Coolier - 新生・東方創想話

妖怪、紅美鈴-ボーダーオブライフ 後編

2008/04/11 11:49:06
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「いい?これからあなたが見ることはすべて、経験してきたことを再生するに過ぎない。
 心の奥底に隠してしまった出来事をただ、淡々と再生するだけのこと」

眠い、いいから寝かせてほしい。

「忘れないで、あなたは乗り越えなければならない。あなたは逃げ出してはいけない」

もう誰の声なのかを認識することもできなくなっていた私は。
そのまま深い深い水の中に沈んでいくような感覚で、眠りに落ちた。



紫は、腕の中で眠っている美鈴を慈しむように、紅く長い髪を撫でた。

「いってらっしゃい、人間になりたかった妖怪さん」


これは、夢だ。
夢の中で夢だと気づくのは明晰夢って言うってパチュリー様が言っていたなぁ。
たしか、夢の中で、私は人間の少女になっているんだって話をしたときだっけ―――

夢の中の私。
はいはいをする私。
両親は共に商人をしており、自分自身もそれを継ぐものだとばかり思っていた。
それが変わったのはいつだっただろうか。

夢の中の私は、いつの間にか。
よちよち歩きの幼子から、少し生意気な女の子へと成長していた。

そう、そうだった。
私は昔から身軽で、そこらへんの男の子よりもよっぽど身体能力が高かった。
父はそんな私に対して「拳法でも習ったらどうか」だなんて冗談を言っていたような気がする。

幼い私はそれを本気で受け取って・・・・・・。

――いいや違う、私は妖怪だ。だとしたら、この紅美鈴はいったい誰だ?

私と同じ名前、成長するごとに私そっくりになっていく「人間」の紅美鈴。
16歳になった「人間」の紅美鈴は、そのとき既に町でも名の通った拳法家になっていた。
彼女は天才としか言いようがない、師匠は手放しで彼女を褒め称え、兄弟子たちは女に負けるものかと必死に修行に励んでいた。

当の本人も、自身の才能に驕らず修行に励むものだから手に負えない。
とんとん拍子に技を吸収し、二十歳を前にして師母と呼ばれる女傑に成長していた。
夢の中で、紅美鈴の人生を追体験していく「私」。

「人間」の紅美鈴の噂は山を越え、学んでいる拳法の総本山へと招かれるまでに至っていた。

一方、「私」は醜悪で間抜けな妖怪の人生も同様に見ていた。

野山を走りまわり、本能のまま獣を、人間を食らう。
それ以外に目的もない、何か特別な能力を持つでもないどこにでもいる妖怪。
近い外見を挙げるならば、大きな猿といったところだろうか。

ああ、こんな感じの低級妖怪を昼間追っ払ったっけなぁ。

「私」は何故か、この醜悪な妖怪に対して親近感を覚えた。



その後も、「人間」の紅美鈴は順風満帆の人生を歩んでいた。
天才と呼ばれていた兄弟子たちをあっさりと追い越し、次々に技を身に着けていく。
しかし性格は謙虚な上に穏やかで誰にでも慕われる。


「私」とは大違いだ、どんくさくって人間にも負けてしまうダメ妖怪だから。
その反発か、「私」は「人間」の紅美鈴を心から応援することができなかった。

それに比べて、この妖怪はどうだ。
後先考えずに人間を襲い、ちょっと実力のある人間とかちあえば、鋒鋩の体で逃げ帰り、泣き喚くのだ。



出来の悪い子ほど可愛いというか。
魔理沙にもいいようにやられてしまう私の境遇を重ねてしまうのか。
どうしてもこの妖怪のことを私は嫌いになることができない。



「美鈴さま、美鈴さま」

また場面が変わった、ボロ布と変わらないものをきたお爺さんが土下座をしている。

「助けてくだせぇ・・・・・・」

どうやら紅美鈴は妖怪退治を頼まれたらしい。
見てないけれど、知っている。
紅美鈴は独立し、自らの流派を作るべく武者修行をしていることを。
そして修行の一貫として妖怪退治を引き受けるようになったということを。
そして、これから退治される妖怪のことも――――



「あら、この子ったら寝ながら涙を流しているわ」

紫は慈愛に満ちた表情で、妖怪、紅美鈴の目元を拭う。



いつも通りに妖怪は、考えなしに人間へと襲いかかった。
「人間」の紅美鈴は容赦せず、妖怪を叩き伏せる。
妖怪は怯え、いつもどおり逃げようとするが、ちょっと腕の立つ人間にも勝てない「私」は
尋常じゃない達人の前にして、哀れにも腰が抜かしていた。
目を瞑り、すぐに出る死の瞬間を震えながら待っているのだが、いつまで経ってもその瞬間は訪れない。

「もう二度と」

凛とした声が辺りに響く。

「もう二度と、人間を襲わないと誓うのなら、見逃してやってもいい」

鋭い眼光で睨みつける「人間」の紅美鈴。
哀れな妖怪――いや、「私」は、恐怖と、それを上回る羨望の気持ちで目の前の女性。
今の「私」と同じ姿にまで成長した「人間」の紅美鈴を見ていた。



見逃された「私」は、その日以来獣を食らうことと、人間を食らうこと以外を覚えた。
紅美鈴が使っていた拳法、それを見よう見まねで練習し始めたのだった。
そして言いつけ通り、「私」は人間を襲うことを止めた。
人間を食らうのは至上の快感であったが、それ以上にあの娘、紅美鈴が怖く――眩しかったのだ。



夢から醒めなくてはいけない、これ以上進めてはいけないのだ。
「私」は必死にこの夢から醒めようとする。
しかし、無情にも物語は進んでいく。



「私」は、村の近くをウロチョロするのが大好きだった。
人間と鉢合わせしても、一目散に逃げ出せば、退治されるようなこともない。

やがて紅美鈴は、自らの流派を完成させた。
それを機に道場を開くことを決め、町外れに大きな道場を作った。
そんなに広くても人が集まらないよ、と苦笑いする紅美鈴に町の人たちは。

「いや、あんたならこの道場を国一番の道場にできる」

と口を揃えていた。

やがて道場には町の人たちだけでなく、近隣の町から。
それどころか、噂を聞きつけ遠い町から弟子入り志願にきた人々で溢れた。
そのころの「私」の楽しみといえば、そんな人たちが道に迷わないように密かにサポートすることだった。



当時の「私」は満たされていた。

紅美鈴がその全盛期を終え、艶々だった肌にしわが混じり、けれど後進の指導には更に熱が入っているのを遠く眺めている。

彼女の教える拳法の型を遠目から観察し、練習し、彼女の指導を受けていると錯覚する。
それは傍から見れば悲しい行為だったけれど、それでも「私」は幸せだったのだ。



そんな折、当時の「私」が住んでいる山にとある妖怪が住み着いた。
「私」とは比べ物にならないほどの強い妖怪、それに加えてとんでもなく頭が悪く、加減ってものを知らない奴だった。

その妖怪は、日が暮れれば町へと降りていき、家を一軒一軒壊し、女子供だけを狙って食うのだ。
「私」はその妖怪に怯え、鉢合わせにならないように神経をすり減らしていた。



やがて、横暴を許すわけにはいかないと、紅美鈴は腕利きの弟子を数人連れ、妖怪討伐へと向かっていった。
しかし、「私」は怖かった。紅美鈴があの妖怪と戦い、死んでしまうのではないかと。
「私」は彼女らに気づかれぬよう、間違った方向へと誘導していった。
その妖怪と会わぬように、今日のところだけでも引き下がってくれるように。



