「おっともうこんな時間か。じゃあフランそろそろ私は帰るぜ」
気づけば日が登り始めている。
「えー?魔理沙もう帰っちゃうのー?もっと遊ぼーよー」
帰ると言った途端、私に抱きついてだだをこね始めた。
さっきまでの上機嫌が嘘のようだ。
「もっとってけっこう遊んだじゃないか。また来るから今日はここまでだ、な?」
フランと遊ぶのはなにせ疲れるのだ。
力的には最凶だし。弾幕ごっこなんてした日には命が危ない。
「ねぇ魔理沙。今度はいつ来てくれる?」
「わからないぜ。とりあえず一週間はムリだな」
この場を切り抜けるだけなら適当に近いうちには、とか言えばいい。
でもそれはしてはいけない。
子供とは真っ正面から接しないとな。隠し事はあっても嘘偽りはなしだ。
「そっか。でもできるだけ早く来て。魔理沙が来ないとつまんないんだもん」
「そう言うなって。咲夜やパチュリーとかに遊んでもらえ」
「…みんな忙しいって言って遊んでくれないの。みんなの邪魔しちゃ悪いし。
パチュリーはいつでも話し相手になってくれるけど、難しい話ばっかりでわからないし」
確かに紅魔館で常にヒマなのはパチュリーとレミリアくらいか。
「じゃあ中国だ。あいつ年がら年中ヒマだろ」
門番という仕事があるからヒマではないが、いても役目を果たしてないので別にいいだろう。
「中国はつまんないからやだ」
「そ、そうか」
ドンマイだな、中国。
「じゃあ今度は遊び相手を連れてきてやるぜ。友達が増えれば退屈しないだろ」
「うん」
フランと別れて玄関に向かわずに紅魔館の主の部屋に向かう。
バンッ!!
豪快に扉を開けて中に押し入る。
「よぅお嬢様。ご機嫌いかが」
「何しに来たの、あなた?私はそろそろ眠るんだけど」
「私も帰ろうと思ったんだけどな、お前が気に食わないんで怒りにきたぜ」
「はぁ?」
「フランがな。退屈だ、寂しいって言うんだ。
ってわけで紅魔館のヒマ人筆頭のお前が遊んでやれ」
フランの名前を聞いてレミリアの顔が強張る。
「誰がヒマ人筆頭よ。それに嫌というよりムリよ。
今更あの子とどう仲良くしろって言うのよ」
『今更』という言葉に、どれほどの思いが含まれているかはわからない。
レミリアはフランを軟禁し続けた。
発狂し危険だからとはいえ、実の妹を隔離し封印してきた。
数百年も。
それがどれだけの悪行か、たかだか十数年しか生きていない私にはわからない。
端から見れば情け容赦ない仕打ちだけど、レミリアなりに妹を守ろうとしたんだろう。
じゃなきゃ幽閉なんてせずに邪魔だからとっとと殺してる。
発狂したフランを放っておけば妖怪、人間問わず被害は大きくなる。
そうなってしまっては幻想郷のバランスを保つために、
博麗の巫女や他の妖怪は始末せざるをえなくなる。
だから事実としてフランを守ったのはレミリアだ。
最善でなかったかもしれないがそれだけは事実だ。
なのに、例え嫌われようと怨まれようと、無くさなければ、
いつか妹と幸せに暮らせると、ずっと一緒に笑っていられると、
そんな奇跡を夢みてた姉は、
その目の前の奇跡から逃げている。
「バカだなお前。五百年も生きてると、そんなことも忘れちまうのか。
姉妹なら一緒に笑えばいい。それで解決だろ。ムリなもんか」
正しいかはわからないけど、レミリアの言葉を精一杯否定する。
「そう簡単にはいかないわ。あなたとは違うのよ。
………勝手な話だけど魔理沙、私の代わりにフランと遊んであげて」
「勝手な言い分だな」
「えぇ身勝手な願いよ。」
「まぁ私は悲しそうにしてる女の子を放っておけるほど器用じゃないからな。
仕方ない引き受けてやるぜ」
数日後
「フランと遊んでやってくれ?」
「頼むぜ霊夢。フランに友達を作ってやりたいんだ」
フランお友達候補五号として霊夢を訪ねた。
「死んでも御免よ。だって死ぬもの」
「いや最近は大人しいもんだぜ。そりゃ機嫌損ねたら危ないかもだけどな」
