Coolier - 新生・東方創想話

欲望

2008/04/06 07:29:08
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「白玉楼に侵入を試みる貴様!今ココで切り捨てる!!」

場所は白玉楼への階段の上のほう。今日も何時もどおり侵入者を撃退して終わるはずだった。しかしその侵入者の姿を見て妖夢は目を疑った。目の前にいるのは小さな子供。

「子供・・・?幽霊じゃあるまい・・・」
「こんばんわ、私」

すると突然弾幕を展開する子供。

「うわっ!?」

とっさに構え、迫り来る玉を切る。そしてこっちからも弾幕を放ち応戦する。
 そして特別大きな弾幕が迫り来る。それを妖夢は真っ二つに切り裂いた。が。その大きさゆえ、視界を全て覆ってしまい子供の姿を見失ってしまった。
 妖夢はとっさに一歩引き、あたりに気を張り巡らせる。紅魔館の門番ほど気を使うことは出来ないが、何処から襲ってくるかぐらいなら分かる。

(・・・上っ!!)

妖夢は剣を振りかぶり上空へと弾幕を放った。

「残念。後ろだよ」
「!?」

ストッ。首元に子供とは思えない力、鮮やかさで手刀を決められる。

(ば、かな・・・気配すら、感じなかった・・・すみ、ません・・・幽々子、さ・・・ま)

薄れていく視界の見えたのは自分の姿だった。

「君を自由にしてあげるよ」

それが気を失う前、最後に聞いた言葉である。









文々。新聞


白玉楼に衝撃走る!!庭師の魂魄 妖夢が失踪!?


今日未明、白玉楼に電撃のような衝撃が走った。この事を聞いた白玉楼の主西行寺 幽々子さん(年齢不詳)はあまりのショックに倒れこんだ。今は意識を取り戻してはいるが、食事がまったく喉を通らないとの事。現在八雲 紫さん(年齢不詳)と八雲藍さんが世話をしている模様。そして西行寺 幽々子さんが倒れた原因はその庭師、魂魄 妖夢さん(やっぱり年齢不詳)にあるようだ。
八雲藍さんに聞いた限りの事を下に書き綴って見ようと思う。

それは何時もの変わらない日常であった。西行寺 幽々子さんがお昼ご飯の時間なのに料理を持ってこない魂魄 妖夢さんを不思議に思い部屋に見に行ってみたとの事。しかし部屋に魂魄 妖夢さんは居なかったらしい。しかし代わりといわんばかりに机の上に手紙があった。
それには、「辞表」と書かれた封筒に手紙が入っていた。その辞表と言う文字を見た瞬間西行寺 幽々子さんは気絶したものと思われる。
 よほどショックが大きかったのであろう。更に後から西行寺 幽々子さんから話を聞くと昨日の晩から様子がおかしかったらしい。昨日の晩に侵入者を撃退しにいって、帰ってきたときからおかしいと言うことに気が付いていたらしい。しかし魂魄 妖夢さんは西行寺 幽々子さんが問いただしても「いえ?何もございませんよ?」とまったく答えを変えなかったらしい。

 手紙の中には以下の分が書き綴られていた。西行寺 幽々子さんより転載の許可が出たので本文を丸々書き写すことに成功した。

西行寺 幽々子様へ。

今日、本日未明を持って白玉楼の庭師、兼、剣術指南役、兼、護衛をやめさせていただきます。今までありがとうございました。

魂魄 妖夢。

と、言うように完全に仕事を辞める意思が見える。今回の文々。新聞だが西行寺 幽々子さんより魂魄 妖夢さんの情報を集めるという条件付きで公開を許してもらうことが出来た。
 なので魂魄 妖夢さんを見つけた、見かけた方がいらっしゃれば記者の射命丸 文まで。
新聞をお届けに来る時お伺いしますのでどうかよろしくお願いします。

著者 射命丸 文

「らしいぜ」
「へぇ」

縁側にすわり悠々とお茶を飲むのが博麗の巫女である霊夢であり、その横で新聞を読みつつお茶を飲むのが魔法使いの霧雨 魔理沙である。

「あの糞まじめな妖夢が辞めるとは考え付かないのだが」
「そうね。まぁなんらかの理由があるにしても紫達が何とかするでしょ。私達の出る幕は無いわ」
「私はちょっと見てこようかな。なんだか波乱の展開が期待できるぜ」
「はいはい。行ってらっしゃい」

そういうと魔理沙は遥か上空の白玉楼へと飛び立った。



少女飛行中...



そして現在白玉楼の階段。

「侵入者よ。今は忙しい帰れ。さもなくば・・・って魔理沙か」
「ああ。そうだぜ。お前が妖夢の代わりか」
「ああ、紫様に頼まれてな。妖夢が自ら幽々子様の下を離れるなど・・・考えられない事なのだが。と、お前は何の用だ?」
「おいおい。ココに来るのに幽々子のお見舞い以外何がある」
「・・・そうだな。失礼した」
「別に気にしてないぜ」

