Coolier - 新生・東方創想話

幻想郷雀王決定戦 ~2~

2008/04/03 23:49:00
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※この作品は、麻雀の名を借りた能力バトル物です、
※普通の麻雀の勝負を期待していた方はゆっくりしていってね。
※なお途中に無意味に挟まれる麻雀牌の表記は、漢字はそのまま字牌を、
※萬子(一~九)索子(1~9)筒子(①~⑨)となります、機種依存で申し訳ありません。
※地球の皆! 一秒でいいからオラに時間を分けてくれ!





 ~予選:七卓~

一卓の予選を運良く勝ち抜けたパチュリーは、
七卓の面子の一人であるアリスの後ろに立っていた。

「(……彼女からは私と同じ香りがする)」

七色の魔女こと、七対子の魔女パチュリーは自分と同香りをアリスから感じ取っていた、
パチュリーの七曜を操る程度の能力、転じて七対子を和了る程度の能力、
そういうと聞こえは良いが、それは単に対子が萃まりやすいというだけであった。

「ふふ、参考になるといいわね」
「ん……気づいてたのね」
「それだけ鋭い目つきで見つめられると、さすがにね」

横目で後ろにいるパチュリーを確認しながら不敵に笑みを浮かべるアリス、
どうやら彼女もパチュリーが自分と同じ香りをすることに気づいていたようだ。

東一局零本場 東:萃香(親) 南:文 西:アリス 北:小町

全自動卓が機会音を立て、各々の手元に牌を配る。

「……イマイチねぇ」

牌を一瞥し、ぼそりと呟くアリス、
その声に釣られてパチュリーがアリスの手牌を覗き込む。

『手牌 三三七七九九144①⑧白白』

「(配牌の時点で七対子まで一向聴……これでイマイチ?)」

いぶかしむアリスと、顔を捻るパチュリー、
その間に萃香と文が牌を捨て、アリスのツモ番が回ってくる。

『手牌 三三七七九九144①⑧白白 ツモ①』

「(一巡目で七対子聴牌……ここはダブルリーチ?)」

アリスが引き当てたのは当然の如く一筒だった、
しかし自分の手牌を一度確かめると、そのままツモ牌を切る。

「(聴牌を無視!?)」

その行為にパチュリーのポーカーフェイスが微妙に揺らぐ、
しかし誰もそれを気に留めることなくツモり、牌を切る、
それが数巡繰り返されるうちに、段々とパチュリーの顔に冷や汗が浮かび始めた。

「(一筒どころか、索子と白まで……そして何よりも)」

河に二牌ずつ、綺麗に並べられた一筒と四索と白、
だが見るべきはそこではなく、アリスの手牌だった。

『手牌 三三四四七七八八九九1⑧ ツモ六』

「(あらかじめ入れ替わることが決まっていたかのように集う字牌……!)」

パチュリーの背中にぞくりと悪寒が走る、
自分であれば最初のツモで即ダブルリーチをかけていた手牌、
だがアリスは違った、そこからさらに伸ばしてきたのだ。

「リーチよ」

そして一巡後、アリスは六萬をツモり、リーチを宣言する、
他の三人は直撃を恐れて安全牌を切るが、アリスにとってはどうでもよい事だった、
ツモれば、それが和了り牌だということが分かりきっていたのだから。

「リーチ一発ツモ、清一七対、三倍満」
「うっひゃー、初っ端からでかいのが来たねぇ」
「あやややや」
「何も私が親の時にあがらなくてもいいじゃんー」

アリスの見事な和了りっぷりに、他の三人からは溜め息が漏れる、
しかしパチュリーはそこまでに至る過程を見た為に、
溜め息どころか、体を強張らせるのが精一杯だった。

「どう? 参考になったかしら?」
「え……あ……」
「その様子だとならなかったみたいね」
「そ、そうでもないわ、そうでも……」

こちらを振り向いたアリスに何かを言いかえそうとしても中々口が動かない、
これが幽香の言っていた領域なのかと恐怖に似た感情が芽生える、
だがしかし、真の恐怖はアリスの放った次の言葉にあった。