「そんな気の抜けない遊び相手イヤよ。
それに友達ならもっと精神年齢の近いヤツ選びなさい」
精神年齢が近いとすればチルノ、ルーミア、リグル、橙あたりなんだが。
「確かにその通りだな。実年齢はともかく霊夢なんてなんか年寄りくさいし。
その通りなんだが。実はな……」
・・・・・・・・・・・・・・・・
これは昨日の話。
「というわけでフランと友達になってくれ」
「どこのどいつかしらないけど、
こいつらみたくあたいのこぶんにならしてやらなくもないわ」
「僕達いつから子分になってたの?」
「うまれたときからにきまってるじゃない」
「そーなのかー」
目の前にはフランお友達候補一、二、三、四号のチルノ、リグル、ルーミア、橙がいる。
やっぱ目には目を、歯には歯を、ガキにはガキをだ。
「と、いうわけで今から紅魔館いくぞ」
「……紅魔館?」
橙の顔がみるみる青ざめていく。
「紅魔館って湖にある、あの?」
「知ってるのか?」
「藍様が紅魔館には最凶の吸血鬼がいるから近づいたらダメだよって…」
「あぁ、それは…えーと」
レミリアは人間の血を吸うだけだから橙にとって危険はない。
だから藍が橙に注意した最凶の吸血鬼とはフランのことで間違いないだろう。
それに紅魔館は門番なんかいるくせに危険のない輩は普通に迎えいれるからな。
ぶっちゃけ危ないのはフランだけだし。
この事実を伝えるべきだろうか?
伝えたら来てくれないだろうけど、後でバレるのもよろしくない。
「さいきょう?さいきょうはあたいよ?だからそいつはにせものね。
そんなやつあたいがせいばいしてあげるわ」
「や、止めようよチルノちゃん…ムリだよ」
リグルも橙の話を聞いてびびったようだ。
まぁ当たり前か。
最強の妖獣が危険だと忠告するくらいなんだ、
自分達じゃ勝てないってことくらい理解できるだろう。
バカ以外には。
「あたいのほうがつよいってことをおしえてあげる」
……少女移動中
「よう中国。遊びにきたから勝手に入るぜ」
「それはいいけど、魔理沙。その子達は?」
「いや、フランと遊ばせようと思ったんだけど…なんか雲行きが怪しくなってきた」
「フランお嬢様と?ありがとうと言いたいとこだけど危なくない?」
中国の心配ももっともだ。
なにせチルノがやる気満々なのだ。
遊びにきたというより決闘しにきた感じだ。
出会っていきなり弾幕ごっこになりかねない。
「心配だからお前も来い。最悪こいつら守る盾になれ」
「魔理沙が盾で私が逃がす方向で」
そんなことを話しているうちにフランの部屋にたどり着いた。
「あんたがフラン?さいきょうとかいってちょうしのってるらしいじゃない」
それはお前だ。
「あなた誰?」
「フランこいつらは…」
「あたいはチルノ。
あたいのほうがさいきょうだってことをおしえてあげる。
いくわよおまえたち」
あぁー、突っ込みどころ満載だな。四対一の時点でいろいろとおかしい。
そうして弾幕ごっこは始まった。
まぁ結局のところ、
弓矢が四本あれば折れにくいが加える力が大きければ結局は折れる、
という残念な結果だった。
「おい中国生きてるか?」
「まぁなんとか」
フランは手加減できないから結局私と中国も加勢することになった。
さすがに4人を守るのは骨が折れた。中国は比喩ではなく肋骨が折れた。
子供作戦は失敗だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ってことがあったわけでお前くらいのレベルじゃないともしもの時に逃げられない」
「それはチルノが悪いだけだと思うけど。
フランに対抗できるとしたら幽々子、紫、スイカ、幽香、妹紅、アリス…は力不足か」
「うーんどっちの条件も満たしてるのはスイカくらいだな」
じゃあとりあえずお友達候補六号はスイカだな。
五号はやる気を感じないので保留にしよう。
「お前ら、さりげなく失礼なこと言うな」
都合のいいことに、いつも通りスイカは霊夢の家で酒を呑んでるしな。