そういうと藍は引き返し、魔理沙もそれへと続く。

「よ、紫。それと幽々子。大丈夫か?」

 白玉楼へと入ると布団で幽々子が寝ていた。その横に紫が座り、その横に魔理沙が腰を下ろす。


「魔理沙。お見舞いに来てくれたんだって?ありがとう。もう大丈夫よ」
「大丈夫じゃないわよ。貴女2日何も食べてないでしょう」
「ほら、お見舞いの品だ。幽々子は何も食べれないと思ってな、ジュースもって来たぜ。ソレを飲めば何か食べれるかもしれないだろ?」
「悪いわね。でも今はいいわ。後で頂くわね」
「おう。りんごだけど勘弁してくれな。それしかなかったんだ」
「りんごは好きよ、ありがとう」
「魔理沙、少し散歩しない?」
「紫からお誘いとは・・・何か裏がありそうだ」
「無いわよ。じゃ藍。ちょっと行ってくるわね」
「はい」

そういうと2人は立ち上がり庭へと出る。庭はまだ妖夢が整備した後が残っており大変綺麗なものとなっている。

「んで?散歩に誘った理由は?まさか私が妖夢をさらったとか言うんじゃないだろうな」
「まさか。あなたが妖夢をさらってたら今頃とっくに白玉楼の住人の仲間入りよ」
「怖いこというな」

幽々子に聞こえないようにに小声へ話す。そしてこの広い庭を2人で歩く。もう完全に幽々子の居る部屋は見えなくなった。

「貴女は妖夢の失踪をどう見る?新聞を読んできたんでしょう?だったら大体新聞の内容どおりよ」

あの天狗が正しい内容を書くなんて明日は赤い雪が降りそうだ。

「どう見る・・・って新聞を読んだ限りでは侵入者撃退の時だろ。妖夢に干渉して何かしでかした、または吹き込んだ」
「よねぇ」
「またはその時本物の妖夢は負けてアレは偽者って事は考えられないか?」
「それはありえないわ。もし偽者なら幽々子が気が付くわ」
「本当か?」
「何年一緒に暮らしてると思ってるの。あなたの年齢の何十倍か」
「そうだな。悪い」
「一応言って置くけど幽々子の前で妖夢の話はタブーよあそこまで元気付けるのにどれだけ苦労したか・・・」
「ソレくらいのデリカシーぐらいは持ってるつもりだぜ」
「助かるわ」
「まぁ。まず妖夢を見つける事が一番先決じゃないか?」
「そうなんだけれど・・・何の情報も無いのよ。だから新聞を使って情報を集めようとしたんだけど・・・あの天狗の新聞なんて何人が見ているやら」
「結構読者は居るぜ?永遠亭メンバーと紅魔館メンバーと慧音と妹紅とあとはアリスぐらいか」
「少ないわね」
「まぁ手書きだしな」
「まぁ情報が無いから何も出来ないってわけよ」
「お前のスキマで一気に見つけられないのか」

紫の能力、境界を操る程度の能力でスキマを開き、妖夢をつれて来れないかと言うことであろう。

「無理ね。私の能力は行く場所が指定されてないと無理なの。だから場所が分からない所にはいけない。簡単に言えば、そうね・・・。ここから神社に行きたい。でも神社の場所がわからない。それでも貴方は神社にたどりつける?」
「なるほどな、無理だぜ」
「あの天狗ぐらい早く飛べれば探すのには手間取らないのだけど・・・」
「ん?待てよ。天狗?」
「どうかしたかしら?」
「あいつに頼んでみたらどうだ。犬走椛」

犬走椛とは千里先まで見通す程度の能力を持ち非常に索敵能力に優れている。

「ああ、そうね。忘れていたわ」
「・・・なんかお前いつもの紫らしくないな」
「そうかしら?気のせいよ」

そうは言っても何時もの紫のキレがない。普段ならとっくに気が付いているはずである。幽々子が倒れ、そのダメージが少なからず紫の思考能力を奪っていた。

「行ってみるか?」
「ええ、行ってみましょうか。何処に住んでるのかしら」
「妖怪の山だな。とりあえず滝の近く」
「じゃあ滝の上にスキマを開くわ」

そういうと紫はスキマを開いた。スキマの向こうからドドドドと言う水が流れ出る音がする。
 魔理沙は持っていた箒へとまたがるとスキマを潜った。紫はそのままで。

「何処に住んでいるのかしら?」
「滝の裏。ちょっと待て」

そういうと滝の横へと回り込み紫を手招きした。その手招きした方向へと紫は飛ぶ。水しぶきが嫌なのか自分の周りに結界を張っていた。

「ほらココだぜ」
「誰!?」
「ニトリか。私だぜ」
「あの時の人間!何の用!?」
「今日はお前に用があってきたんじゃないんだ」

ニトリと椛は滝の後ろで将棋を打っている様であった。

「突然お邪魔して悪いわね」
「お前は・・・!あのスキマ妖怪八雲 紫!?」
「あら有名になったものね」
「お前はもともと有名だ馬鹿野郎」

その紫を前にして妖気を感じ取ったのだろうか。あまりの妖気の大きさにビビりニトリの後ろへと隠れている。

「今日は椛に用があってな」
「別に取って食ったりしないわ。危害を加えないと約束するわ。協力して頂戴」
「アンタたちの言うことなんて・・・!」
「おいおい。人間は河童の友達じゃなかったのか?」

すると椛が出てきて2人に問う。

「何を、すればいいの?」
「妖夢を探すのを手伝ってほしいんだが」
「妖夢?ああ、なんか失踪したとか」

ニトリは思わず口に出す。

「そうよ。貴女の能力を使って妖夢を探してほしいの。お願いできないかしら」
「・・・いいですよ。その代わり約束してください。妖怪の山の住人には手を出さないと」
「もともと出す気なんて無いわよ。犯人が妖怪の山の住人だったら別だけれども?」
「わかりました。じゃニトリちょっと行ってくるから待ってて」
「・・・わかった」

