※これはニュークレラップの宣伝ではありません。
※二次設定が強めの作品です
にゅーくれらっぷー
さらんらっぷじゃなーいーよー
にゅーくれらっぷーはー
何でも覆える優れものー
上の歌詞を見ていただければ大体分かるだろう。しかし、分からない人もいるのであえて説明する。
この歌詞は、藤原妹紅のテーマ曲「月まで届け、不死の煙」の替え歌である。何故こんな歌が出来たと?それは、実に単純な理由だった。
以下は、理由と歌詞誕生を綴った物語である。しかし何故テーマ曲の存在を知っているかと?きっとスキマ妖怪が外の世界からそんなことをスキマを通して広めたんだろ?きっと。詳しくは知らん。
* * *
ここは竹林。この竹林の中に外の世界の元貴族の娘がいた。その娘は、藤原妹紅。老いる事も死ぬ事も無い程度の能力の持ち主であり、言ってみれば不老不死の存在である。原因は外の世界の帝が輝夜からもらった不死の薬をゲッチュし、服用したため。永遠亭の主であり引き篭り性で有名な蓬莱山輝夜をライバル視していた。理由はいろいろ。妹紅はこの竹林の中でいつも輝夜に対抗するためにいろいろと手段を模索しているのだが、いつもその手段が輝夜相手では何故かしら引き分けという非常に曖昧な結果を生み出していた。
そんなこんな妹紅が輝夜の対抗手段を練っているうちに、輝夜のテーマ曲である「竹取飛翔」の一部分のメロディに、何故かしら「えーりん!えーりん!助けてえーりん!」という叫び言葉(?)が大ブレイクした。その影響か、歌詞に引用された八意永琳だけでなく、輝夜にも人気が出た。一方妹紅には輝夜のようなブレイクするようなBGMでもなければ、輝夜のように良いとこも悪いとこも目立っていないので、輝夜よりも人気が衰えていた。輝夜に強烈なライバル心を燃やしている妹紅なので、この状況は黙ってはいられなかった。
「輝夜が自分のテーマ曲でヒットするぐらいなら、私だってヒットするわよ!!」
という変な自信を持ち始め、やがて自分でもブレイクするようなフレーズを考えるようになった。だが、一向にそれは思いつかなかった。
元々「えーりん!えーりん!」などというフレーズをつけるために神主が作曲したわけでもなく、ただ他の人たちがそう聞こえ、そのようにつけたから生まれたのである。見つけ出すには相当な時間がかかる。そんな妹紅が悩んでいるとき、竹林に顔をひょっこり出したと思えば、
「分からないときは、人にきく!!! 」
と竹林を抜け出し、人間の里へと飛んでいった。聞く人は…もちろん例のハクタクです。
* * *
「けーね!いる!ちょっと頼みごとがあるの!!」
ドンドンと玄関の扉を両手で荒々しく叩く妹紅。近所迷惑といってもそれは間違いではないだろうと言われても相違ないくらいだった。数十秒はそんな状況が続いた。そんな激しいノックに痺れを切らし、中の人がウンザリ顔で出てきた。
「五月蠅いぞ妹紅。ノックするならもっとやさしくやれ。ドアが傷つく」
ぶっきら棒に口を開いた女性は、歴史を食べる程度の能力と歴史を創る程度の能力の二つの能力を持つ半人半獣の上白沢慧音だった。幻想郷でも数少ない常識を持った人である。
「何の用だ。」
慧音の冷たい視線が妹紅に突き刺さる。ちょっと妹紅も「うっ」と引きながらも、まずは
「家に入れてくれ。慧音。すぐに終わらない用事だと思うから」
* * *
「茶でも飲むか?」
「うん。お願い」
妹紅に冷たい態度をしておいてもなんだかんだで慧音は家に入れ、お茶まで出した。一時的な冷たさらしい。慧音は盆に二つの湯飲みを乗せ、机に運びながら妹紅に一つ訊いた。
「妹紅。頼みごとって何だ?お前がここに来るのは大体夕食に困ったときだけだが…」
「別に夕食詰まりで来たりしないのに…。実はさ、私の替え歌作ってほしいの!」
「ん?どんなのだ?」
「私のテーマ曲」
ズズズ……。しばらくお茶をすする音だけがした。慧音はお茶を飲み干すと、湯飲みを台所に持っていき、椅子に座りなおすと真剣な顔で
「無理」
の一言だった。ええええーーーーー!!妹紅は顔を凍りつかせたまま心の中で叫んだ。ここで叫び声と同じように大仰なポーズでリアクションをとれば、もしここに他人が2、3人ほどいたら間違いなく変な奴(元からに近いが)と見られてしまうだろうと思うくらいの慧音の真剣さと同時の冷ややかな視線で妹紅を見ていたためあえて妹紅はリアクションをとらなかった。だが、いつもの慧音だったら「いいぞ」とか、「任せとけ」などの承諾してくれるのに、今回は「無理」の一言だったからショックは大仰なリアクションに等しかった。だが妹紅は
椅子に立ち上がり、バン!と両手を机に打ちつけた。
「なんで無理なの!?いつもだったらOK言ってくれるのに!」
慧音は、金閣寺によく似た帽子を外し、中から茶菓子を取り出した。そして茶菓子の袋を開けると口に運んでいった。せんべいのようだ。バリバリとせんべいを食べながら慧音はウンザリした顔で逆ギレしている妹紅に言った。
「あのな妹紅。いくら私でも無理なことがある。私が今まで承諾できたのは、私が知っている知識の範囲で解答できる質問だった。だが、 今回の質問は替え歌、しかもお前の曲の替え歌だ。いくら私でもさすがに音楽関連では私の解答できる範囲ではない。頼むならあの夜雀にしろ。音楽関連の以来は奴に相応しい」
「いやっ!けーねじゃないきゃやだ!」
「だが無理は無理だ。諦めろ!それに替え歌に固執しなくても……、っておい!何しているんだ!」
妹紅はほしいものを買ってもらえず、駄々をこねる幼い子供のように床でじたばた動き出した。その駄々こねっぷりは、元貴族の娘とはおもえぬくらいの姿だった。
「やーだー!けーねじゃなきゃやーだ!」
そんな風にギャーギャー叫びながらじたばた動く妹紅。はっきり言って五月蠅かった。慧音は無視をしようと部屋から出た。だが、部屋を出ても叫び声はやまなかった。さすがにこれ以上暴れてもらうと困ると思い、慧音はため息をつき、額に手を当てながら部屋に戻り、暴れる妹紅に言った。