不意に、紅美鈴を先頭にした集団は立ち止まった。
門下生たちは突然立ち止まった理由もわからず、ざわついている。

「そこの妖怪!」

紅美鈴はあの日と変わらない凛とした声で言い放った。

「あの化け物のところへ連れて行け」

山に入ったときからもう、彼女にはバレていたのだとわけもなく思った。
冷静に考えれば、それなら初めから誘導にかかったりなんてしない。
けれど、理由なく信じられるほどに私は、紅美鈴に心酔していたのだ。
木から降り、姿を表すと門下生たちがすばやく身構える。
それを軽く手で制す紅美鈴。

「私との約束は、守ってくれているようだな。」

世間話のようなふりで、私に声をかける紅美鈴。
門下生たちは、何故師匠が妖怪と顔見知りなのかと不思議そうな顔をしていた。

「私」はといえば、彼女の記憶に自分がいたことに嬉しさ半分、妖怪のところに連れていかなければいけない心苦しさが半分。
実に複雑な――単純な物事しか考えることしかできない頭に、複雑な感情が渦巻いていたのだった。


走馬灯のように、場面が移り変わっていく。


これ以上はいけない、見てはいけない。
「私」は彼女を裏切ってしまったのだから。








妖怪の前で、とある門下生は倒れ、逃げ出し、泣いて許しを乞うていた。
私は、それを見ていることしかできなかった。
一人になっても、紅美鈴は最期の瞬間まで諦めてはいなかった。
自分が負ければ町は、こいつに食い尽くされてしまうだろうから。
その使命感が、自分を捨ててでも誰かを守ろうとする彼女の優しさが、動かぬ体を必死に動かしていた。



私はこのときのことを冷静に思い出していた。

この妖怪はきっと、一つの町を食い尽くせば次の町へと向かう
知能はないけれど力だけは持っている、非常に厄介な妖怪だったんだと思う。
今となっては、確認する手立てはないのだけど。



そして、見ているだけの「私」は歯がゆい思いをしていた。
全盛期の紅美鈴なら、こんな妖怪に後れは取らなかったのに。

白磁のようだった肌は今、シワを刻んだうえで、血に染まり。
しなやかながらも筋肉をつけていた二の腕には、悲しいことに脂肪が揺れていた。
そしてついに、紅美鈴はその妖怪の前に膝をつき、崩れ落ちた。

妖怪は自分が殺した討伐隊には見向きもせず、そのまま自分の住処へと帰っていった。
老いた紅美鈴には、妖怪の食指は動かなかったらしい。



「私」は無我夢中で彼女へと駆け寄る。
まだ、息はあったけれど、もうそれも絶え絶えである。
「私」は声にならない呼びかけを必死に繰り返していた。

「―――を食べ―――い」

パクパクと、言葉にならない言葉を発す紅美鈴。
私はそれ以上、彼女の姿を見ていることができなかった。

「――を――守って」

最期に目を見開いた紅美鈴は、そのまま、二度とは動かぬ死体と成り果てた。
山に響く慟哭。紅美鈴が死ぬわけがない。
紅美鈴は何よりも強く、華麗であり、私の永遠の憧れであるべきなのだ。
そのまましばらく、天に届くほどの大声で哭いていた。
そして、泣いて鳴いて、喉が潰れるほど長い間悲しみに暮れた「私」は、腕に抱えた紅美鈴を貪り始めたのだった。

憧れだった紅美鈴を喰らった、しかしいつまで経っても快感は沸き起こらない。
ただただ、深い深い、悲しみだけが残った。
そのときの「私」は、どこか狂っていたのかもしれない。

紅美鈴が勝てなかったのは彼女が年老いていたからなのだ。
彼女は私の憧れなのだから、あんな妖怪に負けたりはしない。
思い込みはいつしか、醜い姿を自分がもっとも愛していた人間。
自らを一瞬で叩き伏せた頃の紅美鈴へと変えていた。


「私は妖怪・・・・・・、妖怪の、紅美鈴だ」


再度、走馬灯のように場面は移り変わっていく。

夜になっても、紅美鈴をはじめとした討伐隊は戻ってこない。
町の人々はいよいよ終わりだと悲しみに暮れていた。
だが、いつまで経っても妖怪は町へと降りてこない。

決意を固めた若者が門で妖怪の死体を発見した頃には――
私、妖怪の紅美鈴は、当てもない旅へ出ていた。
遠い遠い昔の記憶。



「起きなさい、紅美鈴」

甘い声が聞こえ、誰かが私の体をゆすっている。
目を開けると、微笑んでいる紫の顔が目の前にあった。

「おかえりなさい、紅美鈴。気分はどうかしら?」
「・・・・・・サイッテーな気分ですよ」

忘れていたなんて信じられませんね、あんな大事なこと。
しれっと言ってのけるが、心のうちじゃまだ動揺が収まらない。

「それでも、あなたは紅美鈴よ」
「私は、今でも彼女の真似事をしているに過ぎません」
「そうかしら?」
「そうですよ、私が人を食わないのは、彼女との約束を守っているだけに過ぎません」
「約束は果たしたはずでしょう?」

かみ合わない会話。
八雲紫は、含みのある言い方をしたあとに、じいっと私の目を見つめてきた。
約束はそれ以外にしていないと思うのだが。

「そう、あなたは大事なことを忘れているのね」

悲しいことだわ、と扇を口に当てる隙間妖怪。
何か隠している風だが、まずは本題を話してもらわなければ話にならない。

「で、何故いまさら人間を食べなければいけないんです?」
「そう、それを今から説明するわ」

おっほん、と一度大きく咳払いをする紫。

「あなたは人間の真似をしすぎたのよ、妖怪は本来の役割を果たしていなければいけないの。
 吸血鬼は血を吸わなくてはいけないように、人食い妖怪は人間を食べなければいけない。
 そんな世界のお約束をあなたは乱しているのよ。というか、本能への挑戦?」
「でもそれだけで異変とはなりえないのではないですか」
「それがね」

目を伏せて言葉を溜める紫。

「あなたはずいぶん、妖怪の本能の部分を蔑ろにしてきた。理由もずっと忘れたままでね・・・・・・。
 それってとてつもないストレスよ? このままだと本能が理性では抑え切れず、表に出てきてしまうわ。
 それだけならいいのだけど・・・・・・、一度そうなってしまったら、もうあなたは元には戻れない。簡単に言えば発狂してしまうのよ」

へぇ、なるほど。でも私程度が発狂したぐらいで・・・・・・。

「紅美鈴、あなたは何か思い違いをしているわ。たしかに弾幕勝負ではあなたは強いとはいえないわ。
 けれど、こと格闘に観点を置けば、この幻想郷でも並ぶものはいない実力者よ。
 あなたがその地位に甘んじている理由は、無意識のうちに手加減をしてしまうその性格のおかげなの」

どれほどの実力を秘めているかを知りたくて、萃香に力試しをしてもらったのだけど、と付け加えて。

「そうね、きっとあなたが発狂してしまったら、人間を一人残らず食い殺そうとするでしょうね。
 たとえ相手が幻想郷の守人、博麗霊夢であっても・・・・・・。ねえ、あなた。最近人間を殺して食いたいと思ったことはない?」

ええ、ありますとも。
口には出せないので、顔を伏せて唇を噛むことで肯定の意を伝えた。

「今のあなたには、ガス抜きが必要なのよ。期限はレミリアの見立てで1ヶ月・・・・・・。
 それ以内に妖怪としての欲望を満たせなかったなら――あなたには死んでもらうわ」