そういうと何時もの盾と剣を取り出し準備を整える。そして滝の裏から出る。

「魂魄 妖夢さん、ですよね?どんな容姿ですか?」
「ああ~そうか椛は妖夢に合った事が無いんだっけな」
「刀を2本持っていて人魂っぽいものを連れているわ。背の高さは魔理沙ぐらい。髪の毛は銀ね。服は多分緑。特徴としてはそのくらい」
「十分です」

滝の少し上空にて椛は集中し始める。そしてカッ!と目を見開き遠くを見始める。あたりをグルっと見回し、ふぅ・・・とため息をつく。

「どうだった?」
「妖夢さんとは思わしき人物は居ませんでした。剣を持っているという人は何人かいたのですが髪の毛が違ったり・・・。やっぱり写真みたいなものは無いでしょうか」
「持ってないわね・・・」
「あるぜ。紫私の家にスキマ開いてくれ」
「はい」

スキマの中へと入り棚をガサゴソとあさると一枚の写真をもって出てきた。その写真には妖夢が写っていたのだが・・・。
べろべろに酔っ払い寝ている妖夢であった。

「コレ・・・あのときの」
「ああそうだぜ。紫が酒を飲ませて酔い潰させた時のだ」
「懐かしいわね」
「文にカメラを失敬して撮っておいたのがこんなところで役に立つとはな」
「他に・・・無いんですか?」
「「無い」」
「しょうがないですね、これで探します。でもとりあえずここから千里間にはこの人は居ませんでした」
「と、私は用事があるんでな。そろそろ失敬するぜ」
「助かったわ。送るぐらいするわよ?何処に行くつもりかしら」
「んじゃアリスの家に頼む」
「ほいさ、と」

紫はスキマをアリスの家の前に空けた。
そこへと魔理沙は踏み込む。

「助かったぜ。椛、紫は変なことしない限り食ったりしないから安心しな」
「はい」
「じゃ、魔理沙助かったわ」
「おう、お見舞いのかごの中に羊羹入れておいたから幽々子たちと食ってくれ」
「悪いわね」
「見つけたらまた知らせるぜ」
「よろしく」

そして紫はスキマを閉じた。







「さて、行きましょうか?」
「は、はい!」

その声に椛は一瞬ビクつく。

「おびえないで頂戴。言ったでしょう?危害を加えるつもりは無いから」
「はい・・・」

それからと言うものの椛は必死に探した。一緒にいる紫を怖いと思っていたはずなのにいつの間にか真剣になり必死に探してくれた。
 そしてついに―――
 
「見つけました!緑の服に2本の刀。そして頭にはリボン。更に人魂っぽいものを連れている・・・。間違いありません!」
「どこかしら」
「えーと。あの大きな木が見えますか?」
「あれね」
「はい。その木の根元、と言うかその下に小さな家があるんです。そこの前で剣を振るっていました」
「ありがとう。助かったわ、もう帰っていいわよ」
「はい。また何かあれば言って下さい。協力しますので」
「あら、ソレはありがたいわ」

紫は腕を振るい、スキマを滝の裏側へと作ってやる。そのスキマの向こう側にはニトリがいた。

「椛!大丈夫?変なことされなかった?」
「うん。大丈夫。紫さんやさしくしてくれたから」

最後にそんな言葉を聴きつつ紫はスキマを閉じた。

「さて。行きますか」


そして紫は一瞬で移動する。勿論スキマ使用。



「こんにちは、妖夢」
「これは紫さん。どういった御用で」

その言葉を聴きピクりと眉が動く。

「あなたどれだけ心配をかけたか分かっているのかしら?」
「何のことでしょうか」
「しらばっくれるのもいい加減にしなさい。あなたがいなくなったお陰で幽々子は倒れたのよ」

妖夢ははぁ・・・とため息をつき、

「もう白玉楼とは縁を切りました。これからは剣の腕を磨き自由に生きていくつもりです」
「縁を切った・・・?ふざけないで」
「ふざけてなどいません。私はもう束縛されず生きて行きます」
「じゃあ聞くけれど、あなたは何故剣の腕を磨くのかしら?」
「そんなの決まっているじゃないですか。幽々子様を・・・あれ?」

その言葉に紫はニヤリと笑みを浮かべる。

「もう一度聞くわ。何故、剣の腕を磨くのかしら」
「・・・。自分の趣味です」
「違うわね。貴方は幽々子を守る為にその剣を手に取った」
「・・・違います」
「幽々子を守る為毎日鍛錬を続けてきた」
「・・・違うっ!」
「貴方は幽々子が大好きだったはずよ」
「違う!!!!」
「じゃあ貴方妖忌が言った事を放り出すのね?」
「違う!!!!!!」

さらに紫の笑みは深まった。そしてそれに気がつく妖夢。

「あ・・・」
「ほら。貴方はやはり白玉楼の事を気にしている」
「違う」
「違わないわ」
「黙れ!!!!!!もう嫌なんだよ!!幽々子様のわがままで幻想郷をあちこち走り回って!いざ剣の指南を始めようとすればめんどくさいの一言で片付けられる!!それに貴方が持ってきた外の服を着せられる!!!」