「この一度しか機会は無かったから、せめて何か掴み取って欲しかったんだけどね」
「……この一度……?」

そう言って卓へと向きなおすアリス、
その時、彼女の頬を一筋の汗が滑り落ちた事にパチュリーは気づいた。

1位:アリス・マーガトロイド 49000 (+25000)
2位:射命丸 文        19000 ( -6000)
3位:小野塚 小町       19000 ( -6000)
4位:伊吹萃香        13000 (-12000)

東二局零本場 東:文(親) 南:アリス 西:小町 北:萃香

「……っ!!」

牌が配られたと同時にアリスは顔を歪める。

「(アリス……?)」

心配そうに見つめるパチュリーと、何かを諦めたかのように
理牌を行うアリス、そして理牌を終えた時、今度はパチュリーが顔を歪めた。

『手牌 ②②③③④④⑤⑤⑥⑥⑦⑦東』

ずらりと並んだ筒子、配牌の時点で聴牌しており、運がよければ天和
そうでなくとも新たな筒子をツモれば、先程のように清一をも狙える状況である。

「(これ以上は無い程の好配牌……なのに何故?)」

パチュリーの疑問を他所に、文が牌を切り、アリスのツモ番が回ってくる。

「(まだよ、ここで引き当てれば!)」

願いを込め、ツモった牌を目の前まで持ちあげる、
そして牌を抑える親指を恐る恐るずらして確かめるが、
その牌はアリスの望む物ではなかった。

「(……西か)」

アリスの体からがくりと力が抜ける、そのまま軽く溜め息を付くと、
西を河へと投げ捨てるように切った。

「それ、ロンです」

すると示し合わせたかのように文が手牌を倒す。

『和了 ④⑤⑥東東南南南北北北西西』

「(しょ、小四喜!?)」
「小四喜、役満です」
「(しかもアリスの手牌の東と西を狙い撃ちするように……)」

その異常な内容に、パチュリーの頭に先程のアリスの言葉が蘇った。

「(この一度しかチャンスは無い……まさか、それって……)」

1位:射命丸 文        67000 (+48000)
2位:小野塚 小町       19000 (変動無)
3位:伊吹萃香        13000 (変動無)
4位:アリス・マーガトロイド 1000 (-48000)

東二局一本場 東:文(親) 南:アリス 西:小町 北:萃香

「いやー、やるじゃないか、小四喜なんて中々お目にかかれない」
「運が良かったんですよ、こんなこと十年に一度あるかないかですから」

全自動卓が洗牌を行っている最中、小町が対面の文に語りかける。

「でも本当は大四喜を和了りたかったんじゃないか?」
「そうですね、東か西がもう一枚来るまで待ってても良かったのですが」

飄々と語りかける小町に飄々と答える文、
しかし小町の次の言葉に文の顔が引きつく。

「筒子が邪魔をしなければ、大四喜だったかもしれなかったのに」
「……筒子、ですか……そうですねぇ」
「さすがは幻想四雀鬼の一人、恐ろしい恐ろしい」
「なっ……あ、あなた! 最初から知ってて!」
「さて、何のことかね」

幻想四雀鬼という言葉に文が反応するが、
小町はどこ吹く風といった表情で他所を向く、
そしてその言葉に反応したもう一人が、パチュリーであった。

「幻想四雀鬼……たしかあの亡霊にもそんな呼び名が……」
「知りたいなら教えてあげるわよ?」
「ひゃぅっ……!」

記憶を呼び覚まそうとした瞬間、背筋につつーっと走る人工的な悪感、
振り向けば、そこにはいかにもサドな表情を浮かべる幽香が。

「中々いい反応ね、素質があるわよ」
「何の素質よ……」
「誘い受け」
「いらないわよそんな素質」

幽香は今日も絶好調です。

「で、早速だけど幻想四雀鬼って何?」
「幻想四雀鬼、それは幻風荘で最強クラスに分類された四人の打ち手」
「幻風荘?」
「人里にある唯一の雀荘よ、幻想郷中の猛者が集う場所」
「ならそこで最強クラスということは……」
「そうね、実質的に幻想郷で最強クラスということよ」

