Coolier - 新生・東方創想話

白い貴女に触れたくて

2008/03/27 20:01:48
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※作品集その50の「バイオレンスタイン」(のあとがきのおまけ)を読むのをお奨めします。

※オリ設定が含まれていますので苦手な方はブラウザで戻るをどうぞ。

※一部、縦書きが含まれています。










こんにちは。いい小春日和ですね。

はは、只の詩人ですよ。「春の人」とでも呼んでください。

ここで会えたのも何かの縁。1つ、物語でもしましょうか。

そうですか……では、まず詩を1つ。



      春  笛  無  弥

      色  中  花  生 

      未  聞  祗  妖
        
曽  折  有  山      
       
    看  柳  寒  雪      

※(意訳)
  弥生(三月)になっても妖の山(妖怪の山)では雪が降った。
  
  花は見えず、とても寒い

  柳の枝が折れると笛のような音を立て
  
  春はどこにも見当たらない

                        
  
ええ、これは大陸の文学です。

意味? うーん、あるにはあるんですが……

まあ物語の状況だと思ってもらえれば。

では、春と冬の物語を。隣り合う物語を。


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


この頃になるとよく夢同じ夢を見る。

天使がこちらに向かって賢明に走る夢を。

けれども距離は一向に縮まらない。

もちろん自分が避けているわけではない。

ただ、いつもその天使をぼんやりと見ていた。

ふと、ある時夢の中で天使に向かって尋ねた。

「あなたは誰?」と。

天使は驚いたように立ち止まり、口を開いた。

「私は――」

微かな声が、遥か彼方から聞こえた。


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


――目が、覚めた。

「……名前、聞けなかった」
レティ・ホワイトロックがぽつり、と呟く。

時は三月。
気付けば今レティのいる妖怪の山の中以外、幻想郷はほぼ全てが春となっていた。

本来、レティはもう幻想郷にいるべきではない。
去年まではこの頃……いや、春が少しでも感じられたならば、
すぐにレティは眠りにつき、次の冬まで眠っていた。

それが当然と思っていた。何の疑問も持たなかった。

……だが、毎年春になるかならないかという時期に見る夢が気になった。
白い天使が自分を追い続ける夢。
天使は走り続けるが、いくら待っても天使が自分に追いつく事は叶わない。
自分の方は逃げる気なんてさらさら無い。いままで特にこちらからは何もしなかった。

それが先程の夢で天使に話しかけてみたのだが、
天使は驚いて(表情は伺えなかったがそんな雰囲気だった)走るのをやめた。

当然、走ってたのをやめたのだから距離は離れるかと思った。
しかし、何故か自分と天使の距離は変わらず、むしろ近付いた気さえした。

そして、息を切らせながら口を開き、天使が何かを言おうとしたのだが……


タイミング悪くレティの目が覚めてしまった。


「…………」
レティは凍った壁によりかかりながら座っていた。

先程述べたとおり、ここは妖怪の山の中である。
ここには年中ひんやりとした洞窟がいくつかあり、
その最奥地でありったけの『冬』を溜め込んでレティは『ある日』まで粘っていた。