というわけでスイカに頼む。
「まぁそうゆうわけでなスイカ、フランと遊んでやってくれ」
「断る」
即答された
「お前な、考えるくらいしろよ」
「さっきから横で話聞いてたんだから考える時間は充分だ」
酒呑んでるだけかと思ってたらちゃんと聞いてたのか。
「じゃあ簡潔に理由を述べよ」
「『遊びにきてあげた』なんて考えてる時点でそいつは友達じゃない。
ツンデレでもない限りな」
「む…つまりフランと遊びたくもないやつをムリに合わせても、友達にはなれないってことか」
「まぁそうゆうことだな。そもそも友達ってのは作るもんじゃないだろ。自然となるもんだ」
「つってもなぁ幽閉状態だし自然な出会いなんて期待できないぜ?」
スイカはものすごくもっともでいいこと言ってるんだがな。
自然に出会えるのは紅魔館の住人だけ。
その紅魔館の住人がダメだから外で探してるんだ。
本末転倒だな。
「あーーじゃああれだ」
「どれだ?」
「知らん勝手にやれ」
「お前なぁ…」
「魔理沙酔っ払いの戯言なんて無視しなさい。
かっこいいこと言いたいのと、面倒だからやりたくないだけよ」
「だろうな」
うーんどうしたものか。
次の日。
「それでアリス?しかも一人で行かせたの?
なんか成功するイメージが欠片も浮かばないんだけど」
アリスは実力的にも精神年齢的にも条件をクリアしていない。
が、あえてってこともある。
というか精神年齢派は失敗だったし、実力派はそもそも協力的なやつがいないから仕方ない。
「大丈夫だよ。アリスは案外強いし、面倒見もいい、
もしもの時は中国を盾にしろって言ってあるし」
「でもアリス自体友達少ないし」
「だからだよ。フランだけじゃなくアリスにも友達ができて一石二鳥なんじゃないか」
「なるほどね。でもそううまくいくかしら」
「まぁ終わったらここにくるはずだからのんびり待とうぜ」
……少女待機中
「お邪魔するわ、霊夢」
ようやくアリスがやって来た。
思ったより遅いんで心配したが、特に傷は見当たらないので一安心だ。
「いらっしゃい。どうだった?」
「疲れたわ。相手は最凶だから気は抜けないし、
そもそも子供との接し方なんてよくわからないもの」
「なんだじゃあ失敗か?」
「うーん、成功なんじゃない?なんか懐かれちゃったみたいだし」
そう言ってアリスは恥ずかしそうに笑った。
「あら、意外ね」
「意外だぜ」
「昨日は『アリスお前ならできる!!むしろお前にしかできない!!』
とか言ってたくせに意外ってどうゆうことよ」
「で、何して遊んだんだ?」
「えーと、その…お人形ごっこ…とか?」
「実にアリスらしい遊びのはずなのになんか似合わないわね。
乙女チックすぎるせいかしら」
「いや可愛いくていいと思うぜ。
私じゃ恥ずかしくてそんな乙女チックな遊びしてやれないからな」
「乙女チックでわるかったわね。
でも中国が混ざったせいで八割ギャグだったわ」
本当に中国を盾にしようと連れて行ったらしいな。
後で劇の内容を中国に聞いてみよう。
「そりゃ中国だもの」
「中国じゃ仕方ない」
「まぁ楽しかったからいいけど。
で、フラン人形を作ってプレゼントしてあげたら大喜びしてくれたわ。
今度は一緒に作る約束もしてきたの」
そうゆうアリスは嬉しそうだ。やっぱりアリスで正解だったな。
「へー人形作りか楽しそうね。ねぇそれ私も混ぜてくれない?」
「別にいいわよ」
「そうゆうことなら咲夜あたりに材料を用意させるとするか」
数日後。
約束の人形作りの日。
参加者はアリス、霊夢、フラン、中国そして私だ。
アリスが見本で作った後、アリスに訪ねながら私達は人形を作った。
今日作る人形は布と綿で作る、要するにぬいぐるみだ。
アリスが見本で作ったのは私の人形だった。
教える時にも見本として作っていたので最終的に計三体もの魔理沙人形が完成した。
妙に作り慣れてる感じがしたが気のせいだろうか?