その一言にパチュリーは生唾を飲み込んだ。

「一人目は四にて死に誘う姫、西行寺幽々子」
「四……四槓子の事ね?」
「……ま、平たく言えばそうね、そして二人目が……彼女」

幽香は軽く微笑むと、右手ですっと文を指差した。

「射命丸文、又の名を四喜少女」
「四喜少女……!?」
「見てみなさい、今彼女に配られた手牌を」

そう言われ、パチュリーは文の後方へと移動し、覗き見る、
すぐにその身を貫くは怒涛の戦慄。

『手牌 東東東南南南西西西北北北白③』

「(は……配牌で大四喜四暗刻単騎聴牌!?)」

計、四倍役満也。

「信じられない……」
「風は彼女の思うがままに、つまり風牌全てを操ることが出来る」
「それらを全て手牌に集めれば、小四喜または大四喜になるというわけね」
「でもねぇ、あれ、和了れないわよ」
「え?」

口に手を当ててくすくすと笑う幽香と、
意味が分からずに頭を捻るパチュリー。

「どういうこと?」
「そうね……ヒントはさっきのアリスの配牌よ」
「アリスの配牌? たしか筒子の二盃口と字牌……それがどうしたのよ」
「気づかない? アリスも並の打ち手じゃない、文が幻想四雀鬼だということも知っている」
「知っている……ということは風牌が危険だということも当然……まさか!」
「そう、聴牌を崩してでも筒子を捨てればアリスは生き延びれた」
「でもそれをせずに、まるで全てを諦めたかのように西を捨てたのは……」

あの時持っていた全ての筒子が和了り牌であり、
尚且つ文の小四喜よりも多くの点棒を支払うことになる役、
それを想定した時、出てくるのはただ一つ。

「筒子の……純正九蓮宝燈……」
「純正の九連に振り込むぐらいなら、小四喜のほうがましってことよ」
「じゃあその罠を仕掛けたのは?」
「小野塚小町……三人目の幻想四雀鬼よ」
「三人目!?」

二人の視線がその三人目へと注がれる、
西にて不敵な笑みを浮かべる小町へと。

「まさか彼女がそうだったなんてね」
「知らなかったの?」
「いつもトレンチコートにカウボーイハットで、顔には南米土産っぽいマスク被ってたし」
「それなんて変態?」
「その異様な外見と気さくな内面のギャップから、付いた名が筒ちゃん」
「予想と真逆なぐらいにフランクね」

そしてもう一人、小町へと熱視線を注いでいたのが文だった。

「この巧妙な筒子の仕込み……間違いない、あなたが筒ちゃんですね?」
「……ご名答、もっと早く気づいてくれると思ったけどね」
「普通は気づけませんよ、あれの中身があなただなんて」
「仕事をサボってまで通ってたからね~、変装ぐらいはしておかないと後が怖い怖い」
「閻魔様のお叱りですか……しかし、何故です?」
「ん? 何がだい?」
「何故、私の大四喜を抑えたんですか?」
「あー、それか」

にらみつける文から視線を逸らすように顔を傾け、頭を掻く小町。

「順位は私とあなたが二位、どちらにしろアリスさんを飛ばせば予選の突破が決まる」
「まぁそうだねぇ、私とあんたに同時に狙われたら、考えるだけで恐ろしい」
「では安全な勝ちぬけを捨ててまで、私を止めた理由とは?」
「そいつは決まってるだろう、簡単な理由だよ」

だが意を決すると、今度は小町が文を睨み返した。

「トップで勝ち抜ける為さ」
「……!」
「あんたも知ってるだろう? 私達幻想四雀鬼は……」
「……ただの一度も打ち合ったことが無い」
「そう、だからこの大会が開かれると聞いた時、あたいはついにその日が来たと確信したね」

やがて二人は数秒の静寂の後、互いの顔に含み笑いを浮かべる、
その異様な光景に、パチュリーも幽香も戸惑いを隠せない。

「幽香、どういうこと? あの二人が打ち合ったことが無いって」
「……幻想郷にある雀荘は幻風荘だけ、朝昼夜、常に数百人もの人妖が打ち合っているわ、
 そして四雀鬼同士の打つ時間のズレと、絶えること無き挑戦者達の為に、
 打ち合うことが一度も無かったのよ、云十年もの間、ただの一度も……、
 彼女達にすれば歯痒かったでしょうね、飛びぬけた強さゆえに幻想四雀鬼と呼ばれても、
 本当に欲しかったのはそんな呼び名ではなく、『最強』という唯一つの称号」
「最強……」