最後の一言に紫は言い返す事が出来なくなった。

「・・・妖夢、白玉楼へ帰るわよ」
「嫌です」
「・・・今、何て言った?」
「い・やと言ったのです」
「・・・そう。なら・・・力ずくで連れて帰るわ!!!」
「私の自由を束縛するのなら、たとえ紫さんだとしても、切り捨てます」

こうして2人の壮大な戦いが始まる。
 紫がスキマを利用して弾幕を放つ。その弾幕を見切り自分に当たる弾だけを切っていく妖夢。とあるとききり切れない弾幕を背をそらす様に回避したり弾幕を弾幕で相殺したり、あの春を集めた時より更に腕を上げたように見える。そして何よりも怖いものが妖夢の一番の持ち味である、俊足。
 紫の弾幕の隙を一瞬で見切り間をつめる。そして何の躊躇も無く紫へと切りかかった。その切りかかった刀の名前は楼観剣。妖怪が鍛えた妖刀であり、一振りで幽霊10匹を葬り去る威力を持つ。その恐ろしい刃が紫を襲う。刃を扇子で受け止めるが、次の瞬間扇子に刃がめり込んできている。しかも扇子はただの扇子ではなく、鉄扇である。妖夢はそのまま振りぬき、紫の扇子は真っ二つになった。そのまま紫の体を切り盛んと言わんばかりに下へと刀をふる。その軌道を一歩下がるように回避する。

「腕を上げたわね」

その言葉を聴きもせず、妖夢は再び切りかかる。それをすんでのところで避ける。何故だろうか、紫には何時もと違う気がした。

「いざ、参る!」

妖夢は距離をとり、一旦刀を鞘へと納める。そして奇妙な形で構えを取る。この構えは紫も見た事が無い。

「その構えは何かしら?」
「私のオリジナルです」

紫は右手を持ち上げ、弾幕を放――とうとした。

「貰いましたよ」

すると距離をとったはずの妖夢がいつの間にか紫の懐にいる。

(しまっ・・・!)

そのまま妖夢は刀を抜くと横に一閃で振りぬいた。それをすんでの所で避ける。紫のスカートの一部が切り裂かれてしまった。
 簡単にこの技を説明しよう。この技の基礎となったものは勿論居合い切りである。居合い切りとは自分の間合いに入ってきた相手、または物を一閃で叩ききる、いわばカウンターの一撃必殺。あたればほぼ即死ともいえる大技である。しかし大技には大きな弱点がある。それが今回の場合は間合いに入ってこなければまったく何も出来ない、と言うものであった。それを妖夢は見事に克服していた。自分の跳躍力、足の強さ、それらを全て生かしてこの技を完成させた。つまりはこういうことである。

居合い切りの移動バージョン。

自ら相手を間合いの範囲に入れるのだ。普通の武士だったらば間合いに入れた瞬間相手からのカウンターを受けくたばるであろう。しかし妖夢はどうであろうか。一瞬で間合いをつめるだけの跳躍力とそれを見抜く眼力を兼ね備えている。さらにタイミングにも大きな理があった。
 それは相手が攻撃に移る瞬間を狙う。と言うこと。攻撃とは防御を犠牲にし行う行為といってもいい。攻撃は最大の防御と言う言葉もあるが、それはあくまで相手を押さえ込んでいるだけの事。もしも予期せぬ方向から攻撃を受ければあっという間に崩れ去るであろう。
 攻撃する瞬間は一番隙が大きく更に反応されにくい。万が一反応されたとしても妖夢は二刀流だ。片方の刀で相手からの攻撃をガードし、もう片方の刀で確実に相手に攻撃を入れる事が出来る。

この技は妖夢だからこそ、いや妖夢でないと出来ない技なのである。

(ちっ)

紫はソレをすんでの所で避ける。流石である。
 が、次の瞬間後ろからも気配が感じ取れた。
 
(後ろっ!!)

するとそこには妖夢が居た。2人目の。
 そう分かったと思うがスペルカードの「二重の苦輪」である。

その攻撃もスレスレの所で交わす。

「甘いわね、妖「甘いですよ紫さん」








ドスッ。







「な、何です・・・って?」

自分の腹を見ると突き出た刃。

「がふっ」

血が紫の口からあふれ出る。口から血を零した紫が後ろを振り向くと、そこにも妖夢がいた。

「な、なんで・・・気配は、感じ・・・なかった・・はず、よ」
「そういえばまだでしたね。ご紹介します。3人目の私です。以後お見知りおきを」

3人目の妖夢は腹から日本刀をそのまま引き抜く。紫にとって楼観剣でなかったのは不幸中の幸いであろう。

「さぁ、どうしますか?もともと実力差があるとしても3対1ですよ?更にその傷。勝ち目は薄いと思いますが」
「そうね。分が悪いわ、今回は引かせてもらいましょう。でも覚えておきなさい。かならず貴方を連れ戻すわ」
「勝手に言っていて下さい。私に戻る気などありませんので」

そういいスキマに紫は姿を消した。

出口は勿論白玉楼。


「あ、おかえりな・・・」

藍は紫の状態を見てかなり驚いている。あの天下の大妖怪が大怪我を追っているのだ。

「紫様!その傷は!」
「静かになさい。幽々子がおきてしまうわ」
「す、すみません。それより傷をお見せください」

藍は救急箱を持ってきて紫の傷口を消毒後、包帯でぐるぐるに巻いた。

「紫様・・・この傷はもしや」
「そうよ。妖夢につけられたの。本気を出していなかったにしてもまさか致死量の傷を貰うとは思わなかったわ」
「妖夢に、会われたのですね?いかがでしたか?」
「そうね・・・。操られている感じは無かったわ。間違いなく自分の意思で動いていた・・・」
「では、妖夢はやはり自分の意思で白玉楼を・・・」
「考えたくないけれど、そう思うのが普通ね。勿論幽々子に言っちゃだめよ」