いやアレか、今日のために練習したんだろう。そうゆうことにしておこう。
霊夢が作ったのはスイカで、
スイカはひょうたんとか角とか鎖とかオプションパーツが多くて苦労していた。
アリスが難しいところだけでもやってあげようかと提案したが、
スイカにプレゼントするから自分でやると断っていた。
完成品は角がやたらでかかった。
中国は意外や意外。手先が器用でさくさくっと自分の人形を作りあげた。
私はアリスの上海人形を作ることにした。
別に上海人形の様に魔法人形というわけではない。
ただの上海人形を模したぬいぐるみだ。
そしてフランは………
「ようお嬢様。ご機嫌いかが」
「あらどうしたの?血でも飲ませてくれるのかしら」
「私はあまり蚊に刺されないからな。きっとおいしくないんだぜ」
「蚊と一緒にしないで欲しいわ。それで何か用?」
「見せたいモノがあってな」
そう言ってレミリアをフランの部屋へと連れていく。
今ならフランは寝てるから大丈夫だろう。
「ちょっとなんのつもりよ。
フランのことはこの前も話したでしょ。今更ムリなのよ」
「言ったろ、私は悲しそうな顔した女の子を放っておけるほど器用じゃないって」
そうフランを放っておけないように、
悲しそうな顔してるレミリアだって放っておけない。
「ほらコレだぜ」
無理矢理レミリアを連れて部屋に入る。
そこには仲良く手を繋いだ、フランとレミリアの人形があった。
「フランはアリス作で、レミリアはフラン作だぜ。
今更仲良くできない、だっけ?そんなことないだろ。
お互いが望んでるんだ。できない理由が見当たらないぜ」
「……………………」
フランを起こさないよう電気を付けていないから顔色は見えない。
でもレミリアは微笑んでいる、そう確信できた。
「ふふ…下手くそね」
確かにその通りだ。
羽も腕も左右で大きさが違う。
顔は首を傾げた様に曲がっている。
しかも何度か針で指を傷つけたので血がついてたりする。
縫い方もバランスもあらゆる面で下手くそだった。
隣にアリス作の人形があるせいで余計際立って見える。
「でも、料理の一番の調味料は愛情だって言うだろ?」
「なんか違うけど、そうかもね」
「よう中国、お邪魔するぜ」
「こんばんは魔理沙。残念だけどフランお嬢様は留守よ。
レミリアお嬢様とお出掛けになったから」
「へーそれはそれは珍しい」
「昨日だってチルノとかちびっこ達がきたのよ。
リベンジだって言ってね」
「ふーんだからお前ぼろぼろなのか」
「いやこれは咲夜さんにちょっと・・」
「また昼寝か」
「いえ、枕元に私の人形をそっと置いておいたら、
おかげ様で夢見が最悪だったて半殺しに………」
「私だって夢に中国はでてきてほしくないぜ」
「まぁそれはそうと本当にありがとうね魔理沙」
「礼を言われるようなことはしてないぜ。
全て私のためだったんだからな。
フランがいると紅魔館に来たのにパチュリーとあまり遊べないからな
今日は図書館でのんびりさせてもらうぜ」
「お礼への言い訳まで考えてるあたりが、かっこいいですよ」
「勝手に言ってろ」
end
気づけば日が登り始めている。
「えー?魔理沙もう帰っちゃうのー?もっと遊ぼーよー」
帰ると言った途端、私に抱きついてだだをこね始めた。
さっきまでの上機嫌が嘘のようだ。
「もっとってけっこう遊んだじゃないか。また来るから今日はここまでだ、な?」
フランと遊ぶのはなにせ疲れるのだ。
力的には最凶だし。弾幕ごっこなんてした日には命が危ない。
「ねぇ魔理沙。今度はいつ来てくれる?」
「わからないぜ。とりあえず一週間はムリだな」
この場を切り抜けるだけなら適当に近いうちには、とか言えばいい。
でもそれはしてはいけない。
子供とは真っ正面から接しないとな。隠し事はあっても嘘偽りはなしだ。
「そっか。でもできるだけ早く来て。魔理沙が来ないとつまんないんだもん」
「そう言うなって。咲夜やパチュリーとかに遊んでもらえ」
「…みんな忙しいって言って遊んでくれないの。みんなの邪魔しちゃ悪いし。
パチュリーはいつでも話し相手になってくれるけど、難しい話ばっかりでわからないし」
確かに紅魔館で常にヒマなのはパチュリーとレミリアくらいか。
「じゃあ中国だ。あいつ年がら年中ヒマだろ」
門番という仕事があるからヒマではないが、いても役目を果たしてないので別にいいだろう。
「中国はつまんないからやだ」
「そ、そうか」
ドンマイだな、中国。
「じゃあ今度は遊び相手を連れてきてやるぜ。友達が増えれば退屈しないだろ」
「うん」
フランと別れて玄関に向かわずに紅魔館の主の部屋に向かう。
バンッ!!