じゃ、おやすみー。
えらい軽いノリで、八雲紫は隙間の中へと消えていった。
私はといえば
その場に一人、立ち尽くすことしかできなかった。







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○月●日 曇り 紅美鈴

霊夢が起きる前に、旅立つことにした。
今は、誰の顔も見たくはないのだ、とくに、人間の顔は。
しかしすべてを思い出したというのに、紅美鈴という名前を使う辺り
私は相当な大物なのかもしれないな。
1ヶ月間、どう過ごそう、いっそ自殺したほうがラクじゃないかと思う。
というか、隙間妖怪や閻魔様に土下座すればどうにかなるのではないだろうか。
どうにか人を食べなくて済む方法を探そうと思う。

置手紙と、ついでにお賽銭とお礼代わりに紙幣を数枚手紙に挟んでおいた。


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□月○日 雨 紅美鈴

日記を2週間ほどつけていなかった。
八雲紫はあれ以来、どうやっても見つけることができない。
他に当てもないので、咲夜さんが以前話していた閻魔へ会いに無縁塚へ行く。
閻魔に会わせて欲しいと暇そうにしていた死神にお願い、もとい脅迫をしたのだが会わせることはできないとの返事。
仕方がないので死神に言伝を頼んだのだけど。
「四季さまの能力は有罪無罪を白黒ハッキリつける能力であって、あんたの存在を確定する能力ではない」と叱られる。
ではどうすればいいのかと食いかかった挙句、不覚にも私は泣いてしまい、今までの出来事を洗いざらい吐露してしまった。
そんな私を哀れに思ったのか、死神、小野塚小町さんは相談に乗ってくれた。
人間を食えば、ストレスが解消されるらしいとは八雲紫からも聞いている。
そして一度ガス抜きしてしまえば、うまく妖怪の本能とも付き合っていけるだろう。
「思いつめて自殺した奴もあたいは渡す。でもな、その半分ぐらいは河を渡りきれないんだ。
 今のままならあんたは河を渡れるだろうけど・・・・・・自殺をしたらどうなるか保証はできないよ」
暗に、自殺を止められた。
先日の日記に、自殺をすればラクじゃないかと書いたけれど、それはお嬢様からの信頼を裏切りにも通じる。それに咲夜さんが怒るだろうなぁ。
でも、死んでしまってもその後の心配をするなんてよくわからない。
人間でありながらあそこまで完全にこなす咲夜さんは本当にすごい。
(水の痕のようなものがある)
ああ、私はなんて情けない妖怪なのだろうか。


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□月△日 曇り 紅美鈴

 当てもなく彷徨ううちに、夜雀のやっている屋台を見つけた。
 都合のいい腹だ、目の前に食べものをぶら下げられた途端、グゥーと鳴るんだから。
 八目鰻をご馳走になっているとき、店主と客として着ていた妖怪から興味深い話を聞くことができた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――







「へぇー、人間を食べなくっちゃいけないの。でもそれってそんなに大変なこと?」
「モグモグ。わたひゃしょんにゃににゃいへんなことにゃ」
「はいはい、食べながら喋るなルーミア」

屋台の店主である、夜雀の怪ミスティア・ローレライ。
そして店主の友人である闇の妖怪ルーミア。
二人とも人間を獲物にする妖怪である。

「んーそうだなぁ。私はほら、夜道を歩いてる人間だとかそういうのしか狙わないし。
 それに人間が食べたーい! って思うときってあんましないからさー。それに、からかうだけのことのほうが多いし」
「もぐもぐ」
「それで?」
「それでって言われても、私たちは妖怪だから・・・・・・。だって妖怪は人間を襲うものでしょ?
 人間の里の中で襲うとか、極端に暴れるとかしなきゃ巫女もあの半獣も見逃してくれるよ」
「もぐもぐ」
「あーっと、紅魔館の門番さん?」
「紅美鈴です」

紅、美鈴。この名前を私が使っていいものなのか。
しかしそれ以外、私の名と呼べるものはない。

「美鈴さんね、いい名前じゃない。あなたも妖怪なんだし、人間一人ぐらい食べても問題ないと思うんだけどなぁ」
「もぐもぐ」
「あーもう、食べながら喋るなとは言ったけど、ずっと食べてろとも言ってない、あんたも会話に参加しなさいよ」
「んぁ~、とらないでよぉ」

最近、心の中に余裕がなかったらしい。
ミスティア達の微笑ましいやりとりで、最近の自分がどれだけ殺伐としていたのかがわかった。
とにかく人間に会いたくなかった私は、森を、山を、竹林を当てもなく彷徨っていた。
そうして見つけた、妖怪の開く屋台は、ロクに食べていなかった私にとってはこの世のオアシスともいうべきってさすがにそれは言いすぎか、でも実際鰻は美味しいし、お酒も飲ませてもらえる。
何より久しぶりに誰かと喋ることができた。
幸いお金には困っていないので、しばらくはここを拠点にするのもいいかもしれない。

「またまた難しい顔しちゃってー、ほらほらもう一杯、奢ってあげるからさ」
「奢り奢り~、ミスティアー、私にも奢ってー」
「ばーか、あんたはツケが溜まりすぎ」

トクトクトクと、私のコップへ透明なお酒が注がれていく。
それを思い切ってグイっと飲み干すと、隣からもう一杯注がれた。

「今度は私のおごりー、ミスティアツケといてねー」
「ツケで奢る奴ってはじめてみた」

ありがとうとコップを揺らして見せると、ルーミアは心底嬉しそうな顔をしてくれた。
今度はのんびりチビチビ飲んでいると、その様子をじぃっと見てくる。

「えーっと、どうしました?」
「あのね、人間は怖いよ」

唐突に笑顔が消え、紅い瞳に覗くは、普段は見られぬ知の色。
それは血の色に似て、人を混乱させるには十分だった。

「人間はね、平気で他者に重しを乗せる。その相手がたとえ妖怪であってもね。
 あなたが食べることを選択するのなら、それを忘れちゃいけないよ」

それは彼女自身の経験から言える言葉なのだろうか?
遠くを見るような目で、ルーミアはコップを傾けている。
ミスティアはまた始まった、とため息をつき。

「この子、酔うとたまに悟ったようなこと言うの。この前もリグルに突然お説教はじめちゃってさー、
 でも思いつきで適当なこと言ってるだけだと思うし。まま、気にせず飲んで食べて、お代わりならまだまだあるから」

と商魂逞しく、注文もしていない料理を私の前に並べていく。
人食い妖怪達の夜はまだ続く。

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□月#日 晴れ 紅美鈴

 竹林を放浪中、蓬莱人と出会う。
 お嬢様と咲夜さんから聞かされていた印象と違い、フランクな人だった。
 死なない人間だというので、土下座したら食べさせてくれるだろうか?