『ホワイトデー』といわれた、
その一ヶ月前にある、チョコを渡すイベント、『バレンタインデー』のお返しの日。
ここ、日ノ本が発祥らしいがそんなのはどうでもいい。

とにかく、自分はその『バレンタインデー』にチョコを渡したのだ、


リリーホワイトという妖精に。


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


知っていますか? 四季の廻り廻り、巡り巡る仕組みを。

おや、知りませんか。

では詩(うた)で説明いたしましょう。



春夏秋冬(しゅんかしゅうとう)廻り巡る。

四つは廻る。

四人は巡る。

夏は力が強く、いつでものさばり、夏の風物詩に御執心。

秋は二人で分け合った。冬が来ると暗くなる。

冬は一人で淋しい。淋しくて冬以外は眠ってる。

春はずっと笑顔。一番悲しい存在。

何故なら、無理して春になった彼女には春以外何もないから。


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


彼女と出会ったのは『春雪異変』という異変の最中。
春がすぐそこまで来ていたのは肌で感じていたというのに、
自分は一向に消える、というか眠くなる気配が無かった。

不思議に思ったものの、少しずつ春が近づいていたのは確かだったので、
暇つぶしがてら弾幕ごっこをしたりして遊んでいた。

そんな時、彼女に出会った。

あわあわと右往左往してどこからともなく(多分空の上から)落ちてくる
『桜の花びら』をえっちらおっちら籠に集めていたところだった。

『なにしてるの?』

『――――!』
彼女は声を掛けられた事に驚いたのか、
こちらを振り向いた途端、籠を落としてしまった。

花びらが舞い、それが幻想郷の大地に触れると大地は春色に染まった。
(あれは……)
間違いない、『春』だ。

『……ごめんなさいね』
『――――』
大事な物なのだろうに、その妖精はぼーっとこちらを見ているだけだった。

『――――』
すい、とこちらに向かってその妖精は飛んできた。
別段怒っている気配は無く、純粋に不思議そうな顔をしている。

『何?』
『――――』
妖精は無言でレティに手を伸ばしてきた。

――ぺたり、と妖精が自分の頬に触れる。

――温かい、眠くなりそうな手だった。
この感覚は覚えがある。毎年毎年感じる、春が来る直前の感覚。
瞼が重くなる。

瞼が完全に下りる一瞬前、妖精の口が映った。

微かに、妖精が口を開いている。





――ああ、触れられた。





妖精の顎を伝って何かが、流れて。
私は眠りに落ちた。



気が付くと、一本の桜の木の下にいた。
回りは桜は満開なのに、何故か自分のいる木だけが一房も花が咲いていなかった。

『……誰だったのかしら』

これが、私とリリーホワイトとの最初の記憶。


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


彼女は嬉しかった。同時に悲しかった。
『彼女』に触れられた。でもそれまでだった。
『春』は『冬』を思う。春に眠る彼女をいつも見ていた。

そう、『春』にとって『冬』との最初の記憶はもっとずっと前でした。


……おや、どうしました?

え、私の顔……ああ、熱が入りすぎて少し泣いてしまいました。

まあ、お気になさらずに。続けましょう。


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


それから、少し後のこと。
レティはリリーホワイトの事を氷精から知った。
他に霧の湖付近にいる妖精や妖怪に聞くと、様々な情報を得られた。

『名前はリリーホワイトだったっけ。白い服着てるよね。帽子も白いし』
『いっつもニコニコしててそのくせ弾幕を辺り構わず撃ってくるんだよ』
『怒った顔見たこと無いなー、悪戯してみても笑ってるし』
『喋れないらしいよ? なんでか知らないけど』
『ボロボロになってたの見たことあるなあ。多分弾幕ごっこに巻き込まれたんだね。……でも笑ってた』
『あんたみたいに春が終わると見かけなくなる』

『あいつが通ると春になるんだよ』
『春を告げる妖精だってね』

気が付いたら春告精、リリーホワイトのことばかり聞いていた。
自分がその年冬が完全に終わるその日まで……

『最近春告精のことばかり聞くけどどうしたの?』
自分でも分からない。
だけれど、あの時頬に触れた手の感触が忘れられないのだ。

――ああ、この気持ちが好きって事なのかな
いつかそう思うようになっていた。

思えばあの異変の時が一番のチャンスだったのに。
彼女に触れられたのはあの年以降無かった。春と冬にしっかりと境界が出来ているからだ。

そう、あの異変以来……


「何でもう少し冬が長引かないのかな……」
手のひらをゆっくりと上にかざす。気を抜くと視界がぼやけた。

ああ、きっと私は今眠いからぼやけるんだと――
レティは頬に涙を伝わらせながら思った。

今年のバレンタインデー、ろくにお菓子なんて作ったことは無いのにチョコを作り、
精一杯の勇気を出してそれをリリーホワイトに渡した。
なんの根拠も無く「冬が長引きそう」と思い、想いを伝える一歩になるはずだった。

実際、チョコも受け取ってもらえて、二月終わりまで何事も無く『冬』だったのに。
三月の五日頃、急激に『春』が幻想郷に広まった。

私は怖かった。もう来年には何かが変わってしまうかもしれないから、
このまま諦めて眠りに着いたらもうずっと関係は平行線になるかもしれないから……

ありったけの『冬』をかき集めて妖怪の山、そこにある自然の氷室の奥地に居座り続けた。
しかし徐々に春の気配は妖怪の山も洞窟のこんな僻地にも迫って来ていた。
しばらく、レティは眠気に耐え続けた。


今日は何日なのだろうか――?