はい。と答えようとした。しかし、その部屋の襖が勝手に開き―――

「紫、今の話は本当?」
「ゆ、幽々子様・・・」
「・・・。ええ本当よ」

もう隠し通すのは無理と感じ取ったのだろうか。

「そう。じゃあ妖夢の所に道を開いてくれないかしら」
「行くのね」
「ええ」
「きっと妖夢がココを離れた理由も私にあるのでしょう?なら自分で蹴りをつけるわ」

紫は ふっ と笑うと巨木の下へとスキマを開いた。

「藍貴方も行きなさい」
「し、しかし・・・!」
「命令よ」

式は命令されれば逆らう事はできない。

「はい。わかりました」
「幽々子、妖夢に何かを吹き込んだ犯人はまだ妖夢の近くに居るわ。それと妖夢のスペル、二重の苦輪だっけ。あの技には気をつけなさい。3人目が出てくるわ」
「・・・は?何言ってるの?妖夢は2人までしかなれないわよ?だって片方が人間本体でもう片方が幽霊のほうなんだから2人以上に増えられるわけ無いじゃない」

この言葉を聴いた瞬間紫は分かった。何故自分を刺した刀が楼観剣じゃなかったのかなど。

「・・・ああ。もうなんでこんな事に気が付かなかったのかしら。自分に腹が立つわ」
「どうかしたのかしら?紫が自分に腹を立てるなんて珍しいわね」
「いいえなんでもないわ。幽々子、多分妖夢は次から3人で切りかかってくるわ。その中で1人、気配をまったく感じない妖夢が居るの。それが多分今回の犯人よ」
「そう、分かったわ。じゃ行って来るわね」

そういうと幽々子と藍は境界へと姿を消した。







「妖夢。居るのでしょう。出てきなさい」
「今度は幽々子様に・・・藍さんですか」
「ええ。そっちも姿を現したら?黒幕さん」

すると妖夢の後ろからもう1人妖夢がスペルカードを発動していないのに現れた。その姿は瓜二つ、どちらか区別が付かないほどである。

「妖夢に何をした」
「貴方が黒幕ね、妖夢を元に戻しなさい」
「別にいいけどもう直るか分からないよ?」
「何ですって・・・」
「なんだと・・?」

この言葉を聴いた瞬間幽々子と藍は顔を歪める。

「おっと、私を殺したらこの子も死んじゃいますよ。いいのですか?殺して。ああ、後今この会話はこの子には聞こえてないので安心してください」

相手に完全に舐められている事に腹が立ったのだろうか?幽々子と藍は完全に睨みきっていた。

「貴方の能力は何?」
「敵にそんなこと教えるとお思いですか?」

能力を教えるのは自ら手の内を明かすも同然。普通ならまず教えることは無い。しかしそれには例外と言うものがある。

「まぁいいでしょう。お教えしましょう。私の能力は欲望です。欲望を操る程度の能力を持っております。どんな小さな欲望でも私の力を使えば強大な欲望へと進化します。そうですね例えばアレがほしいアレが食べたい、って言う欲望がありますよね?でもそれが手の届かない、そうですね・・・高価なものだったとしましょう。そこで私の能力を少し介入させる。するとその食べたい、と言う欲望はあっという間に大きくなります。さらに大きく出来るということは小さく出来るということ。他の欲望を小さくしてあげれば大きくした欲望のほうを優先し、行動を取るようになります。つまり他人から物を取ってはいけないという事ややってはいけないこと、まとめて罪と言いましょうか、それを高価な料理を食べたいという欲望が上回るのです。そうなれば・・・もう結果は見えていますね?」
「・・・罪を犯してでも手に入れる」
「ご名答」

幽々子は目を合わせながら小さくつぶやいた。

「でも・・・なんで妖夢を!何で妖夢を連れて行ったの!!」
「・・・はぁ、貴方って人は。では特別にもう2つお教えしましょう」

幽々子はつばを飲む。ゴクリという音が響き渡る。
 しかし――次の言葉は幽々子をどん底に叩き落すのに十分の威力を持っていた。





「まず1つ。私は宿主を変えることは出来ません。2つ・・・・私は、欲望から生まれました」






絶句。藍と幽々子には何もしゃべることが出来なかった。それもそうであろう。
 つまりこういうことである。
 今まで妖夢が我慢してきた事が積み重なりこの存在が出来た。そして今までの事を我慢させていたのは他にも無い幽々子である。


すべての原因は――――幽々子にあった。幽々子のわがままにより妖夢が弾圧を受け、ストレスや欲望がたまる。そして欲望と言う『存在』が生まれる。


 まとめよう。あの3人目の妖夢。つまりは黒幕なのだがアレが妖夢の欲望なのだ。と、言うことは3人目の妖夢が取っている行動は妖夢が本当は取りたかった行動。
 本来はもっと剣の修行をしたかった、でも家事等のため時間が切迫される。なら家を出ればいいじゃないか。しかし先代よりの任のため、幽々子を守るため離れるわけにはいかない。ここで3人目の出番である。剣の修行をしたいという欲望を爆発的に膨らませれば家を出ることなど時間の問題であろう。白玉楼を離れてはいけないという事を剣の修行をしたいという事が上回るのだから。紫を切った事も切ってはいけないという事を剣の修行をしたいという事が上回ったためということが簡単に分かる。