「分かった分かった。仕方が無い、作ってやるよ」
「やーだー!やーd……。ってホント!」
ウンザリしながら慧音は頷いた。
「やったぁぁぁぁぁ!!!ありがとけーね!」
「やめろ。抱きつくな!ってそれにキスしようとするな!こら!やめろ!!やめろってぇーーーー!!」
こうして慧音と妹紅による、替え歌創作計画が始まった。
* * *
「でも替え歌作るっていってもどういう風につくったらいいんだろ?」
窓際で妹紅は空を見てつぶやいた。
「覚えやすい方がいいだろ?短めのフレーズを繰り返しながらとか」
奥で慧音がタオルで顔を拭いていた。先ほどの妹紅の行動はうれしさあまりに至った行動であったため、本気の接吻ではなかった。だが慧音は少し顔を紅潮していた。本気にしていたらしい。少しだけ。少しだけね。
「とりあえず輝夜の曲で盗めることは盗んでおいたらどうだ?意外といいのが思い浮かぶかもな」
「盗めることかぁ…」
小さくため息をしながら妹紅は、例の輝夜の曲を口ずさんだ。すると何かを閃いたのか、窓辺の椅子から立ち上がり、ニコニコと笑顔を慧音に見せながら言った。
「ねぇ慧音こういうのはどう?」
そう言うと妹紅は今閃いた歌詞を慧音に歌った。読者の皆さんも心の中でそっと歌ってみてください。
「満月ーの慧音はーとてもキモすーぎーる♪みーんなかーらーはーキモけーねって呼ばれてるー♪っていうのはどう?」
「嫌」
「えっ!何で!」
「そんなの必然的に嫌という答えが出るだろ!第一なんだよ!キモけーねって。そりゃ、満月のときの私は確かにキモイと思うけど…」
「でも慧音が盗めることは盗んでおけって言ったから」
ああ、きっと妹紅は他人の名前を使って歌えばいいと思っているんだ。でもキモけーねは酷いだろ?こんなのが広まったら…。確かに満月のときはホントにキモイが、あまり広まりたくない事実だ。もし広まれば満月のときのみならず、常にキモイという風に誤解をまねかれるかもしれない。慧音は背後の悪寒に襲われ、ブルっと震えた。
「もっとマシな歌詞とか作れないのか? 」
溜息混じりで慧音は妹紅に頼んだ。
「うー。じゃあ分かったよ。作り直す。……いいと思ったのになぁ……」
あれで妹紅にとっては良作だったらしい。自分の人気のためにやるんだったら人を貶してまでもやるのかよ。慧音は不安そうに腕を組みながら妹紅を見ていた。
「じゃあこれはどう?」
「今度はキモけーねとかそういうのじゃないだろうな?」
「心配しなくてもいいでしょ?じゃあ歌うよ」
少女独唱中 now singing...
歌い終えた。妹紅がふぅと小さく息を漏らした。慧音はというと...やっぱりなんだか納得いかなさそうな目だった。腕を組みながら慧音は心の中でつぶやいた。こいつ…歌詞に人を貶す事ばっか言っている…。簡単どういうのかを説明しておく。八雲紫はババアとか、十六夜咲夜はPAD長だ、などなど。まぁ、こんなの広まったらどんなことが起るか大体予想がつく。きっと広まった瞬間にスキマ送りか、例のザ・ワールド送りにされ、咲夜御愛用のナイフまみれになる始末だろう。まぁ死なないが。だが慧音はそんな何が起るかわからないスキマに送られ、咲夜のザ・ワールドで一瞬のうちにナイフ串刺し地獄になる妹紅を想像したか、慧音は一瞬で顔を青ざめた。妹紅はそんな慧音の顔が視界に、入ったのか、あわてて言った。
「や、やっぱりマズイよね」
「ああ、マズイ……。非常にマズすぎる」
「でもさ、慧音さっきから私の歌詞にケチつけるけど……」
まさかな。慧音は僅かな不安がよぎった。そして、
「慧音こそ何かいい歌詞とかあるの?ケチつけるけど……」
ああ、言いやがった。
「だがなぁ。そういい歌詞あるとか言われてもすぐに思いつくわけないし、第一考えていない。悪いが、私は音楽のセンスはあまり無いと言ったほうがいいかもしれない」
「でも私に作詞任せるとどうせまた慧音は『だめ』とか『やめろ。そんな歌詞』とか言うんでしょ? 」
「……」
慧音は言い返せなかった。確かに私は妹紅の言うように、妹紅に任せればまたどんな歌詞が出来上がるか分からない。むしろ任せるのが間違っているかもしれない。かと言って私が作詞をしようとしてもさっき妹紅に『音楽のセンスが無い』と告発してしまったから、また後で『やっぱり作詞をする』といえばきっと妹紅の気を悪くしてしまうかもしれない。幻想郷でも一番理知的と呼ぶに相応しい半人が、そこで立ちつくしていた。
「あ、もうこんな時間か」
妹紅は慧音の気を悪くさせないようにしたか、ふいに窓の外を見た。外は夕日で空が淡い橙色に染まっていた。
「あっ!」
慧音は何かを思い出したかのように突然声をあげた。
「どうしたんだ?」
「いや、今日の分の食材を買わなければ行けないんだ」
「へー」
「しばらくは家を空けなくてはいけないとだめなんだ。だから妹紅。留守番を頼む」
「えー」
「嫌がるな。すぐに終わる」
妹紅がえー、へーとか生返事をしているうちに慧音は財布やら籠やらを用意しきっていた。
「じゃあ妹紅。留守番をよろしくな」
「はーい……って!私まだいいとか一言も言ってないよ!」
バタン!慧音は耳を塞ぎながらさっさと行ってしまった。ドアが閉まる音が空しく響いた。
「あーもう」
いらいらしながら妹紅はため息した。ぐぅ~。空腹の音が誰もいない空間に響き渡った。誰もいないのに妹紅はちょっと顔を紅潮させた。恥ずかしいよな、そういうのは。妹紅は何も言わず、何か食べ物はないかと台所へ行った。冷蔵庫(香霖堂で金も払わず頂いた品)をバタンと開けると、ほのかに感じる冷気とともに、ドサッと何かが冷蔵庫から零れ落ちた。
「なんだこれ?」