豪快に扉を開けて中に押し入る。
「よぅお嬢様。ご機嫌いかが」
「何しに来たの、あなた?私はそろそろ眠るんだけど」
「私も帰ろうと思ったんだけどな、お前が気に食わないんで怒りにきたぜ」
「はぁ?」
「フランがな。退屈だ、寂しいって言うんだ。
ってわけで紅魔館のヒマ人筆頭のお前が遊んでやれ」
フランの名前を聞いてレミリアの顔が強張る。
「誰がヒマ人筆頭よ。それに嫌というよりムリよ。
今更あの子とどう仲良くしろって言うのよ」
『今更』という言葉に、どれほどの思いが含まれているかはわからない。
レミリアはフランを軟禁し続けた。
発狂し危険だからとはいえ、実の妹を隔離し封印してきた。
数百年も。
それがどれだけの悪行か、たかだか十数年しか生きていない私にはわからない。
端から見れば情け容赦ない仕打ちだけど、レミリアなりに妹を守ろうとしたんだろう。
じゃなきゃ幽閉なんてせずに邪魔だからとっとと殺してる。
発狂したフランを放っておけば妖怪、人間問わず被害は大きくなる。
そうなってしまっては幻想郷のバランスを保つために、
博麗の巫女や他の妖怪は始末せざるをえなくなる。
だから事実としてフランを守ったのはレミリアだ。
最善でなかったかもしれないがそれだけは事実だ。
なのに、例え嫌われようと怨まれようと、無くさなければ、
いつか妹と幸せに暮らせると、ずっと一緒に笑っていられると、
そんな奇跡を夢みてた姉は、
その目の前の奇跡から逃げている。
「バカだなお前。五百年も生きてると、そんなことも忘れちまうのか。
姉妹なら一緒に笑えばいい。それで解決だろ。ムリなもんか」
正しいかはわからないけど、レミリアの言葉を精一杯否定する。
「そう簡単にはいかないわ。あなたとは違うのよ。
………勝手な話だけど魔理沙、私の代わりにフランと遊んであげて」
「勝手な言い分だな」
「えぇ身勝手な願いよ。」
「まぁ私は悲しそうにしてる女の子を放っておけるほど器用じゃないからな。
仕方ない引き受けてやるぜ」
数日後
「フランと遊んでやってくれ?」
「頼むぜ霊夢。フランに友達を作ってやりたいんだ」
フランお友達候補五号として霊夢を訪ねた。
「死んでも御免よ。だって死ぬもの」
「いや最近は大人しいもんだぜ。そりゃ機嫌損ねたら危ないかもだけどな」
「そんな気の抜けない遊び相手イヤよ。
それに友達ならもっと精神年齢の近いヤツ選びなさい」
精神年齢が近いとすればチルノ、ルーミア、リグル、橙あたりなんだが。
「確かにその通りだな。実年齢はともかく霊夢なんてなんか年寄りくさいし。
その通りなんだが。実はな……」
・・・・・・・・・・・・・・・・
これは昨日の話。
「というわけでフランと友達になってくれ」
「どこのどいつかしらないけど、
こいつらみたくあたいのこぶんにならしてやらなくもないわ」
「僕達いつから子分になってたの?」
「うまれたときからにきまってるじゃない」
「そーなのかー」
目の前にはフランお友達候補一、二、三、四号のチルノ、リグル、ルーミア、橙がいる。
やっぱ目には目を、歯には歯を、ガキにはガキをだ。
「と、いうわけで今から紅魔館いくぞ」
「……紅魔館?」
橙の顔がみるみる青ざめていく。
「紅魔館って湖にある、あの?」
「知ってるのか?」
「藍様が紅魔館には最凶の吸血鬼がいるから近づいたらダメだよって…」
「あぁ、それは…えーと」
レミリアは人間の血を吸うだけだから橙にとって危険はない。
だから藍が橙に注意した最凶の吸血鬼とはフランのことで間違いないだろう。
それに紅魔館は門番なんかいるくせに危険のない輩は普通に迎えいれるからな。
ぶっちゃけ危ないのはフランだけだし。
この事実を伝えるべきだろうか?