3人目の妖夢はニヤリと口元をゆがませると幽々子に止めを刺した。





「つまりは――この結果は貴方が生んだ結果なんですよ幽々子様」





幽々子は表情を無くしその場にひざを着く。

「お前は、自分の主をココまで傷つけて面白いか!?」
「いいえ?」
「では何故!何故このような事をした!」
「そんなの決まっているじゃないですか。幽々子様以上にこの子・・・妖夢がかわいそうだったからですよ」

藍は必死に怒鳴る。しかし3人目の妖夢はその気迫をものともせずにしゃべり返した。

「さて、お話は終わりです。お引取りください。もし邪魔をするというならば・・・」
「するさ、お前のその寝ぼけた頭をたたき起こしてやる!」

藍は体制をとると腕を振り上げ弾幕を放つ。それを妖夢は切り、第3の妖夢のほうは避ける。妖夢のほうも負けじと弾幕を放ち藍を攻撃する。藍は弾幕と弾幕の間を縫い回避。しかしその抜けたところにもう一派弾幕が迫っておりとっさに伏せて交わす。

(ちっ・・・かなり腕を上げたな・・・)

「式輝「四面楚歌チャーミング」」

藍がスペルカードを切り弾幕で包囲する。四面楚歌チャーミングとはその名のとおりすべての方向から弾幕が襲うというスペルカードなのだが妖夢はそんなの関係ないといわんばかりに弾幕へと突っ込む。そして一部の弾幕を切り裂き脱出してしまう。

(ち・・・。あの弾幕を切るのが厄介な・・・)
「貰いましたよ」
「!!」

一瞬考えた隙に漬け込まれた。腹にモロ妖夢の肘鉄が入り後ろへと吹き飛ぶ。そしてその吹き飛ぶ瞬間横から剣による一撃が入り飛ばされる方向は後ろから横へと変わった。

「峰うちです。紫さんみたいにならなかっただけいいと思ってください」

妖夢が告げる。自分の無力さに藍は地面に伏したまま地面の土を握り締めた。

「幽、々子様っ・・・!」
「ほらほら逃げなくていいんですか?」

3人目の妖夢が問う。

「いいの、ほら妖夢私を切りなさい」

その言葉には何時もの声ではなく悲しみに満ちた声であった。目の焦点は合っておらず何処を見ているかすらわからない。

「つまりませんね」

そういうと妖夢が幽々子の前へと立ち、刀を構えた。

「そうよ、妖夢そのまますっぱり行っちゃいなさい」

3人目の妖夢は妖夢へとささやきかける。

「やめてくれ・・・」

藍が声を上げる。

「お前が守るべき者を自らの手で壊してどうする!!!幽々子様はお前が一生尽くす人ではなかったのか!!」
「無駄ですよ。思考がある動物は必ずしも1度は大切なものを壊してみたい、など思うのです。それは一種の願望。欲望の仲間なのですよ」

つまりは大切なものを壊してしまいたいという欲望を巨大にしたのだろう。
 妖夢は刀を振り上げ―――――幽々子の首をめがけて振り下ろした。

「やめろおおおおおおおおお!!!!!!」

藍が叫ぶ。その時肋骨がボキボキという音を立てた。峰うちを食らったときに折れていたのだろう。しかしそんな痛みなど気にせず藍は叫ぶ。
 幽々子は目をつぶり刀の刃が自分の肉を切断するのを待った。






しかし何時までたっても



刀の刃が



幽々子を切り裂くことは無かった。




そして代わりに幽々子の肌に触れた物は




水滴。



幽々子は目を開けるとその水滴を指でさわり、自分の首元に当てられている刃を見る。そして顔を上げてみると妖夢が顔から大粒の涙をこぼしていた。

「何で・・・。切ってしまいたい・・・切ってしまいたいのに・・・切れない・・・・!」

妖夢の目からは次から次へと涙があふれ出て幽々子の肌をぬらす。
 その変化に藍は驚いていた。本当に純粋に驚いていた。

「妖夢っ!」

幽々子は妖夢に抱きついた。刀の刃により首が切れ赤い血が出るがそんなのは気にしていない。
 幽々子はただぎゅっと、強く、しかし優しく妖夢を抱いた。
 
「妖夢・・・今までごめんなさい・・・」

幽々子の目からも涙があふれていた。その涙が妖夢の肩の布をぬらす。

「なにやってるの!とっとと切ってしまえ!」

3人目の妖夢が語りかける。






ドスッ。






酷く鈍い音があたり一面に響いた。

ビチャビチャッ。

地面に落ちる赤い水滴。それも尋常ではない量。

「ゆ、幽々子様・・・?」

藍が問う。

「・・・」

幽々子は何も言わない。



そして幽々子が妖夢から体を離すと自分の服は真っ赤に染まり上がっていた。














妖夢の血で。



「な・・にしてるの・・・妖夢」
「がっ・・・」
「ごふっ」

口から血を流す妖夢。そして同じく3人目の妖夢も口から血を吐き出した。

「も、申し訳ありません幽々子様・・・。自分で招いた失態・・・自分でけりをつけねば・・・」

妖夢の腹には刀が刺さっている。それは迷いを断ち切る短刀、白楼剣であった。つまりは自分で幽々子をきりたいという迷いを断ち切り欲望に打ち勝つためであろう。しかし逆に言ってしまえば切り捨ててはいけないと言う事を断ち切りきってしまう確立もあっただろう。でもそれ以上に妖夢の幽々子を思う気持ちは強かった。