落ちた物は何故かラップだった。ラップにはNEWクレラップと書かれていた。何でこんなとこにラップなんて入れてるんだろ?不思議。ひんやりと冷蔵されたクレラップを冷蔵庫に戻そうとしたときふとこんなことをつぶやいた。
「にゅ~くれらっぷ~。さらんらっぷじゃな~い~よ~……」
はっ!妹紅は一瞬で何かを閃いた。きっと分かるだろう。月まで届け、不死の煙の替え歌のほんの一部が出来上がった瞬間だった。そのときをきっかけに妹紅は空腹感を忘れ、さっきまで抱いていたすっきりとしない感じも忘れ、そして冷蔵庫のドアを閉めることも忘れ、宙に舞う様な気分になった。わーい!わーい!とクレラップを手に取りながらスキップをした。何故スキップをしたかはよー分からんが、とにかく嬉しいらしい。しばらく慧音が帰ってくるまでは時間の感覚を忘れ、ずっとにぱ~っとしていたし、飛び跳ねたりしていた。
* * *
「妹紅が……おかしくなった……」
口からつい一言、漏れてしまった。本当なら心の中でそう呟こうとしたが、あまりにも突然だったから出ないほうがおかしいといったほうが正しいだろう。なにせ家に到着した途端、変に飛び跳ねているわ、にやけているわで驚くどころかむしろ精神的にひいている。
「あー。えーっ……と」
言葉がうまく続かない。いつもクールな慧音でもさすがにこんな状況に突然直面したら動揺するのも分かる。何をすればいいか思案しているうちに、妹紅の発狂振りは更に増した。どこぞの厄神かのようにぐるぐると回転していた。
「許せ、妹紅。そいやぁー!!」
グサッ!慧音のクナイがそのまま、もこたんにHITしたお!はわわ~と間抜けな声をあげながら、バタンと倒れた。ふぅー!いちいち面倒な奴。慧音は妹紅をひそかにのろった。
* * *
う~。でこが痛いなぁ…。妹紅は額に感じるちくちくするような痛みを感じながらノロノロと起き上がった。妙に口の端が冷たいと思えば、涎を垂らしていた。うー汚ね。袖でぐいぐいと拭きながら、妹紅は徐々に目を覚ました。気がつけば自分はソファに座っていたことに気付いた。丁寧にも毛布まで掛けてあった。だんだんと気絶する前の記憶が戻ってきた。そーいや私けーねにクナイぶっ刺されて気絶したんだっけ……。ぼーっと机の上に乗っているお椀やら皿やらを見ていた。
「ようやくお目覚めか?妹紅」
慧音が奥の台所から顔を出した。
「ほえ?」
間抜けな返事が妹紅の口から出てしまった。目が覚めているとはいえまだ寝ぼけている様子だ。
ぐぅ~。空腹の音が、部屋中に響いた。
「お、お前を待たしてしまったせいで、ちょ、ちょっと空腹が激しくなってしまったじゃないか!は、早く飯を食べるぞ!」
慧音は視線を妹紅からそらし、ちょっと照れ気味に言った。ちらりと妹紅に視線を戻すと未だに妹紅は目が覚めておらず、時折「ほへー」などと本当に間抜けな声を漏らしている。ああ、こんな妹紅を見て抱きつきたくなる私はもう重症かなぁ…。慧音がちょっと心の中で嘆いている間に妹紅は椅子に座って勝手に食べ始めていた。今日のメニューはどこぞの妖怪に「SIMPLEだね☆」と言われるようなのだった。白米に味噌汁、主菜は焼き魚に付け合せのおろし大根。副菜はおひたしだ。ああ、SIMPLEだね。
「おい!妹紅勝手に食べるな。食前の挨拶はしたのか?」
「したおー。うん。したー」
ああ、反応の仕方……。可愛い……。…………やっぱり重症だ。私。病院いかなくては……。慧音は本格的に嘆いてきた。
「ところで妹紅」
「んー? 」
「さっきお前は飛び跳ねたりニヤついていたりしていたがアレは何だったんだ? 」
「あー!」
妹紅は思い出したかのように突然声をあげた。まさしく妹紅は大事なことを思い出した。突然の大声に慧音は味噌汁を飲みかけだったからお椀の
中で吹いた。
「けーね私すっごく重要なこと思い出した!すごく重要なことを思い出したの!」
大事なことなので2回言いました。
「ケホケホ…。何だ…。大事なこととは……」
「にゅーくれらっぷ!」
「は?」
「だから!にゅーくれらっぷだってば!」
「…。妹紅?まだ寝てるのか」
「全然。目覚めたよ」
「じゃあ、そのクレラップがどうしたというんだ。それが大事なことか?」
「うん」
「どんな?」
「替え歌の歌詞のことだよ」
「出来たのか」
「うん。…って、え!ちょ、反応薄!」
「お前のことだ。内容によっては却下するつもりだからな」
「でも今度はいけるって!」
「だがなぁ…。やっぱr… 」
「聞いてて。絶対いいって!」
食べかけのまま立ち上がって歌う姿勢を作った。最後まで言わせろ。……でもかわいいからいっか…。ああ、私きっと碌な人生歩むことができな
いな…。慧音は妹紅がかわいい(きっとそれより上かもしれない)と思う自分を卑下した。気がつけば妹紅は既に歌い始めていた。
「にゅーくれらっぷー。さらんらっぷじゃなーいーよ… 」
「え?終わり?」
うなずいた。短けぇーーー!そんなん替え歌のうちに入らんぞ!妹紅!第一そんだけであれほどハイテンションになるなんて一体どんだけ単純なんだよ。だから妹紅は輝夜にちょっかい出されるんだよ!!慧音は心の中で激しくつっこんだ。だがさすがに妹紅も出来たときよりも幾分か冷静になっているのでこの短さに不満を感じている。
「うーん。何か物足りない…」
「それはそうだろ?それに続く歌詞を考えないと、あの『えーりん!えーりん!』に人気が追いつかないぞ」
「はぁ…。そんなこと言うけど、どんな歌詞がいいんだろう?」
「ラップの長所を引き出すような歌詞はどうだ?」
「長所?うー…ん。ラップの長所かぁ…」
ラップの長所
・食べ残しがある皿にふたの代わりとして覆える。
・上のことから保存に適している。
慧音は頭の中でラップの長所を簡単に箇条書きした。要するに、何でも覆える優れものというわけか…。…ん?何でも、覆える、優れもの…。慧音の脳内で歌詞の続きが閃いた。そして強く確信した。これはイケる!
