「そっちあったー?」
「いえ、ないわ…これは想像以上に骨が折れるわね」
「がんばろうねレイセンちゃん」
「…ええ、お互いがんばりましょう」
ガラクタ…いえ、宝の山を探し始めて早1時間。
表面から崩し始めようと決めた私とレイセンちゃんは黙々と作業をしていた。
これだけあると、さすがの私も鬱々としてしまうわけで。
いやまあ、探す前からウンザリしてたけど。
それでも、レイセンちゃんは黙々と発掘作業をしている。
「あったー?」
「5分前にも聞いた。もうちょっと探してから聞いてよ」
レイセンちゃんもイライラしている様子。
「だってしゃべってないとつまんなくない?」
「つまんなくない。私は仕事で来ているの」
「私だってそうだけど…」
風祝といっても、仕事中といっても、私だって花も恥らう16歳だし。
外の世界からきてまだ友達少ないし。
ていうか幻想郷で一番最初の友達がレイセンちゃんだし。
「…ああもう、わかったからいじけてないで探しなさいよ。
おしゃべりぐらい付き合ってあげるから」
「だからウドちゃんて好きー」
「レイセン!ね!」
もう何度目かのため息をつくレイセンちゃん。
面倒見いいね!
とりあえず、おしゃべりおしゃべり。
「レイセンちゃんて、外から来たって言ってたけどどこからきたの?」
「私は月からよ」
「月?月ってあの月?MOON?」
「そうよ、月」
「………………」
レイセンちゃんは電波な人(?)でした。
「…私だけじゃないわ。うちの師匠や姫様も月人」
「………………」
レイセンちゃんの家族も実は電波な人(?)でした。
「な、何よその反応」
「ううん、いいの」
「何が」
「レイセンちゃんがちょっと電波でも私は友d」
「店主!こいつ追い出して!」
そんな泣かんでもええやんか。
「冗談だってば、ここ幻想郷だし別に不思議に思ってないってば」
「…てゐが二人に増えた気分だわ…」
おもいっきり頭を抱えるレイセンちゃん。
これがスキンシップのつもりなのよ、私的に。
「呼んだかい?」
律儀にもこっちに顔を出す店主。
ただ、どう考えても本から目を離して話すべきだと思うのね。
人に指をさすのと同じぐらい失礼。
「もういいわ…ごめんなさい店主…」
「ふむ」
結局最後まで本から目を離さずに戻っていった。
何しに来たの店主。
「で、おしゃべりの続きだけど」
「もう口も利きたくないところだけど」
ウンザリしてる。
もうおもいっきりウンザリしている。
そんな顔をしつつも作業の手を一向に止めないのが、プロっぽい。
「そんなこと言わないでよウド
「何よ!何なのよ!」
「…ンゲさん」
「…………………」
目を真っ赤(元から?)にして頭をふりしだく。
情緒不安定なのも可愛いとこなのかも。
てか、思春期かなレイセンちゃん。
「いやね、レイセンちゃんたちは月に住んでたって言ってたけどさ。
結界の外の世界の人間が確かロケットとかで月に行ったと思うんだけど」
「ああ…ガガーなんとかって人ね」
「そうそう、そのなんとかリンって人。見つかんなかったのかなって」
「そうね…あなたが知らないのなら、見つかっていないんじゃないかしら。
私はそれを嫌って月から一人逃げ出して、ここへたどり着いたの」
いろいろあったのよ、と語る目に感情の色が見えない。
なんとなく、過去に縛られてるのかなって感じる。
ただ、私は別のことが気になる。
「…レイセンちゃんて、歳いくつ?」
「あなたよりは年上ね」
フフンなんて、さっきまでの悲しい目から勝気な目に変わる。
やっぱり私より全然目上の人だったらしい。
しかし、クラス一の委員長気質と言わしめた私こと東風谷早苗。
ここで礼儀正しい謝罪を入れて名誉挽回よ。
汚名挽回なんてバカなミスしないんだから!