 いや、なんて恐ろしい想像をしているんだろうか私は。
 今は一緒に、夜雀の屋台に来ている。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「見かけない顔だね。でも竹林で人間を襲うのはやめてもらえるかな? 私の庭で人間に死なれると夢見が悪いんだよ」

今日も今日とてあてもなく、竹林をぶらぶらしていると、後ろから急に声がかかった。
振り向けばそこには、符をちらつかせながら威圧をする人間の少女。
並みの妖怪ならそれだけで尻尾を巻いて逃げ出すだろう、圧倒的な存在感を醸し出していた。
敵意はないことと、名前を伝えると彼女――藤原妹紅はようやく符をポケットへしまった。

「なんだ、吸血鬼のお嬢様と銀髪のメイドの連れだったか」

いやはや悪いね、とポンポン肩を叩いてくる彼女、いやにフレンドリーなところが少し気になるけれど。

「実はあんたのご主人様から使い魔が来てね、紅美鈴っていう妖怪を見かけたら慧音のところに連れていけって言われてたんだよ。
 外見聞いてなかったのは失敗だったな。といってもさ、慧音は私と違って忙しくって・・・・・・。でも明日なら大丈夫かな」

輝夜の奴も最近大人しいし、とマシンガントークで話す妹紅さん。
初対面にはもっと硬い人だと勝手に思っていたけれど、とってもフランクな人だった
ちょっと拍子抜け。

「そうだね、私は変わった」
「え?」
「そんな顔でじっと見られてたら、誰だってわかる。女の子の勘をなめちゃいけないよ」
「はぁ」
「幻想郷はさー、いいところだよ」

そういって背筋を伸ばす妹紅さん。

「こんな私にも友達が出来たし、仇敵もいるから暇つぶしもできる、楽園だ」

永遠のときを過ごすという蓬莱人、彼女にも人には言えぬ過去があるのだろう。
それを聞くつもりはないけれど、遠い目でどこかを見つめる姿を見ていると、どこか哀愁のようなものが漂っている。

「あんただって、手放したくないものがあるんだろう?」
「手放したくない、ものですか・・・・・・。そうですね、紅魔館のみんなは大好きですし、大切で守りたい家族です」
「ほら、それだけでも十分じゃないか」

ニッコリ微笑む妹紅さん。

「だから、そんな辛気臭い顔はやめなってば、あんたの帰りを待っている奴がいるんだろう」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



□月$日 晴れ 紅美鈴

 ハクタク、上白沢慧音と会う日。


妹紅さんと夜雀の屋台で飲み明かした。
飲んでる最中、宴会芸の話題になり、お互い自信のある隠し芸を披露しあった。
店主は店主で機嫌よく、即興で作った歌を歌ってくれた。
久しぶりに楽しい時間を過ごせた。
ハクタクの家は人間の里の中ではなく、少し離れた場所に構えているらしい。 
それを聞いて安心した。人間には会いたくない気分だから。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「慧音―」

片手をポケットに突っ込みながら扉を叩く妹紅さん、私は知らなかったけれど、二人は仲のよい友人なのだろう。
しかし、家主は一向に表れる気配がない。

「おかしいなぁ、今日は寺子屋もないし1日中家にいると思ったんだけど・・・・・・」

ため息をつく妹紅さん。
お嬢様は一体、ワーハクタクに何をさせようと思っていたのだろうか。

レミリアお嬢様の顔を3秒ほど宙に浮かせてみたけれど、尊い方の考えることは下賎のものにはわからないのであります。

「わざわざ足を運んでもらったけど、これじゃあ仕方ないなぁ。暇だったら永遠亭にでも顔を出してみるかい?」
「あなたと永遠亭の関係ぐらい、私だって知ってますよ」

苦笑しながら返事を返すと、そりゃ残念、と悪戯っぽく笑う妹紅さん。
しかし、出鼻を挫かれたとはこのことだ。どうしよう。

「おや、珍しいな、妹紅が誰かを連れてくるなんて。一体どういう風の吹き回しだ?」
「あ、慧音! どこいってたんだよ、せっかくお客さんを連れてきたっていうのにさ」
「いやいや、ちょっと買出しに出てたんだ。それでお客さんっていうのはそこの妖怪さんか?」
「紅美鈴です、よろしく」

直接の面識はないので、ぺこりとお辞儀ついでに自己紹介を済ませる。

「どうも、上白沢慧音だ、慧音でいい。しかし聞いたとおり、腰が低いんだな。
 まぁ立ち話もなんだから上がって上がって。
 まぁロクなものは出せないが」

聞いた、通り?
少し引っかかる言い方だけれどあまり気にすることでもないだろう。
お邪魔しますと一応声をかけ、家へと上がらせてもらった。

「まぁ適当にくつろいでいてくれ、妹紅、ちょっと火を起こすのを手伝ってくれないか」
「はいはい、まったく慧音は人使い荒いんだからさー」

通された部屋には書類や書物がうずたかく積まれていた。
あまり本を読む性質ではないが、ここまで積まれていると気になるっちゃ気になる。
しかし主人の許可なく触るのも失礼だ、結局待ってる間は、座布団のうえにちょこんと座ってるぐらいしかすることがない。。

ほどなくして戻ってくる二人。

「はい、お茶」
「あ、ありがとうございます妹紅さん」

会釈を返してお茶をすする、うん、美味しい。

「ここ、凄いだろ? 片付けとけっていつも言ってるんだけどな」
「こら、お客さんに変なことを言うんじゃない」

ケラケラ笑うだけで反省のない妹紅さんにため息をつく慧音さん。

「すまないな、散らかっていて。少し調べ物をしていたんだ」
「いえお構いなく」

部屋の惨状、もとい本の山を見て、紅魔館の大図書館を思い出した。
いつになったら紅魔館に帰れるんだろう・・・・・・・。

「それで、紅美鈴」
「はい?」

じぃっとねめつけるようにみてくる慧音さん、な、なんだろう一体。

「大体、事情は伺っている。人間を食わなければいけないそうだな」
「はぁ・・・・・・」
「私の立場から言えば、それを許すわけにはいかないんだが・・・・・・、まぁ一つ、話を聞いてくれないか」

人間の里を守っているんだから、許すわけにはいかないよなぁ・・・・・・。当然。
妹紅さんは私の困った表情を見てニヤニヤしていた。何この人。

「あー、いいか? 傷口に塩を塗りこむようなことになりそうで申し訳ないんだが。
 紅美鈴、君は八雲紫に存在が曖昧だと言われたな?」
「はぁ、言われました」
「曖昧の表現として近いのがこの妹紅だ」
「ふぇっ?!」

自分に話題が及ばないだろうと、茶菓子をもくもくと食っていた妹紅さん。
突如話題に上げられたことでびっくりしたのか喉に茶菓子を詰まらせ苦しそうにしていた。
蓬莱人だし大丈夫だろう。ああ、私のお茶飲んでるよこの人。何この人。

「人間から別の存在になる方法というのは何個かある。妹紅のように蓬莱の薬を飲むだとか。
 アリス・マーガトロイドのように、人間から魔女になるとかな。
 あとは世を捨て、修行に励み仙人へと至ることだ」

まぁどれもあまり現実的ではないのだが。と一呼吸置く。
その横で、妹紅さんは喉のつかえが取れたのか、ぷはーと大きく息を吐いていた。
のんきだなぁ。

「私も妖怪とのハーフなのだが、寿命は人間のそれを遥かに越えている、我々の共通点は人間の部分が混ざっているということだな」

はて?要領を得ない。一体何が言いたいのだろう。
妹紅さんは暇そうにしていた、露骨に。

「失礼ながら、君の歴史を読み解かせてもらった。いまの君は・・・・・・、体は完全に妖怪のそれだが、精神はその限りではない。
 妖怪の体に人間の精神が同居している状態だな。妖怪は憧れだった人間を食い、その生き方を受け入れた。
 人間は長い寿命に憧れ、それができ ないとわかると、自分の意思を妖怪へと託そうとした。外法によってな。
 人間――紅美鈴は、天才ゆえに人間の限界にたどり着いてしまった。
 その彼女が次のステップに至るために選んだ方法というのが、妖怪の体を 乗っ取る、ということだった。
 しかし、そこで不測の事態が起きた。紅美鈴は食われる直前に後悔を残してしまった。
 妖怪から町を守れなかったという後悔をね。その強い思いが一番に引き継がれ、彼女の望む結果にはならなかった」

