様子からは先ほどまでの大暴れを引き起こした人物とは思えない。
「えー…やだ!」
しばらく、考えたフランドールの答えがそれだった。魔理沙は一瞬固まる、彼女の脳からプチんと何かがキれた音が聞こえた。
「あぁ!もう!悪い子にはやっぱりこうしないとだめだ!」
フランドールの腰を抱え、しりを向けさせ叩く。いい音が日の落ちた空に響いた。
「痛いよ!痛い!魔理沙ぁ!」
「うるさい。悪い子にはお仕置きと相場が決まっている。」
パァンとまたひとつ音が響いた。
「ごめんなさい!ごめんなさいってばぁ!」
「だーめ。あと10くらい。」
二人の様子を見に来た紅魔館の捜索隊が発見した時、魔理沙はフランドールの遊びにつき合わされ文字通りくたくたになっていた。
「…ということがこの間あったのよ。」
「へぇ。そういえばこの前なんか近くに見える流れ星があったけどそういうことだったのね。」
紅茶を置いて霊夢は納得したように頷いた。
「しかし、あのフランドールが言うことを聞くなんてね。私たちと始めて会った時は本当に手がつけられないと言うかなんというか…」
思わず苦笑する霊夢。
「あの子なりに外の人間や妖怪に触れて成長しているのかもしれないわね。なにしろそのことだってフランが私にだけ『ひみつ』って言うことで教えてくれたのだから。そうじゃなければ紅魔館の者は、いつものようにフランが魔理沙とじゃれあったってくらいだと思うでしょうね。」
「それもそうね。」
紅茶を飲み終わり二人は魔理沙たちを見る。
「魔理沙ー。まだ終わらないー?」
なにやら描いていたものを放り投げ、魔理沙のところへトコトコと歩いて聞くフランドール。
「んー、すまん。あとちょっと。」
「わかった。待ってるからね!」
「おー、いい子だ。」
ただあとがきでおっしゃっている通り、地の文が少ないですね。そのせいか、状況描写がちょっと足りていない部分もありますね。妹君が癇癪を起こす部分はちょっとよく分かりませんでした。あれなら最初に妹君の声を出してしまってもいいのではないでしょうか?
ですがそう卑下するほど酷くは無いと思いますので、今後の投稿も楽しみにさせていただきます。
最後の魔理沙が面倒見がよさそう、というのは激しく同意しますw
魔理沙はもちろんそれだけのキャラではないですけど、あなたが描写している魔理沙は門を破壊して入ってきて、フランを忘れて放置していたわけで、お前が言うなとしか思えません。魔理沙に説教役をさせるなら魔理沙も我慢しているところは我慢しているという描写がないと説得力がねー。
私としては、待たせすぎていると言うことは自覚しながらも、あくまでも本来の目的のついでだから、待たせている、ということであのような経緯にしてしまったのですが、確かに「お前が言うな」感は確かにあると思います。そこを違和感無く書くことが出来ず残念です。
以後精進します、ご指摘ありがとうございます。
>>野狐様
ご指摘ありがとうございます。もう少し心情描写、地の文などを多くし、違和感のにない文章に出来ればと思います。
癇癪部分は確かに内容が薄かったかもしれません、もっと濃く書いてなぜ、そうなったのかという心情描写を増やせばよかったと反省しております。
読んでくださった皆様ありがとうございます。
何しろ公式設定で泥棒な魔理沙ですから、ガキ大将ならともかく、教師役に違和感を覚えるのは仕方がないでしょう。
加えて、フランが弱すぎるのが気になりました。
魔理沙が一方的に勝てる状況には見えないのですが。
年の近い年上の従姉妹みたいな?って思ってしまった。
「お前が言うな」感はあると思いますが
その支離滅裂さが良いこと言っても結局は自分本位な魔理沙っぽくていいなぁって思いました。(深読みしすぎですかね
お褒めいただきありがとうございます。少しでも魔理沙の言葉に聞こえたなら幸いです。
>>名前が無い程度の能力さん
ご指摘ありがとうございます。面倒見のいいガキ大将ということでご勘弁ください。とはいえ魔理沙に自分の出したい言葉を出させすぎたかと反省しております。
妹様の強さをもっと強大に見せて、魔理沙が力押しだけじゃない方法で…というのを書きたかったのですがうまくいかず残念です。精進させていただきます。
読んでいただいた方、ありがとうございます
一体どう責任を取ってくれるwww
悪いことをしたらお仕置きはお尻ペンペン。これは正しいと思うのです
読んでいただいた方ありがとうございます