それは頂点に立つものだけが許される称号、
誰もが目指し、現実の前に打ちのめされ、それでも追い求める物、
やがて止まった時が動き出したかのように、文が手牌の白を切った。

「まぁ今回はあたいが筒ちゃんだと見抜けなかったあんたの負けだよ」
「……そういう事にしておきましょうか」

やがて小町の番となり、ツモった牌を手牌に差し込む。

「準決勝、ないしは決勝で会おうか、四喜少女、射命丸文」
「次は全力にて葬ります、覚悟してくださいね、筒ちゃんこと小野塚小町」
「そいつは楽しみだよ……ツモ、地和、大車――」

手牌の左端に人差し指を添え、上辺をなぞるように牌を倒してゆく小町、
そして全ての牌を倒しきるまであと二牌という所で、その指が止まった。

『…………?』

他家の三人はみな倒される牌に注目していたが、
突然の停止に三人同時に視線を上げる、するとそこには目を疑うような光景が。

「……四季様、酷い……げふっ」
『額に悔悟の棒が刺さってるーっ!?』

小野塚小町、もとい筒ちゃん、予選にてドクターストップ、
これにより射命丸文、伊吹萃香両名が勝ち抜けが決定。


 ~予選:八卓~

東四局零本場 東:レミリア(親) 南:美鈴 西:映姫 北:紫

現在の状況
1位:レミリア・スカーレット 49000
2位:紅 美鈴         17000
2位:四季映姫・ヤマザナドゥ 17000
2位:八雲 紫         17000

「お騒がせいたしました」

丁寧に膝の上で手をあわせ、ぺこりと頭を下げる閻魔様、
しかし他の三人は悔悟の棒が投げられた先を見つめたままであった。

「皆さん、配牌が終わりましたよ」

映姫の一言で我に返った三人が自らの手牌を確認する、
ここ八卓の現在の状況は、一言で言えばレミリアの独壇場であった。

「どうやらこの局もあなた達の運命は私の物みたいね」

レミリア・スカーレット、その能力は運命を操る程度、
そしてこの東四局目までに和了った役は、その全てが『人和』

「ダブルリーチ」

自らが親となったこの局も、配牌で聴牌という、
その自信に違わぬ能力の強さを見せ付ける。

「ダブリー一発ツモ、親満よ」

自らが親となってもツモ和了る運命を引き寄せ、
着実に点差を広げていく、気づけばその点数は六万を越えていた。

1位:レミリア・スカーレット 61000 (+12000)
2位:紅 美鈴         13000 ( -4000)
2位:四季映姫・ヤマザナドゥ 13000 ( -4000)
2位:八雲 紫         13000 ( -4000)

東四局一本場 東:レミリア(親) 南:美鈴 西:映姫 北:紫

しかしその中で、一人奥歯を噛み締める者が居た、
レミリアの忠実な従者である、美鈴だ。

「(駄目だ……お嬢様の実力では、この卓を勝ちあがることは難しい……)」

レミリアは強い、パチュリーやアリスと比べてもその強さは一、二歩は秀でる、
しかしながら美鈴が警戒する二人、つまり映姫と紫の実力は……。

「ダブルリーチ!!」

そして美鈴の予想は最悪の姿で具現化された、
レミリアが勢いよく切った一枚の白、その瞬間、紫の顔が微笑みで歪んだのだ。

「ロン」
「うっ!?」

『和了 一九19①①⑨東南西北發中』

「国士無双よ」
「なーっ!?」

紫の前にずらりと並ぶ幺九牌、言わずと知れた役満中の役満である。

「そんな馬鹿な……」
「いいえ、これは現実、ささ、点棒をちょうだいな」
「残念ですが、そうはいきません」
「えっ?」

紫の会心の一撃に横槍を入れたのは西家の映姫だった、
彼女もまた手牌を倒し、ロンを宣言する。

『和了 八八八九九九888⑨⑨⑨白』

「頭ハネです、四暗刻単騎」
「ううーっ!?」

ずらりと綺麗に並んだ刻子と一枚の白、
紫をも上回るダブル役満でレミリアを一撃で仕留めにかかる。

「64000点です、おや、払えそうにありませんね」
「く、このっ……こ、こんなのって……!」
「ここでお仕舞いですよレミリア・スカーレット」
「それはさせませんよ、閻魔様」
「むむ?」