そういって、お茶をすする、まだ話は続くらしい。

「そう、自らの意思を継いだ妖怪になるという結果に。乗っ取りをかけられた妖怪は、誰かを守るという気持ちを強く受け継いだ。
 結局、元の紅美鈴とは似ても似つかない性格の妖怪になったんだ。
 それが、今の君、妖怪の紅美鈴だ。皮肉な話だ、彼女の性格がもっと傲慢であれば、それは成功していただろうに・・・・・・」

おほん、と咳払いをひとつ。

「あー、妹紅、興味がないなら寝ててもいいぞ。
 うん。そしてだな、今まさに、君は体は妖怪、精神はまるっきり人間になろうとしているんだ。
 半人、と言うべき存在か? そして今まさに乗っ取られようとしている妖怪の精神は激しく抵抗をしている。それが食人衝動だ」

妹紅さんは、寝てもいいという許しが出た瞬間船を漕ぎ出した。
今頃川下りの夢でも見ていることだろう。

「妖怪部分は自らを存続させるためにその衝動を引き起こしているのではなく、妖怪の本懐を遂げて消え去りたい、みたいだな」

寝ている妹紅さんの長い髪を弄くって次の言葉を捜しているそぶりを見せる。
しばらく考えて、ようやく紡ぎだした答え。

「今、君の中の妖怪・・・・・・つまり、人間の紅美鈴に憧れていた部分というのは死のうとしている。
 その死を乗り越えれば、人間の精神構造を持った妖怪として、独り立ちできるだろうな。
 今でも君を縛る、守りたいという衝動、町を守ったことで果たされた約束なんだが、それからも開放されるだろう」

だが――と前置きをする慧音さん、下唇を血が出るほどにかみ締めてようやく口を開く。

「私は人間を守る。妖怪のために殺されようとする人間がいるならば、それを守るのが私の使命だ。
 守るべき存在を食わせてくれと言われて、差し出すほど私はお人好しじゃない」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



□月□日 晴れ 紅美鈴

 妹紅さんとケンカした。
 和解した後、我が道をゆくことを決める。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



万策尽きた、とはこのことで。
妹紅さんから永遠亭の薬師を紹介されたが、なんともしがたい表情をされた挙句。

「廃人になれる薬なら出せるけど・・・・・・」

なんて頬に手を当てながら言われた。
それでどうしろっていうんだ、これだから天才は困るんだ。

そういえば紅魔館にもいたなぁ、よくわからないことを実験と称してやらかす困ったさんが。
たぶん、天才と呼ぶに相応しい彼女だけど、彼女ほど尊敬に値しない人もいない。

けど、迷惑をかけられても後片付けを丸投げされても私は彼女が大好きだ。
思い出すついでに、パチュリー様の顔を宙に浮かべてみた。
帰りたいなぁ紅魔館。

永遠亭を出てすぐ、ウサ耳にワンピースの子供を見かけた、会釈をしたのだが、何やら不幸な人を見る目で見られた。
門の前で待っててもらった妹紅さんいわく、人を幸運にする程度の能力を持った妖怪ウサギらしい。
でも不幸な人を見る目で見てたよ、何あの目。



永遠亭から妹紅さんの家へと戻る道中
――ここしばらく私は、妹紅さんの家へと厄介になっていた。
期限まではもう1週間を切ろうとしているが、これといった良策が見つからない。

「なぁ、美鈴」

突然妹紅さんが振り返った、いつになく真剣な顔をしている。

「なんですか?」
「私を食べてみるか?」
「それじゃあ意味がないって言われましたよ」

いつだかの日記にも、妹紅さんを食べたらどうにかなるのではと書いていたが、実際どうにもならないらしい。
元は人間だったけれど、既に人であることを止めているのでどうしようもない、らしい。
永遠亭の薬師にあったときそういっていた。

「でも、やってみなきゃわからないことだってあるじゃない?」
「いや、それでも私は・・・・・・生き返るとわかっていても、妹紅さんを殺したくはないです」
「まぁ、私だって死にたくはないさ」

でも、と前置きしたうえで。

「美鈴、あんたがこのまま死んだら悲しいんだよ」
「私が死んだら、ですか」

あと1週間、何もせずにいたら紫の死神がやってくるだろう。
私が死んだら、お嬢様は、妹様は、咲夜さんは、パチュリー様は
紅魔館のみんなは悲しんでくれるだろうか。

「私は悲しいよ、せっかく友達になれたのにすぐにお別れじゃぁ・・・・・・。
 いくら私が永遠に生きれるっていってもさ、今を過ごす仲間がいなければ退屈で、寂しいんだよ」
「はぁ」
「慧音が聞いたら怒るだろうけど、私はあんたに人間を食って欲しいと思ってる。
 ここじゃ・・・・・・いや、私がまだ人間だった頃はそうだった。妖怪は人間を襲って食べるものだった。
 自分のために人間を犠牲にするだなんてできない、そうあんたは思うだろうけどさ。
 人間だって他の動物を糧にして生きてるんだよ。
 生きるためには、それは避けられないことだろう」

淡々とした口調で語る妹紅。

「それでも、私に人間を食べる勇気はないんです。それに私は怖いんです、自分が誰なのかが私はわからない。
 ちょっと前までは、単なる妖怪の紅美鈴だと思っていました。
 ですが、私は人間の精神を孕まされた名も無き妖怪だったっていうじゃないですか」
「父からもらった頑健な体と、母から貰った理性ある心。それがあんたじゃないのか?」
「どうして・・・・・。そんな都合のいい解釈ができるんですか?」

私は妹紅さんの言葉に語気を強めて反論した。
というよりも、聞いていたのか。てっきり寝ているとばかり思っていた。

「今のあんたは、名も無き妖怪でも、人間の紅美鈴でもない存在。
 人間の心を持った妖怪、紅美鈴だろう? 道は一つ、食うか、死ぬかだ、あんたが人間を食う気がないのなら。
 今ここで燃やされるかい? 今でもあとでも死ぬのは変わらないだろう」

ぼぅっと妹紅さんの背に炎の羽根が重なる。

「もう一度言う、私はあんたに死んでもらいたくはないんだ」
「・・・・・・どうして、どうしてですか? 妹紅さんは元は人間だったじゃないですか。
 なのに、なのにどうして私に人間を食えという選択肢を突きつけることができるんです」
「今の私は、人間じゃない、妖怪でもない。その立場から、理を言っているだけさ。
 人間は妖怪に食われるものなんだってね」

ああ、と呟き、何か思い出したような顔をする妹紅。

「そういえば、人間の精神が、妖怪の心を食い殺そうとしているんだって?面白いな、まったく逆じゃないか」

瞬間、私は地を蹴ることに全身全霊の力を込め、彼女へと肉薄した。

「あなたに、私の、何がわかるっていうんです!」

彼女の顔面へと、体重を思いっきり込めた拳を繰り出す。
思わず手加減を忘れたその拳は、私が思っている以上に早い速度でその顔面を打ちぬいた。



「あいててて、いやほんと、蓬莱の薬飲んでてよかった」
「すみません・・・・・・ついカッとなって」
「まぁ挑発したのは私だからね、でもよかった。怒ったのは生きることに執着してる部分があるからだろう
 達観するのは、全てが終わるそのときでいい。生きてる間は何をしてでも生き延びれるように足掻けってね」

そういって私に笑いかける妹紅さん。
蓬莱人はすごい、見事なまでの即死だったはずなのに、次の瞬間には元通りに戻っていた。

「で、あんたはどうするんだい、人間を食って生き延びるか、命を絶つことにするのか」
「3つ目の選択肢はないんですかね、できれば私が死なない方法で」
「さあ、慧音も永琳も、それにこの間私のところにきたあの胡散臭い・・・・・・。
 思い出した、八雲紫って奴にもわからないんだろう? 
 もちろん私にだって見当はつかないな」
「なんだか、疲れちゃいましたよ、私」