伝えたら来てくれないだろうけど、後でバレるのもよろしくない。
「さいきょう?さいきょうはあたいよ?だからそいつはにせものね。
そんなやつあたいがせいばいしてあげるわ」
「や、止めようよチルノちゃん…ムリだよ」
リグルも橙の話を聞いてびびったようだ。
まぁ当たり前か。
最強の妖獣が危険だと忠告するくらいなんだ、
自分達じゃ勝てないってことくらい理解できるだろう。
バカ以外には。
「あたいのほうがつよいってことをおしえてあげる」
……少女移動中
「よう中国。遊びにきたから勝手に入るぜ」
「それはいいけど、魔理沙。その子達は?」
「いや、フランと遊ばせようと思ったんだけど…なんか雲行きが怪しくなってきた」
「フランお嬢様と?ありがとうと言いたいとこだけど危なくない?」
中国の心配ももっともだ。
なにせチルノがやる気満々なのだ。
遊びにきたというより決闘しにきた感じだ。
出会っていきなり弾幕ごっこになりかねない。
「心配だからお前も来い。最悪こいつら守る盾になれ」
「魔理沙が盾で私が逃がす方向で」
そんなことを話しているうちにフランの部屋にたどり着いた。
「あんたがフラン?さいきょうとかいってちょうしのってるらしいじゃない」
それはお前だ。
「あなた誰?」
「フランこいつらは…」
「あたいはチルノ。
あたいのほうがさいきょうだってことをおしえてあげる。
いくわよおまえたち」
あぁー、突っ込みどころ満載だな。四対一の時点でいろいろとおかしい。
そうして弾幕ごっこは始まった。
まぁ結局のところ、
弓矢が四本あれば折れにくいが加える力が大きければ結局は折れる、
という残念な結果だった。
「おい中国生きてるか?」
「まぁなんとか」
フランは手加減できないから結局私と中国も加勢することになった。
さすがに4人を守るのは骨が折れた。中国は比喩ではなく肋骨が折れた。
子供作戦は失敗だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ってことがあったわけでお前くらいのレベルじゃないともしもの時に逃げられない」
「それはチルノが悪いだけだと思うけど。
フランに対抗できるとしたら幽々子、紫、スイカ、幽香、妹紅、アリス…は力不足か」
「うーんどっちの条件も満たしてるのはスイカくらいだな」
じゃあとりあえずお友達候補六号はスイカだな。
五号はやる気を感じないので保留にしよう。
「お前ら、さりげなく失礼なこと言うな」
都合のいいことに、いつも通りスイカは霊夢の家で酒を呑んでるしな。
というわけでスイカに頼む。
「まぁそうゆうわけでなスイカ、フランと遊んでやってくれ」
「断る」
即答された
「お前な、考えるくらいしろよ」
「さっきから横で話聞いてたんだから考える時間は充分だ」
酒呑んでるだけかと思ってたらちゃんと聞いてたのか。
「じゃあ簡潔に理由を述べよ」
「『遊びにきてあげた』なんて考えてる時点でそいつは友達じゃない。
ツンデレでもない限りな」
「む…つまりフランと遊びたくもないやつをムリに合わせても、友達にはなれないってことか」
「まぁそうゆうことだな。そもそも友達ってのは作るもんじゃないだろ。自然となるもんだ」
「つってもなぁ幽閉状態だし自然な出会いなんて期待できないぜ?」
スイカはものすごくもっともでいいこと言ってるんだがな。
自然に出会えるのは紅魔館の住人だけ。
その紅魔館の住人がダメだから外で探してるんだ。
本末転倒だな。
「あーーじゃああれだ」
「どれだ?」
「知らん勝手にやれ」
「お前なぁ…」
「魔理沙酔っ払いの戯言なんて無視しなさい。
かっこいいこと言いたいのと、面倒だからやりたくないだけよ」
「だろうな」
うーんどうしたものか。
次の日。
「それでアリス?しかも一人で行かせたの?