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


先程のお話でお分かりかと思いますが、『春』も『冬』の事が好きでした。

――では何故、”『春』が起きている『冬』に会いに来なかったか”

これがこの物語の悲劇の根本なのです。

勿論、答えはまだ言いませんよ。

そのかわりヒントです。よく聞いてくださいね?



    向日葵が咲いたから
         紫陽花が枯れてしまった

  貴女が眠りについたから
          私はこの幻想に生を受けた

     また紫陽花が咲く頃には
            小さく向日葵は胎動する

    向日葵が枯れたら
         今度は彼岸花が咲くだろう


     そして私が眠りについたのならば


      次は誰かがまた生まれるだろう



お分かりになりましたか?

おや、全く持って分からないと。

うーん、そうですねえ、じゃあもっと分かり易く。

この詩の『貴女』は『冬』、『私』は『春』を指してます。

後の単語は『季節』というキーワードで……

おお、なんとなく分かりましたか。……いや、言わなくてよろしいですよ。

果たしてそれが正解かどうか……ふふ。

何、私の性格が意地悪い? 

……まあ、偶に言われます。

では、続きを


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


――カツーン

「?」
物音がした。

――カツーン

空耳ではない、確かに音がする。それも靴の足音。
洞窟で音が山彦のように響き渡り、それが耳に少し心地よくてレティは思わず眠りそうになった。

「誰……? 天狗?」
そういえば無断でここまで入ってきたのだ、誰か一人ぐらい注意しに来たのかもしれない。
あるいは季節外れのつらら見学か……
いや、もしかしたらもう自分は眠っていて夢の中なのかもしれない。

やがて、訪問者が姿を現した。
外から漏れる僅かな光源で辺りの氷塊に反射し、鈍く照らしているので誰かぐらいは判別できる。

――そこにいたのは

「…………」
白い服の、夢の中で見る天使だった。
いや、違うと目を軽く擦ると、今度こそ誰か認識できた。

「……来てくれたのね」
春告精、リリーホワイト。
口からは寒さで白い吐息が見え、
手には何かの包みがあった。

レティは立ち上がろうとしたが、体に力が入らない。その上に眠い。
「会えた」という安心感からか、急に睡魔が襲ってきたのだろう、
四肢は放られたようにだらんとし、レティは辛うじて顔だけをリリーに向けた。

「…………これ、約束」
「……やくそく……」
リリーが包みを差し出すと、ぱち、とレティの目が開いた。
震える手でなんとかそれを受け取る。


そうだ、こんな所で寝ている場合じゃない。
ちゃんと、想いを伝えなければ――


「……?」
咄嗟に感じる違和感。
しかしそれが何なのか今のレティには分からなかった。


目を閉じる。
初めて会ったあの日、毎年の一瞬の出会い。
バレンタインのあの日。

目を開けて目の前のリリーを見た。
白い服、白い帽子、蜂蜜色の髪、黒めの羽、笑顔。
見た目はどう見ても記憶と違いない。


でも、どこかが――ああ、そうか。


「ありがとう、リリー」
レティは目を閉じ、
精一杯の笑顔をリリーに向けた。

「リリーホワイト、貴女の事が好きだった」
リリーは何か言おうと口を開いたが、
レティは笑顔のまま、言葉を続けた。
「――そう本人に言っといてね。『どこかの誰かさん』」

そして力なく目の前のリリーの頬に手を触れた。

「…………」

目の前にいるリリーはそっくりではあるが断じてリリーホワイトではなかった。
多分、よく似た妖精に頼んだのだろう……いや、もしかしたら双子なのかもしれない。

だってこうもたやすく彼女は触れられる訳が無いから。





――ああ、触れられなかった。





「返事、来年、聞くか……ら、って」

涙が溢れ、視界がぼやける。
きっとこれは眠いんじゃなくて泣いてるからなんだろうな、
とレティ自身もそう思った。

「あと、もう、ひと、つ」
レティは襲い来る睡魔に抵抗しながら言い、
包みをリリーに返す。
「あなた、から、の手渡し、じゃないと、いらない、って。甘くない、もの、これ」