だがさらに横槍を入れたのが美鈴だった。

『和了 111555999白白中中』

「さらに頭ハネです、三暗刻、混一、白、跳満」
「美鈴……!」

主の窮地を従者が身を挺して防いだのだ、
九死に一生を得たレミリアは、美鈴と顔を見合わせる。

「お嬢様、危なかったで――」
「このお馬鹿ーーー!!」
「もぺーっ!?」
「何でもっと安い手で和了らないのよ!!」
「そ、そう申されてましても、最低で人和の満貫ですし……」
「だったら人和にしなさい! この役立たず!!」
「ふぇぇ、申し訳ございませんー!」
『(酷い……)』

レミリアに殴り飛ばされ、尚且つ怒鳴られながら席に戻る美鈴、
主を救ったというのにこの待遇に他の二人からは哀れみの視線が注がれる。

「(しかし通常ルールでよかった……これがもしあのルールだったら……)」

自らの手牌を確認して溜め息を付く美鈴、
そしてレミリアも我に返り、この局の異常さに気づく。

「(三人とも配牌でこれだけの幺九牌を……!?)」

紫、映姫、美鈴の三人で使われた幺九牌の数、合計三十、
一萬と發が一つ、一筒が二つ、九萬、一九索、九筒が四つずつ、
風牌がそれぞれ一つずつに、白と中が三つずつ、自らの白もあわせると三十一。

「(五十二個の幺九牌の中から、三十一個が配牌で配られただと?)」

レミリアの背に、パチュリーが味わった物と同様の戦慄が走る。

1位:レミリア・スカーレット 48700 (-12300)
2位:紅 美鈴         25300 (+12300)
3位:八雲 紫         13000 (変動無)
4位:四季映姫・ヤマザナドゥ 13000 (変動無)

そして場は南局へと突入、美鈴が親となり、切った牌を見てレミリアが手牌を倒す。

「ロン、人和!」
「(よし、これでいい、子の時のお嬢様はまず止められない……勝負の時はオーラス!)」

必ず親の第一打牌で和了り宣言をするレミリア、
人和は満貫払いのために破壊力には欠けるものの、
和了るという点においては天和に次ぐ速度である。

「それもロン! 人和!」
「やはり止まりませんか……!」

続く映姫の親番でもレミリアは得点を積み重ねる、
やがて局面は南三局、紫の親番へと移った。

1位:レミリア・スカーレット 64700 (+16000)
2位:紅 美鈴         17300 ( -8000)
3位:八雲 紫         13000 (変動無)
4位:四季映姫・ヤマザナドゥ 5000 ( -8000)

南三局零本場 東:紫(親) 南:レミリア 西:美鈴 北:映姫

「また人和? しょうがないわねぇ」

呆れた表情を浮かべながら紫がひょいと牌を切る。

「…………」

だがレミリアがロンを宣言しない。

「(お嬢様!?)」
「(……おや?)」

突然のレミリアの停止に戸惑う美鈴と映姫、
だが誰よりも戸惑っていたのはレミリアであった。

『レミ手牌 一二三六七229⑤⑥東東西』

「(人和どころか、二向聴だと……?)」

絶対だと信じていた自らの能力の揺らぎ、
突然の出来事に思考が定まらない、視界が真っ暗になる。

「うー……」

八萬をツモり一向聴とはするが、自らの望む展開とは程遠い、
それでも和了りを目指さないわけには行かず、西を切る。

「ロン」
「っ!?」

宣言したのは下家の紫だった、
あざ笑うような笑みを浮かべ、その手牌を倒す。

「三暗刻、ドラ2、親満よ」
「貴様……!」

1位:レミリア・スカーレット 52700 (-12000)
2位:八雲 紫         25000 (+12000)
3位:紅 美鈴         17300 (変動無)
4位:四季映姫・ヤマザナドゥ 5000 (変動無)

南三局一本場 東:紫(親) 南:レミリア 西:美鈴 北:映姫

「じゃー、今度はこれっ」

他の三人の緊張感などどこ吹く風のように牌を切る紫、
その中、美鈴、そして映姫すらもレミリアのロン宣言を待つ。

「…………」

だがレミリアは手牌を倒さない、倒せない、
自らの能力の狂った理由が分からぬまま、手牌を切るしかないレミリア、
そしてその牌を待ち構えていたかのように紫がまたもロンを宣言する

