お日様がそろそろ真上に昇ろうかしらんと企む時分。
山の神社では早苗さんが財布の底を見つめて、はあ、と深いため息お一つ。
財布の中は抜け殻どころか、蛇そのものが入るのではないかと思うほどの大空洞でありました。
現人神なれどもやはり人の子、女の子。
心くすぐる衣服や装飾品には、財布の紐も緩むというもの。
昨日某服店では、あれが良いなこれも良いな、ええいどうせなら全部買っちゃえ、と大盤振る舞い。
緩んだ紐が固く締められたのは、数多の金銀円札と別れを告げた後でした。
嗚呼、財政難、財政難。
麓の神社とは違い、山の神社の賽銭箱は、突然の強風に飛ばされぬほどの盛況っぷりです。
が、しかしそこはあくまで賽銭箱。
入ったお金は、あくまで神社の神の物。
二柱の酒代やつまみ代となるのです。
不運にも昨日はちょうど宴会の日であり、今現在の賽銭箱の中身は博麗神社のそれと大差無いものになりました。
そしてその盛況であった賽銭箱を一夜で失墜させた神奈子及び諏訪子両名は、今も居間で忌々しくぐうたらに眠っております。
早苗さんはその姿を見るたびに、手に持った箒でサディスティックに虐めてやろうかと企むのですが、そこは健気にもぐっと我慢。
それに考えようによってはチャンスでもある訳です。
もしも。
もしも今、正確には二柱がぐうすか眠っている最中に大量のお賽銭が舞い込めばどうなるでしょう?
そう。
早苗さんの財布が、はち切れんばかりに膨らむのです。
もちろんそう都合よく賽銭は舞い込みはしないものですが、そこは早苗さん、現人神の見せ所。
早苗さんは天を仰ぎ、高く拳を掲げて、風よ吹けと念じます。
するとどうでしょう、轟と突風が吹き荒れたかと思うと、あっという間に凪いでしまいました。
しかし、早苗さんは天使のようにニッコリ微笑み、神社の方へ踵を返しました。
箒を立てかけ、丁寧に脱いだ靴を揃え、早苗さんは縁側にて燦々と降り注ぐ日光をその身に浴びながら、寝入りになりました。
目覚まし時計なるものを、三時間後に設定しておいて――
☆
はてさてこちらは山の滝近くでのこと。
犬走椛と射命丸文の二人が、天魔さまより世話を任された大事な娘さんを後ろに、うんうんと唸っております。
二人の天狗は謙虚にも、赤ちゃんの育て方という本を双方の片手に持ちながら、ああでもないこうでもないと言い合っていました。
と、そこへ早苗さんの起こした突風が轟と吹き荒れます。
天狗なれども人工的な風までは察知できないようで、二人は何とかして踏みとどまりました。
風が凪いだことを確認し、何とか本は手放さずに済んだ、とほっと一息。
一方、本よりも大切なはずの娘さんは、風に乗って空を翔けて行きました。
しかし二人は全く気付かず、本に夢中です。
ああでもない議論はとりあえず止めにして、実践で何とかしてみようという結論が下ったのがそれより約十分後。
両者が振り返ると、娘さんは影も無く消えていました。
二人は茫然自失としていましたが、事の重大さに気付いた椛が最初に言葉を発しました。
――ああどうするんですか文さんこれ間違いなく処罰ですよ文さんとは違って私はエリート街道まっしぐらだったのに。
――そんなことは良いから早く探すわよ椛ほら得意の千里眼を使って。
――大体文さんが高い高いじゃスリルが無いから空中キャッチボールをしようなんて馬鹿なこと言い出したのが始まりなんですよ判ってますかその辺。
――それを言ったら椛だってそれじゃあ碌な経験にならないからいっそ他界他界をしようなんて言ったからじゃないのどれだけ天魔さまに恨みがあるのよ。
などといった舌戦が延々と繰り広げられ、最終的に天魔許さん、殺すといった所へ落ち着きました。
二人が娘さんの捜索に乗り出したのは、消失に気付いてから更に十分後のことでした。
☆
所変わって紅魔館前の湖。
チルノ、橙、リグル、ミスティアがルーミアに向かってひたすら飛び込むという意味不明な遊び、ブラックホールごっこをしていました。
大妖精とレティは冬の太陽の如く優しさで、微笑ましく彼女達を見守っています。
と、そこへ二つの影が彼女達の間を縫ったかと思うと、雷の音のように遅れて、轟と疾風が通過していきました。
これに巻き込まれたのは橙を含めたバカルテット。
大妖精は反射的に行ったテレポートで事なきを得て、レティは幸か不幸か微動だにしませんでした。
疾風に吹き飛ばされつつ、視界に入った何かが気になってふと空に目をやると、なんとそこには満面の笑みのリリーホワイトが。
ハッと思いレティに目をやると、とても優しげな目で、レティはチルノを見つめています。
ああそうだ、リリーホワイトの訪れは春の訪れ、春の訪れはレティとのお別れ。
お別れ、言わないと――
チルノはそう思って、少しづつ離れて行く距離に何かの暗示と、焦りに似た感情を抱きながら、張り裂けんばかりの大声をあげてレティに叫びます。
――ジョニー、ジョニー行っちゃやだ、もっとあたいと一緒に居てよ。
――レティだっつってんだろ、誰がジョニーだこの⑨。
春ですよー、の声と同時にレティは跡形も無く雲散霧消。
レティ、この冬最後の言葉は「レティだっつってんだろ」という極めて切実なアイデンティティの誇示に終わりました。
悲しみにくれるのも束の間。
余りのも強力な風圧にいまだ吹き飛ばされているバカルテットプラスワン。
辺りの光景が走馬灯のように通り過ぎていきます。
ああ、もしかしたら永遠に吹き飛び続けるのではないか、とチルノがそんなことを考え始めた時。
びたん!