「な、なぜ・・・私は貴方が幸せに・・・」

第3の妖夢が問う。ソレに対して妖夢は振り向き答えた。

「確かに剣の腕を磨いて自由に暮らすのもいいと思う・・・ぐっ。だけれども私は幽々子様の為に剣の腕を磨く。私にとっての幸せは幽々子様に仕えること」
「だけど・・・貴方は私が生まれるほど欲望を抱えていたじゃない・・・!」
「そんなもの・・・幽々子様に仕える事と比べるな!!幽々子様に仕える幸せと私の欲望、天秤にかけるほどでもない!」

ズボっと剣を腹から乱暴に抜いた。

「「ぐうっ」」

2人同時に声を上げる。そして第3の妖夢は足から消え始めた。欲望の迷いを断ち切ったためもう存在理由が無くなった。つまりは消滅である。

「幽々子様、覚えておいてください。貴方がその子にまた無理をさせれば・・・私は再び貴方の前に姿を現すでしょう。それだけ頭の片隅において置いてください」
「ええ」

一言返事を返した。

「それではお2人でお幸せに。失礼します」

そういうと最後に少し笑いながら消えていった。

「うっ・・・」

緊張が切れたのかその場に倒れこむ妖夢。

「妖夢っ!?」

腹にはバカでかい穴が開いているのだ倒れこむのは当然である。
 ソレを幽々子が抱きかかえるようにして受け止める。おなかからは止め処なく生暖かい血があふれ出つづけていた。

「幽々子様!」

藍が傷が癒えたか近寄り状況を確認。

「幽々子様お怪我は!?」
「私はいいの!それより妖夢の血が止まらないわ・・・!」
「止血します!幽々子様は心臓が傷口より下に来るように持ち上げてください!」
「ええ、分かったわ!」

そういうと藍は手を傷口に当て抑える。こうすれば簡単な止血にはなるが穴が大きすぎるためあまり意味を成していない。藍は自分の衣服の袖を歯で引きちぎるとそれを傷の少し上辺りにきつくまき、さらに2本目も引きちぎり傷の上へときつく巻いた。

「今出来るのはここまでです!はやくどこか治療できるところへ!!」
「私の出番ね」

そういうと何処からとも無く現れた紫がスキマを開いた。

「はやく!向こう側は永遠亭よ!もう永琳たちは準備してるから早く!」
「ありがとう!」

妖夢を抱きかかえ、3人は境界を越えた。




「永琳お願い!!妖夢を・・・私の家族を助けて!!」

























バシッ、バシッ!

「てやぁ!てぃっ!」
「甘いですよ」

パコーン。ひゅるひゅるストッ。
 あれからいくらかたった日、白玉楼の庭には景気の良い掛け声と木と木がぶつかり合う音が響き渡っていた。

「幽々子様、腰が高いのです。だから足元への攻撃が防ぎにくく隙が出来るのです」
「うー・・・。もう一度よ!」

地面に突き刺さった木刀を抜き放つと再び妖夢へと切りかかった。
 しかし結果は変わらない。パッコーン。

「幽々子も頑張るわねぇ・・・」
「まぁあんなことがあった後ですから」

そういうと見ていた紫はお茶をすすった。

「幽々子様、休憩にしましょう。根をつめすぎてもよくありません。さっき買ってきたお饅頭がありますので」
「あらそう?じゃそうしましょうか」
「タオルどうぞ」
「ありがとう」

あの後幽々子は永遠亭に駆け込んだ。そして妖夢の治療を永琳に依頼した。手術のほうは成功、出血状態もかなり酷いことになっていたらしい。その後2日妖夢は寝続け、3日目の朝目を覚ました。
 その時幽々子は泣いて喜び紫も後ろで優しい笑みを浮かべていた。永遠亭を退院するのに2週間の時間を用し、3週間目で完治した。結果的に妖夢は白玉楼へと戻り、庭師などの役職を再び取り戻していた。そして3週間放置した庭の状況を見て妖夢は号泣した。
 ちなみに妖夢が紫を傷つけた事は妖夢が必死に誤り、紫も許したようであった。いや、もともと怒る気などなかったのかもしれない。

「紫様の後ろの机に置いてあるので召し上がってください」
「悪いわねー妖夢は食べないのかしら?」
「はい、私は結構です。お茶屋で買う時新商品を試食として少し食べたので」
「ずるいわー」
「だからたくさん買ってきたのです」

そうなの、と幽々子は笑みを浮かべた。テーブルの上にはたくさんの饅頭がある・・・はずだった。

紫は振り向いた瞬間固まり、藍は口を空けたまま固まった。そしてそれに気がついた幽々子は手がミシミシと振るえ、妖夢はただただ呆然としていた。

「よー。この饅頭うまいな」
「魔理沙・・・その食べているものは何かしら?」
「あー?見て分からないか?饅頭だぜ、うまいなコレ。なかなか」
「そう・・・」

テーブルにはもうカラになったお皿と魔理沙の手には後一口で終わるという饅頭の切れはじ。それを魔理沙は何の躊躇も無く口へと放り込んだ。
 そしてこの瞬間紫と藍と妖夢は思った。