「ロン、タンヤオピンフ三色ドラ、親満貫」
「ううー……」

二度続けて紫がレミリアから点を毟り取り、
その点差がさらに縮まる、気づけばその差は一万も無い、
焦るレミリアと悠然と佇む紫、相対的な二人の姿に一人気を張り詰める物がいた。

「(……おかしい、何かがおかしい)」

場を睨み、一人考え込む美鈴、主の予選通過が目的である彼女にとって、
この展開はあまりにも望ましくなく、おかしなものだった。

「ローン、一通混一でまた満貫よ」
「うううー……」
「(またお嬢様から……?)」

その次の局も紫はレミリアから和了りを宣言する、
目の前で交わされるレミリアから紫への点棒の支払い、
それを見つめていた美鈴は、自らの思考に何かが引っかかるのを感じる。

「(もしかして……)」

南三局三本場、すでに紫は三連続和了を決めトップとなっている、
その全てがレミリアからのロンであり、南三局が始まる前とは立場が逆転していた。

「紅い悪魔さんはどうしたのかしら? お得意の人和が出来ないみたいだけど?」
「うぐぐぐぐ……!」

和了れない、紫の捨て牌が何であろうと、聴牌していなければ人和は不可能、
しかし手牌自体はツモ牌と合わせて聴牌、ないしは一向聴と悪くは無かった、
だがその悪くは無い手牌が、レミリアの目を曇らせていた。

「リーチ!」
「残念ー、ロン」
「ま、またか……!」
「純全三色、親満貫~」

レミリアの紫への振込みが止まらない、
気づけばレミリアの順位は美鈴よりも下となっていた。

「(……そうだ、八雲紫の能力は確か……間違いない!)」

だがこの時、ようやく美鈴が紫の仕掛けた罠に気づく。

1位:八雲 紫         62800 (+38800)
2位:紅 美鈴         17300 (変動無)
3位:レミリア・スカーレット 14900 (-38800)
4位:四季映姫・ヤマザナドゥ 5000 (変動無)

南三局四本場 東:紫(親) 南:レミリア 西:美鈴 北:映姫

「さぁさぁ、最下位が近づいてきたわよレミリアさん?」
「う、五月蝿いわね、これからよこれから!」
「あらそう? じゃあお得意の人和でもどうぞ」

そう言って牌を切る紫、当然彼女は最初から分かっていた、
どうあがいてもレミリアが人和を和了れないことに。

「ロン、人和」
「えっ!?」

それだけに彼女の驚きは相当なものだったのだろう、
宣言されるはずの無い人和を宣言されたのだから。

「やってくれましたね……」
「あ……」

しかし人和を宣言したのはレミリアではなく上家の美鈴だった、
まるで今にも飛び掛りそうな鋭い眼光で紫を睨み付ける。

「やっぱり、そちらを警戒すべきだったかしら?」
「八雲紫、あなたは自らの手牌とお嬢様の手牌の境……」
「美鈴っっっ!!」
「ぶべらっ!!」
「あら」
「お前が人和を和了ってどうする!! 私が和了らないと意味ないだろうが!!」
「おおおお許しくださいお嬢様ぁぁぁぁ!!」
「あらあらあらあら」

しかしその健闘もむなしく、ぶち切れて粗雑な口調になったお嬢様に
マウントポジションでお仕置きを受けることになる美鈴、報われない。

1位:八雲 紫         53600 ( -9200)
2位:紅 美鈴         26500 ( +9200)
3位:レミリア・スカーレット 14900 (変動無)
4位:四季映姫・ヤマザナドゥ 5000 (変動無)

南四局零本場 東:レミリア(親) 南:美鈴 西:映姫 北:紫

「ううっ……頑張って止めたのに……」
「災難ねぇ」

場はついにオーラス、レミリアを予選突破させる為にも
ここでどうにかしなければならない、そう考えると美鈴にも焦りが浮かぶ。

「(こうなればお嬢様に振り込むしか手立ては……)」

だがしかし、その美鈴以上に焦っている物がいた。

「(……本当にまずくなってきましたね)」

対面の映姫である、順位は最下位、二位の美鈴とは21500点差、
予選を抜けるためには美鈴に跳満以上を直撃、ないしは紫に役満を、
自力で何とかするならば三倍満以上をツモるしか無い。