「それ、一生懸命選んでた」
黙っていたリリーが僅かに怒気を含んで言う。

「食べれば、分か、るわよ」
「……でも、あの子は」
「いいから、お願い」
「…………」
リリーは諦めたように包みを受け取った。

「ありが、とう……もう、寝る、わ」
リリーの頬に触れていた手を下ろし、
ゆっくりとレティは瞼を閉じた。

「……レティ・ホワイトロック」
「な、に?」
目を閉じながら返事だけはした。
「リリーホワイトが何故会いに来なかったか知っている?」
「なんと、なく」


冬から春へ。
春からは冬にはならない。
つまりはそういうこと。

春がいくら冬に恋焦がれようと
春は冬に近づけない。
冬なら春に近づける。


「ずっと前から、『春』は眠る『冬』に恋していた。
 出会うことはあれど、触れ合うことは無いだろうと思ったのに、
 あの『春雪異変』の日からすべてが変わった。私はこれが単なる偶然とは思えない」
「……」
途端にリリーは饒舌になる。このリリー、元々はよく喋る方なのかもしれない。

「あの異変の首謀者は冥界の管理者だと聞くけど、私が思うに本当の黒幕は――」

「……すう……すう……」

「……もう、寝たのか」

レティはもう眠っていた。
来年の冬まで目は覚めないだろう。

「……春、か」
リリーブラックは上を見上げ、小さく呟いた。

ひゅう、と一陣の風が頬を撫でる。
冷たい洞窟の奥に届くそれは温かい春の風だった。


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


と、今回はここで終わりです。いかがでしたか?

答えは『春から冬にはならない』です。

ええ、ヒントにこの物語の全てが詰まってますから。

はあ、『春雪異変』の黒幕、ですか。

えー、……うん、まあ四季の神様だとでも言っときますか。

おや、もう行きますか。

では、物語のエピローグを最後に。



        春     雪
        告     落
        げ ち
        精     て
        の     
              ま
        跡     だ
        探    か
        す     ま
        道     だ
              か
              と

              妖
              の
              山


   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


リリーブラックが妖の山の洞窟から出て来ると、
一人の白狼天狗が腕を組んで待っていた。

「終わりましたか?」
「ええ」
返事を聞くと天狗は安心したように胸を撫で下ろした。

「良かった、これでようやく妖の山にも春が来る」

妖の山ではまだ春に近づいておらず、新春の宴会の準備が出来ないでいた。
今年は新しく来た山の神も混じっての大宴会となる予定なだけに、
山に春が来ないというのは由々しき事態だったのだ。

まあ、まさか『冬』が居たなんて思いもしなかったのだろう。

「……リリーホワイトは?」
「あそこに」
天狗が指差す先に、
桜の木に寄りかかるように眠る黒い服を着たリリーホワイトがいた。

リリーホワイトの本当の服は今自分が着ている。
少しでも似る様にとの配慮で、ついでに羽も黒くしていた。

「では、私は上に報告に行きますので」
「ご苦労様」
「いえいえ……ああ、明日はホワイトデーかあ」
「そうですね。誰かにお返しを?」
「え、うーん。ちょっと嫌な予感がしまして……っと、早く行かなきゃ」
天狗は別れの挨拶と手を挙げ、山の上へと飛んでいった。

「……ほら、起きるんだ」
ブラックは近付き、ホワイトの肩を軽く揺さぶる。

「――――?」
すぐに目を覚まし、リリーホワイトは軽く伸びをした。

「ちゃんと渡してきたよ」
「――――!」
ホワイトは嬉しそうな顔になり、
ぱたぱたと羽を動かす。

「……でもリリーホワイトじゃないって気付かれた」
「――――」
今度はしゅんとした顔になり、羽もぴた、と止まる。

「いや、ホワイトが悪い訳じゃない。……でもこれだけは言っておく」

――『冬』は『春』のことが好きだってさ。

「――――!!」
リリーホワイトはとても嬉しそうに跳ね回った。
その光景はとても微笑ましいもので、
リリーブラックは後ろ手に持つ返された包みの事を言うかどうか一瞬迷った。