そういって力なく笑いかける。
ここ3週間ずっと、死ぬか食うか二つに一つの選択肢を突きつけられているおかげで気力が萎えてきた。
ここまで私が悩む理由って言えば。

「私が妖怪でありながら、人間の精神、価値観を引き継いじゃってるからなんだよなぁ」

もしかしたら、人間を食べて妖怪の部分を消したとしても。
それは新たな地獄の始まりなのかもしれないなとちょっぴり思う。

「まさに、ボーダーオブライフって奴だね。ようこそ永遠の地獄へ」
「まさか、私の寿命は無限じゃないですよ、永遠にギャップに苦しむ必要なんてありません」
「それなら私よりもずいぶんとマシじゃないか」
「違いないです」

そういってケタケタと笑う妹紅さん。
この人は、私なんかよりもずっと強い。

「で、行くのか?」
「あと1週間しかないですし、私は私の思う道を行きます」
「そうかぃ、また一緒にお酒が飲めるといいな」

片手をポケットへ突っ込んだまま、どこか気だるげに手を振る妹紅さん。
この人と友人になれて、本当によかったと思う。

「では、またお会いしましょう」

私は彼女と、竹林に瀬を向け、当てもなく歩き始めた。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


□月X日 雨 紅美鈴

 そして私は人を食う。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





その日はしとしとと雨が降る日だった。
約束の期日まではあと3日。
最近は夢の中にまであの言葉が出てくるようになった、我慢できずに人間を襲い、喰らう私。
一人喰らって飽き足らず、次から次へと人間を襲っていく私。
そもそも、一人を殺せば済むだなんて都合がいい話はあるのだろうか?
ギリギリの精神状態を、綱渡りのような危うさで私は保っていた。

昨日は木の根元で野宿をした。我が道を行く、と宣言したはいいものの。
臆病な私には、自らの為に誰かを犠牲にする――
普段魚やそれ以外の動物は口にしているというのに、人間をその糧にすることができずにいる。
そして今、その場から離れる気力もなく、ただただ物思いにふけっているのだった。

「私は、人間?」

すべすべの手を握ってみる。それは人間の手となんら変わりはないと思う。

「私は、妖怪?」

人間の限界というものを軽く凌駕する力、異能を私は身につけている。
けれど、人を喰らうという選択肢を私はもてないでいた。

「結局、どっち付かずの半端ものじゃないか、私は」

しとしとと降る雨の中に、涙のしずくを混ぜてみた。
それは雨のしずくと混ざり、土へと染み込んでいくことだろう。

「お姉・・・・・・ちゃん?」

唐突に声をかけられる、顔を上げれば、一月も前に出会った少女、母と子で仲睦まじげにしていたあの子供が立っていた。

「やっぱり、そんなところで何をしてるの? 風邪、引いちゃうよ?」
「・・・・・・こんな雨の中一人で何をしているの?」

質問を質問で返すのは間抜けよ、と咲夜さんが前に言っていた。
けれど、ずぶ濡れのドブネズミのような私を見れば、大体どんな状況かは見当はつくだろうと思い、私は質問で返答をした。

「あのね、お母さんがね、妖怪に殺されちゃったの」

淡々と語る少女、彼女の顔には水滴が流れている。
涙なのか、雨の雫なのか。

「私の目の前でね、妖怪に食べられちゃったの。私だけが、私だけが助かったんだよ」

私と同じように、ずぶ濡れのドブネズミのようになった少女はさらに語る。

「お父さんも、お母さんも食べられちゃった。どうすればいいの? どうすればいいかわからないの」

ワーハクタク、上白沢慧音の守れる範囲というのは人間の里に限られている。
そこから離れて住んでいた親子というのは格好の獲物だったのだろう。
さらに、少女は言葉を紡ぐ。

「お母さん、お父さんが死んでからずっと花売りのお仕事をしてたの、そうでもしないとご飯が食べれないって」

何故二人が人間の里から離れていたかの理由がわかった。
里の中ではもう、生きてはいけない母と子だったのだ。

「私も、私もお父さんとお母さんのところに行きたいな」

ふと、死神の言っていた言葉を思い出す。
自分で死を選んだ人間は、たいてい三途の川を渡りきることができないって。

「もう、ご飯も何日も食べていないし、歩き疲れちゃった」

きっと彼女は、人間の里へと助けを求めたに違いない。
しかし、花売りの子というだけで彼女は迫害され、絶望を抱えたまま歩いてきたのだろう。

『三途の川を渡りきるにはね、生前誰かから想われた気持ちが必要なんだ。
 それが渡し賃になり、死神は船を漕ぐってね』

いつだったか死神が言っていた言葉がフラッシュバックする。
彼女は今死ねば、三途の川を渡りきることができるのだろうか?

「ねえ、妖怪さん。あなたは人間を食べる妖怪?」

彼女の目に光はない。あるのは深い深い絶望の色。

「私は・・・・・・そう、人間を食べる悪い妖怪だよ」
「そう、なら私を食べてよ」

傍目から見ても彼女は衰弱していた。飲み食いもロクにせず、当てもなく歩き通していたのだろうか。
そしてトドメとばかりに勢いを増してきた雨が僅かばかり残った体力を奪い去ろうとしていた。
私が手を下さずとも、このままなら彼女は死ぬ、これは間違いない。
彼女を助けようとすれば、もしかしたら助かるかもしれない。
上白沢慧音のところへと今から急げば、この子を引き取ってくれるかもしれない。

だが、私の中の、人間が叫ぶのだ。
『死にたくないなら、その子を喰らえばいい、幸い同意のうえじゃないか』って。
死にたくないって、人間の心が叫んでいる。滑稽だ。
妖怪の心を満足させるために人間を食べなきゃいけない、そのために人間の心が人間を食えと急き立てるのだ。

私は今までで一番情けない顔をしていたと思う、嗚咽と、言葉にならない言葉が一緒に出た。
少女は、覚悟を決めたように一歩一歩私に近づいてくる。
せめて、せめて。

「せめて、私のこの思いが、あなたを天国へと連れていくことができれば」

私は、彼女の小さな体を抱きしめ、痛みを感じないよう、気の操作で静かに心臓を止めた。



少女の味は、遠い日に食べた人間と同じ味がした。









――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



□月弗日 晴れ 紅美鈴

 紅魔館へと戻る。

 お嬢様へこの度の事を報告すると、ただ一言だけ、「そう」とだけ言っていた。

 疲れた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――







「美鈴」

お嬢様への報告を済ませ、廊下へと出ると咲夜さんが待っていた。

「お帰りなさい、美鈴」

そういうと、咲夜さんはお嬢様の部屋へ入っていく。
ただ、それだけ。

「ただいま、咲夜さん」












エピローグ




「美鈴、また仕事中に居眠りしたわね」
「ご、ごめんなさい咲夜さん。ほら、今日は天気がよくってついついウトウトしちゃって・・・・・・」
「まぁ、最近は魔理沙も撃退出来てるみたいだし、あまり強く言わないけれど・・・・・・。
 そう、魔理沙のことなんだけどたまには門を通してあげて、パチュリー様が寂しがるわ」
「は、はい!」
「まったく美鈴ったら、1ヶ月ふらっとどこかへ行ってきたと思ったら急に強くなるんだものね。
 どこか山奥でも篭って修行でもしてきたの?」

あの1ヶ月のことは、いまだに咲夜さんには伝えていない。
それでも、いつか話せる日がくるだろう。

「じゃ、私は仕事に戻るから」

そういって姿を消す咲夜さん、時間を止めて館へ戻ったのだろうか?
私は、また物思いにふけることにした。
この門番という仕事自体、遠い昔の私が志願して始めたものだった。
目的もなく彷徨ううち、抑えきれなくなった感情。

「誰かを守りたい」

これを満たすため、あるときはさる王の、またあるときは大商人を、またあるときはキャラバンを守り、砂漠を旅した。
私はそのとき、人間のフリをしていた。けれど、成長しない私は同じところには留まれない。

長い旅路のすえ、ようやく辿りついたのがレミリアお嬢様のところだった。
あなたの盾にしてくれと頼みこんだとき、レミリアお嬢様は今よりも少しだけ小さくて、今より少しだけ傲慢だった。

「その身を滅ぼしても私に仕えなさい。あなたの命は私のもの、私の許可なく死ぬことは許さないわ」

あの雨の中、私を突き動かした感情とはなんだったのだろう?
あれ以来、人を食べたいと思うことはなくなった。

あの日、あの時、少女を喰らってでも生きようと誓ったのは、生きるための本能?
レミリアお嬢様との約束?それとも、彼女の生きた証を留めるため?