「これは…失礼しましたウド様」
「そこでとぎるのいい加減やめてくれないかしらねっ!」
…幻想郷の人(?)たちは、ホントに見た目だけじゃわからない人だらけだ。
見た目どおりなの、紅白と黒白ぐらいなのかな。
「ありましたかウドンゲ様?」
「…ないわね…もうだいぶ片したと思うんだけど」
レイセンちゃん改め目上のウドンゲ様と共同でモノ探しを始めてから数時間。
もう夕方に差し掛かっている。
正直ここまでがんばれたのもレイセンちゃん改め目上のウドンゲ様が一緒にいてくれたおかげ。
一人じゃここまでがんばれなかったもの。
もういいかな、なんて思い始めた。
あそこの掃除は私一人ががんばればいいもの。
私もここまでがんばったんだから。
ゆとりとか言わせないんだから。
「これ、アナタが探してるのじゃない?」
「え?なんですかウドンゲ様」
「しゃべり方とかさっきまでのでいいから…なんか違和感がぬぐえないのよね…
それはそうと、ゾウの形のモノをみつけたんだけどアナタが探しているのはコレ?」
「うーん、どれどれ?」
目上のウドンゲ様改め友達のレイセンちゃんが手にしているのは…
そういえば昔ラッ○ー池田っていたなあ…
「違うかな。確かに象の形だけど、それはジョウロ」
「なら私の探し物じゃない」
「…ホントだ!」
そう、レイセンちゃんが探していたのは手軽に植物に水のかけられる物、ジョウロだった。
水をかけられるものならスポイトだろうがこまごめピペットだろうがいいらしい。
ていうかジョウロぐらい幻想郷にもありそうなもんだけど…。
そう聞くと、外の世界のがいい!って限定されてたらしい。
なんで外の限定?って聞くと、師匠の言うことだから、と目を伏せて答えた。
レイセンちゃんの師匠厳しいねって言うと思っ切り泣かれた。
漢泣きなんて初めて見たよ…大変なんだね。
「やったねレイセンちゃん!」
「ええ、アナタのおかげね。ありがとう…ええと、早苗ちゃん」
少しぎこちないながら名前を呼んでくれるレイセンちゃんを見て、充実感に満たされる。
「ほらレイセンちゃん、これはやく買って家に戻りな」
「でも、アナタの探し物はまだじゃないの?」
「いいのいいの、自分が楽したい道具を探してただけだから。
きっと師匠さん待ってるよ」
「…そうね」
少し迷いながらも、笑顔を浮かべ再度ありがとうと私に告げカウンターへ向かうレイセンちゃん。
やっぱり面倒見がいいというか、いい人(?)だな。
ただ、手にした赤い象のジョウロ(池田と命名)がとってもマヌケだった。
「さて、私も帰ろっかな」
空が薄暗くなった頃、私も店を後にした。
結局、私の探し物であった掃除機は見つからなかった。
それでも、友達ができたからよしとしたい。
うさみみで、長い名前で、面倒見が良くて、年上で、ツッコミ役で、ウドちゃん。
「ふふっ」
知らず笑いが漏れる。
幻想郷にきて初めての、友達。
「…早苗、私たちのごはんはー?」
「ダメだわ、まるで聞こえてない」
次の日の神様二人の食欲は、すごかった。
そしてこの鈴仙が妙に可愛いと思うのは自分だけだろうか。
早苗ちゃん若干なアホキャラになったけどこれはこれでおk!
昔、あのジョウロの緑色の奴を持っていたのだが、何処に行ったのだろうか・・・
コメントありがとうございます。
遅くなってしまいましたが、レスをさせていただきます。
>03-23 23:55:39のお方
実は、前の話とつなげようか悩んだのですが…
編集での追加は目に付きにくいということで、新しく投稿させていただきました。
やはり短かったでしょうか。
>03-24 00:53:07の方
自分的には現代の女の子っていうのを出したかったです。
たとえば、担任の先生に溜め口をつかうような。
鈴仙のほうも気に入っていただけてありがたいですw
>03-24 16:28:21の方
そこはその…技術者の河童が、河童がなんとかしてくるっ!
>03-24 16:29:59の方
フォローどうもありがとうございますw
>じう様
実は…ちょっと続きを書いていたり…w
読み返すとアホさがなりを潜めてた気がします。
>03-24 22:47:22の方
うちの緑のジョウロは最近犬にかまれてオシャカに。
それを見たからこその登場で、自分的には追悼の意を…w
あのじょうろを使う師匠を想像したら、何だか和んだ。