紅魔館の壁に、勢い良く、盛大にぶつかりました。
☆
さて、五人の突如の衝突は、紅魔館になんと震度五程度の振動を引き起こしました。
そんな衝撃にあったとなれば、紅魔館はてんやわんやの大騒ぎ。
門前で眠っていた美鈴が目を覚ますのは勿論、
レミリアが紅茶をあたりかまわずぶちまけて、
埃が舞い上がってパチュリーが喘息を起こし、
その上安眠を妨害されたフランドールが癇癪を起こしてしまい、
尚更埃が舞い上がってトドメを刺されたパチュリーが彼岸にまっしぐらです。
唯一影響の無かった咲夜さんはしかし、咲夜咲夜紅茶が零れた今すぐ拭いて熱いよさくやぁと言ったお嬢様の声や、咲夜さん咲夜さんラクトレディスクランブルですパチュリー様が生死にかかわる喘息を起こしています大至急医者を連れてきてくださいと言った小悪魔の要望に応えなければならないため、ある意味一番損な役回りでした。
本当ならパチュリーなんぞはほっといて思う存分お嬢様を愛でたいと思う咲夜さんであります。
しかしそんなことをして万が一パチュリーが彼岸に旅立ってしまったら、何がパーフェクトメイドだ本性はジャック・ザ・ルドビレでインディスクリミネイトな殺人ドールじゃねーか等といった罵詈雑言を被ることは必至でしたので、一応パチュリーのところへ向かいました。
小悪魔が心臓マッサージという名目で胸を揉んでいます。
来る必要はあったのかと思いつつしかし咲夜さん、瀟洒にもこれをスルー。
痙攣を引き起こしているパチュリーに声をかけます。
――パチュリー様お元気ですか私の声が聞こえますか何か見えますか走馬灯ですかご愁傷様です。
――ああ咲夜走馬灯は見えないけどタンコブ作った小町と私に説教をしている映姫なら見えるわ遂に私もヒガンルトゥールの境地に至ったのねうふふふふふ……。
――……。
相当不味い状況らしい。
咲夜さんはそう思うが否や、咲夜紅茶がきれたから買って来てーと言う少し震えているお嬢様の言葉に律儀に返事をして、時間を止めて一目散にかけて行きました。
門前では、何故かルーミア、チルノ、橙、リグル、ミスティアが美鈴に泣きついてます。
少し気になりつつも、恐らく大事ではないだろうと一目散に翔けて行きます。
灰色の世界をかけて行き人里に辿り着くと見知った顔に会いました。
これ幸いと思い、世界に彩を戻してから見知った顔――買い物を持った魂魄妖夢に永琳の居場所を尋ねました。
妖夢によると、間が好かったのか永琳はちょうど人里に居るとのことです。
運が良いと思いながら妖夢に礼を言って去ろうとすると、慌てた様子の妖夢から橙を見なかったかと言われました。
反射的に知らないと言いそうになりましたが、ふと門前で見たような見なかったような、ということを妖夢に伝えます。
すると妖夢は恩に着るとだけ言って、一目散に紅魔館に翔けて行きました。
ぽつねん。
取り残された咲夜さんは、橙の何が妖夢を熱狂させるのだろうと思いながら後姿を見ていましたが、まあいいかと再び灰色の世界を手繰り寄せて永琳を探しました。
案の定永琳は直ぐ見つかり、咲夜さんは事情を説明しました。
――えーりんえーりん助けてえーりん。
――あらあら一体どうしたのかしら。
――私のおうちの本の虫が痙攣起こすわ幻覚見るわで大変なのです。
――あらまあ怖いわヤク中かしら早めの対処が必要ね。
――そうなの今すぐきてくれるかしら。
――いいともいいともいいですとも。
言うが早いや、咲夜さんは永琳を連れて紅魔館へ飛び立ちました。
紅茶の買い忘れに気付いたのは、紅魔館に辿り着いてからでした。
☆
所変わって白玉楼。
桜は繚乱と咲き誇り、そよ風が梢を揺らして桜の飛沫を作ります。
リリカがキーボードと共に泡沫の桜の海を泳ぎ、
メルランはトランペットで桃色の津波を起こし、
ルナサのヴァイオリンが荒れ狂っていくそれをゆっくりと鎮めました。
酒瓶片手に、愉快軽快大喝采といった様子で騒ぐ幽々子と紫。
しかし藍はというと、先程から髪の毛を弄ったり尻尾や耳がそわそわと動いて落ち着かない様子です。
橙が居ない。
何時も傍らに居るはずの式が居ないだけで、藍は相当な取り乱しようでした。
ふと、藍は自分を呼ぶ、叫ぶような声を聞きます。
妖夢でした。
もしかして橙が見つかったのか、と喜んだのも束の間。
妖夢に抱えられた橙は、額を押さえながらう~、と唸っています。
藍は狂乱の如くうろたえ様で、橙に声をかけました。
――ああ橙橙どうしたんだ橙だれだ誰にやられたんだああ鼻血が出てるじゃないかその扇情的な姿に粘膜ノックダウンだよ代われ妖夢橙を抱くのは私だ。
橙は後半の藍の声は完全にシカトしながら、あの時の盗撮天狗、と答えました。
これを聞いた藍はブチ切れです。