「妹紅!」
「うわっ!びっくりした!ど、どうしたの?慧音」
「続きの歌詞が閃いた!こういうのはどうだ!?にゅーくれらっぷーさ。さらんらっぷじゃなーいよー。にゅーくれらっぷーはー何でも覆える優れものー♪」
妹紅は目を点になり、口がぽかんと開けたまま慧音を見ていた。
「ん?も、妹紅?やっぱり…駄目…か?」
「うわーーーーーーーーーーーーーーーーーい!」
「うおっ!」
妹紅は思いいっきりな笑顔になって慧音に抱きついた。
「あわわわわわわ。も、もももももももも妹紅?だだだ大丈夫か?」
慧音は抱きつかれてかなり顔が赤い。
「ぜんっぜん大丈夫ー!それよりもうれしい!やっとできた!これで輝夜に対抗できるわ!いやほーい!」
「だ、だだだがまだ完全に出来上がっているわけでもない!すぐに広めるにはままままだ時間が要るぞ!」
抱きつかれたせいか舌があまりまわってなく、二回かんだ。すると妹紅は慧音の手をつないだ。
「な、何をする気だ?」
「5」
「は?」
「4」
「まさか…」
「3」
「ちょ、ちょっと妹紅!」
「2」
「や、やめろ!」
「1」
「やめろぉーーーーー!」
「0」
「やめてくれ!!もーーーこーーーーーーー!」
「イグニッション・ファイヤーーーーーー!」
妹紅は何故か足の裏から炎を吹き出し、某ステルスアクションゲームの宇宙服を着た兵士かの如く、轟音と嫌がる慧音ともに思いっきり天井を突き破って飛んでいった。そして、そのままどこかへハイスピードで飛んでいった。ちなみに彼女の足の裏から(正確には靴の裏)噴出した炎は憤怒の炎ではないということだけは言っておく。
* * *
「あー。今日は…綺麗な満月ね…」
大の字になって妹紅は竹林の中で寝転がっていた。見上げる空には一点の曇りも無く、何処も欠けていない本当に見事な満月が暗い空に怪しいと思えるくらい輝いていた。そう、怪しい奴が1人いた。
「もぉ~~こぉ~~~~」
ドキッ!妹紅は本能的に恐怖を感じた。そう、背後にはこの満月の日じゃなければ誰よりも頼れる存在だが、この日だけは誰よりも恐怖を感じる存在だった。おそるおそる振り向けば、緑の服にところどころ緑に染まった長い髪の毛、そして頭には二本の角で、片方にはリボンがついてる。そして目を輝かせながら、「ハァ、ハァ」と息を切らしている。そこにはハクタクになった野獣(満月のときのみ)上白沢慧音がいた。
「妹紅~よくも私を派手にぶっ飛ばしたね…。その代償として…」
二本の角が月の光で輝いた。
「お前の尻を掘ってやるぅーーーー!」
「ギャーー!」
妹紅はそれ以外何も言葉が出なかった。妹紅は腰も抜けて叫ぶことしか出来なかった。じりじりと慧音は妹紅を追い詰め、そして……caved!!!!
妹紅にとって天国から一気に地獄へと突き落とされた日だった。妹紅は、慧音と一緒にいる時(特に満月)には座薬は常備するという事を身を持って知った。
* * *
地獄の夜が明けた。その後妹紅は泣きながらも射命丸に例の替え歌を教え、広めるように言ったらしい。
で、その「月まで届け、不死の煙」の替え歌は幻想郷に広まったらしい。
ちなみに妹紅はしばらく永遠亭の近くに住んだ。なぜなら、そこに座薬があるからさ!!
終わり
※二次設定が強めの作品です
にゅーくれらっぷー
さらんらっぷじゃなーいーよー
にゅーくれらっぷーはー
何でも覆える優れものー
上の歌詞を見ていただければ大体分かるだろう。しかし、分からない人もいるのであえて説明する。
この歌詞は、藤原妹紅のテーマ曲「月まで届け、不死の煙」の替え歌である。何故こんな歌が出来たと?それは、実に単純な理由だった。
以下は、理由と歌詞誕生を綴った物語である。しかし何故テーマ曲の存在を知っているかと?きっとスキマ妖怪が外の世界からそんなことをスキマを通して広めたんだろ?きっと。詳しくは知らん。
* * *
ここは竹林。この竹林の中に外の世界の元貴族の娘がいた。その娘は、藤原妹紅。老いる事も死ぬ事も無い程度の能力の持ち主であり、言ってみれば不老不死の存在である。原因は外の世界の帝が輝夜からもらった不死の薬をゲッチュし、服用したため。永遠亭の主であり引き篭り性で有名な蓬莱山輝夜をライバル視していた。理由はいろいろ。妹紅はこの竹林の中でいつも輝夜に対抗するためにいろいろと手段を模索しているのだが、いつもその手段が輝夜相手では何故かしら引き分けという非常に曖昧な結果を生み出していた。
そんなこんな妹紅が輝夜の対抗手段を練っているうちに、輝夜のテーマ曲である「竹取飛翔」の一部分のメロディに、何故かしら「えーりん!えーりん!助けてえーりん!」という叫び言葉(?)が大ブレイクした。その影響か、歌詞に引用された八意永琳だけでなく、輝夜にも人気が出た。一方妹紅には輝夜のようなブレイクするようなBGMでもなければ、輝夜のように良いとこも悪いとこも目立っていないので、輝夜よりも人気が衰えていた。輝夜に強烈なライバル心を燃やしている妹紅なので、この状況は黙ってはいられなかった。
「輝夜が自分のテーマ曲でヒットするぐらいなら、私だってヒットするわよ!!」
という変な自信を持ち始め、やがて自分でもブレイクするようなフレーズを考えるようになった。だが、一向にそれは思いつかなかった。
元々「えーりん!えーりん!」などというフレーズをつけるために神主が作曲したわけでもなく、ただ他の人たちがそう聞こえ、そのようにつけたから生まれたのである。見つけ出すには相当な時間がかかる。そんな妹紅が悩んでいるとき、竹林に顔をひょっこり出したと思えば、
「分からないときは、人にきく!!! 」
と竹林を抜け出し、人間の里へと飛んでいった。聞く人は…もちろん例のハクタクです。
* * *
「けーね!いる!ちょっと頼みごとがあるの!!」