「(より確実に和了るためには……自力で和了るしかない!)」

卓下からせり上がってくる配牌、
それを一瞥して伏せると、そのまま自らの手に力を込める。

「(白黒はっきりつける程度の能力……発動!!)」

数秒程目を閉じて能力を使った後、映姫が手牌をゆっくりと開ける、
その時、彼女の後ろで観戦していた他の参加者達が一斉に眉を歪めた。

「ダブルリーチ!!」
「ロンです!!」
「何だとっ!?」

そんなことは露知らず、手牌にただ一つ余っていた白を捨てるレミリア、
逆転を賭けて放ったその牌をいきなりロン宣言されたのだからたまったものではない。

『和了 白白白白白白白白白白白白白』

「字一色! 役満です!!」
「…………おい」
「…………ちょっと」
「…………待ちなさいよ」

1位:八雲 紫         55600 ( +2000)
2位:紅 美鈴         28500 ( +2000)
3位:レミリア・スカーレット 18900 ( +4000)
4位:四季映姫・ヤマザナドゥ - 3000 ( 錯和)

「離して霊夢! こんなので三位なんで嫌よ! ワンモア! ワンモアプリーーーズ!!」
「はいはい、負け犬は負け犬同士で群れるのよ」
「美鈴ーーー! 覚えてなさいーーー!!」
「申し訳ございませんお嬢様ーーー!!」

結局レミリアの逆転は叶わず、暴れそうだったところを霊夢に引きずられてゆく、
吸血鬼の力をものともしない博麗の巫女がもう最強でいいかもしれない。

「お静かに……この閻魔は今、自分の手牌を能力を使って作り替えた……、
 あらかじめ言ってはいなかったが今言う、そういう行為は一切認めていないと……!
 繰り返す、イカサマは無条件で罰符だっ……!」
「違うんです! イカサマとかしたかったわけじゃないんです!
 もしイカサマだったとしても、それはイカサマという名の事故です!」

ステージの上では映姫がさらし首状態になっていた、
さすがは魔理沙、サングラスをかけただけで黒服そのものだ。

「紫さん……なぜお嬢様を狙ったんです?」
「特に理由なんて無いわ、一位だったからぐらいかしら?」

レミリアの姿が見えなくなった所で、美鈴が紫へとにじみ寄る。

「……本戦ではお嬢様が脅威になりえるから……ではないですか?」
「あら? あなたも本戦であのルールが採用されると考えてるの?」
「これだけの面子が揃ったのであれば、普通のルールではやれませんからね……」
「まぁ、半分はご名答ね、レミリアの能力はあのルールではそこそこの脅威にはなりえる」
「もう半分は?」
「生意気な鼻っ柱を折ってあげたかっただけよ、誰かのせいで半分も折れなかったけど」
「……本戦では、覚悟していてください」
「あらあら怖い怖い……そちらもね」

扇子の影で微笑みながら隙間に消えていく紫を、
美鈴は歯痒く見送った、主の地位を守れなかった彼女にとって、
次になすべきことはその復讐、やられたままでは終われないのだ。

「美鈴、ちょっといい?」
「あ、パチュリー様」

後方からよく知る声が聞こえれば、顔を緩めてにこやかに振り返る、
だがしかし、その声をかけたほうは真剣そのものであった。

「えーと、何でしょう?」
「あなたにお願いがあるわ」
「お願いですか?」
「本戦開始まで結構な時間があるから、その間に幻想郷の麻雀のことを教えて欲しいのよ」

何かに追い詰められているような顔で美鈴を見つめるパチュリー、
その有無を言わせぬ迫力に、美鈴も一歩後ずさる。

「あ、私は麻雀は齧った程度なのでほとんど素人でして……」
「嘘おっしゃい、役満を頭跳ねで潰したり、親の連荘を人和で止める素人なんかいないわよ」
「み、見てたんですか」
「途中からだけどね」
「うう、でも、その……」
「後でお仕置きされないように、私からレミィに口添えしてあげてもいいのよ?」
「何でもお答えしましょう、ささっ、はやく書斎に!」