上機嫌に飲んでいた紫の胸倉を掴んで、例の天狗を探して下さいってか探せと脅迫めいた言葉を主にぶつけました。
紫はしぶしぶながらにスキマを開いて藍を中に押し込んだかと思うと、直後にプリズムリバーと幽々子も巻き込んで目的地に赴きました。
二次会の会場はどうやら鈴蘭畑のようです。
☆
さて、こちらは噂の鈴蘭畑。
紫たちが到着した頃には、椛、文、藍が入り乱れての暴風吹き荒れる大乱闘になっていました。
これは面白そうな見世物ね、と幽々子。
酒の肴にはなるでしょう、どちらが勝つかかけてみる、と紫。
そしてプリズムリバーたちはなんだか知らないけど面白そう、ということでメルランを中心に据えてひたすら激しい曲を演奏しました。
毒舞い上がる鈴蘭畑。
されど彼女らには、毒は調味料程度にしかなりえません。
毒を喰らわば皿までどころか、毒を喰らわば余分な毒まで。
そんな信条に基づき、花も団子も弾幕も謳歌しています。
ですがそう簡単に事は運ばないもので、文句をつけに来た妖怪が二人。
何してんのよあいつらの風のせいで私の大事なスーさんが吹き飛んでいくじゃない、と怒った様子のメディスン。
何してるのよ楽しそうね私も混ぜなさい、と台風の如く戦場に突貫していく幽香。
メディスンを指差しながら、紫すごいわこの子死なないと幽々子。
酒臭い説得のかいあってか、結局宴会に参加することを条件にしぶしぶ妥協したメディスンでした。
暴風の中を泳ぐプリズムリバー三姉妹の演奏はクライマックスに達し、鈴蘭畑は大興奮。
さて、この戦闘によって一番の損害を被ったのは誰でしょう?
即断即決で幽香の勝利に賭けた紫?
鶏肉を連想して文と椛のペアに賭けた幽々子?
それとも鈴蘭畑が吹き飛ぶ様をただ見るだけのメディスン?
はい、不正解。
正解は、風によって鈴蘭の毒を運ばれた、心底無関係な人里の住人でした――
☆
はい、こちら現場の人里です。
現在人里では、突風に運ばれた鈴蘭の毒に、右往左往の大パニック。
師匠師匠ししょーはどこぉ、と言いながら申し訳程度の数しかない解毒剤を配って回る鈴仙。
お客さん運が良いね八意印のこの薬今なら大特価三万九千八百円、と言うのは解毒マスクを被ったてゐ
慧音大変だ里が毒に覆われているバイオハザードか良いだろう私の炎で高熱殺菌ゲェッ輝夜、と言った説明くさい台詞は妹紅。
ああ奇遇ね妹紅なんとなく暇で永琳たちに着いて来て人里でのんびりしていると貴方と素敵な鉢合わせこれはもう殺すしかないわ、と言った妹紅以上に説明くさくて強引な台詞は輝夜。
駄目だやめるんだ妹紅こんなに毒が広がってはもう高熱殺菌は出来んぞぉ、と言ったピントのずれた突っ込みは慧音。
やはりと言うのか輝夜と妹紅は弾幕ごっこに発展してしまい、家を焼くは怪我をさせるわで尚更事態が悪くなりました。
誰かが止められればいいのですが、あの二人に叶う人間など人里には居ませんし、毒を喰らっているので碌に声も届きません。
そう、人里には。
幸か不幸か何事にも例外はあるようで、弾幕ごっことなればいついかなるときも飛びつく人が偶然ここにやってきていたのです。
なんだなんだ面白そうだな私も混ぜろ、と霧雨魔理沙。
人里が色々変な気がするけど大丈夫かしら、とアリス。
二人が参入した途端、人々には闇を一筋に照らす小さな光明が見えた気がしました。
おい見ろ皆メシアだ救世主だあの少女達が救ってくれるぞ、誰かがそんなことを言うと、途端に耳を劈く轟音。
不死の炎が家屋を燃やし、
無限に湧く生命の泉が1LDKの命を奪い、
グランギニョル座が空中開幕、
挙句の果てには恋の魔法が里を根こそぎ吹き飛ばしました。
泣きっ面に蜂。
メシアのふりをした破壊魔たちは、留まる事無く暴れています。
ああもう駄目だ天災だ教えてくれ五飛俺たちは一体何に向かって助けを求めれば良い、と人々はうな垂れていると、霊夢が空からがやってきました。
うな垂れていた、一万を超える視線が霊夢に突き刺さります。
霊夢はその一つ一つを全て受け止めて、恭しく言いました。
――これは、そう。
誰かの固唾を呑む音。
――風神様の、お怒りよ。
その一言を聞いた人々はみな、体に電撃が走る思いでした。
――そうかなるほどあの毒を運んだ風は風神様のお怒りだったのか。
――知らぬ間に怒りを買っていたのね洩矢の神社に出来うる限りのお賽銭を用意しなくちゃ。
――なるほど風神様か失念してたぜファッキン。
――HAHAHA互いにザマ無いなジョニー。
――だからレティだっつってんだろ。
――あんたまだ居たのか。
人々は意を決して、財布を確認すると、一斉に鋭い視線を妖怪の山に突き刺しました。
もしかすると、それがスタートの合図だったのかも知れません。
人々は、一万の瞳は、鬼気とした表情で妖怪の山へ駆け出しました。
出発、信仰
☆