ドンドンと玄関の扉を両手で荒々しく叩く妹紅。近所迷惑といってもそれは間違いではないだろうと言われても相違ないくらいだった。数十秒はそんな状況が続いた。そんな激しいノックに痺れを切らし、中の人がウンザリ顔で出てきた。
「五月蠅いぞ妹紅。ノックするならもっとやさしくやれ。ドアが傷つく」
ぶっきら棒に口を開いた女性は、歴史を食べる程度の能力と歴史を創る程度の能力の二つの能力を持つ半人半獣の上白沢慧音だった。幻想郷でも数少ない常識を持った人である。
「何の用だ。」
慧音の冷たい視線が妹紅に突き刺さる。ちょっと妹紅も「うっ」と引きながらも、まずは
「家に入れてくれ。慧音。すぐに終わらない用事だと思うから」
* * *
「茶でも飲むか?」
「うん。お願い」
妹紅に冷たい態度をしておいてもなんだかんだで慧音は家に入れ、お茶まで出した。一時的な冷たさらしい。慧音は盆に二つの湯飲みを乗せ、机に運びながら妹紅に一つ訊いた。
「妹紅。頼みごとって何だ?お前がここに来るのは大体夕食に困ったときだけだが…」
「別に夕食詰まりで来たりしないのに…。実はさ、私の替え歌作ってほしいの!」
「ん?どんなのだ?」
「私のテーマ曲」
ズズズ……。しばらくお茶をすする音だけがした。慧音はお茶を飲み干すと、湯飲みを台所に持っていき、椅子に座りなおすと真剣な顔で
「無理」
の一言だった。ええええーーーーー!!妹紅は顔を凍りつかせたまま心の中で叫んだ。ここで叫び声と同じように大仰なポーズでリアクションをとれば、もしここに他人が2、3人ほどいたら間違いなく変な奴(元からに近いが)と見られてしまうだろうと思うくらいの慧音の真剣さと同時の冷ややかな視線で妹紅を見ていたためあえて妹紅はリアクションをとらなかった。だが、いつもの慧音だったら「いいぞ」とか、「任せとけ」などの承諾してくれるのに、今回は「無理」の一言だったからショックは大仰なリアクションに等しかった。だが妹紅は
椅子に立ち上がり、バン!と両手を机に打ちつけた。
「なんで無理なの!?いつもだったらOK言ってくれるのに!」
慧音は、金閣寺によく似た帽子を外し、中から茶菓子を取り出した。そして茶菓子の袋を開けると口に運んでいった。せんべいのようだ。バリバリとせんべいを食べながら慧音はウンザリした顔で逆ギレしている妹紅に言った。
「あのな妹紅。いくら私でも無理なことがある。私が今まで承諾できたのは、私が知っている知識の範囲で解答できる質問だった。だが、 今回の質問は替え歌、しかもお前の曲の替え歌だ。いくら私でもさすがに音楽関連では私の解答できる範囲ではない。頼むならあの夜雀にしろ。音楽関連の以来は奴に相応しい」
「いやっ!けーねじゃないきゃやだ!」
「だが無理は無理だ。諦めろ!それに替え歌に固執しなくても……、っておい!何しているんだ!」
妹紅はほしいものを買ってもらえず、駄々をこねる幼い子供のように床でじたばた動き出した。その駄々こねっぷりは、元貴族の娘とはおもえぬくらいの姿だった。
「やーだー!けーねじゃなきゃやーだ!」
そんな風にギャーギャー叫びながらじたばた動く妹紅。はっきり言って五月蠅かった。慧音は無視をしようと部屋から出た。だが、部屋を出ても叫び声はやまなかった。さすがにこれ以上暴れてもらうと困ると思い、慧音はため息をつき、額に手を当てながら部屋に戻り、暴れる妹紅に言った。
「分かった分かった。仕方が無い、作ってやるよ」
「やーだー!やーd……。ってホント!」
ウンザリしながら慧音は頷いた。
「やったぁぁぁぁぁ!!!ありがとけーね!」
「やめろ。抱きつくな!ってそれにキスしようとするな!こら!やめろ!!やめろってぇーーーー!!」
こうして慧音と妹紅による、替え歌創作計画が始まった。
* * *
「でも替え歌作るっていってもどういう風につくったらいいんだろ?」
窓際で妹紅は空を見てつぶやいた。
「覚えやすい方がいいだろ?短めのフレーズを繰り返しながらとか」
奥で慧音がタオルで顔を拭いていた。先ほどの妹紅の行動はうれしさあまりに至った行動であったため、本気の接吻ではなかった。だが慧音は少し顔を紅潮していた。本気にしていたらしい。少しだけ。少しだけね。
「とりあえず輝夜の曲で盗めることは盗んでおいたらどうだ?意外といいのが思い浮かぶかもな」
「盗めることかぁ…」
小さくため息をしながら妹紅は、例の輝夜の曲を口ずさんだ。すると何かを閃いたのか、窓辺の椅子から立ち上がり、ニコニコと笑顔を慧音に見せながら言った。
「ねぇ慧音こういうのはどう?」
そう言うと妹紅は今閃いた歌詞を慧音に歌った。読者の皆さんも心の中でそっと歌ってみてください。
「満月ーの慧音はーとてもキモすーぎーる♪みーんなかーらーはーキモけーねって呼ばれてるー♪っていうのはどう?」
「嫌」
「えっ!何で!」
「そんなの必然的に嫌という答えが出るだろ!第一なんだよ!キモけーねって。そりゃ、満月のときの私は確かにキモイと思うけど…」
「でも慧音が盗めることは盗んでおけって言ったから」
ああ、きっと妹紅は他人の名前を使って歌えばいいと思っているんだ。でもキモけーねは酷いだろ?こんなのが広まったら…。確かに満月のときはホントにキモイが、あまり広まりたくない事実だ。もし広まれば満月のときのみならず、常にキモイという風に誤解をまねかれるかもしれない。慧音は背後の悪寒に襲われ、ブルっと震えた。
「もっとマシな歌詞とか作れないのか? 」
溜息混じりで慧音は妹紅に頼んだ。
「うー。じゃあ分かったよ。作り直す。……いいと思ったのになぁ……」
あれで妹紅にとっては良作だったらしい。自分の人気のためにやるんだったら人を貶してまでもやるのかよ。慧音は不安そうに腕を組みながら妹紅を見ていた。
「じゃあこれはどう?」
「今度はキモけーねとかそういうのじゃないだろうな?」
「心配しなくてもいいでしょ?じゃあ歌うよ」
少女独唱中 now singing...