いや、言わなければ何も変わらないだろう。

「あと、残念だけど……コレ、返されたよ」
ブラックは勇気を出してホワイトに包みを渡した。
「――――?」
リリーホワイトは不思議そうな顔で首を傾げた。

「多分、まだホワイトデーじゃなかったから……」
そう言ってもリリーーホワイトは依然不思議そうに首を傾げるだけだった。

リリーブラックははあ、と溜め息をつき、「わかった、正直に言うよ」と言った。

「『貴方からの手渡しじゃないといらない、甘くないから。理由は食べてみればわかる』……って」
包みは開けられておらず、レティはどんな中身かさえ見てない。

「――――」
リリーホワイトはそれを聞いて包みを解く。
色とりどりの丸い飴がそこにあった。

その中から1つ、
雪のように真っ白な飴をリリーホワイトは手に取り、口に含んだ。
目を瞑り、よく味わうように口を動かす。


「味、判んないのにね」
「――――」
リリーホワイトはふるふると首を横に振った。

「……判るの?」
「――――」
またふるふると首を横に振る。


首を振りながら泣いていた。


「…………」
ブラックはなんだか居心地が悪くなり、
しばらく一人にさせたほうがいいか、
とホワイトに背を向けた。



「――――しょっぱいよ、お姉ちゃん」



「!?」
微かに、懐かしい声がリリーブラックの耳に聞こえた気がした。
しかし振り返ってみても妹は泣きじゃくっているだけだった。

冬と春。隣り合うのに触れ合えない季節。

さて、来年こそは、どうなるか――――



・三月の十三日。幻想郷は春に包まれた。

(了)


―― 『冬』は洞窟の奥底で夢を見た。白い天使と手を繋ぐ夢を ――

こんにちは、さねかずらです。
今回はしんみりでしたが、如何だったでしょうか。
作品集50の「バイオレンススタイン」でレティ頑張れエールがあったので続きを書いてみました。
携帯でもし見ている方がいたらすみません、縦書き使いました。

ちょっと前までネット環境が宜しくないところに居まして、ホワイトデーに間に合いませんでしたorz
なので求聞史紀の春の人に追加でちょっと頑張ってもらいました。
なんか漢詩やら俳句やら詩やらでかなり多芸な人になってしまいましたが……
聞き手は読者様自身だと思っていただければ。

それにしてもリリーが撃ち辛くなってしまった……。

と、冒頭の漢詩は李白という、
唐代の詩人の天山という山に対しての漢文を少しばかり改変したものです。

俳句の方は求聞史紀のリリーホワイトの項より抜粋したものをちょっとだけ変えて。
ほかはうんうん言いながら適当な本を捲ったり辞書を斜め読みしながら……

お地蔵さんの中には四季がしっかり訪れるように願い、作られたのもいたらしいです。
お地蔵さんから閻魔様になると言いますし、
もしかしたらあの性はこういうのから来てるのかなあと妄想したり。
異変の前に幽々子様に閻魔様が何か言ったんじゃないのかと妄想したり。

あ、それと作品集51の「貴族は空に憧れる?」ですが……
某スレ見てたらいいかもしれないと思うようになりました。あの設定をこれからもちょっと使っていこうかなと。

コメント有る無し関わらずに読んでくださった魅魔様……じゃなくて皆様に感謝しています。
でもなんというか、レート下がるとドキッとして迂闊にフリーレスが……小心すぎる。

まあそれはともかく、本編とグレイズする恒例のおまけをどうぞ!



― おまけ ―

妖精でありながら、私達は姉妹の関係であった。
たまたま、同じ日、同じ場所にて生まれたから、双子といっていいだろう。

妹は春が好きだった。昔、『春』になりたいと言い、
私は四季の神様の下で働き、妹を『春告精』にと頼んだ。

しかし、力のたいしてないただの妖精が『春』になれた代わりの代償は大きかった。

それが、妹が喋れない理由だ。
他にも味覚、嗅覚、聴覚などいくつか失っている。

しかしその条件にも妹ははっきりと、笑顔で答えた。


「それでもいい。だって私は――春が好きだから」


妹はかくして『春告精』となった。

もうあれからずいぶんと経つ。

最初の頃は不便さに何度も私が妹をサポートしたが、
今では慣れたもので、大体口の動きと雰囲気で言葉は理解できてるようだ。
言いたいことも表情と身振り手振りで伝えることが出来る。

だが、私は思う。

妹は果たして今、幸せなのだろうか? と。

いや、

私が幸せにする。絶対に。

(了)
さねかずら
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コメント



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1.100名前が無い程度の能力削除
良い姉妹愛です………。黒百合は健気の象徴ですね。
白百合と冬の忘れ物は遠距離イチャラヴしまくりで最高。
3.100Noxious削除
この感慨を噛み締めるためにもう1度読んできます
11.90とおりすがる削除
冬から春へ移り変わった今にふさわしい話です