薄暗い山を、いかづちのような喧騒が通り過ぎます。
草を踏みしめ、土を巻き上げ、天狗を跳ね除け、山が沈むような勢いで人々はかけて行きました。
あの弱くて助けを請うような目は、鬼以上に鬼気としていて、もはや何も映していません。
例えば、鍵山雛にぶつかった時。
高速ジャイロ回転をする雛から厄が大量に振りまかれましたが、誰も気にする事無く先に進みました。
急に飛び出してきたにとりが気絶しても、急ににとりが来たのでと意味も無く誰かが叫んだ程度で、人々の勢いは変わることはありません。
しかし何処からか苦しそうな、それでいて唸るような声が聞こえて、心なしか歩が緩みました。
――ああ駄目ですお姉さま稲田姫様に叱られます故。
――よいではないかよいではないか。
――あ~れ~。
冬の終わりに浮かれて戯言を繰り出す秋穣子と秋静葉でした。
無視。
一度勢いづいた人間というのは中々恐ろしいものらしく、それこそ男塾よろしく人間タワーを作って、滝すら昇って……いや、登っていきました。
最後の一人まで頂上にたどりついたことを確認し、いざ行かんと前を見ると緑なす黒髪、早苗さん。
早苗さんは人々に気付いた様子で可憐に振り返って見せると、全てを察したような表情で言いました。
――皆様、お疲れ様でした。ご安心を、全て解っております。里を襲う全ての不幸は、我らが神が救って見せましょう――
嗚呼。
彼女は全て解っていたのだ流石本物博麗の巫女に出来ないことを簡単にやってのけるそこに痺れるあこがれる、と思いながら人々は感涙に咽び泣きました。
皆様はここで待っていて下さい直ぐに神様に助けを求めてきます、と早苗さんは言って神社の裏手に回りました。
☆
それじゃあよろしく、と早苗さんは神社の裏手に居た霊夢に言いました。
それじゃあよろしく、と霊夢は横で酒を飲んでいた萃香に言いました。
おーけー任せてー、と言って萃香は見る見るうちに人々の体の中に溜まっていた毒を萃めてしまいました。
どこか影のある含み笑いをしながら、ありがとう待っててね、と言って早苗さんは再び人々の前に出ます。
早苗さんは目を瞑ってどこか厳かな表情を作り、息一つ出来そうにない緊迫感の中、ぷはぁと息を吐いて笑顔を作って言いました。
――皆さんもう大丈夫。体の毒は全て神様が追い払いました。本日は洩矢の神々を頼っていただき、真にありがとうございました。我らが神は、必ずや人里に健康も豊穣も幸福も全て、お約束させますでしょう――
遅れて、山を震わすような大歓声が起こります。
人々は財布の中にあるだけの賽銭を入れて行き、笑顔の上に一筋の涙を見せながら、早苗さんにお礼を言って去っていきました。
終始笑顔の早苗さんは、人が完全に去ったことを確認すると、賽銭箱を開けて一割程度のお金を袋に入れます。
どうぞ霊夢お礼のお賽銭よ、と早苗さんは言いました。
あああありがとう早苗そうだ萃香にお酒を買ってあげないとね人里で一番高いお酒を買ってあげるわそうだ早苗も何か欲しい物があったら言ってね直ぐ買うからうちに来るのも大歓迎よ神様だってきっと歓迎してくれるわその時はゆっくりしていってね、と霊夢は早口で捲くし立てて、萃香と一緒に去っていきました。
霊夢は姿が見えなくなるまで早苗さんに手を振っています。
早苗さんは向日葵のような明るい笑顔で手を振り返しました。
――計画通り。
心の底ではそんなことを考えながら、ニヤリと微笑む早苗さんでした――
山の神社では早苗さんが財布の底を見つめて、はあ、と深いため息お一つ。
財布の中は抜け殻どころか、蛇そのものが入るのではないかと思うほどの大空洞でありました。
現人神なれどもやはり人の子、女の子。
心くすぐる衣服や装飾品には、財布の紐も緩むというもの。
昨日某服店では、あれが良いなこれも良いな、ええいどうせなら全部買っちゃえ、と大盤振る舞い。
緩んだ紐が固く締められたのは、数多の金銀円札と別れを告げた後でした。
嗚呼、財政難、財政難。
麓の神社とは違い、山の神社の賽銭箱は、突然の強風に飛ばされぬほどの盛況っぷりです。
が、しかしそこはあくまで賽銭箱。
入ったお金は、あくまで神社の神の物。
二柱の酒代やつまみ代となるのです。
不運にも昨日はちょうど宴会の日であり、今現在の賽銭箱の中身は博麗神社のそれと大差無いものになりました。
そしてその盛況であった賽銭箱を一夜で失墜させた神奈子及び諏訪子両名は、今も居間で忌々しくぐうたらに眠っております。
早苗さんはその姿を見るたびに、手に持った箒でサディスティックに虐めてやろうかと企むのですが、そこは健気にもぐっと我慢。
それに考えようによってはチャンスでもある訳です。
もしも。
もしも今、正確には二柱がぐうすか眠っている最中に大量のお賽銭が舞い込めばどうなるでしょう?