「人間はね、平気で他者に重しを乗せる。その相手がたとえ妖怪であってもね。
 あなたが食べることを選択するのなら、それを忘れちゃいけないよ」

同じ、人食い妖怪だったルーミアの言葉が蘇る。
いつか、言葉の真意を聞ける日がくるだろうか?

「そこの中国妖怪-っ! 今日こそはぶった押してそこを通るからなーっ!」

おっと、また五月蝿いお客さんがやってきた。
パチュリー様の言葉もあることだし、今日は負けてあげようかな。

「あんたを通すと私が怒られるの! 少しは配慮しろー!」

さて、これから始まる、ボーダーオブライフをどう過ごしていこうか?










おまけ




「紫様」
「なぁに、藍」
「私には解せません。何故レミリア・スカーレットほどのものが、あのような妖怪のために?」
「それは何? レミリアが私に頭を下げて協力を請うたこと?
 それとも使い魔を幻想郷のいたるところにばら撒いて、紅美鈴を助けようとしたこと?」
「両方ともです。レミリアは、面子を何よりも大事にします。
 あの妖怪のためだけに、自ら出向いて頭を下げるなど私には考えられないのですが」
「藍」

言葉と同時に振り下ろされる日傘。

「あだっ、な、何をするんですか紫様」
「そんな風だから、あなたは人間味がないって言われるのよ」
「は、はぁ・・・・・・」
「だからこそ、私を動かすことができたんじゃない」
「はい?」
「レミリアは愚かではないわ。家族のために体を張れる、誇り高き王よ」

家族、という言葉に耳をピンと立てる藍。

「では、レミリアはあの取るに足らない妖怪を家族の一員と認めているのですか?」
「決まってるじゃない、あなたが橙を気にかけてるのとおんなじよ」
「つまり?」
「つまり、レミリアにとっては紅美鈴もあのメイドも妹も、守るべき家族であり、子供のようなものってことよ」
「はぁ、つまりレミリアは家族のためならプライドを捨てることができるんですね」
「私も、藍がそういうことになったら全力を尽くすわよ?」

あなたほどの式を作るのは骨ですもの。
そういって妖艶に笑う紫。

「しかし、紫様が境界を弄ってやればそれで済む話だったのでは?」

言った瞬間に、日傘が落ちてくる。

「あだっ! な、なんですか紫様」
「それじゃあ意味がないのよ、自分で立ち上がろうとしているのに、
 親が立たせてあげちゃぁその子のためにならないじゃない。
 ああ、神様、私は藍の教育を間違えたようですオヨヨヨヨ」
「やめてください紫様、不気味です。特に後半が」

今日三度目のお仕置きタイム。


「なぁ、慧音」
「なんだ妹紅」
「美鈴は、人間を食べたらしいな」
「知っている」
「なんで止めなかったんだ?」

パタンと、読んでいた本を閉じる慧音。

「私は、出来る範囲のことは精一杯やっているよ。
 妹紅、おやつにしようか」
「あいよ」





「はぁ、美鈴こないかしら」

縁側でお茶を啜る霊夢。
居間には額縁に入ったお札が飾られていた。







<了>
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コメント



0.6750簡易評価
1.90名前が無い程度の能力削除
素晴らしい作品でした。
7.90名前が無い程度の能力削除
これはまた素敵な美鈴話。
少女の両親食べた妖怪笑いながらぶち殺すくらいの描写があると前後の緩急が際立ったかなあと思いますが。
あと、ワーハクタクはハーフではなく後天性らしいのでそこだけちょっと。

おいしいおはなしごちそうさまでした。
8.無評価電気羊削除
げ、やっぱり突っ込まれた。慧音のワーハクタクになった理由が曖昧妹紅なんでぼやかしたけど
後天性って設定になってるし言い切っておいたほうがよかったですね。

妖怪はどうなんですかね、ブチ殺したんですかね。ちなみに前編で追い払った美鈴が追い払った妖怪が犯人でs。
13.100名前が無い程度の能力削除
今、門前にて彼女は何を思うのか。

それはそうと↓コメントの「曖昧妹紅」吹いた。
14.90名前が無い程度の能力削除
実に面白かったです、次の作品を期待してます。
16.70名前が無い程度の能力削除
美鈴さんの中でどんな結論が出たのかよく分からなかった
なんともケチが付いてしまったように思える
17.無評価電気羊削除
たぶん、美鈴の中で結論は出てないですね。
自分が生きたいがために人間を喰らうって判断は人間らしい判断だと思います。妖怪としての本能はそこにはなかったんですね。
美鈴はこれから、人間と妖としてのギャップと、自らの糧にした少女への思いで苦しんでくんじゃないでしょうか。
ルーミアさん的に言えば、重しを載せられちゃったんですね、それがボーダーオブライフということで。

納得いかないところがあるのに、70点という高得点まで頂いてびっくりしてます。ありがとうございました。
20.90名前が無い程度の能力削除
良いめーりんでした。
22.90名前が無い程度の能力削除
こういう闇サイドの話をここまで纏められるのって羨ましい。
細かい内容に関しても↓の補足コメで全てすっきりしました。

ところで曖昧妹紅、某妹紅好き発情祭絵師さんも同じネタ言ってましたね。
曖昧模糊すら知らなかった自分が居ます(ガッ
23.40名前が無い程度の能力削除
>>守りたいという衝動、町を守ったことで果たされた約束
これは妖怪と人間、どっちの美鈴がした約束なんだ?
それだけが気になった。
24.無評価電気羊削除
暇なんで即返します。
約束とは町を守れなかった人間紅美鈴の後悔のことを指しますです。
つまり、約束自体は即果たされてるんです、美鈴ちんは仇の妖怪は惨殺したので。

しかし、妖怪部分が守りたいという衝動を強く引継いじゃいました。
「誰かを守る」という漠然とした思いが、妖怪紅美鈴をずーっと縛っていたんですね。
なので美鈴は後々、門番に志願しました。

美鈴の妖怪の部分が、頑なに約束を果たそうと思っていたと思ってください。
裏設定というのもなんですが、美鈴を門番として縛る鎖は妖怪部分と一緒に消え去りました。

代わりに、生きるために殺さざるおえなかった少女が、美鈴を縛る新たな業です。
下でも言ってますが、少女が死んだ理由の遠因が美鈴にあります。
前編で母子を助けたとき、妖怪にトドメをさしていれば
母子はまだ生きていられたんじゃないでしょうかね~。
26.100名前が無い程度の能力削除
感想としては面白い、という言葉では軽すぎる
しかしつまらないわけではない
読み終えた後にいろいろと考えさせられる作品でした。
次回作も期待しています
27.90名前が無い程度の能力削除
最後の一行で吹いた。
勿論本編も面白かったよ。
29.90名前が無い程度の能力削除
各々が人妖のありかたに対し考えを持つ中で、ただ一人変わらず暢気な霊夢。
微笑ましくも、なんとなく恐ろしさを感じました。
人間臭い美鈴の物語のラストに人間離れしまくってる巫女をもってきたセンスに感服です。
30.70名前が無い程度の能力削除
美しい物語でした。