こうして本戦に進む十六名が決まった、果たして誰が最強の称号を手に入れるのか、
パチュリーはこの猛者たちの中で勝ち抜けるのか、そして紫や美鈴の言うあのルールとは、
紅魔館勢の中で一人だけ脱落したレミリアを置いて、戦いはさらに激しさを増してゆく。
会社でこんなの書いてることがばれたら本当にまずい今日この頃、
実はこの予選、組み合わせは乱数によって完全ランダムで組んだのですが、
さすがはお嬢様、自ら強者を手繰り寄せて予選敗退なんてそこに痺れる憧れる!
あと書き直しの連続だったので致命的なミスをしてたりするかもしれませんが
そこは優しい目でマスタースパークを放つような指摘をよろしくお願いいたします。

では今回の予選敗退者の能力
アリス・マーガトロイド:対子を操る程度の能力
小野塚小町:筒子を操る程度の能力
レミリア・スカーレット:人和を上がる程度の能力、ダブリー即を和了る程度の能力
四季映姫・ヤマザナドゥ:八と九と白を強く操る程度の能力
幻想と空想の混ぜ人
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コメント



0.900簡易評価
1.無評価名前が無い程度の能力削除
会社で書いてるんですかw
麻雀知らないので、何となく分かるけど日本語でおk
3.90名前が無い程度の能力削除
なぜか映姫さまでヤン思い出したwwwwww1兆てーん
あとおぜうさま哀れwww
とりあえずめーりんの逆襲を楽しみにしています
6.80名前が無い程度の能力削除
会社でこのような作品を書けるあなたが好きです。
7.無評価名前が無い程度の能力削除
七対子って知ってる?
8.80名前が無い程度の能力削除
和了、白のみ神満ですかw
9.70名前が無い程度の能力削除
白黒よえーw
10.90名前が無い程度の能力削除
白のみに吹きましたwそれはねーよ映姫さまwレミ哀れすぎるwww
能力が良く考えられてて楽しいですね^^こういうトンデモ麻雀大好きです。
アリスはなんで対子なんだろう。人形>おもちゃ>トイ>対子?

11.100名前が無い程度の能力削除
続きがきてるうううう!!
美鈴の能力が気になるwなんとなくこんな感じなのかなってのはわかるんだけど。
次も期待してます!
12.90名前が無い程度の能力削除
レミリアの能力は強いなぁ……まぁ他もぶっ飛んでるけど

映姫様はピンズ248・東南西北白を操れる方が良かったかも。
黒一色なんていうローカル役もあることですし
14.無評価幻想と空想の混ぜ人削除
>ピンズ248・東南西北白
八と九と白を「強く」操るということは……?
\射命丸!/の出番の為に第二回大会での映姫様のご活躍にご期待ください。
15.40名前が無い程度の能力削除
三三四四七七八八九九1⑧ ツモ六
⇒そして一巡後、アリスは一萬をツモり、リーチを宣言する、

少牌?もしくは何かを切ってこの形?
だとすると
三三四四六七七八八九九1⑧ ツモ一
この時点でイーシャンテン

16.70三文字削除
白のみは一兆点でw
それにしても最後の雀鬼は誰だ?
やっぱり紫様?
17.無評価幻想と空想の混ぜ人削除
>少牌?もしくは何かを切ってこの形?
いえ、単純に一と六を間違えてるだけです、本当に私って⑨、
どっか一箇所書き換えると以後以前全部書き換えなきゃいけないのが辛いっ……!
(書き換える前は一萬と六萬が両方手牌にあった)

しかも読み込み不良とかで訂正できない……でも感じちゃう、くやしいっ!
20.80kou削除
前作に引き続き読ませていただきました。

麻雀知っていればめちゃくちゃ楽しめるので大好きです。

ただレミリア強いかと思ったら意外と弱くてちょっと残念。

まぁ氏の作品ではヘタれみりあが多いのでしょうがない気もしますが。



ところでローカルルールに白一色というものがありましてね

24.100名前が無い程度の能力削除
お嬢様に痺れますぜ。
37.無評価名前が無い程度の能力削除
麻雀は全然知らないけど、なぜか面白い