そう。
早苗さんの財布が、はち切れんばかりに膨らむのです。
もちろんそう都合よく賽銭は舞い込みはしないものですが、そこは早苗さん、現人神の見せ所。
早苗さんは天を仰ぎ、高く拳を掲げて、風よ吹けと念じます。
するとどうでしょう、轟と突風が吹き荒れたかと思うと、あっという間に凪いでしまいました。
しかし、早苗さんは天使のようにニッコリ微笑み、神社の方へ踵を返しました。
箒を立てかけ、丁寧に脱いだ靴を揃え、早苗さんは縁側にて燦々と降り注ぐ日光をその身に浴びながら、寝入りになりました。
目覚まし時計なるものを、三時間後に設定しておいて――
☆
はてさてこちらは山の滝近くでのこと。
犬走椛と射命丸文の二人が、天魔さまより世話を任された大事な娘さんを後ろに、うんうんと唸っております。
二人の天狗は謙虚にも、赤ちゃんの育て方という本を双方の片手に持ちながら、ああでもないこうでもないと言い合っていました。
と、そこへ早苗さんの起こした突風が轟と吹き荒れます。
天狗なれども人工的な風までは察知できないようで、二人は何とかして踏みとどまりました。
風が凪いだことを確認し、何とか本は手放さずに済んだ、とほっと一息。
一方、本よりも大切なはずの娘さんは、風に乗って空を翔けて行きました。
しかし二人は全く気付かず、本に夢中です。
ああでもない議論はとりあえず止めにして、実践で何とかしてみようという結論が下ったのがそれより約十分後。
両者が振り返ると、娘さんは影も無く消えていました。
二人は茫然自失としていましたが、事の重大さに気付いた椛が最初に言葉を発しました。
――ああどうするんですか文さんこれ間違いなく処罰ですよ文さんとは違って私はエリート街道まっしぐらだったのに。
――そんなことは良いから早く探すわよ椛ほら得意の千里眼を使って。
――大体文さんが高い高いじゃスリルが無いから空中キャッチボールをしようなんて馬鹿なこと言い出したのが始まりなんですよ判ってますかその辺。
――それを言ったら椛だってそれじゃあ碌な経験にならないからいっそ他界他界をしようなんて言ったからじゃないのどれだけ天魔さまに恨みがあるのよ。
などといった舌戦が延々と繰り広げられ、最終的に天魔許さん、殺すといった所へ落ち着きました。
二人が娘さんの捜索に乗り出したのは、消失に気付いてから更に十分後のことでした。
☆
所変わって紅魔館前の湖。
チルノ、橙、リグル、ミスティアがルーミアに向かってひたすら飛び込むという意味不明な遊び、ブラックホールごっこをしていました。
大妖精とレティは冬の太陽の如く優しさで、微笑ましく彼女達を見守っています。
と、そこへ二つの影が彼女達の間を縫ったかと思うと、雷の音のように遅れて、轟と疾風が通過していきました。
これに巻き込まれたのは橙を含めたバカルテット。
大妖精は反射的に行ったテレポートで事なきを得て、レティは幸か不幸か微動だにしませんでした。
疾風に吹き飛ばされつつ、視界に入った何かが気になってふと空に目をやると、なんとそこには満面の笑みのリリーホワイトが。
ハッと思いレティに目をやると、とても優しげな目で、レティはチルノを見つめています。
ああそうだ、リリーホワイトの訪れは春の訪れ、春の訪れはレティとのお別れ。
お別れ、言わないと――
チルノはそう思って、少しづつ離れて行く距離に何かの暗示と、焦りに似た感情を抱きながら、張り裂けんばかりの大声をあげてレティに叫びます。
――ジョニー、ジョニー行っちゃやだ、もっとあたいと一緒に居てよ。
――レティだっつってんだろ、誰がジョニーだこの⑨。
春ですよー、の声と同時にレティは跡形も無く雲散霧消。
レティ、この冬最後の言葉は「レティだっつってんだろ」という極めて切実なアイデンティティの誇示に終わりました。
悲しみにくれるのも束の間。
余りのも強力な風圧にいまだ吹き飛ばされているバカルテットプラスワン。
辺りの光景が走馬灯のように通り過ぎていきます。
ああ、もしかしたら永遠に吹き飛び続けるのではないか、とチルノがそんなことを考え始めた時。
びたん!