なんか成功するイメージが欠片も浮かばないんだけど」
アリスは実力的にも精神年齢的にも条件をクリアしていない。
が、あえてってこともある。
というか精神年齢派は失敗だったし、実力派はそもそも協力的なやつがいないから仕方ない。
「大丈夫だよ。アリスは案外強いし、面倒見もいい、
もしもの時は中国を盾にしろって言ってあるし」
「でもアリス自体友達少ないし」
「だからだよ。フランだけじゃなくアリスにも友達ができて一石二鳥なんじゃないか」
「なるほどね。でもそううまくいくかしら」
「まぁ終わったらここにくるはずだからのんびり待とうぜ」
……少女待機中
「お邪魔するわ、霊夢」
ようやくアリスがやって来た。
思ったより遅いんで心配したが、特に傷は見当たらないので一安心だ。
「いらっしゃい。どうだった?」
「疲れたわ。相手は最凶だから気は抜けないし、
そもそも子供との接し方なんてよくわからないもの」
「なんだじゃあ失敗か?」
「うーん、成功なんじゃない?なんか懐かれちゃったみたいだし」
そう言ってアリスは恥ずかしそうに笑った。
「あら、意外ね」
「意外だぜ」
「昨日は『アリスお前ならできる!!むしろお前にしかできない!!』
とか言ってたくせに意外ってどうゆうことよ」
「で、何して遊んだんだ?」
「えーと、その…お人形ごっこ…とか?」
「実にアリスらしい遊びのはずなのになんか似合わないわね。
乙女チックすぎるせいかしら」
「いや可愛いくていいと思うぜ。
私じゃ恥ずかしくてそんな乙女チックな遊びしてやれないからな」
「乙女チックでわるかったわね。
でも中国が混ざったせいで八割ギャグだったわ」
本当に中国を盾にしようと連れて行ったらしいな。
後で劇の内容を中国に聞いてみよう。
「そりゃ中国だもの」
「中国じゃ仕方ない」
「まぁ楽しかったからいいけど。
で、フラン人形を作ってプレゼントしてあげたら大喜びしてくれたわ。
今度は一緒に作る約束もしてきたの」
そうゆうアリスは嬉しそうだ。やっぱりアリスで正解だったな。
「へー人形作りか楽しそうね。ねぇそれ私も混ぜてくれない?」
「別にいいわよ」
「そうゆうことなら咲夜あたりに材料を用意させるとするか」
数日後。
約束の人形作りの日。
参加者はアリス、霊夢、フラン、中国そして私だ。
アリスが見本で作った後、アリスに訪ねながら私達は人形を作った。
今日作る人形は布と綿で作る、要するにぬいぐるみだ。
アリスが見本で作ったのは私の人形だった。
教える時にも見本として作っていたので最終的に計三体もの魔理沙人形が完成した。
妙に作り慣れてる感じがしたが気のせいだろうか?