歌い終えた。妹紅がふぅと小さく息を漏らした。慧音はというと...やっぱりなんだか納得いかなさそうな目だった。腕を組みながら慧音は心の中でつぶやいた。こいつ…歌詞に人を貶す事ばっか言っている…。簡単どういうのかを説明しておく。八雲紫はババアとか、十六夜咲夜はPAD長だ、などなど。まぁ、こんなの広まったらどんなことが起るか大体予想がつく。きっと広まった瞬間にスキマ送りか、例のザ・ワールド送りにされ、咲夜御愛用のナイフまみれになる始末だろう。まぁ死なないが。だが慧音はそんな何が起るかわからないスキマに送られ、咲夜のザ・ワールドで一瞬のうちにナイフ串刺し地獄になる妹紅を想像したか、慧音は一瞬で顔を青ざめた。妹紅はそんな慧音の顔が視界に、入ったのか、あわてて言った。
「や、やっぱりマズイよね」
「ああ、マズイ……。非常にマズすぎる」
「でもさ、慧音さっきから私の歌詞にケチつけるけど……」
まさかな。慧音は僅かな不安がよぎった。そして、
「慧音こそ何かいい歌詞とかあるの?ケチつけるけど……」
ああ、言いやがった。
「だがなぁ。そういい歌詞あるとか言われてもすぐに思いつくわけないし、第一考えていない。悪いが、私は音楽のセンスはあまり無いと言ったほうがいいかもしれない」
「でも私に作詞任せるとどうせまた慧音は『だめ』とか『やめろ。そんな歌詞』とか言うんでしょ? 」
「……」
慧音は言い返せなかった。確かに私は妹紅の言うように、妹紅に任せればまたどんな歌詞が出来上がるか分からない。むしろ任せるのが間違っているかもしれない。かと言って私が作詞をしようとしてもさっき妹紅に『音楽のセンスが無い』と告発してしまったから、また後で『やっぱり作詞をする』といえばきっと妹紅の気を悪くしてしまうかもしれない。幻想郷でも一番理知的と呼ぶに相応しい半人が、そこで立ちつくしていた。
「あ、もうこんな時間か」
妹紅は慧音の気を悪くさせないようにしたか、ふいに窓の外を見た。外は夕日で空が淡い橙色に染まっていた。
「あっ!」
慧音は何かを思い出したかのように突然声をあげた。
「どうしたんだ?」
「いや、今日の分の食材を買わなければ行けないんだ」
「へー」
「しばらくは家を空けなくてはいけないとだめなんだ。だから妹紅。留守番を頼む」
「えー」
「嫌がるな。すぐに終わる」
妹紅がえー、へーとか生返事をしているうちに慧音は財布やら籠やらを用意しきっていた。
「じゃあ妹紅。留守番をよろしくな」
「はーい……って!私まだいいとか一言も言ってないよ!」
バタン!慧音は耳を塞ぎながらさっさと行ってしまった。ドアが閉まる音が空しく響いた。
「あーもう」
いらいらしながら妹紅はため息した。ぐぅ~。空腹の音が誰もいない空間に響き渡った。誰もいないのに妹紅はちょっと顔を紅潮させた。恥ずかしいよな、そういうのは。妹紅は何も言わず、何か食べ物はないかと台所へ行った。冷蔵庫(香霖堂で金も払わず頂いた品)をバタンと開けると、ほのかに感じる冷気とともに、ドサッと何かが冷蔵庫から零れ落ちた。
「なんだこれ?」
落ちた物は何故かラップだった。ラップにはNEWクレラップと書かれていた。何でこんなとこにラップなんて入れてるんだろ?不思議。ひんやりと冷蔵されたクレラップを冷蔵庫に戻そうとしたときふとこんなことをつぶやいた。
「にゅ~くれらっぷ~。さらんらっぷじゃな~い~よ~……」
はっ!妹紅は一瞬で何かを閃いた。きっと分かるだろう。月まで届け、不死の煙の替え歌のほんの一部が出来上がった瞬間だった。そのときをきっかけに妹紅は空腹感を忘れ、さっきまで抱いていたすっきりとしない感じも忘れ、そして冷蔵庫のドアを閉めることも忘れ、宙に舞う様な気分になった。わーい!わーい!とクレラップを手に取りながらスキップをした。何故スキップをしたかはよー分からんが、とにかく嬉しいらしい。しばらく慧音が帰ってくるまでは時間の感覚を忘れ、ずっとにぱ~っとしていたし、飛び跳ねたりしていた。
* * *
「妹紅が……おかしくなった……」
口からつい一言、漏れてしまった。本当なら心の中でそう呟こうとしたが、あまりにも突然だったから出ないほうがおかしいといったほうが正しいだろう。なにせ家に到着した途端、変に飛び跳ねているわ、にやけているわで驚くどころかむしろ精神的にひいている。
「あー。えーっ……と」
言葉がうまく続かない。いつもクールな慧音でもさすがにこんな状況に突然直面したら動揺するのも分かる。何をすればいいか思案しているうちに、妹紅の発狂振りは更に増した。どこぞの厄神かのようにぐるぐると回転していた。
「許せ、妹紅。そいやぁー!!」
グサッ!慧音のクナイがそのまま、もこたんにHITしたお!はわわ~と間抜けな声をあげながら、バタンと倒れた。ふぅー!いちいち面倒な奴。慧音は妹紅をひそかにのろった。
* * *
う~。でこが痛いなぁ…。妹紅は額に感じるちくちくするような痛みを感じながらノロノロと起き上がった。妙に口の端が冷たいと思えば、涎を垂らしていた。うー汚ね。袖でぐいぐいと拭きながら、妹紅は徐々に目を覚ました。気がつけば自分はソファに座っていたことに気付いた。丁寧にも毛布まで掛けてあった。だんだんと気絶する前の記憶が戻ってきた。そーいや私けーねにクナイぶっ刺されて気絶したんだっけ……。ぼーっと机の上に乗っているお椀やら皿やらを見ていた。
「ようやくお目覚めか?妹紅」
慧音が奥の台所から顔を出した。
「ほえ?」
間抜けな返事が妹紅の口から出てしまった。目が覚めているとはいえまだ寝ぼけている様子だ。
ぐぅ~。空腹の音が、部屋中に響いた。
「お、お前を待たしてしまったせいで、ちょ、ちょっと空腹が激しくなってしまったじゃないか!は、早く飯を食べるぞ!」