紅魔館の壁に、勢い良く、盛大にぶつかりました。
☆
さて、五人の突如の衝突は、紅魔館になんと震度五程度の振動を引き起こしました。
そんな衝撃にあったとなれば、紅魔館はてんやわんやの大騒ぎ。
門前で眠っていた美鈴が目を覚ますのは勿論、
レミリアが紅茶をあたりかまわずぶちまけて、
埃が舞い上がってパチュリーが喘息を起こし、
その上安眠を妨害されたフランドールが癇癪を起こしてしまい、
尚更埃が舞い上がってトドメを刺されたパチュリーが彼岸にまっしぐらです。
唯一影響の無かった咲夜さんはしかし、咲夜咲夜紅茶が零れた今すぐ拭いて熱いよさくやぁと言ったお嬢様の声や、咲夜さん咲夜さんラクトレディスクランブルですパチュリー様が生死にかかわる喘息を起こしています大至急医者を連れてきてくださいと言った小悪魔の要望に応えなければならないため、ある意味一番損な役回りでした。
本当ならパチュリーなんぞはほっといて思う存分お嬢様を愛でたいと思う咲夜さんであります。
しかしそんなことをして万が一パチュリーが彼岸に旅立ってしまったら、何がパーフェクトメイドだ本性はジャック・ザ・ルドビレでインディスクリミネイトな殺人ドールじゃねーか等といった罵詈雑言を被ることは必至でしたので、一応パチュリーのところへ向かいました。
小悪魔が心臓マッサージという名目で胸を揉んでいます。
来る必要はあったのかと思いつつしかし咲夜さん、瀟洒にもこれをスルー。
痙攣を引き起こしているパチュリーに声をかけます。
――パチュリー様お元気ですか私の声が聞こえますか何か見えますか走馬灯ですかご愁傷様です。
――ああ咲夜走馬灯は見えないけどタンコブ作った小町と私に説教をしている映姫なら見えるわ遂に私もヒガンルトゥールの境地に至ったのねうふふふふふ……。
――……。
相当不味い状況らしい。
咲夜さんはそう思うが否や、咲夜紅茶がきれたから買って来てーと言う少し震えているお嬢様の言葉に律儀に返事をして、時間を止めて一目散にかけて行きました。
門前では、何故かルーミア、チルノ、橙、リグル、ミスティアが美鈴に泣きついてます。
少し気になりつつも、恐らく大事ではないだろうと一目散に翔けて行きます。
灰色の世界をかけて行き人里に辿り着くと見知った顔に会いました。
これ幸いと思い、世界に彩を戻してから見知った顔――買い物を持った魂魄妖夢に永琳の居場所を尋ねました。
妖夢によると、間が好かったのか永琳はちょうど人里に居るとのことです。
運が良いと思いながら妖夢に礼を言って去ろうとすると、慌てた様子の妖夢から橙を見なかったかと言われました。
反射的に知らないと言いそうになりましたが、ふと門前で見たような見なかったような、ということを妖夢に伝えます。
すると妖夢は恩に着るとだけ言って、一目散に紅魔館に翔けて行きました。
ぽつねん。
取り残された咲夜さんは、橙の何が妖夢を熱狂させるのだろうと思いながら後姿を見ていましたが、まあいいかと再び灰色の世界を手繰り寄せて永琳を探しました。
案の定永琳は直ぐ見つかり、咲夜さんは事情を説明しました。
――えーりんえーりん助けてえーりん。
――あらあら一体どうしたのかしら。
――私のおうちの本の虫が痙攣起こすわ幻覚見るわで大変なのです。
――あらまあ怖いわヤク中かしら早めの対処が必要ね。
――そうなの今すぐきてくれるかしら。
――いいともいいともいいですとも。
言うが早いや、咲夜さんは永琳を連れて紅魔館へ飛び立ちました。
紅茶の買い忘れに気付いたのは、紅魔館に辿り着いてからでした。
☆
所変わって白玉楼。
桜は繚乱と咲き誇り、そよ風が梢を揺らして桜の飛沫を作ります。
リリカがキーボードと共に泡沫の桜の海を泳ぎ、
メルランはトランペットで桃色の津波を起こし、
ルナサのヴァイオリンが荒れ狂っていくそれをゆっくりと鎮めました。
酒瓶片手に、愉快軽快大喝采といった様子で騒ぐ幽々子と紫。
しかし藍はというと、先程から髪の毛を弄ったり尻尾や耳がそわそわと動いて落ち着かない様子です。
橙が居ない。
何時も傍らに居るはずの式が居ないだけで、藍は相当な取り乱しようでした。
ふと、藍は自分を呼ぶ、叫ぶような声を聞きます。
妖夢でした。
もしかして橙が見つかったのか、と喜んだのも束の間。
妖夢に抱えられた橙は、額を押さえながらう~、と唸っています。
藍は狂乱の如くうろたえ様で、橙に声をかけました。
――ああ橙橙どうしたんだ橙だれだ誰にやられたんだああ鼻血が出てるじゃないかその扇情的な姿に粘膜ノックダウンだよ代われ妖夢橙を抱くのは私だ。
橙は後半の藍の声は完全にシカトしながら、あの時の盗撮天狗、と答えました。
これを聞いた藍はブチ切れです。
上機嫌に飲んでいた紫の胸倉を掴んで、例の天狗を探して下さいってか探せと脅迫めいた言葉を主にぶつけました。
紫はしぶしぶながらにスキマを開いて藍を中に押し込んだかと思うと、直後にプリズムリバーと幽々子も巻き込んで目的地に赴きました。
二次会の会場はどうやら鈴蘭畑のようです。
☆
さて、こちらは噂の鈴蘭畑。
紫たちが到着した頃には、椛、文、藍が入り乱れての暴風吹き荒れる大乱闘になっていました。
これは面白そうな見世物ね、と幽々子。
酒の肴にはなるでしょう、どちらが勝つかかけてみる、と紫。
そしてプリズムリバーたちはなんだか知らないけど面白そう、ということでメルランを中心に据えてひたすら激しい曲を演奏しました。
毒舞い上がる鈴蘭畑。
されど彼女らには、毒は調味料程度にしかなりえません。
毒を喰らわば皿までどころか、毒を喰らわば余分な毒まで。
そんな信条に基づき、花も団子も弾幕も謳歌しています。
ですがそう簡単に事は運ばないもので、文句をつけに来た妖怪が二人。
何してんのよあいつらの風のせいで私の大事なスーさんが吹き飛んでいくじゃない、と怒った様子のメディスン。
何してるのよ楽しそうね私も混ぜなさい、と台風の如く戦場に突貫していく幽香。
メディスンを指差しながら、紫すごいわこの子死なないと幽々子。
酒臭い説得のかいあってか、結局宴会に参加することを条件にしぶしぶ妥協したメディスンでした。
暴風の中を泳ぐプリズムリバー三姉妹の演奏はクライマックスに達し、鈴蘭畑は大興奮。
さて、この戦闘によって一番の損害を被ったのは誰でしょう?