ですが、天国……?
31.無評価電気羊削除
三途の川を渡れれば、だと格好もつきませんしね。
32.無評価電気羊削除
って今気づいた! 幻想郷って天国満杯なんだっけ・・・・・・orz
花のテキスト読みなおしてきます
33.100名前が無い程度の能力削除
これまでにない美鈴考察。素晴らしい一品でした。
とりわけ良かったのが、この話のキーワードとも言えるルーミアの一言。
あの一言だけで一本話が作れそうなくらい想像力をかきたてられました。
鳥肌。
ルーミアはきっとやればできる子なんです。決してアホの子じゃないっ!w
34.100名前が無い程度の能力削除
実に面白かったです。美鈴を扱ったSSは数在れど、今作のような捕らえ方をされているのは初めてではないでしょうか。
お嬢様の「あなたの命は私のもの」この台詞に奮えました。
37.80三文字削除
ルーミアの言葉が深いなぁ。
少女が残した重しは、美鈴の中でどのような重さになっていくのか……
その辺りを考えるのも面白いです。
41.50名前が無い程度の能力削除
まあそういう話だと言われればそれまで何ですがそれでもやはり美鈴自身の決断が欲しかったなあと思う。
自身で決断して命を奪った訳ではない美鈴が(どう見ても状況がそれをさせているので)、この後少女の重しをを背負っていけるかの部分にかなり疑問が……このままではつぶれてしまう気がする…………勝手を言えば続編希望です。
42.無評価電気羊削除
そうですね、潰れるかもしれません、美鈴は。
妖怪は精神が死んじゃうとヤバいので、美鈴どうなるんでしょうね~。

でも、彼女の周りには人が集まってくるでしょうし
これから段々と向き合っていくんじゃないでしょうかね
43.100☆月柳☆削除
前半部分でレミリアが、美鈴に人を食べろと言ったところから、自分は美鈴は人は食べないだろうな、と思いつつ話を読み進めてました。
だから、日記部分の「そして私は人を食う」の部分でうけた衝撃はとてつもないもので、どう表していいのか分からなかったくらいです。
どうやら自分は、美鈴は人を食べない、食べたことすらない、それくらいの勢いでキャラ設定が染みこんでいるようです。
なかなかに感慨深い作品でした。
45.90名前が無い程度の能力削除
喰う喰われるの作品を読むと、東方のかわいく陽気な世界の裏には必ずこのようなダークサイドな話があることを思い知らされます。
初めは理解できなかったルーミアの言葉、いいアクセントになっていますね。
57.100名前が無い程度の能力削除
ただ一言

深くていい作品でした
67.100名前が無い程度の能力削除
ファンになって、原点見に来ました。やっぱすげ
71.無評価とりもなー削除
私は人間なので創作と分かっていても人外が人間を食う事を許容できないですね
人外から食われるのも食人という共食いもどっちも嫌です。
半獣も冷たいルールの中で人間達を護っているだけで、枠から零れた者には傍観に徹してるんだなぁと
全てを護れるなんて出来ないと分かっていても嫌な気持ちになりました。

幻想郷は弱肉強食、妖怪である紫が実質仕切っているこの世界は人間にとって天下太平になりえない
それが悪い事ばかりではないのも分かりますが。

色々書きましたが興味深い作品でした。
また貴方の作品を読みたいと思うほどには。
76.無評価電気羊削除
いまさら気づきました。

えーと・・・・・・ありがとうございます、すごく、嬉しいです。
87.100名前が無い程度の能力削除
お話を読ませて頂いて泣きました。
主人公を美鈴とされたことは,個人的な感情から言わせていただければ無慈悲だと感じました。
ただ美鈴が選択の一つとして自殺を考えたという場面が私にとっての救いでした。

ですが,ですが,感情を横に置いて考えてみれば美鈴も妖怪なんですよね。
妖怪には妖怪の性があり,そして幻想郷はこっちの世界のように食物連鎖の階層のトップが
人間ではなく,その上に更には妖怪がいるという構造なんですね。
もし喰わねば生存できないとなれば,全く是非もない。
そのことは慧音も理解していたのでしょう。
お話としては,もっともっと生への執着としての人間を食らう葛藤が描かれていれば,
この点が活きたように感じます。

最後に厳然とした階層にあって,お互いが何の利害もなく過ごす事はできない。
そんな本来の自然界の厳しさというか,本質に触れたような気がします。
いろいろと考えさせられる深い話を本当にありがとうございました。
94.無評価ニッコウ削除
感動した。

ここの美鈴が自分の中の基本設定になった。
96.100名前が無い程度の能力削除
美鈴の食料は紅魔館から支給されてるらしいから、
きっと妹様がきゅっ☆ミってしちゃった(可愛く言ってもダメですねすいません
アレの処理とかしてるんじゃなかろうかとか妄想してましたがこの話を読んで目から鱗。
こういう発想もアリですね。

あとるみゃのキャラがすごく良かったです。
99.100名前が無い程度の能力削除
人間よりも人間らしい美鈴が大好きです。
一言で言わさせて貰うと面白かったです。
この物語を読ませて頂いて有難う御座いました。
105.100名前が無い程度の能力削除
深い・・・。
貴方の中の素晴らしき幻想郷が垣間見えました。
結局人の気持ちを・・・という生き方。
そんな美鈴が大好きです。
116.100名前が無い程度の能力削除
美鈴は過去を持った上で今の紅魔館にいるんだというのが自分の美鈴観でして、そこを掘り下げて深く考えさせてくれました。

嫁はパチェだが本当に好きなのは美鈴かもしれない、そう思う今日この頃。
118.100名前が無い程度の能力削除
静かで、堅く、濃い話でした。
最後の慧音のセリフが、個人的には一番きましたね。
122.90名前が無い程度の能力削除
けーね先生について>7様と同意見です。疑問点はそれだけ。
ところで遠い目のルーミアはEXルーミアの名残でしょうかねぇ…
134.90賢者になる程度の能力削除
美鈴の葛藤が良かったなと。
ただ美鈴が暴れただけで幻想郷壊滅はちょっと…

慧音も少女を助けられないって解ってたんですかね。
149.100名前が無い程度の能力削除
深く考えさせられる作品でした。妖怪なのに人を食べる事を割り切れない美鈴の葛藤やルーミアの深い一言がすごく心にきました。

素晴らしい作品を読まして頂きありがとうございました
152.100名前が無い程度の能力削除
紅美鈴! 深いことほ言えませんがいい話でした。
160.100名前が無い程度の能力削除
良い物語でした。ありがとうございます。
161.100名前が無い程度の能力削除
とてもおもしろかったです。
花売りを対象にしたのが特に良かったと思います。前半とも繋がるし、単なる永遠亭等の医療機関内の安楽死を殺らされるなんてオチを最初に考えてたもんでw より一層の寂しさを残しつつ、その後も人妖の各関係者との後腐れも無い〆で良かったと思います。
この〆かただったからこそ、物語全体も引き締まったなあ、と感動させられました。
素晴らしい作品でした。ありがとうございました。
186.90ろうろく削除
うまい!