慧音は視線を妹紅からそらし、ちょっと照れ気味に言った。ちらりと妹紅に視線を戻すと未だに妹紅は目が覚めておらず、時折「ほへー」などと本当に間抜けな声を漏らしている。ああ、こんな妹紅を見て抱きつきたくなる私はもう重症かなぁ…。慧音がちょっと心の中で嘆いている間に妹紅は椅子に座って勝手に食べ始めていた。今日のメニューはどこぞの妖怪に「SIMPLEだね☆」と言われるようなのだった。白米に味噌汁、主菜は焼き魚に付け合せのおろし大根。副菜はおひたしだ。ああ、SIMPLEだね。
「おい!妹紅勝手に食べるな。食前の挨拶はしたのか?」
「したおー。うん。したー」
ああ、反応の仕方……。可愛い……。…………やっぱり重症だ。私。病院いかなくては……。慧音は本格的に嘆いてきた。
「ところで妹紅」
「んー? 」
「さっきお前は飛び跳ねたりニヤついていたりしていたがアレは何だったんだ? 」
「あー!」
妹紅は思い出したかのように突然声をあげた。まさしく妹紅は大事なことを思い出した。突然の大声に慧音は味噌汁を飲みかけだったからお椀の
中で吹いた。
「けーね私すっごく重要なこと思い出した!すごく重要なことを思い出したの!」
大事なことなので2回言いました。
「ケホケホ…。何だ…。大事なこととは……」
「にゅーくれらっぷ!」
「は?」
「だから!にゅーくれらっぷだってば!」
「…。妹紅?まだ寝てるのか」
「全然。目覚めたよ」
「じゃあ、そのクレラップがどうしたというんだ。それが大事なことか?」
「うん」
「どんな?」
「替え歌の歌詞のことだよ」
「出来たのか」
「うん。…って、え!ちょ、反応薄!」
「お前のことだ。内容によっては却下するつもりだからな」
「でも今度はいけるって!」
「だがなぁ…。やっぱr… 」
「聞いてて。絶対いいって!」
食べかけのまま立ち上がって歌う姿勢を作った。最後まで言わせろ。……でもかわいいからいっか…。ああ、私きっと碌な人生歩むことができな
いな…。慧音は妹紅がかわいい(きっとそれより上かもしれない)と思う自分を卑下した。気がつけば妹紅は既に歌い始めていた。
「にゅーくれらっぷー。さらんらっぷじゃなーいーよ… 」
「え?終わり?」
うなずいた。短けぇーーー!そんなん替え歌のうちに入らんぞ!妹紅!第一そんだけであれほどハイテンションになるなんて一体どんだけ単純なんだよ。だから妹紅は輝夜にちょっかい出されるんだよ!!慧音は心の中で激しくつっこんだ。だがさすがに妹紅も出来たときよりも幾分か冷静になっているのでこの短さに不満を感じている。
「うーん。何か物足りない…」
「それはそうだろ?それに続く歌詞を考えないと、あの『えーりん!えーりん!』に人気が追いつかないぞ」
「はぁ…。そんなこと言うけど、どんな歌詞がいいんだろう?」
「ラップの長所を引き出すような歌詞はどうだ?」
「長所?うー…ん。ラップの長所かぁ…」
ラップの長所
・食べ残しがある皿にふたの代わりとして覆える。
・上のことから保存に適している。
慧音は頭の中でラップの長所を簡単に箇条書きした。要するに、何でも覆える優れものというわけか…。…ん?何でも、覆える、優れもの…。慧音の脳内で歌詞の続きが閃いた。そして強く確信した。これはイケる!
「妹紅!」
「うわっ!びっくりした!ど、どうしたの?慧音」
「続きの歌詞が閃いた!こういうのはどうだ!?にゅーくれらっぷーさ。さらんらっぷじゃなーいよー。にゅーくれらっぷーはー何でも覆える優れものー♪」
妹紅は目を点になり、口がぽかんと開けたまま慧音を見ていた。
「ん?も、妹紅?やっぱり…駄目…か?」
「うわーーーーーーーーーーーーーーーーーい!」
「うおっ!」
妹紅は思いいっきりな笑顔になって慧音に抱きついた。
「あわわわわわわ。も、もももももももも妹紅?だだだ大丈夫か?」
慧音は抱きつかれてかなり顔が赤い。
「ぜんっぜん大丈夫ー!それよりもうれしい!やっとできた!これで輝夜に対抗できるわ!いやほーい!」
「だ、だだだがまだ完全に出来上がっているわけでもない!すぐに広めるにはままままだ時間が要るぞ!」
抱きつかれたせいか舌があまりまわってなく、二回かんだ。すると妹紅は慧音の手をつないだ。
「な、何をする気だ?」
「5」
「は?」
「4」
「まさか…」
「3」
「ちょ、ちょっと妹紅!」
「2」
「や、やめろ!」
「1」
「やめろぉーーーーー!」
「0」
「やめてくれ!!もーーーこーーーーーーー!」
「イグニッション・ファイヤーーーーーー!」
妹紅は何故か足の裏から炎を吹き出し、某ステルスアクションゲームの宇宙服を着た兵士かの如く、轟音と嫌がる慧音ともに思いっきり天井を突き破って飛んでいった。そして、そのままどこかへハイスピードで飛んでいった。ちなみに彼女の足の裏から(正確には靴の裏)噴出した炎は憤怒の炎ではないということだけは言っておく。
* * *
「あー。今日は…綺麗な満月ね…」
大の字になって妹紅は竹林の中で寝転がっていた。見上げる空には一点の曇りも無く、何処も欠けていない本当に見事な満月が暗い空に怪しいと思えるくらい輝いていた。そう、怪しい奴が1人いた。
「もぉ~~こぉ~~~~」
ドキッ!妹紅は本能的に恐怖を感じた。そう、背後にはこの満月の日じゃなければ誰よりも頼れる存在だが、この日だけは誰よりも恐怖を感じる存在だった。おそるおそる振り向けば、緑の服にところどころ緑に染まった長い髪の毛、そして頭には二本の角で、片方にはリボンがついてる。そして目を輝かせながら、「ハァ、ハァ」と息を切らしている。そこにはハクタクになった野獣(満月のときのみ)上白沢慧音がいた。
「妹紅~よくも私を派手にぶっ飛ばしたね…。その代償として…」
二本の角が月の光で輝いた。
「お前の尻を掘ってやるぅーーーー!」
「ギャーー!」
妹紅はそれ以外何も言葉が出なかった。妹紅は腰も抜けて叫ぶことしか出来なかった。じりじりと慧音は妹紅を追い詰め、そして……caved!!!!