即断即決で幽香の勝利に賭けた紫?
鶏肉を連想して文と椛のペアに賭けた幽々子?
それとも鈴蘭畑が吹き飛ぶ様をただ見るだけのメディスン?
はい、不正解。
正解は、風によって鈴蘭の毒を運ばれた、心底無関係な人里の住人でした――
☆
はい、こちら現場の人里です。
現在人里では、突風に運ばれた鈴蘭の毒に、右往左往の大パニック。
師匠師匠ししょーはどこぉ、と言いながら申し訳程度の数しかない解毒剤を配って回る鈴仙。
お客さん運が良いね八意印のこの薬今なら大特価三万九千八百円、と言うのは解毒マスクを被ったてゐ
慧音大変だ里が毒に覆われているバイオハザードか良いだろう私の炎で高熱殺菌ゲェッ輝夜、と言った説明くさい台詞は妹紅。
ああ奇遇ね妹紅なんとなく暇で永琳たちに着いて来て人里でのんびりしていると貴方と素敵な鉢合わせこれはもう殺すしかないわ、と言った妹紅以上に説明くさくて強引な台詞は輝夜。
駄目だやめるんだ妹紅こんなに毒が広がってはもう高熱殺菌は出来んぞぉ、と言ったピントのずれた突っ込みは慧音。
やはりと言うのか輝夜と妹紅は弾幕ごっこに発展してしまい、家を焼くは怪我をさせるわで尚更事態が悪くなりました。
誰かが止められればいいのですが、あの二人に叶う人間など人里には居ませんし、毒を喰らっているので碌に声も届きません。
そう、人里には。
幸か不幸か何事にも例外はあるようで、弾幕ごっことなればいついかなるときも飛びつく人が偶然ここにやってきていたのです。
なんだなんだ面白そうだな私も混ぜろ、と霧雨魔理沙。
人里が色々変な気がするけど大丈夫かしら、とアリス。
二人が参入した途端、人々には闇を一筋に照らす小さな光明が見えた気がしました。
おい見ろ皆メシアだ救世主だあの少女達が救ってくれるぞ、誰かがそんなことを言うと、途端に耳を劈く轟音。
不死の炎が家屋を燃やし、
無限に湧く生命の泉が1LDKの命を奪い、
グランギニョル座が空中開幕、
挙句の果てには恋の魔法が里を根こそぎ吹き飛ばしました。
泣きっ面に蜂。
メシアのふりをした破壊魔たちは、留まる事無く暴れています。
ああもう駄目だ天災だ教えてくれ五飛俺たちは一体何に向かって助けを求めれば良い、と人々はうな垂れていると、霊夢が空からがやってきました。
うな垂れていた、一万を超える視線が霊夢に突き刺さります。
霊夢はその一つ一つを全て受け止めて、恭しく言いました。
――これは、そう。
誰かの固唾を呑む音。
――風神様の、お怒りよ。
その一言を聞いた人々はみな、体に電撃が走る思いでした。
――そうかなるほどあの毒を運んだ風は風神様のお怒りだったのか。
――知らぬ間に怒りを買っていたのね洩矢の神社に出来うる限りのお賽銭を用意しなくちゃ。
――なるほど風神様か失念してたぜファッキン。
――HAHAHA互いにザマ無いなジョニー。
――だからレティだっつってんだろ。
――あんたまだ居たのか。
人々は意を決して、財布を確認すると、一斉に鋭い視線を妖怪の山に突き刺しました。
もしかすると、それがスタートの合図だったのかも知れません。
人々は、一万の瞳は、鬼気とした表情で妖怪の山へ駆け出しました。
出発、信仰
☆
薄暗い山を、いかづちのような喧騒が通り過ぎます。
草を踏みしめ、土を巻き上げ、天狗を跳ね除け、山が沈むような勢いで人々はかけて行きました。
あの弱くて助けを請うような目は、鬼以上に鬼気としていて、もはや何も映していません。
例えば、鍵山雛にぶつかった時。
高速ジャイロ回転をする雛から厄が大量に振りまかれましたが、誰も気にする事無く先に進みました。
急に飛び出してきたにとりが気絶しても、急ににとりが来たのでと意味も無く誰かが叫んだ程度で、人々の勢いは変わることはありません。
しかし何処からか苦しそうな、それでいて唸るような声が聞こえて、心なしか歩が緩みました。
――ああ駄目ですお姉さま稲田姫様に叱られます故。
――よいではないかよいではないか。
――あ~れ~。
冬の終わりに浮かれて戯言を繰り出す秋穣子と秋静葉でした。
無視。
一度勢いづいた人間というのは中々恐ろしいものらしく、それこそ男塾よろしく人間タワーを作って、滝すら昇って……いや、登っていきました。