いやアレか、今日のために練習したんだろう。そうゆうことにしておこう。
霊夢が作ったのはスイカで、
スイカはひょうたんとか角とか鎖とかオプションパーツが多くて苦労していた。
アリスが難しいところだけでもやってあげようかと提案したが、
スイカにプレゼントするから自分でやると断っていた。
完成品は角がやたらでかかった。
中国は意外や意外。手先が器用でさくさくっと自分の人形を作りあげた。
私はアリスの上海人形を作ることにした。
別に上海人形の様に魔法人形というわけではない。
ただの上海人形を模したぬいぐるみだ。
そしてフランは………
「ようお嬢様。ご機嫌いかが」
「あらどうしたの?血でも飲ませてくれるのかしら」
「私はあまり蚊に刺されないからな。きっとおいしくないんだぜ」
「蚊と一緒にしないで欲しいわ。それで何か用?」
「見せたいモノがあってな」
そう言ってレミリアをフランの部屋へと連れていく。
今ならフランは寝てるから大丈夫だろう。
「ちょっとなんのつもりよ。
フランのことはこの前も話したでしょ。今更ムリなのよ」
「言ったろ、私は悲しそうな顔した女の子を放っておけるほど器用じゃないって」
そうフランを放っておけないように、
悲しそうな顔してるレミリアだって放っておけない。
「ほらコレだぜ」
無理矢理レミリアを連れて部屋に入る。
そこには仲良く手を繋いだ、フランとレミリアの人形があった。
「フランはアリス作で、レミリアはフラン作だぜ。
今更仲良くできない、だっけ?そんなことないだろ。
お互いが望んでるんだ。できない理由が見当たらないぜ」
「……………………」
フランを起こさないよう電気を付けていないから顔色は見えない。
でもレミリアは微笑んでいる、そう確信できた。
「ふふ…下手くそね」
確かにその通りだ。
羽も腕も左右で大きさが違う。
顔は首を傾げた様に曲がっている。
しかも何度か針で指を傷つけたので血がついてたりする。
縫い方もバランスもあらゆる面で下手くそだった。
隣にアリス作の人形があるせいで余計際立って見える。
「でも、料理の一番の調味料は愛情だって言うだろ?」
「なんか違うけど、そうかもね」
「よう中国、お邪魔するぜ」
「こんばんは魔理沙。残念だけどフランお嬢様は留守よ。
レミリアお嬢様とお出掛けになったから」
「へーそれはそれは珍しい」
「昨日だってチルノとかちびっこ達がきたのよ。
リベンジだって言ってね」
「ふーんだからお前ぼろぼろなのか」
「いやこれは咲夜さんにちょっと・・」
「また昼寝か」
「いえ、枕元に私の人形をそっと置いておいたら、
おかげ様で夢見が最悪だったて半殺しに………」
「私だって夢に中国はでてきてほしくないぜ」
「まぁそれはそうと本当にありがとうね魔理沙」
「礼を言われるようなことはしてないぜ。
全て私のためだったんだからな。
フランがいると紅魔館に来たのにパチュリーとあまり遊べないからな
今日は図書館でのんびりさせてもらうぜ」
「お礼への言い訳まで考えてるあたりが、かっこいいですよ」
「勝手に言ってろ」
end
気付いた誤字脱字
>ルーミヤ→ルーミア
>どっちの条件もも満たして→もが重複
気がついた誤字? と言うか引っかかった文法
>「見せたい欲しいモノがあってな」
「見せたいモノがあってな」か「見て欲しいモノがあってな」かな?
ちなみにスイカではなく「萃香」です。普通に変換しても出てこないのでIMEに登録しておくととても便利です。
物語としてはとても良作です。
美鈴人形を抱きしめながら寝ている咲夜さんが見える!!
ロリスだったらどうだったろう(本所持Ver.
シリアス系の話だし、僕はちょっとなぁ……引っかかった。
ギャグなら僕ッ子もアリだと思うんだけど。
話は面白かった。
思いのほか高評価でうれしいです
とりあえず指摘された誤字は修正しました
お節介な魔理沙良いね
友達が増える事は良い事です。
いやアレか、今日のために練習したんだろう。そうゆうことにしておこう。
吹いたwww
いやアレか、今日のために練習したんだろう。そうゆうことにしておこう。
吹いたwww
いざとなると友達作るのは上手そうだと思うんだ!主に人形的な意味で
お人形ごっこというか、ありえないが、
「今帰ったぞ」
「おかえりなさいあなた、お風呂とご飯どっちにします? それとも、わ・た・し?」
というような飯事を想像した自分は、もうダメダメなんだ。
と、感想からかなりそれましたね。
なんて言うかあれです、好いです。
もう少しお嬢様に出番を与えてあげてもいいかなぁと思いました。
皆が幸せそうでよいです。