妹紅にとって天国から一気に地獄へと突き落とされた日だった。妹紅は、慧音と一緒にいる時(特に満月)には座薬は常備するという事を身を持って知った。
* * *
地獄の夜が明けた。その後妹紅は泣きながらも射命丸に例の替え歌を教え、広めるように言ったらしい。
で、その「月まで届け、不死の煙」の替え歌は幻想郷に広まったらしい。
ちなみに妹紅はしばらく永遠亭の近くに住んだ。なぜなら、そこに座薬があるからさ!!
終わり
「」の最後には句点をつけてはいけません。小学生の時に学んだはずです。
これをやられると途端に話が幼稚に見えてしまいます。
他にも細々としたことがありますが、そういった文章の最低限の決まりを守るだけで読み易さもかなり改善できますので是非やってみて下さい。
ご指導ありがとうございます。
もう少し文章について身体で理解していこうと思っています。
二次設定をさも当たり前のように使っていますね。ラップだの冷蔵庫だの、話の筋であろう替え歌だの、幻想郷に存在しないものが説明も無しに使われている。あと誤字も多いですね。
もう少し、SSというものについて考えてみると良いと思います。過去の名作を読んだりとかね。
たった二人だけの登場人物でこれだけの物語を作られたのは見事だと思います。
それとですね、↓のほうに『「」の最後には~』といったこともありましたが、一応補足を。
三点リーダー(…)は二文字分を使うのが原則だそうです。
そういえば!や?の後は一文字空けるというルールも聞いたことあります。
ですのでそのあたりは注意してください、作品的には面白かったです。
次回も期待しています。
軽いお話になるとどうしても二次設定丸出しにしてしまうのが私の悪い癖です。確かに幻想郷に存在しないものを入れたのはあまりよろしくないことだとは思いました。次回書くときはもう少し一次設定中心にするよう心がけます。
コメントありがとうございました。
>>朝夜様
70点の評価ありがとうございました。三点リーダーは2文字分使うのは初めて知りました。今後の小説を書くときの参考にさせていただきます。
コメントありがとうございました。
妹紅もかわいいw
文章のほうも投稿ごとに読みやすくなっているので、これからもっと良くなりそうです。
替え歌とは元歌に別の歌詞をつけた歌のこと。
二次設定を使うのは構わないと思う。要は使い方次第なわけで。
今作は唐突に使われており違和感を感じた。
もうちょっとひねりがほしかったです
二次設定は料理の調味料程度に考えてほしいです。
塩胡椒だけでは料理とは呼べません。
例えば「ゆかりんから加れ…華麗臭が! 」といった感じに最後に空白がくるのはおかしい気がします。
内容自体はうまいコメディーになっていてよかったですよ。
また、書き方に関しては正式文書や方眼紙でないのでそこまで厳格にする必要もないかと。面白ければそれで良いわけです。
そしてギャグも不自然、歌詞も唐突に出すぎて不自然。
正直言うと小学生の作文大会で優勝出来る程度の小説だな。
ノリに近い感じで書いてしまいました。次回からはもっと一次設定に忠実になるように努力します。
コメントありがとうございます。
>2008-03-30 02:04:01様
こんな稚拙な小説にもこたんのかわいさを見出したあなたはすばらしい!!
かわいさに気付いてくれてありがとうございます。
コメントありがとうございます。
>2008-03-30 01:52:22様
90点の評価...。ありがとうございます!
>2008-03-29 23:24:12様
一次設定に忠実な方々には本当に申し訳ございません。自分はコメディー路線に走らせると二次設定を主としてみてしまいます。今度小説を書くときは原作に忠実な方々のご意見を取り入れます。
コメントありがとうございました。
>2008-03-29 23:13:02様
ひねることができない程度の能力です。私。ですからストーリーの面白みを生み出すのが凄く難しいです。二次設定丸出しで申し訳ございません。
コメントありがとうございました。
心情を表現するときは、もう少し簡単な文章でいいと思われます。
それと、変に文が繋がっているところも多いので、もう少し改行を入れたほうが読みやすいと思います。
後、二次設定を使うのは、SSを書く上では結構レベルが高い行為です。
しっかり原作を理解している、不快にさせない文章を書ける、キャラに対する愛情がある、でないと、単なるキャラを貶めるだけのSSで終わってしまうこともあります。
はじめのうちは、原作基準のSSを書いたほうがいいと思います。
やはりどうしても独自の主観に行きがちです。
自分に走りすぎてはいけません。
まぁそれでも、やっぱり書き続ける事が大事ですよ。
酷評が目立ちますが、がんばってください。
二次設定のことは難しいですね。自分はそんなこと気にしないので
楽しめましたが……
自分が書きたいスタイルがこれだと言えるなら、一先ずはこのまま突き進んで良いと思います。
ただ、一応批判的意見はどこかに保存しておいて、行き詰った時や自分の中で何かを変えたいと思った時に見返すと良い……かもしれない。
多分今一番ネックなのは文章作法より、中学生的な好みの感性と視点……
何となく違和感と嫌悪感の根源はジェネレーションギャップに近い気がします。
早い話が5,6年前の自分ならこの話は面白いと思えたと思う。
もう少し大人の感覚や価値観があれば、受け入れてもらえそうな。
でもそれが必ずしも良いことかどうかは、私には判断できない。
いっそ私のような年老いた人間は読者対象からはずして、柔軟で若い人のためだけにこのまま書き続けるのも悪くないのかもしれない。
長文失礼しました。