最後の一人まで頂上にたどりついたことを確認し、いざ行かんと前を見ると緑なす黒髪、早苗さん。
早苗さんは人々に気付いた様子で可憐に振り返って見せると、全てを察したような表情で言いました。
――皆様、お疲れ様でした。ご安心を、全て解っております。里を襲う全ての不幸は、我らが神が救って見せましょう――
嗚呼。
彼女は全て解っていたのだ流石本物博麗の巫女に出来ないことを簡単にやってのけるそこに痺れるあこがれる、と思いながら人々は感涙に咽び泣きました。
皆様はここで待っていて下さい直ぐに神様に助けを求めてきます、と早苗さんは言って神社の裏手に回りました。
☆
それじゃあよろしく、と早苗さんは神社の裏手に居た霊夢に言いました。
それじゃあよろしく、と霊夢は横で酒を飲んでいた萃香に言いました。
おーけー任せてー、と言って萃香は見る見るうちに人々の体の中に溜まっていた毒を萃めてしまいました。
どこか影のある含み笑いをしながら、ありがとう待っててね、と言って早苗さんは再び人々の前に出ます。
早苗さんは目を瞑ってどこか厳かな表情を作り、息一つ出来そうにない緊迫感の中、ぷはぁと息を吐いて笑顔を作って言いました。
――皆さんもう大丈夫。体の毒は全て神様が追い払いました。本日は洩矢の神々を頼っていただき、真にありがとうございました。我らが神は、必ずや人里に健康も豊穣も幸福も全て、お約束させますでしょう――
遅れて、山を震わすような大歓声が起こります。
人々は財布の中にあるだけの賽銭を入れて行き、笑顔の上に一筋の涙を見せながら、早苗さんにお礼を言って去っていきました。
終始笑顔の早苗さんは、人が完全に去ったことを確認すると、賽銭箱を開けて一割程度のお金を袋に入れます。
どうぞ霊夢お礼のお賽銭よ、と早苗さんは言いました。
あああありがとう早苗そうだ萃香にお酒を買ってあげないとね人里で一番高いお酒を買ってあげるわそうだ早苗も何か欲しい物があったら言ってね直ぐ買うからうちに来るのも大歓迎よ神様だってきっと歓迎してくれるわその時はゆっくりしていってね、と霊夢は早口で捲くし立てて、萃香と一緒に去っていきました。
霊夢は姿が見えなくなるまで早苗さんに手を振っています。
早苗さんは向日葵のような明るい笑顔で手を振り返しました。
――計画通り。
心の底ではそんなことを考えながら、ニヤリと微笑む早苗さんでした――
何にせよ
早苗さん…恐ろしい子!
とりあえず文と椛、天魔さまから預かった子供はどうしたw
早苗さん黒すぎw
風が吹けば神社が儲かる、にしてはやり口がw
が、早苗の性格が少々?壊れすぎではないかと感じました。
私としては変にネタを混ぜなくても面白くなったのではと思います。
惜しげもなく投入される珠玉のネタに乾杯!
あとラクトレディスクランブル吹いた。
これは幻想郷にあまねく守矢神社の信仰が広まるのもまもなく感じですねw
したたかな早苗さんばかりになられても困るけど、これはこれで面白かったです。
めちゃくちゃ笑いましたね~
ただ、子供はどこに・・・?
出発信仰にやられましたww
もんでる小悪魔とよいではないか姉妹で完全に負けたw
>秋稔子
だから穣子だっつってんだろ。
いろいろとかなり笑わせていただきました。早苗さんは結局儲けたのかそれとも神様に奪われたのかうふふ。
地球の裏側で蝶が羽ばたいたことによって表側でハリケーンが起こるって話に通じるなw
一番儲けたのは霊夢だなw
ほとんど何もしてねぇww
毒集めたの萃香だしw
最早幻想郷が早苗さんのものになるのも時間の問題か…!
すさまじい儲かりっぷりですね。早苗さんすげえ
しかし話の合間合間に出てくる人たちがどうなったのか気になる
この題である以上この話自体はこれでいいと思いますが、もし出来たら番外編とか読んでみたいなぁ
こういう信仰の集め方もあるんですね、と感心しました。
それにしても、タイトルが上手いなぁ。
ところどころに散りばめられたネタがすばらしい
ジョニーとパチェさんがやばかったww
ていうか椛、他界他界ってwww
霊夢は金さえ手に入れば、役立たずの評判は気にしないのか・・
あせると碌なことがない
あとレティだっつってんだろ!!!