「「「魔理沙、終わった」」」

幽々子は魔理沙の居るところを通り越して掛け軸の前まで移動した。そして掛け軸の前においてあった刀を取る。それも長いほう。

「ねぇ、魔理沙」
「な、なんだぜ?」
「私ね、最近ものすごい練習して剣術を習ってるの。だから試し切りの実験台になってくれないかしら?」
「え、遠慮するぜ・・・」

幽々子はパチンと刀を鞘から出すと。刀を目線の所まで持ってきて魔理沙をにらんだ。

「魔理沙覚悟ぉ!!!」

スパッ。皿が真っ二つに割れ、魔理沙の黒い帽子のつばが切り落ちた。さらに割れたのは皿だけかと思いつつもその後、音を立ててテーブルまで真っ二つに切り裂かれていた。

「えーと。ゆ、ゆこさん?」

その幽々子の気迫は鬼そのもの。頭に角が見えるかと思うほどであり口からはなにか白い煙が出ている。

「ごめんなさい、妖夢。少したったら幽々子と手合わせしてみようかと思ったのだけれど遠慮しておくわ。勝てる気がしないもの」
「同感です」

紫と藍は頷いた。妖夢とやっているため幽々子が子供のように見えるが妖夢はかなりの腕の持ち主。その妖夢とやっていれば腕はまだまだ未熟に見えてしまう。しかし幽々子の剣の腕も相当なものだ。その証拠にさっきから魔理沙に切りかかり襖、畳、掛け軸、その他家具などを切りまくっていた。

「ああ・・・また私の仕事が増える・・・」

妖夢は目から涙した。

「私も後で手伝うからあきらめるんだ」

藍が慰めるが落ち込んだまま直らない。
 魔理沙の悲鳴が聞こえ、箒に乗って逃げる姿が見えた。
 そして部屋の中を見ると瓦礫の中に鬼が立っていた。

「「「食い物の恨みは恐ろしい・・・」」」

3人はそろって同じ言葉を口にした。
「てぃっ!てやぁ!!」

今日も白玉楼に木と木がぶつかる音が響く。

「隙あり!!」

パコーン!
手から妖夢の刀が飛ばされた。

「甘いっ!」

妖夢は足で刀を蹴り上げ同じく幽々子の刀も飛ばした。

「あーん。あと少しだったのに・・・」
「でも断然にうまくなられましたよ。もう少しで私の護衛も必要なくなるかもしれませんね?」
「でも・・・貴方はずっと一緒に居てくれるわよね?」
「勿論でございます。幽々子様が望むのならば」


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どうも大天使です。これは非常に投稿しようかなと悩んだ作品でした。しかしここは冒険してみよう!との事で投稿してみることにしました。書いている途中、妖夢と黒幕の妖夢が混乱したりしましたが何とか書き上げました。もし矛盾点があれば報告お願いします。妖夢逃走劇の後日談も書いてはいるのですが筆が進まず先にこちらを投稿させていただきます。申し訳ない・・・。

正直コレを投稿するのは今まで以上に緊張していますです。設定がおかしいとかそういう事で・・・。
よろしくお願いします。

4月12日12:26 修正
大天使
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コメント



0.480簡易評価
5.80名前が無い程度の能力削除
途中までwktkだったのにラストがorz
6.無評価大天使削除
ラストまずかったですかね?^^;どこら辺がまずかったか指摘していただけると光栄ですw
11.無評価名前が無い程度の能力削除
個人的には、倒れた後ほとんど描写無しに治ってしまっていることと、最後のコメディー部分が長くてそれまでの雰囲気をだめにしてしまっているところがorzです。
やはり、移行部分としての死に瀕した状態は一つのパートとしてしっかりと厚みを持たせて意味あるものにした方がよいと思いますし、
最後は雰囲気を壊さないために無理なギャグにしないか、1,2段落程度の、それ自体で一つのエピソードになる事のないギャグにとどめておくべきだと思います。
思うだけです、うん。
12.100名前が無い程度の能力削除
自分も妖夢がどうやって直ったのか気になりますねw
まあえーりんなら簡単に治してしまいそうだけど…

作品については特に不満は無いです。
面白かったw
13.70朝夜削除
。」となっている所と」で終わっているところがあり、多少気になりましたが、こういった感じの物語は好きです。

最初はてっきり妖夢が完全に操られているのかと思っていたのですが、実は自分の意志で動いていたという点には驚かされました、人(?)って恐ろしいものです……。

個人的には52の作品のほうが好きだったので相対的に判断してこの点数で。
14.無評価大天使削除
■2008-04-12 01:45:48様
なるほど・・・勉強になります。次の作品はラストのギャグを控えてみようと思います。ありがとうございました!

■2008-04-12 02:07:26様
いやえーりんがどうやって傷を治したかは書こうかなーって思ったのですが・・・書く要素が見つからないのでハブいてしまいました。

朝夜様
おっと失礼しました。修正させていただきます。
16.70☆月柳☆削除
なんとなく戦闘シーンに重点を置いた作品なのかな?と感じました。
それゆえに、他の方が書いているような描写不足な点も浮きぼりになってて、ちょっと勿体無いかなと。
設定自体は面白い発想だと思いました。